【友達≦】幼馴染み萌えスレ21章【<恋人】 at EROPARO
 【友達≦】幼馴染み萌えスレ21章【<恋人】 - 暇つぶし2ch94:すなばのおばけがこいしたひとは1
10/11/30 01:06:24 C8aobGUb
>>13です
規制解除されたので投下します
そんなに長くならない予定です

彼はよく、ぶっきらぼうに「ちょっとは髪切れよ」とわたしに言っていた
わたしの変化を見て、驚くだろうか
あの日、砂場で一人ぼっちだったお化けに一人だけ出来た友達

『おれはおまえのほごしゃだからな』
『しかたねえな』
『メンドイなぁ』

そんな言葉が口癖の、いじわるでぶっきらぼうで、優しい幼馴染
「澄人くん・・・」
彼は、なんと言うだろうか
わたしは長く伸びて、その顔を覆う髪の毛を黒い簡素なヘアピンで留めた
久しぶりに見る自分の顔
「ぅ・・・」
途端に顔が赤くなる
普段素顔を晒さないのは、わたしは酷い人見知りで、赤面症だから
幼馴染の澄人くんにさえ緊張して真っ赤になってしまうというのに、これで一日過ごせるのだろうか
思わず、手がヘアピンに伸びる

でも
「か、変わらなきゃ・・・」
わたしはヘアピンを着けたまま、荷物を手に取った



後ろから視線を感じる
いやまあ確実に見られているんだが
というかこの間もあったなこれ
振り返るとそこには叶理が___居ない
いや居た、電信柱に隠れている(しかし残念ながら肩がはみ出ている)
メンドイ、これはとてもメンドイ
「何やってんだお前」
「っ・・・」
声をかけるとびくりと震える叶理
「ぉおはよよう・・・」
いつもどおりどもった挨拶が聞こえて、電信柱からひょっこりと顔が覗いた
どきり、と胸が高鳴る
男に性を受けたものなら誰もが見とれてしまう愛らしさ
「お前、その前髪・・・」
叶理は、いつもは顔を覆っている髪をピンでまとめていた
「そその・・・澄人くん・・・どう?」
「どうって・・・」
叶理の問いに俺は答えに詰まる
もちろん文句なしに可愛い、だが、幼馴染にそれを言うのはなんだか気恥ずかしさの方が勝ってしまう
「別に・・・いいんじゃないか?」
結局、俺はそんな風にしか答えられなかった


95:すなばのおばけがこいしたひとは2
10/11/30 01:07:01 C8aobGUb
その日、叶理と昼飯を食いに屋上へ向かう途中
「よぉ有村(ありむら)、イメチェン?似合ってるよ」
「・・・・」
有村、というのは叶理の苗字だ
「どうしたの?彼氏できた?」
「・・・・・」
目の前には金髪の男子、綾乃瀬(あやのせ)
名前は知らん
叶理と同じクラスで、女子人気は本校一位のイケメンである
「さっきから喋んないね?具合悪いの?」
そして綾乃瀬は、何故かさっきから俺たちの後についてきて叶理に話しかけ続けている
当の叶理は、俺を盾に綾乃瀬を避けるようにポジショニングしていた
俺を中心にぐるぐると美少女を追うイケメン、追われる美少女
何だこの状況
とにかく叶理は人見知りだ、これ以上は叶理にとってストレス以外のなんでもないだろう
それ以前に、叶理はどう見ても嫌がっている
(仕方ないな・・・)
「叶理、お前今日職員室に用あったろ?」
ここは幼馴染として、助け舟を出してやることにした
昼飯はまぁ、少し遅くなっても仕方がない
「え・・・あ、うんっそうだった」
きっかけを掴めばこっちのものだ
次の瞬間には叶理は走り去っていた、中々の素早さである
運動神経良いんだよな、アイツ
「なぁ」
屋上に向かおうとして呼び止められる
振り向くと、綾乃瀬が俺を見つめていた
この目は苦手だ
何処か、見下したような目
「お前、有村とどういう関係な訳?」
「・・・・幼馴染だ」
「ふぅん」
俺の返事を聞くと、綾乃瀬は興味無さ気にそう言って何処かへ去っていった


96:すなばのおばけがこいしたひとは3
10/11/30 01:10:05 C8aobGUb
屋上に出ると叶理がいた
「ささっきは・・・あありがと」
真っ赤な顔でお礼を言う叶理
「別にいいが・・・綾乃瀬と知り合いなのか?」
「ううん、知らない・・・いつもは喋りかけてこないよ」
となると髪をまとめて美少女化した叶理を狙い始めたってことか
確かに、叶理は男どもからすれば狙い目だろう
男の経験も無ければ、気弱で好きにしやすく、且つ校内一の美少女とも言っていい容姿
しかも今までノーマークだったために邪魔な虫も少ない
(はぁ、まったく男ってやつは・・・)
この間まで陰で貞子貞子と罵っていたと思ったら、急に掌を返す辺りもう何と言っていいのやら
「そっか、まぁイケメンに言い寄られて良かったじゃないか」
モテモテだなあ、良かったなあと茶化しながら、心の奥で思った
コイツはきっとこれから色んな男に言い寄られるんだろう
その中から、好きな男を選んで、見つけて
そうしたら、俺の保護者ゴッコももう終わりだ
俺は、もう叶理の傍にいる必要はなくなる____
「・・・っ」
そう思った時、ちくりと突然胸が痛んだ
苦しくて、辛くて思わず叫びだしそうになったとき

「全然良くないよ」

はっきりと聞こえた、叶理の声
叶理らしくない、きっぱりとした否定の言葉
「えっ・・・?」
俺は思わず間抜けな声を出してしまう
「わたし・・・そんなの嬉しくない」
何故、叶理はそう言ったのだろう
それを問うことは、俺にはできなかった
そして、何故俺は


どうして俺は、その言葉を聞いて安心しているんだ?

今回は以上です
ありがとうございました
チャラ男が出てきましたがNTRは完璧絶対有り得ないと断言しますのでそういう属性持ちの方はすいませんです
ではまた

97:名無しさん@ピンキー
10/11/30 01:36:41 79k04tpe
先の展開を考えながら読むのも楽しみなのに、~~はないって言っちゃうのはどうなんだろう。
まあ、書き手がそれでいいならいいのかもしれないけど。

98:名無しさん@ピンキー
10/11/30 02:00:08 9P2qKwqS
別にいいんじゃない

99:名無しさん@ピンキー
10/11/30 03:12:40 odh9mC/7
完結さえしてくれれば何でもいいよ


100:名無しさん@ピンキー
10/11/30 03:59:06 w7Jj3miH
いいじゃないの。期待

101:名無しさん@ピンキー
10/11/30 10:43:59 Sc53E7+D
書いてないなら書いてないで「NTR展開は反対」的なレスがついてた事が目に浮かぶ

102:名無しさん@ピンキー
10/11/30 17:59:08 3R88wIlI
確かに誰か書いてそう


あっ俺か

103:名無しさん@ピンキー
10/11/30 18:53:43 99DDxSKl
ごめんなさい、私がNTR寸前で主人公による助け入りなどというシチュを所望したばかりに,,,,

104:名無しさん@ピンキー
10/11/30 21:52:50 ukivJdrf
>>94-96
GJ!
続き期待

105:名無しさん@ピンキー
10/12/01 10:16:18 5DJ7qnmM
ぽちゃのオカン気質しっかり者と職業あそびにんなチャラ男幼なじみ



106:名無しさん@ピンキー
10/12/01 10:17:12 5DJ7qnmM
ごめん。ぽちゃスレと誤爆

107:名無しさん@ピンキー
10/12/02 21:52:43 sLTsn+tZ
ぽちゃな馴染

・・ありだな

108:名無しさん@ピンキー
10/12/02 22:02:36 bXwJU5CC
よくある窓を伝っての家渡りが窓のサッシにむっちりお尻引っ掛けて色っぽいことになるんですねわかります

109:名無しさん@ピンキー
10/12/02 22:30:31 L/b6DlAN
肉付きが良くて太ってるんじゃないかって心配してコンプレックス程度なら
むしろポチャな幼馴染の女の子歓迎
デブとかあまりに肉付き良すぎるのは無理だがw

110:名無しさん@ピンキー
10/12/02 22:38:39 SZiLU4wU
がおー、食べちゃうぞー

111:名無しさん@ピンキー
10/12/02 23:10:41 0mOdao+8
胸とおしりが大きいのを太っていると思って異常に気にしていて必死に痩せようと思っている女の子

だがしかし実際はそのセクシーな体を狙う野獣ども(学校の男子生徒)が大漁にいて
男の幼なじみが日頃陰ながら成敗して回っているという…

112:名無しさん@ピンキー
10/12/03 00:49:07 47R8ByFf
アマガミのりほこか

113:名無しさん@ピンキー
10/12/03 01:21:20 S8MRRlmO
幼馴染男でさえも幼馴染女の前髪を取っ払った姿を一度も見たことがなくて
普段は意識してないのにふと風で前髪がなびいてフォーリンラブという展開を思いついた

114:名無しさん@ピンキー
10/12/03 17:24:45 9Eio5N8S
何の気なしに前髪あげた姿を見た幼馴染男が妙に自分を意識していて
それで虫の居所が悪くなる幼馴染女というのはどうだろうか

115:名無しさん@ピンキー
10/12/04 10:01:25 3e/6EqOL
もう男が毎日女の髪留めになればいいよ

116:名無しさん@ピンキー
10/12/04 19:29:11 EOwKMkNZ
女が美容室嫌いで(髪触られるのが嫌とか?)
親以外で唯一それを許しているのが男の幼なじみ

で、もっときれいに切ってあげられるようになりたいと美容師専門学校に行きたいと言い出したら
男が他の女の子の髪を切るのは嫌だとわがままを言い…

117:名無しさん@ピンキー
10/12/04 20:25:45 3e/6EqOL
>>116
きゅんときた
誰か書いてください><

118:名無しさん@ピンキー
10/12/05 01:21:32 R6EOSSbl
URLリンク(sukima.vip2ch.com)
URLリンク(sukima.vip2ch.com)

119:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:33:47 0b6R5TCS
こんばんは。三週間ぶりです。
『In vino veritas.』第四話を投下します。
今回はちゃんとエロありです。

120:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:34:31 0b6R5TCS
 
 部屋に帰り着くと、いつものように彼女が出迎えてくれる。
「おかえりなさい」
 ただいまと返して、俺は自室に戻る。荷物を置いて、洗面所で手洗いうがいをして、リビ
ングに入ると華乃がテーブルに料理を並べていた。ご飯、味噌汁、豚の味噌漬、グリーン
サラダにマッシュポテト。出来たての温かい匂いが鼻腔をくすぐった。
 華乃とともに手を合わせて箸を取る。いただきますと言う習慣は俺にはなかったのだが、
華乃と暮らすようになってから、きちんと言うようになった。華乃はおそらく食べ物に、俺は
作り手に対する礼として。
 かつお節で出汁を取った味噌汁は、冬の外気で冷え込んだ体を内側から温めてくれる。
連日厳しい寒さが続くので、本当に生き返る瞬間だ。
「じゃがいも入れたんだけど、くずれてない?」
「ん、大丈夫。いつもどおりおいしい」
「よかった。今日は余りもので作ったから、あまりバランスのいいメニューじゃないと思った
んだけど」
 たぶんじゃがいもが余ってたのだろう。肉じゃがとかカレーの方が消費しやすいんじゃ
ないかと思うが、料理のできない俺にはわからない工夫があるのだろうか。まあついこの
あいだカレーは作ったばかりだから。
「もう12月だね」
「ん? ああ、そうだな」
 味噌漬を箸でうまく切りながら、華乃が言った。特に思い入れはないので適当に相槌を
返すと、
「……来年も同じようにいられるかな?」
 そんな意味深なことをつぶやいた。
 どう返したものか咄嗟に判断がつかず、俺は黙り込んでしまう。
 華乃は返事を期待していたわけでもないのか、黙々と食事を続ける。
 やがて、ごちそうさま、おそまつさま、と二人して食事を終えると、華乃はなんでもなかった
かのように食器を片付け始めた。俺も一緒になって手伝うが、特にこれといった会話が交わ
されることはなかった。
 俺と華乃が順番に風呂に入り終えると、時刻は九時過ぎだった。俺は胸の鼓動が激しく
なるのをうまく抑えられない。それは僅かながら期待というのもあったが、しかし今はそれ
以上に気まずさが強かった。
 別にさっきのやり取りが原因じゃない。ここ最近の互いの関係がその気まずさを生んで
いた。
「おやすみなさい」
 お風呂上がりの甘い匂いを残して、華乃は自室へと戻っていく。見慣れたパジャマ姿は
俺の情欲を掻き立てるには十分すぎるものだったが、俺はその気持ちを抑え込んだ。
 ため息をついて俺も自室へと引き上げる。ドイツ語の課題があったのでそれを済ませて
しまおう。期限は来週だが、早めに終わらせた方が楽だ。
 とはいえ全然集中できる気がしない。
 隣の部屋にいる幼馴染みのことがどうしても気にかかる。いや、正確には今の俺たちの
関係が気になる。
 今日も、何もなかった。
 もう一度、ため息をつく。
 俺は一ヶ月近く、彼女を抱いていない。
 

121:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:35:35 0b6R5TCS
 
      ◇   ◇   ◇



 最後に彼女を抱いたのは先月のことだった。たしか、一緒に酒を飲む前日だったはず。
 関係を持って以来、俺たちは大体週に二、三度、ときには毎日肌を合わせていた。生理
周期の関係で一週間ほど間を開けたことはあったが、それ以外は結構なペースで回数を
重ねていた。
 しかし一ヶ月前を境に、その時間が消えた。
 特に関係を解消した覚えはない。
 何が原因なのか、俺にはわからなかった。華乃が俺を、華乃が言うところのパートナー
と認めなくなったのかもしれないし、あるいは他に理由があるのかもしれない。
 別に関係が解消されたところで、要は元に戻るだけだ。何も問題はない。―そう思え
たら楽だっただろう。しかし俺はひどく焦りを覚えていた。
 華乃が俺を必要としなくなったということは、つまり「練習」の必要がなくなったという
ことではないのか。
 この関係を始める際に華乃は言った。「男の人と付き合うための練習」と。
 それがなくなったということはつまり。
 思い過ごしかもしれない。ただ気が向かないだけなのかもしれない。しかし不安は拭え
ない。
 直接訊けば答えてくれるだろうか。だがそれをする勇気はなかなか起こせなかった。
薮蛇になったら、という思いが働いて、動けなかった。
 そうするうち冬になり、今年も残すところ半月ほどになった。
 クリスマス、正月とこれからイベントが目白押しだ。そのイベントを華乃は誰と過ごすの
だろう。一ヶ月前まではなんとなく一緒に過ごすことになるんだろうな、と思っていたが、
こうなるとわからない。
 去年のクリスマスは、華乃が俺の部屋に押しかけてきて、自作のケーキを振舞って
くれた。
 それを食べながら一晩中ゲームをするという、実に色気のない夜を過ごした。
 そんな気安い間柄でも俺は嬉しかったのに。
 一度関係を持ってしまうと、もうあの頃には戻れなかった。
 

122:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:36:30 0b6R5TCS
 
 それからさらに四日後の朝。
「ごめん、涼二! 今日ちょっと帰り遅くなる」
 華乃の言葉に俺はどきりとした。まさか、
「友達と飲みに行くの。忘年会というか、そんな感じの」
「……酔っ払うなよ」
 内心ほっとしつつ返すと、華乃はにっこり笑った。
「大丈夫。女の子ばっかりだし、そんなに飲まないから」
「女ばかりで帰り大丈夫か?」
「あはは、平気だよ。場所は駅に近いし、遅くても日をまたぐことはないから」
「呼べば迎えに行くぞ」
「え、本当?」
 華乃の表情がぱっと明るくなる。反応を見るに、友達同士で飲むのは本当のようだ。
華乃のことを疑うようで、そういうことを気にしてしまう自分が実に情けないと思った。大体、
華乃が誰と会おうと、俺に何かを言う権利なんてないのに。
 そんな俺の心情など気づいていないようで、華乃は笑顔でうなずいた。
「じゃあ、お願いしようかな。あ……涼二の夕食どうしよう」
「適当に腹に入れるから心配するな。今日くらい休め」
「ごめんね」
「いつも作ってもらってるんだ。謝ることなんか少しもない。で、どこに迎えに行けばいい?」
「えっと……」
 聞くとそこは大学近くの学生通りにあり、俺もよく友達と飲みに行く店だった。了解と答え
ると、華乃は行ってきますと元気に出かけていった。
 今日の講義は午後の二つだけだ。華乃の用意してくれた朝食を食べながら、俺はぼん
やりとテレビを眺めた。
 星座占いの運勢は最下位だった。
 

123:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:37:39 0b6R5TCS
 
 二つ目の講義を終えたとき、時刻は四時過ぎだった。当初は家に帰るつもりだったが、
課題のレポートを休みに入る前までに提出しなくてはならなかったので、普段は入ることも
ない図書館へと向かった。
 中は盛況だった。勉強机は満席で、仕方なく資料を探しながら空くのを待った。二十分
ほどしてようやく隅の席が空き、俺は静かに荷物を置いた。
 しばらくレジュメとノート、資料本とにらめっこをしつつ、適当にまとめていく。しかしニーチェ
やハイデガーにいきなり取り掛かってもまるでわからない。もっと簡単にまとめている本は
ないものだろうか。たぶん講義をしっかり聴いていれば、一番理解が深まったのだろうと
思う。二時間で一つの難解な思想を解説しようというのだから。先生方は偉大だ。偉大
すぎて眠くなる。しかし今は眠るわけにはいかない。
 こんがらがった頭を整理するのにしばらく無駄な時間をかけて、なんとか要点をまとめ
終えたとき、もう時刻は七時近かった。仕上げは帰ってからパソコンでしよう。
 外に出るとすっかり空は光を失っていた。夜風がコートを巻き上げるように凪いでいく。
思わず体が震えた。早く帰りたい。
 と、そこで思い出す。華乃を迎えに行かなければならない。華乃が言っていた店はこの
近くにある。このまま帰っても二度手間なので、どこかで食事でもして時間をつぶした
方がいい。
 学生通りに入ると、人の波が激しくなった。歩けないほどではないが、車が通れない
くらいにはにぎわっている。店々の明るい光が闇をかき消すように通りを照らしている。
無断駐輪の自転車群が幅を取って、人を追い越す際にひどく邪魔くさい。
 通りを半分ほど過ぎたところに、件の店があった。春先にできたばかりの店で、派手な
装飾のないシンプルな外観は一見飲み屋には見えないが、豊富なメニューと入りやすい
雰囲気で人気が高い。実際今も入ろうとする一団が見えた。華乃の姿は見当たらない。
既に中にいるのだろうか。
 俺は向かいの小さな料理屋に入った。半分は飲み屋のような店だが、正面にできた
新店舗のせいで、夜は客足が遠のいているらしい。少しは売上に貢献してやろう。
 一番奥の席に座って、メニューを開く。定食でもよかったのだが、時間はまだまだある。
幸い持ち合わせがあるので、単品をいくつか頼むことにした。ついでに酒も一杯。迎えに
行くのに酒を飲むのもどうかと思ったが、まあビールくらいなら。
 待つ間、俺は華乃のことを考える。
 華乃は俺のことをどう思っているのか。これまでに何度も自問し、しかし自答できない
問いだった。
 俺があいつのことを好きだというのは間違いない。いまやこの想いは確かな形となって
俺の中に息づいている。
 だがあいつは? 少しは何か特別な気持ちを抱いてくれているだろうか。それとも特別
じゃないから、夜をともに過ごさなくなったのか。
 俺はどうすればいいのだろう。
 ……いや。そもそも俺は、何かやってきただろうか。
 ただそばにいるだけで、華乃にはひたすら世話になりっぱなしで、俺が華乃にしてやった
ことなどほとんど何もない。華乃はボディガードと言ったが、そんな大層な役を務めた実感は
まったくなかった。
 それは、夜の時間も同じだ。
 振り返ってみて初めて気づいた。何度も夜をともにしながら、俺の方から華乃を誘った
ことが一度もなかったことに。
 いつも華乃の方から誘ってきて、俺は流されるだけだった。いや、流されると言うのも
違う気がする。俺は華乃の行動に甘えていなかったか。
 「華乃がそれを望むから」という理由付けに甘えて、俺は何もしてこなかった。
 想いを告げるわけでもなく、華乃にもたれかかっている。そんな俺をあいつはどう見て
いたのだろう。
 料理が運ばれてきた。唐揚げ、チンジャオロースー、シーザーサラダにライスとオニオン
スープをつけて、中ジョッキでビールが一杯。いざ料理を目の前にすると、空腹を強く感じ
られた。さっきまで頭脳労働をしていたせいだろうか。胃袋が少し締め付けられるように
苦しかった。
 とりあえず、食欲を満たすのが先だ。俺は箸を取り、香ばしい匂いを感じ取りながら皿を
手元に寄せた。
 唐揚げとビールの組み合わせは、うまかった。
 

124:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:39:05 0b6R5TCS
 
 注文した料理はすぐに食べ終わった。
 まだ七時半くらいだ。華乃からいつ電話がかかってくるかわからないが、九時前という
ことはないだろう。遅くなると言ったのだから、おそらく十時以降になるはずだ。
 俺は少し迷った。また追加で何か注文するか、それともここを出てネットカフェにでも
入って時間をつぶすか。
 しかしこの店であと三時間も過ごすとなると、暇で仕方がない。酒も頼めないし、他の
ところで待った方が得策だろう。俺はもう一度時刻を確認しようと、入り口近くの時計に
目をやった。
 そのとき、入り口の扉が開いた。
 グループ客が入ってきた。同じ大学生くらいの一団で、女ばかりだった。
 その市五人ほどの一団の中に見知った顔があることに気づいた。
 華乃だ。
 幼馴染みは楽しそうに談笑しながら、店員に誘導されて真ん中あたりの大きなテーブル
席に座る。こちらに背中を向けていて、俺の存在には気づいていないようだ。
 俺は華乃の登場に戸惑っていたが、少し考えればそういうこともあるのだろう。予約を
取り忘れたか何かで、店に入れなかったのだ。それで急遽向かいの店に入ることにした
のかもしれない。
 華乃の後ろ姿が見える。セミロングの黒髪がふわふわ揺れている。
 俺は座り直して、近くの店員に声をかけた。
「フライドポテトと、生一つ」
 このままここで待っていよう。



 何を話しているかはわからなかった。
 周りの客が増えてきて、喧騒が一段と増したためだ。夜は入らないと思っていたが、そう
でもないのだろうか。ひょっとしたら向かいの店からあぶれた客が、こっちに流れてきている
のかもしれない。
 新しく持ってこられた小さいグラスに、ビール瓶を傾ける。黄金色の液体が微かにはじ
ける音を立てながら、グラスを満たしていく。ポップコーンが膨らむように、真っ白な泡が
湧き立ったが、長くは続かずに徐々にしぼんでいった。
 グラスに軽く口付けながら、俺は斜め向かいに視線を送る。
 そこでは女子の一団がかしましく酒を飲んでいた。ぱっと見たところではビールやらカク
テルばかりだ。カクテルも意外とアルコール度数が高かったりするので、飲みすぎには
注意してほしい。
 華乃のグラスはあまり動かない。箸はそれなりに動いているので、たぶん意識して抑え
ているのだろう。少しだけほっとした。この間みたいにテンションが変な具合に上がったら、
連れて帰るのに苦労しそうだ。
 周りに妙な客はいない。席は埋まっているが、みなそれぞれに食事や酒を楽しんでいる。
変な男に引っかかることもなさそうだ。俺はほっとして、同時にため息をついた。まったく、
告白する勇気もないくせに、独占欲だけは強い。
 また客が入ってきた。男が四人。テーブル席はもう残っていないようだが、座れるのか。
店員が困ったように席を見回している。
「こっちこっちー」
 不意に声が響いた。見ると華乃と同じ席の女子が手を上げて男たちに呼びかけている。
 おい。ちょっと待て。
 男たちは呼ばれた方向に目をやり、笑顔を見せた。俺はその顔に不安を覚える。
 当然のように相席になって、大きなテーブル席が埋まる。五人だと少し大きく思えたが、
九人となると少々狭い。
 華乃が隣の友人に話し掛けている。その横顔には戸惑いの色があった。
「聞いてないんだけど!」
 はっきり声が聞こえてきた。慣れ親しんだ声には珍しく苛立ちが混じっている。
 友人が何かを言った。華乃はそれに対して顔をしかめた。華乃は女同士で飲むと言って
いたが、たぶん知らされてなかったのだろう。彼女が嘘をついたとは思えなかった、今の
反応を見るに。
 俺はどうするべきか迷っていた。このまま華乃のところに行って、連れ出してしまおうか。
しかしいきなり介入して大丈夫だろうか。華乃にも華乃の付き合いがあるわけで、迷惑を
かけるわけにもいかない。

125:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:40:05 0b6R5TCS
 とりあえずは様子見だ。俺はまたビールを傾ける。
 苦味が胸を熱くする。高揚しているわけではない。不安な気持ちが渦巻いて苦しい。
 対面に座った男が華乃に話し掛けている。何を話しているのだろうか。華乃が首を振った。
男はそれを見て嬉しげに笑ったが、どう見ても下心のあるものにしか見えなかった。
 背中しか見えない席位置は、気づかれないでいるには最適の場所だ。しかし今はそれが
仇になっていた。華乃の表情が見えない。時折横顔が見えるものの、極端に大きく動かない
ために、どういう状態かはっきりとは窺えなかった。
 目線を自分のテーブル上に戻す。あまりじろじろ見ていると、向こうに気づかれる。グラスを
口元に運びながら、ポテトを睨みつける。自分の不機嫌さをぶつけるように、フォークでひと
まとめに突き刺した。トマトケチャップを擦るように適当につけて一気に口に入れる。あまり
苛立ちはまぎれない。
 斜め向かいのテーブル席は、楽しげな雰囲気で程よく盛り上がっていた。華乃も硬さが
取れたのか、肩を震わせていた。笑っているのだろう。手元を見ると透明なグラスにこれ
また透明な飲み物が注がれていた。日本酒か、はたまた焼酎か。
 嫉妬心が沸き起こる。同時に自己嫌悪も生じる。華乃は悪くない。あいつは単に友人と
酒を飲んでいるだけで、何も悪くない。男たちも悪くない。彼らも誘われてきただけかも
しれないし、こういう場なら多少の助平心も仕方がないだろう。こんなことで腹を立てても
何にもならない。
 だが、もちろんそんな理性的な余裕は持てなかった。今すぐあそこに行って連れ出したい。
 しかし俺にそんな権利があるのか。俺は華乃の幼馴染みで、一緒に住んでいて。
 だけど、恋人じゃないんだ。
 体だけのつながりにずっとむなしさを覚えていた。
 今は、その体のつながりさえ途絶えている。
 華乃は俺を信頼していると言ってくれたが、その言葉にどれほどの意味があるだろう。
 一番背の高いのっぽな男が華乃の隣に席を移した。華乃は椅子をずらしてあまりくっつか
ないようにしている。のっぽは気にした風もなく、メニューを開いて華乃に注文を聞いている。
肩が触れ合うほど近い。
 気づいたらビールを飲み干していた。顔が少し熱い。駄目だ、精神状態が不安定なせいか
いつものペースを保てないでいる。
 俺は席を立ってトイレに入った。男性用のトイレは小と大の場所がそれぞれ一つずつ
備え付けられていて、俺は個室に閉じこもった。尿意だけなので別にその必要はなかった
のだが、気持ちを落ち着かせるために一人きりになりたかった。
 用を足し終えて身なりを整えると、多少一息つけた。喧騒の届かない狭い空間で、宙に
向かって大きく息を吐く。大丈夫。酔いはまだそこまでひどくない。あとは水でも飲んで
いよう。携帯で時間を確認すると、九時前だった。
 そのときドアが開く音がした。誰かが入ってきたようだ。一瞬外の騒がしい音が耳に
入り、ドアが閉まる音とともに遮断された。
 二人組のようだった。静かな室内で、二人の声がやけに大きく響く。
「飲みすぎてない?」
「俺は大丈夫だよ。それよりマッキーがさ」
「あいついつも飲ませすぎるもん。自分はあんまり飲まないくせに」
 俺はなんとなく外に出るタイミングを逃した。黙って二人の会話を聞いていた。
「マッキー絶対あの子狙ってるって。目がさ、いやらしい感じ」
「いや、普通にかわいいと思うし。ぼくもちょっといいなーって思うから。小林さんだっけ? 
なんかちょっと硬そうな感じだったけど」
 思わず顔を上げた。
「慣れてないんだろ。合コン初参加って城戸ちゃん言ってたし」
「焼酎に抵抗ない女子って珍しい気がする。お酒強いのかな?」
「いや、もう結構きてる気がするぞ。城戸ちゃんは煽るし、マッキーのせいでペース速いし」
 ……それは、かなりまずいんじゃないか?
 俺は、さっきまでのとは別の不安を覚えた。華乃は嫌なことは嫌だとはっきり断る性格
だが、酒が絡むと人は正常な判断を下すことが難しくなる。ましてや大勢で飲むと、その
雰囲気に流されてもおかしくない。
「あんまり酔わせると後が怖いと思うよ」
「酔っ払いの扱いって難しいんだよなー。俺知らないから」
 フォローする気はないらしい。俺は会話を聞きながら、次第に決心していた。
 

126:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:41:38 0b6R5TCS
 
 二人組が出てから少し遅れて、俺は席に戻った。
 テーブルには空のビール瓶と皿の上のわずかなポテトのみ。俺はポテトの残りを次々
と口に入れると、一気に咀嚼して嚥下した。
 片付け終わったところで荷物をまとめる。上着を着直し、バッグを肩にかけて椅子を
戻した。
 そして、斜め向かいのテーブル席にまっすぐ足を向けた。
 後ろから見る華乃の様子はおとなしいものだった。しかし隣の男がしきりにべたべた
しているにもかかわらず、反応しないところを見るに、かなり酔っているのだろうと思わ
れる。俺がたまたまこの店に入らなかったら、お持ち帰りされていたにちがいない。
 ぐっと歯噛みする。あごに力が入る。
 怒りを抑えながら、華乃の真後ろに立った。
 しばらく声をかけずにじっとその黒髪を見つめた。いつもながら綺麗な質感で、つい見
惚れてしまうが、今はそんな場合ではない。
 隣の男がふと俺の存在に気づき、不審そうな目を向けてきた。右手を華乃の背中に
回して、こっそり髪先を撫でている。さっきからがんがん飲ませているこいつが、たぶん
『マッキー』だ。
 俺はとりあえず、そいつの手をつかんで離させた。
 急な俺の行為に目を剥いて、そいつは俺をはっきりと凝視した。
「誰?」
 俺は答えなかった。ただじっと男を見据える。てめえこそ誰だよ。その指折るぞ。
 不穏な空気を感じ取ったのか、周りが一斉にこちらに注目した。その中で華乃だけ
反応が鈍い。俺は華乃の肩に手を置き、呼びかけた。
「華乃」
 俺の声を聞くや、幼馴染みはぱっと振り向いた。
「あ、涼二!」
 華乃の顔は特にいつもと変わらない様子だったが、俺の姿を見ると嬉しそうな笑顔に
なった。
 俺は小さく笑いかける。
「連絡寄越さないから心配したんだぞ。言ってた店と違うし、なんか男も混じってるし」
 牽制するように大声で言うと、左隣にいた友人が「やばっ」と声を洩らした。
 まったく。
「ほら、帰るぞ。お前ちょっと飲みすぎだ」
「ちょ、ちょっと待て」
 マッキーが慌てて立ち上がる。俺は華乃を立たせながら、静かな声で聞き返した。
「何ですか?」
「急にやってきてなんなんだよ。カノちゃんは俺らと飲んでるんだけど」
「こいつ、あんまり酒強くないんですよ。このままだと心配なんで連れて帰ります」
 慇懃無礼に言葉を返すと、男は声を荒げた。
「待てよ! だいたいお前誰だ? カノちゃんとどういう関係だよ?」
 自分の目が細まるのを感じた。
「こいつの彼氏だよ」
 もう言い切ってしまうぞ。華乃がどう思おうと知るか。
「昔からの幼馴染みで、今は同棲してる。なんの手違いがあったか知らないけど、人の
女にちょっかい出すのやめてくれないか」
 男は明らかに鼻白んだ。
「そういうわけで連れて帰るんで。お金はここに置いていくから。帰るぞ、華乃」
 一息に言うと、俺はテーブル上に一万円札を置いて、それから華乃の手を軽く引いた。

127:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:43:40 0b6R5TCS
 と、
「!?」
 そのとき、急に華乃が抱きついてきた。
「おい、華乃!?」
 華乃は返事をしない。
 ただ黙って俺の肩に顔を押し付けている。俺は予想外な華乃の行動に、何度もまばたき
した。
 やがて、囁くように問い掛けた。
「今の言葉……どういう意味?」
 華乃の表情は窺えない。
 俺はどう答えたものか困り果てた。てっきり酔っているからスルーしてくれると思って
いたのだが。
 しかしごまかすわけにはいかない。男たちに啖呵を切った以上、押し通す必要がある。
そのことを華乃が認識してくれているかどうか。
 ただ、そういうこととは別に、もうそのまま想いを吐露していいんじゃないかとも思った。
「そのままの意味だよ。俺はお前の彼氏だって」
 頭を振られた。
「そんなのうそ。涼二はずっと私の幼馴染みじゃない。ただの、幼馴染みじゃない」
「幼馴染みだよ。幼馴染みで、恋人だ」
「……私でいいの?」
「……え?」
 どういう意味か、わからなかった。
 華乃はかまわず続ける。
「あなたを好きになっていいの? もう悩まなくていいの? ごまかす必要はないの?」
「華乃……?」
「ずっと好きだったの。でも言い出せなかった。あなたはいつも遠慮してたから。関係を
持ってもあなたは一歩引いていたから。言えなかった。あなたを憎らしくも思った。でも
そんな風に思うのはお門違いだから。私がはっきり言えないのが悪いから。言えない
自分が情けなかった」
 華乃は周りが見えていないのか、少しも声を抑えない。酔っているせいだろう。感情が
オープンになっている。
 だが俺もそんなことは気にしていなかった。
 酔っ払いのたわごととは思えなかった。その言葉が本当だとしたら、俺は今までこいつ
の何を見ていたのだろう。
 華乃の体はひどく小さく、不安げに震えていた。
 まったく、馬鹿だな、俺は。
 そっと、背中を撫でてやった。
「俺も好きだよ。ずっと好きだった」
「本当に?」
「好きじゃなかったら、あんな関係持つかよ」
 酒の過ちから始まった奇妙な関係だったけど。それが良かったのか悪かったのか、今
でも判断は着かないけど。
 でもこうしてこいつを抱きしめていられるのも、酒のおかげだというのなら、少しは感謝
してもいいかもしれない。
「ごめんなさい。私が馬鹿な提案をしたから」
「俺も悪かった。最初からきちんと言っておくべきだったんだ」
 華乃がゆっくりと顔を上げた。
 その目は微かに潤んでいて、でもはっきりと笑っていた。
「……あー」
 そのとき横から呆れたような声が割り込んできた。見ると、華乃の左隣にいた女が席を
立ち、こちらを見やっていた。腕組みをして、笑みを浮かべている。
「華乃、もう帰る?」
「あ……うん」
「そ。悪かったね。騙すような感じになって」
「ううん、もういいの」
 友人はうなずいた。そして、
「オッケー。幸せそうでなによりだ。じゃあ……さっさと帰れこの裏切り者ー!」
 やけに悲しく聞こえる叫びが、店内に響いた。

 あとで聞いたところ、最近彼氏と別れたばかりだったそうだ。

128:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:44:46 0b6R5TCS
 

 師走の夜風は冷たかった。
 しかしつないだ右手から伝わる華乃のぬくもりのおかげで、少しも寒くなかった。
 華乃は思ったより酔ってはいないらしく、しっかり歩調を合わせて歩いている。
 夜道を歩きながら、ただ互いの体温を感じ取り、その熱と感触に気持ちがどんどん
通じ合うような感覚さえ覚えた。
「なんだか馬鹿みたいだね」
「……何が?」
「今日の私たち」
 華乃はどこか嬉しそうに喋る。
「お酒のせいだよ、たぶん。酔いが回って浮かれてるの」
「かもな」
 見上げる星は、暗い暗い空の向こうではるかに遠い。
 そのはずなのに、俺はそれを簡単につかめそうな気がした。酒のせいではない。隣に
華乃がいることが、俺の気持ちを高揚させていた。
 どれほど酒を浴びようと、こんな気持ちにはなれない。
 あとから思い返したらきっと馬鹿みたいだと思うだろう。でも今は、この高揚感にただ
ただ浸っていたかった。
 ふと、気になった。
「なあ」
「ん?」
「華乃が前言ってた好きな奴って、俺のことだよな?」
 華乃はきょとんとなった。
 それからぷっと吹き出すと、盛大に笑い出した。
「な、なんだよ」
「ううん、すっごく涼二らしいって思っただけ」
 このタイミングで訊く辺りが特に、と華乃は一人ごちる。
「……なんか気になったんだよ」
「さっきはすごくかっこよかったのに」
「いやあれはその場の勢いみたいなもので」
 また華乃は笑う。
「私はずっとあなただけを見ていたよ」
 どきりとした。
「こんな風に」華乃はつないだ手をそっと持ち上げる。「一緒に帰ってたあの頃から、ずっと」
 暗がりの中を、ともに家まで歩いた小さい頃。
 その記憶は俺にとって大切な思い出で、華乃も同じように大切に胸にしまっていたの
だろうか。
 嬉しかった。
 本当に嬉しくて、胸が締め付けられた。葛藤していたときの苦しさにも似た、しかし少しも
苦ではない感覚だった。
 ごまかすように応える。
「俺も、ずっと好きだったよ」
「……うん」
「確信したのは最近のことだけど、でもずっと見続けてきたから。そばにずっといたいと
思ってたから」
 形だけじゃなく、丸ごとそばにいたかったから。
 華乃の手に力がこもった。
「いるよ。ここに」
「……」
「たとえこの手を離しても、いなくならないよ。それはあなたも同じでしょ?」
「……今は離したくないな」
 甘えん坊だね、と笑う。
「いいよ。私はあなたの専属のお手伝いさんだからね」
「改めてメイド服を要求する」
「……そのうちねっ」
 華乃とそうやって笑い合えることが、幸せだった。
 

129:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:46:03 0b6R5TCS
 
 部屋に入った瞬間、俺は華乃の腕を引き寄せた。
「えっ!?」
 優しさより欲が強かった。この一ヶ月間、若いたぎりを少しも解消していない。
 ぎゅっと抱きしめると、華乃が掠れたような息を吐き出した。
「りょ、涼二?」
「外じゃこんなことできないだろ」
 絹糸のような髪を撫で上げる。さらさらとした質感が心地好い。
 腕を伸ばし、壁にあるスイッチを押す。明かりが点いて、互いの姿がはっきりと視界に
現れた。
 華乃は、顔を真っ赤にしていた。
「見ないで」
「何恥ずかしがってるんだよ」
 軽口を叩くが、華乃はそのままうつむいてしまう。
「華乃?」
 俺の胸に頭を押し付けて、顔が見えないようにしている。
 その状態で10秒ほど静止し、それから小さな声でつぶやいた。
「……こんなにくっつくの、久しぶりだから」
「……」
「だから……恥ずかしい」
「お前、さっき衆人環視の中で抱きついてきただろ」
「あれは、ちょっと酔ってたし……それに嬉しかったから」
 華乃は顔を伏せたままぼそぼそと答える。
 そんな華乃の様子は珍しくて、俺の顔はついほころんでしまう。
 膨れ上がる愛しさを抑えるように、強く抱きしめた。
「……困ってる?」
「いや」
 困るとこうしてごまかすくせがあると前に指摘されたが、今は困っているのだろうか。
「……どうすればいいのかわからない」
「……何でも、していいよ」
 華乃の手が俺の背中に回った。
「今は、何でもしていいの」
「……心臓に悪いこと言うなよ」
「お返しだよ」
 つぼみから花が開くように、顔がゆっくりと上げられた。
「私だって恥ずかしいんだから」
 俺の手の力が緩んだ隙に、懐から抜け出す。
 靴を脱いでリビングへと消える華乃の後ろ姿を、俺は誘蛾灯に誘われるように追い
かけた。
 リビングにはいなかった。電気は点いていたが、姿はない。華乃の部屋から明かりと
暖房のスイッチを押す音が聞こえた。そっちか。荷物をソファーに放り投げてから、俺は
華乃の部屋のドアを開けた。
 エアコンの音がする中、華乃はベッドに仰向けになって、ぼんやりと天井を見上げて
いた。

130:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:47:27 0b6R5TCS
「眠いのか?」
 んーん、と小さく首を振る。
「ちょっと、緊張しちゃって」
「緊張?」
「だって……するんでしょ?」
 ストレートな言葉に苦笑いした。
「なんだ? ひょっとして嫌か?」
「そんなことないよ」
「逃げただろ、さっき」
「場所を移しただけだよ。前みたいなことはこりごりだったから」
「前?」
「涼二と初めてしたとき」
 言葉に詰まった。俺はそのとき酔っ払っていて、事の詳細をよく憶えていないのだ。
「玄関で押し倒されるのはさすがにね」
「俺、そんなことしたのか。……いや、さすがに今日は分別あるし、心配いらないぞ」
「うん。ちょっと落ち着きたかったのもある」
 華乃はまた深々と息を吐いた。
 いつもの飾らないジーンズ姿は、とても合コンに行った直後の女子とは思えない。合
コンの件は知らされていなかったらしいが、それにしても女の子らしい服装とはいえな
かった。
 正直俺はほっとしていた。華乃がスカートなど穿いて、他の男たちに見られるのは嫌
だった。みにくい嫉妬だが本心だ。
 華乃は軽く目を閉じながら、何度も深呼吸を繰り返す。
「涼二のせいだからね」
 唐突になじられた。俺は首をかしげる。
「何が」
「一ヶ月もご無沙汰だったこと」
 さらりと言われたことに軽く衝撃を覚えた。
 いや、それよりも、
「俺のせいなのか?」
「涼二が何も言わないんだもん」
 目を開けて、上体を一息に起こした。女の子には腹筋が弱くて出来ない子もいるらしいが、
華乃は運動神経もそれなりにある。
 頬を膨らませてこちらを見やる。じっとりとした目は非難がましいものだった。
 気まずい思いがしたのは、自分でもそれに気づいていたからだった。
「いつも誘うのは私ばかりで、涼二は一度も私を求めてこなかったもん。じゃあ私が何も
言わなかったらどうなるのかなと思って、試してみたんだけど、それでも一向に何も言って
こないから、腹が立って腹が立って仕方なかったよ。もうこうなったら意地でも誘うもんかと
思った」
「……あー……」
 俺は華乃のじと目に冷や汗をかきながら、どう答えたものか必死で考えた。
 しかしこういうときに限って俺の頭はまともに働いてくれない。

131:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:48:59 0b6R5TCS
 結局平謝りした。
「ごめん……。俺も華乃と、その、すごくしたかった。けど、そんなこと言い出せなかった。
最初のときにあんなことをした負い目もあったから」
「……私ばかりしたがってるみたいで、すごく恥ずかしかったんだよ」
 それは確かに嫌だろう。男はまだそういう生き物として見られるが、女はそういうわけには
いかない気がする。知らないが。
「じゃあ、どうすればいいかわかるよね」
「え?」
 華乃はにっこり笑って促してくる。
 その笑みはこちらを試しているみたいで、優しげにもかかわらず怖かった。
 俺はまた頭をフル回転させる。早く。早く何か言わないと。
 しばらくして、決めた。
 ベッドに腰掛けて、華乃の目をじっと見つめる。
「華乃。お前を抱きたい。俺のものにしたい」
 華乃は大した反応を見せなかった。
 ただ一つうなずくと、おもむろに顔を近づけてきた。
 ちょん、と。
 軽い口付けにあっけに取られた。
「私はとっくにあなたのものだよ」
 そう宣言して、幼馴染みは微笑んだ。



 服を脱がすときいつも思うのは、彼女が着痩せをすることだった。
 スタイルがいいのは知っている。しかし今こうして目の当たりにしている体は、どこも
かしこも柔らかそうで、健康的な肉付きをしていた。
 自身は冗談めかして「肉だらけ」というが、細すぎるよりこっちの方がいい。快活な彼女
らしい。
 下着だけの恰好になると、華乃も俺の服に手をかけた。互いの服を脱がすのが、
不思議と暗黙の了解になっていた。
「……やっぱり脱がすの好き」
「俺はものすごく恥ずかしいんだけど」
「かわいい」
 わからない。だけど、俺も華乃の服を脱がすのに興奮するし、似たようなものかもしれ
ない。違うか。鼻息荒く脱がされたら怖いか。
 華乃は俺の服を丁寧な手つきで脱がせていく。暖房が効いているので寒くはないが、
熱のこもった華乃の目が気になる。
 五分ほどして、俺の体を覆うのはトランクスだけになった。
「いつも思うんだけど、痛くない?」
 大きくテントを張っている股間を見て、華乃は妙に真面目くさって言った。俺としては
苦笑するしかない。
「こういうものだからな……別に痛くはないぞ」
「苦しそうだけどね」
 おしゃべりをしながらも、興奮は高まっていく。
 互いに下着は着けたままだ。それでも近づき、寄り添い、愛撫を重ねていくと、性感が
刺激されて、息が荒くなっていく。鼓動が、早まっていく。

132:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:49:58 0b6R5TCS
 俺は華乃の背後に回り、覆い被さるように抱きしめた。
「んっ」
 首筋に唇を落とし、鎖骨に沿うように舌を滑らせた。手は豊かに実った二つの膨らみに
回して、揉み込んでいく。
「ん……涼二って、この体勢好きだよね」
「……な、なんで?」
 図星を指されてうろたえてしまった。
「胸、揉みやすいもんね」
「……俺、そんなにわかりやすいか?」
 そんなに何度もこの体勢でしたわけではないのだが。
「手つきからわかるよ。ああ、好きなんだなーって」
「……」
 俺は沈黙するしかない。それでも手が止まらないのは、あれだ。魔力だ。おっぱいの。
「まあ涼二が喜んでくれるなら、私も嬉しいけどね」
「……なんか、外面を取り繕うのが馬鹿らしくなってきた」
 華乃はくすくすとおかしそうに笑う。
「いまさらかっこつけても意味ないよ。私は涼二のかっこ悪いところ、たくさん知ってるん
だから」
 それでもかっこつけたいのが男だけどな。
 華乃の手が俺の股間に伸びる。
「くっ」
 何度か手でしてもらっているので(口でも二度ほど)、触られるのも珍しいことではない
のだが、華乃の手の柔らかさに毎度毎度反応してしまう。一向になれない様子が、華乃は
おもしろいみたいだが。
 白魚のような指が、トランクスの上から逸物を撫でさする。指の腹で上下にしごかれる
のがたまらなく気持ちいい。
 俺も負けじと、華乃の下腹部に右手を差し入れた。
「ん、やっ」
 ショーツの隙間から人差し指を差し込むと、秘部はしっとりと濡れていた。
「なんだよ、お前も興奮してるじゃないか」
「恥ずかしいこと言わないでよ……」
「さっきの仕返しだ」
 今度は中指も一緒に入れてみる。人差し指より力が入る分、遠慮なく中に進入した。
「ひゃあっ!」
 嬌声がこぼれ、華乃の手から力が抜けた。
 ぬるぬるとした感触の中で、指を大きく動かす。俺の体だけを受け入れてきたそこは、
実に素直に俺の愛撫に応えてくれる。蜜が溢れて指先を濡らし、ショーツにまでしみを
作る。
「んっ、やっ、だめ、そんなにかき混ぜちゃだめ、あっあっあっ、ああっ、だめっ」
 華乃はもう俺への愛撫など考えられないようで、甲高い声を出して悶えた。
 膣内の具合は十分だった。肉は柔らかくほぐれていて、俺の物を簡単に受け入れる
だろう。このぬかるみの中に挿入することを想像しただけで、たまらない気持ちになる。
 このまま指でイかせてもいいのだけど。
「あっ、あっ、あっ、んんんっ、あん、あああっ、ああっ」
 首をいやいやと振って、刺激に耐えている。その乱れようがかわいくて、俺は横を
向いた華乃の頭を左手でしっかりと押さえ、唇を奪った。
「ん―」
 舌が絡み合う。愛液と唾液それぞれの音が重なって、いやらしさに拍車がかかる。
 華乃の体からはすっかり力が抜けていた。
「そろそろ入れたい」
「ん……」
 指の動きを止めて言うと、華乃は小さくうなずいた。
 火照った頬の赤みが、幼馴染みの高ぶりをそのまま表しているようだった。
 

133:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:51:09 0b6R5TCS
 
 先端を膣口に押し当てただけで、俺は果てそうな気分だった。
 ゴムに包まれた逸物は、硬さを保ちながら少しも萎える様子はない。むしろ今からつな
がると思うだけで、硬度が増す気がした。
 ぐちゅ……と、濡れた秘部めがけて男性器が突貫する。
 ゆっくりと腰を押し進めると、ひりひりと痺れるような感覚が脳まで響いた。
 久しぶりの感触だった。
 正常位で奥までしっかりつながると、華乃と目が合った。
「……気持ちいい?」
「……なんか、前よりずっと気持ちいい気がする」
 華乃は不思議そうな顔で俺を見つめた。
「……久しぶりだから?」
「それもあるかもしれないけど……」
 たぶん気持ちが通じ合ったからだと思う。
 肉欲だけじゃない。心が満たされているから、空しくないのだ。
 何よりこの気持ちを、もう隠さなくていいから。
 口には出さないが、華乃もきっとそれを感じているだろう。さっきから膣内の締め付けが
強烈で、痛いくらいだ。
 腰を動かし始めると、また刺激が格別だった。
 電気が走ったかのような痺れが、熱とともに途切れることなく続く。一つ突き入れるごとに
内側から熱がどんどん上がっていって、下半身から頭の天辺まで、体の隅々に刺激が伝播
していくような、快感の波が全身を襲った。
 俺はその快楽に染められていく。
「あっ、あああっ、んん、刺激、強すぎ……っ」
 華乃も興奮していた。愛液が洪水のように溢れて、腰を振ると中でじゅぷじゅぷ水音が
鳴る。性器と性器が擦れ合う度に、華乃の喘ぎ声が耳朶を打った。
「あっ、あんっあっあっ、やぁんっ! 激し……ん、ああっ!」
 まずい。本当に気持ちいい。
 快楽に際限がない。この気持ちよさはどこまでも上っていけそうな気がして、逆に怖く
なった。このままおぼれて沈んだら、二度と抜け出せなくなりそうな。
 幼馴染みが必死で俺の体に抱きついている。
 指が背中に食い込む。吹き出る汗が肌と肌の間で滑り、光沢を生む。
 目の前の女の子は俺のものなのだ。こんなに淫らに喘いでいる彼女が、俺だけのもの
なのだ。
 体を動かして快楽を貪る度に、そのことを実感した。

134:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:52:32 0b6R5TCS
「華乃……」
 幼馴染みの名前を呼ぶ。
「華乃、好きだ……」
 今まで言えなかった想いを、ひたすら言葉にして吐き出した。
「好きだ、好きだ……華乃」
 潤んだ瞳が俺を捉えて離さない。
「んっ、私も好き……涼二が好き……」
「もっと聞きたい。華乃の口から聞きたい」
「すき、すき、だいすき。ずっとずっと好きだったの……」
 溢れ出す気持ちを止められない。
 爆発しそうな想いを胸に抱えながら、恋人を強く抱きしめた。
 深く深く、呑み込むように唇を押し付けた。今はとにかく彼女のすべてが欲しかった。
 腰の動きが一段と激しさを増した。肉のぶつかる音がより生々しく聞こえ、この行為を
一層煽る。
 睾丸が飛び出そうなほど、逸物全体が快感に痺れた。もういつ発射してもおかしくない。
「華乃、もういく……」
「んっ、ああっ、あ、うん、きてきて、いっぱい出してえっ!」
 直後、お湯が噴出するように、溜まりに溜まった精液が勢いよく飛び出した。
「ん、あああ、んん……」
 華乃も同時に一際甘い声を洩らした。
 ゴムの中に吐精しながら、腰をぐうっと奥まで押し付ける。搾り出すように精液を放出し、
完全に出し切ると、疲労感でいっぱいになった。
 体がやけに重く、華乃の上からなかなか動けない。二ヶ月前に初めて味わった快感を、
さらに上回る衝撃だった。
 華乃は疲れきったように目を閉じている。
 俺は彼女を抱きしめたまま、しばらくじっと動かなかった。
 ベッドの上に残ったのは、互いの温もりと、確かな愛しさだけで、それで十分のような
気がした。



 髪を撫でると、華乃は嬉しげに目を細めた。
「涼二の手、優しい」
 うっとりした様子でつぶやく華乃は、すっかり甘えん坊になっている。
 体をくっつけながら、しばらく互いの体を触ったり撫でたりしていたが、やがて華乃が大きな
あくびをした。
「眠いか?」
「うん、ちょっと」
 つられて俺もあくびをしてしまう。思わず吹き出したが、しかし考えてみれば、酒に酔い
ながらさらに激しい運動をしたわけで、眠くならない方がおかしい。
 抱き合いながら、俺と華乃は一緒の布団を被った。
「おやすみ、涼二」
「おやすみ、華乃」
 目を閉じて、しかし抱き合う腕の力は少しも緩めない。
 このまま目を開けると、今日のことが夢に終わりそうな、そんな錯覚にとらわれる。
 でも。
 たとえ夢だとしても、俺は目が醒めたとき、すぐに華乃に想いを告げるだろう。
 そのときもきっと、幼馴染みは微笑んでくれるに違いない。
 触れ合う肌から伝わる想いは、勘違いなどではないから。
 行為の中で、華乃の気持ちがはっきり伝わってきたから。
 俺は自分と、そして華乃の想いを胸に抱きしめながら、ゆっくりと眠りについた。
 ようやくつかんだその想いを、俺は決して離しはしない―。

 <続く>

135:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:53:38 0b6R5TCS
以上で投下終了です。
たぶん次で終わりです。

136:名無しさん@ピンキー
10/12/05 05:01:33 FiD4MuWz
乙です!

137:名無しさん@ピンキー
10/12/05 05:22:51 CYvwHgRz
乙です!
最高

138:名無しさん@ピンキー
10/12/05 08:55:28 SEeSag+0
>>135
最高過ぎるんですけど。

139:名無しさん@ピンキー
10/12/05 09:04:25 p7jp7ci3
乙だよ これは乙だよ

140:名無しさん@ピンキー
10/12/05 10:52:59 jsROK/N4
素晴らしい
GJ

141:名無しさん@ピンキー
10/12/05 10:59:14 RmylbsEg
流石ですとしか言いようがないグッジョブ!!
涼二が嫉妬するところで、一緒に嫉妬してしまった

142:名無しさん@ピンキー
10/12/05 18:26:01 yKcwMaEW
不良少女な幼馴染ってない?

143:名無しさん@ピンキー
10/12/05 20:25:54 RmylbsEg
口が悪いならまだいいけど、不良は俺としてはちょっと・・・

144:名無しさん@ピンキー
10/12/05 20:43:40 dSyswMxU
最低限新品のままでないとな
…という制限を設けると喧嘩の腕も高性能になるんだよね
負ける=即レイプだろうし

145:名無しさん@ピンキー
10/12/05 20:47:08 M7L2rKRP
保管庫にまんまタイトルなやつなかったか?

ところで俺は
喧嘩は強いものの汚い手にハマり危うく・・・を救助する男側→そのまま・・・
というありがちな流れのがいい。

146:名無しさん@ピンキー
10/12/05 21:46:26 2oiknDKz
フルバの今日子さんみたいに、「なんでこうなっちゃったんだろう」って悩んでSOS出してる不良幼馴染っ子なら可愛い

147:名無しさん@ピンキー
10/12/05 22:22:48 OFH5XOo6
男に近づく女に喧嘩ばっか仕掛けてたら
いつの間にか不良扱いされて
男子も女子も近寄ってこないから
男だけが頼りで、唯一の友達で、男にだけは甘えるっていうかツンデレっていうか
そういう電波ってだけなんすけども。はい

148:名無しさん@ピンキー
10/12/06 00:10:25 3Boizf0B
>>143
不良は微妙だよねー。

149:名無しさん@ピンキー
10/12/06 01:09:05 eQYpWYi9
幼なじみ「大きくなったらけっこんしようね」

約束を律儀に守る幼なじみ
しかしある日約束を忘れていた男が他の女と付き合う
幼なじみグレて引きこもりに
窓越しに話し掛けても「今更何よ…」「煩いわね…」の一点張り

でも男も気づいて無いだけで幼なじみのことが好きなので恋人とは長続きしない
その内お互いの気持ちを認め合って恋仲に
幼なじみは超絶あまえんぼに変身

しかし男に未練のある元カノに邪魔されて…

みたいなとこまで考えたけど需要ありそう?
あまえんぼスレ向け?

