【獣人】亜人の少年少女の絡み9【獣化】at EROPARO
【獣人】亜人の少年少女の絡み9【獣化】 - 暇つぶし2ch550:かわうそルルカ 4-8/10 ◆q6hKEmO86U
12/04/23 02:04:30.72 Iq4mXCNF
「これって年中、発情しているの?」
 狐族の女性は、ルルカの股間に長く突き出した鼻を近付けて言った。
「長い間、体を水で冷やさずに過ごした獺族の娘はこうなるんだ。
 それと、儀式の効果だな。狼族の─」
「娘って……!?」
 女性は驚いたような声を上げ、くすくすと笑った。ウォレンが牝獺のことを人間並みに扱って言う
のが可笑しいらしい。
「"これ"の餌はどうしてるの?
 夜中もずっと……あれ、やってるんでしょ。いつ食べるの?」
「給餌係が巡回してる。一日に五回、小分けして与えるんだ。
 ペニスを受け入れながらでも、食べることはできるからな」
「ふーん」
 抑揚のはっきりしない公用語の発音なのに、ルルカはその声にはっきりと侮蔑の感情を聞き取って
いた。シエドラの女性が、牝獺たちを激しく嫌っていることをルルカは知っている。彼女たちは、徹
底してルルカたちを家畜扱いしていた。ルルカたちの存在が、女性の価値を貶めているとでも言いた
げに。
 普段は遠巻きにして揶揄するばかりで、実際の牝獺をじっくりと見る機会はほとんどない。この狐
族の女性はウォレンとの会話にかこつけて、牝獺を観察してやろうと思っているようだった。好奇の
目がルルカの隠せない裸体の上を這い回った。
 ルルカはその視線を避けるように目を閉じた。心の中で、ごめんなさい、と呟く。
 シエドラの牝獺たちが、この惨めな生き方をどれだけ恥じているか、この女性は知らないだろう。
一日中、体の内側を擦られ続ける辛さなど想像もしないだろう。子宮の入口まで、ときにはその奥底
までを掻き回す棍棒のような物体。押さえ付けようと無意識に締め付けてしまい、逆にその形と動き
を嫌というほど感じさせられる惨めさ。それが当たり前の感覚になってしまっていて、挿入されてい
ないと体が牡の性器を求めて疼くのだという事情を、この女性の狐は知らない。
「私たちって発情してもこんなにならないよね……」
 ルルカが腰を小刻みに揺らし、股間から愛液を滴らせている姿を見て、狐族の女性は独り言のよう
に呟いた。ルルカは無意識のうちに体が動いていたことにはっと気付く。目を開くと、女性の蔑むよ
うな視線がルルカの瞳に突き刺さっていた。
「信じられない。恥ずかしくないの?」
 女性は身を屈め、ルルカの体の前面に開いた赤い花びらのような性器を凝視して言った。
 思わず弁解の言葉を口に出してしまいそうになったルルカの性器に、いきなり指が突っ込まれた。
(ああっ!)
 ウォレンが鎖を短く詰めて引き上げていたため、ルルカは身を捩って避けることもできなかった。
ルルカの性器は、何の抵抗もなく女性の指を根本まで飲み込んでいた。中に溜まっていた、洗い流し
損ねたアンテロープたちの精液とルルカの愛液が混ざった液体が、ぷちゅっと音を立てて飛び出し、
狐の女性はうわっと叫んで指を引き抜いた。
「やだ、きたないっ!」
 女性が振り払う液体から、ムッとするような臭いが漂ってくる。いつも繋がれている辺りでは嗅覚
が麻痺してしまって感じないその臭いは、特に草食獣の精液には付き物の強い臭気だ。
(だから、もう少し体を清めさせて欲しかったのに……)
 ルルカのそのウォレンに対する苦言は、的外れとも言える。例えそれがルルカ自身の体から滲み出
た液体だけだったとしても、さほど事情は変わらなかっただろう。これまで幾度となくルルカの中に
流し込まれた、様々な種族の大量の精液の臭いが、入り交じってルルカの体の奥底にまで染み付いて
しまっているのだから。牡たちの排泄行為に体を使われるというのは、つまりこういうことなのだと、
ルルカは思い知らされていた。
 怒りを露わにする狐族の女性に、ルルカは獺の言葉で『ごめんなさい、ごめんなさい』と繰り返し
た。ウォレンが狐族の女性に同調するでもなく、ルルカを擁護することもなく、ただ黙っているだけ
なのが、ルルカにはまた悲しかった。



551:かわうそルルカ 4-9/10 ◆q6hKEmO86U
12/04/23 02:05:53.65 Iq4mXCNF
 シェス地区を抜けると、ウォレンは、高台へ登る石段を横切って街を南北に結ぶ回廊へとルルカを
誘導した。
 人の目が無くなると、ルルカは声をあげて泣いた。
 嘆いても、発情した体の疼きが止まるわけではない。ウォレンも普段と何も変わらない様子で、
ルルカを歩かせ続けた。
(酷いよ……、ウォレン……)
 ルルカはなおも愛液を股間に滲ませながら、よたよたと歩き続けた。
 一時間ほどして、回廊の北端に辿り着く。ようやく気分も落ち着き、泣き止んだルルカは、立ち止
まり、振り返った。
「ウォレン……」
「何だ?」
 無駄だと思いつつ、お願いをしてみる。
「これからは他の人たちのように、ぶら下げて運んで欲しいの……」
 先ほどの狐族の女性が最初にウォレンに問い掛けたのは、このことだ。牝獺の胸に嵌められた金属
環は、そうやって牝獺を運ぶために着けられているものでもあった。体の小さい牝獺は、男たちの腕
なら軽々と持ち上げることができる。しかし、ウォレンだけは一度もルルカをそうして運んだことが
無かった。
 ぶら下げてもらえれば、さっきのような恥ずかしい思いをしなくて済む─。

(えっ?)
 ウォレンが黙って金属環を掴み、ルルカの体を持ち上げた。ルルカは驚いたが、彼女の望みにこの
狼が応えたわけではないとすぐに気付いた。
「あれが見えるか?」
 ウォレンがルルカの体を浮かせたのは、獺の背丈では届かない塀の向こうを見せるためだった。高
台の中腹にあるこの回廊からは、シエドラを囲む壁の外側の景色が一望できる。
 遠くに山脈があるのが霞んで見えた。その山と山が途切れた位置に、距離感がおかしくなりそうな、
巨大な石の壁があった。
(まさか、あれは……)
 武者震いが起きた。初めて見るものなのに、それが何なのか、ルルカにはすぐに分かった。獺の血
がそれを知っている。獺族にしか作れない石の建造物─。
「ダム……」
 ウォレンは少し驚いたような素振りで「知っていたのか」とルルカに聞いた。
「昔、聞いたことがあるだけなの。見るのは初めて……」
「そうか」
 ウォレンはルルカを塀の上に立たせた。ルルカが落ちないようにしっかりと体を抱えるウォレンの
顔がルルカの顔のすぐ傍にあった。
「あれがダム─、獺族の作った水瓶だ。
 数百年前の干ばつで、地表から水源のほとんどが消えた。
 残った河川の流れを集められるだけ集めたのがあのダムだ」
「あれは……」
「あれは、かつて獺族が建設したものだと言われている。
 あれのおかげで、この街の水が枯れる恐れはない。
 これほど憎んでいる種族の遺産に頼らねばならないというのは皮肉だがな」
 シエドラだけが獺を生かしたままにしておけるのも、あれがあるからだ、とウォレンは言った。ダ
ムから視線を逸らし横を向くと、ウォレンの真紅の瞳が、ルルカを見詰めていた。普段と変わらない
はずのその表情は、ルルカの目には穏やかなものに見えた。
 ルルカはどきっとする。
「ウォレン……」
「ずっと聞きたかったんだろう?」
 ウォレンは、獺族について、街に残っている古い記録を調べてきたのだと言った。


552:かわうそルルカ 4-10/10 ◆q6hKEmO86U
12/04/23 02:06:33.28 Iq4mXCNF
「数百年前に起こったという大干ばつ、それは知っているだろう?
 それ以前の世界は、人の住む土地は全て河川と湿原に囲まれ、
 水中での活動に長けた獺族こそが、世界の支配者だったんだ」
 ルルカには、信じられないことだった。森に隠れ住み、獺狩りに怯えて逃げ回っていたこと、そし
て今の自分の性奴隷の立場も、獺族が体格も身体能力も他種族に及ばない劣等種であることを物語っ
ているとしか思えなかったからだ。
 ウォレンの説明によると、獺たちは水中での活動に適した独特の衣装と武具を携えており、その運
動能力を最大に発揮できる場に限って、彼らは優位を保てたということだ。彼ら以外の種族はその圧
政の前に屈し、資源の流通を妨げられ、ある種族は飢え、ある種族は戦いを挑み、滅ぼされた。
「しかし、干ばつが獺族の運命を変えた。水が無ければ、彼らは能力を発揮できない。
 積年の恨みを晴らすべく、各種族は獺たちを追い詰め、殺していった」
「その恨みが、今も続いているの……?」
「レドラの街─。ここと同じような雑多な民族の集まる栄えた街だったという。
 レドラは、獺族の手で一夜にして滅ぼされた。今ではどこにあったのかも分からない。
 幻のように、消えてしまったのさ。
 記録は何も残っていない。
 それでも人々は……、忘れないんだ。憎しみの記憶だけはな」
 獺族を排除し、交易の発達した世界が生まれた。水は相変わらず各地で枯渇しているが、衣類も食
べ物も薬も、今では自由に手に入る。獺族は長い歴史の中で間接的に何百、何千万という人々を殺し
てきた。報いを受けるのは当然だろう、とウォレンは言った。
「でも……」
 自分が罪深き種族の末裔なのだと改めて知らされたうえで、ルルカの中にひとつの疑問が消えずに
残る。
「何故、獺族はそんなことをしたの?」
 ウォレンは、ふうっとため息をつくと、記録に残ってないんだ、と繰り返した。

 もう少しウォレンに話を聞きたい、と思ったが、ウォレンはルルカの体をひょいと塀の上から降ろ
してしまった。人通りを避けて荷物を運ぶ馬車が、回廊を通過していた。ウォレンにお尻をつつかれ、
ルルカはまたよろよろと歩き始めた。仕方のないことだ。ウォレンとの会話を誰かに聞かれるわけに
はいかない。
 長い石段を降りると、雑踏の中に出た。以前、通ったことがある場所だとルルカは思った。近くに
市場があるはずだ。物売りの叫ぶ声が聞こえてくる。このあたりはシエドラの北端にあたる。今日の
目的地は近かった。
 いつもなら憂鬱になるはずのルルカの足取りは、少しだけ、軽い。
(ウォレン─、
 今度ばかりは期待を裏切らないよね。
 私のためにわざわざ調べてくれたんだよね……?)
 ウォレンがどういう風の吹き回しで話をしてくれたのか分からないが、ルルカは彼に何かお返しを
しなければ、と思った。それはきっと、今日の"おつとめ"をしっかりこなすことで果たせるはずだ。
そしてその後、ウォレンに抱かれるときにも─。
(いったい、どのようにしたらウォレンは喜んでくれるだろう?
 でも……、あれっ?)
 ルルカは生まれて初めて、自ら交尾を望んでいることに気付き、不思議な気持ちになった。


553: ◆q6hKEmO86U
12/04/23 02:09:44.14 Iq4mXCNF
以上です。

次回、かわうそルルカの生活 第五話は、サブタイトル『もう一人のルルカ』

荒々しい北方の種族に蹂躙されるルルカ。
(─ルルカ、見るな!)
青い衣装の狼族が連れてきた牝獺は、近い未来のルルカの姿─

みたいな感じでお送りします。お楽しみに。

554:名無しさん@ピンキー
12/04/26 19:39:33.08 o75PYzSe
ルルカたん…
頑張った子にはごほうびがあるんだよな?幸せになって欲しい

555:名無しさん@ピンキー
12/04/26 21:39:14.24 xrFu4UZ3
>>553
>青い衣装の狼族が連れてきた牝獺は、近い未来のルルカの姿─
らめぇ! ルルカたんの心折れちゃうぅぅぅぅぅ!!

556:名無しさん@ピンキー
12/04/29 00:25:15.53 WZOk71za
ごほうび?
甘ったれたケモノにはお仕置きとしつけが必要だな!!!

557:名無しさん@ピンキー
12/04/29 00:30:12.48 WZOk71za
頑張るなんて当たり前
心はボキボキに折れてしまえ

558:名無しさん@ピンキー
12/04/29 00:43:54.97 WZOk71za
頑張ったからなんだ?
甘えるのが好きな畜生め

559:名無しさん@ピンキー
12/04/29 22:18:29.11 i7t3jBUH
かなしいよーつらいよー可哀想だよー
でもすごく続きが気になります!
ルルカたん、がんばって

560:名無しさん@ピンキー
12/04/30 09:22:38.21 aufNQ3va
スカトロコーヒーにもすごく期待してる

561:名無しさん@ピンキー
12/04/30 22:48:45.60 veq3kFU7
>>560
美味しいコーヒーの秘密を探ろうと深夜にこっそりお店のキッチンを覗きに行った少年が
そこでお皿の上にウンチしてる店の女の子(マスター)の姿を発見した

ってところまで書いた

562:名無しさん@ピンキー
12/05/01 01:15:45.11 YmZAcvP6
読んでて昔テレビでやってた小公女を思い出したわ
理不尽な仕打ちに対して必死に耐える姿がだぶって見える

563:名無しさん@ピンキー
12/05/01 02:03:32.33 kmSY71Vv
>>561
めちゃくちゃ続きが気になるww

564:名無しさん@ピンキー
12/05/01 09:26:09.55 LwSPoBcF
>>561
マスターはジャコウネコなのかな ルアックコーヒーには興味があるが手が出せないぜ
会陰腺からも香水が採られたりと大変ですね

565:名無しさん@ピンキー
12/05/04 21:56:40.32 uQWKNbr/
>>564
ジャコウネコ! その発想はなかった。本編が楽しみだな!
今日コーヒー屋に行った時、思い出し笑いしちまったので来たw

566:名無しさん@ピンキー
12/05/05 06:20:16.99 Fp/67935
今更だがマイリトルポニーに興味を持った
日本でも放送してくれないかな
普段は日本語で歌は英語で放送希望

567:名無しさん@ピンキー
12/05/06 04:19:36.35 hVPTdDqO
テスト

568:名無しさん@ピンキー
12/05/12 05:57:39.24 EfG8PNNL
モフりたいが暑くなってくる時期

569:名無しさん@ピンキー
12/05/12 19:24:34.73 kUoG6jok
最近は寒いので問題ない

570:名無しさん@ピンキー
12/05/17 01:17:18.64 ok+G+5ww
スカトロコーヒーを楽しみに今日も保守

571:名無しさん@ピンキー
12/05/19 07:22:33.84 ePynfaCw
世界樹の迷宮の新作に新職業というかモノノフという獣人?様な種族が登場するのか
世界樹は獣人とかはパーティには入らないというイメージがあったから以外
2にペットがいたけど

572:名無しさん@ピンキー
12/05/23 14:49:57.56 I0KMS7W/
ブレード&ソウルの猫可愛過ぎだろ

573:名無しさん@ピンキー
12/05/30 02:08:27.35 wpxNZEsa
URLリンク(www.youtube.com)
「野生時代」日本語版はさすがに上がってないから今度レンタルしようと思う

574:名無しさん@ピンキー
12/05/31 20:08:25.20 vVrwZszw
猫になった主人公のケツの穴が一瞬みえるシーンがある回だっけ?
これ元々日本で放送された奴じゃなかったっけ?

