【友達≦】幼馴染み萌えスレ21章【<恋人】 at EROPARO
 【友達≦】幼馴染み萌えスレ21章【<恋人】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
10/11/14 01:20:35 zmneRkTn
前スレ 【友達≦】幼馴染み萌えスレ20章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)

19代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ19章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
18代目:【友達≦】幼馴染み萌えスレ18章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
17代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ17章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
16代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ16章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
15代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ15章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
14代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ14章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
13代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
12代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
11代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
10代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
9代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ9章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
8代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ8章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
7代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ7章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
6代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ6章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
5代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ5章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
4代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ4章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
3代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ3章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
2代目スレ:【友達≦】幼馴染み萌えスレ2章【<恋人】
スレリンク(eroparo板)
初代スレ:幼馴染みとHする小説
スレリンク(eroparo板)

3:名無しさん@ピンキー
10/11/14 01:25:14 zmneRkTn
*関連スレッド*
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第9章(派生元スレ)
スレリンク(eroparo板)
いもうと大好きスレッド! Part 5(ここから派生したスレ)
スレリンク(eroparo板)
お姉さん大好き PART6
スレリンク(eroparo板)

*これまでに投下されたSSの保管場所*
2chエロパロ板SS保管庫
URLリンク(sslibrary.gozaru.jp)

--------
次スレはレス数950or容量480KBを超えたら立ててください。
では職人様方読者様方ともに今後の幼馴染スレの繁栄を願って。
以下↓



4:名無しさん@ピンキー
10/11/14 01:27:07 zmneRkTn
えーと、こんな感じでいいのかな?
何か抜けてたりしたら、すみませんが付け加えてくださると嬉しいです。

5:名無しさん@ピンキー
10/11/14 02:03:04 gspWaLHj

     ::|    ____
     ::|.  ./|=|    ヽ.    ≡三< ̄ ̄ ̄>
     ::|. / |=|  o  |=ヽ     .≡ ̄>/
     ::|__〈 ___  ___l   ≡三/ /
     ::|、ヽ|.|┌--、ヽ|/,-┐|    ≡/  <___/|
     ::|.|''''|.\ヽ--イ.|ヽ-イ:|  ≡三|______/
     ::|.ヾ |.::. .. ̄ ̄| ̄ /
     ::|  ';:::::┌===┐./
     ::| _〉ヾ ヾ二ソ./       こ、これは乙じゃなくてスラッガーなんだから
     ::||ロ|ロ|  `---´:|____    変な勘違いしないでよね!
     ::|:|ロ|ロ|_____/ロ|ロ|ロ,|`ヽ
     ::| |ロ|旦旦旦旦旦/ロ/ロ|旦,ヽ

6:名無しさん@ピンキー
10/11/14 17:48:36 RatU7Q79
>>5
不意打ちでスラッガー喰らって仰け反ったw


7:名無しさん@ピンキー
10/11/15 00:04:16 HrbdD5Ek
スレ建ての父である同志>>1

8:名無しさん@ピンキー
10/11/15 07:30:47 UvARRS0u
>>1乙&前スレの投下GJ

9:名無しさん@ピンキー
10/11/15 18:17:58 pT6Xtjga
9るしみ悶えながら幼馴染みが>>1乙

10:名無しさん@ピンキー
10/11/17 10:40:26 1oLiDJay
禁断症状に苦しむ幼馴染みにキスですねわかります

11:名無しさん@ピンキー
10/11/17 20:25:24 7qQATjXw
ピコーンピコーンピコーン
ですね

12:名無しさん@ピンキー
10/11/18 14:39:16 JfP5Zf0N
我慢に我慢を重ね、学校では必死に自重し―

―二人で家に入って後ろ手にドアと鍵を閉めた瞬間、男に飛びかかっちゃうんですねわかります

13:名無しさん@ピンキー
10/11/18 18:48:25 zO/qdRin
朝の通学路


誰かの視線を感じる
というかまあ確実に見られているんだが
後ろを振り向くと案の定叶理(かなり)がいた
長い黒髪が顔にかかり、某映画の井戸から這い出てくるアレを彷彿とさせる少女
俺たちの通う学校で「井戸から出てこない貞子」の称号をほしいままにしている(?)俺の幼なじみである
「よう」
「お、おはょぅ…」
ぼそぼそと、どもりつつ挨拶を返す叶理
コイツはとにかく昔から暗いヤツで、友達と呼べるような奴は俺しかいない
特にこのビジュアルとどもり症のせいで随分損をしてきていると思う
「あ、あの…きょ今日も、す澄人くんの分のお弁当、つ作って来たから…」スィーとまるで幽霊のように俺の手に弁当を握らせる叶理
小さい子がこれやられたら泣くな
「あっ」
その時ぶわりと吹いた風が叶理の前髪を吹き上げ、その素顔を露出させた

その誰が見ても美少女な顔を見て、俺は今日も「お前、そろそろ髪切れよ…」と言うのだった

続かない

14:名無しさん@ピンキー
10/11/18 21:47:19 FBcEGby2
>>13


15:名無しさん@ピンキー
10/11/18 22:03:23 cLr5631G
>>13

16:名無しさん@ピンキー
10/11/18 22:26:07 zO/qdRin
なんかごめんなさい
こんな幼なじみもアリかと思ったんですマジすいませんでした

17:名無しさん@ピンキー
10/11/18 22:34:27 S+dRllrR
>>13
続けてくれるなら許す。

18:名無しさん@ピンキー
10/11/18 23:22:32 1sOJhQQL
男が切ってやりゃいいじゃん!
いいじゃん!

19:名無しさん@ピンキー
10/11/18 23:34:04 ZGY/uE4a
>>16
いや続けてって事だと思うぞw

20:名無しさん@ピンキー
10/11/18 23:37:51 sW1iv6+w
無言の叫び

21:名無しさん@ピンキー
10/11/18 23:42:36 hmoH8SnV
>>18
きってやろうとすると嫌がられるので
それならばと男が毎朝女の髪を上げてやる作業を…

22:名無しさん@ピンキー
10/11/19 00:34:36 HrkzOlU5
>>13
そんな続かないとか……
是非とも続きを!!

23:名無しさん@ピンキー
10/11/19 12:28:21 RLm4t4t8
>>21

筒井筒の世界ですね。わかります。

24:名無しさん@ピンキー
10/11/19 19:02:21 th+cVh92
>>13学校で抵抗しないのをいいことに性交渉を強要されるとこに割り込む男まで頼む

25:13
10/11/19 19:50:43 EGG1d0lT
ありがとうございます!
自分も続きが書きたくなって書きためているんですが、規制に巻き込まれていていつ投下出来るかわかりません

規制解除次第投下しにきますのでその時は宜しくお願いします

26:名無しさん@ピンキー
10/11/20 21:05:53 87b+D5aV
つくば氏さんまたいらっしゃって欲しい

27:名無しさん@ピンキー
10/11/20 22:09:46 7V/2mSOk
ボルボXさん・・・

28:名無しさん@ピンキー
10/11/20 22:26:00 a5kXE3pY
ボルボXさんの続きずっと待ってたけどもうよく覚えてないや

29:名無しさん@ピンキー
10/11/20 22:58:31 nuktMI7E
>>25
投下待ってる

30:名無しさん@ピンキー
10/11/20 23:38:31 U3BQzbgw
自分の好きな話は未完でも定期的に読み返す俺に隙はなかった

31:名無しさん@ピンキー
10/11/20 23:52:30 Py0eM618
華麗が読みたい!

32:名無しさん@ピンキー
10/11/21 17:19:52 XTTUK9mN
とある田舎町に住む主人公と近所の幼馴染(♀)は非常に仲が良かったが、関係が近過ぎたせいかお互いを男女として意識する事はなかった。
しかし、高校の卒業直前になって、父親の事業が危うくなった幼馴染は町の大地主と結婚させられることになってしまう。
その時になって初めてお互いを愛している事を自覚したが時すでに遅し、幼馴染は地主と結婚し、主人公は逃げるように大学のある東京へ引っ越した。
数年後、久しぶりに帰郷した主人公は地主が死んだ事を知り、葬儀の席で幼馴染に再会するが、子供も出来ず苛酷な結婚生活を続けた彼女の心はすっかり傷付いていた。
主人公の愛の力で幼馴染を救う事はできるのか!?

33:名無しさん@ピンキー
10/11/21 17:24:27 tpQkKgDc
中古品って時点で無理な人間はいる

俺とか俺とか俺とか

34:名無しさん@ピンキー
10/11/21 17:58:53 T0eQH0h2
中古品とかこだわらないが
生家の経済的問題が解決していないと思われるので無理

子供ができてればおそらく乗っ取ることを考える

35:名無しさん@ピンキー
10/11/21 18:15:56 O7WsdsqR
幼なじみは新品がいいなあ。

36:名無しさん@ピンキー
10/11/21 22:13:27 dsVh1Eo5
昔からずっと好きだった少女が既に他の男によって女になっていたらもう全力で拒絶しかねない
仮にくっついても体は許せないかもしれない(互いに初めて同士じゃないと嫌だ)
逆を言えば女になってなければどんな遍歴を辿ってきてもある程度は許せるが
(もしくは自分が初めての相手となり、その後他の男のもとへ行っちゃっても)
俺の考え方は古臭い上に適当な所もあるとか言われそうだが
 
幼馴染って大体が物心ついた時から一緒だから何をするにも一緒だったから思い出があるわけだ
そしてずっと一緒にいれると信じてたが逢えなくなって初めて本当の大切さに気付いた
だけど相手に嫌われて逢わなくなったから好きという気持ちだけがどんどん膨らみ
後になって「幼馴染と一緒に過ごしたかった…」という後悔が大きくなってく…
こっちから嫌いになって逢わなくなったのなら苦しむ事もなかっただろうな…

37:名無しさん@ピンキー
10/11/21 22:28:36 pKtBNUzP
寝取られスレの方があってると思うよ。

38:名無しさん@ピンキー
10/11/21 22:44:43 dsVh1Eo5
寝取られ(他の奴に好きな子を取られる)は全く趣味ではない
ところで寝取った相手が自分や好きな子と幼馴染だった場合とかどっちの分類になるんだろう

39:名無しさん@ピンキー
10/11/21 23:07:50 QF2/a+8M
>>38
よくわからんが寝取られるのはムカつくけど
寝取んのはヒャッハー!!ってなるし状況次第なんじゃねーの?

まぁ、このスレ向きではないだろうなぁ

40:名無しさん@ピンキー
10/11/21 23:13:14 u1hC0aBa
寝取るとか寝取らないとか身の毛もよだつ話より自堕落でなまけんぼうの幼なじみの世話を焼きたい、男側で


41:名無しさん@ピンキー
10/11/21 23:43:33 4j6mhBx0
>>40
その後、世話焼きの愛を感じ、男が好きだとなって自堕落な生活をやめようとする幼なじみ、
それによってもう必要なくなったんだろうかと苦悩する男のすれ違いまで浮かんできた。

42:名無しさん@ピンキー
10/11/21 23:44:22 33v7pxiF
今ネトゲ廃人な幼馴染と毎日部屋の前にご飯を置き続ける男の話をちまちま書いていた

43:名無しさん@ピンキー
10/11/21 23:49:18 pKtBNUzP
告白された所を根暗な幼馴染に見られて取られたくない一心で逆レイプされたい

44:名無しさん@ピンキー
10/11/22 00:29:01 gv3Ua0FR
>>42
なんつー難儀なおにゃのこw
そういうのも好きだが

45:名無しさん@ピンキー
10/11/22 08:28:03 wkR7XdoK
無口無表情幼なじみの控えめな意思表示を自分だけが理解できるとかはどうだろうか

だけど恋心だけは気がつかないテンプレ男

46:名無しさん@ピンキー
10/11/22 08:42:17 FoW5catL
>>32-33
「可能性を生み出しただけでもアウト」ってのはなかなか名言だと思う
この場合は「嫁に行った」時点でアウトって事だな

47:名無しさん@ピンキー
10/11/22 15:52:34 ZlBzItzF
嫁に行っちゃった幼なじみというと、ちょっとトラウマがある。

俺の母親はフラワーアレンジメントを近所のおばちゃんや女の子に教えていた。
その中に、みさきという女の子がいて、俺より3つ年下だった。
最初は母親に連れられてきていて、俺が小学校に上がったばかりだったからまだ幼稚園児だったと思う。
みーちゃんと俺は呼んでいた。
みーちゃんと遊んでいると面白かった。
俺には女の子の友だちなんていなかったから、物珍しかったのもある。
小学校の高学年ぐらいになると、みーちゃんがどうやら他の子よりもずっと綺麗なんだということに気がついた。
目元が冴え冴えとしていて、鼻筋が通って、口元は小さく引き結ばれていた。
でも、なんだか俺はそれに気がついたことにものすごい罪悪感みたいなものがあって。
みーちゃんを避けるようになった。
うん、はっきりと避けていた。
みーちゃんはなんだかつまんなそうにしていたけれど、それでも俺の母親にフラワーアレンジメントを習い始めていたので、うちには週一で来ていた。
俺の姿が見えると、嬉しそうにしていたけれど、俺は口も聞かずにぷいっと向こうに行ったりしてたから、たぶん俺に嫌われていると思ってたんじゃないか。
俺は中学生になると、部活でやたら忙しくなったので、みーちゃんには顔をほとんど合わせなくなった。
ちょっといい記録を出したり部長に選ばれたりしたもんで、俺のことを好きだと言ってくれた女の子も何人かいた。
なんていうか、俺はそういうの苦手だったんだよな。
ものすごく照れくさいから、全部無視した。今考えればとんでもないことをしたと思う。
で、心の中でちょっと思ってたんだよな、みーちゃんも俺のことカッコイイって思ってるかなって。