150:名無しさん@ピンキー
10/12/06 02:55:39 0CcZjnLp
>しかし男に未練のある元カノに邪魔されて…
この一文のせいで修羅場スレ向けかと思ったがあんな所に行けだなんて残酷過ぎて言えるわけがねえ

…まあ、ドロドロしないんならここでもいいんじゃないか

151:名無しさん@ピンキー
10/12/06 08:07:06 eQYpWYi9
>>150
ありがとう
そんな修羅場らない予定だから早速制作開始します


152:名無しさん@ピンキー
10/12/07 22:27:30 KyNl9Tab
In vino veritas 読みなおそうと思って保管庫いったら3話はまだ収録されてなかったわ。残念

153:名無しさん@ピンキー
10/12/08 04:25:39 uQEO+L+u
某乙女ゲーで、
○主人公の幼馴染みのお兄さん
○家がお隣
○主人公の通う学校の先生
って設定なのに攻略対象じゃないキャラがいて、
「制作者わかってないな~」と思ってたら
実は彼は主人公の死んだ姉と同級生で相思相愛、
「学校を卒業したら恋人になろうね」という約束を交わしてた…
というのがあって萌えたと共に(´Д`)

154:名無しさん@ピンキー
10/12/08 05:03:42 zlLK5VTs
このスレってこんなに露骨に女アピールしても平気だっけ

155:名無しさん@ピンキー
10/12/08 10:26:48 3fdHp3cS
そうやって食いつくのがいなけりゃ何とも思わないと思う

156:名無しさん@ピンキー
10/12/08 13:31:37 l3nO1pmL
いや違うな…奴は女ではない
本能が告げている
奴は…ゲイだッ(キリッ)



という事でゲイな幼なじみ男を一途に慕う小動物系幼なじみマダー

157:名無しさん@ピンキー
10/12/08 15:55:22 kmDdsaeQ
>>142
どういう不良を想定するかによる。
単なるDQNとかはあれだけど個人的に孤高少女とかなら全然ありですな。


158:名無しさん@ピンキー
10/12/08 17:12:35 xeqExFEz
てか女がいたらダメかな?

159:名無しさん@ピンキー
10/12/08 17:59:51 riYo4jUl
楽天の二年目のピッチャーが幼なじみと結構したそうな。三歳からで大学で再開。


160:名無しさん@ピンキー
10/12/08 22:49:14 pQiauQui
>>142
不良っていうとどうしても「援交」とか「ヤリマン」みたいなイメージを抱き易いからな
要はその辺の説明をどううまくつけるかじゃね

161:名無しさん@ピンキー
10/12/08 23:01:11 3fdHp3cS
自分の中ではそれはどっちかというと不真面目って感じ
不良だとあぁンやんのかコラって感じ

162:名無しさん@ピンキー
10/12/09 01:18:30 UKKHaEBz
武闘派番長の主人公と武闘派スケバンの幼馴染が喧嘩して川原で殴り合って
夕焼けの川原で横になって「なかなかやるな」「お前もな」というぶつかるほどに深く結びつく作品か

163:名無しさん@ピンキー
10/12/09 01:20:10 H11nusEp
ビッチと不良は違うような気もするが。

164:名無しさん@ピンキー
10/12/09 01:21:12 pV03Tmg7
ヤンデレをヤンキーデレだと思ってた時があったな

165:名無しさん@ピンキー
10/12/09 05:16:13 xXuY8cfz
>>159
戸村ドラ1の上に幼馴染と結婚かよ・・・
うらやましすぎる

166:名無しさん@ピンキー
10/12/09 18:25:11 M0LpAcRA
>>165
中学生の時まで家族ぐるみの付き合いがあって大学で再開し交際に発展。と記事にあった。

このスレ的にはたまらない

167:名無しさん@ピンキー
10/12/09 19:03:11 Je3M5JNB
>>166
しかも叱咤激励してくれたおかげで野球を続けてるとか、もうね。
最近野球への興味は薄れてたけど、何か応援したくなってくる。

168:名無しさん@ピンキー
10/12/09 20:39:40 M0LpAcRA
>>167
あだち充のマンガ並の境遇

169:名無しさん@ピンキー
10/12/09 20:40:08 fdcwyCHC
パワプロのレベル

170:名無しさん@ピンキー
10/12/09 20:40:22 pV03Tmg7
カカといいそのまま書けそうだな

171:乙女心をカットして 1/4
10/12/10 01:24:33 fPRypYc6
 俺の幼馴染の美幸は腰まで届く長い髪が印象的な女の子だ。
 顔も可愛いし、小柄ながらバランスのよい肢体や温和な性格とも相まって狙ってる男子生徒は多い。
 ま、俺がいつもそばに居るから変な虫は寄ってこないけど。

 だけど昔の美幸はこんなに長い髪はしていなかった。
 中学校に上がった頃はせいぜい肩に届く程度の長さだったし、今だって洗髪が大変だと良く
言ってるくらいだし。

 それでも長くしているのは数年前、いつもの美容室に行って髪を切ってもらっているとき、
美容師の手元が狂って、運悪く耳たぶを鋏で傷つけてしまったからだ。

 今でも美幸の耳たぶにはそのときの傷跡が残っていて、親や俺以外には余り耳を見せたがらない。
 そしてそれ以来、美幸は美容院へ行かなくなってしまった。

 最初の数ヶ月は髪を切ること自体を頑なに拒否していたので、伸びまくった前髪のせいでさながら
ホラー映画の幽霊みたいになっていた。
 余りに酷いので、せめておばさんに前髪だけでも切ってもらえよといったのだが、それも拒否
された。曰く、「お母さん不器用だから……」だそうで。
 ……確かに、おばさんはあんまり器用なほうじゃない。
 また耳をチョッキンとやってトラウマになっても困るしな……なんて思っていたのだが、続けて
美幸の口から出てきた言葉は、俺をさらにびっくりさせるものだった。

「こーちゃん手先器用だよね……こーちゃんが切ってくれるなら、いいよ。」

                   ◇

 あれから3年、月イチで、俺は美幸の髪を切っている。
 一番最初は前髪をまっすぐに切りそろえただけだったけど、何せこっちは素人。
 髪を切るのは意外に難しくて、上手くそろえるのに何度も切りなおして、前髪が短くなりすぎて
しまったのを覚えている。

 場数を踏んだ今ではかなり上達して美幸の注文にもそれなりに答えられる余裕も出てきたし、
最初の頃は絶対切りそろえさせてくれなかった耳の回りも切らせてもらえるようになっている。
 とはいっても豪快にカットする度胸は無いのでせいぜい伸びた分毛先を切る程度だけど。

 今日も美幸の家の庭に椅子を出して、ケープを羽織った美幸を座らせて鋏を振るっていた。
 長い髪の先を櫛で梳かしながら、スキバサミですいて自然な感じでまとまるように気をつけながら
長さを切りそろえていく

 櫛通りのいいつやつやした黒髪を梳くたびに、美幸の髪からいい匂いがする。
 その香りを楽しむのが、俺のひそかな楽しみだ。
 堂々と女の子の髪に触れる機会なんてそう無いしね。

 シャクシャクとスキバサミで長い髪の先をすいていると、美幸が話しかけてきた。

「結構伸びてる?」
「んー、いつもと変わらないけど。美幸髪伸びるの早いからなぁ。」
「そうかな?」
「うん。スケベは髪伸びるの早いって言うしな。」
「すっ、」

 美幸の背中がぴくんと動いて、そして少しして後ろから見える耳たぶが赤くなったのがわかった。

「……私、スケベじゃないもん。」
「うん、美幸は超オクテだよな。ちょっとエッチな話しただけで真っ赤になるし。」
「……こーちゃんの意地悪。」

172:乙女心をカットして 2/4
10/12/10 01:26:01 fPRypYc6
 前髪を切ろうと回り込んでみると、美幸はちょっとだけふくれっ面になっていた。
 でもそれがかえって可愛らしく見える。

「前髪切るから、目閉じろよ。」
「うん。」

 美幸がふくれるのをやめて目を閉じる。
 それを確認してから、俺は目にかかりそうになっていた前髪を手にとって櫛を入れる。
 そして長さを眉に掛かるか掛からないかぐらいに切りそろえる。

 目の前には目を閉じてすまし顔の美幸の顔がある……なんかこうやって見ていると、キスされるの
待ってるみたいな……いや、何考えてるんだ俺は。

 誤魔化すように白いつやつやのほっぺについていた髪の毛を指先でそっと取り除く。
 美幸は今でも緊張するのか、長いまつげがふるふると震えていた。

「まだ緊張する?」
「うん、緊張してる。」
「ハサミ、まだ怖いんだ?」
「……そうじゃないんだけど。」
「ちがうの?」
「……」

 なぜか美幸は少し赤くなっただけで答えなかった。
 なんなんだ?

 気を取り直して、鋏を動かす。
 耳の手前のところは特に慎重に、美幸が怖がらないように丁寧に切っていく
 一通り手を入れたところで、前や横からバランスを見てさらに少しずつ整える。

 耳は傷があるので普段出して無いけど、髪を切る時だけは前髪のバランスを見るのにちょっとの
間だけ出す事にしている。
 指で髪を掻き揚げて耳の後ろに流してやると、耳の後ろがくすぐったかったのか少しだけ肩が
ぴくっと震えた。

「くすぐったかったか?」
「……うん。ちょっとだけ。」
「普段髪で隠してるから敏感になってるんじゃ無いか?」
「こーちゃんの触り方がちょっとエッチなんだよ。」

 さっきの仕返しか、美幸はそう言ってニマニマ笑う。
 俺はそれを流しつつ、微妙に不ぞろいな毛先を鋏の先で切りそろえて整える。
 これで完成。素人としてはまあ上出来だろう。

「はい、出来上がり。」

美幸の顔の髪を払って、手鏡を渡してやる。
美幸は鏡の中の自分を覗き込んでからにっこりと笑った。

「うん、やっぱりこーちゃん上手だよ。綺麗になった」
「とはいっても素人だからたかが知れてるけどな。」

 場数はそれなりにこなしたし、ネットで調べたりはしてるものの、正式に勉強したわけじゃない。
 技術的な未熟さのせいでせっかくの美幸の魅力を引き出せていない気がする。

173:乙女心をカットして 3/3
10/12/10 01:28:00 fPRypYc6
「私は十分だと思うんだけどな……」
「いや、美幸をもっと綺麗にしてやりたいし……」

 おばさんが丁度いいタイミングでお茶を持ってきてくれたので二人で縁側に並んで腰を下ろした。
 お茶菓子をつまんでお茶をすすりながら、前々から思っていた事をふと口にしてみた。

「うーん、やっぱり高校卒業したら美容専門学校行こうかな。」
「え?」

 美幸がびっくりした顔で俺を見た。
 美幸の事だけでなく高校も残りあと一年ちょっととなって、これからの進路をどうしようかと
考えているときにふと思ったことだ。
 学校に行って技術を学んで美容師になれば今よりももっと上手に美幸の魅力を引き出すことが
出来るようになるかもしれない。

 でも、なぜだかそれを聞いた美幸は少しがっかりしたような、ふてくされているように見えた。

「私は……反対。」
「え? ダメか?」
「私は……こーちゃんと一緒に大学に行きたい。それに……」
「それに?」
「……なんでもない。」
「……いや、なんか気持ち悪いなぁ。言いたい事あるんなら言ってくれよ。」
「……笑わないでね。」
「? ああ。」

美幸は少しだけ赤くなって、こほんと一つ咳払いをしたあとで答えた。

「……他の女の子の髪触ってるこーちゃんが、なんか嫌なの。」
「へ?」
「なんか、嫉妬しちゃうって言うか……」

 そこまで言って美幸はうつむいてしまった。

「あ、あー、えっと……」
「さっきだって……前髪切ってもらってるときって、なんかキスしてくれるの待ってるみたいで、
 なんか緊張しちゃうって言うか……私が一人でそう思ってるだけなんだけど。
 ……やっぱり、私ってスケベな子なのかも。」

美幸はもうすごい真っ赤な顔で茹で上がりながらそんな事を言っていて、俺は俺で頭の中が真っ白というか極彩色というかになっていた。

「いや、まあ、さっき俺もちょっとそんなこと考えてたし……別にスケベってわけじゃ……」

 ぐしゃぐしゃの頭をフル回転させて搾り出した言葉はまさに墓穴を掘ってるとしか思えないもので。

「じゃあ、私だけがそう思ってたわけじゃないんだね……ん……」

 そんな俺の言葉に、美幸は真っ赤な顔を俺に向けて目を閉じた。

 そうまでされたら、俺のやることは一つなわけで……
 なんて言ったら良いか……美幸の唇はすごく柔らかかった。

                   ◇

 その後、丁度お茶のお代わりを持ってきていたおばさんにその場を見られて二人で大パニックに
陥ったりとか、まあ、色々あったりしたんだが……大学に進学した今でも俺は美幸の専属美容師を
続けていたりするのだった。

174:名無しさん@ピンキー
10/12/10 01:30:23 fPRypYc6
>>116でネタの振り逃げやっといてなんだが
手前でなんとなく書いてみた

久々に投下したらレスの数計算ミスったお

175:名無しさん@ピンキー
10/12/10 02:17:12 7MqVIJ21
ははははは、失敗したなら合うように続きを書けばいいではないか。



そして更にGJと言わせてくださいなにとぞどうかお願いします

176:名無しさん@ピンキー
10/12/10 18:22:55 xkrLn32L
小ネタの枠におさまりきらねえ

177:名無しさん@ピンキー
10/12/10 19:03:19 m0gzjjGZ
GJだ!