575:名無しさん@ピンキー
12/05/31 20:09:13.93 vVrwZszw
ああだからレンタルか
勘違いスマン

576:名無しさん@ピンキー
12/06/10 18:15:05.81 c4KpFtVL
エロパロ板はまず落ちないとは聞くが10日書き込み無かったので一応保守
家畜TFとか見たい

577:名無しさん@ピンキー
12/06/10 19:15:21.87 ChFLDTLN
なんでTFについて違和感を感じたのかよくよく考えてみると、半虹には人間が人外に変身のTFスレがあるんだね。
なんでエロパロには無いか…と思ったら人外への変身スレがあるじゃん。

578:名無しさん@ピンキー
12/06/11 06:38:48.05 GSR5EWRm
>>577
元々こっちで獣化とかをやってたんだけどね。獣人化してやるとかそんな感じ。
後発なあっちのスレタイが「異形化」「蟲化」になってるのはその辺配慮だったはず。
まぁ、該当スレが出来たなら住み分けた方が良いのかもしれんが、
そういう風に言われると昔からの人の中には反感買う人もいるから…

579:名無しさん@ピンキー
12/06/15 23:40:23.45 ED3WOcj/
雌豚と入れ替わりたい

580:名無しさん@ピンキー
12/06/16 22:53:59.85 oJ7LKSuD
>>579
【人間⇔動物】人間と人外の入れ替わり妄想スレ
スレリンク(eroparo板)

581:名無しさん@ピンキー
12/06/17 10:27:39.04 lCtWgDQG
入れ替わりにしても、意識や魂がスッと入れ替わって終わり、ではなく
人間が動物にTFすると同時に相方の動物が徐々に人間に変化していって成り代わる
とかの方が好きかな

582:名無しさん@ピンキー
12/06/18 00:09:51.78 Y0oLlknG
一緒に閉じ込めて共同生活させて少しずつ入れ替えていくとか

583:名無しさん@ピンキー
12/06/18 20:36:37.79 Z22tVFPj
>>581
だったらなお>>580のスレに行く事を勧める
向こうは向こうでそういう勢力が弱くて
「立場入れ替えの方に占領された」なんて嘆きの声もあるし

なんてあっちだこっちだと仕切ってもつまらんから
ここは絡みスレという事で入れ替わった後に
どういう絡みにもってくかを考えた方が良いのかな

584:名無しさん@ピンキー
12/06/24 23:58:02.15 1d212y4I
入れ替わった後の絡みというと
発情期の動物と入れ替わって自分の意志とは関係なく発情
性欲に耐え切れずに自分の体に入った動物に交尾をねだる
交尾を条件に動物の言いなりになる
みたいな?

585:名無しさん@ピンキー
12/06/30 02:18:49.06 bO3TiTGT
……首から下は地井武男ェ……

586:1/2
12/07/07 11:46:51.37 cTmSE8av
"赤鬼の面"が独りでに神棚から飛び上がると、
グッ
ゆっくりとわたしの顔に近づけていった。
「いやっ…!!」
わたしは迫ってくる"赤鬼の面"から怯えながら逃げようとしたが、
しかし、
スルッ
「え?」
"赤鬼の面"がわたしの顔のすぐ傍に近づくと、
ピタッ
っとわたしの顔に張り付いてしまった。
『ぐもぉぉぉぉ(いやぁぁぁぁ)』
"赤鬼の面"が張り付いてしまったわたしは、必死になって顔を振りながら潜ったような声を上げると、
ドクン
「……」
突然心臓が激しくなると同時に少しずつ体が熱くなる。
「あっ、あんっ、ダメッ、こんな…所で…」
ドクン、ドクン、ドクン…。
激しい胸の鼓動と全身を包む熱さに耐え切れずわたしは淫らに全身を広げる。
それと同時に…
ピクッ!
「うっ!」
全身の肌、
いや、
筋肉がピンッと張り詰めたと同時に、
バリバリバリ
制服が無惨に引き裂かれ、
わたしはショーツ1枚残しただけの姿となるが、その肌はいつもの色白ではなく、燃えさかる炎のような赤胴色の柔肌をしていた。
「あんっ、あうっ、くうっ…」
人前でこんな姿を見せているのは恥ずかしい以外の何物でもない。
そう思うとより赤面が増して真紅に染まるが、そんな気持ちにかまう事なく指一本動かせず、わたしは大の字になりながら変化が進むのを見届けているしかなかった。


587:2/2
12/07/07 11:47:33.72 cTmSE8av
メキメキメキ!!
わたしの体中から骨が軋む音が響き渡ると、
ピクッ、ムクッ、ムキムキッ!
手足が少しずつ長く、太く伸びながら大きくなって行く。
ボコッモリッ
わたしの肩やお腹で筋肉が盛り上がり、見る見るそのシルエットが大きくなっていく。
全身を変化による苦痛、
そして快感が覆うと、
恥ずかしいという感情は消え去っていき、
ピクン。
「うっ!」
すでに全身の感覚が普段とは全く違うものになっている中、わたしが女である事を生理的に証明している場所も変化の流れに侵され始める。
ググッ、ムグッ、ググ…。
「あん、あうっ…ぐぐ…」
服越しにMサイズの胸の膨らみに筋肉が張り詰め、そして胸の中に引きずり込んで行く感覚が伝わる。
柔胸は膨らみを微かに残しながら胸板に押し上げられ、柔らかい胸の感覚の代わりに逞しい胸板の感覚が胸にかかる。
ムクリ。
『ああ…ああ…こ、声まで…』
喉の奥から何かが盛り上がると同時に、
"赤鬼の面"の口の上下からは牙が突き出して、本当の口のように動きだし、そこから出る声も太く低く唸るようなそして獣のような声になる。
今やわたしの姿は9割がた筋骨隆々の鬼の姿となっている。
最期に床の上に靡く黒髪が毛先まで金色に変わっていくと、
"赤鬼の面"にはめ込まれたわたしの目が金色に染まり、
グリッグリッ!
『うぐっ、うごぉっ……うぐわぁぁぁぁぁぁ!!』
わたしが頭の両側に痛みが奔ると同時にこの世のものとは思えない獣のような雄叫びを響かせると、
ベキベキッ!!
ベリッ!!!
振り乱した金色の髪の毛を掻き分けるように左右に角が突き出すと、
そこには剛毛が生えた赤い肌に微かな柔胸を残した厚い胸板と太い手足、そして頭に2本の角を生やした赤鬼がそびえ立った。

588:名無しさん@ピンキー
12/07/09 15:44:52.15 XQi4tiwk
>>586-587
懐かしい作品ですね! 祟られ屋・恭平の事件簿、大好きでしたよ!
URLリンク(www2u.biglobe.ne.jp)
続編に期待していますが……無理でしょうか……

589: ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:23:53.62 KbkGsykh
御無沙汰してます。なかなか書く時間が取れなくて・・・。
次はいつ頃になるかも分かりませんが、どうかお付き合いください。

かわうそルルカの生活 第五話です。
注意事項は >>442 参照。


590:かわうそルルカ 5-1/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:25:30.54 KbkGsykh
     【5】 -もう一人のルルカ-

「ルルカ─?」
「えっ?」
 ウォレンとの交尾を頭に思い描いていたルルカは、声をかけられ、我に返った。
 ウォレンは慎重に辺りを見渡していた。ルルカが言葉を話せることを知られないよう、彼はいつも
気を配るのを忘れない。いつの間にか二人は、市場周辺の雑踏を抜け、塀に囲まれた路地を歩いてい
た。塀の上にあちこち植物の穂が飛び出して見える。
「この街外れの土地では市場に出す植物を栽培している。
 あの丈の長い草は、誰も食べないはずなんだが……」
 いつもは退屈なウォレンの解説も、今のルルカは素直に聞くことができた。
 路地の先に、日当たりの悪い居住区があった。温暖な気候のこの都市では、あえてこういった場所
を好んで住む種族も居る。
「ここで最後だ。これでお前はこの街の全ての場所を知ったことになる」
「え……?」
 そんなことのために、ウォレンはいつもルルカを自分の足で歩かせていたのだろうか。
「帰り道は分かるか?」
「えっと……、すぐ近くにギザの市場があって……、
 そう、石段を降りてこっちへ来たのと逆の方……。
 そこを左に抜けて、大通りを真っ直ぐ、街の中央まで……でしょ?」
「上出来だ」
 ルルカは自分がウォレンの問いにすらすらと答えられたことに驚いた。いつもと変わらないウォレン
の態度に、また失望させられてもおかしくないというのに、不思議と腹も立たなかった。目を閉じれ
ば、シエドラの街の構造が頭の中に浮かんでくる。ルルカは、いつだったか泉を見付けたときのよう
な、胸の高揚を感じた。
 想像の世界なら、いつも繋がれっ放しのルルカも、自由に街を歩けるのだ。思えば、他に何も考え
ることのないルルカは、広場で男たちに犯されている間、いつもウォレンと行動した記憶を繰り返し
辿っていたのだから。この街のどこに何があるか、知らず知らずのうちに覚えてしまっていてもおか
しくないだろう。
(ありがとう、ウォレン。そう、ありがとう。
 あなたがどういうつもりだったか分からないけれど─)
 ルルカが、その想いを口に出すことはなかった。目の前に、石造の宿屋があった。ウォレンは、
そっとルルカの口に手を当て、ここから先は言葉を発してはいけないと知らせるのだった。

 ウォレンはすぐ宿の中に入ろうとはしなかった。裏の洗い場へルルカを連れて行き、宿の主人に数
枚の布を持ってこさせると、愛液でべとべとになったルルカの股間を清め始めた。
 冷たい水に浸された布で何度も拭かれ、ルルカは体の熱が治まっていくように感じた。粘液の湧出
がほとんど無くなったのを確認して、ウォレンは縦長の布を濡らしてルルカの胸に当てた。
(えっ……?)
 柔らかく編まれた布は、たっぷりと水を含んだまま、ルルカの体を心地よく冷やす。ウォレンは布
の端をルルカの胸の金属環に巻き込んで固定し、胸から下、体の前面と股間を覆い、もう一方の端を
尻尾の付け根に括り付けた。
(いいの─?)
 ルルカは、振り向いて、視線でウォレンに聞く。衣服を焼かれ、一生裸で過ごすように命令された
牝獺のルルカには、裸で居ることが当たり前になり過ぎていて、逆に不安になった。体に張り付いた
布は、懐かしい獺族の衣装を思わせた。こんな身分を弁えない恰好が許されるはずがない。
 ただ、狼族のすることを咎める者も居ないだろう。
 きっとウォレンには考えがあってのことだ、とルルカは思った。狼の赤い瞳は、普段と変わらず冷
たく鋭い光を放っていたが、ルルカは初めて、その中にウォレンの意思を感じた。ウォレンはこれま
でになく険しい表情をしていたのだ。その理由は、すぐに分かった。



591:かわうそルルカ 5-2/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:26:43.21 KbkGsykh
 古びた建物のその宿屋は、シエドラの交易の歴史の長さを感じさせるものだった。入口の戸をくぐ
ると、そこは広場の噴水池を思わせる円形の広間になっていた。建物の一階は、そのような広間がい
くつも繋がっている。個室やベッドでの就寝に慣れない種族も居る。信仰に基き、故郷を離れても日々
の儀式を執り行う種族も居る。広間はそうした旅の者たちが多目的に利用するために用意されていた。
 入ってすぐの広間に、噂に聞いた北方の行商の男たちが集まっていた。人数を数えたルルカの両手
の指はすぐ足りなくなった。十数人ほどの見たことのない姿の者たち。
 その北方の草食獣を祖先に持つ獣人は、ルルカと似た灰褐色で、密度の高い滑らかな毛皮を持って
いた。異国の情緒を演出する商売道具でもある民族衣装を脱ぎ捨て、上半身裸になり、二人の到着を
待っていた。彼らにとって、この土地は暑過ぎるのだ。大きな手のひらを広げたような形の角を生や
し、重そうな頭を揺すっている。
 男たちは、狼の前に立つ小さな獺の姿を見て歓声を上げた。「どうして裸じゃないんだ」という声
も飛んだ。
 ウォレンはルルカを引き寄せ、胸の下に手を回して抱きかかえた。ルルカは、その大きな腕が緊張
で固くなっていることに気付く。無理もない。早く牝獺を使わせろと、掴み掛らんばかりに迫る異種
族の男たちは、一人一人がウォレンに負けないほどの立派な体格の持ち主なのだ。ウォレンは興奮す
る彼らからルルカを守ろうとしていた。多数の種族の中で特に身体能力に恵まれた狼族に等しいその
肉体より、更に恐ろしいのは、彼らの巨大な角だ。ルルカはまた、草食の一族は角が大きければ大き
いほど激しく暴力的な性格の持ち主である法則を思い出した。
(何でもお見通しなんだ、ウォレンには─)
 彼ら─北の大地に生きる「馴鹿族」のこの熱狂を。ルルカの乳房や股間を布で覆ったのは、彼ら
の獣欲を少しでも抑えようという目論見があったのだ。
 ウォレンが大きく息を吸って、上半身の毛を逆立てるのを見て、男たちはぎょっとして伸ばしてい
た手を引いた。
「お楽しみは後にして、まずは持ってきた交易品などを見せてもらえないか。
 見たところ、食糧や香辛料といったものより、調度品や装飾品が多いようだ。
 そういうものを並べておく場所が市場に無い。
 我々、狼族が取り次いで買い手を探すことになっている」
 広間の周辺には、布で覆われた荷物が山積みになっていた。ウォレンの言葉に冷静さを取り戻した
男たちは車座になって座り、世間話を交えて交易品の紹介を行う運びとなった。
 ルルカは、胡坐をかいたウォレンの組んだ足の大きな太腿の上に乗せられた。布越しに股間を
ウォレンに押し付けることになったが、水に濡れた布の冷たさのおかげか、そこが今は恥ずかしい液
体を滴らせていないことが判って、ルルカはほっとした。
 ウォレンは出掛ける前の約束通り、北方に住む種族の男たちから、その土地の話を聞き出し、ルルカ
に聞かせてくれようとしているようだった。
 馴鹿族がウォレンに手渡す北方の特産品や工芸品を、彼は一つ一つ、ルルカの手に握らせた。それ
は、見たことがないものがほとんどだ。どれもが白く、表面が艶々として輝いている。細かく彫刻の
施された燭台や装身具、それは彼らの大きな角を加工して作ったものだ。
「角、か。見事なもんだ。しかし、これを作った者の角はどうなるんだ?」
 ウォレンが感心してみせる。
 それは、言葉を発するわけにはいかないルルカの気持ちの代弁でもある。
「毎年、落ちてまた生え変わるのさ。だから、材料はいくらでもある」
「便利だな。狼の牙は取ってしまったらおしまいだ」
「また生えないのか?」
「ははは、まさか」
 次に男たちが出してきたのは、凍土から掘り出した粘土を高温の窯で焼いたという陶器だった。こ
れも透き通るように白く、上薬が宝石のような光沢を与えている。シエドラでは滅多に陶器を見掛け
ないこともあって、ウォレンもその美しく輝く壺や食器を眺め、感嘆の声を上げた。
 ルルカの手に、小さなお椀が渡された。日に五度、食事を盛ってもらっているあの木製の器とほと
んど変わらない大きさのそれを見て、ルルカはため息をついた。上薬の下に、これも角の加工品と同
様、美しい模様が描かれているのだ。これに比べると自分の唯一の持ち物である木の器は随分とみす
ぼらしく思えてくる。あれはあれで丁寧に磨かれていて木目が美しいけれど、と対抗心を燃やしてみ
ることが、ルルカにできる精一杯だった。