俺が高校生になると、三つ年下のみーちゃんも当然中学生になって。
テスト前なんかで部活が休みの時には、みーちゃんと顔を合わせることもあった。
頭をがん、と殴られたぐらいみーちゃんを見るたびにショックがあった。
芸能人とかそういうのとは全然違った意味でどんどん綺麗になっていってた。
めったにニコリともしなくなって、なんだか思い詰めているような表情とか、ちょっと遠くを見ているような目とか。
だめだ、俺みーちゃん好きなんだ。
もう認めるしかなかった。でも、いくらなんでも当時の三つ下というのは完全に変態でキモい年齢差だったわけ。
俺、みーちゃんがちょっと背が低いのを気にしていたのを知っていたから、よくからかっていた、
「あれーっ、いつ小学校卒業したんだっけ?」って。
みーちゃん、怒ってたな。
あんまり彼女が綺麗なので、周囲の大人が「もう彼氏できた?」なんて聞いているわけ。
俺、聞き耳立てちゃったよ。
そのたんびにみーちゃんは、自分は男なんて嫌いだから結婚なぞしないんだと言い張ってた。
一度、俺がそのことでからかって「嫁のもらい手がないからなあ」って言ったら、俺の目をじっと見て、
「うん、私を貰ってくれる人なんていない」って真面目くさった顔で言うんだよな。
なんて返事していいかわからなかった。

48:名無しさん@ピンキー
10/11/22 15:52:59 ZlBzItzF
俺の大学受験とみーちゃんの高校受験が重なって、みーちゃんはもう三年になるとうちへは来なくなった。
俺は、みーちゃん俺のこと好きなんだとなんとなくわかってた。
でも、いくらなんでも高校生が中学生に好きだとか言えないと思ってた。
今考えれば言えば良かったんだ。
俺の入った大学にみーちゃんが来てくれればいいなあと、そんなことを考えていた。
大学四年生と一年生なら普通に恋人同士じゃん、と。
なんだかんだで現役で三流私大にもぐりこんだはいいけれど、理系のキツさで彼女を作る暇もなかった。
いや、あるにはあったのかな。
結構可愛い子を紹介してくれた友だちもいた。
でも、みーちゃん見たときみたいな、胸がずきんとして悲しくなるような気持ちになる相手はいなかったな。
大学生が高校生に好きだとコクるのはちょっと、という思いがあってなかなか言えなかった。
というか、ゆっくり話す機会なんてなかった。
それでもみーちゃんに彼氏はいないらしいし、だったらまだ俺のことが好きなんじゃないかと期待していた。
たまに会うと俺のことをじーっと見て、滅多に笑わない子が、ちょっとだけ笑った。
あんな綺麗な子に見つめられて莫迦な妄想をしているだけかな、とも思えたのでやっぱり好きとか言えない。

結局みーちゃんは一浪して、別の大学に行ってしまった。
俺はみーちゃんの大学入学と同時に社会人になってますますみーちゃんには会えなくなっていった。
さらに悪いニュース。
みーちゃんに彼氏がとうとうできてしまったという。
みーちゃんちのおばさんがうちの母親に言ってたんだよ。
最近男とつきあいだして帰りが遅いとか。
「ねえ、○○君もどう思う?」なんて俺に聞くもんだから、俺もつい、
「みーちゃんもその彼氏と結婚すれば落ち着くんじゃないですか?」とか適当なことを言ってたけど、いや、実はショックだった。
さらに、俺は実はたいした規模ではないけれど家業を継がなければならなかったので、就職先は3年半で辞めた。
自宅に隣接した事務所で仕事するようになったんだけど。
ある日、みーちゃんが結婚相手を連れて俺の母親に挨拶に来るっていうんだわ。
俺、それを知っていたらその日、家にいなかったと思う。
いきなり知らされて、母屋へ来い、おまえもみーちゃんとは仲良かったから挨拶しろとか母親に言われて、俺は忙しいのを口実に断ったね。
いや、実はその日はそんな忙しくなかったように記憶している。
とにかく、俺はみーちゃんの結婚相手なんて男と顔を合わせたくなかったんだ。

一応、イナカの自営業者だから、嫁を俺も取らなければいかんと言われてそれから何回か見合いをさせられた。
断ったり断られたり。全然まとまらない。
そのうちの一人がみーちゃんの高校時代の同級生だった。
共通の知人がいるということで話がはずんだんだけど。
「みさきね、○○さん(俺のこと)が好きだったんですよ。
大好きな人がいるけれど全然相手にしてもらえないって言ってました」
なんか、俺、それを聞いたときは平然としていたけれど、あとで自宅に戻ってへなへなとなりましたよ。
あ、その見合い相手とは結局どうもお互いピンとこないという理由でまとまりませんでした。
いい人だったんだけどね。

みーちゃんが里帰りしたとき、偶然遠くから見かけたことがある。
小さい女の子の手を引いていた。
俺が記憶している一番小さいころのみーちゃんによく似ていた。
向こうはこちらに気がつかなかったみたいで、本当に良かった。

それにしても、俺の人生、どうしてフラグが立たなかったんだろう。

ってことで、長いつぶやき、終わり。

49:名無しさん@ピンキー
10/11/22 16:13:41 wkR7XdoK
>>48
なんでそれを己の内に秘めて置かなかったんだorz


おのれ、鬱電波を伝播させる気だな!
そうはいかん!そうはいかんぞorz

50:名無しさん@ピンキー
10/11/22 16:19:00 ZlBzItzF
>>49
すまん、実は一か月ぐらい前にみーちゃんから電話がかかってきたんだわ、うちに。
俺の母親がなんか送ったとかでお礼の電話だった。

なんかいろいろ言いたくてたまらなかったんだけど、「わかりました、伝えておきます」
とだけ言って切ってしまった。

俺、まだ独身だよ。つか、もう最近見合いの話もないから、
このままハゲデブこじらせたまま墓に行くことになりそうだ。

51:名無しさん@ピンキー
10/11/22 16:47:55 d8/UoHN1
泣ける話だ・・・

52:名無しさん@ピンキー
10/11/22 17:16:49 ZlBzItzF
俺の中のイメージではニコリともしない子だったみーちゃんだが、
元同級生の話によると、学校ではかなり莫迦騒ぎというか、はしゃぐ子だったらしい。
ただ、ひどく変わり者で校内一の変人といわれていたそうだ。
綺麗な顔と騒がしさのギャップがすごくて、近寄る男がいなかったと。

53:名無しさん@ピンキー
10/11/22 18:32:36 l++wixDu
もういいよ

54:名無しさん@ピンキー
10/11/22 18:44:47 6YckDXpp
悪いがリアルの話はスレ違いだ。

55:名無しさん@ピンキー
10/11/22 19:22:42 2hX6CBOu
>>52
ぐちぐちいうくらいならSSのネタにして、存分にハッピーエンドにして、ここに落とせよ。話はそれからだ

56:名無しさん@ピンキー
10/11/22 20:17:04 MAHIHTNs
>>52長文来てるから何事かと思ったわ。然るべき吐き出し場はあったろ?他の板に。
そういや前スレも序盤にリアル話絡めたNTR話の流れあったね

57:名無しさん@ピンキー
10/11/22 21:35:01 vHZcnQo+
別の某板もそうだけど、幼馴染みスレってなぜか「めんどくさい」リアル話がくるよね。

58:名無しさん@ピンキー
10/11/22 21:49:38 YzDLhtuy
そんなことより幼馴染とLCCする話でもしようぜ!(AA略

59:名無しさん@ピンキー
10/11/22 22:57:44 T+wIc3tL
LCCって何だ・・・
ラブいっぱいのチュッチュ?

60:名無しさん@ピンキー
10/11/22 23:14:32 wkR7XdoK
LCC(ラブ・チャイルド・子作り)

61:名無しさん@ピンキー
10/11/23 02:50:58 0CMemHDN
LCC・・・

 初めて飛行機乗って、離陸が怖くて手をぎゅっと握ってくる幼馴染、いや、なんでもない。

62:名無しさん@ピンキー
10/11/23 13:30:44 eYW3Oeak
ノビてると思ったら気のせいだった

ボルボXさんマダー

ああいう明治大正な空気が好きなんだが幼なじみものにしようと思うと難しいなぁ…。
身分とか絡めるのが定石か

63:名無しさん@ピンキー
10/11/24 01:17:23 i25e5aSS
>48-49,>52
間違ってるかもしれんが、この文体はうにさんじゃないのか?

64:名無しさん@ピンキー
10/11/24 03:00:48 gOE8zlpm
違うだろ。

65:名無しさん@ピンキー
10/11/24 08:39:54 2TZuhZX7
>>57
リアルでも珍しくないジャンルだからな(´・ω・`)

66:名無しさん@ピンキー
10/11/24 13:01:19 30y1Nuk3
幼なじみにNTRとか俺的に絶望的に合わない、いらない

せっかく安心して幼なじみとイチャイチャするSSを読める場所なのにここにまでそっちの話題が入って来たら俺の安住の地が無くなる

幼なじみ以外が寝取られるの?好物です(^q^)
更にその後一途に慕ってくれていた幼なじみとくっ付けば尚良し

67:名無しさん@ピンキー
10/11/24 15:46:37 nW6envsP
待てそれは幼馴染の罠だ

68:名無しさん@ピンキー
10/11/24 23:30:29 zgVORI5j
「幼なじみは孔明」
なんかエロゲにありそうな

69:名無しさん@ピンキー
10/11/24 23:41:10 ufu801mT
恋敵との決戦前夜のお祈りの最中に邪魔が入って敗北しそう

70:名無しさん@ピンキー
10/11/25 00:58:26 WsZYFfyp
エロなしで申し訳ないが投下してみます

71:My
10/11/25 01:01:10 WsZYFfyp
それは遠い日の思い出だった。

「ホント?」
夕暮れの公園で、あどけない女児の声が聞こえる。
「うん、絶対。約束するよ」
男児がその問いに力強く答えた。
「今みたいに、由梨(ゆり)ちゃんが困っているときはいつでも行くから。だから黙ってないですぐ僕に教えてね」
そう言って、男の子は右手に持っていた棒切れを捨て、右の小指を立てた。
「ほら、指切りしよう」
「うん、ありがとう満(みつる)くん」
二人の幼児は小指を交差させ、元気よく恒例の歌を歌い始めた。

「ねぇ、満くん」
「なに?」
「その・・・もし・・良かったら」由梨はもじもじとして言いよどんでいる。
「うん」
「由梨と・・これからずっと・・・一緒に・・・」遊んでくれる、という最後の言葉がどうしても出なかった。だが、
「いいよ」という満の声が聞こえた。
「由梨ちゃんの傍にずっといてあげる。そっちの方が、いつでも由梨ちゃんのこと守れるもんね」
満は少々由梨の意図とはずれた答えを言った。しかし、その言葉は由梨には何よりも嬉しかった。
「満くん・・・ありがとう」
「じゃあ、今のも約束だから、もう一回指切りしようか」
「うん」
こうして二人は再び指切りをした。子供達の弾んだ声が夕焼けの空に溶け込んでいった。
   
   *

約束の通り、満と由梨はいつも一緒に遊んでいた。
雪の日には二人で雪だるまを作ったり、日差しの強い日にはプールに行ったりしていた。

満が野球に励むようになってからは、由梨と遊ぶ回数は減ってきたものの、それでも二人は暇があればキャッチボールを行った。
由梨がボールをうまく取れず、その白球が顔に当たってしまったこともあった。
その時、満はすぐに由梨の傍へと駆けていった。
「ご、ごめん、由梨。大丈夫」
「平気だよ。私の方こそ下手でごめんね」
「何言ってんだよ、俺が下手くそなボール投げたのが悪いんだって」
そう言って満は由梨の赤くなっている部分を撫でた。
その瞬間、彼女の頬もまた赤らんだ。
「み、満くん。大丈夫だから、キャッチボールの続きしよ」
「あ、うん。ホントにごめんな、俺も気をつけて投げるよ」そう言って、満は由梨と距離をとった。
その間、由梨はさっきの気遣いの言葉と行動を脳裏で反芻していた。
昔から変わらぬその優しさが、由梨には嬉しかったのだ。
彼女は、そんな幼馴染みに淡い恋心を抱いていた。

しかし、由梨の幸せな日常は突如として終わりを告げてしまった。
満が引っ越すことになったのである。小学校の卒業式の翌日に、満の口から直接それを知らされた。
「前から決まってたんだけど、中々言えなくて。悪いな」
由梨は無言で話を聞いていた。
「でも、そんなに離れるわけじゃないぜ。電車で5駅分くらいの距離だし」
沈黙が続く。
「時間が見つかれば、夏休みにでも遊びに来るからよ。だからそんな暗い顔するなよ」
「うん」ようやく由梨が口を開いた。
「待ってるね、満くん」涙ぐむのを必死に抑えながら、笑顔でこう答えた。
「ああ」

この約束が実現されることはなかった。

こうして約3年の月日が流れていった。
由梨にとっては、満のいない日々を噛み締めるには十分すぎる程の年月だった。

72:My
10/11/25 01:03:34 WsZYFfyp
 *

「ん~んん~」
お気に入りの曲をハミングしながら、少女が鏡の前で長い黒髪を梳いている。
「ごきげんなことね、由梨」
由梨の傍らで、洋服を洗濯機の中に入れている母親がそう述懐した。
「だって、これから学校だもん」
「高校生活の方は順調みたいね」
「うん」由梨は何とも嬉しそうな声で答えた。
娘の新生活が始まってはや2ヶ月は経とうとしているが、母はその様子を見て安堵した。
髪を整え終えた由梨は洗面所を出て、玄関の方へと向かった。
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
母親の返事を聞くや否や、由梨はドアを開けた。
そして、外の暖かい空気が感化したのか、由梨は心をますます浮き浮きさせて駅へと向かっていった。

彼女は学校に行くことが何よりも楽しみだった。
そのため、鬱屈した表情を浮かべた人々が多い満員電車の中でも、由梨の顔は晴れやかであった。

なぜなら、もうすぐ行けるからである。
懐かしい人と再び一緒にいられる教室に―

由梨が教室の後ろ扉から中に入ると、そこに一番近い席で机に伏している男子が目に入った。
彼女はその傍まで行き、彼が起きていることを確認した。そして、
「おはよう、満くん」
と朝の挨拶をした。
「ああ、おはよ」
満はいかにもだるそうな声で返答した。
「やっぱり、今日も朝練キツかったの?」
「決まってるだろー」間延びした声だった。
「あはは、お疲れ様でした」
そう労わって、由梨は自分の席に着いた。
しばらくしてから満のほうを向いて見ると、彼はまだ机に伏したままであった。
由梨はそんな満の様子を、顔に喜悦の色を浮かべながら眺めていた。
もう会うことはできないと思っていた初恋の相手に出会えたことを感謝しつつ―