178:名無しさん@ピンキー
10/12/12 01:56:32 MHfdwAdg
>>164
ヤンデレ彼女という漫画があってだな

>>174
GJ

179:名無しさん@ピンキー
10/12/12 04:07:52 j8nnXa/9
これは実にうまくまとまった良品
実にGJ

180:名無しさん@ピンキー
10/12/13 10:16:51 50gB2/Xl
>>169
パワプロやない、パワポケや!

ちなみにパワポケ13には生意気妹系幼馴染みが出ますよ。…トゥルールートが凄まじいが。

181:名無しさん@ピンキー
10/12/13 10:55:34 /EdU/7Z6
何気に生意気系統の幼馴染って少ないよな
ちょっと気が強くても、すぐ顔が赤くなってへたれるし

182:名無しさん@ピンキー
10/12/13 12:32:43 3Rde1vlM
母やくたすケにきで

183:名無しさん@ピンキー
10/12/13 20:23:35 k+eVAevP
あ・・・あかねちゃ

184:名無しさん@ピンキー
10/12/13 23:11:11 ZXUvTtak
両思いなのに、引っ付かないってのは幼馴染の醍醐味だと思う

185:名無しさん@ピンキー
10/12/14 00:14:11 q0JB9Pwq
幼馴染の強気腐女子に
漫画描く資料という大儀のもと、あんなことやこんなことされまくってるヘタレやさぐれ系男子
幼馴染を好きな手前、嫌ともいえない
幼馴染は幼馴染で、腐女子仲間にも資料としていいように遣われている男を見てちょっとむくれたり

みたいなドツボ電波を受信したのに文を書く力がないしにたい

186:名無しさん@ピンキー
10/12/14 00:18:12 yExkwdJY
全然読みたいと思わねえ

187:名無しさん@ピンキー
10/12/14 01:58:04 a5RlzhEK
設定を読む限りでは、幼なじみである必要性が全くないな


188:名無しさん@ピンキー
10/12/14 02:02:23 iWSXi/JO
試しに
強気腐女子に漫画描く資料という大儀のもと、あんなことやこんなことされまくってるヘタレやさぐれ系男子
強気腐女子を好きな手前、嫌ともいえない
強気腐女子は強気腐女子で、腐女子仲間にも資料としていいように遣われている男を見てちょっとむくれたり


189:名無しさん@ピンキー
10/12/14 02:02:38 ecShKbwb
HOOKSOFT

190:名無しさん@ピンキー
10/12/14 05:02:17 ZJvqmEKQ
くっ付きそうでくっ付かない。それがくっ付くまでの過程が一番面白い。
祭りは準備してる時が一番楽しいってな。

191:名無しさん@ピンキー
10/12/14 17:54:35 SymRT2aG
ラノベのなんたら家族砲って最初からくっついてたっけ。
そんな設定をチラッと聞いたからまったく読む気がしない。
いくら甘甘でも

192:名無しさん@ピンキー
10/12/14 19:16:38 fz9a5AA8
幼なじみラノベを絵で選んだらパクリ発覚して発禁になったでござる

193:名無しさん@ピンキー
10/12/14 20:39:38 4vak5HUn
>>191
某所のテンプレにも入れないということはそういうことなんジャマイカ?

194:名無しさん@ピンキー
10/12/14 21:05:13 iWSXi/JO
周りからは夫婦とか呼ばれるくらい阿吽の状況
そこでイベントが起きて急に異性として意識し始めてあたふた
紆余曲折あって俺はお前が好きなんだと告白
でも彼女はその告白は覚えていなかったのでした

で一巻は終わりだった気がする

195:名無しさん@ピンキー
10/12/14 21:47:01 SymRT2aG
>>193あそこのテンプレ、未整理だからわからんけど今の段階では入ってないんだ?
微妙に騒いでた気がするが。

196:193
10/12/15 12:07:46 HIYdPXmm
>>195
久々に見に行ったら禁止図書扱いだったぜひゃっほい

197:名無しさん@ピンキー
10/12/16 18:23:42 Pj5ag8Ck
結末知らんが、その展開による判断だろうな・・・。

198:名無しさん@ピンキー
10/12/18 01:02:27 F9Xo+N3k
世田谷の事件で被害者の女の子が8才の年に幼馴染の男の子とバレーしていたビデオが流れていた。
不謹慎だがもし生き残ったらを想像してしまった。
自分が悪い人間だと想うと共に犯人許せないと感じた

199:名無しさん@ピンキー
10/12/18 02:10:39 ieKfDajp
そういえばセックスレスで悩んでるマスオさん旦那がいて、実は奥さんは数十メートル程しか離れてない近所に住んでる幼なじみとW不倫してた、って話があったな
ありゃ旦那さんがかわいそうだったけど笑ったww

200:名無しさん@ピンキー
10/12/18 19:53:21 uRqAaQf4
「すなば~」さんと「My」さんの続きをお待ちしております

201:名無しさん@ピンキー
10/12/19 00:03:20 /MZvFnwt
>>199
W不倫って旦那は奥さんの幼馴染の男の奥さんと不倫してたのか?

202:名無しさん@ピンキー
10/12/19 07:00:14 Yoqzf7UE
>>201
W不倫ってのは既婚者同士の不倫ね。片っ方だけでも

間男の家に突撃して「お前の嫁を抱かせろ!」の下りは笑った

203:名無しさん@ピンキー
10/12/21 19:58:39 72ILkGYm
帰ってきた大阪弁幼馴染(女)に襲われる少年

204:名無しさん@ピンキー
10/12/22 00:57:22 NvL8Vvwe
子供の頃からの幼なじみでお嬢様と執事見習い
もしくはその逆のおぼっちゃまと侍女でひとつ

205:名無しさん@ピンキー
10/12/22 01:06:24 +NWJm2x+
>>204
執事見習いがメイドさんと仲良くしてるの見て膨れるお嬢様とか最高です。はい

206:名無しさん@ピンキー
10/12/22 16:06:00 Nkle0qCB
マナケミア2のリリアのことかー!

207:名無しさん@ピンキー
10/12/23 23:06:19 IJP4H7vV
普段は色気なさそうな関係なのにふたりっきりになるとえろえろしちゃうのも
個人的に好きです。

208:時代劇風味
10/12/24 21:30:40 OMOQ4jW+
時代劇風味で書いてみました。

正直幼馴染かどうか微妙な設定ですが、
ここ以外に投下できそうなところが思いつかないので
なにとぞご容赦を
できれば批評を聞いてこれからに繋げていきたいです

では投下

209:時代劇風味
10/12/24 21:33:08 OMOQ4jW+
相田新左エ門は決して顔が悪いわけではなかった。
長身で体つきもがっしりしているし、仕事もそれなりにできる方だった。
しかし新左エ門はときたま、突然に物思いに耽る癖がある。そのうえ、またこれも突然に、くっくっと低く笑いだすのだ。
呆けているような顔をしていると思うと不気味に笑いだす新左エ門を、人は頭のおかしな奴だと言って避けて歩く。
だから同僚に持ちかけられた縁談で紹介された女―今は新左エ門の妻であるが―を一目見たとき、
新左エ門は驚きが隠せないでいた。
女の名は芳乃という。
変人、あるいは狂人扱いされている自分にとって、芳乃はまったくもって釣り合わないと新左エ門は思っていた。
芳乃は小柄で色も白く、そして誰もが目を引くような美貌の持ち主だった。
器量も良く料理もできて、誰からみても文句のつけようのない妻だった。ただ、物事に関して少し反応が薄いことと、
何事にも、何者にもはっきりとものを言うところは、人によっては鬱陶しいと思われることもあるようだが、
新左エ門からすればそれさえも好ましく思えた。
芳乃を娶ってからというものの、新左エ門は、妻の前では例の癖は出すまいと気をつけていた。
もっとも、この癖について新左エ門は自覚はなく、同僚に指摘をされてようやく気付いたので、
出さないようにするというより、芳乃とあまり顔を合わせないようにしていたのだ。


210:時代劇風味
10/12/24 21:34:18 OMOQ4jW+


 「おまえさまはそんなに私のことが嫌いでございますか」

 芳乃を娶ってから三年ほどたったある日、芳乃が突然にそう聞いてきた。

 「そんなはずはなかろう。お前ほどの良妻を、どうして嫌いになれようか」

 「ではなぜ私のことをお避けになるのですか」

 「そんなことはない」

 「そうでしょうか」

 初めて聞く芳乃のきつい物言いに、新左エ門は箸を置いて芳乃の顔を見た。
 そしておもわず、あっと声を出す。
 芳乃は目に涙をたたえていた。普段何にも動じない芳乃が泣いているのをみて、新左エ門は慌てふためいた。

 「まて、なぜ泣くのだ」

 「愛する夫に月に数えるほどしか顔を合わせてもらえないのですよ。それを三年も続けられていては、泣きたくもなります」

 「その程度のことで」

 「私にとってはその程度ではないのです」

 それは静かな口調ではあったが、まるで悲痛な叫びのようにも聞こえた。


211:時代劇風味
10/12/24 21:36:10 OMOQ4jW+

 「これ、落ち着かんか」

 「いいえ、もう我慢できません。私がなんのために、誰のためにこんなに肌を磨いて、家事やら料理やらを頑張って覚えたのかお分かりにはならないのでございますか」

 「それはもっと然るべき家に嫁ぐために女を磨いてきたのであろうよ」

相田の家は百石、対して芳乃の実家は二百五十石で、本来であれば芳乃はもっとほかに嫁の貰い手が然るところにあったはずなのだ。それは新左エ門が前々から考えていたことでもあった。

 「おまえさまは私ではご不満でございますか」

 「そんなことは言っておらん」

 「ではなぜ」

新左エ門は本当のこと―例の癖のことを言ってしまおうかと一瞬逡巡したが、
ほんの少しの男としての自尊心が邪魔をしたため、あえてそっけなく答えた。

 「どうでもよかろう」

 「私は、おまえさまを愛しているのでございます」

 またこれも静かに、しかしはっきりと芳乃は言い放つ。

 「おまえさまが私を愛していなくとも、私はおまえさまを愛しているのでございます」

 新左エ門は自分の頬が熱くなるのを感じていた。

 「女子がそのようなはしたないことを」

 「しかしおまえさまはこうでも言わないと私の気持ちに気づいてはくれないでしょう」

鈍いんですから、と呟きながら、芳乃はだんだんとにじり寄ってくる。新左エ門は逃れようと後ずさるが、
そこでようやく自分が既に壁際に追い詰められていることに気がついた。

 「まて、まて。落ち着け」

 「では訳を教えてくださいまし。おまえさまが私を避ける訳を。私のことがお嫌いならばどうぞそう言ってくださって結構です」

 「そうは言っておらんだろう。今話すから落ち着け」

そう言うと、芳乃はすっと身を引いて姿勢を正した。新左エ門もそれに倣うように芳乃と向き合って姿勢を正す。
しかしどう話したものか、と新左エ門は悩んでいた。
こんな話をして愛想を尽かされてしまってはどうしようもないし、何か良い言い訳はないものか。
しばらく俯いて考えていた新左エ門はちらと芳乃の方を窺った。そして言い訳を考えている自分がひどく情けなくなった。
芳乃は毅然とした表情をしようと努めてはいるようだが、今にも泣きそうな表情をしていた。
目尻には今にも零れんばかりの涙をたたえ、新左エ門が話を切り出すのを待っていた。
新左エ門はとうとう観念して、すべてを打ち明けようと決めた。


212:時代劇風味
10/12/24 21:38:33 OMOQ4jW+

 「わしはな、城内で変人、ともすれば狂人扱いされておる。知っているか」
 
 「……はい。そのような噂も、耳にしております」

 「ならば話は早い。わしはな、ときおり呆けた顔をしているかと思うと、不気味に笑いだすのだそうだ」

新左エ門は顎にうっすらと生えている髭を擦りながら、嫌そうに言った。

 「私はついぞ見たことはありませんが」

 「それはそうだろう。わしはそのような、なんだ、自分の不気味なところをお前に見せないようにしていたのだからな」

新左エ門は言いながら、なんと自分は女々しい男だろうと思っていた。
そして続ける。

 「だからそのために、お前と顔をあまり合わせないように―お前からすれば、避けるようにしていたわけだ」

 「な」

とそれだけ言って、芳乃は固まってしまった。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、自分に呆れたのだろうと新左エ門は思った。
そして次には罵倒でもされるだろうかと考えた。
芳乃はしばらくするとはっとしたようにまた姿勢を正して言った。

 「では、おまえさまは、私に嫌われないようにと、そのような理由で、私を避けていたと申すのですか」

 「……まあ、そうなる、か」

新左エ門が歯切れ悪く答えると、芳乃は俯いてしまった。
ああ、これは愛想を尽かされたかもな、と新左エ門は思った。
芳乃の父親は豪放磊落を絵に描いたような気質の持ち主で、いつもどっしりと構えていて、
言いたいことははっきりと言い、正義感にあふれ、上役にも喰ってかかるような人物だった。
そんな父親を見て育った芳乃からすれば、今の自分のなんと女々しいことか。
これは何を言われても仕方がないな、と新左エ門は思う。
しかし、芳乃は顔を上げたかと思うと、新左エ門に抱きついてきた。
かろうじて受け止めることはできたが、それでも新左エ門はな、な、と言って事態を飲み込めずにいた。


213:時代劇風味
10/12/24 21:39:41 OMOQ4jW+

 「うれしいです」

新左エ門に抱きついたまま芳乃は言う。首筋に当たる芳乃の息がくすぐったい。

 「これ、やめんか」

 「いいえ、やめません。今まで我慢していた分を、発散させていただきます」

今までもこうしたいと思っていたのかと思うと、新左エ門は自分の顔が熱くなるのを止められなかった。
しかしなぜこんなにも芳乃が喜んでいるのか、新左エ門はいまだに理解できないでいた。

 「私がお前様を嫌うなどありえません」

 「なぜ」

 「おまえさまを愛しているからです」

 「またそのようなはしたないことを」

新左エ門の咎めるような声も聞かず、芳乃は抱きついたまま、新左エ門に訊ねてきた。

 「おまえさまは、その、例の癖をしているとき、なにをお考えなのですか」

 「…………」

 「……私には言えぬようなことですか」

 「いや、そうではない。うん、昔のことを、少しな」

芳乃は、昔のこと、とどこか懐かしむような声で相槌を打った。
そうだ、と言って、新左エ門は話し出した。


214:時代劇風味
10/12/24 21:44:12 OMOQ4jW+

昔、新左エ門は川とか沢とか、そういった水辺でよく遊ぶ子供であった。

ある日、寺子屋の帰りにいつものように川で遊んでいると、遠くからこちらを眺めている少女がいた。
どこか寂しげにしているその少女と目が合うと、少女は慌てて背を向け、どこかへ走って行ってしまった。