592:かわうそルルカ 5-3/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:27:43.59 KbkGsykh
 ウォレンとすっかり打ち解けた馴鹿族の男たちは、自分たちの種族とその生活について語り始めた。
「俺たちは、もう一つの種族と共生関係にある。
 黒く、長い毛を持った草食系の連中だ。体つきは、そうだな、俺たちとそう変りない」
「ここへは来てないのかい?」
「ははは、あいつらは俺たちより更に暑さに弱いからな。
 とてもじゃないが、耐えられんだろうよ」
(二つの種族が、共生している……?)
 馴鹿族が続けて語った内容は、ルルカに驚きを与えるものだった。
 極北の厳しい自然の中で、二つの種族は姿は違えど、よく似た生態を身に着けた。厳冬期以外の比
較的穏やかな季節に発情を迎え、妊娠しなかった場合は、数週間後にまた発情する。そうして受胎率
を高める彼らは、獺族の凋落と共に困った問題を抱えることになる。交易が盛んになり、暖かい気候
の土地から知識や資源が流れ込み、生活水準が大幅に改善された。一方であまり変わらない北方の食
糧事情の下で、彼らは出生率を抑える必要が出てきたのである。
「しかし、どちらの種族も元来、性欲は強すぎるほど強いときている。
 そこで、二つの種族は協力して、配偶者の他に異種族の交尾相手を持つようになったのさ」
 ルルカには大きな衝撃だった。
 本来、交尾は同種族で行うものだと本能的に理解していたルルカは、これまで特別だと思っていた
シエドラの牝獺以外に異種族との交尾が行われている例を初めて知った。そして彼らの口振りから分
かるのは、どちらの種族の女性もそれを歓迎しているらしい。
 ルルカは、薄々と気付いていた、交尾とは愛する者同士が行う行為であるということを、今ここで
はっきりと知らされたのだ。それゆえに一方的に性欲の捌け口にされるだけの獺族は、いっそう惨め
であるとも言える。
(愛し合っているなら─、女の人は、辛くないの? 痛くされたりしないの?)
 言葉を発するわけにはいかないルルカにはそれを確かめられないのがもどかしい。馴鹿族の言葉を
引き出すウォレンの話術に期待するしかない。
 そのウォレンは男たちの話を聞きながら、ルルカの頭に片手を乗せ、もう一方の手でゆっくりと小
さな獺の体を撫でていた。それは無意識にそうしているだけで、ウォレンは身を乗り出して馴鹿族と
の会話に熱中しているようだ。
 ああ、やっぱりね─。
 ルルカは小さく溜息をついた。話を聞き出してやると言ってたくせに、自分ばかりが楽しんでいる。
いつものウォレンだった。しかし、いつもみたいに腹が立たないのは何故だろう、とルルカは思う。
(そもそも私はウォレンの何に腹を立てていたのかな─?)
 自分たちの性について語る馴鹿族は楽しそうだった。ルルカは自分もそんな風に交尾を楽しめたら
いいいのにと思った。例えば─ウォレンと?
 ルルカはそのとんでもない発想にどきっとして、頭をぶんぶんと振った。
 たとえ今日、珍しく優しくしてもらえたといっても、ウォレンなんかと─。
 おかしな想像を振り払おうとするものの、体がかっと熱くなってくる。無造作に体を撫でるウォレン
の手の動きから意識を逸らせなくなった。濡れた布越しに、ウォレンの手が乳房に優しく触れた。狼
の大きな爪の先が腹をそっと掻いた。その感触に、ルルカは昔、母親に木のブラシで毛皮を梳いても
らったときのことを思い出す。体を撫でられるうちに、全身がどんどん熱を帯びてくる。
(気持ちいい─)
 体に触れられることが、こんなに気持ちいいことだと思ったのは初めてだった。
 これまで男たちの手には嫌悪しか感じなかったというのに、今のウォレンには、ずっとこのまま触
れていて欲しいと思った。
(やめて、そんなに触らないで。いや、止めないで……)



593:かわうそルルカ 5-4/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:28:43.61 KbkGsykh
「それじゃあ、シエドラの牝獺の使い方を説明しよう」
 ウォレンの愛撫に身を任せ、周囲の声も耳に入らなくなっていたルルカは、はっと我に返る。
 ウォレンが胸の金属環でルルカの体を持ち上げた。体を覆っていた濡れた布が、胸の金属環からす
るりと抜かれる。ルルカは思わず、やめてと叫びそうになった。愛撫で火の点いた体が、再び淫らな
蜜を滴らせていることに気付いていたからだ。
 剥き出しになった股間を男たちの視線が刺した。ウォレンは思わず身を縮こまらせて性器を隠しそ
うになったルルカの両腕を掴んで、万歳の恰好にして吊るした。
「ほおっ」と声が上がる。
 男たちの目に、つるりとした牝獺の下腹部にはっきりと刻まれた焼き印が飛び込んだ。
 それを見て彼らがどういう感想を抱くか、もうルルカにも充分解かっている。
 狼の膝の上で好奇心に目を輝かせていた小柄な可愛らしい獣の姿はそこには無い。目の前に居るの
は、シエドラを訪れた彼らが初めて見る、生きた性欲処理器─。
 美しい流線形の体を持った牝獺の裸身が余すところなく披露され、男たちはカチカチと互いに角を
ぶつけるほど顔を近付け、その小さな獣の体の淫らな変化に見入る。
 ルルカは何度経験しても慣れない恥ずかしさに身を焼かれた。心で拒んでも、牡を求めて疼く発情
した牝の体。この後、恐ろしい凌辱劇が待っているというのに、体だけが肉欲の期待に反応し、乳首
がぎゅっと固くなって痛いほどだ。焼き印の下で花弁を広げる膣口が淫らに蠢いた。

「シエドラの街では、あちこちにこんな牝獺が繋がれている。
 交易証を発行された者なら、自由に使っていい」
 ウォレンが説明を始めた。
「牝獺の前では、たいてい誰かが順番を待っている。
 順番が来たら……、他の男の精液が気にならないというのでなければ、
 少し待ってやってくれ。
 近くにあるプールで、こいつらは自分で体を洗う。
 ただ、すぐに水から上がってこないようなら、鎖を引いて引き上げるんだ」
 ウォレンはそう言いながらルルカをいったん床に降ろし、向かい合うようにして抱きかかえた。今
にも襲いかかりそうな男たちの興奮を抑えるためだろうか。巨漢で乱暴そうな馴鹿族を恐れるルルカ
には有難い。嘆こうが喚こうが、この後犯されることに変わりはないのだが、ルルカは逞しいウォレン
の胸に顔を伏せることで、気持ちを落ち着かせようとした。
「一人一回の射精で交代だ。後はどう使おうと構わない。
 ただし、死なせないこと。交尾のできない体にしないこと。
 この禁を破った者は、街へ二度と入れない。
 口や肛門を使いたがる者も居るが、消化器系を痛めるのは獺族にとって致命的だ。
 特に罰則はないが、これも御法度だ」
 ウォレンはわざわざルルカの尻尾を持ち上げ、桃色の可愛らしい肛門を晒した。
(このために抱え直したの? 見せなくたって、言葉だけで分かることなのに……)
 男たちの口から、「使えないのか、勿体ないな」という言葉が漏れ、ウォレンも少しぎょっとした
ようだった。ルルカを抱く手に力が籠る。肛門を使った性交渉をタブー視する種族も多いが、馴鹿族
には避妊の手段として使われてきた歴史から、抵抗が無いのだろう。そんな事情はともかく、ルルカ
にとっては恐怖でしかない。膣と違って慣らされてもいない場所に凶悪なサイズのペニスをねじ込ま
れるときの痛みを想像しただけで身が震えた。牡を受け入れるようにはできていない獺の腸はあっと
いう間に傷付き、ルルカは血を撒き散らして悶え苦しむことになるだろう。ウォレンを見上げ、もっ
と強く咎めるように目で訴えた。しかし、ウォレンがそれに応える素振りは無かった。



594:かわうそルルカ 5-5/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:29:43.71 KbkGsykh
「獺の方から体に触らせないようにすること。
 言葉は通じないから、そうやって身分が違うことを教えるんだ」
「……もし、獺が言うことを聞かなかったら?」
 男たちから質問が飛んだ。
 その答えを、ルルカは嫌というほど知っている。
「多少、痛めつけても構わない。
 そして、シエドラの住人は皆、規則で毒針を持ち歩いている。
 声をかければ、獺を懲らしめてくれる。
 獺に大きな苦痛を与える毒だ」
 ルルカはまだ毒を打たれたことはなかったが、儀式のときに見てその効果は分かっている。交尾の
興奮に我を忘れた男たちに理屈は通じない。規則で命の保証はされていても、ルルカを利用する男た
ちは、気に食わないことがあるとすぐルルカを殴った。

「今日は街で一番人気の獺を連れてきたんだ」
 悲惨な日常を思い起こし、意気消沈していたルルカは、ウォレンのその言葉に飛びあがりそうにな
った。
(えっ? そうなんだ、私……?)
 そんな風に言われたのは初めてだった。そもそも、ウォレンがこんな風に丁寧に解説をしていたこ
とはこれまで無かったような気がする。いや、憂鬱な"おつとめ"を前にルルカがふてくされて耳を傾
けようとしていなかっただけなのか。
 ウォレンが言っているのは、いつもと同じ、シエドラの設備の一つである性欲処理の道具について
の説明に過ぎない。そうに違いないとルルカは思う。それでも、心臓がドキドキと脈打って止まらな
い。
「人通りが多いところに繋がれている牝獺ほど人気があると思っていい。
 体つきや声の可愛らしさで、繋ぐ場所を決めるんだ。
 その分、使おうと思えば、行列の後ろで待つことになる。
 手っ取り早く、性欲を満たしたければ、街の外れへ行くといい」
 ウォレンは、ルルカを床に降ろして立たせると、「ほら、挨拶しろ」と頭を叩いた。
(挨拶……ね)
 ルルカは、言葉が分からない振りをして、いつものポーズを取る。小さな腕を左右に広げ、体の後
ろ側へ反らすと、胸の膨らみが前方へ押し出され、強調される。軽く足を開き、尻尾を精一杯持ち上
げ、股間と肛門を晒す恥ずかしい挨拶の姿勢を取った。
 ウォレンは、よくできた、と言わんばかりに頭を軽く撫で、今度は男たちに乳房や性器がよく見え
るように正面を向けた形で、改めてルルカの体を持ち上げた。大きな腕を乳房の下から支えるように
回し、片側の乳房を手のひらで包むようにして、ウォレンはルルカの体を自分の胸にぎゅっと押し付
ける。完全に宙に浮いたルルカは、されるがままに、足と尾を脱力させ、だらんと垂らした。閉じ気
味に尾に後ろ足を添わせても、恥ずかしい部分は隠せない。背中と尾を一直線になるように抱えられ
ると、腰を前に突き出したようになる体つきの獺の場合、性器も、肛門も正面から丸見えになる。
「この娘のおっぱいはすごくきれいな形をしている。
 見た目も、触り心地も、最高だ。
 人気がある理由が分かるだろう?」
 抑揚に乏しい公用語のウォレンの言葉が、ルルカの耳には少し自慢をしているような調子に聞こえ
た。もしかして、いつもルルカが乳房の形を気にして、胸環で潰されて崩れないように頑張っている
ことに、ウォレンは気付いているのだろうか。


595:かわうそルルカ 5-6/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:30:43.90 KbkGsykh
 乳房がゆっくりと揉まれ、ルルカは熱い息を吐いた。乳房を中心に、じわりじわりと快感が全身に
広がっていく。ウォレンはしばらくルルカを腕の中で喘がせると、空いたもう一方の手をルルカのお
尻の方から回し、獺の短い後ろ足をぐいっと持ち上げた。
 すでに丸見えになっている股間を、さらに強調するかのように、衆目に晒す。
 可愛らしい小さな肉球の付いた足の裏、つるりとした丸みを帯びたお腹。そこに押された卑猥な焼
き印、真っ赤な花弁のように開いた牝の性器、ピンク色の肛門。
 ルルカの恥ずかしい部分が余すところなく男たちの目に飛び込んだ。
「それ、すごいな……」
 馴鹿族の一人が改めて漏らした言葉は、ルルカの焼き印のことを指していた。今更恥ずかしがって
も仕方がないのに、ルルカは消え入りそうになりながら、身を捩る。
 持ち上げられた足の先で必死にマークを隠そうとするルルカの動きを、ウォレンは許さなかった。
一生消えない性奴隷の印を指先でなぞり、毛皮から覗く表皮に刻み込まれた肉の溝が今もそこにはっ
きり残っていることをルルカに意識させた。
「見ての通り、これはお○○この印だ。
 性器の形は種族によって違うからな。獺の性器に欲情しない種族もいるだろう。
 だが、可愛らしいおっぱいとこのマークを見れば、
 一度でもシエドラの獺を使ったことのある男なら、
 すぐに臨戦態勢になるっていう寸法だ。そういう印さ」
 なるほど、と男たちは納得する。
「牝獺にとっても悪いことばかりじゃない。
 金属の胸環と、この印は、シエドラの所有物であることの証。
 これがある限り、獺狩りで殺される心配はない。
 他の街に牝獺を攫って行こうとする不届き者がときどき居るが、
 牝獺はシエドラでなければ養えない。ここは特別なんだ。
 他所でこのマークを見かけたら、知らせて欲しい。
 この印は、彼女たちの命を守るためのものでもある」
(そう……なんだ?)
 この説明も、ルルカは初めて聞いたように思う。悪いことばかりではないと知らされ感心するルルカ
だが、焼き印を押された当人にとっては後付けの理由にも思える。
 ウォレンがいつもの軽い調子で、口から出まかせで言ってるんじゃないの?
 今日のウォレンはどうかしている。
 いや、どうかしているのはきっと自分の方に違いない。
 ウォレンが初めて見せてくれた優しさ、獺族の過去について教えてくれたことに感謝する気持ちが、
形式的ないつもの"おつとめ"の行程を違うものに感じさせている。それにしても、前置きが長いよう
な気がした。



596:かわうそルルカ 5-7/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:31:43.66 KbkGsykh
「さて……。
 使う前は少し興奮させてやった方がいい。
 特に、あんたたちのような草食の種族は先走りがあまり出ないから、
 牝の方から潤滑剤をたっぷり絞り出してやるんだ」
 下腹部をそっと撫でるウォレンの手つきが、なんとなく優しい動きに感じられる。そのウォレンの
指先がすーっと下がり、いよいよ、ルルカの秘芯を捉えた。
『あ……』
 思わず声が出る。
 ただ、柔らかい肉の狭間に指が触れただけだというのに、雷に打たれたような衝撃が、全身を貫い
た。いつもより敏感になっている……?
「おや?」
 ウォレンが小声で呟く。疑問に感じるのも無理はない。ルルカのそこは、自分でもはっきり分かる
くらい、いつもと様子が違っていた。
 二本の指を添えられ、くつろげられた肉の入口が、自分の意思と関係なく、ひくひくと収縮し、浅
ましく牡のペニスを求めているかのように蠢く。布で体を冷やされ一時は収まっていた愛液が、再び
体の奥から滲み出て、ウォレンの指を伝って流れるほどに滴っている。おかしい、とルルカは思った。
犯されていないときほど牡を求めて激しく疼く牝の体は、いざ憂鬱な交尾を前にすると萎縮してしま
うはずなのに。
 ウォレンの指先が穴に挿し込まれ、ゆっくり円を描くように動くと、くちゅくちゅと恥ずかしい音
が、部屋中に響き渡った。ルルカは、股間の穴の上、おしっこの小さな穴を通り越してさらに上のあ
たりが、ズキズキと脈打つのを感じた。
(何……?)
 ルルカがそこに意識を集中させるのとほぼ同時に、狙い澄ましたかのように、ウォレンの指が、ま
さにその部分に当てられた。
(っ!?)
 その瞬間、ルルカには全身の筋肉が勝手にピンと張り詰めるのが分かった。強烈な快感の波が、そ
の部分を発端に、一瞬で手足の指の先まで広がった。
 ウォレンの指先は、獺族の小さな陰核を捉えていた。
 性器の真上あたりにとりわけ敏感な部分があることを、ルルカは知っていた。ウォレンと交尾をす
るとき、体が無意識に動いてその部分を彼の体に押し付けてしまう。でも、今ほど敏感になるような
ことはなかった。
 ウォレンの指先が、ルルカに今、自分の体がどういう状態にあるのかを教える。ウォレンはそこを
そっと摘み上げた。痛みを伴う快感に近い強い刺激とともに、その部分が小さなお豆のような突起に
なっていることをはっきりと感じる。それは乳首と同じように固くなっていて、乳首よりもずっと敏
感だった。
 ルルカの体は激しい興奮に包まれていく。全身が熱く、息が苦しい。
『ああっ……、やめて、ウォレン……』
 強い刺激に、頭が真っ白になりそうだった。ルルカはかろうじて、公用語を使わないという理性を
保っていたが、体は言うことを聞かなかった。
「珍しいな。この娘はあまり鳴かないのが玉に瑕だったのだが……」
 ウォレンの指が股間と胸の敏感な三つの突起に順に触れる度、筋肉が緊張と弛緩を繰り返す。性器
の入口もそれに合わせてギュッと締まっては、緩む。ルルカは、まるでウォレンの手で奏でられる楽
器のように、呼吸もままならず、『ひっ、ひっ』と短い悲鳴を上げ続けた。それは、男たちの耳には、
キュッキュッという可愛らしい鳴き声に聞こえる。
(もうダメ……)
 凌辱の日々の中ではほとんど感じることのない快感の洪水に、ルルカはどうにかなってしまいそう
だった。手足がぴんっと突っ張ったような感覚に襲われた次の瞬間、随分と長く忘れていた感覚がよ
みがえりそうになった。いつだったか、地下牢で感じた、強い感情の高まり。その極みに、あとわず
かで到達しそうに思った。
 しかし、ウォレンの愛撫は、突然打ち切られてしまった。



597:かわうそルルカ 5-8/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:32:43.73 KbkGsykh
「それじゃあ、お楽しみの時間だ」
 床に降ろされたルルカは、まだ肩で息をしていた。ウォレンの手の支えが離されると、足腰が立た
ず、ペタンと尻餅をついた。ぼんやりした視界に、ウォレンの大きな手が映っていた。その指先は、
ルルカの体から分泌されたねっとりした液体にまみれている。指と指の間を糸が引いているのを見て、
ルルカは恥ずかしさに顔が熱くなった。気持ちがいいときほど、その液体は粘っこくなるからだ。
 男たちに声をかけておきながら、ウォレンはまるでルルカを渡すのを躊躇うかのように、動きを止
めている。
 どうして─?
 次第に視力のはっきりしてきたルルカの目に、自分を取り囲む馴鹿族の男たちの姿が入る。男たち
は皆、ルルカの痴態に興奮し切っていた。今にも襲い掛からんばかりにルルカの眼前に迫る男たちは、
股間を覆う布を大きく盛り上がらせている。中にはすでに腰布を緩め、牡の性器を露出させている者
も居る。
 「それ」を一目見て、ルルカの血の気が引いた。
 見たことがないようなサイズだった。これまで相手をしたことのある種族で、最も大きなペニスの
持ち主は、狼族である。その中でも、ルルカの知る限り一番大きく逞しいのはウォレンのものだった。
しかし、彼ら馴鹿族の逸物は、ルルカのお腹の中で膨らみ切ったときのウォレンのものより、さらに
大きい。そして、それは狼族との交尾と違い、すでに大きくなった状態でルルカの中に押し込まれる
ことになる。
(嫌……、怖いよ、ウォレン─)
 ウォレンが会話を引き延ばしていた理由が分かった。彼もルルカを男たちの餌食にするのを躊躇っ
ていたのだ。シエドラの大切な資産である牝獺を壊されないよう気遣うのはウォレンの役目なのだか
ら。
 しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。首を左右に振って尻込みするルルカを、
ウォレンは覚悟を決め、男たちの前に押し出した。

 ルルカは足を掴まれ、乱暴に牡獣たちの輪の中に引き込まれた。ウォレンがあれだけ説明したのに、
馴鹿族の男は滾る欲望を抑えきれない様子で、前戯も何もなく、ルルカの小さな体にいきなり剛直を
押し込んだ。信じられないほどの質量のものが、ルルカの内臓を押し上げた。恐怖を感じたルルカは
手足をバタバタさせてもがく。そんな抵抗が何の意味もないことは分かり切っているのに。
 馴鹿族のペニスは狼のそれの先端ほど細くはなく、狼が持つ根本の瘤ほどの太さがあるわけでもな
い。突き込まれたペニスの先はいったんルルカの子宮を強く押し上げ、しばらく間を置いてから子宮
の入り口をこじ開け、中に潜り込んでくる。普段から大量の精液を溜め込む袋のように拡張され、緩
んでいたはずの子宮の肉壁が、痛みを感じるほどにぐちゃぐちゃに掻き回される。
 異物で子宮を徹底的に蹂躙され、周囲の腸や胃袋まで圧迫される感触に嘔吐きそうになった。
 先ほどは快楽のために苦しかった呼吸が、今度は苦痛のためにままならなくなる。
『……助けて!』
 ルルカは悲痛な声を上げた。
 それを、男たちは、「いい声で鳴くな、この牝は」などとしきりに褒め、さらに興奮を募らせてい
く。獺族の悲鳴を、歓喜の声と思い込んでいた。
 こんなに苦しいのに。涙が止まらないほど流れているというのに、誰も気に留めようともしない。
獺族の言葉で叫んでいる限り、付き合いの長いウォレンにも違いは分からないだろう。しかし、彼に
通じる言葉で助けを求めるわけにはいかなかった。
 大勢の前で、公用語が話せることを知られてはいけない─。



598:かわうそルルカ 5-9/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:33:43.95 KbkGsykh
 馴鹿族は性欲が強いと豪語するだけあって、挿入から射精までの時間が恐ろしく長かった。ルルカ
の体を抱き寄せ、腰を上下に激しく振った。あまりの苦しさに、ルルカは手を突っ張る。
 ルルカの小さな爪が、男の腹を弱々しく掻いた。
「おっと、これは躾けておいた方がいいのか?」
「牝獺は、交尾相手の体に触れてはいけないんだったな」
 挿入している男が、ルルカの頬を平手で打った。彼は手加減をしているつもりなのだろうが、筋肉
質でルルカの三倍近くにも見える体格から生み出される打撃は、首が吹き飛ぶかのような衝撃をルル
カに与える。
 一発だけではなかった。横殴りの打撃が何度か与えられ、勢いで乳房も数発、打たれる。筋肉が無
いため痛みを堪えることのできない乳房を叩かれるジンジンと響く痛みは、熱のようになってしばら
くそこに留まり、ルルカを苦しめた。
 最初の男がようやく大量の精液を吐き出したかと思うと、全くルルカに休む間も与えず、すぐに次
の男が覆い被さってきた。
 地獄のような交尾だった。
 朝のアンテロープたちのしたことが可愛く思えるほどに、馴鹿族は乱暴で容赦が無かった。
(ウォレン、みんなを止めてよ……。
 どうして、止めてくれないの?)
 ルルカの望みに応えることは、ウォレンには無理な相談だ。ウォレンの前でルルカはほとんど悲鳴
を上げたことなどないのだから、獺族の苦痛の叫びをウォレンは知らないのだ。

 全身を千切られそうな激しい交尾の衝撃に、ルルカの意識がウォレンの声を認識できなかっただけ
で、実際には、ウォレンは何度も制止の声を掛けていた。獺語は分からなくとも、男たちの性欲の尋
常ではない強さに不安を覚えた。しかし、馴鹿族の男たちは興奮に包まれ、ウォレンの言葉を聞き入
れなかった。
 止まない凌辱は、ルルカとウォレンの思いをよそに延々と続き、五人目の男がルルカに肉の槍を突
き刺すと、あちこちから我慢し切れなくなった手が伸び、ルルカの腕や尾や乳房を鷲掴みにした。
 お腹の恥ずかしい焼き印の痕にも手が当てられ、精液の詰まった子宮を肉の上から強く揉まれた。
口腔を無理やり指で広げられ、やがてお尻の穴にまで指がねじ込まれた。ウォレンが禁じたことを彼
らは忘れているようだった。ルルカはこのまま殺されるのではないかと思った。
「こいつ、漏らしやがった!」
 男の言う通り、ルルカの股間からはシュルシュルと力の抜けたような音を立てて、尿が漏れ出して
いた。口からは泡を吹き、ほとんど意識が飛んでいた。
「やめろ、そこまでだ!」
 小便をかけられた怒りに任せてルルカを殴ろうとした男の間に、ウォレンが割って入った。
 我を忘れ、雄叫びを上げる蛮族のような男たちからルルカを奪い返し、ウォレンはもう一度、やめ
ろ、と一喝した。



599:かわうそルルカ 5-10/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:34:43.49 KbkGsykh
「一度、牝獺を休ませる。続きはそれからだ」
「すまない、次からは気を付ける……」
 ウォレンの声に意識を取り戻したルルカは、布が敷かれただけの床の上に仰向けに転がされている
ことに気付いた。ルルカの両足は、木の棒に軽く縛り付けられ、大きく左右に開かれて固定されてい
た。
(休ませるって……。こんな惨めな恰好で……)
 ルルカには体を休めている間も恥部を隠すことは許されていないのだ。ルルカをこんな姿に拘束し
たのは、恐らくウォレンだろう。
 今日、ウォレンの態度から感じた優しさは、やはりルルカの思い違いだった。彼がルルカに対して
優しくする理由など無い。"おつとめ"を中止する気も無さそうだ。彼は、ルルカの今日の責務を全う
させようとしていた。
 馴鹿族の男は全員で十三人。ルルカを犯していない者がまだ八人、残っている。あんな惨めで辛い
交尾を、まだ続けなければならないのだ。
 ルルカは自由にされている手で、顔を覆ってすすり泣いた。
 視線を自分のお腹に向けると、そこは大きく膨らんでいた。子宮口はもう緩み切っているが、若い
牝獺の締まりのいい膣が、牡獣たちの精液を胎内に押し留めていた。呼吸をする度に、股間から漏れ
出した精液が、お尻の下に敷かれた布に吸い取られていく。自然に精液が抜けるまで休んでいていい
ということなのだろう。

 馴鹿族の男たちは、落ち着きを取り戻しているようで、大人しくウォレンの言葉に耳を傾けていた。
ウォレンはもう一度、牝獺がシエドラの資産であることを語り、一度に一人しか牝獺に触れてはいけ
ない、それが守られなければ、馴鹿族にシエドラの獺を利用する許可は与えられない、と念を押した。

 二十分ほども大人しくしていれば、獺の体力は回復してしまう。過酷な水中で行動をしていた獺族
の体質のおかげであるが、今のルルカにとっては有難いものではなかった。
 無造作に膣に押し込まれたウォレンの指先が、精液が抜け切ったことを確かめる。
『お願い、ウォレン……。もう帰らせて……』
 獺語で訴えてみるが、当然、それはウォレンに理解できるはずもない。
(あと八人も相手をさせるの? 酷いよ、ウォレン……)
 ウォレンは足の拘束を解いてルルカを立たせ、折り畳んで厚くした布をルルカの股間にトントンと
当てた。これ以上、粗相をしないように、残った小便をそこに出せと言っているのだ。いつもは衆目
の中とはいえ、女性らしくしゃがんで用を足しているルルカに、彼はさらに惨めな思いをさせようと
していた。
 ウォレンにとって自分は、シエドラの広報を行うための道具に過ぎない。ルルカはそのことをはっ
きりと意識した。
 早くしろ、とばかりに尿道口を布が擦り上げる。
『うっ、うう……』
 ルルカは布に股間を押し付けるようにして、立ったままおしっこを出した。
 恥ずかしさと悔しさにこぼれる涙で視界が滲んだ。



600:かわうそルルカ 5-11/11 ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:35:43.77 KbkGsykh
「どうした? やはり一時中断か?
 言っていた通りじゃないか」
 突然、声がして、一人の男が広間に入ってくる。大柄で灰色の毛並の男。ウォレンと同じ狼族だっ
た。
「お前……。来るなと言っただろう?」
 ウォレンはその男が歩み出る先に立ちはだかり、対峙する。まるで、ルルカから遠ざけようとする
かの動きだった。
「一頭じゃ厳しいかもしれないと言っていたのはウォレンだろう」
「休ませながらやるから、お前は来なくていいと後から言ったはずだ」
 上半身の被毛を自慢げに露出させているウォレンと違い、その男は、目の覚めるような青い原色の
糸で織り込まれた衣装を纏っている。それはいつも見る狼族の灰色の正装ではなかった。ルルカの脳
裏に、儀式の日のことが浮かぶ。あのとき、赤い衣装を着たウォレンの他に居た二人の狼族。彼らが
着ていたのが、この青い服だ。ルルカは、衣装の色が狼族の中での階級を示すものであると気付いた。
ならば、ウォレンは─?
 ルルカの頭の中に浮かんだ疑問はすぐに掻き消えた。ルルカを、新たな衝撃が襲う。

「そいつはもう少し休ませろ。ほら、もう一頭連れてきてやったぞ」
 男の言葉と同時に、ウォレンは振り返ってルルカの顔を見た。ウォレンは声を出さなかったが、口
の動きでルルカに何かを伝えようとする。

─ルルカ、見るな!

 ウォレンが振り向いたときには、すでに手遅れだった。涙を拭ったルルカの瞳に、その男が連れて
きたもう一頭の牝獺の姿が映っていた。
 男は胸環でぶら下げた獺の体を広間の全員に見えるように突き出した。
 それは、可愛らしい獺の娘だった。顔立ちは驚くほどルルカに似ていた。整った形の乳房や、滑ら
かなお腹のライン、毛の色の濃淡に至るまで、ルルカにそっくりだった。噴水池の水面に映った自分
の姿を、ルルカは思い出した。ルルカが街で一番人気と言われているのがよく分かるほど、そのルルカ
と瓜二つの獺は、美しい。
 しかし─。
 ルルカは全身が強張るのを感じる。何かがおかしかった。

 小さな体の牝獺は、ぶら下げられたまま、荒い呼吸で肩を喘がせていた。意識はあるはずなのに、
眠っているように目を閉じた顔を力なく傾けている。両腕は曲げられて乳房の脇にぴったりとつけら
れている。両足は脱力しておらず、不自然に左右にはだけられていた。
 二つの乳房の頂点に、銀色に光るものが見えた。
 大きく開かれた股間の赤い薔薇のような性器の頂点にも、鈍く光る金属の欠片があった。

 ルルカは恐ろしさに身震いする。久し振りに見る、自分以外の獺族の姿─、それは変わり果てた
ものだった。そしてそれは、近い未来のルルカを映す鏡でもあった。


601: ◆q6hKEmO86U
12/07/11 00:37:17.09 KbkGsykh
以上です。

次回、かわうそルルカの生活 第六話は、サブタイトル『おさかな』

知らされた己の運命。
絶望から逃れようともがくルルカを、更なる絶望が襲う。
「そして、安らかな死を迎える。
 これが、シエドラの牝獺の最期だ─」

みたいな感じでお送りします。お楽しみに。

どんどんきつい話になりますが、
次回はルルカにとって嬉しいことがある・・・かもしれません


602:名無しさん@ピンキー
12/07/11 01:47:07.59 /Q31o3p5
うおおおお!! なんとなく来たら、投下直後に読めた!
投下お疲れ様! 毎回読ませてもらっています。ウォレンの愛情が切ない。

嬉しいこと…最初の注意書きからこれからどういう展開があるのかなんとなく予想がついたけど。
ジエルとジルフの当初の設定はこんなにいい人じゃなかっただろうし、今後の展開から目がはなせないな。

603:名無しさん@ピンキー
12/07/11 17:19:02.03 XwVy0Khu
ルルカちゃぁぁぁん切ねぇぇぇよぉぉぉぉぉ

604:名無しさん@ピンキー
12/07/12 01:07:12.03 tYRiOOwQ
怖え、つーか戦慄
そこまでするかという描写にシビれる
痛いのキライなはずなのに続きを読みたくなるから不思議


605:名無しさん@ピンキー
12/07/13 06:30:24.99 nwNO0zn9
ルルカに布押し付けるウォレンマジ鬼畜
しかしその描写に激しく萌えてしまった俺

606:名無しさん@ピンキー
12/07/14 08:21:15.65 XozX2j6L
救済

607: ◆NFt41Ic3fU
12/07/16 03:49:02.19 978h4wXN
まとまった時間が取れたので、未読だった「かわうそルルカ」
1から通して拝読させていただきました。
話題作だけあって、完成度が半端じゃないですね…
背景にある世界観や設定が作り込まれているばかりでなく、
細かい描写や、ひとりひとりのキャラクター性、
物語の見せ方などにおいても、非常に参考になりました。
「ただひとりの公用語のわかる娼婦」を主役にするという発想は
どのようにして生まれたのでしょうか。連載が終わった暁には、
是非あとがきで、作品構想のきっかけなども教えて頂ければ幸いです。
影ながら、応援しておりますので、今後とも推敲頑張ってください!

608:名無しさん@ピンキー
12/07/20 22:30:58.16 W6MOVdOR
「テラフォーマーズ」のゴキブリ人間と
「害虫女子コスモポリタン」のゴキブリの交尾見たい

609:名無しさん@ピンキー
12/07/22 16:25:51.65 Bs16hLpv
昆虫は人外スレの守備範囲かと思ったけど
人外×人外は受け入れ先ここしか無いのか・・・

610:名無しさん@ピンキー
12/07/22 20:36:14.28 /55RpNw8
>>609
いっそ自分で建てちゃうっていうのも手だぞ
住人が居つくまでスレの維持が少し面倒だろうけど

611: ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:12:19.58 1lHNb4lp
ご感想ありがとうございます>ALL

かわうそルルカの生活 第六話です。
注意事項は >>442 参照。

全編中一番キツい話になるかもしれませんが、
ちょっとだけご褒美もあります。
では・・・


612:かわうそルルカ 6-1/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:13:27.88 1lHNb4lp
     【6】 -おさかな-

 青い衣装の狼族の男は、広間に集まった者すべてに見えるように、連れてきた牝獺を胸環で掴んで
ぶら下げ、突き出した。美しく愛らしい獺の娘がもう一頭増えたことに、観衆は「おおっ」と歓声を
上げたが、ルルカとウォレンだけは時間が凍り付いたかのように身を固くして言葉を失った。
 ルルカに瓜二つのその牝獺の様子は、尋常ではなかった。
 彼女はただ、ぶら下げられているだけなのに、はぁはぁと荒い呼吸をしていた。口はだらしなく開
いて舌が飛び出している。眠っているかのように閉じられた目は、その部分だけを見ると喜んでいる
風にも見える。頭は脱力して傾いており、つるりと長い獺族の胴も太い尾も、吊るされるままにぶら
ぶらと揺れているのだが、両腕は緊張して乳房の横に引き付けられ、両足もぴんと突っ張ったように
左右に広げられているのが、如何にも不自然だ。意識はあると思われるのに、彼女はその場に居るも
う一頭の牝獺─ルルカを見ようともしなかった。
 股間から漏れ出た液体が、尻尾までベトベトに濡らしている。その牝獺が激しい興奮状態にあるこ
とは一目瞭然だ。
 彼女のきれいな形の乳房。その先端に飛び出た乳首の先で、銀色に光る小さな環が呼吸に合わせて
揺れていた。
(あれは……何?)
 ルルカは自分の乳首がきゅっと摘ままれるように感じた。視線を落とせば、同じ金属の環がもう
一つ、股間にもぶら下がっている。
(どうして、あんなところに─?)
 牝獺は、時折、ビクビクッと体を震わせた。

 一時、唖然としていたウォレンは慌てて、ルルカの視線を遮るようにしながら、ルルカの顔を胸に
押し付け、抱きかかえた。
「俺たちは、帰らせてもらうぞ」
 青い衣装の狼族は、ウォレンが苛立っている様子に首を傾げて言った。
「何言ってんだ。大事な行商の連中だろ、顔繋ぎしてもらわなきゃ困る」
 ウォレンは諦めて男の言葉に従ったが、あの牝獺をルルカに見せたくないことはルルカにも伝わっ
てくる。ルルカの息が苦しくなるほど彼女を自分の胸に強く押し付ける。
(ウォレン、私は─)
 ウォレンが強引にルルカを連れ帰ろうとしても、ルルカ自身はその場を離れようとしなかっただろ
う。男にぶら下げられた牝獺が何をされたのか、知らぬままでは居られなかった。
 馴鹿族の男たちに同族の狼を紹介したウォレンは、さりげない仕草で、ルルカを床に立たせると、
ルルカがうっかり言葉を発しないように、短い獺族のマズルをそっと掴んだ。もう一方の手で目を覆
い隠す。ウォレンはルルカのためを思ってそうしたのだろうが、逆効果だった。
「さて、こちらの牝獺は、"加工済み"だ。
 そうだな、街の二割ほどの牝獺がこの状態にされている。
 こっちを好んで使う者も多い」
(加工済み─?)
 男の不気味な言葉が耳に突き刺さる。ウォレンも、ルルカの耳を塞ぐわけにはいかない。彼女が公
用語を聞き取れることが知られてしまうからだ。
 その青い衣装の男に悪気があったわけではない。彼はルルカに言葉が通じるなどとは思いもしな
かったのだから。彼はウォレンにも見える位置に立ち、馴鹿族の男たちに説明を始めた。ルルカはこ
れまで考えたこともなかった、シエドラの牝獺が迎える運命について、聞かされることになる。



613:かわうそルルカ 6-2/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:14:32.81 1lHNb4lp
「交尾を繰り返すと、体の頑丈な獺族とはいえ、膣が緩んでくる。
 どの牝獺も、いずれはそうなる。
 殴ってみても締め付けが良くなるわけじゃないから、
 使用感が悪くなってきたら、我々に伝えてくれ。
 頃合いを見て、"加工"する─」
 男の指先が牝獺の乳首のリングを摘み上げた。牝獺はかすかな声で、チィと可愛く鳴いた。ルルカ
にはその意味がはっきりと判る。それは、官能を刺激されて出る喘ぎ声だ。
「これを付けられた牝獺は常時、性感帯を刺激され、こんな風に……」
 男は、牝獺の体を揺すって見せる。牝獺はチィチィと繰り返し鳴き、荒い息を吐いて喘ぐ。手と足
だけを緊張させたポーズで、牝獺はぶらぶらと揺られた。
「ほとんど動けなくなる。歩いただけで感じてしまうんだからな」
 ルルカは、ウォレンに押えられた口の中で、小さな悲鳴を上げた。目を塞がれていることで、却っ
てルルカの恐怖は大きくなった。
 あの娘の体に着けられた三つの金属リング、─あれは、体の何処に着いてるの?
 胸のリングは乳首の根本を貫通しているのだろう。そちらは一瞬目に飛び込んできただけでも、
はっきりと分かった。問題は股間に見えた金属の光だ。乳首を貫いているのと同様のリングに見えた。
あんなところにどうやって装着されているのか。
 その疑問に対する答えはとっくにルルカの中で出ていた。きっと間違いない。さっき、ウォレンに
触られたあの小さな突起に、金属の環が貫通しているのだ。
 恐ろしく敏感な部分─。ウォレンに優しく触られただけで、快感でおかしくなりそうだった。あ
んなところに穴を開けられ、金属のリングを通されたら、男の言う通り、一日中あの突き上げるよう
な快感に包まれて過ごすことになるだろう。歩けなくなって当然だ。

「食事や排泄くらいは自分でできるから、面倒なことはない。
 これを着けられると、牝獺の膣は常時、痙攣したように動くんだ。
 挿入されていようがいまいが、寝てる間もずっとだ。
 間隔や締め付けの強さは個体によって違うから、
 それだけ色んな感触を楽しめる」
 男は、牝獺の片足を持ち上げ、性器を晒す。そこは、牝獺が体を震わせるタイミングに合わせ、
キュッとすぼんでは、まただらしない口を開き、淫らな液体を垂れ流した。
 見えなくとも、ルルカには毛皮の擦れる音や牝獺の荒い息によって何が起きているかはっきりと想
像できた。痴態を演じる主は、自分とそっくりな顔立ちの獺の娘。それを思うと、ルルカまでもが恥
ずかしくなって、顔がかあっと熱くなる。
 狼族の男は、ウォレンが馴鹿族たちを前にそうしたように、牝獺の紹介を始めた。その細かな内容
はルルカの耳に入っても右から左へ抜けてしまい、頭に残らない。牝獺の激しい喘ぎ声ばかりが、
ルルカの意識に飛び込んでくる。
 青服の男は、自慢げに、牝獺の滑らかな被毛を撫で、形のいい乳房に手を添えて馴鹿族の男たちに
見せつけているようだった。ウォレンがルルカの乳房を愛撫したのと同じように。
 ルルカは、自分がそうされているような錯覚を受ける。興奮に包まれて我を忘れていたあのときの
自分も、彼女と同じような喘ぎ声を立てていたのかと思うと、ルルカはまた恥ずかしくなった。



614:かわうそルルカ 6-3/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:15:32.64 1lHNb4lp
「ウォレン、その獺を貸せ。彼らに見比べてもらう」
 ウォレンに対する男の依頼に、ルルカは飛び上がりそうになった。ウォレンは素早くルルカの目と
口を覆っていた手を離し、肩を強く押えた。そのことは、言葉が通じることに気付かれないよう、
ルルカに念押しをする効果があった。ルルカは叫びだしたくなるのを抑えて、必死に平静を装った。
何も分からない振りをしようと努めた。
 男が一歩踏み出して、ウォレンに手を差し出していた。ルルカを繋いでいる鎖を手渡せと言うのだ。
(やめて、ウォレン、渡さないで……)
 ウォレンは黙って手を伸ばし、男の手に鎖の端を受け渡した。
(どうして、ウォレン……)
 それは、ルルカの秘密を隠そうとしてくれているウォレンにとってそうせざるを得ない行動なのか
もしれない。ただ、ルルカには無慈悲極まりない結果をもたらす行為だった。鎖を引かれれば、ルルカ
は男がぶら下げている牝獺に歩み寄ることになる。彼女の体にどのような"加工"が施されているのか、
ルルカがそれから目を逸らし続けることは不可能だった。
 男は躊躇せずにルルカを引き寄せた。言葉の出せない種族は家畜と変わらぬ存在であることを思い
知らされる。ルルカは恐ろしさに震える足を気付かれないように、ゆっくりとした足取りで従順な獺
が鎖に引かれる様を演じた。そんな気遣いをしている自分に、気がおかしくなりそうだった。男は
ルルカが状況を理解していると思っていない。だからルルカに残酷な現実を見せ付けることに何の感
慨も無いのだ。
 男が片手で鎖を短く詰めると、引かれたルルカの顔は思わず上を見上げる。ルルカの目に、横向き
になったもう一人のルルカの乳房が飛び込んできた。
(ああ……)
 乳首を金属の環が貫通しているのは予想していた通りだったが、さらにその根本、桃色の肌が露出
した乳輪と毛皮の境目あたりにも小さな金属の球が光っていた。歪められた乳房の先端を見詰めてい
るうちに、それが乳輪を真横に貫く金属棒の両端に固定された球だと気付いた。そこがいつも刺激さ
れるようにするため、シエドラの民が重ねた工夫の産物だ。
(なんてむごいことを─、あっ!)
 足を止めたルルカを寄せようと、男は鎖を強く引き上げた。前のめりに足を踏み出したルルカと、
男が腕を振り上げる反動で正面を向いたもう一頭の牝獺が鉢合わせになった。
 ルルカは息を飲む。目の高さにちょうど、吊り下げられた牝獺の下半身があった。
 目の前に牝獺の可愛らしい肛門があった。桃色の放射状の襞は、膣から溢れ出した液体で表面を覆
われてきらきらと光を反射した。同じものを体に持つルルカも、思わず見惚れてしまう美しさがそこ
にはあった。
(私も、いつもこんな風になってるの?)
 いや、違う、と思った。その愛液の量は尋常ではなかった。肛門ばかりか、尾全体の毛に染み渡る
ほどに流れ出しているのだ。
 ルルカの視線は、ゆっくりとその源流に向かった。脳裏に、先ほどのウォレンの顔が浮かぶ。
「ルルカ、見るな」という聞こえるはずのない声がもう一度、聞こえたような気がした。それでも、
ルルカの視線はその部分に吸い寄せられていた。
 薔薇の花びらのように赤く染まった肉の襞が大きな口を開け、暗い穴の奥から止め処ない液体を湧
出させている。その頂点に赤い宝石のような珠があった。それはウォレンの指で刺激され、ルルカを
悶え狂わせたあの部分だ。"加工"が施されていなければ、ルルカは自分の体にもそのような綺麗な果
実か宝石かと思うほどの器官が存在することに驚いただろう。しかし、それは無惨に造り変えられて
いた。股間に見えた金属の光。それは、牝獺の陰核の根本を横に貫く金属のリングが放つ光だった。



615:かわうそルルカ 6-4/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:16:32.36 1lHNb4lp
 全身の力が抜け、崩れ落ちそうになったルルカの胸環を男が掴んで吊り上げた。先ほどウォレンの
指示で排尿をさせられていなければ、ルルカは小便を漏らしてしまっていただろう。しばらく男たち
の会話を夢うつつに聞いていたルルカを、突然、恐ろしさが蝕み始めた。ルルカは現実から目を背け
るように目を瞑った。同じように目を閉じて喘ぐ、自分とそっくりな牝獺がすぐ隣に居る。青い衣装
の狼族の手で、二頭一緒にぶら下げられているのだ。
 もう一人のルルカ─彼女の身に行われた施術を思うと、ルルカは胸が痛んだ。どんなに恐ろし
かったことだろうか。激しい痛みとともに体に次々と通されていく金属の環─。

「少し触ってみるといい。ほら」
 男はウォレンにそう言った通り、馴鹿族の男たちに"加工済み"の獺とまだ加工されていない獺を比
べさせるつもりだった。
「これはどうやって体に着けているんだ?」
 誰かが隣の牝獺のリングを指して言っている。
「穴を開けて通しているんだ」
 やっぱり─。
 ルルカは身を捩りそうになるのを必死で堪えた。思わず乳房を手で覆ったり、股間の痛みを想像し
て両足を擦り合わせでもしたら、ルルカが彼らの言葉を理解しているとばれてしまう。
「着けたら二度と外せないのか?」
「一度着けたら、一生このままだ。
 工具を使えば外せるだろうが、獺族の手では、無理だな」
「相当、痛いんだろう? こういう飾りを成人の儀式で着ける種族を知っている」
「そりゃあ、聞いたことのないような悲鳴を上げるものさ。
 ただ、痛いのはそのときだけだ。すぐに快楽の虜になる。」
 聞いたことのない悲鳴─、それはあの忌まわしい焼き印を押されたときより強い痛みに襲われる
ということだろうか。
 突然、下腹部のその焼き印をつつかれ、ルルカはドキッとして目を開けた。隣の牝獺の広げた足の
先が当たったのだ。
 そうだ、とルルカは思った。言葉が通じないと彼らが思っているのなら、少しくらい獺語の会話を
しても大丈夫だろう。馴鹿族は獺の言葉を聞いたこともないのだし、狼族の男は両手が塞がっていて、
ルルカたちを咎めようにも大したことはできないはずだ。
『大丈夫?』
 ルルカは小声で尋ねた。返事はない。
『私はルルカ。あなたの名前は……?』
 もう一頭の牝獺は激しく喘ぐばかりで、言葉を交わすことはできないようだ。それほどまでに強い
刺激を受け続けているのだろうか。ルルカが諦めようとしたとき、う……っと小さくうめき声が聞こ
えた。やはり、彼女には意識があるのだ。
『話せるの? あなたは─』
 ルルカの問いに、牝獺は小さな声で何かを言った。『ミルカ』と聞こえたような気がする。
『ミルカ……? それがあなたの名前……なの?』
 ミルカという名前らしいその牝獺は、再び激しく喘ぎ始め、それ以上は何も答えなかった。



616:かわうそルルカ 6-5/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:17:46.61 1lHNb4lp
「本当にこっちの牝は動けないのか?」
 男たちは、体の敏感な部分にリングを通された牝獺を興味津々に見ていた。先ほどはこんなに小さ
な体なのに男たちのペニスを受け入れるシエドラの牝獺─ルルカの体にひとしきり感心したばかり
である。北方の一族の好奇心は膨らみ続けていた。
「信じられないな」
「だったら、確かめてみるかい?」
 狼族の男は、ルルカともう一頭の獺、ミルカの体を自由に触らせると言った。
 すぐに無数の手が、ルルカたちの体に伸びてくる。乳房を荒々しく揉まれ、膣や肛門が押し広げら
れた。恥ずかしい体の内側の粘膜までが男たちの好奇の目に晒される。
「お尻の穴はどちらの牝も可愛らしいな」
「本当、これが使えないというのはつくづく惜しい」
 肛門に指先が押し付けられ、先ほどの激しい凌辱を思い出したルルカは恐怖に包まれ、また目を閉
じた。男たちは、二頭の牝獺の体を弄びながら品評を始める。
「おっぱいの形もそっくりだが、こっちの牝の方が柔らかいな」
「それだけ使い込まれてるんだろう」
「それにしても、すごい蜜の量だ。これが"加工"の効果か……」
 ミルカは断続的に『ああっ』と喘ぐ。
(ミルカ……、気持ちいいの?)
 ルルカには、ミルカが感じているであろう快楽がどの程度のものか分からなかった。男たちに触ら
れただけでこんな声を出すのだろうか。自分は、気持ちいいなんて思ったことはなかった。先ほどの
ウォレンの愛撫を除いては……。
 男たちが面白がってミルカの乳首や陰核を貫くリングを引いて刺激する。ミルカはさらに激しく喘
いだ。これが、体に金属の環を通された効果なのか─。ルルカは自分もこんな風になってしまうの
かと恐ろしくなった。ミルカに対する評価はそのまま、近い未来のルルカに対するものだ。
「本当だ、こっちの牝はこれだけ鳴いてるのに、この恰好のまんまだな」
 ミルカと同じように、ルルカの敏感な突起もこね回された。ルルカは身を捩って避けようとする。
「こっちは反応がいいが、鳴かないな」
「そっちの牝はあまり感度が良くないと聞いているが」
「さっきの狼が弄ってたときはいい声で鳴いていたんだがな」
 男たちの指が、股間の敏感な突起に集中する。ルルカは体がかっと熱くなるような恥ずかしさを感
じたが、ウォレンに触られたときのような快感は無い。火傷の痕を撫でられるような痛みに似た感覚
に涙を滲ませる。やがて、指は嫌がるルルカの膣に潜り込んできた。隣のミルカも同じようにされて
いるみたいだ。
「こっちの牝はすごいぞ」
「中がヒクヒクしてる……」

 指が抜かれると、狼族の男は二頭の牝獺の体を床に降ろす。ルルカは足が着くとなんとか自分で立
てたが、ミルカは両足を開いたポーズのまま、床にごろんと倒れた。
(本当に、動けないんだ……)
 自分もいずれ彼女のようになるのかと思うとぞっとする。男がウォレンの方へルルカを押しやり、
ルルカはふらふらとよろめくようにしながら、ウォレンの足元に辿り着き、そのまま支えを求めて彼
の大きな足に抱き付いた。
「さて、どっちがいいのかな。じっくり比べてみたいところだが……」
 その馴鹿族の言葉は、遠回しに二頭とも使わせろと要求しているのだ。青い衣装の狼は困った顔を
した。まだ交易証が発行されていない彼らは、"おつとめ"で提供される牝しか使えない。
「残念だが、このお披露目では一人一回と決まっている。
 じゃあ、こうしよう。残りは何人だ?」
 八人の男が手を挙げる。
「じゃあ、二人が先にこいつを使う。
 残り三人と三人で同時に二頭の牝獺を使うんだ。それで比べればいい」
 ルルカは男の提案に愕然とする。残りの八人をすべてミルカに押し付けて自分は助かろうというつ
もりはないが、体が先の凌辱劇を覚えていて、震えが止まらない。
「いいだろ、ウォレン。十分休ませてあるんだろう?」
「ああ……」
 ウォレンがルルカにしてやれることは、その小さな頭にそっと手を当てて抱き寄せることだけだ。
ルルカをここから連れ出す口実が無かった。



617:かわうそルルカ 6-6/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:18:40.78 1lHNb4lp
「今から、こいつを使ってもらう。
 さっきの牝獺との具合の違いを確かめてみてくれ」
 男がまた、ミルカの体を宙に吊るした。こいつはいいぞ、と男は言う。ウォレンがルルカを紹介し
たときのように、彼も自分が連れてきた牝獺を自慢しているように聞こえる。
 馴鹿族の男たちは、先を争って牝獺に手を伸ばすかと思われたが、さきほどの狂乱の反省からか、
冷静さを装って質問を始める。
「加工ってことは、やはり、生のままの方がいいんじゃないのか?」
「元が良ければ、加工をすればもっと良くなる」
「そんなに良いなら、街に居る獺、全部加工してしまえば……?」
 ルルカは耳を塞ぎたくなったが、それはできない。
 そして、一番聞きたくなかったことが、狼の口から語られてしまった。
「加工された牝獺は、寿命を縮めることになる。
 そうだな、牝獺の最期についても説明しておこう─」
 ルルカを押さえるウォレンの手に力が籠る。おそらく彼がルルカに一番聞かせたくなかったもこの
ことだ。ウォレンがルルカを連れて先に帰ろうとした理由が分かった。惨めに変えられたミルカの姿
は、いずれルルカ自身が身をもって知ることだ。ルルカがミルカと違うのは、公用語を理解できてし
まう、ということだ。

「それは、何の前触れもなく起こる。
 獺族の体も、過酷な生活に耐えられなくなるんだろう。
 見た目には若いままなんだ。そのまま体が突然、"硬直"を始める。
 手も足もガチガチに固くなって動かなくなる。
 内臓は逆に緩んで食事もまともにできず、かろうじて声が出せるだけだ。
 そうなったら、もう助からない」
 膣も─、と男は続けた。性器も緩んで使い物にならなくなる。それは、シエドラにとってその牝
獺の存在価値が無くなるということだ。
「我々は、牝獺に二つの選択肢を与える。
 通訳を通して、選ばせるんだ。
 獺槍で突かれて死ぬか、通訳に教えられた通りの公用語で、
 シエドラで生かされたことへの感謝の言葉を口にするか、だ。
 ほとんど全ての牝獺が、拙い発音で感謝の言葉を述べる。
 彼女たちの心臓には、特製の毒針が打たれる。
 この針は痛みを感じないように細く、丹念に磨いてある。
 せめてもの慈悲というやつだな。
 そして、針を打たれた獺は安らかな死を迎える。
 これが、シエドラの牝獺の最期だ─」

 ルルカがその言葉を理解していると思っていないだけに、男の説明は躊躇いが無かった。そして、
ルルカにとってこれ以上残酷な宣告はない。
 体がガタガタと震える。ルルカの体を造り替えてしまったあの恐ろしい儀式のときに感じた以上の
恐怖がルルカを襲う。おそらく、あの儀式のときに正気を保てたのは、シエドラに捕らえられた獺は
殺されないという約束があったからだ。
 ついにルルカは、自分がどうやって死ぬのかを聞かされてしまった。それもあまりにも惨めな姿で
死ぬのだ。牝獺が死の間際に感謝の言葉を口にするなど、ルルカには信じられなかった。あちこちに
金属の環を着けられた裸の体、動けない体を仰向けにして、淫らな焼き印の痕や限界まで使い込まれ
た性器を晒しながら、何を感謝するというのか。



618:かわうそルルカ 6-7/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:19:40.77 1lHNb4lp
「あの牝獺だって─」
 狼族の男に指を差され、ルルカの心臓は飛び出しそうになった。部屋の全員が振り返り、ルルカを
見た。思わず彼らの方へ向き直ってしまったルルカは後悔した。
 言葉が分からない振りをしなければ─。
 ルルカは必死で涙をこらえ、何も分からないといった表情を作ろうとした。それがどんなに悲しい
行為か、男たちには想像も付かないのだろう。無情な会話が続けられる。

「広場の牝獺は寿命が著しく短い。
 あの牝も、あと半年もすればこれと同じリングを体にぶら下げているだろう。
 そのときにまた来て試してみるといい。
 今日とは違った膣の感触が楽しめる」

(あと半年─!?)

「そうなったらすぐ死ぬんだろう?」
「硬直が起こるまではまず死なない。
 リングを着けた牝獺が行為中に死んでも罪にはならない。
 ただし、速やかに届け出てもらえれば、だ」
「リングを着けてから、どのくらい生きてるんだ?」

(やめて、やめて─)

「普通なら、半年から一年ほど。
 だが、広場の牝なら、二か月も持てばいい方だろう」
「じゃあ、月に一度はシエドラまで来なきゃあな」

(もう許して─)

 狼族の男の言葉は、ルルカの胸の奥に突き刺さった。恐怖で全身を締め付けられるように感じた。
 半年のちには、ルルカは敏感な三か所の肉の突起に冷たい金属の環の重みを感じているはずだ。さ
らに二か月経たないうちに、小さな獺の体は岩のように固くなり、そしてこの世に別れを告げること
となる。それがルルカに突き付けられた現実だ。
 泣き喚きたい気持ちと、会話が聞けることを隠し通さねばと思う気持ちの葛藤に小さく震えるルルカ
に、ウォレンは何もしてやれないようだった。今ならルルカにも分かる。ウォレンはせめて、シエドラ
の牝獺の運命を知らぬままにしておいてやろうとしていたのだ。その気遣いは全て無駄になってしまっ
た。ウォレンはただ、倒れそうになるルルカの背中をそっと支えていた。
 そんな二人を置き去りにして、男たちはミルカを犯し始めた。



619:かわうそルルカ 6-8/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:20:40.74 1lHNb4lp
 自分とそっくりの牝獺が馴鹿族の巨大なペニスを突き立てられる様に、ルルカは時間が巻き戻され
たように感じる。自分と自分を犯す男以外の者の目には、あのときの情景がこんな風に映っていたの
だろうと思う。ただ、ペニスを受け入れるミルカの反応はルルカのものとははっきりと違っていた。
 胸環を掴まれ、宙に浮かされた状態で激しく子宮の奥を突かれるミルカ。ルルカにとって思い出す
のもおぞましい内臓を押し上げるようにした後、間を置いて突き刺さる剛直の衝撃を小さな体に受け
ながら、ミルカは、苦しい呻きの中に明らかに快楽の混ざった声を上げていた。
「これは凄い。国の女たちでは味わえない」
「そんなにいいのか? さっきの牝だって……」
 ミルカを犯す男の漏らした感想に、馴鹿族の男たちはまた興奮を募らせ、広間は荒い吐息と熱気に
包まれる。
 誰かが、ふと思い付いたように青服の狼に尋ねる。
「こんな牝がいったい何頭居るんだ?
 牡を捕まえてきて、もっと殖やせないのか?」
 自分たちの国へ何頭か連れ帰りたい、と彼は言った。それに対し狼族の男は、牝獺はシエドラでし
か飼えない、とウォレンが説明したことをもう一度繰り返した後、少し考えて、こう付け加えた。

「それに、こいつらの子宮は緩み切っている。
 妊娠しても、すぐに流産してしまうだろう─」

 その言葉を耳にした瞬間、ルルカは、公用語でも獺語でもない動物の本能的な叫びを上げていた。
腹部にキリキリと痛みが走った。そこはかつてルルカの母が優しく撫でてくれたところ。子供を育て
るための大事な器官─。実際に傷を付けられたわけではない。ルルカの心を引き裂かれる思いが、
その痛みを感じさせていた。
 子供を産み、育てることは憧れだった。叶わないとしても、街で異種族の子供を見掛ける度に温か
い気持ちになれた。いつか、この生活から解放されるような奇跡があれば─。しかし、そのルルカ
の小さな望みは、とうの昔に断たれていた。そう、あの"断罪の儀式"は牝獺からその能力を奪うため
に行われたのだ。ルルカはもう、母親にはなれないのだ。

 ルルカはウォレンの手を振り切って駆け出そうとしたが、ウォレンが慌てて鎖を引いたため、弾み
で小さな体が振り子のようになって宙を舞った。逃げるどころか、周囲に居た馴鹿族の男たちの目の
前に投げ出されてしまう。驚いた男たちが一斉に駆け寄る。ミルカを犯している男までが、彼女に
ペニスを突き入れたまま、飛んできた。
 床に転がったルルカの目の前に、ミルカの顔があった。
(どうして……)
 苦しそうに喘ぎながら、目を閉じたミルカは恍惚の表情を浮かべていた。
(どうして、そんな顔ができるの?)
 こんなに酷い目に遭っているというのに─。
 自分もあのリングを着けられ加工されれば、ミルカのようになってしまうのか。あの狐族の女性に
蔑まれて当然だと思った。ルルカたちの性器は今や、異種族の男を悦ばせるためだけに付いているの
だから。
 ルルカはまた、『わあっ』と叫んで起き上がろうとした。男たちの手が、暴れるルルカを床に押さ
え付ける。
「いったいどうしたんだ?」
「俺は鎖を引いただけなんだが……、自分がまた犯されると思ったんだろう。
 こいつらには言葉が通じないからな」
 慌てて駆け寄ったウォレンが取り繕う。
「今、黙らせる─」



620:かわうそルルカ 6-9/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:21:40.72 1lHNb4lp
 ルルカはウォレンの言葉に驚いて、目を見開いた。
(黙らせるって?)
 ウォレンの厳しい表情が目の前にあった。
 次の瞬間、右腕に激しい痛みが走る。息が出来なくなるほどの衝撃が襲った。今でもはっきり思い
出せるあの焼き印の痛みよりもずっと強い、身を引き裂くような痛覚。続いて左腕を、同じ痛みが襲
った。肩のあたりから先が痺れて無くなってしまったかのようだ。両腕がまったく動かなくなってい
ることに気付き、ルルカは何が起こったのか、ようやく理解する。
 毒針を打たれた。それも、ウォレンの手で─。
 ウォレンは口で脅していても実際にそれをルルカに対して使うことはない、そういう甘い期待が心
のどこかにあったルルカは、また彼に裏切られたのだと思った。
(酷いよ……)
 ウォレンは、ルルカがそれ以上声を発しないように、口をしっかり掴んでいた。ルルカはまだ動か
せる足と尾をバタバタと振り回して抗議した。
「押さえろ!
「足にも打て、ウォレン!」
 両足と尾にも毒針を打たれたルルカは、男たちの手でぶら下げられた。痺れた手足をだらりと垂ら
して抵抗できないルルカの頬と乳房が、横殴りに打たれた。もうルルカには声を上げる気力も無かっ
た。それでも、騒いだ罰にと男たちはルルカの乳房を何度も執拗に殴った。
 可愛らしい整った形の乳房が激しい痛みと共に無惨に歪む。
 ウォレンだって褒めてくれた、きれいな乳房が─。いつも形が崩れないようにしてきた小さな努
力が無駄になっていく。しかし、それを嘆くのは滑稽なことにも思えた。

 どうせ、あと八か月も生きられないのだから─。



621:かわうそルルカ 6-10/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:22:43.34 1lHNb4lp
 体を動かせない恐怖に、ただ涙を流すことしかできないルルカを見かねて、割って入ったウォレン
が強引に男たちの手から小さな牝獺の体を奪い取った。
「こいつは連れ帰って、俺が仕置きをする」
「手伝おうか? なんなら、すぐにでもリングを……」
「いや、お前は皆の相手を続けてくれ」
 青服の狼にそう告げて、ウォレンは一人、ルルカを宿から連れ出した。

 宿を出たウォレンは市場への道に向かわず、建物の間の細い路地の人気のない場所へ、怯えて嗚咽
を繰り返す牝獺を運んだ。
「ウォレン……」
「声を出すな。その小さな喉にも、毒針を打たなきゃならなくなる」
「……」
 ルルカは仰向けに寝かされる。ウォレンは少し苛立っているのだろうか、ルルカは地面に投げ出さ
れたように感じた。手足の感覚が無くなっており、尾もぴくりとも動かせない。頭と胴だけの惨めな
体にされてしまったような気がした。
 色々な思いが頭の中をぐるぐると巡り、込み上げてきた悔しさに涙がこぼれる。
「どうして教えてくれなかったの?」
「普通の獺は、そのときが来るまで知らないことだ」
「でも……」
 公用語が理解できるルルカには、その理屈は当てはまらない。それは、いずれ誰かの会話から知ら
されるかもしれないことだった。それでもウォレンは、そのことがルルカの耳に入らないよう、注意
してくれていたのだ。その点で彼を責めることは筋が違う。
 ルルカは抗議の矛先を変えた。
「毒針を打つなんて、酷いよ……」
 そう言われて、ウォレンは逆に、ルルカが暴れたことを咎める。
「お前はまだ、事の重大さが分かっていない」
 ウォレンは、これまでただ漠然と大変なことになるとだけ言っていた、ルルカが公用語を話せるこ
とを知られてはいけない理由を語る。牝獺に施される"加工"をルルカが知ってしまった以上、黙って
いる必要はなくなったからだ。
 長いシエドラの歴史の中で、実際にそういう獺が居たかどうかはウォレンは知らない。ただ、取り
決めだけははっきりと記されているのだ。牝獺が公用語を解することが判明した場合、牝獺にはただ
ちに"加工"が施されなければならない。性感帯を刺激し体の自由を奪い、さらに毒針を喉に数回打ち、
声帯を潰してしまわなければならない。
「獺族が我々と対等の能力を持っていてはいけないんだ。
 同情や共感を生めば、シエドラの牝獺を使った制度は成り立たなくなってしまう。
 言葉を話せる獺族の存在は速やかに抹消されねばならない。
 だったら、どうするか……。分かるか?」
 答えることのできないルルカの下半身に、ウォレンの手が伸びた。体を起こせないルルカは、彼の
指先が体の柔らかい部分に触れるのを感じ、怯えた。ウォレンはルルカの尻尾の付け根に指先を当て
ていた。
(そこは─)
「牝獺を意図的に殺すことはシエドラでは許されない。
 しかし、なるべく早く死んでもらいたい。
 そのために、この規則はあえて明文化されていないんだ」
 ルルカはウォレンが馴鹿族の男たちに話した言葉を思い出した。口や肛門を使うことに罰則はない
が、建前上は御法度であるということ。
 ウォレンは、ルルカの肛門までが凌辱の対象となる、と言っているのだ。当然、肛門だけが犯され
るのではないだろう。同時に二つの穴が使われることは容易に想像できた。その恐ろしさも─。
 言葉が使える牝獺は、それが知られたその場で体に金属のリングを嵌められ、穴という穴を犯され、
徹底的に嬲られる。
「半月もしないうちに硬直が始まるだろう。
 声を奪われたお前は、獺語だって話すことはできなくなる。
 声が出せないというのが、どういうことか。
 感謝の言葉を言えない以上、必ず獺槍に突かれて死ぬということだ」
 だから、これからも誰にも気付かれるな、とウォレンは念を押した。今日のような粗相は二度とし
てはならない、と。
 ルルカも心の底から自分のしてしまったことを悔やんだ。そして、ウォレンへの抗議の気持ちが薄
れると、今度はシエドラの牝獺の運命がルルカの胸を押し潰す。



622:かわうそルルカ 6-11/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:23:40.57 1lHNb4lp
「私は本当に……、あと八か月で死ぬの?」
 声が震えた。
「あれは一般論だ。色々な牝獺を見てきた。
 お前はそんなすぐに死にやしない」
「うそ……」
「気休めじゃない。信じろ」
「だったらいつまで生きられるの?」
「……」
「答えられないんじゃないの……」
「ルルカ、俺は─」
 ウォレンはなだめようとするが、ルルカの感情は堰を切ったように溢れ出した。
「もう信じられないよ!
 いつも調子のいいこと言って、私をがっかりさせてばかりで……」
「ルルカ!」
 ウォレンはこの会話を誰かに聞かれることを心配してか、ルルカを制止しようとした。胸環と鎖を
掴まれると、身動きできないルルカの中で、不安と苛立ちとやるせなさが一気に膨らんで、弾けた。

「あなたが、私をこんな体にしたからじゃないの!」

 叫んでしまってから、ルルカは後悔した。自分は、何を言っているんだろう─。
 それは身の程を弁えない言葉だった。罪を背負った獺族に、狼族のウォレンが気遣う道理などそも
そも無いのだ。むしろ、ウォレンの態度はルルカに甘すぎた。
 確かに、ウォレンのペニスで子宮を貫かれたことでルルカは発情を続ける体になった。子供を宿す
ことのできない体になった。ただ、そのことを責めるのは逆恨みに過ぎないと、ルルカにも分かって
いる。
「俺は、シエドラの仕来りに従っただけだ」
 吐き捨てるように言ったウォレンの言葉は、ぞっとするほど冷たく、ルルカの胸に響いた。
「喋るな、ルルカ。何度も言わせるな」
 ウォレンは、歯を剥き出した怒りの形相でルルカの顔を覗き込んで言った。ウォレンがルルカにそ
のような表情を向けたのは初めてのことだった。肉食獣を祖先に持つ者の逆鱗を覗かせたその顔は、
ルルカを竦ませるのに十分だった。
 ウォレンはルルカの両腕を曲げ、鎖を絡めて乳房の左右に固定した。脱力した両足を左右に大きく
開いて仰向けに転がした。これは、性感帯を刺激するリングを体に穿たれたミルカが無意識に取って
いたポーズと同じだ。ウォレンはあえてルルカにその恥ずかしい恰好をさせたのだろう。
「反抗を見せた牝獺には制裁を加えねばならない。
 少しそのままにしていろ。決して、声は出すな」
 そう言い残して、ウォレンは姿を消し、ルルカは人気の無い路地に放置された。

 愛想を尽かされたのだと思った。
 痺れてまったく動かせない裸の体を仰向けにして、ルルカはこれまでにないほど不安に感じた。急
所である腹を無防備にしていることによる生存本能に揺さ振りをかける恐怖と、乳房や性器といった
秘部を晒す恥辱が重なってルルカを責め立てる。
 ウォレンは、彼女に仕置きをすると言っていた。毒針を打たれる以上の何をされるのか。ルルカは
叫びたい気持ちを必死に押えた。



623:かわうそルルカ 6-12/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:24:40.79 1lHNb4lp
 しばらくして、人の気配が近付いてくる。複数の足音と息遣い。ウォレンだけではないようだ。
「おや、これはまた見事な眺めだ」
 聞き覚えのある声に、ルルカはかろうじて動く首から上を起こし、見た。
(ジエル……!?)
 ウォレンが連れてきたのは、クズリ族のジエルだった。
『久し振りだな。えっと、半年前に広場に繋がれたやつか。
 お前のことは覚えているよ。
 "おつとめ"の最中に暴れたんだって?』
 ジエルは、いい体だな、と動けないルルカの体を撫で回して言った。
『そこの狼─、ウォレンの旦那に言われて来たんだ。
 牝獺に立場を改めて教えてやれ、とな』
 ルルカの立場─、それは男たちの性欲処理の道具に他ならない。
 俺は仕事が忙しいんだが、と言いつつ、ジエルは裸のルルカを眺めて舌なめずりをする。クズリ族
は普段、牝獺に近付かないのが規則だった。ジエルは制裁のため、特別にウォレンのお墨付きをもら
ったらしい。
「始めろ」とウォレンが言った。
「犯しながら、獺語で、そいつらの身分について教えてやるんだ」
(ウォレン……)

 ジエルはおもむろに腰布をほどき、性器を露出させる。ニヤリと笑うと、その先の尖った赤いペニ
スを、動けないルルカの鼻先に突き付けた。強い刺激臭が鼻腔を満たし、ルルカはむせ返る。
『クズリ族は性器の周辺に臭腺があるのさ』
 舐めろ、とジエルが強要する。ルルカはおずおずと舌を出し、ジエルのペニスをそっと舐めた。口
の中まで嫌な臭いが広がる。あまりの辛さに涙が滲み出てくる。
『俺たちクズリ族が牝獺を使わないように言われているのは、
 情が移りやすいってこともあるが、
 この臭いが移るのを嫌がる連中が居るからって話だ。
 だが、お仕置きにはもってこいだろ?』
 これをお前の中に突っ込んでやるからな、とジエルは言った。
『そんな……』
『おっと、会話は禁止だぜ。前にも言っただろう。
 お前は俺が言うことに、はい、とだけ答える。いいな?』
『……はい』
 動けないルルカを、ジエルは犯し始めた。先の細い、つるりとした形のクズリのペニスは、特段、
ルルカを苦しめるものではないが、手足の自由が効かないのは、想像以上に恐ろしいことだった。相
手の体に触れることは許されていないとはいえ、手足が動けば、いざというときに抵抗できる。その
心の支えが奪われていた。普段無意識にしているように、地面に足を突っ張り、手の爪を立てて耐え
ることも許されず、ルルカはジエルの腰の動きに翻弄された。
 繋がった部分から、クチュクチュと激しく音がする。
『嫌がって逃げたっていう割には、随分と濡らしてるみたいだな』
『言わないで……』
『お前の体はもう元には戻らないんだ。
 一生、そうやって汁を垂れ流して男を欲しがって生きるんだ。
 分かったか?』
『……はい』
『ほら、濃いやつをたっぷり流し込んでやる。
 これに懲りたら、もう無駄なあがきをするな。
 辛い思いをするだけだ』


624:かわうそルルカ 6-13/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:25:30.56 1lHNb4lp
 クズリ族の交尾は短かった。射精を終えたジエルは、ペニスを引き抜くと、ルルカの体を折り曲げ、
ルルカ自身の股間を眺めさせるのだった。火口のように開いた膣口から、吐き出されたばかりのどろ
りとしたクズリ族の精液が溢れている。クズリ族特融の臭腺の臭いが鼻を刺す。臭いがルルカの体に
擦り込まれていた。クズリ族だけではない。これまでルルカを犯したあらゆる種族の精液やペニスの
臭いが、そこに滲み込んでいる気がした。
(私は……あと半年、こうして過ごすんだ……。
 もっといっぱい犯されて……。
 そして……)
 ウォレンはもっと時間があると言ってくれたが、早いか遅いかだけの違いだ。いずれルルカの体に
冷たいリングが通されることは決まっている。
『反省しているな?』
『……はい』
 ジエルの問いに、ルルカは素直に頷いた。

『次はウォレンの旦那がお前に制裁を加えるってよ』
(えっ……)
 ジエルがルルカから離れると、すかさずウォレンがペニスを鼻先に突き立てた。舌で奉仕をさせら
れるのは、儀式のとき以来、一度も無かったことだ。ウォレンはルルカに屈辱を与えようとしていた。
 ルルカは涙を滲ませながら、仰向けのまま舌でウォレンのものを大きくするよう努める。
 クズリ族に犯されたばかりの性器に、今度は狼族の巨大なペニスが押し込まれた。前の男の精液を
洗い流さずにウォレンがルルカを犯すのは初めてのことだ。それはウォレンの明白な意思表示だ。
ウォレンの体の下で抵抗することもできず、異種族の性器を受け入れている牝の獺が、シエドラの備
品であり、単なる性欲処理器であることを知らしめようとしていた。
(痛い……)
 初めてのときと変わらぬ感覚がルルカを襲う。儀式でウォレンに初めて子宮の入り口を貫かれたと
きの痛みをルルカは思い出した。それは単なる錯覚なのだが、ルルカには現実の痛みと区別が付かな
かった。お腹の中に嫌な感じが広がった。ウォレンとのいつもの交尾では感じたことのないものだ。
「それじゃあ、あっしは仕事があるんで……」
「ああ、手間を取らせたな、ジエル」
 狼族の交尾が長いことを知っているジエルは、来た路を引き戻して行く。
 ウォレンはルルカを羽交い絞めにして、精液を流し込んだ。その脈動を、ルルカはウォレンの怒り
のように感じた。思えば、ルルカは彼に恥をかかせてしまったのだ。
 シエドラ自慢の牝獺を披露する場で、ルルカは思い上がった行動をした。そのことにウォレンは怒
っている。
(ごめんなさい、ごめんなさい……)
 そうなんだ、とルルカは思った。自分は何を勘違いしていたんだろう。これが私とウォレンの本来
の関係なんだ─。
 涙がつっと目尻から流れ落ちた。この後一時間近く、ルルカは狼を体に受け入れたままとなる。そ
れだけならいつもの交尾と変わらない。
 狼の赤く冷たく光る瞳が目の前にあった。ルルカは、彼がしようとしていることが、ただ犯すだけ
に留まらないこと気付いた。



625:かわうそルルカ 6-14/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:26:20.59 1lHNb4lp
 いつもは体を貫かれながら見上げる視線の先には狼族の上半身を包む美しい灰褐色の胸毛があった。
今、ウォレンの顔が見えるのは、彼が背中を強く曲げて、普段と違う姿勢を取っているからだ。
(ウォレン、何をしようというの─?)
 ウォレンは乳房に置いた手にゆっくりと体重をかける。狼族のウォレンにとってはそれほど強い力
を込めているわけでもないのだろうが、圧力に肺が押し潰されそうになる。
「くっ……、はっ……」
 ウォレンが力を緩め、ルルカが苦しそうに息を吸うと、すぐさままた体重がかけられた。そんなこ
とが数度、繰り返される。
 ウォレンはルルカが恐怖に叫び声を上げたりしないことを確かめたようだ。
「よし、どんなに苦しくても声は出すな」
 ウォレンはルルカの体を思うがままにできることを知らしめようというのか、ルルカの下顎を掴み、
口を開けさせる。
(何!?)
 肉食獣の鋭い牙やぎざぎざに尖った裂肉歯の並んだ恐ろしい口が近付いてくる。獺にだって、立派
な牙がある。だが、それを相手に突き立てようものなら、報復が待っていることは明らかだ。ウォレン
の口に牙を当ててはいけない。ルルカは必死になって口を大きく開いた。そこに、大きく裂けた狼の
口が重ねられる。
 熱い舌が、ルルカの口腔に押し込まれ、さらに奥へ進もうとするそれを、ルルカは小さな舌で必死
に遮ろうとした。膣に感じている嫌な感覚が、口中にも広がる。異物の侵略を本能が拒絶していた。
 鼻が摘ままれ、呼吸ができなくなる。ルルカは耐え切れず、喉の奥にウォレンの舌が侵入するのを
許してしまった。
(嫌……、やめてっ)
 ルルカは二つの口を同時に犯されている。ウォレンは勝ち誇ったようにペニスを突き上げ、ルルカ
の口を自在に動く器官で満たした。体の奥に吐き付けられる精液と同様、強制的に流し込まれる大量
の唾液を、ルルカは成すすべもなく受け止めねばならなかった。
 体中がウォレンの体液で満たされる。自由の利かないルルカは、今この瞬間、完全にウォレンの欲
望を受け止めるだけの器だった。
 ルルカが窒息しそうになる寸前で、ウォレンは舌を引き、ひと呼吸つかせると、また舌を押し込ん
だ。二度目は、最初のときよりも長かった。三度目はさらに長く、ルルカは半狂乱になって、いつま
でも続くその繰り返しに体を震わせた。
 体が酸素を求め、心臓がバクバクと動く。全身を激しく血流が巡るのが分かる。鼓動が激しくなる
のと裏腹に、意識は薄れていく─。

「怖いか?」
 ルルカは全身をガタガタと震わせていた。ウォレンの言葉に、潤んだ目で頷く。
「そこまで怖がられるとは思わなかった。
 口を合わせるのは嫌か?」
(えっ?)
 ウォレンの大きな手が、ルルカの頭の後ろに差し込まれた。その優しい手つきに、ルルカは戸惑う。
ウォレンは周囲を見渡し、人の気配がないことを確認して、言った。
「じゃあ、こういうのはどうだ?」
(!?)
 ウォレンは、再び、ルルカの口に自分の口を重ねていた。
 ウォレンの舌が、ルルカの小さな舌を抑え込み、喉を大きく開かせる。頭をぐっと押し付け、首か
ら背中の筋肉を何度か震わせたウォレンの動きと、口の中に広がる酸っぱい香り。ウォレンがルルカ
に何をしようとしているのか、それは彼女の想像の限界を超えていた。
 ウォレンの喉の奥から生暖かいものが吐き出され、ルルカの押し開かれた喉の奥に流れ込んできて、
ようやくルルカは事態を理解した。ウォレンは胃の内容物を、ルルカの口の奥に吐き出していたのだ。
そこまでして、徹底的に獺族の尊厳を貶めようというのか─。
(酷い……ウォレン……。
 でも……あれ?)



626:かわうそルルカ 6-15/15 ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:27:10.71 1lHNb4lp
─美味しい!?

 ウォレンが吐き出したものは、どろどろと溶けかけた細切れの何かの塊で、始めのうちこそ酸っぱ
い感じがしたが、すぐに舌の上でしっとりと甘く感じる不思議な味に変わる。
 これは、もしかして─?
 口を放した狼が、ルルカが目をぱちくりさせながら、口の中のものを飲み込む様子を見守る。
「これは……おさかな……なの?」
「そうだ」
「どうして、私に─?」
「まだ残っている。食べたいか?」
 ルルカは思わず頷いて、おねだりするように口を開いた。我を忘れるほど、魚という食べ物は美味
しかった。父から聞いていた、獺族の主食。
(これが、魚……)
 それにしても、こんなやり方で食べさせてくれるなんて。
 ウォレンは、狼族だけにできる特技だと言った。狼族自身もほとんどの者が知らない、四足の遠い
祖先から受け継いだもの。ルルカに魚を食べさせるには、こうするしかないとウォレンは言う。
「今ここで俺がしたことは、二人の秘密だぞ。
 獺に魚を与えた者はシエドラを追放される。
 あの毒の解毒作用がある成分を、獺族は魚からしか摂ることができない。
 だから、獺に魚を与えてはいけないんだ」

 そのうち、痺れが取れてくるはずだ─。
 ウォレンがルルカの後頭部を撫でながら、そう言ったような気がした。
 お腹の中を優しく叩くようなウォレンの射精はまだ続いていた。その響きが、今は心地よく感じら
れる。うっとりとした気分に包まれ、ルルカは目を閉じる。緊張の解けたルルカを、強い眠気が襲う。
 胸のあたりがじわっと暖かくなった。それは、眠りに落ちるときの生理現象だと、ルルカは思った。



627: ◆q6hKEmO86U
12/07/29 22:28:41.39 1lHNb4lp
以上です。

次回、かわうそルルカの生活 第七話は、サブタイトル『水掻きのついた手』

ルルカの反抗は、シエドラの牝獺全員を巻き込んだ。
激しい後悔の後、与えられた思わぬ安息に、ルルカは小さな希望を見る。
『まずは、ごめんなさいって言おう。
  そして、ありがとう、と─』

みたいな感じでお送りします。お楽しみに。


628:名無しさん@ピンキー
12/07/29 23:42:42.70 RHCthhvF
うお!? 第六話来てる!? 早く読まねば!

629:名無しさん@ピンキー
12/07/31 00:04:15.78 qo2cDRCA
獺族に対するあまりにむごい仕打ちに「このド畜生どもが・・・!」
と思ったのだが、元から畜生たちの世界でしたサーセンw
それにしても毎回毎回、ケモエロなのにシリアスで深い世界観に圧倒されるばかりだ。
まだだ・・・まだ抜いてはいけない・・・!

630:名無しさん@ピンキー
12/07/31 00:46:31.11 zqfwGJ3k
話が動き始めたね
エッチ描写も楽しみなんだけど物語の行く末がちょっと心配
あと世界背景が詳しく書かれるのがすごい好き
チョイ出の種族とかキャラもちゃんと主張してるのがいい



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