昼食の時間になり、生徒達はグループを作ってお弁当やパンを食べる。
由梨は3人の友達と一緒に会食している。
「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけど、由梨って風間とはいつから友達なの?」
高校に入ってすぐに友達となった葵(あおい)が満のことを話題にしたので、由梨はどきんとした。
「えっと、保育園の頃から、かな」
「じゃあ幼馴染みって奴?」
「まぁ、一応」
「へー、もしかして、それから小・中・高とずっと一緒なの?」
その質問を聞いて、由梨は一瞬だけ口をつぐんだ。そうだったらどんなに良かったか、と思ったのだ。
だが、すぐに気を取り直して会話を続けた。
「ううん、中学に入る前に満くんは別の学区に引っ越したから、中学は別々だったの」
「じゃあ、高校に入って再会したわけだ」葵同様、高校で友人となった智美(さとみ)が会話に入ってきた。
「うん、クラス発表のとき、一緒の組に同姓同名の人がいたからもしかしたらと思ったんだけど」
「驚いたっしょ」葵が尋ねる。由梨は首を縦に振った。
「でも、私はそんな驚かなかったかも」
そう言ったのは、由梨の小学校からの友達である千恵(ちえ)だった。
「ほら、ここの高校って野球部が凄く強いから、風間くんがいるのも納得って感じだし」
千恵の言うとおり、小学校の頃から満は野球がすこぶる得意であり、リトルリーグにも入っていた。
そして、由梨はよく満の野球試合を応援しに行ったものだった。
満は野球をその時からずっと続けており、現に高校へはスポーツ推薦で入学したのである。

73:My
10/11/25 01:05:41 WsZYFfyp
「そうそう、今朝野球部の友達に聞いたんだけど。あいつって、1年のくせにもうレギュラーになるみたい」
智美が少しばかり話題を変えた。
「えっ、マジ。・・・野球がめっちゃうまくて、そこそこの長身でなかなかのイケメン。騒がれるのも分かる気がするわ」
葵の言葉を聞き、由梨は内心狼狽した。
「さ、騒がれるって」由梨が葵に尋ねる。
「何だ、知らないのかよ。あいつ、めっちゃもてるらしいんだよ」智美が代わりに答えた。
「こないだも、2年の女子が告白したみたいだし。振られたようだけどね」葵が付け足した。
告白と聞いてさらに慌てたが、その後の言葉で由梨はほっと胸をなでおろした。
「しかし、入学して間もない1年坊主に手出すかな、普通。その女、よっぽど男に飢えているんだな」
「もてまくる美人だって聞いたけどね。何で断ったんだろ、風間の奴」
由梨は智美と葵の会話を聞きながら、気を揉んでいた。
満はそんなこと少しも言っていなかったし、それに、彼女の幼馴染みがそんなにもてるとは分からなかったからだ。
(確かに、満くんはかっこいいし、特に野球をやっている姿は昔から素敵だったし―)
そして何より、と由梨は思った。
(・・・とても優しい人だもんね)
由梨は、昔自分をからかっていた男の子達から満が助けてくれたことを思い出した。
保育園で同じ組だったこと、ただそれだけの理由で、それまでろくに話したことのない自分を助けてくれた男の子の勇姿を。
正義感が強くて優しくて、おまけにリトルでは4番打者だった満は、彼女にとって自慢の幼馴染みだった。
(何で気付かなかったんだろう。もてるに決まってるよね、満くんは・・・)
中学時代もそうだったのだろうか。きっとそうに違いない、と由梨は思った。
彼女の心は、寂しさで満ちているようだった。

「つーことで、由梨には忠告しとかなくちゃいけないんだよ」
葵の声が由梨の思案を止めた。
「風間は人気あるみたいだから、あんたは連中にとっちゃ目の上のたんこぶなの」
「えっ、でも私、満くんとは別に・・・」
「あんたらはただの幼馴染み同士なんだろうけど、向こうはそうは思ってないかもってこと」
「仲いいもんね、実際。勘違いする人はいると思うよ」葵の言葉に千恵が続いた。
「風間には彼女いないって言われているから、そうなると由梨は風間に気に入られようと媚を売っている女って映り、やっかみをかうわけ」
由梨には理不尽な誤解だった。ただ昔のようにお喋りをしているだけであるのに。
だが、由梨は同時に思った。もし、自分の想いが届き、満と付き合えるようになったらどんな反感が待っているのだろうか、と。
「ひでぇもんだよな、ブスどもの嫉妬は。あたしも経験あるよ、そうあれは中2の頃―」
「智美、今はお前の話じゃねーから。つーか、前聞いたわ、それ」
由梨と千恵が笑いを漏らす。それにつられて、葵と智美も笑う。
「まぁ、とにかくそういうことだから。もし何かされたらすぐうちらに言いなよ」
「そうだよ。由梨もこんなことで風間くんと話せなくなるのはいやでしょ」
「こいつはちょっと小柄な上に大人しい方だからなー。なめられるタイプっていうか。まぁ、由梨の代わりにあたしが恫喝してやるから」
「おお、さすが智美。経験者は違うね」
「慌てふためいて逃げてったなー。あん時は面白かったよ」
再び笑いが起きる。
「ありがとう、みんな」
由梨は友人達に感謝した。
そしてもう1つ。満だけでなくこの友人達とも過ごせる高校生活にも心の中で感謝した。

74:My
10/11/25 01:08:16 WsZYFfyp
 
   *

駅のホームに由梨は一人で佇んでいる。放課後、図書館に少し長くいたため辺りは暗くなっていた。
でも、これは彼女の望んだ通りのことだった。なぜなら、
「よぉ」
彼女の幼馴染みと一緒の電車に乗れるからである。
「今日は何の勉強をしてたんだ」
図書館では、由梨は読書というよりも専ら宿題や復習といった勉強を行っていた。
「物理かな」
「偉いよなぁ。俺なんか物理は3日で放棄したよ」
「そんな、満くんの方が凄いよ。朝も晩も毎日へとへとになるまで野球の練習して」
「いや、俺には野球しかねーから。スポーツ推薦だしな」
電車がやって来たので、二人は話を一時中断し、乗り込んだ。
車内を見渡し、空いている席を見つけたので、そこに対座し再び会話を続けた。
「そういえば、レギュラーになったんだよね。やっぱり凄いよ」
「ああ、サンキュ。まぁ、さすがに4番打者にはなれなかったけどな」
「それはそうだよ。まだ1年生だもん」
「でも、いつかは4番で甲子園に出るつもりだぜ」
満はバットを振るような動作をした。

しばらく会話が止まったので、由梨はまじまじと満を見ることとなった。
そして、ふと今日の昼食での会話が思い出された。―彼が女子から人気があること。そして、実際に告白されたことも。
そこで由梨は思った。どうして断ったのだろうと。綺麗な人だと葵は言っていたが。

「満くん」由梨は少しの間ためらっていたが、やがて腹を決めて聞くことにした。
「ん?」
「友達から聞いたんだけど」
「ああ」
「告白・・・されたんだよね」
「・・・ああ。生意気にも断っちまったけど」
「可愛い人だったんでしょ。どうして断ったのかなって気になって。あ、でも言いたくないなら別に―」
由梨は少し後悔した。なぜ振った理由を聞いてしまったのだろうかと。
そうまでして自分を安心させたいのか、と自問した。彼女は自己嫌悪に陥った。
「それはだな」
満が少し言いよどんでいた。由梨のほうを一瞥しては顔を伏せている、そんな動作を繰り返していた。
「それは、その、ありきたりすぎる理由でな。恥ずかしいんだけど」
「う、うん」
彼は由梨の顔を見据えてこう言った。その視線を受け、彼女は照れてしまった。
「昔から心に決めていることがあるからだ」
昔、という言葉に由梨はどきりとした。
(もしかして、満くん・・・。ううん、そんなことあるわけ―)
彼女は自分の雑念を取り払った。
「俺は―」
満の目はしっかりと由梨の目を捉えている。由梨は固唾を呑んで次の言葉を待った。
「野球一筋だって」そう言って満ははにかんだ。
由梨は特別がっかりしなかった。むしろ、喜びの方が大きかった。それでこそ満だと。
(それが、私の幼馴染みさんだもんね。何で自惚れたんだろ、私ってば)
彼女は一方で喜びつつ、もう一方で自分が劣情をもったことを自省したようだった。
「地区大会も近いからなぁ」
満の言葉を聞きながら、由梨は再び思った。
このままでいい、この先も今のような穏やかな関係でいられたら、十分すぎるくらい幸せなのだ。
せっかく再会できたのにこれ以上大きな望みを抱くなど欲張りにもほどがある、と。

75:My
10/11/25 01:10:30 WsZYFfyp
「小学校の時みたいに、応援しに行ってもいいかな?」
由梨は思い切って言ってみた。
「それはありがたいけど、ほとんど平日にやるからなぁ」
「そうなんだ」由梨は落胆した。
「あっ、でもうちの地区大、決勝戦は土曜日みたいだから勝ち続ければ―」
「じゃあ期待して待ってるね」
満が言い終わる前に由梨は言った。
「おう」

再三鳴り響いていた電車のアナウンスが、今度は由梨が降りるべき駅名を告げた。
彼女にとっての至福の時間は、あとわずかで終わりとなる。
「なぁ、由梨」
満がふいに話しかけてきた。
「なに?」
「応援、絶対きてくれよ」
「えっ。う、うん、もちろん。絶対行くよ」
「ありがとな。いま思い出したんだけどさ、何かお前が応援しにきてくれた試合は勝率が高かった気がするんだよな」
「そ、そうかな」
「うん、確か。・・・先輩達のためにも絶対甲子園行きたいんだよ」
「そうだよね」
「スタメンになった俺に、そうなれなかった3年生が『頑張ってくれ』って言ってくれたんだよ。
 3年間死ぬ気で練習してきた人たちを押しのけてレギュラーになったこんな1年にさ。だから、絶対勝ちたいんだ」
「うん」
由梨は、昔とちっとも変わらない幼馴染みの姿を見れて嬉しく思った。
「少しでも勝率を上げるために、由梨、応援頼む」
そう言いながら、満は思わず由梨の手を握り締めた。
「うわぁっ」
由梨はとっさの出来事に慌てて、声を漏らしたと同時に心臓を高鳴らせた。
「あ、ごめん。セクハラだよな、これ」
満はすぐに手を離した。

その時、アナウンスが由梨の降りるべき駅の名前を告げた。電車がゆっくりと止まる。
「じゃ、じゃあまた明日ね」
由梨は動揺しながらも別れの挨拶をし、席を立った。
「ああ、じゃあな」
満の方を向いて手を振りながら、彼女は扉へと向かっていった。

電車が動き出すのを見送った後でも、由梨はしばらく駅のホームに佇んでいた。
そして、満に握られた手を見つめ、その感触を思い出し、赤ら顔でふと微笑んだ。

76:名無しさん@ピンキー
10/11/25 01:13:27 WsZYFfyp
以上です
続きが考えついたらまた投下したいと思っています

77:名無しさん@ピンキー
10/11/25 01:15:19 v/guov3E
GJ
待ってるよ

78:名無しさん@ピンキー
10/11/25 02:03:27 Q0pDYALp
良いじゃねぇか

79:名無しさん@ピンキー
10/11/25 08:16:48 KPLvmsFt
続きに期待してるぜ!

80:名無しさん@ピンキー
10/11/25 18:07:09 4EtiSjsA
GJ! 女の子視点いいね

81:名無しさん@ピンキー
10/11/25 22:25:54 88GUQikO
ちょっと前になまけんぼうな幼なじについてあったから転と結だけ考えてみた。
転。男が好きだと認識した女は、世話を焼かれているだけの自分が相手に釣り合っていないと考え、自立しようと試みる。
男は、女の世話を焼くことに半ば依存しており、自分の手元から離れてってしまうことにショックを受ける。何故か関係がぎくしゃくし始める。
結。それまで何もやっていなかった女は自分では修正不可能な大きなミスをやってしまう。
それのフォローに来た男に泣きつき、思いのたけを告白する。

……考えたはいいけど基本すぎるな。
三秒ルートみたいに世話しているうちに気がついたら籍が入っていた。ぐらいの方がいいのかも。

82:名無しさん@ピンキー
10/11/25 22:33:42 ZAr1qGS3
そういえば、あの虎の人、士郎とは年の差幼馴染みとも言える訳か……ちょっと萌えてきた。

83:名無しさん@ピンキー
10/11/25 22:34:21 qX+dxHpQ
王道が王道である理由が良く分かる
これだけでもキュンとくる

84:名無しさん@ピンキー
10/11/26 09:28:08 mCqZU82K
新作キテタGJ
やっぱり幼馴染は最高です。

ところで質問なんだがこれまで読んできた幼馴染マンガで何か良かったものありませんか。

自分は[となグラ]というマンガです

85:名無しさん@ピンキー
10/11/26 21:44:52 pEFLQo6H
>>76 gj
これは続期待

86:名無しさん@ピンキー
10/11/29 00:37:58 He+I3pPl
何で俺には可愛い幼馴染みがいないんだろうか

87:名無しさん@ピンキー
10/11/29 01:12:53 aPqLVA49
近所の夫婦が頑張らなかったからさ

88:名無しさん@ピンキー
10/11/29 12:18:16 AMqHsiol
転勤が増えるこの頃だと幼馴染ってのもなくなってしまうんだろうか
中国とか一人っ子政策で姉・妹萌えもないんだろうな

89:名無しさん@ピンキー
10/11/29 12:55:58 0tMC8Kjs
現実では難しいからこそ我々は空想で欲求不満を補おうとする
だから創作物は大事なのだ

というわけで誰かSSを投下してください

90:名無しさん@ピンキー
10/11/29 14:10:28 VF167/NU
>>88
転勤増→各地に「けっこんのやくそく」をした幼なじみが増える→ハーレム

一人っ子→隣に住む幼なじみと姉弟、兄妹のような関係に→ふとした瞬間に「あれ、こいつ可愛い」→イチャイチャ


ふぅ…

91:名無しさん@ピンキー
10/11/29 19:51:03 sKCF9OkI
>>90
>転勤増→各地に「けっこんのやくそく」をした幼なじみが増える→ハーレム

これ、死亡フラグじゃね?