次の日も同じように遊んでいると、前と同じようにして少女はこちらを見ていた。
そして同じように目が合うと、どこかへ走って行ってしまうのだ。

それが何日か続いた次の日、新左エ門は少女にちょっとした悪戯をしてやろうと考えた。

いつもは寺子屋から川までゆっくりと歩いてくるのだが、その日は走って行った。
そして少女がいつも立っているあたりに来ると、近くの茂みに身を隠した。

しばらくすると、少女がやってきた。初めて間近で少女のことを見た新左エ門は、素直に可愛いと思った。
色白で小柄な少女で、少し地味ではあるが、決して安物ではない着物に身を包んでいた。
悪戯などせず普通に声をかけようかと一瞬悩んだが、新左エ門は意を決して計画を実行した。

少女は新左エ門がいないのを確認すると、少ししょぼくれたような顔をして、とぼとぼと歩きだした。

新左エ門はなるべく気配を殺して少女の後ろに忍び寄ると、
あらかじめ捕まえておいた蟹を、少女の首にそっとくっつけた。

すると少女は、きゃあ、と可愛らしい声をあげて転んだ。

やりすぎたかな、と新左エ門が思っていると、少女はしきりに右足首のあたりを撫でていた。
どうやら捻ってしまったらしい。

これは悪いことをしたと思い、新左エ門は少女前に膝をついて、大丈夫か、と声をかけた。
少女は、大丈夫です、と言いながら立ちあがったが、足に力が入らないらしく、また転びそうになった。
新左エ門はそれをすかさず受け止め、送っていこう、と言った。

少女は、申し訳ありません、とはにかみながら顔を上げた。

そして新左エ門と目が合うと、みるみるうちに首から耳まで真っ赤に染まり、
あ、あ、と釣ったばかりの魚のように口をパクパクさせた。
新左エ門は、そんなに痛むのか、どこかほかに痛いのか、と声をかけるが、少女は首を横に振るばかりでなにも答えない。

少女の様子に動転してしまった新左エ門は、少女の膝の裏と肩のあたりに腕をまわし、少女を抱き上げた。
そうして一目散に自宅に連れて行った。

抱きかかえている間少女は顔を真っ赤にしたまま終始無言で、新左エ門の気を余計に焦らせた。

家に着くと、ちょうど非番だった新左エ門の父親がどこの家の娘かなどど少女に訊ねてみたり、
世話好きの母親が足首に包帯を巻いたりしていたが、少女は頬を少し赤くしたまま、まるで魂が抜けたように呆けていて、
ほとんど口を利かなかった。そうしてついには新左エ門と口をきくこともなく迎えの者におぶられて帰って行った。

その日は親父に、女子に怪我をさせるなどそれでも男か、と拳骨をくらい、長々とした説教を聞く羽目になった。
陽もとっぷり暮れてから、母親に、そこらへんにしたら、と言われてようやく親父は新左エ門を解放したが、
それ以来ことあるごとにこの話を持ち出されるようになって、新左エ門は、もう悪戯などするものか、と堅く心に誓った。


215:時代劇風味
10/12/24 21:47:22 OMOQ4jW+

それから数日。新左エ門は少女と会っていなかった。

新左エ門は初め、会って一言謝って、あわよくば友達になりたいなどと考えていたが、
今では、少女に会うことはもうかなわないのかもしれない、とも考えていた。

悪戯の挙句怪我をさせてしまったのだから、それも当然か。
そう思うと淡く寂寥感のようなものが心に湧き上がるのを感じたが、新左エ門にはどうすることもできなかった。

その日も寺子屋の帰りに遊んで行こうと新左エ門は川の方に足を向けた。
いつもの場所に来ると水の中に手を突っ込んで石の下やらを掘り返す。
蟹とかヤゴとか小魚を探して捕まえるのが新左エ門の常だった。

しばらくそうして、今日は不作だな、などと思って腰を上げた。

そこでふと、後ろからの視線に気がついた。

振り返ると、あの少女が立っていた。この前とはうって違って、かなり質素で、安っぽい着物に身を包んでいた。
少女は色白の顔をほんの少しだけ赤らめながら、もじもじとして何かを言いたそうにしている。

新左エ門はとりあえず謝らなければと思い、先日は済まなかった、などと堅くるしく謝辞を述べた。

すると少女は最初、まるで自分が何について謝られているのか分からないといったような様子できょとんとしていたが、
ようやく思い当ったのか、今度はより一層顔を赤くしながら、あたふたとしだした。
そして身振り手振りで何かを伝えようとしていた。

そうとは知らず、新左エ門が訝しげな顔をしながらまるで踊りのようなその動きを見ていると、
少女はとうとう首から耳まで真っ赤になり、眉を八の字にして、口をすぼめていつぞやのようにまた固まってしまった。

新左エ門は、どうすればいいのか一向に分からず、とりあえず言葉をかけようと少女の肩に手を置いた。
するとその瞬間、少女はいきなり新左エ門に飛びかかってきた。
新左エ門は突然のことに対応できず、そのまま少女と共に川に落ちた。

新左エ門が打った尻の痛みに顔をしかめていると、少女が自分に抱きついていることに気がついた。

新左エ門は、これ、女子がはしたないぞ、と少女に声をかけたが、少女は新左エ門の腰に腕をまわして、
顔を新左エ門の胸にうずめたまま離れようとはしなかった。

どうしていいのか分からずそのままにしていると、少女がぽつりと何かを呟いた。

川の水音にさえぎられて、新左エ門はそれを聞きとることはできなかった。

しかしもう一度言わせるのも何かおかしい気がして、とりあえず、こちらこそ、と言った。

少女はそれを聞くとひときわ強く新左エ門を抱きしめ、それからすぐに立ち上がってずぶ濡れの恰好のまま駈けて行った。

そして少女とはそれきり会うことはなかった。


216:時代劇風味
10/12/24 21:50:06 OMOQ4jW+

 「その時のことを思い出すと、なぜだか無性におかしくなってな。
  お前が嫁に来てからは前にもまして思い出すようになって、それで顔を合わせようとしなんだ」

芳乃は新左エ門の話を静かに聞いていた。新左エ門を見つめる瞳には、驚きと、どこか寂しげな色が浮かんでいた。

 「……その少女は、今どうしていると思っていますか」

 「さあな。綺麗な娘であったし、どこぞの大きな家の嫁にでもなっているのではないか」

 「……お会いになろうとは、思わなかったのですか」

 「思ったとも」

実際、新左エ門は少女に会いに行こうとはしたのだ。
しかし家を訪ねようにもどこの家の者か聞いていなかったし、両親に訊ねても教えてはくれなかった。
少女を探して町を徘徊したこともあったが、結局会うことはなかった。

なんとももったいないことではあるがの、と新左エ門がそう言うと、芳乃は、そうですか、とだけ言って俯いてしまった。
芳乃の様子に新左エ門は何かまずいことでも言ったのかと思って声をかけようと思ったが、芳乃の方が先に口を開いた。

 「その少女は、きっとおまえさまが会いに来てくれるのを、ずっとずっと、待っていたのではないでしょうか」

 「そうかもしれんが、所詮は推測の域を出んことだ」

新左エ門が少し冷たく言い放つと、芳乃は顔をあげ、綺麗な瞳で真っすぐと新左エ門を見つめて言った。

 「私は、お待ちしておりました」

新左エ門は、芳乃が何を言っているのか分からなかった。

芳乃は続ける。

 「川に落ちた次の日、私は風邪を引いて、それきり水辺に近づくことも、男の方とお話をすることも許されませんでした。
  父上は私を溺愛してましたし、怪我をしたり風邪をひいたりを立て続けにしたので、当然ではありました。
  でも、おまえさまのあの言葉のおかげで、ここまで頑張ってきました。」

217:時代劇風味
10/12/24 21:53:28 OMOQ4jW+
そこで芳乃はまた俯いて、でも、と再び言って続ける。

 「おまえさまには、私の気持ちは、伝わっていなかったのですね」

新左エ門はようやく理解した。

あのときの少女は―

 「芳乃、お前だったのか……」

こくん、と、芳乃は小さく頷いた。

 「だがなぜ、今まで黙っていたのだ」

 「おまえさまは、私のことなど憶えていないと思ったのです」

忘れるわけがない、と新左エ門は言おうと思ったが、芳乃はその言葉を遮るように言った。

 「町で一度だけ、おまえさまにお会いしました」

 「なに?」

新左エ門には心当たりが全くなかった。
会っていれば昔も今も変わらない美しさを見紛うわけもないし、新左エ門はきっと話しかけているはずだ。
しかしそんな記憶はない。

 「おまえさまは、綺麗なお方と楽しそうに二人で歩いていました。私は声をかけようかとも思いましたが、
  おまえさまの邪魔はするまいと、静かに見送りました」

 「ああ、そいつはな」

新左エ門は、それについては心当たりがあった。
二人で出掛けるような気心の知れた女といえば、新左エ門には一人しかいない。

 「おそらく、わしの従妹だ。お前がうちに来る前にな、どこの馬の骨とも知れぬ男と駆け落ちして、それきりだがな」

 「いと、こ」

うん、と新左エ門は頷いて、芳乃を見た。



218:時代劇風味
10/12/24 21:53:56 OMOQ4jW+

 「ところで芳乃」

 「は、はい」

芳乃は一瞬びくっとしたが、すぐに落ち着いて新左エ門を見た。

 「あのときお前は、わしになんと言ったのか、教えてはくれぬか。今更ではあるが、きちんと返事をしたいのだが」

新左エ門がそう言うと芳乃は顔を朱に染め、しかし、しっかりと新左エ門を見つめて言った。

 「私は……貴方様をお慕い申し上げています、と、あの時、そう、申しました」

新左エ門は自分の顔も同じように赤くなっているだろうな思いながら、しかしまた芳乃と同じように、相手の目をしっかりと見つめて返事をした。

 「わしもだ。昔から、お前のことしか見ていなかった」

新左エ門にそう言われて、芳乃は喜怒哀楽のどれとも取れないような顔をして。

いつか川の流れの中でそうしたように新左エ門の腰に手を回し、胸に顔を埋めて、

首から耳まで真っ赤に染めたまま、小さく、しかしはっきりとした透き通るような声で、

今胸にあふれる気持ちをそのまま伝える。

 「おまえさまを愛することができて、おまえさまに愛してもらうことができて、私は幸せです」

新左エ門もまた応える。

 「ああ。わしもだ。わしも、お前がいてくれて―お前がわしを好いていてくれて、幸せだとも」

新左エ門がそう返すと、芳乃は一層顔を赤くして、幸せそうに微笑んだ。


219:時代劇風味
10/12/24 21:54:33 OMOQ4jW+
終わりです
エロ無し宣言忘れてました
スイマセン



220:名無しさん@ピンキー
10/12/24 22:34:16 jnrhUBVo
まずはGJ!
お互い不器用そうなところが、時代物の三人称の文体にマッチしてていいんじゃない?
微妙に家格違いとかその辺りの要素がさりげなく効いてる。

221:名無しさん@ピンキー
10/12/24 22:38:33 85k7qLub
>>219
クリスマスプレゼントきた

GJ!!!!

222:名無しさん@ピンキー
10/12/25 02:41:56 NM9a+jgB
さっき作ったSSを投下します
暇だったもので・・・

223:クリスマスの日 1/4
10/12/25 02:43:47 NM9a+jgB
外には雪が降っており、冷え冷えとした空気が広がっていた。
にもかかわらず、町の至る所に人の姿が見えた。
とりわけ、カップルの姿が目に付く。それもそのはずで、今日はクリスマスだからだ。
人々の間には、寒さを忘れてしまうくらいの暖かい雰囲気が満ちていた。
寒さを与えるために降り注ぐ氷の結晶も、この日ばかりは多くの喜びをもたらす天からの贈り物となっていた。


「飾りつけはこんなもんでいいだろ」
「あとは星だけだね」

暖房の効いた温かい室内で二人の男女の会話が聞こえる。
女の子―沙希<さき>が星を手に取り、それをツリーの頂点に乗せた。

「これで完成っと」
「よし、終わったな」

二人は仕事を終えてコタツにもぐりこんだ。その上にはケーキが乗せられている。
食べる前に男子―武<たける>が沙希に声をかけた。

「あーあ、父ちゃんと母ちゃんがいれば、こんな飾りつけなんてしなくてすんだのに」
「仕方ないでしょ。おじさんもおばさんも今年は遅くまで仕事なんだから」
「しっかし、沙希はツリーの一番上まで届くような年齢になっちまったんだなー、俺も老け込むわけだ」
「どうしたの、急に親父くさいこと言って。まだ17歳でしょ」
「そうは言っても、昔の俺ならこんな雪の日は真っ先に外に出て遊んだんだけどなー。今じゃそんな元気は出ねぇんだよ」

そう言われると自分も老け込んだような気がしたが、それは雪を見てもはしゃがない年齢まで立派に成長したのだ、と沙希は思うことにした。

「まぁ、確かに。子供の頃は雪を見るとすぐ外に飛び出していったもんだよね」
「雪合戦したり、雪だるま作ったりしたなー」
「かまくらとかも作ったよねー」
「作った、作った。中に入った途端、崩れたりしてな」
「あれはホント・・・死ぬかと思った」
二人は顔を見合わせて笑った。

224:クリスマスの日 2/4
10/12/25 02:45:11 NM9a+jgB
ケーキを嚥下し終わると、沙希はツリーのほうへと視線を向けた。

「このツリー、もう十年以上使っているよね」
「悪かったな。買い換える金がねぇんだよ」
「あっ、いや、そういう意味じゃなくて。私達が子供の頃から―」
「ひひひ、冗談だよ。そうだな、昔からずっとこのツリーを飾って、家でクリスマス会をやってたもんな」

武の言葉を聞いて、沙希は感慨深くなった。このツリーは何十年も二人の成長を見てきたのだ。

「私達のことを、ずっと見守ってくれたんだよね」

沙希は思わず感懐を口に出した。
その途端、武が噴き出し、ついには声を上げて笑った。

「な、なに!?」
「だって、マジ顔で語っちゃってんだもん」

武にそう言われて、沙希は赤面した。急に自分のことが恥ずかしくなった。

「『私達のことを、ずっと見守ってくれたんだよね』」

武が沙希の声色を真似て台詞をなぞった。沙希はあまりの羞恥から今にも卒倒しそうだった。

「や、やめてよ~」

沙希の懇願を無視し、武は再び同じ台詞を言った。

「やめろーー」

沙希は大声を出して、武の口を塞ごうとコタツから勢いよく出た。
無我夢中で飛び出したためか、片足をコタツの脚にひっかけ、バランスを崩してしまった。
床に倒れこむ、と思った刹那、座っていた武が沙希の体を受け止めた。
難を逃れた沙希は、下敷きとなってくれた武に謝罪とお礼を言おうとして、彼の胸から顔を上げた。
その瞬間、武の顔が間近に現れた。こんな近距離で顔を見合わせたことなど一度もなかった。

「うわぁっ!」

沙希は思いがけない事態に声を上げた。その顔は、またも赤面していた。しかし、今度は別な意味の恥ずかしさからだった。
胸に手を当てて、高鳴る鼓動が落ち着けようとしていた。

「何だよ、人の顔みてそんなに驚くなんて失礼じゃねーか。・・・まぁいい、それより大丈夫か?」
「う、うん、ありがと・・・」

沙希はコタツに戻ってしばらくうつむいていた。
今はまだ、目の前にいる男子を直視できなかったからだ。

225:クリスマスの日 3/4
10/12/25 02:46:42 NM9a+jgB
「そういや、さっきの話の続きだけどよ」
「さっきの話?」

あんなことがあったため、沙希はすぐに思い出せなかった。

「ほら、昔から俺ん家でクリスマス会をやってたこと」
「あ、ああ、うん」
「前はもっといっぱい人がいたんだよなー」
「そうだね。武の友達とか、私の友達とかも集まってたし」
「それが去年からか、ついにお前と二人だけになったのは」
「うん」

最もそれは沙希にとって嬉しいことであったが。

「高校に入ってから、何故かみんな彼女ができちゃったんだよな」
「私の友達も、ほとんどが彼氏持ち」

次に武が放った一言は、沙希をどきりとさせた。

「お前は彼氏つくらねーの?」
「えっ・・・わ、私は・・・」

沙希は言いよどんだ。実は目の前の人を彼氏にしたいなどとは言えなかった。だから何とかごまかすため、逆に訊いてみた。

「そ、そういう武はどうなの?」

そう言った瞬間、沙希は後悔した。
もし彼女が欲しいと熱望していたり、最悪いまいる好きな人でも聞かされたら、とてもじゃないがこの場で平常心を保つことなど無理に思えたからだ。

「お、俺かっ・・・そうだな・・・」

武は沙希を見つめた。沙希はまた胸が高鳴った。

「俺は・・・いいかな、彼女なんて。面倒くさそうだし、金かかりそうだし」

沙希は思わず頬が緩ませた。そして、お茶をすすってから穏やかに言った。

「そっか、そっか」

沙希に応じて武がしみじみと言った。

「そうだ、そうだ」

二人は再び笑いあった。

226:クリスマスの日 4/4
10/12/25 02:49:18 NM9a+jgB
「沙希、クリスマスプレゼントはちゃんとサンタさんに頼んだか?」

急に話題を変えて、武が話しかけてきた。
沙希はそれを聞いて危うくお茶を噴き出しそうになった。

「私、高校生ですけどー!?」

サンタなど今時の小学生でも信じていないのに。まして高校生が―。

「何だよ、ノリが悪いなー」

そう言われて沙希はムッとした。本当に欲しいものを今すぐ言ってやろうかと思った。
しかし、無論そんな勇気などなかったので、それはしかるべき機会にとっておく事にした。
代わりにあることを思いついた。

「・・・がほしいかな」
「えっ、何だって?」

沙希の声が小さかったので、武は聞き返した。
その瞬間、沙希は後ろに置いておいた物を武の目の前に見せた。

「勝ち星がほしいかな!」

沙希の手には携帯ゲーム機が握られていた。後で武と一緒に遊ぼうと持ってきたものだった。

「はっ、おもしれぇ。また返り討ちにしてやんよ」
「どうかな。私はあれから一生懸命育てたんだよ」
「そいつは俺だって同じだ」

二人は対戦を始めた。お互いのモンスターを1体ずつ戦わせて、相手の持っている6匹全部のモンスターを倒したら勝ちというゲームだった。
しばらく両者とも口を開かず夢中にゲームをしていたが、やがて沙希の顔が強張った。
それを見た武がすかさず沈黙を破った。

「俺はまだ6匹残っているけど、お前はあと2匹だな」
「・・・・」
「降参したほうがいいんじゃないか」

勝負は、言うまでもなく武の勝ちだった。

「やっぱり俺の勝ちだったな」
「ふふっ、ふふふ」

沙希が突然笑い出した。その様子をみて、武は狼狽した。

「おい、どうしたんだよ急に・・・」
「ごめんごめん、やっぱり楽しいなーって」
「楽しいって・・・負けたのに?」
「負けたのに」

そう言って、沙希は武に微笑んだ。その顔をみて、武はどぎまぎし、顔を背けた。


 *  *  *  *  *  *  *


サンタに頼んで願い事が叶うのなら、私はこうお願いするだろう。

『この幼馴染みと、いつまでもこんな仲でいられますように』 

227:名無しさん@ピンキー
10/12/25 02:54:27 NM9a+jgB
以上で終わります
喜んでいただけたなら幸いです

>>219
GJです!!

228:名無しさん@ピンキー
10/12/26 00:02:12 Gorh7+/B
>>219 >>227

GJ。

229:名無しさん@ピンキー
10/12/26 22:59:13 ba4mbrdH
世の中顔なんだと考えて自分に自信を持てない少年を幼馴染みに持つ女の子の話

230:名無しさん@ピンキー
10/12/27 18:16:50 +LIbuhaw
>>227GJ!!

すなばさんとMYさん断筆してしまったのか?続編をまっている。

231:名無しさん@ピンキー
10/12/30 19:22:53 0AJ+35/o
投下します
エロなしです

232:文章表現
10/12/30 19:24:43 0AJ+35/o
1.

冬の短い日が沈み、辺りはすっかり暗くなっている。
人々の生活の証である電光が、その暗闇を照らしていた。

「あーっ、もう。この先の展開が思いつかない」
とある一軒家の一室で少女の声が響く。嘆声にしてはやや大きい。
「まぁまぁ」
そんな少女の横で、少年のなだめる声がする。
「落ち着いて。焦ったっていい作品はできないよ」
そう告げた途端、少年はティーカップに入っている紅茶をすすった。
「なに悠長なこと言ってんの、浩太。もう締め切りは近いんだから」
浩太と呼ばれた少年が、その少女の言葉を聞き、肩をすくめる。
「だったら、何でもっと早く着手しなかったの?」
「しーまーしーた。今年の春からずーっとパソコンに向かって。キーボードをカタカタと」
「それで、小説はどのくらいまで出来たの?」
「・・・構想の半分くらい・・・」
「・・・今年は諦めたほうがいいかもね」
「嫌。絶対今年に投稿するって決めたんだから」
そう言って少女は再びパソコンと向かい合った。

「ねぇ、美里」
頭を抱えている少女、美里が振り返って、浩太を見た。
「んぁー?」
「構想ができているのに、何で展開が思いつかないの?」
すると、美里は人差し指を上に立て、それを横へと振った。
「全然分かってないんだから、あんたは」
紅茶を飲みながら、浩太はその言葉を聞いていた。
「あの場面とあの場面を、いかにうまくつなげるか。そして尚且つ、読者をあっといわせる表現も考慮して―」
美里は自分の創作論を展開したが、浩太はうんざりした表情を浮かべ、半分以上を聞き流していた。
「君の理論はよく分かったよ、美里。だから、早くそれを実行してほしいな」
「あんたが話しかけてきたんでしょーが」
「ごめん、俺が悪かった。執筆の続きをどうぞ」
再び室内を静寂が支配した。

233:文章表現
10/12/30 19:27:39 0AJ+35/o
だが、手持ち無沙汰になった浩太はやはり退屈だった。
「ねぇ」沈黙に耐えかね、ついに浩太が口を開いた。
「なーにー?」丸っきり指を動かしていない美里が、ややけだるそうに応えた。
「今度はどんなジャンルの小説を書いているの?」
「んー、純文学に近いかも」
「うぇっ」
浩太は思わずうめき声を漏らした。
「何よー、その声」
「だって、また読まされるんでしょ、俺」
「当たり前じゃん。最初の読者があんたなのは、昔からのしきたりでしょ」
「ああいう堅い文は正直・・・」
「どこが堅いのよ。芸術的で素晴らしい名文の嵐じゃん」
浩太にとっては、美里の言うその「芸術的で素晴らしい名文」が苦手なのだが、目の前の少女にそれは分かってもらえなかった。
「いま暇でしょ。そこにある名作たちでも読んで、少しは純文学に慣れておいてよ」
そう言って、美里は本棚を指した。
背の高い本棚が4つほどある。そのうち3つには本がぎっしりと詰まっており、残り1つも半分くらい埋まっていた。
「えーっと、どの辺?」
「純文は・・・一番左の本棚の、上のほう」
浩太が見上げると、そこには名高い文豪の作品がずらりと並んでいた。
しかし、文学にまるで興味のない浩太には、一部の作品を除いて聞いたこともないタイトルばかりが目に入った。
そこで彼は、おそらく日本で一二を争うくらいに有名なタイトルを手に取った。

ベッドに腰掛け、活字を追っていた浩太だが、数十分も経たないうちに本を閉じてしまった。
「・・・ダメだよ、美里。何か疲れてきた」
そういって、彼は小説を本棚に戻した。
「えーっ、何でよー。無我夢中になるくらい面白いのに」
「安心して、君のはちゃんと読むから。・・・何とか努力して」
「もう」
美里は呆れ顔で浩太のほうを見つめている。その浩太は、一番右の本棚で読むものを物色していた。
「どんな本がいいってわけ?」
「俺にはこういうのが合ってるかな」
彼の手の中にはティーンズ向けの小説があった。
「また。あんた好きだよね、ライトノベル」
「まぁね」
浩太は再びベッドに腰掛け、読書に勤しんだ。

234:文章表現
10/12/30 19:28:29 0AJ+35/o
浩太の読んでいる小説は、主人公の少年と少女が活躍する冒険物語だった。
そして、その二人の人物の関係は―
(幼馴染み、か―)
浩太は思わず本から顔を上げ、パソコンの前で頭を悩ませている少女を眺めてみた。
(俺も美里とは随分長い付き合いになるなぁ)

浩太が美里と出会ったのは幼稚園の頃だった。
幼稚園から自宅まで向かうバスの中で、いつも最後まで残っていたのは浩太と美里だけであった。
園児が彼らだけになってしまった空間で、退屈を紛らわすために二人は話し込むようになり、そして大の仲良しになった。
お互い家が近所であるので、二人は毎日のように一緒に遊んでいた。
子供の頃から現在まで、その関係は変わっていない。

浩太は読書を中断し、ティーカップを手に持ち、美里を眺めながら物思いに耽っていた。
(それにしても、我が幼馴染みがこんなにも本の虫になってしまうとは思わなかったなぁ)
幼い頃の美里は、外でしか遊ばない女の子であった。
美里の探検ごっこやヒーローごっこといった遊びに、浩太はくたくたになるまでつき合わされていた。
(それが・・・)
本の世界に没頭するようになってから、美里は友達との付き合い以外ではあまり外に出ることはなくなった。
もちろん自宅で本を読んでいるのであるが、しかし何よりも自分で文章を書くことに時間を注ぐようになったのだ。
(ホント、人っていつどんな風に変わるかわからないもんだよねぇ)
浩太は空になったティーカップを床に置き、再び物語の世界へと入っていった。
その瞬間、キーボートを打つ音が室内に響くようになり、それはしばらく途切れることがなかった。

だが、その音を聞き読書に勤しむ傍らで浩太は思うことがあった。
(美里ってば、高校生なのに純文学なんて書けるのかな。・・・無理だと思うけどなぁ)
浩太はさっき見ていた小説の文章を拠り所として、そう勝手に結論付けていた。
(背伸びしすぎず、この本みたいにもっと軽い文章を目指して書いたほうがいいような―俺のためにも)
彼はため息をつき、そして今度こそ読書に集中した。

235:文章表現
10/12/30 19:29:34 0AJ+35/o
2.

美里が本に取り付かれたのは小学3年生のときだった。
     
「美里ー、お昼休みだよー。早くグラウンドに行こうよ」
今よりもっと少年であった浩太が美里を催促している。
「・・・うん」
返事はしているものの、美里は自分の机から一向に離れる気配をみせず、教科書を耽読している。
「何で休み時間でも教科書読んでるのー」
「だって、続きが気になるんだもん」
昼食の前の時間は国語の授業だった。その授業ではとある小説を題材としていた。
「また明日続きやるって先生言ってたよ」
「明日まで待てない」
「えーっ」
「悪いけど、今日はパス。あたし抜きで遊んできていいから」
「もー」

帰りの時間となり、ランドセルを担いだ浩太が美里に話しかける。
「美里ー、帰ろー」
「ごめん、ちょっと図書館寄ってもいい?」
「・・・・」
「何、その顔」
「あんな静かな場所、美里とは一番無縁なところだよ。騒いだら駄目なんだよ」
「あんたねぇ・・・あたしを何だと思っているの。本を借りに行くだけよ」
「美里が本・・・?・・・ぜ、絶対熱があるよ。確かめてあげる」
「・・・あんたって奴は・・・」
一人で図書館へと向かっていく美里の後を、浩太は慌てて後を追った。

           *

「いやー、悪いね。あんまり構ってやれなくて」
帰り際の浩太に美里が自宅の玄関で話しかける。
「別に気にしてないよ、そんなこと。・・・だっていつものことだし」
「あはは、本当に助かるよ。あんたがベッドに座ってると、あたしは椅子に固定されざるを得ないから」
「もうちょっと、集中力を養った方がいいんじゃない」
「むぅ・・・分かってるよ」
美里はふくれっ面をしてそっぽを向いた。
「じゃあね」
「うん、また明日」
外に出た浩太は冬の冷気に身を縮ませながら帰路についた。


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