92:名無しさん@ピンキー
10/11/29 21:01:26 2qx3CR6J
幼なじみと甘~くエッチに過ごす方法

93:名無しさん@ピンキー
10/11/30 00:34:13 3R88wIlI
そろそろかおるさとー様の投下していただける時期だ
楽しみだな

94:すなばのおばけがこいしたひとは1
10/11/30 01:06:24 C8aobGUb
>>13です
規制解除されたので投下します
そんなに長くならない予定です

彼はよく、ぶっきらぼうに「ちょっとは髪切れよ」とわたしに言っていた
わたしの変化を見て、驚くだろうか
あの日、砂場で一人ぼっちだったお化けに一人だけ出来た友達

『おれはおまえのほごしゃだからな』
『しかたねえな』
『メンドイなぁ』

そんな言葉が口癖の、いじわるでぶっきらぼうで、優しい幼馴染
「澄人くん・・・」
彼は、なんと言うだろうか
わたしは長く伸びて、その顔を覆う髪の毛を黒い簡素なヘアピンで留めた
久しぶりに見る自分の顔
「ぅ・・・」
途端に顔が赤くなる
普段素顔を晒さないのは、わたしは酷い人見知りで、赤面症だから
幼馴染の澄人くんにさえ緊張して真っ赤になってしまうというのに、これで一日過ごせるのだろうか
思わず、手がヘアピンに伸びる

でも
「か、変わらなきゃ・・・」
わたしはヘアピンを着けたまま、荷物を手に取った



後ろから視線を感じる
いやまあ確実に見られているんだが
というかこの間もあったなこれ
振り返るとそこには叶理が___居ない
いや居た、電信柱に隠れている(しかし残念ながら肩がはみ出ている)
メンドイ、これはとてもメンドイ
「何やってんだお前」
「っ・・・」
声をかけるとびくりと震える叶理
「ぉおはよよう・・・」
いつもどおりどもった挨拶が聞こえて、電信柱からひょっこりと顔が覗いた
どきり、と胸が高鳴る
男に性を受けたものなら誰もが見とれてしまう愛らしさ
「お前、その前髪・・・」
叶理は、いつもは顔を覆っている髪をピンでまとめていた
「そその・・・澄人くん・・・どう?」
「どうって・・・」
叶理の問いに俺は答えに詰まる
もちろん文句なしに可愛い、だが、幼馴染にそれを言うのはなんだか気恥ずかしさの方が勝ってしまう
「別に・・・いいんじゃないか?」
結局、俺はそんな風にしか答えられなかった


95:すなばのおばけがこいしたひとは2
10/11/30 01:07:01 C8aobGUb
その日、叶理と昼飯を食いに屋上へ向かう途中
「よぉ有村(ありむら)、イメチェン?似合ってるよ」
「・・・・」
有村、というのは叶理の苗字だ
「どうしたの?彼氏できた?」
「・・・・・」
目の前には金髪の男子、綾乃瀬(あやのせ)
名前は知らん
叶理と同じクラスで、女子人気は本校一位のイケメンである
「さっきから喋んないね?具合悪いの?」
そして綾乃瀬は、何故かさっきから俺たちの後についてきて叶理に話しかけ続けている
当の叶理は、俺を盾に綾乃瀬を避けるようにポジショニングしていた
俺を中心にぐるぐると美少女を追うイケメン、追われる美少女
何だこの状況
とにかく叶理は人見知りだ、これ以上は叶理にとってストレス以外のなんでもないだろう
それ以前に、叶理はどう見ても嫌がっている
(仕方ないな・・・)
「叶理、お前今日職員室に用あったろ?」
ここは幼馴染として、助け舟を出してやることにした
昼飯はまぁ、少し遅くなっても仕方がない
「え・・・あ、うんっそうだった」
きっかけを掴めばこっちのものだ
次の瞬間には叶理は走り去っていた、中々の素早さである
運動神経良いんだよな、アイツ
「なぁ」
屋上に向かおうとして呼び止められる
振り向くと、綾乃瀬が俺を見つめていた
この目は苦手だ
何処か、見下したような目
「お前、有村とどういう関係な訳?」
「・・・・幼馴染だ」
「ふぅん」
俺の返事を聞くと、綾乃瀬は興味無さ気にそう言って何処かへ去っていった


96:すなばのおばけがこいしたひとは3
10/11/30 01:10:05 C8aobGUb
屋上に出ると叶理がいた
「ささっきは・・・あありがと」
真っ赤な顔でお礼を言う叶理
「別にいいが・・・綾乃瀬と知り合いなのか?」
「ううん、知らない・・・いつもは喋りかけてこないよ」
となると髪をまとめて美少女化した叶理を狙い始めたってことか
確かに、叶理は男どもからすれば狙い目だろう
男の経験も無ければ、気弱で好きにしやすく、且つ校内一の美少女とも言っていい容姿
しかも今までノーマークだったために邪魔な虫も少ない
(はぁ、まったく男ってやつは・・・)
この間まで陰で貞子貞子と罵っていたと思ったら、急に掌を返す辺りもう何と言っていいのやら
「そっか、まぁイケメンに言い寄られて良かったじゃないか」
モテモテだなあ、良かったなあと茶化しながら、心の奥で思った
コイツはきっとこれから色んな男に言い寄られるんだろう
その中から、好きな男を選んで、見つけて
そうしたら、俺の保護者ゴッコももう終わりだ
俺は、もう叶理の傍にいる必要はなくなる____
「・・・っ」
そう思った時、ちくりと突然胸が痛んだ
苦しくて、辛くて思わず叫びだしそうになったとき

「全然良くないよ」

はっきりと聞こえた、叶理の声
叶理らしくない、きっぱりとした否定の言葉
「えっ・・・?」
俺は思わず間抜けな声を出してしまう
「わたし・・・そんなの嬉しくない」
何故、叶理はそう言ったのだろう
それを問うことは、俺にはできなかった
そして、何故俺は


どうして俺は、その言葉を聞いて安心しているんだ?

今回は以上です
ありがとうございました
チャラ男が出てきましたがNTRは完璧絶対有り得ないと断言しますのでそういう属性持ちの方はすいませんです
ではまた

97:名無しさん@ピンキー
10/11/30 01:36:41 79k04tpe
先の展開を考えながら読むのも楽しみなのに、~~はないって言っちゃうのはどうなんだろう。
まあ、書き手がそれでいいならいいのかもしれないけど。

98:名無しさん@ピンキー
10/11/30 02:00:08 9P2qKwqS
別にいいんじゃない

99:名無しさん@ピンキー
10/11/30 03:12:40 odh9mC/7
完結さえしてくれれば何でもいいよ


100:名無しさん@ピンキー
10/11/30 03:59:06 w7Jj3miH
いいじゃないの。期待

101:名無しさん@ピンキー
10/11/30 10:43:59 Sc53E7+D
書いてないなら書いてないで「NTR展開は反対」的なレスがついてた事が目に浮かぶ

102:名無しさん@ピンキー
10/11/30 17:59:08 3R88wIlI
確かに誰か書いてそう


あっ俺か

103:名無しさん@ピンキー
10/11/30 18:53:43 99DDxSKl
ごめんなさい、私がNTR寸前で主人公による助け入りなどというシチュを所望したばかりに,,,,

104:名無しさん@ピンキー
10/11/30 21:52:50 ukivJdrf
>>94-96
GJ!
続き期待

105:名無しさん@ピンキー
10/12/01 10:16:18 5DJ7qnmM
ぽちゃのオカン気質しっかり者と職業あそびにんなチャラ男幼なじみ



106:名無しさん@ピンキー
10/12/01 10:17:12 5DJ7qnmM
ごめん。ぽちゃスレと誤爆

107:名無しさん@ピンキー
10/12/02 21:52:43 sLTsn+tZ
ぽちゃな馴染

・・ありだな

108:名無しさん@ピンキー
10/12/02 22:02:36 bXwJU5CC
よくある窓を伝っての家渡りが窓のサッシにむっちりお尻引っ掛けて色っぽいことになるんですねわかります

109:名無しさん@ピンキー
10/12/02 22:30:31 L/b6DlAN
肉付きが良くて太ってるんじゃないかって心配してコンプレックス程度なら
むしろポチャな幼馴染の女の子歓迎
デブとかあまりに肉付き良すぎるのは無理だがw

110:名無しさん@ピンキー
10/12/02 22:38:39 SZiLU4wU
がおー、食べちゃうぞー

111:名無しさん@ピンキー
10/12/02 23:10:41 0mOdao+8
胸とおしりが大きいのを太っていると思って異常に気にしていて必死に痩せようと思っている女の子

だがしかし実際はそのセクシーな体を狙う野獣ども(学校の男子生徒)が大漁にいて
男の幼なじみが日頃陰ながら成敗して回っているという…

112:名無しさん@ピンキー
10/12/03 00:49:07 47R8ByFf
アマガミのりほこか

113:名無しさん@ピンキー
10/12/03 01:21:20 S8MRRlmO
幼馴染男でさえも幼馴染女の前髪を取っ払った姿を一度も見たことがなくて
普段は意識してないのにふと風で前髪がなびいてフォーリンラブという展開を思いついた

114:名無しさん@ピンキー
10/12/03 17:24:45 9Eio5N8S
何の気なしに前髪あげた姿を見た幼馴染男が妙に自分を意識していて
それで虫の居所が悪くなる幼馴染女というのはどうだろうか

115:名無しさん@ピンキー
10/12/04 10:01:25 3e/6EqOL
もう男が毎日女の髪留めになればいいよ

116:名無しさん@ピンキー
10/12/04 19:29:11 EOwKMkNZ
女が美容室嫌いで(髪触られるのが嫌とか?)
親以外で唯一それを許しているのが男の幼なじみ

で、もっときれいに切ってあげられるようになりたいと美容師専門学校に行きたいと言い出したら
男が他の女の子の髪を切るのは嫌だとわがままを言い…

117:名無しさん@ピンキー
10/12/04 20:25:45 3e/6EqOL
>>116
きゅんときた
誰か書いてください><

118:名無しさん@ピンキー
10/12/05 01:21:32 R6EOSSbl
URLリンク(sukima.vip2ch.com)
URLリンク(sukima.vip2ch.com)

119:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:33:47 0b6R5TCS
こんばんは。三週間ぶりです。
『In vino veritas.』第四話を投下します。
今回はちゃんとエロありです。

120:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:34:31 0b6R5TCS
 
 部屋に帰り着くと、いつものように彼女が出迎えてくれる。
「おかえりなさい」
 ただいまと返して、俺は自室に戻る。荷物を置いて、洗面所で手洗いうがいをして、リビ
ングに入ると華乃がテーブルに料理を並べていた。ご飯、味噌汁、豚の味噌漬、グリーン
サラダにマッシュポテト。出来たての温かい匂いが鼻腔をくすぐった。
 華乃とともに手を合わせて箸を取る。いただきますと言う習慣は俺にはなかったのだが、
華乃と暮らすようになってから、きちんと言うようになった。華乃はおそらく食べ物に、俺は
作り手に対する礼として。
 かつお節で出汁を取った味噌汁は、冬の外気で冷え込んだ体を内側から温めてくれる。
連日厳しい寒さが続くので、本当に生き返る瞬間だ。
「じゃがいも入れたんだけど、くずれてない?」
「ん、大丈夫。いつもどおりおいしい」
「よかった。今日は余りもので作ったから、あまりバランスのいいメニューじゃないと思った
んだけど」
 たぶんじゃがいもが余ってたのだろう。肉じゃがとかカレーの方が消費しやすいんじゃ
ないかと思うが、料理のできない俺にはわからない工夫があるのだろうか。まあついこの
あいだカレーは作ったばかりだから。
「もう12月だね」
「ん? ああ、そうだな」
 味噌漬を箸でうまく切りながら、華乃が言った。特に思い入れはないので適当に相槌を
返すと、
「……来年も同じようにいられるかな?」
 そんな意味深なことをつぶやいた。
 どう返したものか咄嗟に判断がつかず、俺は黙り込んでしまう。
 華乃は返事を期待していたわけでもないのか、黙々と食事を続ける。
 やがて、ごちそうさま、おそまつさま、と二人して食事を終えると、華乃はなんでもなかった
かのように食器を片付け始めた。俺も一緒になって手伝うが、特にこれといった会話が交わ
されることはなかった。
 俺と華乃が順番に風呂に入り終えると、時刻は九時過ぎだった。俺は胸の鼓動が激しく
なるのをうまく抑えられない。それは僅かながら期待というのもあったが、しかし今はそれ
以上に気まずさが強かった。
 別にさっきのやり取りが原因じゃない。ここ最近の互いの関係がその気まずさを生んで
いた。
「おやすみなさい」
 お風呂上がりの甘い匂いを残して、華乃は自室へと戻っていく。見慣れたパジャマ姿は
俺の情欲を掻き立てるには十分すぎるものだったが、俺はその気持ちを抑え込んだ。
 ため息をついて俺も自室へと引き上げる。ドイツ語の課題があったのでそれを済ませて
しまおう。期限は来週だが、早めに終わらせた方が楽だ。
 とはいえ全然集中できる気がしない。
 隣の部屋にいる幼馴染みのことがどうしても気にかかる。いや、正確には今の俺たちの
関係が気になる。
 今日も、何もなかった。
 もう一度、ため息をつく。
 俺は一ヶ月近く、彼女を抱いていない。
 

121:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:35:35 0b6R5TCS
 
      ◇   ◇   ◇



 最後に彼女を抱いたのは先月のことだった。たしか、一緒に酒を飲む前日だったはず。
 関係を持って以来、俺たちは大体週に二、三度、ときには毎日肌を合わせていた。生理
周期の関係で一週間ほど間を開けたことはあったが、それ以外は結構なペースで回数を
重ねていた。
 しかし一ヶ月前を境に、その時間が消えた。
 特に関係を解消した覚えはない。
 何が原因なのか、俺にはわからなかった。華乃が俺を、華乃が言うところのパートナー
と認めなくなったのかもしれないし、あるいは他に理由があるのかもしれない。
 別に関係が解消されたところで、要は元に戻るだけだ。何も問題はない。―そう思え
たら楽だっただろう。しかし俺はひどく焦りを覚えていた。
 華乃が俺を必要としなくなったということは、つまり「練習」の必要がなくなったという
ことではないのか。
 この関係を始める際に華乃は言った。「男の人と付き合うための練習」と。
 それがなくなったということはつまり。
 思い過ごしかもしれない。ただ気が向かないだけなのかもしれない。しかし不安は拭え
ない。
 直接訊けば答えてくれるだろうか。だがそれをする勇気はなかなか起こせなかった。
薮蛇になったら、という思いが働いて、動けなかった。
 そうするうち冬になり、今年も残すところ半月ほどになった。
 クリスマス、正月とこれからイベントが目白押しだ。そのイベントを華乃は誰と過ごすの
だろう。一ヶ月前まではなんとなく一緒に過ごすことになるんだろうな、と思っていたが、
こうなるとわからない。
 去年のクリスマスは、華乃が俺の部屋に押しかけてきて、自作のケーキを振舞って
くれた。
 それを食べながら一晩中ゲームをするという、実に色気のない夜を過ごした。
 そんな気安い間柄でも俺は嬉しかったのに。
 一度関係を持ってしまうと、もうあの頃には戻れなかった。
 

122:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:36:30 0b6R5TCS
 
 それからさらに四日後の朝。
「ごめん、涼二! 今日ちょっと帰り遅くなる」
 華乃の言葉に俺はどきりとした。まさか、
「友達と飲みに行くの。忘年会というか、そんな感じの」
「……酔っ払うなよ」
 内心ほっとしつつ返すと、華乃はにっこり笑った。
「大丈夫。女の子ばっかりだし、そんなに飲まないから」
「女ばかりで帰り大丈夫か?」
「あはは、平気だよ。場所は駅に近いし、遅くても日をまたぐことはないから」
「呼べば迎えに行くぞ」
「え、本当?」
 華乃の表情がぱっと明るくなる。反応を見るに、友達同士で飲むのは本当のようだ。
華乃のことを疑うようで、そういうことを気にしてしまう自分が実に情けないと思った。大体、
華乃が誰と会おうと、俺に何かを言う権利なんてないのに。
 そんな俺の心情など気づいていないようで、華乃は笑顔でうなずいた。
「じゃあ、お願いしようかな。あ……涼二の夕食どうしよう」
「適当に腹に入れるから心配するな。今日くらい休め」
「ごめんね」
「いつも作ってもらってるんだ。謝ることなんか少しもない。で、どこに迎えに行けばいい?」
「えっと……」
 聞くとそこは大学近くの学生通りにあり、俺もよく友達と飲みに行く店だった。了解と答え
ると、華乃は行ってきますと元気に出かけていった。
 今日の講義は午後の二つだけだ。華乃の用意してくれた朝食を食べながら、俺はぼん
やりとテレビを眺めた。
 星座占いの運勢は最下位だった。
 

123:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:37:39 0b6R5TCS
 
 二つ目の講義を終えたとき、時刻は四時過ぎだった。当初は家に帰るつもりだったが、
課題のレポートを休みに入る前までに提出しなくてはならなかったので、普段は入ることも
ない図書館へと向かった。
 中は盛況だった。勉強机は満席で、仕方なく資料を探しながら空くのを待った。二十分
ほどしてようやく隅の席が空き、俺は静かに荷物を置いた。
 しばらくレジュメとノート、資料本とにらめっこをしつつ、適当にまとめていく。しかしニーチェ
やハイデガーにいきなり取り掛かってもまるでわからない。もっと簡単にまとめている本は
ないものだろうか。たぶん講義をしっかり聴いていれば、一番理解が深まったのだろうと
思う。二時間で一つの難解な思想を解説しようというのだから。先生方は偉大だ。偉大
すぎて眠くなる。しかし今は眠るわけにはいかない。
 こんがらがった頭を整理するのにしばらく無駄な時間をかけて、なんとか要点をまとめ
終えたとき、もう時刻は七時近かった。仕上げは帰ってからパソコンでしよう。
 外に出るとすっかり空は光を失っていた。夜風がコートを巻き上げるように凪いでいく。
思わず体が震えた。早く帰りたい。
 と、そこで思い出す。華乃を迎えに行かなければならない。華乃が言っていた店はこの
近くにある。このまま帰っても二度手間なので、どこかで食事でもして時間をつぶした
方がいい。
 学生通りに入ると、人の波が激しくなった。歩けないほどではないが、車が通れない
くらいにはにぎわっている。店々の明るい光が闇をかき消すように通りを照らしている。
無断駐輪の自転車群が幅を取って、人を追い越す際にひどく邪魔くさい。
 通りを半分ほど過ぎたところに、件の店があった。春先にできたばかりの店で、派手な
装飾のないシンプルな外観は一見飲み屋には見えないが、豊富なメニューと入りやすい
雰囲気で人気が高い。実際今も入ろうとする一団が見えた。華乃の姿は見当たらない。
既に中にいるのだろうか。
 俺は向かいの小さな料理屋に入った。半分は飲み屋のような店だが、正面にできた
新店舗のせいで、夜は客足が遠のいているらしい。少しは売上に貢献してやろう。
 一番奥の席に座って、メニューを開く。定食でもよかったのだが、時間はまだまだある。
幸い持ち合わせがあるので、単品をいくつか頼むことにした。ついでに酒も一杯。迎えに
行くのに酒を飲むのもどうかと思ったが、まあビールくらいなら。
 待つ間、俺は華乃のことを考える。
 華乃は俺のことをどう思っているのか。これまでに何度も自問し、しかし自答できない
問いだった。
 俺があいつのことを好きだというのは間違いない。いまやこの想いは確かな形となって
俺の中に息づいている。
 だがあいつは? 少しは何か特別な気持ちを抱いてくれているだろうか。それとも特別
じゃないから、夜をともに過ごさなくなったのか。
 俺はどうすればいいのだろう。
 ……いや。そもそも俺は、何かやってきただろうか。
 ただそばにいるだけで、華乃にはひたすら世話になりっぱなしで、俺が華乃にしてやった
ことなどほとんど何もない。華乃はボディガードと言ったが、そんな大層な役を務めた実感は
まったくなかった。
 それは、夜の時間も同じだ。
 振り返ってみて初めて気づいた。何度も夜をともにしながら、俺の方から華乃を誘った
ことが一度もなかったことに。
 いつも華乃の方から誘ってきて、俺は流されるだけだった。いや、流されると言うのも
違う気がする。俺は華乃の行動に甘えていなかったか。
 「華乃がそれを望むから」という理由付けに甘えて、俺は何もしてこなかった。
 想いを告げるわけでもなく、華乃にもたれかかっている。そんな俺をあいつはどう見て
いたのだろう。
 料理が運ばれてきた。唐揚げ、チンジャオロースー、シーザーサラダにライスとオニオン
スープをつけて、中ジョッキでビールが一杯。いざ料理を目の前にすると、空腹を強く感じ
られた。さっきまで頭脳労働をしていたせいだろうか。胃袋が少し締め付けられるように
苦しかった。
 とりあえず、食欲を満たすのが先だ。俺は箸を取り、香ばしい匂いを感じ取りながら皿を
手元に寄せた。
 唐揚げとビールの組み合わせは、うまかった。
 

124:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:39:05 0b6R5TCS
 
 注文した料理はすぐに食べ終わった。
 まだ七時半くらいだ。華乃からいつ電話がかかってくるかわからないが、九時前という
ことはないだろう。遅くなると言ったのだから、おそらく十時以降になるはずだ。
 俺は少し迷った。また追加で何か注文するか、それともここを出てネットカフェにでも
入って時間をつぶすか。
 しかしこの店であと三時間も過ごすとなると、暇で仕方がない。酒も頼めないし、他の
ところで待った方が得策だろう。俺はもう一度時刻を確認しようと、入り口近くの時計に
目をやった。
 そのとき、入り口の扉が開いた。
 グループ客が入ってきた。同じ大学生くらいの一団で、女ばかりだった。
 その市五人ほどの一団の中に見知った顔があることに気づいた。
 華乃だ。
 幼馴染みは楽しそうに談笑しながら、店員に誘導されて真ん中あたりの大きなテーブル
席に座る。こちらに背中を向けていて、俺の存在には気づいていないようだ。
 俺は華乃の登場に戸惑っていたが、少し考えればそういうこともあるのだろう。予約を
取り忘れたか何かで、店に入れなかったのだ。それで急遽向かいの店に入ることにした
のかもしれない。
 華乃の後ろ姿が見える。セミロングの黒髪がふわふわ揺れている。
 俺は座り直して、近くの店員に声をかけた。
「フライドポテトと、生一つ」
 このままここで待っていよう。



 何を話しているかはわからなかった。
 周りの客が増えてきて、喧騒が一段と増したためだ。夜は入らないと思っていたが、そう
でもないのだろうか。ひょっとしたら向かいの店からあぶれた客が、こっちに流れてきている
のかもしれない。
 新しく持ってこられた小さいグラスに、ビール瓶を傾ける。黄金色の液体が微かにはじ
ける音を立てながら、グラスを満たしていく。ポップコーンが膨らむように、真っ白な泡が
湧き立ったが、長くは続かずに徐々にしぼんでいった。
 グラスに軽く口付けながら、俺は斜め向かいに視線を送る。
 そこでは女子の一団がかしましく酒を飲んでいた。ぱっと見たところではビールやらカク
テルばかりだ。カクテルも意外とアルコール度数が高かったりするので、飲みすぎには
注意してほしい。
 華乃のグラスはあまり動かない。箸はそれなりに動いているので、たぶん意識して抑え
ているのだろう。少しだけほっとした。この間みたいにテンションが変な具合に上がったら、
連れて帰るのに苦労しそうだ。
 周りに妙な客はいない。席は埋まっているが、みなそれぞれに食事や酒を楽しんでいる。
変な男に引っかかることもなさそうだ。俺はほっとして、同時にため息をついた。まったく、
告白する勇気もないくせに、独占欲だけは強い。
 また客が入ってきた。男が四人。テーブル席はもう残っていないようだが、座れるのか。
店員が困ったように席を見回している。
「こっちこっちー」
 不意に声が響いた。見ると華乃と同じ席の女子が手を上げて男たちに呼びかけている。
 おい。ちょっと待て。
 男たちは呼ばれた方向に目をやり、笑顔を見せた。俺はその顔に不安を覚える。
 当然のように相席になって、大きなテーブル席が埋まる。五人だと少し大きく思えたが、
九人となると少々狭い。
 華乃が隣の友人に話し掛けている。その横顔には戸惑いの色があった。
「聞いてないんだけど!」
 はっきり声が聞こえてきた。慣れ親しんだ声には珍しく苛立ちが混じっている。
 友人が何かを言った。華乃はそれに対して顔をしかめた。華乃は女同士で飲むと言って
いたが、たぶん知らされてなかったのだろう。彼女が嘘をついたとは思えなかった、今の
反応を見るに。
 俺はどうするべきか迷っていた。このまま華乃のところに行って、連れ出してしまおうか。
しかしいきなり介入して大丈夫だろうか。華乃にも華乃の付き合いがあるわけで、迷惑を
かけるわけにもいかない。

125:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:40:05 0b6R5TCS
 とりあえずは様子見だ。俺はまたビールを傾ける。
 苦味が胸を熱くする。高揚しているわけではない。不安な気持ちが渦巻いて苦しい。
 対面に座った男が華乃に話し掛けている。何を話しているのだろうか。華乃が首を振った。
男はそれを見て嬉しげに笑ったが、どう見ても下心のあるものにしか見えなかった。
 背中しか見えない席位置は、気づかれないでいるには最適の場所だ。しかし今はそれが
仇になっていた。華乃の表情が見えない。時折横顔が見えるものの、極端に大きく動かない
ために、どういう状態かはっきりとは窺えなかった。
 目線を自分のテーブル上に戻す。あまりじろじろ見ていると、向こうに気づかれる。グラスを
口元に運びながら、ポテトを睨みつける。自分の不機嫌さをぶつけるように、フォークでひと
まとめに突き刺した。トマトケチャップを擦るように適当につけて一気に口に入れる。あまり
苛立ちはまぎれない。
 斜め向かいのテーブル席は、楽しげな雰囲気で程よく盛り上がっていた。華乃も硬さが
取れたのか、肩を震わせていた。笑っているのだろう。手元を見ると透明なグラスにこれ
また透明な飲み物が注がれていた。日本酒か、はたまた焼酎か。
 嫉妬心が沸き起こる。同時に自己嫌悪も生じる。華乃は悪くない。あいつは単に友人と
酒を飲んでいるだけで、何も悪くない。男たちも悪くない。彼らも誘われてきただけかも
しれないし、こういう場なら多少の助平心も仕方がないだろう。こんなことで腹を立てても
何にもならない。
 だが、もちろんそんな理性的な余裕は持てなかった。今すぐあそこに行って連れ出したい。
 しかし俺にそんな権利があるのか。俺は華乃の幼馴染みで、一緒に住んでいて。
 だけど、恋人じゃないんだ。
 体だけのつながりにずっとむなしさを覚えていた。
 今は、その体のつながりさえ途絶えている。
 華乃は俺を信頼していると言ってくれたが、その言葉にどれほどの意味があるだろう。
 一番背の高いのっぽな男が華乃の隣に席を移した。華乃は椅子をずらしてあまりくっつか
ないようにしている。のっぽは気にした風もなく、メニューを開いて華乃に注文を聞いている。
肩が触れ合うほど近い。
 気づいたらビールを飲み干していた。顔が少し熱い。駄目だ、精神状態が不安定なせいか
いつものペースを保てないでいる。
 俺は席を立ってトイレに入った。男性用のトイレは小と大の場所がそれぞれ一つずつ
備え付けられていて、俺は個室に閉じこもった。尿意だけなので別にその必要はなかった
のだが、気持ちを落ち着かせるために一人きりになりたかった。
 用を足し終えて身なりを整えると、多少一息つけた。喧騒の届かない狭い空間で、宙に
向かって大きく息を吐く。大丈夫。酔いはまだそこまでひどくない。あとは水でも飲んで
いよう。携帯で時間を確認すると、九時前だった。
 そのときドアが開く音がした。誰かが入ってきたようだ。一瞬外の騒がしい音が耳に
入り、ドアが閉まる音とともに遮断された。
 二人組のようだった。静かな室内で、二人の声がやけに大きく響く。
「飲みすぎてない?」
「俺は大丈夫だよ。それよりマッキーがさ」
「あいついつも飲ませすぎるもん。自分はあんまり飲まないくせに」
 俺はなんとなく外に出るタイミングを逃した。黙って二人の会話を聞いていた。
「マッキー絶対あの子狙ってるって。目がさ、いやらしい感じ」
「いや、普通にかわいいと思うし。ぼくもちょっといいなーって思うから。小林さんだっけ? 
なんかちょっと硬そうな感じだったけど」
 思わず顔を上げた。
「慣れてないんだろ。合コン初参加って城戸ちゃん言ってたし」
「焼酎に抵抗ない女子って珍しい気がする。お酒強いのかな?」
「いや、もう結構きてる気がするぞ。城戸ちゃんは煽るし、マッキーのせいでペース速いし」
 ……それは、かなりまずいんじゃないか?
 俺は、さっきまでのとは別の不安を覚えた。華乃は嫌なことは嫌だとはっきり断る性格
だが、酒が絡むと人は正常な判断を下すことが難しくなる。ましてや大勢で飲むと、その
雰囲気に流されてもおかしくない。
「あんまり酔わせると後が怖いと思うよ」
「酔っ払いの扱いって難しいんだよなー。俺知らないから」
 フォローする気はないらしい。俺は会話を聞きながら、次第に決心していた。
 

126:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:41:38 0b6R5TCS
 
 二人組が出てから少し遅れて、俺は席に戻った。
 テーブルには空のビール瓶と皿の上のわずかなポテトのみ。俺はポテトの残りを次々
と口に入れると、一気に咀嚼して嚥下した。
 片付け終わったところで荷物をまとめる。上着を着直し、バッグを肩にかけて椅子を
戻した。
 そして、斜め向かいのテーブル席にまっすぐ足を向けた。
 後ろから見る華乃の様子はおとなしいものだった。しかし隣の男がしきりにべたべた
しているにもかかわらず、反応しないところを見るに、かなり酔っているのだろうと思わ
れる。俺がたまたまこの店に入らなかったら、お持ち帰りされていたにちがいない。
 ぐっと歯噛みする。あごに力が入る。
 怒りを抑えながら、華乃の真後ろに立った。
 しばらく声をかけずにじっとその黒髪を見つめた。いつもながら綺麗な質感で、つい見
惚れてしまうが、今はそんな場合ではない。
 隣の男がふと俺の存在に気づき、不審そうな目を向けてきた。右手を華乃の背中に
回して、こっそり髪先を撫でている。さっきからがんがん飲ませているこいつが、たぶん
『マッキー』だ。
 俺はとりあえず、そいつの手をつかんで離させた。
 急な俺の行為に目を剥いて、そいつは俺をはっきりと凝視した。
「誰?」
 俺は答えなかった。ただじっと男を見据える。てめえこそ誰だよ。その指折るぞ。
 不穏な空気を感じ取ったのか、周りが一斉にこちらに注目した。その中で華乃だけ
反応が鈍い。俺は華乃の肩に手を置き、呼びかけた。
「華乃」
 俺の声を聞くや、幼馴染みはぱっと振り向いた。
「あ、涼二!」
 華乃の顔は特にいつもと変わらない様子だったが、俺の姿を見ると嬉しそうな笑顔に
なった。
 俺は小さく笑いかける。
「連絡寄越さないから心配したんだぞ。言ってた店と違うし、なんか男も混じってるし」
 牽制するように大声で言うと、左隣にいた友人が「やばっ」と声を洩らした。
 まったく。
「ほら、帰るぞ。お前ちょっと飲みすぎだ」
「ちょ、ちょっと待て」
 マッキーが慌てて立ち上がる。俺は華乃を立たせながら、静かな声で聞き返した。
「何ですか?」
「急にやってきてなんなんだよ。カノちゃんは俺らと飲んでるんだけど」
「こいつ、あんまり酒強くないんですよ。このままだと心配なんで連れて帰ります」
 慇懃無礼に言葉を返すと、男は声を荒げた。
「待てよ! だいたいお前誰だ? カノちゃんとどういう関係だよ?」
 自分の目が細まるのを感じた。
「こいつの彼氏だよ」
 もう言い切ってしまうぞ。華乃がどう思おうと知るか。
「昔からの幼馴染みで、今は同棲してる。なんの手違いがあったか知らないけど、人の
女にちょっかい出すのやめてくれないか」
 男は明らかに鼻白んだ。
「そういうわけで連れて帰るんで。お金はここに置いていくから。帰るぞ、華乃」
 一息に言うと、俺はテーブル上に一万円札を置いて、それから華乃の手を軽く引いた。

127:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:43:40 0b6R5TCS
 と、
「!?」
 そのとき、急に華乃が抱きついてきた。
「おい、華乃!?」
 華乃は返事をしない。
 ただ黙って俺の肩に顔を押し付けている。俺は予想外な華乃の行動に、何度もまばたき
した。
 やがて、囁くように問い掛けた。
「今の言葉……どういう意味?」
 華乃の表情は窺えない。
 俺はどう答えたものか困り果てた。てっきり酔っているからスルーしてくれると思って
いたのだが。
 しかしごまかすわけにはいかない。男たちに啖呵を切った以上、押し通す必要がある。
そのことを華乃が認識してくれているかどうか。
 ただ、そういうこととは別に、もうそのまま想いを吐露していいんじゃないかとも思った。
「そのままの意味だよ。俺はお前の彼氏だって」
 頭を振られた。
「そんなのうそ。涼二はずっと私の幼馴染みじゃない。ただの、幼馴染みじゃない」
「幼馴染みだよ。幼馴染みで、恋人だ」
「……私でいいの?」
「……え?」
 どういう意味か、わからなかった。
 華乃はかまわず続ける。
「あなたを好きになっていいの? もう悩まなくていいの? ごまかす必要はないの?」
「華乃……?」
「ずっと好きだったの。でも言い出せなかった。あなたはいつも遠慮してたから。関係を
持ってもあなたは一歩引いていたから。言えなかった。あなたを憎らしくも思った。でも
そんな風に思うのはお門違いだから。私がはっきり言えないのが悪いから。言えない
自分が情けなかった」
 華乃は周りが見えていないのか、少しも声を抑えない。酔っているせいだろう。感情が
オープンになっている。
 だが俺もそんなことは気にしていなかった。
 酔っ払いのたわごととは思えなかった。その言葉が本当だとしたら、俺は今までこいつ
の何を見ていたのだろう。
 華乃の体はひどく小さく、不安げに震えていた。
 まったく、馬鹿だな、俺は。
 そっと、背中を撫でてやった。
「俺も好きだよ。ずっと好きだった」
「本当に?」
「好きじゃなかったら、あんな関係持つかよ」
 酒の過ちから始まった奇妙な関係だったけど。それが良かったのか悪かったのか、今
でも判断は着かないけど。
 でもこうしてこいつを抱きしめていられるのも、酒のおかげだというのなら、少しは感謝
してもいいかもしれない。
「ごめんなさい。私が馬鹿な提案をしたから」
「俺も悪かった。最初からきちんと言っておくべきだったんだ」
 華乃がゆっくりと顔を上げた。
 その目は微かに潤んでいて、でもはっきりと笑っていた。
「……あー」
 そのとき横から呆れたような声が割り込んできた。見ると、華乃の左隣にいた女が席を
立ち、こちらを見やっていた。腕組みをして、笑みを浮かべている。
「華乃、もう帰る?」
「あ……うん」
「そ。悪かったね。騙すような感じになって」
「ううん、もういいの」
 友人はうなずいた。そして、
「オッケー。幸せそうでなによりだ。じゃあ……さっさと帰れこの裏切り者ー!」
 やけに悲しく聞こえる叫びが、店内に響いた。

 あとで聞いたところ、最近彼氏と別れたばかりだったそうだ。

128:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:44:46 0b6R5TCS
 

 師走の夜風は冷たかった。
 しかしつないだ右手から伝わる華乃のぬくもりのおかげで、少しも寒くなかった。
 華乃は思ったより酔ってはいないらしく、しっかり歩調を合わせて歩いている。
 夜道を歩きながら、ただ互いの体温を感じ取り、その熱と感触に気持ちがどんどん
通じ合うような感覚さえ覚えた。
「なんだか馬鹿みたいだね」
「……何が?」
「今日の私たち」
 華乃はどこか嬉しそうに喋る。
「お酒のせいだよ、たぶん。酔いが回って浮かれてるの」
「かもな」
 見上げる星は、暗い暗い空の向こうではるかに遠い。
 そのはずなのに、俺はそれを簡単につかめそうな気がした。酒のせいではない。隣に
華乃がいることが、俺の気持ちを高揚させていた。
 どれほど酒を浴びようと、こんな気持ちにはなれない。
 あとから思い返したらきっと馬鹿みたいだと思うだろう。でも今は、この高揚感にただ
ただ浸っていたかった。
 ふと、気になった。
「なあ」
「ん?」
「華乃が前言ってた好きな奴って、俺のことだよな?」
 華乃はきょとんとなった。
 それからぷっと吹き出すと、盛大に笑い出した。
「な、なんだよ」
「ううん、すっごく涼二らしいって思っただけ」
 このタイミングで訊く辺りが特に、と華乃は一人ごちる。
「……なんか気になったんだよ」
「さっきはすごくかっこよかったのに」
「いやあれはその場の勢いみたいなもので」
 また華乃は笑う。
「私はずっとあなただけを見ていたよ」
 どきりとした。
「こんな風に」華乃はつないだ手をそっと持ち上げる。「一緒に帰ってたあの頃から、ずっと」
 暗がりの中を、ともに家まで歩いた小さい頃。
 その記憶は俺にとって大切な思い出で、華乃も同じように大切に胸にしまっていたの
だろうか。
 嬉しかった。
 本当に嬉しくて、胸が締め付けられた。葛藤していたときの苦しさにも似た、しかし少しも
苦ではない感覚だった。
 ごまかすように応える。
「俺も、ずっと好きだったよ」
「……うん」
「確信したのは最近のことだけど、でもずっと見続けてきたから。そばにずっといたいと
思ってたから」
 形だけじゃなく、丸ごとそばにいたかったから。
 華乃の手に力がこもった。
「いるよ。ここに」
「……」
「たとえこの手を離しても、いなくならないよ。それはあなたも同じでしょ?」
「……今は離したくないな」
 甘えん坊だね、と笑う。
「いいよ。私はあなたの専属のお手伝いさんだからね」
「改めてメイド服を要求する」
「……そのうちねっ」
 華乃とそうやって笑い合えることが、幸せだった。
 

129:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:46:03 0b6R5TCS
 
 部屋に入った瞬間、俺は華乃の腕を引き寄せた。
「えっ!?」
 優しさより欲が強かった。この一ヶ月間、若いたぎりを少しも解消していない。
 ぎゅっと抱きしめると、華乃が掠れたような息を吐き出した。
「りょ、涼二?」
「外じゃこんなことできないだろ」
 絹糸のような髪を撫で上げる。さらさらとした質感が心地好い。
 腕を伸ばし、壁にあるスイッチを押す。明かりが点いて、互いの姿がはっきりと視界に
現れた。
 華乃は、顔を真っ赤にしていた。
「見ないで」
「何恥ずかしがってるんだよ」
 軽口を叩くが、華乃はそのままうつむいてしまう。
「華乃?」
 俺の胸に頭を押し付けて、顔が見えないようにしている。
 その状態で10秒ほど静止し、それから小さな声でつぶやいた。
「……こんなにくっつくの、久しぶりだから」
「……」
「だから……恥ずかしい」
「お前、さっき衆人環視の中で抱きついてきただろ」
「あれは、ちょっと酔ってたし……それに嬉しかったから」
 華乃は顔を伏せたままぼそぼそと答える。
 そんな華乃の様子は珍しくて、俺の顔はついほころんでしまう。
 膨れ上がる愛しさを抑えるように、強く抱きしめた。
「……困ってる?」
「いや」
 困るとこうしてごまかすくせがあると前に指摘されたが、今は困っているのだろうか。
「……どうすればいいのかわからない」
「……何でも、していいよ」
 華乃の手が俺の背中に回った。
「今は、何でもしていいの」
「……心臓に悪いこと言うなよ」
「お返しだよ」
 つぼみから花が開くように、顔がゆっくりと上げられた。
「私だって恥ずかしいんだから」
 俺の手の力が緩んだ隙に、懐から抜け出す。
 靴を脱いでリビングへと消える華乃の後ろ姿を、俺は誘蛾灯に誘われるように追い
かけた。
 リビングにはいなかった。電気は点いていたが、姿はない。華乃の部屋から明かりと
暖房のスイッチを押す音が聞こえた。そっちか。荷物をソファーに放り投げてから、俺は
華乃の部屋のドアを開けた。
 エアコンの音がする中、華乃はベッドに仰向けになって、ぼんやりと天井を見上げて
いた。

130:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:47:27 0b6R5TCS
「眠いのか?」
 んーん、と小さく首を振る。
「ちょっと、緊張しちゃって」
「緊張?」
「だって……するんでしょ?」
 ストレートな言葉に苦笑いした。
「なんだ? ひょっとして嫌か?」
「そんなことないよ」
「逃げただろ、さっき」
「場所を移しただけだよ。前みたいなことはこりごりだったから」
「前?」
「涼二と初めてしたとき」
 言葉に詰まった。俺はそのとき酔っ払っていて、事の詳細をよく憶えていないのだ。
「玄関で押し倒されるのはさすがにね」
「俺、そんなことしたのか。……いや、さすがに今日は分別あるし、心配いらないぞ」
「うん。ちょっと落ち着きたかったのもある」
 華乃はまた深々と息を吐いた。
 いつもの飾らないジーンズ姿は、とても合コンに行った直後の女子とは思えない。合
コンの件は知らされていなかったらしいが、それにしても女の子らしい服装とはいえな
かった。
 正直俺はほっとしていた。華乃がスカートなど穿いて、他の男たちに見られるのは嫌
だった。みにくい嫉妬だが本心だ。
 華乃は軽く目を閉じながら、何度も深呼吸を繰り返す。
「涼二のせいだからね」
 唐突になじられた。俺は首をかしげる。
「何が」
「一ヶ月もご無沙汰だったこと」
 さらりと言われたことに軽く衝撃を覚えた。
 いや、それよりも、
「俺のせいなのか?」
「涼二が何も言わないんだもん」
 目を開けて、上体を一息に起こした。女の子には腹筋が弱くて出来ない子もいるらしいが、
華乃は運動神経もそれなりにある。
 頬を膨らませてこちらを見やる。じっとりとした目は非難がましいものだった。
 気まずい思いがしたのは、自分でもそれに気づいていたからだった。
「いつも誘うのは私ばかりで、涼二は一度も私を求めてこなかったもん。じゃあ私が何も
言わなかったらどうなるのかなと思って、試してみたんだけど、それでも一向に何も言って
こないから、腹が立って腹が立って仕方なかったよ。もうこうなったら意地でも誘うもんかと
思った」
「……あー……」
 俺は華乃のじと目に冷や汗をかきながら、どう答えたものか必死で考えた。
 しかしこういうときに限って俺の頭はまともに働いてくれない。

131:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:48:59 0b6R5TCS
 結局平謝りした。
「ごめん……。俺も華乃と、その、すごくしたかった。けど、そんなこと言い出せなかった。
最初のときにあんなことをした負い目もあったから」
「……私ばかりしたがってるみたいで、すごく恥ずかしかったんだよ」
 それは確かに嫌だろう。男はまだそういう生き物として見られるが、女はそういうわけには
いかない気がする。知らないが。
「じゃあ、どうすればいいかわかるよね」
「え?」
 華乃はにっこり笑って促してくる。
 その笑みはこちらを試しているみたいで、優しげにもかかわらず怖かった。
 俺はまた頭をフル回転させる。早く。早く何か言わないと。
 しばらくして、決めた。
 ベッドに腰掛けて、華乃の目をじっと見つめる。
「華乃。お前を抱きたい。俺のものにしたい」
 華乃は大した反応を見せなかった。
 ただ一つうなずくと、おもむろに顔を近づけてきた。
 ちょん、と。
 軽い口付けにあっけに取られた。
「私はとっくにあなたのものだよ」
 そう宣言して、幼馴染みは微笑んだ。



 服を脱がすときいつも思うのは、彼女が着痩せをすることだった。
 スタイルがいいのは知っている。しかし今こうして目の当たりにしている体は、どこも
かしこも柔らかそうで、健康的な肉付きをしていた。
 自身は冗談めかして「肉だらけ」というが、細すぎるよりこっちの方がいい。快活な彼女
らしい。
 下着だけの恰好になると、華乃も俺の服に手をかけた。互いの服を脱がすのが、
不思議と暗黙の了解になっていた。
「……やっぱり脱がすの好き」
「俺はものすごく恥ずかしいんだけど」
「かわいい」
 わからない。だけど、俺も華乃の服を脱がすのに興奮するし、似たようなものかもしれ
ない。違うか。鼻息荒く脱がされたら怖いか。
 華乃は俺の服を丁寧な手つきで脱がせていく。暖房が効いているので寒くはないが、
熱のこもった華乃の目が気になる。
 五分ほどして、俺の体を覆うのはトランクスだけになった。
「いつも思うんだけど、痛くない?」
 大きくテントを張っている股間を見て、華乃は妙に真面目くさって言った。俺としては
苦笑するしかない。
「こういうものだからな……別に痛くはないぞ」
「苦しそうだけどね」
 おしゃべりをしながらも、興奮は高まっていく。
 互いに下着は着けたままだ。それでも近づき、寄り添い、愛撫を重ねていくと、性感が
刺激されて、息が荒くなっていく。鼓動が、早まっていく。

132:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:49:58 0b6R5TCS
 俺は華乃の背後に回り、覆い被さるように抱きしめた。
「んっ」
 首筋に唇を落とし、鎖骨に沿うように舌を滑らせた。手は豊かに実った二つの膨らみに
回して、揉み込んでいく。
「ん……涼二って、この体勢好きだよね」
「……な、なんで?」
 図星を指されてうろたえてしまった。
「胸、揉みやすいもんね」
「……俺、そんなにわかりやすいか?」
 そんなに何度もこの体勢でしたわけではないのだが。
「手つきからわかるよ。ああ、好きなんだなーって」
「……」
 俺は沈黙するしかない。それでも手が止まらないのは、あれだ。魔力だ。おっぱいの。
「まあ涼二が喜んでくれるなら、私も嬉しいけどね」
「……なんか、外面を取り繕うのが馬鹿らしくなってきた」
 華乃はくすくすとおかしそうに笑う。
「いまさらかっこつけても意味ないよ。私は涼二のかっこ悪いところ、たくさん知ってるん
だから」
 それでもかっこつけたいのが男だけどな。
 華乃の手が俺の股間に伸びる。
「くっ」
 何度か手でしてもらっているので(口でも二度ほど)、触られるのも珍しいことではない
のだが、華乃の手の柔らかさに毎度毎度反応してしまう。一向になれない様子が、華乃は
おもしろいみたいだが。
 白魚のような指が、トランクスの上から逸物を撫でさする。指の腹で上下にしごかれる
のがたまらなく気持ちいい。
 俺も負けじと、華乃の下腹部に右手を差し入れた。
「ん、やっ」
 ショーツの隙間から人差し指を差し込むと、秘部はしっとりと濡れていた。
「なんだよ、お前も興奮してるじゃないか」
「恥ずかしいこと言わないでよ……」
「さっきの仕返しだ」
 今度は中指も一緒に入れてみる。人差し指より力が入る分、遠慮なく中に進入した。
「ひゃあっ!」
 嬌声がこぼれ、華乃の手から力が抜けた。
 ぬるぬるとした感触の中で、指を大きく動かす。俺の体だけを受け入れてきたそこは、
実に素直に俺の愛撫に応えてくれる。蜜が溢れて指先を濡らし、ショーツにまでしみを
作る。
「んっ、やっ、だめ、そんなにかき混ぜちゃだめ、あっあっあっ、ああっ、だめっ」
 華乃はもう俺への愛撫など考えられないようで、甲高い声を出して悶えた。
 膣内の具合は十分だった。肉は柔らかくほぐれていて、俺の物を簡単に受け入れる
だろう。このぬかるみの中に挿入することを想像しただけで、たまらない気持ちになる。
 このまま指でイかせてもいいのだけど。
「あっ、あっ、あっ、んんんっ、あん、あああっ、ああっ」
 首をいやいやと振って、刺激に耐えている。その乱れようがかわいくて、俺は横を
向いた華乃の頭を左手でしっかりと押さえ、唇を奪った。
「ん―」
 舌が絡み合う。愛液と唾液それぞれの音が重なって、いやらしさに拍車がかかる。
 華乃の体からはすっかり力が抜けていた。
「そろそろ入れたい」
「ん……」
 指の動きを止めて言うと、華乃は小さくうなずいた。
 火照った頬の赤みが、幼馴染みの高ぶりをそのまま表しているようだった。
 

133:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:51:09 0b6R5TCS
 
 先端を膣口に押し当てただけで、俺は果てそうな気分だった。
 ゴムに包まれた逸物は、硬さを保ちながら少しも萎える様子はない。むしろ今からつな
がると思うだけで、硬度が増す気がした。
 ぐちゅ……と、濡れた秘部めがけて男性器が突貫する。
 ゆっくりと腰を押し進めると、ひりひりと痺れるような感覚が脳まで響いた。
 久しぶりの感触だった。
 正常位で奥までしっかりつながると、華乃と目が合った。
「……気持ちいい?」
「……なんか、前よりずっと気持ちいい気がする」
 華乃は不思議そうな顔で俺を見つめた。
「……久しぶりだから?」
「それもあるかもしれないけど……」
 たぶん気持ちが通じ合ったからだと思う。
 肉欲だけじゃない。心が満たされているから、空しくないのだ。
 何よりこの気持ちを、もう隠さなくていいから。
 口には出さないが、華乃もきっとそれを感じているだろう。さっきから膣内の締め付けが
強烈で、痛いくらいだ。
 腰を動かし始めると、また刺激が格別だった。
 電気が走ったかのような痺れが、熱とともに途切れることなく続く。一つ突き入れるごとに
内側から熱がどんどん上がっていって、下半身から頭の天辺まで、体の隅々に刺激が伝播
していくような、快感の波が全身を襲った。
 俺はその快楽に染められていく。
「あっ、あああっ、んん、刺激、強すぎ……っ」
 華乃も興奮していた。愛液が洪水のように溢れて、腰を振ると中でじゅぷじゅぷ水音が
鳴る。性器と性器が擦れ合う度に、華乃の喘ぎ声が耳朶を打った。
「あっ、あんっあっあっ、やぁんっ! 激し……ん、ああっ!」
 まずい。本当に気持ちいい。
 快楽に際限がない。この気持ちよさはどこまでも上っていけそうな気がして、逆に怖く
なった。このままおぼれて沈んだら、二度と抜け出せなくなりそうな。
 幼馴染みが必死で俺の体に抱きついている。
 指が背中に食い込む。吹き出る汗が肌と肌の間で滑り、光沢を生む。
 目の前の女の子は俺のものなのだ。こんなに淫らに喘いでいる彼女が、俺だけのもの
なのだ。
 体を動かして快楽を貪る度に、そのことを実感した。

134:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:52:32 0b6R5TCS
「華乃……」
 幼馴染みの名前を呼ぶ。
「華乃、好きだ……」
 今まで言えなかった想いを、ひたすら言葉にして吐き出した。
「好きだ、好きだ……華乃」
 潤んだ瞳が俺を捉えて離さない。
「んっ、私も好き……涼二が好き……」
「もっと聞きたい。華乃の口から聞きたい」
「すき、すき、だいすき。ずっとずっと好きだったの……」
 溢れ出す気持ちを止められない。
 爆発しそうな想いを胸に抱えながら、恋人を強く抱きしめた。
 深く深く、呑み込むように唇を押し付けた。今はとにかく彼女のすべてが欲しかった。
 腰の動きが一段と激しさを増した。肉のぶつかる音がより生々しく聞こえ、この行為を
一層煽る。
 睾丸が飛び出そうなほど、逸物全体が快感に痺れた。もういつ発射してもおかしくない。
「華乃、もういく……」
「んっ、ああっ、あ、うん、きてきて、いっぱい出してえっ!」
 直後、お湯が噴出するように、溜まりに溜まった精液が勢いよく飛び出した。
「ん、あああ、んん……」
 華乃も同時に一際甘い声を洩らした。
 ゴムの中に吐精しながら、腰をぐうっと奥まで押し付ける。搾り出すように精液を放出し、
完全に出し切ると、疲労感でいっぱいになった。
 体がやけに重く、華乃の上からなかなか動けない。二ヶ月前に初めて味わった快感を、
さらに上回る衝撃だった。
 華乃は疲れきったように目を閉じている。
 俺は彼女を抱きしめたまま、しばらくじっと動かなかった。
 ベッドの上に残ったのは、互いの温もりと、確かな愛しさだけで、それで十分のような
気がした。



 髪を撫でると、華乃は嬉しげに目を細めた。
「涼二の手、優しい」
 うっとりした様子でつぶやく華乃は、すっかり甘えん坊になっている。
 体をくっつけながら、しばらく互いの体を触ったり撫でたりしていたが、やがて華乃が大きな
あくびをした。
「眠いか?」
「うん、ちょっと」
 つられて俺もあくびをしてしまう。思わず吹き出したが、しかし考えてみれば、酒に酔い
ながらさらに激しい運動をしたわけで、眠くならない方がおかしい。
 抱き合いながら、俺と華乃は一緒の布団を被った。
「おやすみ、涼二」
「おやすみ、華乃」
 目を閉じて、しかし抱き合う腕の力は少しも緩めない。
 このまま目を開けると、今日のことが夢に終わりそうな、そんな錯覚にとらわれる。
 でも。
 たとえ夢だとしても、俺は目が醒めたとき、すぐに華乃に想いを告げるだろう。
 そのときもきっと、幼馴染みは微笑んでくれるに違いない。
 触れ合う肌から伝わる想いは、勘違いなどではないから。
 行為の中で、華乃の気持ちがはっきり伝わってきたから。
 俺は自分と、そして華乃の想いを胸に抱きしめながら、ゆっくりと眠りについた。
 ようやくつかんだその想いを、俺は決して離しはしない―。

 <続く>

135:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/12/05 03:53:38 0b6R5TCS
以上で投下終了です。
たぶん次で終わりです。

136:名無しさん@ピンキー
10/12/05 05:01:33 FiD4MuWz
乙です!

137:名無しさん@ピンキー
10/12/05 05:22:51 CYvwHgRz
乙です!
最高

138:名無しさん@ピンキー
10/12/05 08:55:28 SEeSag+0
>>135
最高過ぎるんですけど。

139:名無しさん@ピンキー
10/12/05 09:04:25 p7jp7ci3
乙だよ これは乙だよ

140:名無しさん@ピンキー
10/12/05 10:52:59 jsROK/N4
素晴らしい
GJ

141:名無しさん@ピンキー
10/12/05 10:59:14 RmylbsEg
流石ですとしか言いようがないグッジョブ!!
涼二が嫉妬するところで、一緒に嫉妬してしまった

142:名無しさん@ピンキー
10/12/05 18:26:01 yKcwMaEW
不良少女な幼馴染ってない?

143:名無しさん@ピンキー
10/12/05 20:25:54 RmylbsEg
口が悪いならまだいいけど、不良は俺としてはちょっと・・・

144:名無しさん@ピンキー
10/12/05 20:43:40 dSyswMxU
最低限新品のままでないとな
…という制限を設けると喧嘩の腕も高性能になるんだよね
負ける=即レイプだろうし

145:名無しさん@ピンキー
10/12/05 20:47:08 M7L2rKRP
保管庫にまんまタイトルなやつなかったか?

ところで俺は
喧嘩は強いものの汚い手にハマり危うく・・・を救助する男側→そのまま・・・
というありがちな流れのがいい。

146:名無しさん@ピンキー
10/12/05 21:46:26 2oiknDKz
フルバの今日子さんみたいに、「なんでこうなっちゃったんだろう」って悩んでSOS出してる不良幼馴染っ子なら可愛い

147:名無しさん@ピンキー
10/12/05 22:22:48 OFH5XOo6
男に近づく女に喧嘩ばっか仕掛けてたら
いつの間にか不良扱いされて
男子も女子も近寄ってこないから
男だけが頼りで、唯一の友達で、男にだけは甘えるっていうかツンデレっていうか
そういう電波ってだけなんすけども。はい

148:名無しさん@ピンキー
10/12/06 00:10:25 3Boizf0B
>>143
不良は微妙だよねー。

149:名無しさん@ピンキー
10/12/06 01:09:05 eQYpWYi9
幼なじみ「大きくなったらけっこんしようね」

約束を律儀に守る幼なじみ
しかしある日約束を忘れていた男が他の女と付き合う
幼なじみグレて引きこもりに
窓越しに話し掛けても「今更何よ…」「煩いわね…」の一点張り

でも男も気づいて無いだけで幼なじみのことが好きなので恋人とは長続きしない
その内お互いの気持ちを認め合って恋仲に
幼なじみは超絶あまえんぼに変身

しかし男に未練のある元カノに邪魔されて…

みたいなとこまで考えたけど需要ありそう?
あまえんぼスレ向け?

150:名無しさん@ピンキー
10/12/06 02:55:39 0CcZjnLp
>しかし男に未練のある元カノに邪魔されて…
この一文のせいで修羅場スレ向けかと思ったがあんな所に行けだなんて残酷過ぎて言えるわけがねえ

…まあ、ドロドロしないんならここでもいいんじゃないか

151:名無しさん@ピンキー
10/12/06 08:07:06 eQYpWYi9
>>150
ありがとう
そんな修羅場らない予定だから早速制作開始します


152:名無しさん@ピンキー
10/12/07 22:27:30 KyNl9Tab
In vino veritas 読みなおそうと思って保管庫いったら3話はまだ収録されてなかったわ。残念

153:名無しさん@ピンキー
10/12/08 04:25:39 uQEO+L+u
某乙女ゲーで、
○主人公の幼馴染みのお兄さん
○家がお隣
○主人公の通う学校の先生
って設定なのに攻略対象じゃないキャラがいて、
「制作者わかってないな~」と思ってたら
実は彼は主人公の死んだ姉と同級生で相思相愛、
「学校を卒業したら恋人になろうね」という約束を交わしてた…
というのがあって萌えたと共に(´Д`)

154:名無しさん@ピンキー
10/12/08 05:03:42 zlLK5VTs
このスレってこんなに露骨に女アピールしても平気だっけ

155:名無しさん@ピンキー
10/12/08 10:26:48 3fdHp3cS
そうやって食いつくのがいなけりゃ何とも思わないと思う

156:名無しさん@ピンキー
10/12/08 13:31:37 l3nO1pmL
いや違うな…奴は女ではない
本能が告げている
奴は…ゲイだッ(キリッ)



という事でゲイな幼なじみ男を一途に慕う小動物系幼なじみマダー

157:名無しさん@ピンキー
10/12/08 15:55:22 kmDdsaeQ
>>142
どういう不良を想定するかによる。
単なるDQNとかはあれだけど個人的に孤高少女とかなら全然ありですな。


158:名無しさん@ピンキー
10/12/08 17:12:35 xeqExFEz
てか女がいたらダメかな?

159:名無しさん@ピンキー
10/12/08 17:59:51 riYo4jUl
楽天の二年目のピッチャーが幼なじみと結構したそうな。三歳からで大学で再開。


160:名無しさん@ピンキー
10/12/08 22:49:14 pQiauQui
>>142
不良っていうとどうしても「援交」とか「ヤリマン」みたいなイメージを抱き易いからな
要はその辺の説明をどううまくつけるかじゃね

161:名無しさん@ピンキー
10/12/08 23:01:11 3fdHp3cS
自分の中ではそれはどっちかというと不真面目って感じ
不良だとあぁンやんのかコラって感じ

162:名無しさん@ピンキー
10/12/09 01:18:30 UKKHaEBz
武闘派番長の主人公と武闘派スケバンの幼馴染が喧嘩して川原で殴り合って
夕焼けの川原で横になって「なかなかやるな」「お前もな」というぶつかるほどに深く結びつく作品か

163:名無しさん@ピンキー
10/12/09 01:20:10 H11nusEp
ビッチと不良は違うような気もするが。

164:名無しさん@ピンキー
10/12/09 01:21:12 pV03Tmg7
ヤンデレをヤンキーデレだと思ってた時があったな

165:名無しさん@ピンキー
10/12/09 05:16:13 xXuY8cfz
>>159
戸村ドラ1の上に幼馴染と結婚かよ・・・
うらやましすぎる

166:名無しさん@ピンキー
10/12/09 18:25:11 M0LpAcRA
>>165
中学生の時まで家族ぐるみの付き合いがあって大学で再開し交際に発展。と記事にあった。

このスレ的にはたまらない

167:名無しさん@ピンキー
10/12/09 19:03:11 Je3M5JNB
>>166
しかも叱咤激励してくれたおかげで野球を続けてるとか、もうね。
最近野球への興味は薄れてたけど、何か応援したくなってくる。

168:名無しさん@ピンキー
10/12/09 20:39:40 M0LpAcRA
>>167
あだち充のマンガ並の境遇

169:名無しさん@ピンキー
10/12/09 20:40:08 fdcwyCHC
パワプロのレベル

170:名無しさん@ピンキー
10/12/09 20:40:22 pV03Tmg7
カカといいそのまま書けそうだな

171:乙女心をカットして 1/4
10/12/10 01:24:33 fPRypYc6
 俺の幼馴染の美幸は腰まで届く長い髪が印象的な女の子だ。
 顔も可愛いし、小柄ながらバランスのよい肢体や温和な性格とも相まって狙ってる男子生徒は多い。
 ま、俺がいつもそばに居るから変な虫は寄ってこないけど。

 だけど昔の美幸はこんなに長い髪はしていなかった。
 中学校に上がった頃はせいぜい肩に届く程度の長さだったし、今だって洗髪が大変だと良く
言ってるくらいだし。

 それでも長くしているのは数年前、いつもの美容室に行って髪を切ってもらっているとき、
美容師の手元が狂って、運悪く耳たぶを鋏で傷つけてしまったからだ。

 今でも美幸の耳たぶにはそのときの傷跡が残っていて、親や俺以外には余り耳を見せたがらない。
 そしてそれ以来、美幸は美容院へ行かなくなってしまった。

 最初の数ヶ月は髪を切ること自体を頑なに拒否していたので、伸びまくった前髪のせいでさながら
ホラー映画の幽霊みたいになっていた。
 余りに酷いので、せめておばさんに前髪だけでも切ってもらえよといったのだが、それも拒否
された。曰く、「お母さん不器用だから……」だそうで。
 ……確かに、おばさんはあんまり器用なほうじゃない。
 また耳をチョッキンとやってトラウマになっても困るしな……なんて思っていたのだが、続けて
美幸の口から出てきた言葉は、俺をさらにびっくりさせるものだった。

「こーちゃん手先器用だよね……こーちゃんが切ってくれるなら、いいよ。」

                   ◇

 あれから3年、月イチで、俺は美幸の髪を切っている。
 一番最初は前髪をまっすぐに切りそろえただけだったけど、何せこっちは素人。
 髪を切るのは意外に難しくて、上手くそろえるのに何度も切りなおして、前髪が短くなりすぎて
しまったのを覚えている。

 場数を踏んだ今ではかなり上達して美幸の注文にもそれなりに答えられる余裕も出てきたし、
最初の頃は絶対切りそろえさせてくれなかった耳の回りも切らせてもらえるようになっている。
 とはいっても豪快にカットする度胸は無いのでせいぜい伸びた分毛先を切る程度だけど。

 今日も美幸の家の庭に椅子を出して、ケープを羽織った美幸を座らせて鋏を振るっていた。
 長い髪の先を櫛で梳かしながら、スキバサミですいて自然な感じでまとまるように気をつけながら
長さを切りそろえていく

 櫛通りのいいつやつやした黒髪を梳くたびに、美幸の髪からいい匂いがする。
 その香りを楽しむのが、俺のひそかな楽しみだ。
 堂々と女の子の髪に触れる機会なんてそう無いしね。

 シャクシャクとスキバサミで長い髪の先をすいていると、美幸が話しかけてきた。

「結構伸びてる?」
「んー、いつもと変わらないけど。美幸髪伸びるの早いからなぁ。」
「そうかな?」
「うん。スケベは髪伸びるの早いって言うしな。」
「すっ、」

 美幸の背中がぴくんと動いて、そして少しして後ろから見える耳たぶが赤くなったのがわかった。

「……私、スケベじゃないもん。」
「うん、美幸は超オクテだよな。ちょっとエッチな話しただけで真っ赤になるし。」
「……こーちゃんの意地悪。」

172:乙女心をカットして 2/4
10/12/10 01:26:01 fPRypYc6
 前髪を切ろうと回り込んでみると、美幸はちょっとだけふくれっ面になっていた。
 でもそれがかえって可愛らしく見える。

「前髪切るから、目閉じろよ。」
「うん。」

 美幸がふくれるのをやめて目を閉じる。
 それを確認してから、俺は目にかかりそうになっていた前髪を手にとって櫛を入れる。
 そして長さを眉に掛かるか掛からないかぐらいに切りそろえる。

 目の前には目を閉じてすまし顔の美幸の顔がある……なんかこうやって見ていると、キスされるの
待ってるみたいな……いや、何考えてるんだ俺は。

 誤魔化すように白いつやつやのほっぺについていた髪の毛を指先でそっと取り除く。
 美幸は今でも緊張するのか、長いまつげがふるふると震えていた。

「まだ緊張する?」
「うん、緊張してる。」
「ハサミ、まだ怖いんだ?」
「……そうじゃないんだけど。」
「ちがうの?」
「……」

 なぜか美幸は少し赤くなっただけで答えなかった。
 なんなんだ?

 気を取り直して、鋏を動かす。
 耳の手前のところは特に慎重に、美幸が怖がらないように丁寧に切っていく
 一通り手を入れたところで、前や横からバランスを見てさらに少しずつ整える。

 耳は傷があるので普段出して無いけど、髪を切る時だけは前髪のバランスを見るのにちょっとの
間だけ出す事にしている。
 指で髪を掻き揚げて耳の後ろに流してやると、耳の後ろがくすぐったかったのか少しだけ肩が
ぴくっと震えた。

「くすぐったかったか?」
「……うん。ちょっとだけ。」
「普段髪で隠してるから敏感になってるんじゃ無いか?」
「こーちゃんの触り方がちょっとエッチなんだよ。」

 さっきの仕返しか、美幸はそう言ってニマニマ笑う。
 俺はそれを流しつつ、微妙に不ぞろいな毛先を鋏の先で切りそろえて整える。
 これで完成。素人としてはまあ上出来だろう。

「はい、出来上がり。」

美幸の顔の髪を払って、手鏡を渡してやる。
美幸は鏡の中の自分を覗き込んでからにっこりと笑った。

「うん、やっぱりこーちゃん上手だよ。綺麗になった」
「とはいっても素人だからたかが知れてるけどな。」

 場数はそれなりにこなしたし、ネットで調べたりはしてるものの、正式に勉強したわけじゃない。
 技術的な未熟さのせいでせっかくの美幸の魅力を引き出せていない気がする。

173:乙女心をカットして 3/3
10/12/10 01:28:00 fPRypYc6
「私は十分だと思うんだけどな……」
「いや、美幸をもっと綺麗にしてやりたいし……」

 おばさんが丁度いいタイミングでお茶を持ってきてくれたので二人で縁側に並んで腰を下ろした。
 お茶菓子をつまんでお茶をすすりながら、前々から思っていた事をふと口にしてみた。

「うーん、やっぱり高校卒業したら美容専門学校行こうかな。」
「え?」

 美幸がびっくりした顔で俺を見た。
 美幸の事だけでなく高校も残りあと一年ちょっととなって、これからの進路をどうしようかと
考えているときにふと思ったことだ。
 学校に行って技術を学んで美容師になれば今よりももっと上手に美幸の魅力を引き出すことが
出来るようになるかもしれない。

 でも、なぜだかそれを聞いた美幸は少しがっかりしたような、ふてくされているように見えた。

「私は……反対。」
「え? ダメか?」
「私は……こーちゃんと一緒に大学に行きたい。それに……」
「それに?」
「……なんでもない。」
「……いや、なんか気持ち悪いなぁ。言いたい事あるんなら言ってくれよ。」
「……笑わないでね。」
「? ああ。」

美幸は少しだけ赤くなって、こほんと一つ咳払いをしたあとで答えた。

「……他の女の子の髪触ってるこーちゃんが、なんか嫌なの。」
「へ?」
「なんか、嫉妬しちゃうって言うか……」

 そこまで言って美幸はうつむいてしまった。

「あ、あー、えっと……」
「さっきだって……前髪切ってもらってるときって、なんかキスしてくれるの待ってるみたいで、
 なんか緊張しちゃうって言うか……私が一人でそう思ってるだけなんだけど。
 ……やっぱり、私ってスケベな子なのかも。」

美幸はもうすごい真っ赤な顔で茹で上がりながらそんな事を言っていて、俺は俺で頭の中が真っ白というか極彩色というかになっていた。

「いや、まあ、さっき俺もちょっとそんなこと考えてたし……別にスケベってわけじゃ……」

 ぐしゃぐしゃの頭をフル回転させて搾り出した言葉はまさに墓穴を掘ってるとしか思えないもので。

「じゃあ、私だけがそう思ってたわけじゃないんだね……ん……」

 そんな俺の言葉に、美幸は真っ赤な顔を俺に向けて目を閉じた。

 そうまでされたら、俺のやることは一つなわけで……
 なんて言ったら良いか……美幸の唇はすごく柔らかかった。

                   ◇

 その後、丁度お茶のお代わりを持ってきていたおばさんにその場を見られて二人で大パニックに
陥ったりとか、まあ、色々あったりしたんだが……大学に進学した今でも俺は美幸の専属美容師を
続けていたりするのだった。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch