10/12/14 21:47:01 SymRT2aG
>>193あそこのテンプレ、未整理だからわからんけど今の段階では入ってないんだ?
微妙に騒いでた気がするが。
196:193
10/12/15 12:07:46 HIYdPXmm
>>195
久々に見に行ったら禁止図書扱いだったぜひゃっほい
197:名無しさん@ピンキー
10/12/16 18:23:42 Pj5ag8Ck
結末知らんが、その展開による判断だろうな・・・。
198:名無しさん@ピンキー
10/12/18 01:02:27 F9Xo+N3k
世田谷の事件で被害者の女の子が8才の年に幼馴染の男の子とバレーしていたビデオが流れていた。
不謹慎だがもし生き残ったらを想像してしまった。
自分が悪い人間だと想うと共に犯人許せないと感じた
199:名無しさん@ピンキー
10/12/18 02:10:39 ieKfDajp
そういえばセックスレスで悩んでるマスオさん旦那がいて、実は奥さんは数十メートル程しか離れてない近所に住んでる幼なじみとW不倫してた、って話があったな
ありゃ旦那さんがかわいそうだったけど笑ったww
200:名無しさん@ピンキー
10/12/18 19:53:21 uRqAaQf4
「すなば~」さんと「My」さんの続きをお待ちしております
201:名無しさん@ピンキー
10/12/19 00:03:20 /MZvFnwt
>>199
W不倫って旦那は奥さんの幼馴染の男の奥さんと不倫してたのか?
202:名無しさん@ピンキー
10/12/19 07:00:14 Yoqzf7UE
>>201
W不倫ってのは既婚者同士の不倫ね。片っ方だけでも
間男の家に突撃して「お前の嫁を抱かせろ!」の下りは笑った
203:名無しさん@ピンキー
10/12/21 19:58:39 72ILkGYm
帰ってきた大阪弁幼馴染(女)に襲われる少年
204:名無しさん@ピンキー
10/12/22 00:57:22 NvL8Vvwe
子供の頃からの幼なじみでお嬢様と執事見習い
もしくはその逆のおぼっちゃまと侍女でひとつ
205:名無しさん@ピンキー
10/12/22 01:06:24 +NWJm2x+
>>204
執事見習いがメイドさんと仲良くしてるの見て膨れるお嬢様とか最高です。はい
206:名無しさん@ピンキー
10/12/22 16:06:00 Nkle0qCB
マナケミア2のリリアのことかー!
207:名無しさん@ピンキー
10/12/23 23:06:19 IJP4H7vV
普段は色気なさそうな関係なのにふたりっきりになるとえろえろしちゃうのも
個人的に好きです。
208:時代劇風味
10/12/24 21:30:40 OMOQ4jW+
時代劇風味で書いてみました。
正直幼馴染かどうか微妙な設定ですが、
ここ以外に投下できそうなところが思いつかないので
なにとぞご容赦を
できれば批評を聞いてこれからに繋げていきたいです
では投下
209:時代劇風味
10/12/24 21:33:08 OMOQ4jW+
相田新左エ門は決して顔が悪いわけではなかった。
長身で体つきもがっしりしているし、仕事もそれなりにできる方だった。
しかし新左エ門はときたま、突然に物思いに耽る癖がある。そのうえ、またこれも突然に、くっくっと低く笑いだすのだ。
呆けているような顔をしていると思うと不気味に笑いだす新左エ門を、人は頭のおかしな奴だと言って避けて歩く。
だから同僚に持ちかけられた縁談で紹介された女―今は新左エ門の妻であるが―を一目見たとき、
新左エ門は驚きが隠せないでいた。
女の名は芳乃という。
変人、あるいは狂人扱いされている自分にとって、芳乃はまったくもって釣り合わないと新左エ門は思っていた。
芳乃は小柄で色も白く、そして誰もが目を引くような美貌の持ち主だった。
器量も良く料理もできて、誰からみても文句のつけようのない妻だった。ただ、物事に関して少し反応が薄いことと、
何事にも、何者にもはっきりとものを言うところは、人によっては鬱陶しいと思われることもあるようだが、
新左エ門からすればそれさえも好ましく思えた。
芳乃を娶ってからというものの、新左エ門は、妻の前では例の癖は出すまいと気をつけていた。
もっとも、この癖について新左エ門は自覚はなく、同僚に指摘をされてようやく気付いたので、
出さないようにするというより、芳乃とあまり顔を合わせないようにしていたのだ。
210:時代劇風味
10/12/24 21:34:18 OMOQ4jW+
「おまえさまはそんなに私のことが嫌いでございますか」
芳乃を娶ってから三年ほどたったある日、芳乃が突然にそう聞いてきた。
「そんなはずはなかろう。お前ほどの良妻を、どうして嫌いになれようか」
「ではなぜ私のことをお避けになるのですか」
「そんなことはない」
「そうでしょうか」
初めて聞く芳乃のきつい物言いに、新左エ門は箸を置いて芳乃の顔を見た。
そしておもわず、あっと声を出す。
芳乃は目に涙をたたえていた。普段何にも動じない芳乃が泣いているのをみて、新左エ門は慌てふためいた。
「まて、なぜ泣くのだ」
「愛する夫に月に数えるほどしか顔を合わせてもらえないのですよ。それを三年も続けられていては、泣きたくもなります」
「その程度のことで」
「私にとってはその程度ではないのです」
それは静かな口調ではあったが、まるで悲痛な叫びのようにも聞こえた。
211:時代劇風味
10/12/24 21:36:10 OMOQ4jW+
「これ、落ち着かんか」
「いいえ、もう我慢できません。私がなんのために、誰のためにこんなに肌を磨いて、家事やら料理やらを頑張って覚えたのかお分かりにはならないのでございますか」
「それはもっと然るべき家に嫁ぐために女を磨いてきたのであろうよ」
相田の家は百石、対して芳乃の実家は二百五十石で、本来であれば芳乃はもっとほかに嫁の貰い手が然るところにあったはずなのだ。それは新左エ門が前々から考えていたことでもあった。
「おまえさまは私ではご不満でございますか」
「そんなことは言っておらん」
「ではなぜ」
新左エ門は本当のこと―例の癖のことを言ってしまおうかと一瞬逡巡したが、
ほんの少しの男としての自尊心が邪魔をしたため、あえてそっけなく答えた。
「どうでもよかろう」
「私は、おまえさまを愛しているのでございます」
またこれも静かに、しかしはっきりと芳乃は言い放つ。
「おまえさまが私を愛していなくとも、私はおまえさまを愛しているのでございます」
新左エ門は自分の頬が熱くなるのを感じていた。
「女子がそのようなはしたないことを」
「しかしおまえさまはこうでも言わないと私の気持ちに気づいてはくれないでしょう」
鈍いんですから、と呟きながら、芳乃はだんだんとにじり寄ってくる。新左エ門は逃れようと後ずさるが、
そこでようやく自分が既に壁際に追い詰められていることに気がついた。
「まて、まて。落ち着け」
「では訳を教えてくださいまし。おまえさまが私を避ける訳を。私のことがお嫌いならばどうぞそう言ってくださって結構です」
「そうは言っておらんだろう。今話すから落ち着け」
そう言うと、芳乃はすっと身を引いて姿勢を正した。新左エ門もそれに倣うように芳乃と向き合って姿勢を正す。
しかしどう話したものか、と新左エ門は悩んでいた。
こんな話をして愛想を尽かされてしまってはどうしようもないし、何か良い言い訳はないものか。
しばらく俯いて考えていた新左エ門はちらと芳乃の方を窺った。そして言い訳を考えている自分がひどく情けなくなった。
芳乃は毅然とした表情をしようと努めてはいるようだが、今にも泣きそうな表情をしていた。
目尻には今にも零れんばかりの涙をたたえ、新左エ門が話を切り出すのを待っていた。
新左エ門はとうとう観念して、すべてを打ち明けようと決めた。
212:時代劇風味
10/12/24 21:38:33 OMOQ4jW+
「わしはな、城内で変人、ともすれば狂人扱いされておる。知っているか」
「……はい。そのような噂も、耳にしております」
「ならば話は早い。わしはな、ときおり呆けた顔をしているかと思うと、不気味に笑いだすのだそうだ」
新左エ門は顎にうっすらと生えている髭を擦りながら、嫌そうに言った。
「私はついぞ見たことはありませんが」
「それはそうだろう。わしはそのような、なんだ、自分の不気味なところをお前に見せないようにしていたのだからな」
新左エ門は言いながら、なんと自分は女々しい男だろうと思っていた。
そして続ける。
「だからそのために、お前と顔をあまり合わせないように―お前からすれば、避けるようにしていたわけだ」
「な」
とそれだけ言って、芳乃は固まってしまった。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、自分に呆れたのだろうと新左エ門は思った。
そして次には罵倒でもされるだろうかと考えた。
芳乃はしばらくするとはっとしたようにまた姿勢を正して言った。
「では、おまえさまは、私に嫌われないようにと、そのような理由で、私を避けていたと申すのですか」
「……まあ、そうなる、か」
新左エ門が歯切れ悪く答えると、芳乃は俯いてしまった。
ああ、これは愛想を尽かされたかもな、と新左エ門は思った。
芳乃の父親は豪放磊落を絵に描いたような気質の持ち主で、いつもどっしりと構えていて、
言いたいことははっきりと言い、正義感にあふれ、上役にも喰ってかかるような人物だった。
そんな父親を見て育った芳乃からすれば、今の自分のなんと女々しいことか。
これは何を言われても仕方がないな、と新左エ門は思う。
しかし、芳乃は顔を上げたかと思うと、新左エ門に抱きついてきた。
かろうじて受け止めることはできたが、それでも新左エ門はな、な、と言って事態を飲み込めずにいた。
213:時代劇風味
10/12/24 21:39:41 OMOQ4jW+
「うれしいです」
新左エ門に抱きついたまま芳乃は言う。首筋に当たる芳乃の息がくすぐったい。
「これ、やめんか」
「いいえ、やめません。今まで我慢していた分を、発散させていただきます」
今までもこうしたいと思っていたのかと思うと、新左エ門は自分の顔が熱くなるのを止められなかった。
しかしなぜこんなにも芳乃が喜んでいるのか、新左エ門はいまだに理解できないでいた。
「私がお前様を嫌うなどありえません」
「なぜ」
「おまえさまを愛しているからです」
「またそのようなはしたないことを」
新左エ門の咎めるような声も聞かず、芳乃は抱きついたまま、新左エ門に訊ねてきた。
「おまえさまは、その、例の癖をしているとき、なにをお考えなのですか」
「…………」
「……私には言えぬようなことですか」
「いや、そうではない。うん、昔のことを、少しな」
芳乃は、昔のこと、とどこか懐かしむような声で相槌を打った。
そうだ、と言って、新左エ門は話し出した。
214:時代劇風味
10/12/24 21:44:12 OMOQ4jW+
昔、新左エ門は川とか沢とか、そういった水辺でよく遊ぶ子供であった。
ある日、寺子屋の帰りにいつものように川で遊んでいると、遠くからこちらを眺めている少女がいた。
どこか寂しげにしているその少女と目が合うと、少女は慌てて背を向け、どこかへ走って行ってしまった。
次の日も同じように遊んでいると、前と同じようにして少女はこちらを見ていた。
そして同じように目が合うと、どこかへ走って行ってしまうのだ。
それが何日か続いた次の日、新左エ門は少女にちょっとした悪戯をしてやろうと考えた。
いつもは寺子屋から川までゆっくりと歩いてくるのだが、その日は走って行った。
そして少女がいつも立っているあたりに来ると、近くの茂みに身を隠した。
しばらくすると、少女がやってきた。初めて間近で少女のことを見た新左エ門は、素直に可愛いと思った。
色白で小柄な少女で、少し地味ではあるが、決して安物ではない着物に身を包んでいた。
悪戯などせず普通に声をかけようかと一瞬悩んだが、新左エ門は意を決して計画を実行した。
少女は新左エ門がいないのを確認すると、少ししょぼくれたような顔をして、とぼとぼと歩きだした。
新左エ門はなるべく気配を殺して少女の後ろに忍び寄ると、
あらかじめ捕まえておいた蟹を、少女の首にそっとくっつけた。
すると少女は、きゃあ、と可愛らしい声をあげて転んだ。
やりすぎたかな、と新左エ門が思っていると、少女はしきりに右足首のあたりを撫でていた。
どうやら捻ってしまったらしい。
これは悪いことをしたと思い、新左エ門は少女前に膝をついて、大丈夫か、と声をかけた。
少女は、大丈夫です、と言いながら立ちあがったが、足に力が入らないらしく、また転びそうになった。
新左エ門はそれをすかさず受け止め、送っていこう、と言った。
少女は、申し訳ありません、とはにかみながら顔を上げた。
そして新左エ門と目が合うと、みるみるうちに首から耳まで真っ赤に染まり、
あ、あ、と釣ったばかりの魚のように口をパクパクさせた。
新左エ門は、そんなに痛むのか、どこかほかに痛いのか、と声をかけるが、少女は首を横に振るばかりでなにも答えない。
少女の様子に動転してしまった新左エ門は、少女の膝の裏と肩のあたりに腕をまわし、少女を抱き上げた。
そうして一目散に自宅に連れて行った。
抱きかかえている間少女は顔を真っ赤にしたまま終始無言で、新左エ門の気を余計に焦らせた。
家に着くと、ちょうど非番だった新左エ門の父親がどこの家の娘かなどど少女に訊ねてみたり、
世話好きの母親が足首に包帯を巻いたりしていたが、少女は頬を少し赤くしたまま、まるで魂が抜けたように呆けていて、
ほとんど口を利かなかった。そうしてついには新左エ門と口をきくこともなく迎えの者におぶられて帰って行った。
その日は親父に、女子に怪我をさせるなどそれでも男か、と拳骨をくらい、長々とした説教を聞く羽目になった。
陽もとっぷり暮れてから、母親に、そこらへんにしたら、と言われてようやく親父は新左エ門を解放したが、
それ以来ことあるごとにこの話を持ち出されるようになって、新左エ門は、もう悪戯などするものか、と堅く心に誓った。
215:時代劇風味
10/12/24 21:47:22 OMOQ4jW+
それから数日。新左エ門は少女と会っていなかった。
新左エ門は初め、会って一言謝って、あわよくば友達になりたいなどと考えていたが、
今では、少女に会うことはもうかなわないのかもしれない、とも考えていた。
悪戯の挙句怪我をさせてしまったのだから、それも当然か。
そう思うと淡く寂寥感のようなものが心に湧き上がるのを感じたが、新左エ門にはどうすることもできなかった。
その日も寺子屋の帰りに遊んで行こうと新左エ門は川の方に足を向けた。
いつもの場所に来ると水の中に手を突っ込んで石の下やらを掘り返す。
蟹とかヤゴとか小魚を探して捕まえるのが新左エ門の常だった。
しばらくそうして、今日は不作だな、などと思って腰を上げた。
そこでふと、後ろからの視線に気がついた。
振り返ると、あの少女が立っていた。この前とはうって違って、かなり質素で、安っぽい着物に身を包んでいた。
少女は色白の顔をほんの少しだけ赤らめながら、もじもじとして何かを言いたそうにしている。
新左エ門はとりあえず謝らなければと思い、先日は済まなかった、などと堅くるしく謝辞を述べた。
すると少女は最初、まるで自分が何について謝られているのか分からないといったような様子できょとんとしていたが、
ようやく思い当ったのか、今度はより一層顔を赤くしながら、あたふたとしだした。
そして身振り手振りで何かを伝えようとしていた。
そうとは知らず、新左エ門が訝しげな顔をしながらまるで踊りのようなその動きを見ていると、
少女はとうとう首から耳まで真っ赤になり、眉を八の字にして、口をすぼめていつぞやのようにまた固まってしまった。
新左エ門は、どうすればいいのか一向に分からず、とりあえず言葉をかけようと少女の肩に手を置いた。
するとその瞬間、少女はいきなり新左エ門に飛びかかってきた。
新左エ門は突然のことに対応できず、そのまま少女と共に川に落ちた。
新左エ門が打った尻の痛みに顔をしかめていると、少女が自分に抱きついていることに気がついた。
新左エ門は、これ、女子がはしたないぞ、と少女に声をかけたが、少女は新左エ門の腰に腕をまわして、
顔を新左エ門の胸にうずめたまま離れようとはしなかった。
どうしていいのか分からずそのままにしていると、少女がぽつりと何かを呟いた。
川の水音にさえぎられて、新左エ門はそれを聞きとることはできなかった。
しかしもう一度言わせるのも何かおかしい気がして、とりあえず、こちらこそ、と言った。
少女はそれを聞くとひときわ強く新左エ門を抱きしめ、それからすぐに立ち上がってずぶ濡れの恰好のまま駈けて行った。
そして少女とはそれきり会うことはなかった。
216:時代劇風味
10/12/24 21:50:06 OMOQ4jW+
「その時のことを思い出すと、なぜだか無性におかしくなってな。
お前が嫁に来てからは前にもまして思い出すようになって、それで顔を合わせようとしなんだ」
芳乃は新左エ門の話を静かに聞いていた。新左エ門を見つめる瞳には、驚きと、どこか寂しげな色が浮かんでいた。
「……その少女は、今どうしていると思っていますか」
「さあな。綺麗な娘であったし、どこぞの大きな家の嫁にでもなっているのではないか」
「……お会いになろうとは、思わなかったのですか」
「思ったとも」
実際、新左エ門は少女に会いに行こうとはしたのだ。
しかし家を訪ねようにもどこの家の者か聞いていなかったし、両親に訊ねても教えてはくれなかった。
少女を探して町を徘徊したこともあったが、結局会うことはなかった。
なんとももったいないことではあるがの、と新左エ門がそう言うと、芳乃は、そうですか、とだけ言って俯いてしまった。
芳乃の様子に新左エ門は何かまずいことでも言ったのかと思って声をかけようと思ったが、芳乃の方が先に口を開いた。
「その少女は、きっとおまえさまが会いに来てくれるのを、ずっとずっと、待っていたのではないでしょうか」
「そうかもしれんが、所詮は推測の域を出んことだ」
新左エ門が少し冷たく言い放つと、芳乃は顔をあげ、綺麗な瞳で真っすぐと新左エ門を見つめて言った。
「私は、お待ちしておりました」
新左エ門は、芳乃が何を言っているのか分からなかった。
芳乃は続ける。
「川に落ちた次の日、私は風邪を引いて、それきり水辺に近づくことも、男の方とお話をすることも許されませんでした。
父上は私を溺愛してましたし、怪我をしたり風邪をひいたりを立て続けにしたので、当然ではありました。
でも、おまえさまのあの言葉のおかげで、ここまで頑張ってきました。」
217:時代劇風味
10/12/24 21:53:28 OMOQ4jW+
そこで芳乃はまた俯いて、でも、と再び言って続ける。
「おまえさまには、私の気持ちは、伝わっていなかったのですね」
新左エ門はようやく理解した。
あのときの少女は―
「芳乃、お前だったのか……」
こくん、と、芳乃は小さく頷いた。
「だがなぜ、今まで黙っていたのだ」
「おまえさまは、私のことなど憶えていないと思ったのです」
忘れるわけがない、と新左エ門は言おうと思ったが、芳乃はその言葉を遮るように言った。
「町で一度だけ、おまえさまにお会いしました」
「なに?」
新左エ門には心当たりが全くなかった。
会っていれば昔も今も変わらない美しさを見紛うわけもないし、新左エ門はきっと話しかけているはずだ。
しかしそんな記憶はない。
「おまえさまは、綺麗なお方と楽しそうに二人で歩いていました。私は声をかけようかとも思いましたが、
おまえさまの邪魔はするまいと、静かに見送りました」
「ああ、そいつはな」
新左エ門は、それについては心当たりがあった。
二人で出掛けるような気心の知れた女といえば、新左エ門には一人しかいない。
「おそらく、わしの従妹だ。お前がうちに来る前にな、どこの馬の骨とも知れぬ男と駆け落ちして、それきりだがな」
「いと、こ」
うん、と新左エ門は頷いて、芳乃を見た。
218:時代劇風味
10/12/24 21:53:56 OMOQ4jW+
「ところで芳乃」
「は、はい」
芳乃は一瞬びくっとしたが、すぐに落ち着いて新左エ門を見た。
「あのときお前は、わしになんと言ったのか、教えてはくれぬか。今更ではあるが、きちんと返事をしたいのだが」
新左エ門がそう言うと芳乃は顔を朱に染め、しかし、しっかりと新左エ門を見つめて言った。
「私は……貴方様をお慕い申し上げています、と、あの時、そう、申しました」
新左エ門は自分の顔も同じように赤くなっているだろうな思いながら、しかしまた芳乃と同じように、相手の目をしっかりと見つめて返事をした。
「わしもだ。昔から、お前のことしか見ていなかった」
新左エ門にそう言われて、芳乃は喜怒哀楽のどれとも取れないような顔をして。
いつか川の流れの中でそうしたように新左エ門の腰に手を回し、胸に顔を埋めて、
首から耳まで真っ赤に染めたまま、小さく、しかしはっきりとした透き通るような声で、
今胸にあふれる気持ちをそのまま伝える。
「おまえさまを愛することができて、おまえさまに愛してもらうことができて、私は幸せです」
新左エ門もまた応える。
「ああ。わしもだ。わしも、お前がいてくれて―お前がわしを好いていてくれて、幸せだとも」
新左エ門がそう返すと、芳乃は一層顔を赤くして、幸せそうに微笑んだ。
219:時代劇風味
10/12/24 21:54:33 OMOQ4jW+
終わりです
エロ無し宣言忘れてました
スイマセン
220:名無しさん@ピンキー
10/12/24 22:34:16 jnrhUBVo
まずはGJ!
お互い不器用そうなところが、時代物の三人称の文体にマッチしてていいんじゃない?
微妙に家格違いとかその辺りの要素がさりげなく効いてる。
221:名無しさん@ピンキー
10/12/24 22:38:33 85k7qLub
>>219
クリスマスプレゼントきた
GJ!!!!
222:名無しさん@ピンキー
10/12/25 02:41:56 NM9a+jgB
さっき作ったSSを投下します
暇だったもので・・・
223:クリスマスの日 1/4
10/12/25 02:43:47 NM9a+jgB
外には雪が降っており、冷え冷えとした空気が広がっていた。
にもかかわらず、町の至る所に人の姿が見えた。
とりわけ、カップルの姿が目に付く。それもそのはずで、今日はクリスマスだからだ。
人々の間には、寒さを忘れてしまうくらいの暖かい雰囲気が満ちていた。
寒さを与えるために降り注ぐ氷の結晶も、この日ばかりは多くの喜びをもたらす天からの贈り物となっていた。
「飾りつけはこんなもんでいいだろ」
「あとは星だけだね」
暖房の効いた温かい室内で二人の男女の会話が聞こえる。
女の子―沙希<さき>が星を手に取り、それをツリーの頂点に乗せた。
「これで完成っと」
「よし、終わったな」
二人は仕事を終えてコタツにもぐりこんだ。その上にはケーキが乗せられている。
食べる前に男子―武<たける>が沙希に声をかけた。
「あーあ、父ちゃんと母ちゃんがいれば、こんな飾りつけなんてしなくてすんだのに」
「仕方ないでしょ。おじさんもおばさんも今年は遅くまで仕事なんだから」
「しっかし、沙希はツリーの一番上まで届くような年齢になっちまったんだなー、俺も老け込むわけだ」
「どうしたの、急に親父くさいこと言って。まだ17歳でしょ」
「そうは言っても、昔の俺ならこんな雪の日は真っ先に外に出て遊んだんだけどなー。今じゃそんな元気は出ねぇんだよ」
そう言われると自分も老け込んだような気がしたが、それは雪を見てもはしゃがない年齢まで立派に成長したのだ、と沙希は思うことにした。
「まぁ、確かに。子供の頃は雪を見るとすぐ外に飛び出していったもんだよね」
「雪合戦したり、雪だるま作ったりしたなー」
「かまくらとかも作ったよねー」
「作った、作った。中に入った途端、崩れたりしてな」
「あれはホント・・・死ぬかと思った」
二人は顔を見合わせて笑った。
224:クリスマスの日 2/4
10/12/25 02:45:11 NM9a+jgB
ケーキを嚥下し終わると、沙希はツリーのほうへと視線を向けた。
「このツリー、もう十年以上使っているよね」
「悪かったな。買い換える金がねぇんだよ」
「あっ、いや、そういう意味じゃなくて。私達が子供の頃から―」
「ひひひ、冗談だよ。そうだな、昔からずっとこのツリーを飾って、家でクリスマス会をやってたもんな」
武の言葉を聞いて、沙希は感慨深くなった。このツリーは何十年も二人の成長を見てきたのだ。
「私達のことを、ずっと見守ってくれたんだよね」
沙希は思わず感懐を口に出した。
その途端、武が噴き出し、ついには声を上げて笑った。
「な、なに!?」
「だって、マジ顔で語っちゃってんだもん」
武にそう言われて、沙希は赤面した。急に自分のことが恥ずかしくなった。
「『私達のことを、ずっと見守ってくれたんだよね』」
武が沙希の声色を真似て台詞をなぞった。沙希はあまりの羞恥から今にも卒倒しそうだった。
「や、やめてよ~」
沙希の懇願を無視し、武は再び同じ台詞を言った。
「やめろーー」
沙希は大声を出して、武の口を塞ごうとコタツから勢いよく出た。
無我夢中で飛び出したためか、片足をコタツの脚にひっかけ、バランスを崩してしまった。
床に倒れこむ、と思った刹那、座っていた武が沙希の体を受け止めた。
難を逃れた沙希は、下敷きとなってくれた武に謝罪とお礼を言おうとして、彼の胸から顔を上げた。
その瞬間、武の顔が間近に現れた。こんな近距離で顔を見合わせたことなど一度もなかった。
「うわぁっ!」
沙希は思いがけない事態に声を上げた。その顔は、またも赤面していた。しかし、今度は別な意味の恥ずかしさからだった。
胸に手を当てて、高鳴る鼓動が落ち着けようとしていた。
「何だよ、人の顔みてそんなに驚くなんて失礼じゃねーか。・・・まぁいい、それより大丈夫か?」
「う、うん、ありがと・・・」
沙希はコタツに戻ってしばらくうつむいていた。
今はまだ、目の前にいる男子を直視できなかったからだ。
225:クリスマスの日 3/4
10/12/25 02:46:42 NM9a+jgB
「そういや、さっきの話の続きだけどよ」
「さっきの話?」
あんなことがあったため、沙希はすぐに思い出せなかった。
「ほら、昔から俺ん家でクリスマス会をやってたこと」
「あ、ああ、うん」
「前はもっといっぱい人がいたんだよなー」
「そうだね。武の友達とか、私の友達とかも集まってたし」
「それが去年からか、ついにお前と二人だけになったのは」
「うん」
最もそれは沙希にとって嬉しいことであったが。
「高校に入ってから、何故かみんな彼女ができちゃったんだよな」
「私の友達も、ほとんどが彼氏持ち」
次に武が放った一言は、沙希をどきりとさせた。
「お前は彼氏つくらねーの?」
「えっ・・・わ、私は・・・」
沙希は言いよどんだ。実は目の前の人を彼氏にしたいなどとは言えなかった。だから何とかごまかすため、逆に訊いてみた。
「そ、そういう武はどうなの?」
そう言った瞬間、沙希は後悔した。
もし彼女が欲しいと熱望していたり、最悪いまいる好きな人でも聞かされたら、とてもじゃないがこの場で平常心を保つことなど無理に思えたからだ。
「お、俺かっ・・・そうだな・・・」
武は沙希を見つめた。沙希はまた胸が高鳴った。
「俺は・・・いいかな、彼女なんて。面倒くさそうだし、金かかりそうだし」
沙希は思わず頬が緩ませた。そして、お茶をすすってから穏やかに言った。
「そっか、そっか」
沙希に応じて武がしみじみと言った。
「そうだ、そうだ」
二人は再び笑いあった。
226:クリスマスの日 4/4
10/12/25 02:49:18 NM9a+jgB
「沙希、クリスマスプレゼントはちゃんとサンタさんに頼んだか?」
急に話題を変えて、武が話しかけてきた。
沙希はそれを聞いて危うくお茶を噴き出しそうになった。
「私、高校生ですけどー!?」
サンタなど今時の小学生でも信じていないのに。まして高校生が―。
「何だよ、ノリが悪いなー」
そう言われて沙希はムッとした。本当に欲しいものを今すぐ言ってやろうかと思った。
しかし、無論そんな勇気などなかったので、それはしかるべき機会にとっておく事にした。
代わりにあることを思いついた。
「・・・がほしいかな」
「えっ、何だって?」
沙希の声が小さかったので、武は聞き返した。
その瞬間、沙希は後ろに置いておいた物を武の目の前に見せた。
「勝ち星がほしいかな!」
沙希の手には携帯ゲーム機が握られていた。後で武と一緒に遊ぼうと持ってきたものだった。
「はっ、おもしれぇ。また返り討ちにしてやんよ」
「どうかな。私はあれから一生懸命育てたんだよ」
「そいつは俺だって同じだ」
二人は対戦を始めた。お互いのモンスターを1体ずつ戦わせて、相手の持っている6匹全部のモンスターを倒したら勝ちというゲームだった。
しばらく両者とも口を開かず夢中にゲームをしていたが、やがて沙希の顔が強張った。
それを見た武がすかさず沈黙を破った。
「俺はまだ6匹残っているけど、お前はあと2匹だな」
「・・・・」
「降参したほうがいいんじゃないか」
勝負は、言うまでもなく武の勝ちだった。
「やっぱり俺の勝ちだったな」
「ふふっ、ふふふ」
沙希が突然笑い出した。その様子をみて、武は狼狽した。
「おい、どうしたんだよ急に・・・」
「ごめんごめん、やっぱり楽しいなーって」
「楽しいって・・・負けたのに?」
「負けたのに」
そう言って、沙希は武に微笑んだ。その顔をみて、武はどぎまぎし、顔を背けた。
* * * * * * *
サンタに頼んで願い事が叶うのなら、私はこうお願いするだろう。
『この幼馴染みと、いつまでもこんな仲でいられますように』
227:名無しさん@ピンキー
10/12/25 02:54:27 NM9a+jgB
以上で終わります
喜んでいただけたなら幸いです
>>219
GJです!!
228:名無しさん@ピンキー
10/12/26 00:02:12 Gorh7+/B
>>219 >>227
GJ。
229:名無しさん@ピンキー
10/12/26 22:59:13 ba4mbrdH
世の中顔なんだと考えて自分に自信を持てない少年を幼馴染みに持つ女の子の話
230:名無しさん@ピンキー
10/12/27 18:16:50 +LIbuhaw
>>227GJ!!
すなばさんとMYさん断筆してしまったのか?続編をまっている。
231:名無しさん@ピンキー
10/12/30 19:22:53 0AJ+35/o
投下します
エロなしです
232:文章表現
10/12/30 19:24:43 0AJ+35/o
1.
冬の短い日が沈み、辺りはすっかり暗くなっている。
人々の生活の証である電光が、その暗闇を照らしていた。
「あーっ、もう。この先の展開が思いつかない」
とある一軒家の一室で少女の声が響く。嘆声にしてはやや大きい。
「まぁまぁ」
そんな少女の横で、少年のなだめる声がする。
「落ち着いて。焦ったっていい作品はできないよ」
そう告げた途端、少年はティーカップに入っている紅茶をすすった。
「なに悠長なこと言ってんの、浩太。もう締め切りは近いんだから」
浩太と呼ばれた少年が、その少女の言葉を聞き、肩をすくめる。
「だったら、何でもっと早く着手しなかったの?」
「しーまーしーた。今年の春からずーっとパソコンに向かって。キーボードをカタカタと」
「それで、小説はどのくらいまで出来たの?」
「・・・構想の半分くらい・・・」
「・・・今年は諦めたほうがいいかもね」
「嫌。絶対今年に投稿するって決めたんだから」
そう言って少女は再びパソコンと向かい合った。
「ねぇ、美里」
頭を抱えている少女、美里が振り返って、浩太を見た。
「んぁー?」
「構想ができているのに、何で展開が思いつかないの?」
すると、美里は人差し指を上に立て、それを横へと振った。
「全然分かってないんだから、あんたは」
紅茶を飲みながら、浩太はその言葉を聞いていた。
「あの場面とあの場面を、いかにうまくつなげるか。そして尚且つ、読者をあっといわせる表現も考慮して―」
美里は自分の創作論を展開したが、浩太はうんざりした表情を浮かべ、半分以上を聞き流していた。
「君の理論はよく分かったよ、美里。だから、早くそれを実行してほしいな」
「あんたが話しかけてきたんでしょーが」
「ごめん、俺が悪かった。執筆の続きをどうぞ」
再び室内を静寂が支配した。
233:文章表現
10/12/30 19:27:39 0AJ+35/o
だが、手持ち無沙汰になった浩太はやはり退屈だった。
「ねぇ」沈黙に耐えかね、ついに浩太が口を開いた。
「なーにー?」丸っきり指を動かしていない美里が、ややけだるそうに応えた。
「今度はどんなジャンルの小説を書いているの?」
「んー、純文学に近いかも」
「うぇっ」
浩太は思わずうめき声を漏らした。
「何よー、その声」
「だって、また読まされるんでしょ、俺」
「当たり前じゃん。最初の読者があんたなのは、昔からのしきたりでしょ」
「ああいう堅い文は正直・・・」
「どこが堅いのよ。芸術的で素晴らしい名文の嵐じゃん」
浩太にとっては、美里の言うその「芸術的で素晴らしい名文」が苦手なのだが、目の前の少女にそれは分かってもらえなかった。
「いま暇でしょ。そこにある名作たちでも読んで、少しは純文学に慣れておいてよ」
そう言って、美里は本棚を指した。
背の高い本棚が4つほどある。そのうち3つには本がぎっしりと詰まっており、残り1つも半分くらい埋まっていた。
「えーっと、どの辺?」
「純文は・・・一番左の本棚の、上のほう」
浩太が見上げると、そこには名高い文豪の作品がずらりと並んでいた。
しかし、文学にまるで興味のない浩太には、一部の作品を除いて聞いたこともないタイトルばかりが目に入った。
そこで彼は、おそらく日本で一二を争うくらいに有名なタイトルを手に取った。
ベッドに腰掛け、活字を追っていた浩太だが、数十分も経たないうちに本を閉じてしまった。
「・・・ダメだよ、美里。何か疲れてきた」
そういって、彼は小説を本棚に戻した。
「えーっ、何でよー。無我夢中になるくらい面白いのに」
「安心して、君のはちゃんと読むから。・・・何とか努力して」
「もう」
美里は呆れ顔で浩太のほうを見つめている。その浩太は、一番右の本棚で読むものを物色していた。
「どんな本がいいってわけ?」
「俺にはこういうのが合ってるかな」
彼の手の中にはティーンズ向けの小説があった。
「また。あんた好きだよね、ライトノベル」
「まぁね」
浩太は再びベッドに腰掛け、読書に勤しんだ。
234:文章表現
10/12/30 19:28:29 0AJ+35/o
浩太の読んでいる小説は、主人公の少年と少女が活躍する冒険物語だった。
そして、その二人の人物の関係は―
(幼馴染み、か―)
浩太は思わず本から顔を上げ、パソコンの前で頭を悩ませている少女を眺めてみた。
(俺も美里とは随分長い付き合いになるなぁ)
浩太が美里と出会ったのは幼稚園の頃だった。
幼稚園から自宅まで向かうバスの中で、いつも最後まで残っていたのは浩太と美里だけであった。
園児が彼らだけになってしまった空間で、退屈を紛らわすために二人は話し込むようになり、そして大の仲良しになった。
お互い家が近所であるので、二人は毎日のように一緒に遊んでいた。
子供の頃から現在まで、その関係は変わっていない。
浩太は読書を中断し、ティーカップを手に持ち、美里を眺めながら物思いに耽っていた。
(それにしても、我が幼馴染みがこんなにも本の虫になってしまうとは思わなかったなぁ)
幼い頃の美里は、外でしか遊ばない女の子であった。
美里の探検ごっこやヒーローごっこといった遊びに、浩太はくたくたになるまでつき合わされていた。
(それが・・・)
本の世界に没頭するようになってから、美里は友達との付き合い以外ではあまり外に出ることはなくなった。
もちろん自宅で本を読んでいるのであるが、しかし何よりも自分で文章を書くことに時間を注ぐようになったのだ。
(ホント、人っていつどんな風に変わるかわからないもんだよねぇ)
浩太は空になったティーカップを床に置き、再び物語の世界へと入っていった。
その瞬間、キーボートを打つ音が室内に響くようになり、それはしばらく途切れることがなかった。
だが、その音を聞き読書に勤しむ傍らで浩太は思うことがあった。
(美里ってば、高校生なのに純文学なんて書けるのかな。・・・無理だと思うけどなぁ)
浩太はさっき見ていた小説の文章を拠り所として、そう勝手に結論付けていた。
(背伸びしすぎず、この本みたいにもっと軽い文章を目指して書いたほうがいいような―俺のためにも)
彼はため息をつき、そして今度こそ読書に集中した。
235:文章表現
10/12/30 19:29:34 0AJ+35/o
2.
美里が本に取り付かれたのは小学3年生のときだった。
「美里ー、お昼休みだよー。早くグラウンドに行こうよ」
今よりもっと少年であった浩太が美里を催促している。
「・・・うん」
返事はしているものの、美里は自分の机から一向に離れる気配をみせず、教科書を耽読している。
「何で休み時間でも教科書読んでるのー」
「だって、続きが気になるんだもん」
昼食の前の時間は国語の授業だった。その授業ではとある小説を題材としていた。
「また明日続きやるって先生言ってたよ」
「明日まで待てない」
「えーっ」
「悪いけど、今日はパス。あたし抜きで遊んできていいから」
「もー」
帰りの時間となり、ランドセルを担いだ浩太が美里に話しかける。
「美里ー、帰ろー」
「ごめん、ちょっと図書館寄ってもいい?」
「・・・・」
「何、その顔」
「あんな静かな場所、美里とは一番無縁なところだよ。騒いだら駄目なんだよ」
「あんたねぇ・・・あたしを何だと思っているの。本を借りに行くだけよ」
「美里が本・・・?・・・ぜ、絶対熱があるよ。確かめてあげる」
「・・・あんたって奴は・・・」
一人で図書館へと向かっていく美里の後を、浩太は慌てて後を追った。
*
「いやー、悪いね。あんまり構ってやれなくて」
帰り際の浩太に美里が自宅の玄関で話しかける。
「別に気にしてないよ、そんなこと。・・・だっていつものことだし」
「あはは、本当に助かるよ。あんたがベッドに座ってると、あたしは椅子に固定されざるを得ないから」
「もうちょっと、集中力を養った方がいいんじゃない」
「むぅ・・・分かってるよ」
美里はふくれっ面をしてそっぽを向いた。
「じゃあね」
「うん、また明日」
外に出た浩太は冬の冷気に身を縮ませながら帰路についた。
236:名無しさん@ピンキー
10/12/30 19:30:47 0AJ+35/o
以上です
こんなんで良かったなら、続きでも書いてみようかなと思います
237:名無しさん@ピンキー
10/12/30 19:53:38 1ohTIB8N
どんどん続けて下さいませ!
238:名無しさん@ピンキー
10/12/30 20:27:37 H5fqH164
さぁ続きを書く作業に移るんだ
239:名無しさん@ピンキー
10/12/31 16:59:23 Cw5hun2U
>>236wktk! その直後で申し訳ないが
年賀状で小ネタ
「あっ」
―という声が出たときには、往々にして手遅れであることが多い。
今回もその例に漏れず、俺が年賀状を用意していないことに気づいたのは、既に31日のことだった。
「……まあ、いいか」
手遅れではあるが、その程度で済む問題だ。どうしても挨拶をしたいなら、年賀メールという手もある。
そしてそうまでして連絡しなければならない相手は、俺にはいない。
「うん、問題ない」
小学生のころ、せかせか十何枚も書いていた少年はこんなにずぼらな大人になりました。
「問題ない。じゃないでしょ、こらっ」
こたつの中で足を蹴られた。向かい合ってこたつに入っている幼馴染の彼女の仕業である。
ちなみに今は、彼女の家の雪はきを手伝った労いに、家に上げてもらい暖をとっている、という状況。
「でも、送る相手いないし」
「普通に生きててそんなことあるわけないでしょっ。友達が1人もいなかったわけでもないでしょうに」
「それはそうだが、何年も会っていないのにいきなり年賀状を送りつけるのもどうかと」
「年賀状ってそのためのものであるでしょ」
そうだったのか。さすが、今でも昔の友達のほとんどに年賀状を送り続けている奴の言うことは違う。
「小学校のころの友達とか、未だにあんたがどうしてるかも聞いてくるんだから」
「ああ……そうなんだ」
音信不通のままでいると、そのうち、死亡説が広まってしまうかもしれない。
「いちいち私が対応するのも面倒だから、ちゃんと年賀状出してあげなさいよ」
「うん、その気になってきた。そうしたいのはやまやまだが……もう大晦日だな」
「そーね。ま、そんなことだろうと思って、今年は私が手を打っておいたから」
と、彼女は書き損じて手許に残しておいた年賀状を俺に見せる。
差出人である彼女の名前の隣には、連名するように俺の名前が書いてあった。
「どうよ?」
「どうよって……お前、これ」
「なぁに? どっかおかしいとこあった?」
「いや……こんなん、同棲してるもんだと勘違いされて余計に問い合わせが来るぞ」
「あっ」
―という声が出たときには、往々にして手遅れであることが多い。
今回もその例に漏れず、二人の名前が並んだ年賀状は、既に(おそらく)発送された後だった。
「……まあ、いいか」
手遅れではあるが、その程度で済む問題―「なわけないでしょ、こらっ」
「どうせ一緒に住んでるようなもんだろ」
「家が近所でよく行き来するだけで、お互いひとり立ちすらしてないでしょっ」
「これからも年賀状はお前に任せるよ。苗字いっしょになったらちょっとは書くの楽になるだろ」
「 」
「あっ」
―という声が(以下略)
240:名無しさん@ピンキー
10/12/31 17:25:57 e5HR9dDe
>>239
くそうお前さんもなんて秀逸なんだ
もちろん小ネタで終わらせたら酷い目に遭うからな>主に俺が
241:名無しさん@ピンキー
10/12/31 23:54:39 dI2QKiwQ
お二人共GJです
小ネタ投下します。エロ無しですので嫌な方はスルーでお願いします
「瞬君…今年ももう終わるね…」
「みな姉?どうしたんだよ急に」
みな姉さんがいきなり呟く。みな姉は隣に住む一つ上の所謂「幼なじみ」と呼ばれる相手である。
ちなみに受験生の俺の家庭教師でもあるのだが、大晦日とお正月だけは勉強の休みを貰ったので二人して俺の部屋にこもり
みな姉は大学生だと言うのに、大晦日にどこにも行かず一緒にガキの使いを観ている…という状況だった。
「今年も何もなかったなぁ…と思って」
「何もって何が?」
「…」
俺の問いに返答をしてくれない彼女は、俺を見つめてくる。
「な…何?」
「瞬君…好きだよ…」
「…!?」
いきなりのみな姉の言葉に俺は口に含んでいた蜜柑を危うく吐き出す所だった。
「ゴホッゴホッ」
「ご…ごめんね?大丈夫?」
噎せている俺の隣りでみな姉が背中をさすってくれる。みな姉の手が温かくなんだか変な感覚だ。
やっと咳が治まった俺はみな姉の方に顔を向ける。心配そうに見つめてくる彼女に俺の心が苦しくなる。
「急に変な事言ってごめんね…瞬君が大学生になって彼女が出来たら
今年みたいに一緒に居られなくなっちゃうと思ったら我慢できなくて…」
俺から目を逸らしてみな姉が謝る。シュンとなったその顔があまりにも可愛くて俺は彼女を抱きしめていた。
「し…瞬君!?」
いきなり抱きしめられたみな姉は驚いて動けないでいた。
「俺も好きだ…てか俺みな姉一筋だったし」
抱きしめる力を緩め、目を見つめて告白をする。みるみる内に彼女の顔は真っ赤になっていく。
「あ…あの…本当?」
「こんな事嘘ついてどうするんだよ…てか受験が終わったら俺から告白するつもりだったのに…」
「瞬君から!?」
俺の言葉に驚くみな姉が可愛くて、もう一度思い切り抱きしめて耳元で「好きです付き合って下さい」と囁く。
「…はい…」
俺を抱きしめ返しながらみな姉が小さな声で頷く。
242:名無しさん@ピンキー
10/12/31 23:58:33 dI2QKiwQ
「受験生のくせに告白なんかしたら怒られるかな~って思ってたんだけど杞憂みたいだったな」
胸の中にいたみな姉を解放し照れ笑いをしながら呟く。
「…ごめんね…瞬君受験生なのに私が我慢しなかったから」
「いや…その…俺の方こそごめん。大学落ちたら恥ずかしくて言えなかっただろうし…」
俺の別の意味での告白にみな姉の表情が急に引き締まる。
「そうだね!お正月返上で勉強だ!!私の告白が原因で落ちたりしたら…」
「え!?A判定もらったし今日と明日だけは特別に休みだったんじゃ!?」
「恋愛にうつつを抜かして落ちたなんて事になったらおじさんやおばさんにどう謝っていいか…
ですので明日からは今まで以上にビシバシいきますからね!」
お姉さん口調でキリッと言い放つみな姉に俺は露骨にげんなりするが、折角恋人同士になったのだここで終われるわけがない。
「明日からだよね?」
「うん…今日はもうすぐ終わるしね…明日からまた頑張ろう」
俺の言葉にみな姉は純粋な笑顔で返してくる。その言葉に再度みな姉を抱きしめて頬に手をあてる。
「ちょ…瞬君!?」
俺の行動に驚いたみな姉がわたわたしているが、関係ない。
「今日はあと数時間で終わるんだ…それまではみな姉とイチャイチャしたい」
俺の言葉に驚きつつ顔を真っ赤にさせながら、みな姉は恥ずかしそうに頷く。
みな姉の了承を得ると俺は自分の唇を彼女のそれに重ねた。
ちなみに勢いで服に手を入れようとしたらペチッと手を叩かれた。
「…ここからは大学に受かってからね…」
俺に告白した割に、真面目で奥手なみな姉が可愛すぎてどうしようもなくなる…。
ヤバい…早く大学に受かってキスの先がやりたい。みな姉以上に俺は猛烈に勉強に励むのだった。
あれ?俺みな姉の手のひらで転がされてる?これを見越して告白してきたなら、なんて女に惚れてしまったんだ俺は…。
以上です。
243:名無しさん@ピンキー
11/01/01 00:27:50 vPqZuPoX
お二人ともGJ
新年、並びながら良いもの見せてもらいました。
そして皆さん、あけおめ
244:名無しさん@ピンキー
11/01/01 01:44:01 GLvxHX/3
あけおめ
やっぱ幼なじみはいいですな、GJ
245:名無しさん@ピンキー
11/01/01 02:47:47 coysUxs7
あけおめ
新年早々GJ
246:名無しさん@ピンキー
11/01/01 20:40:48 lAyMpXuQ
>>242おめでgj!!!!
247:名無しさん@ピンキー
11/01/03 08:26:38 xDcr6Qx+
お正月でさえ幼馴染みに会えない俺・・・
昔は気にならなかったのに・・・(ちょっと待てば学校で会えるからか)
そもそも正月には友達と会ったことないからお正月を家族以外と過ごすという感覚がわからない
248:名無しさん@ピンキー
11/01/04 22:39:05 bkCz07oj
ツンデレと素直とか
チビとのっぽとか
デコボココンビが好きだ。
249:名無しさん@ピンキー
11/01/05 01:21:48 l00vUcw0
素直クールと奥手とかか
250:名無しさん@ピンキー
11/01/05 16:39:24 WWYKXqs/
すみません
ここの保管庫に書きかけの小説を置いている者ですが
それを削除してもらうことはできるのでしょうか?
251:名無しさん@ピンキー
11/01/05 19:02:33 WWYKXqs/
自己解決しました。お騒がせしました。
252:名無しさん@ピンキー
11/01/05 21:35:32 Tf9CqGcM
幼馴染みは同い年じゃないと駄目かな?
253:名無しさん@ピンキー
11/01/05 21:48:43 l00vUcw0
例えば同じ学年で1歳違い(4月と3月)とかなら女の子の方がお姉ちゃん気取りして
それで男のほうが姉と認めない(女の子としてずっと好きだったから)とかいう展開ができて非常によろしいので
駄目どころか大歓迎であるが、小学校一緒にならないくらいに差があったら幼馴染にならないかも
254:名無しさん@ピンキー
11/01/05 22:07:39 fnJgVO2T
>>250
誰でどの作品?
差し支えなければ教えて欲しい
255:名無しさん@ピンキー
11/01/06 00:50:44 qPRdstot
個人的には
同い年幼なじみ→対等の関係でバランスが成立しすぎていて恋愛関係を切り出しにくい
年齢差幼なじみ→兄妹or姉弟で関係が固定してしまっていて恋愛対象になりづらい
のような構図で話を考えるけど
歳の差は5歳差ぐらいまでならいけるかな、と思ってる
4歳差は書いたし
256:名無しさん@ピンキー
11/01/06 01:47:29 LV4LAv9e
>>254
17‐293の作者です
257:名無しさん@ピンキー
11/01/06 04:06:19 CtpJ5TyI
ボルボXさんかよ……
ずっと待ってたのに……
258:名無しさん@ピンキー
11/01/06 08:03:35 LV4LAv9e
>>257
すみません
止めるわけではなく、好きに改訂できる場所でいったん仕切り直したいのです
こちらには近日中に代わりに何か書いていきます
259:名無しさん@ピンキー
11/01/07 01:06:01 INkANiaG
保管されてる数が多すぎてどれから読むか・・・
例えばはにはにの保奈美とかFAの陽菜みたいな
幼なじみが好きな俺にオススメを教えてください。
260:名無しさん@ピンキー
11/01/07 18:34:31 795JX5lC
ツンまでいかないにせよ、素直になれない系が多くを占めてる気がする。>保管庫
確かに展開的にそっちのほうが盛り上がるだろうし、話も作りやすそうだけども・・・
控えめで献身的、健気とかそういうのはないような
261:名無しさん@ピンキー
11/01/07 22:57:03 Re7z/23D
全自動万能幼馴染か
262:名無しさん@ピンキー
11/01/08 10:50:57 YzLO5KOx
母親が主人公を作っている間に父親が作った主人公の全自動万能無敵遊び相手用ロボットか
…ごめんロボ子スレ行くよ
263:名無しさん@ピンキー
11/01/08 21:37:53 vrLaoDwA
彼女になってくれるロボットは作りやすいけど
幼なじみになってくれるロボットって難しいな
まず幼なじみって"作る・なる"ものじゃないな
264:名無しさん@ピンキー
11/01/08 22:10:57 9/dYYvgO
より人間に近い感情を得るべく学習型コンピューターを搭載、当初まだ赤子だった研究者の息子とともに十数年間ずっと成長してきた高機能AI搭載少女型ロボという電波が
265:名無しさん@ピンキー
11/01/08 23:08:45 jP9U1rSs
病死した幼馴染の脳を移植されたサイボーグってのはどうか。
かなり重いテーマになりそうだが。
266:名無しさん@ピンキー
11/01/09 01:17:12 p9q2cNt0
じゃあ逆転して、壊れたサイボーグのCPUを移植された幼馴染み。
ガガガピー。
267:名無しさん@ピンキー
11/01/09 01:46:46 U6/Sw7pd
娘or息子が欲しかった(表向き)どこまで周りを騙せるか試してみたかった(裏)な動機で
マッドな科学者の父親が作ってみた子供とか
もちろん本人も自分は人間だと信じてた
だがしかし、ある日事故で死にかけそうになっても平気だったことでバレて…
でも幼なじみはロボットでも好きな幼なじみには変わらないキリッと、彼or彼女を守るために苦労すると…
ちなみに動力源はぜんまいでw
268:名無しさん@ピンキー
11/01/09 02:07:50 sFSffEbl
ロボ子「いままで…ずっ、と……すき…で…………」
主人公「ロボ子、しっかりしてくれ!明日一緒に映画見ようって約束したじゃないか!」
父親「あ、ゼンマイ回すの忘れてたわ」
主人公「ズコー」
269:名無しさん@ピンキー
11/01/09 05:33:20 rskm7Bx/
あれー、shuffleの楓のつもりで>>261書いたら予想外の流れw
270:名無しさん@ピンキー
11/01/09 10:35:17 hR444Y8B
>>265
>>266
境界線上のホライゾン思い出した
271:名無しさん@ピンキー
11/01/10 19:49:56 UHu4aQjR
ここの住人は秒速5センチメートルのアニメは見たのかね?
俺は最後まで見ていろんな意味でしにたくなったけど、他の人たちはどんな気分で見たんだろうか?
ごめんね、DVD整理してたら出てきて、売る前にまた見ておこうとか愚かな考えしてごめんね
272:名無しさん@ピンキー
11/01/10 20:37:47 p7E5Oehr
見た事ないんですけど、再会した幼馴染が人妻になってましたって話だっけ?
273:名無しさん@ピンキー
11/01/10 21:36:50 qKtuwxjI
き、キツイな・・・
274:名無しさん@ピンキー
11/01/10 21:43:45 6All8S4F
そうか、スレタイは【<恋人】と書いてあるが、
関係が恋人を大きく飛び越えてしまえば寧ろ・・・
275:名無しさん@ピンキー
11/01/10 22:15:33 KmTwaMKf
そういう馴染みネトラレSSってここでやっていいの?
276:名無しさん@ピンキー
11/01/10 22:35:08 ghAQlNlH
多分嫌がる人が多いと思うので冒頭で警告していただければ……
寝とり・寝とられ総合スレってのもある。
277:名無しさん@ピンキー
11/01/11 05:01:01 +44sRTdA
>>271
昔、うっかりネタバレコピペ見てしまって神回避した。
正直、そのコピペが正しいかも知らないんだけど、
その後の評判聞く限り回避は間違いじゃなかったと思ってる。
PVとかでは映像きれいだったのでBD見てみたいと思いつつ、絶対後悔するだろうと我慢してるわ。
278:名無しさん@ピンキー
11/01/11 10:18:09 N7puoYyr
寝とられスレがあるんだからここでやらないでくれ
279:名無しさん@ピンキー
11/01/11 12:32:13 67In7lud
寝取られスレではヒロインが幼馴染だからといって嫌がられることはないが、
幼馴染スレでは寝取られ展開を徹底的に忌避する人が大勢いる。
ならばどちらが適切な場所かは明らかだと言えよう。
280:名無しさん@ピンキー
11/01/11 15:52:42 I0mj0c8x
幼馴染が自分以外の男性経験あるだけでも回避する人があるくらいだからな
281:名無しさん@ピンキー
11/01/11 16:35:15 l9R/XUhy
昔ここで投下されてたとある作品が、ntr展開になった時はどうなるかと思ったぜ
最終的にはハッピーエンドだったけど
282:名無しさん@ピンキー
11/01/11 18:15:02 QF/OcG+E
NTRは嫌いだが現実では小さい頃よく遊んでたあの子だけどだんだん疎遠になって
久しぶりに会話したら「今〇〇(DQN)と付き合ってるんだー」とかよくあることだぜ……
283:名無しさん@ピンキー
11/01/11 18:29:17 JxZ0U0s0
>>277
第一章と最後の歌の部分だけ見れば後悔はしないと思う内容。
それ以外の部分も別に寝取られたわけでもない。
284:名無しさん@ピンキー
11/01/11 20:47:40 BmvQruZw
>>265
いいこと考えた
宇宙から地球外生命体の採掘機械が攻めて来た世界で幼なじみの脳を使ってバカデカい機動要塞を動かしてキャリオンマイウェー
すいませんエロゲ板行って来ます
285:名無しさん@ピンキー
11/01/11 22:27:09 q18pmBba
>>284
同じこと思った仲間がいるwww
どの選択肢を選んでも幼馴染みルートってある意味斬新だよな
まぁ大まかなシナリオは一本しかないんだから当然だが
286:名無しさん@ピンキー
11/01/11 23:37:55 BM4IPHLp
NTRした奴も幼なじみならスレの趣旨に反しないと思える
(当然注意書きは必要だろうけど)
287:名無しさん@ピンキー
11/01/12 00:11:55 DpeExiy2
まあ読まないけどね
288:名無しさん@ピンキー
11/01/12 00:30:56 F4fVibjr
泥棒猫から男の幼馴染を守る話が読みたい
ヤンデレ向きかな?
289:名無しさん@ピンキー
11/01/12 19:17:20 QWid/5v+
>>288
それは見たいな
ずっと一緒に居たからこそ執着も半端じゃなさそうだし
しかしヤンデレスレ行きかなぁ
290:名無しさん@ピンキー
11/01/12 19:23:18 WB6Yf5lB
なに犯罪がなければ大丈夫だ
上崎さんみてからストーカーな幼馴染が脳をよぎる日が続く
291:名無しさん@ピンキー
11/01/12 21:40:12 YpSjrA42
このスレでも幾つかある続き保留の作品が待ち遠しいでし。
292:名無しさん@ピンキー
11/01/12 23:59:53 AvVQvk1/
激しく同意&続き期待でし。
293:名無しさん@ピンキー
11/01/14 20:12:14 O1xcj0x5
「…おい」
「?」
「何してんの」
「寝顔見てた」
起きぬけに思わずふかーく溜息をつく。起きたばかりでいきなり強烈な疲労感を味わい、
布団から出る気が一気に萎える。目を覚ました最初の光景の疑問を尋ねてみれば、この返答である。
「授業は…って、連休か」
「祝日忘れるまでゲームとかよくないと思う」
「うっせ」
昨日は少しばかり夜更かししすぎた。
やはり一人暮らし+新作ゲーム+バイトのない日+休日という組み合わせはよろしくない。
実によろしくない。好きなことを好きなだけしてしまえば、生活リズムを大きく崩すという代償が
待ち構えている。
「せっかく可愛い幼なじみが起こしにきてあげたのにー」
「起こしてないだろ」
同じ大学を受験し共に合格し一緒に上京してからもう2カ月になる。性別が違うのでお互い別々
の寮に部屋を借りたのだが、香菜ときたら地元に住んでた時と同じようにわざわざ来てはこうして
勝手に俺の部屋に上がりこんでくる。寮の面子と食堂で飯を食う時、「毎日お楽しみですね」と
いわれるのが辛い。
「だってあまりにも気持ちよさそうに寝てたから。疲れ取れたでしょ?」
「起きてすぐ疲れたわ」
仰向けの姿勢で目を覚まし横を向くと、視界に飛び込んできたのはこちらとは逆にうつぶせに
なってじっとこちらを見つめる幼なじみの顔である。にやつくわけでもなく、普段の表情のまま
淡々と答えられるのが相変わらずちょっと怖い。
「……」
背中を向けて寝返りを打つ。壁沿いに布団を敷いてるので、回り込まれる嫌がらせを受ける
心配はない。
「浅助さん」
「なんでしょうか香菜さん」
「寝顔が見えません」
「見せません」
まだ起きる気は毛頭ない、どうせ休みである。今日はもう寝てやる、すぐ寝てやる。無視だ無視。
「……」
「……」
294:名無しさん@ピンキー
11/01/14 20:13:11 O1xcj0x5
「“あさすけ”」
「“せんすけ”だよ」
あ、しまった。早速反応してしまった。
「買い物行きたい」
「…自分とこの寮の友達か一人で行けよ」
「浅助と行きたい」
駄々こね入りました。ほとんど無表情ななくせして頑固だから始末におけない。
「その心は?」
「荷物持ちがほしい、こんなこと浅助以外に頼めないから」
布団に入ってくるな布団に、さみーよ。
「断る」
「えー」
「昨日の続きがあるんだよ」
「ひどい」
「お前の買い物付き合うよりよっぽど大事なんだよ」
「ひどいひどい」
わぁっと喚いてからしくしくと泣き始めた。両手で顔を覆ってるんだろうけど、間違いなく嘘泣きです。
付き合い長いんです、見なくてもそのくらい分かります。
「私とは遊びだったのね」
「確かに遊びの約束はしてたな」
「私以外に本命がいるのね」
「人じゃなくてゲームだけどな」
ああもうクソ、寝れねぇ。
仕方ない起きよう。腹減ってないし休日は飯出ないしな。朝飯は無しということで。顔洗ったら
昨日の続きだ続き。昨日は確か7,8時間はやったから、今日はその限界を更に超えてみよう。
「もてあそばれたー、もてあそばれたー」
「うるせぇ、裾を掴むな裾を」
無理にでも振りほどこうとするが、しっかりとつかまって引きずられながらも手を離そうとしない。
「後ろから抱き締めておっぱい背中に当ててあげるから―」
「お前トップ80未満な上にAAカップだろ」
「大丈夫、乳首がある」
「こっちが引くようなこと言うな」
顔つきは割と可愛い方だと思うのだが、背がちっこくて胸もちっこくて表情があまり表に出なくて
言動がこんなのばっかりだから、どれだけ過度なスキンシップをとられようとも劣情を催さない。
我ながら悲しい話だ。
「こんなこと浅助にしか言わないよー」
「ならもっと別のことを俺だけに言ってくれ」
思春期だった頃は、そりゃ色々妄想したこともないわけじゃない。ただ、終始こんな調子の奴に
そういった雰囲気を期待するのは無駄だと気付くのもあっという間だった。
「告白だって何回もしたじゃんー」
「ムードのかけらもない時にされても冗談としか思わんわ」
295:名無しさん@ピンキー
11/01/14 20:13:52 O1xcj0x5
「冗談なんかじゃじゃないよ。小学校の卒業文集にも“浅ちゃんのお嫁さんになりたい”ってしっかりと」
「おいその話はやめろ」
文集が出来上がった際、クラスメイト全員にニヤニヤされながら詳細を聞かれたり無駄に祝福され
まくったのは今でもトラウマなんだよ。
「『将来の夢、6年2組宮森香菜。私の将来の夢は、服部浅助君と結婚することです。理由は今までも
ずっと一緒にいたし、これからもずっと一緒にいたいからです』」
「朗読すんなよ! つかなんで文集持ってきてんだよ!」
なんなのこいつ! ほんとなんなの! 馬鹿じゃないの!? 頭おかしいんじゃないかしら!!
「オネエ言葉になってるよ浅助」
「うるさいわね!」
まったく何なんだよこいつは!
あー、まったくやだやだ、こんなのに付き合ってるとこっちまで頭がおかしくなってくる。こいつが
部屋に居座るなら出かけよ出かけよ。
「あ、出かけるんだ」
「お前と部屋にこもってると気が狂いそうになるわ」
「それはよかった。ちょうど買い物に行きたかったのだ」
「は?」
「でも一人じゃさびしいのだ。荷物持ち欲しいのだ」
「何言ってんのお前?」
「出かけるんでしょ? 付き合ってくれるんでしょ?」
「今はお前と同じ空気吸いたくないから出かけるんだよ、付き合わねーよ!」
香菜の元から逃げ出したいのに、一緒に買い物に出かけるとか本末転倒にもほどがある。
「そんなこと言うなんてひどい。ただ一緒に出かけたいだけなのに」
「……少しはめげろよ」
「嫌、一緒に買い物行くの。来なきゃダメ」
急に子供っぽくなった、こっちの方が年相応に見えるからなんていうかアレだ。
「俺にメリットがねぇ、だから行かない」
「こんなに可愛い子と付き合っていると周りに勘違いしてもらえるよ。今ならそれが現実になるおまけつき」
「罰ゲームじゃねぇか」
「……むー」
やんわり言ってもダメージ受けないなら思いっきり言ってやるしかない。
「そこまで言うなら買い物はやめだ」
「……今日俺と一緒にいる気か」
もう一度言うが、こいつは極めて頑固だ。もし意見を変える時があるなら、その時はまず裏がある。
「小さい頃先生に言われたでしょ? 人が嫌がることをすすんでやりましょうって」
「意味が違う!」
こうして、俺の時間は刻々と削られていく。ほんと、難儀な付き合いだ。
296:名無しさん@ピンキー
11/01/14 20:16:02 O1xcj0x5
久々に書いてみたら想像以上に筆が鈍くてヤバい
拙い作品で申し訳ないです
297:名無しさん@ピンキー
11/01/14 20:59:38 3tcDCChM
>>296
GJ!
前にもこのスレに投稿してるの?
298:名無しさん@ピンキー
11/01/14 21:03:00 Hh/ajDZS
GJ!
もちろん続きはあるんでしょう?
299:名無しさん@ピンキー
11/01/15 00:18:10 KMUY5gRK
GJ!
続きマダー?
300:名無しさん@ピンキー
11/01/15 18:48:02 bDmQqNAX
GJ!これはかわいいなw萌えた
301:ボルボX ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:40:03 LUv6dg9m
>>295
ウザ可愛いと幼馴染みって相性いい気がするwGJです
お久しぶりです。投下させていただきます。別シリーズですが……
302:ねがいごと ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:41:22 LUv6dg9m
Kyrie eleison
Kyrie eleison
となりの家は、赤い屋根に風見鶏のある、鉄柵と木々に囲まれた洋館。
隣家の姉妹ふたりが賛美歌を歌う光景を、幼い日に見た。
● ● ● ● ● ●
初秋の陽も落ちくれて部屋の隅はもう暗い。
その中でも艶めかしく光るのは美奈の濡れた唇―その、桜桃の実をおもわせるつややかな美唇が、彼女を組み敷く健一郎へと、かすれた問いを投げかけてきた。
「ぁあ……ケン兄……終わりました、か……?」
儚げで幻めいた美しさ―楚々としてたおやかな少女だった
美奈の体は少年の下におさえつけられ、挿入されたままだった。
身につけてきたその姉の服を、全てはぎとられた裸身は、汗の膜におおわれて白くけぶるように浮かび上がっている。
腰まであるロングの黒髪を健一郎のベッドに乱し、美奈は数え切れないほど味わわされた絶頂に放心しかけていた。
……はあっ、はふっ……と悩ましく耳にからみつく、濡れた呼吸音。それは完全に性の悦びを知った「女」のそれである。
しかし、あおむけで脚のあいだに男を受け入れ、手をぎゅっと握りこんで濃い余韻に耐えているその肢体は、痛ましいほどに骨細で華奢だった。
いまの美奈には、触れれば落ちそうな三分咲きの白梅の可憐さと、それが強引に花開かされていくときのような無残な色香が同時にそなわっていた。
終わったかと問われた少年は名を健一郎という―陸上部で絞られたシャープに引き締まった体と、理知的な容貌を持っている―ただし眼には精神が荒廃した者特有のぎらつきがあった。
健一郎は美奈に向けていた視線をはずし、つながったまま枕元の眼鏡を取った。壁の時計をたしかめる。
始めてから、それなりに時間がたっていたようだった
(……道理で窓の外が暗い)
夕刻からいままで、健一郎は美奈をずっと嬲っていた。
放課後に通っている進学校の門をでるや、少女をその通っている小中高一貫カトリック系女子学園の門前まで迎えに行った。
共通した帰路をともに通って部屋に連れこみ、そして美佳の服に着替えさせて、すぐ組み敷いたのである。
この数月、夏休みも含め、毎日のようにしてきたことだ。隣家のふたつ年下の令嬢を、このようして犯してきた。
303:ボルボX ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:43:57 LUv6dg9m
注意書きを忘れていました。
調教描写あり(快楽系なのでヌルいけど)
寝取られあり(前の恋人が過去に)
なので、苦手な方は注意してください。
304:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:45:07 LUv6dg9m
(けれど、親父とお袋がいつもの残業から帰ってくるまではまだ時間があるな)
シャワーを浴びさせる時間をさしひいても余裕がある。それを確かめて美奈に視線を戻す。見下ろしたとき、ふと思ったことを健一郎は口にしていた。
「……あらためて見ても、おまえは小さいな」
健一郎はさほど大柄ではない。男子高校生の標準程度で、それも痩せ型だ。
それでも、美奈とは体の大きさが二まわりも違った。こうしてのしかかっていると特に体格の差を実感する。
「え……何を、いきなり……」
美奈がけげんそうに眉を寄せ、瞳の焦点をぼんやりうるませたまま、おずおずと笑おうとした。―その媚びを含んだ苦笑に苛ついた。
健一郎は美奈の乳房に手を伸ばして、敏感にしこりきった右の乳首をぴんとはじいた。美奈が背をびくんと反らして哀切な声をあげる。
「あうっ!」
健一郎は笑いを薄く頬に刻んだ。
「気にするなよ。背は低くても、胸や腰は肉がついてるだろ。なにより感度がいい。
ミカと同じ男好きのするカラダだよ、そのうちもっとそうなるだろうよ」
健一郎は、自分と同い年である美奈の姉の姿を思いだす。
双子と間違えられるほど容姿だけは瓜二つの姉妹―美佳もまた背丈が小さかったが、美佳については健一郎は、その小柄さをあまり意識したことはなかった。
現在自分の下にいる美奈の体が、いかにも弱々しげに見えるのとは違って。
背は低くとも幼い身体ではない―むしろ均整がとれて大人びた容姿の美少女である。頭が小さく手足はすらりと伸び、一方で女の曲線はそれなりに備えているのだから。
美佳と比べてもあまりに華奢で、どこか不健康的なほど淫美な白さの、美奈の肢体。そこに表れているのは、未成熟さではなく生命力の薄さだった。
姉とちがい、美奈は身体が弱かった。
もてあそんでいた相手のか弱さを確認するにつけ、健一郎の胸の奥はささくれていく。
(……くそ)
これがなんの感情なのか、そして姉妹のどちらに向けた感情か―考えたくなかった。
―いや。
これは姉への―「ミカ」への憎悪だ。そうでなければ。
305:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:46:17 LUv6dg9m
衝動的に彼は、氷の浮いた水のような冷たい声を浴びせた。
「気を抜いて寝たりするなよ」
けんめいに、美佳のことに意識をむける―憎しみと捨てきれない慕情が熱泥のように沸きたぎる。
肉が破れるまでみずからの唇の端をぎりりとかみ締めても、彼を捨てた幼馴染みの元恋人の記憶は薄れてくれない。
それも無理はないだろう。目の前にいる美奈の容姿は、姉にくらべ痩せっぽちだった体が女として熟していくにつれ、ますます美佳にそっくりになっていくのだから。
わずかにとまどったように、美奈がまつ毛をしばたたいた。これ以上の快楽への恐怖が、声にはあった。
「あ…………ま……、まだ、するんですね……」
けれど、すぐ唇をひきむすんだ彼女の表情には、諦め―というより覚悟と許容の色があった。
それを見て、健一郎の胸はどうしてだかいっそうざわめいた。
焦りに似たそれが、あざけりをまじえた、さらなる冷淡な態度をとらせた。
「おまえがさっさとイっちまって勝手にへたばりそうになるから、止めてやったんだろうが。こっちはまだ満足してないんだよ。
ったく……ついこの前まで処女だったのに、あっという間にイキ癖ついた淫乱になりやがって」
意識して下卑た言葉づかいで責める。
「……それは……ケン兄が……」
美奈は細々と抗議をつむいだ。羞恥に潤む瞳が、茫洋と健一郎を見上げてくる。
情感をたたえたその瞳に見つめられて、健一郎は胸のうずきが大きくなっていくのを感じる。
―胸中を黒く満たすのは、歪んだ嗜虐の欲求だ。
そのはずだと自分に言い聞かせ、少年は唇の端をつりあげた。
「僕のせいだって? そうだな、仕込んだのは僕だな……だがな、ここまでになったのはおまえの素質あってこそだぞ。
たとえば」
そこでいったん言葉を切って、健一郎は腰をぐりゅん、ぐりゅんと押し回しはじめた。とたんに美奈のせっぱつまった叫びが噴きあがる。
「あわぁっ、そ、それぇ、駄目っ、ああっ……!」
責める少年の円をかく腰の動きにともない、奥深くまで刺さった肉棒の先端が子宮口をコリコリ撫で回すように刺激していた。
男の恥骨でおしつぶされた恥丘も圧迫刺激され、クリトリスがぷくんと充血を強める。
少女は目を白黒させ、悩乱に身をよじって鳴きはじめた。膣口と肉棒の隙間からブチュプチュと愛蜜が漏れ飛び出した。
306:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:47:20 LUv6dg9m
「んんんっ、いま、び、敏感なのにっ……!」
「なあ? こういうことしてやるだけで、そんな声を出すだろう。
いくら毎日してやってるからとはいえ、たったの数ヶ月でイきまくる体になってんじゃねえよ、エロガキ」
鼻の先で笑うと、健一郎は責め方を変えた。
美奈の子宮をやさしく小突くように、腰を小刻みに前後動させはじめる。
美奈の瞳がたちまち光を弱めてとろんと濁り、彼女の視界がじゅわっとゆるんだ。
「ひう……っ……ああぁ……ひどいです、ひどいい……」
「どうした? これは感じないか?」
「かんじるのがひどいんですぅっ……きもちいいのおさまったところだったのにい、
んううう、ひっ……あ、もどってきたぁ、もどってきちゃったでしょうっ、馬鹿あ……っ」
再度、絶頂に向けて官能が高まりだしたことを、彼女はそう表現した。
とんとんと子宮を亀頭でノックされるたび、美奈の意識を、甘やかな肉の快美がむしばんでいく。牝の悦びに腰が勝手にくねり、脚を健一郎の胴にからめようとする。
下になった形のいい美尻がうち震え、断続的にきゅうっと白い双球の谷間をひき締める。そうすると貫かれた蜜壺までが男の肉を絞って悦ばせた。
艶にくずれた美少女の、悩乱の甘声が解き放たれる。
「だめえ、んっ、だめ、イクぅっ、あぁあああっ」
身をよじり、細い雪白ののどをくっと反らし、美奈は絶頂の嬌声をほとばしらせた。
その最中にもとん、とん、とんと奥を優しく突かれる。
「あぅ、ん、ん、ふぅっ、やぁ、おわらないのぉ……!」
それをされると、絶頂が長引いてしまうのだ。
涙と恍惚をふくんで甘い悲鳴がうわずる。
悩ましい乱れ方をする美奈を、健一郎は言葉と腰使いの双方でなぶって追いつめていく。
「ははっ、ちょっと突くたびに奥のほうから膣内(なか)をビクンビクンさせて……子宮イキの味をすっかりおぼえちまったな。
エロガキでなきゃなんだってんだよ、これが」
雪細工のような繊美な両手首をつかみ、頭より高くあげさせてベッドに押し付ける。
ねじふせるようにして美奈の体の自由を奪ったうえで、健一郎はまたしても責め方を変えた。
激しく、スピーディーで、女体をがつがつとむさぼるような抽送に。
美奈が濡れ羽色の黒髪をふりみだして鳴く。
307:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:48:18 LUv6dg9m
「ひい―やあっ、ひゃうッ、いったばかりですっ、ケン兄っ、わたしイったばかりなんですうっ!」
「だからなんだ? どうせ子宮イキが続けて来ちまってるんだろ? 勝手に好きなだけイってろよ。
なんで遠慮しながら動かなきゃなんないんだ? 僕もここらでもう一発さっさと出したいんだよ」
健一郎は冷然とうそぶいた。
少女の快楽ポイントを知り尽くして行う長時間のねちっこい責めで、美奈の体をこの過敏な発情状態に追いこんでおきながら。
責めのペースに段階をつけ、疲れすぎない程度に絶頂を繰り返させて、雄がむさぼるにもっとも良い状態にまで膣肉を仕上げてあるのだ。
ただ挿入しているだけでもヒクヒクと弱く痙攣しながらきゅっきゅっと肉棒を締め、半ば無意識に男に奉仕する少女の膣内の感触は、まさにいまが食べごろといえた。
―歳若いゆえに狭く、充血した粘膜壁のぷりぷり感が強く、それでいながら重ねられた絶頂のために硬さがとれてこなれきった蜜壺肉を味わっていく。
「やぁ、ひっ、またっ、あんんんんぅ、ん―っ……!」
子宮を揺らされつづけて悩乱しきった少女が、あっけなく肉の高みに達した声を連続であげた。
官能の責め苦に耐えかねたように、美奈が、さし上げた手首で拘束された上体をそらし、悶える―ふっくら張った双乳が強調され、小さな乳首がピンクの軌跡を、宙にふるんと描いた。
健一郎は、美奈の感じるところは、すっかり把握していた。
それをさぐりだすことは難しくなかった―美奈は、その姉の美佳と、弱い箇所がほぼ同じだったのだから。
ミカはこうすれば反応したな、と記憶をひとつひとつ思いおこしながら試すだけでよかったのだ。
そして、美佳のことを思えば思うほど、舌に悪魔が憑いたように、美奈を傷つけるための台詞はつぎからつぎへと出てくる。
「二回目に部屋に呼び出したときだったかな……おまえ、なんつった? 『わたしの体でもケン兄を慰められるなら』とか言ってたっけ?
率直に言うと、聖女きどりかよってうざく思ったよ。悲壮ぶって、上から目線で……自分に酔ってんのかよってな。
でも、美奈、おまえのほうがこれに骨抜きになっちまったいまじゃ、滑稽でしかないよなあ」
「ちが、わたし、んっ、ほ、骨抜きになんてっ」
「嘘つけ」
「ひゃぐうっ!」
興奮状態で下がりきっていた子宮に、ひときわ深い突きこみを与えていた。牝の臓器を押し上げるようにして止める。
少女が衝撃に目を見開き、口をぱくぱく開閉する。
「……あ…………あ……」
躾けられた肉体が、鐘突きされた子宮の響きを快楽に転化していく。
無意識のうちに、ブリッジ体勢を取るようにくんっと美奈の下半身が反り返る。
折れそうな細腰と、意外に実った双臀がベッドから浮き、勃起陰核を強調するように恥丘が天井へむけて突き出され、蜜壺が緊縮し―
308:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:50:14 LUv6dg9m
「……あああああああぁぁっ」
一拍おくれて、凝縮された絶頂が、美奈のなかで今日一番大きく破裂した。
(う……キツ……)
射精後の男性器を刺激され、健一郎は眉をしかめた。敏感になっている男根が、わななく初々しい膣肉にキュウキュウと絞りあげられている。
彼も最後の瞬間が近かった―気をまぎらわそうと、健一郎はきつく食い締めてくる膣道をえぐるようにつぎつぎ腰を送りこんだ。
相手の肉体はとうに堕ちているのに、さらにその身を髄までしゃぶりぬくようなしつこい責め。少女の泣き狂う声がよじれてゆく。
「あぁ―っ、だめ、だめええ――っ!!」
健一郎は爆発寸前の射精衝動の手綱をひきしめ、こらえながら抽送をつづける。少女の両手首をひとまとめに左手で押さえておく。
愛欲の狂態をさらしてあえぐ性奴の麗貌を右手でぴたぴた叩きながら、「いまどうなっているか言ってみろ」とささやく。
「いってますっ、いっぱいいっぱいいってますう! あたまもおなかの奥もとけちゃってるのおっ、こんなのぉ、くるっちゃううぅっ!」
天使のように清らかに澄んでいた瞳を快楽で濁らせ、黒目をわずかに裏返らせて、美奈が淫叫する。
涙とよだれを噴きこぼしながら熾烈な連続絶頂にのたうちまわる少女の姿に、このあたりが限界だな、と健一郎は推しはかった。
手を彼女の頬に添え、いつもの合図を口にする。
「今から何を言っても『おねがい』には含めないでおいてやる……どうしてほしい?」
お願いには含めない―許しを乞わせてやるためのフレーズ。
美奈が煮えた声で叫んだ。
「おわらせてくださいいっ、はやく出ひてえ、あなたもイってえ、びゅーびゅーしてえっ!」
「よし……」
美奈の手首を解放すると、彼女が健一郎の首を抱きしめるようにして下からしがみついてくる。
動きを止め、避妊具ごしではあるが、堕ちきった少女のなかに健一郎も放精した。
びゅくびゅくとおびただしい精液がほとばしり、子宮口に密着したコンドームの先端を水風船のようにふくらませた。
美奈が言葉にならない言葉を叫んだ―ぜん動する蜜壺が、射精する雄をにゅぐにゅぐと卑猥にしゃぶりたてて歓迎する。
少女の全身もまた、肉棒をくわえこんだ妖しく美しい肉そのものになったように、脚まで少年の腰に回されて巻き締め、痙攣していった。
309:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:51:26 LUv6dg9m
……熱い息をかわす間近から、健一郎が笑った。
「はは……今日も連続で深イキをキメちまってたな。尻ごとおま○こ肉をブルブルさせすぎだろ」
「……ぁっ、……ぁひ、うっ、……う、」
少女は浴びせられる嘲笑にまともに反応することすらできないようだった。
健一郎がコンドームの中に最後の一滴まで出しきって、ようやく細かい律動を止めても、美奈のほうは肌の痙攣が止まっていない。
彼女はほつれた髪を頬にはりつけ、忘我の態だった。はふ、はふと熱っぽくつむがれる呼吸の音が、被虐美にみちた凄艶な響きを帯びている。
「美奈……抜くぞ」
健一郎は射精の終わった腰を引いた。
美奈が「ひぃん」と可愛らしく鳴き、なぜか制止しようとした。
「まっへぇ、ケンに……らめ……いま……だめで……」
「ああ?」
ひきとめるようにきつく締まる膣口をカリでめくりかえし、亀頭がぬぽっと抜ける。
肉の栓が抜かれるとともに、わななくピンクの肉の泉から、精液とみまがうほど濃く白濁した愛蜜が、牝の匂いの湯気とともにごぽりとあふれ出し―
「……んひぃっ」
ぴゅくり。
膣口の上の尿口から、一条の液体が飛んだ。
一度だけで止まらず、ぴしゅ、ぴしゅと何度かに分けられて飛ぶ。ふやけきった表情の美奈が両手で股間を押さえても、それは指のあいだからピシャピシャ漏れた。
「ひっ……ひっ、ぁぁぁぁ―おさまっへ……おさまってよぉ……」
やっといじめ抜かれる時間が終わったというのに、尿道を液体が駆け抜けるたびに絶頂感が持続するらしく、腰が抜けた様子で美奈は脚を閉じることもできないようだった。
健一郎が失笑する。
「あーあ……ベッドカバーを濡らしやがって。
潮かしっこか知らないが、イキながらのお漏らし癖つけてんじゃねえよ」
「ひっ、ひぃ……ひ……ごめ……なひゃ……」
「ほら、いつものように飲め」
「んみゅぅ……」
肉棒から外されたコンドームの口をくわえさせられ、中にたっぷり溜まった精液を吸わされる。
すっかり肉色に意識が混濁した美奈は、眠たげにも見える目で、チューブ入りアイスの溶けた汁を吸うように、コンドームの精液をじゅるりとすすった。
「うまいか?」
「ふぁい……『おち○ぽ汁』、おいひぃ……です……」
310:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:52:43 LUv6dg9m
たくさん覚えこまされた卑語―そのひとつを美奈がもはや意識もせずに口にしたとき、最後の一条、液体がぴゅくっと噴きだした。
悦楽の桃源郷をさまよっている少女に、少年が言う。
「盛大に吹いたが……まあ、前のように、おもいきり失禁していないだけましか。
なあ、あのときの自分の乱れ方おぼえてるか? 何度も何度もイってるうちに理性トバして、だらしない声であんあん鳴きながら『もっとして』とばかりに自分から尻突き上げてたろうが。
さんざイキまくったあげく、最後は四つん這いで硬直してぶるぶる震えだしたと思ったらいきなりじょぼじょぼ漏らして失神……なにが骨抜きじゃない、だよ」
「あれは……あれは、いわないで……」
「おまえをここに連れこむときは、やる前にまず目の前でペット用トイレにしゃがませて、用を足したと確認するところから始めたほうがよさそうだな。
それとも、脚おっぴろげで後ろから抱えられて、小さな子みたいに『しーしー』促されるほうがいいか?」
健一郎は苛む台詞をつきつける―この場での羞恥責めとしてだけでなく、いま言ったことは次の時にでも、本気で実行するつもりだった。
相手の人格を貶めるような責めは、いつものことだ。
「ケン兄、が……」
だが、美奈は、期待した反応を示さなかった。胸を上下させながら、ふっと体のすべての力を抜いて彼女は言ったのである。
「ケン兄が、そうさせたいなら……」
いつもの受け入れる態度―一気に、健一郎は不機嫌になった。苛々と目をそらす。
「勘違いしてんじゃねえよ。あとからおまえの小便でベッドを濡らされたくないから言ってるんだ」
「ご……ごめんなさい」
ようやく理性が戻ってきたのか、恥じ入った美奈が蚊の鳴くような声で言う。
健一郎は「ちっ」と舌打ちし、ハンガーにかけてある彼女の制服をほうって言った。
「今日はもういい。さっさとシャワーを浴びて帰れ。
そのシーツを洗濯機に放りこんでおけよ」
311:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:54:05 LUv6dg9m
……丸めたシーツと制服と、美佳の服を持った、裸の美奈が、疲弊したおぼつかない足取りでよろよろと部屋からでていく。
階下に去ろうとするその背から視線をうつし、健一郎は窓の外の隣家を見た。
広い敷地に植えられた木々の間をとおして、風見鶏のある赤い屋根が目に入る。
家というより、館と言ったほうがしっくりくる、大きな三階建ての洋風の建物だ。
(おじさんは、なんでなにも言わない? 美奈がこっちに入りびたっているのには気づいているはずなのに)
信用されているのかもしれない。
昔から、互いの家の子供たちが歳が近くよく遊んでいたこともあり、経済格差にもかかわらずお隣りづきあいは密だった。
そう、親しかったのだ。健一郎自身が、美佳と美奈の父親を、隣のおじさんと呼んできた程度には。美奈が彼のことを「ケンおにいちゃん」いまは「ケン兄」と呼ぶ程度には。
だが、隣の家の主がいまでも健一郎を信用しているとするなら、それはもちろん、最悪の形で裏切られているわけだ。
(長女は駆け落ち。次女はなにをとち狂ってかこっちに犯されに来るぞ……おじさん、あんた、娘二人の周囲の男にはもっと気をつけるべきだったな)
彼は冷嘲の笑いを浮かべた。……すぐにそれはひっこみ、彼は暗い部屋のなかで、黙って隣家を見つめた。
先ほどのことを思い返して、鼻にしわを寄せる。
ぐっと右手を握りしめる。
先ほど美奈の頬に添えていた手―すこし下の頸動脈に触れ、脈が不規則に乱れていないかを測ってしまっていた手を。
意識しないでやったことだった。なるべく慎重に快楽を与え、美奈の体に負担をかけまいと気づかってしまう自分がいた。
(くそっ―あいつを部屋に引き込むようになった最初のころは、もっと冷酷に当たれたのに)
数ヶ月前と違い、いまでは気をつけていないと、優しく触れそうになってしまう。
小さな頃から、美奈に対してとってきた態度に戻ってしまっていた。
笑止にもほどがある―美佳、美奈姉妹との小さなころの絆など、とっくに壊れた。そのはずだった。
● ● ● ● ● ●
(わたしには出来ません……ケン兄)
足をひきずるようにして自邸の敷地内に入ったのち、立ちくらみが来た。
学園の制服に着替えなおした美奈は、鉄細工の格子門に寄りかかって、しばし気分を落ち着かせた。いま出てきたばかりの隣家の二階の明かりをふりあおぐ。
よく浮かべる表情―ちょっと哀しげに、彼女は微笑した。
(あなたが、自分のことを悪いひとだと思わせたくても。自分でもそう信じていても)
街中で迷子にならないようわたしの手をひっぱってくれた手。発作で苦しいとき背をさすってくれた手。眠くてうとうとしていると抱き上げてベッドに運んでくれた手。
兄のような隣家の歳上の少年の手。
いまは、彼に優しく扱われているとは言えないかもしれないけれど、それでもたまにあの手は、昔のように温かく触ってくれるのだ。
312:ねがいごと〈上〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:55:05 LUv6dg9m
それに無理もないのだ。
姉が駆け落ちしたのちに、彼が変わったのは。
自分だってきっと心のどこかが壊れる―はっきり想像できる。
子供の頃からどうしようもなく好きだった人と結ばれたと思っていたところで、あんな形で捨てられれば……
彼とわたしは、同じだ。鉄の格子の冷たさを背に、美奈は窓明かりを見上げていた。
美奈の場合は、最初から諦めていたから、それ以上傷つくこともなかったというだけだった。彼は勇気をだして行動し―一度手に入れ―最悪の形で失った。
わたしの体。全力で走ることさえできない、お金がかかって、生きているだけで周りに面倒をかける体が、すこしでも彼の慰めになるのなら、全部好きにさせてあげたかった。
長いまつ毛を伏せる。
つらいのは……
屈辱的に嬲られることでも、恥辱を与えられることでもなかった。
彼が、わたしの体を通して姉を見ていると感じるときが、一番つらい。たとえ、わたし自身がそれを望んだにしても。
もし、「お願い」で、お姉ちゃんを忘れてくださいと言葉にしたら、彼はどんな反応をするのだろう。……何度も妄想したことだった。
試みたことはなかった―人は人に行動を強制できても、心を強制することはできない。美奈は、それを知っていたから。
「お願い」。
美奈はひとつだけ健一郎にどんなことでも要求していいことになっているのだ。
願いはまだ口にしていない。「僕の身だけですむことなら、どんなことでも聞くぞ」と健一郎には言われていた。
あれは、処女を奪われたときのことだった。
のしかかった少年は声をたてずに頬をゆがめて笑い、美奈の言うことをひとつだけ聞いてやると約束したのだった。お前の姉貴からの頼みはそれで帳消しだと。
『僕にできるなら、どんなことでもやってやるよ―「どこかに消えて」でもいいし、わかりやすく「死ね」でもいいんだぞ』と、美奈に対し、言った。
健一郎の涙が頬を伝って美奈の顔に落ちてきていた。
傷ついた彼のそばにいて、この日々をずっと続けたいと思っている自分がいる。
でも……もうすぐ、すべて終わらせないとならない。
時間がなかった。
(もう少しだけ、このまま……もうすこし……)
格子門から離れ、背筋を伸ばし、すこしふらつきながら、美奈は敷石で舗装された庭の道をたどって玄関に向かいはじめた。
313:ボルボX ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:55:54 LUv6dg9m
つづけて投下します。ここから〈中〉です。
314:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:57:20 LUv6dg9m
風邪をひいて三日になる。
熱と息苦しさのなかで健一郎はベッドに寝返りをうち、手負いの獣のようなうなりを漏らした。
「体調管理なんざしてなかったなあ……」
本来ならば受験生であったはずだった。
彼自身もともとまめな性質で、うがい手洗いは特にテスト前には必須として行っていたのだが、あの日からこっち、そんなことに気を使ってはいなかった。
どうせ受験などしないのだからどうでもいい。学校に行くのだっていまや単なる暇つぶしだ。
だが、こうして寒気とだるさに苦しみながら無様に横たわっているのはもう飽き飽きだった。
あまりの体調の悪さに学校から直帰するなり、着替えもせず倒れるようにベッドに転がって今日で三日目だ。
両親は息子にいっさい関わってこない。かつて彼が優等生だったころも放任主義の親だったが、こうして荒廃しきってからは、腫れ物扱いという感じである。
腐ってもあいつなら自分の面倒は自分で勝手に見るだろうと思われているのか、二階に上がってくることもなかった。まあ、実際ありがたい。
(薬は飲んだし、寝ていればそのうち治るさ)
ワイシャツがべとつく。制服の上着はさすがに脱いだが、それ以外は三日間着替えすらしていない。
(早く治れ……)
部屋で横たわっていると、不快なことばかり頭に浮かんできてしまうのだ。
● ● ● ● ● ●
健一郎が幼稚園のとき、空き家だった隣家にひっこしてきたのは資産家の一家だった。
いや、資産家といえるほどの金持ちでもないが、その家の家長が大企業の役員という地位にあるため、そこそこ経済的余裕がある家だった。
伏せりがちの妻と、母とおなじく虚弱体質の娘のひとりにかかる医療費をまかなえる程度には。
315:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/15 23:58:32 LUv6dg9m
娘ふたり―健一郎と同い年の姉を美佳と、二つ下の妹を美奈といった。
男勝りなくらい活発な姉と、生まれつき病弱でおとなしい妹。
内面は対照的だが、容姿だけはよく似ていた。あまり外にでない美奈が姉より青白く、ほっそりとしていることをのぞけば。
姉妹の母は、美奈のことを、気にかけていたように思う。
みずからの病弱な体質を娘に遺伝させてしまったことを悔やんでいたのかもしれない。
「お外で遊ぶとき、美奈を見てやってちょうだいね、健一郎くん」と少年は託されたことがある。
それでも脳裏を占めてきたのは美佳だ。託されたゆえの義務感から美奈の面倒を見てやりながらも、健一郎の視線はいつしか美佳を追っていた。
ずっと美佳に恋していた―明るい笑顔に、躍動的でのびやかな肢体に、大胆ではっきりして陰りのない気性に。
……こうなるまでは、健一郎は自分を、もう少しましな人間だと思っていた。
笑顔をふりまくタイプではなかったが他人に優しくできなくもなかった。
ともすればぎすぎすしがちの進学校だったが、健一郎は人づきあいは普通にこなしていて、なかでも親友と思っていた気の合う者が二人いた。
勉強は最大の取り柄だった。成英学園は名の知られた進学校で、そのなかでも健一郎は上位の成績からすべり落ちたことはなかった。
陸上部では二年生でありながら副キャプテンも務め、冬の大会では入賞していた。
そしてなにより、通うのは別々の学校とはいえ、高校に入ってからは恋人になってくれた美佳がいた。充実した青春だったといえるだろう。
ある日とつぜん、すべてが狂った。
何の前触れもなく、美佳が、妻子持ちの男と駆け落ちしたのだ。
……美佳が消えたとき、健一郎あてに残されたのは一通の手紙だけだった。
それによれば、美佳は昔からずっと好きな男がいたのだという。
相手は健一郎も知っていた。
姉妹の母親の主治医だった。
中等部のときに一度、高等部にあがってすぐのときにもう一度告白したことがあったという。そのときはいずれも振られたと。
「長年焦がれてきたけれどどうにもならないと諦めていました」そう手紙にはつづられていた。
だが、つい先日の母親の葬儀ののち、もう一度だけ話をして、ようやく彼が応えてくれたのだという。
彼はこう言ったらしい。自分も美佳に惹かれていたが、診るべき患者をもつ医者である以上、美佳のアプローチに応えるわけにはいかなかったと。
美佳とは歳の差がある―当主様にこのことが露見すれば自分は代えさせられるだろうし、そうなれば主治医としての責務が最後まで果たせないからと。
母親が没したことでそれも終わり―彼はすべてを捨て、手をとりあって逃げると誓ってくれたということだった。
316:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:00:06 Yw+FasOY
〈許してもらえるとは思わないけれど、ごめんなさい。ケンには必ず、わたしよりずっといい子が現れるから。
どうか、体の弱いミナのことをお願い〉
その一文が、健一郎への手紙のしめくくりだった。
当初はわけがわからなかった。何度読んでも、意味がのみこめなかった。頭が文章を受け付けなかったのである。
なにしろ彼は、美佳とは、大学に行ったら結婚しようとまで約束していたのだ。
その後は一日じゅう文面を繰り返し読んだ。真夜中になって唐突に、「要するに自分は美佳に捨てられたのだ」とやっと認識できたとき、健一郎の心には亀裂が走っていた。
(昔から好きだったというのなら、僕だってお前に対してそうだったぞ、美佳)
凍った自嘲の笑みを最後に、表情は消えた。
気づいてしまっていた。叶ったと思っていた彼の長年の恋はけっきょく、最後まで一人相撲でしかなかったことに。
彼が美佳に告白したのは高校に入った直後だった―つまり、この手紙を信じるなら、美佳が二度目に母の主治医に振られた直後だ。
彼の初めての告白を受け入れたのも、抱かせてくれたのも、ベッドの上であれほど乱れた姿を見せたのも、気が早いけどそのうち結婚してほしいと照れながら求婚した健一郎にうなずいてくれたのも。
ただ美佳は、叶わない恋に自暴自棄になっていただけだったのだ。
それを悟れなかったむくいと言うべきか、幸福から叩き落されたあと少年に待っていたのは、惨めさだった。
物静かな美奈とちがい、美佳はいつでも快活だった。母親の葬式のときも、さすがに悲しげではあったが、涙をこらえて毅然としていた。
隣家ということで制服を着て出席した健一郎がお悔やみをのべると「ありがとね、ケン。母さんはケンを信頼していたから喜ぶと思うよ」と言い、逆にかれの背中をばんと叩いてみせさえした。
……苦悩や傷心のさまを、かれには見せようとしなかっただけなのかもしれない。
健一郎が放心しているうちに、どんどん日がすぎていっていた。
部屋の壁にもたれ、日がな一日、幼い日からいままでの美佳との思い出を思い返した。どこでどうすれば彼女の心をこちらに向けられたのかを自問自答した。
学校も、部活も、成績も受験も進路も、もうどうでもよかった。
志望していた大学にいったところでミカはそこにはいない。
そもそも、かれの進路は子供の頃、ミカがある理由のために約束させたことだった。
食べてもなにも味がせず、食べることが億劫になってそれも放棄した。
部屋にひきこもって眠って、起きて、ミカのことを考えるだけの日々だった。
彼女と駆け落ち相手の医者を追っていって殺すことを妄想し、自分が死ぬほうがよいと結論し、それだけで一日を終えていた。
すみやかな自殺を決行しなかったのは、ただきっかけの問題だったと思う。
317:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:01:54 LUv6dg9m
それまで放任主義だった親もさすがに、繰り返し部屋に怒鳴りこみ、泣き、殴って目を覚まさせようとした。陸上部の者が数度来た。教師が一回来た。
親友と思っていた者たちは一回も来なかったが、健一郎にしても彼らのことは忘れていた―つまりお互いにその程度の相手だったというだけだった。
父親に階段下まで引きずり落とされても、黙ってのろのろと立ち上がり、部屋に入ってドアを閉めた。戸に鍵がついていれば迷わずかけていただろう。
十数日たったころには、親さえも諦めたのか部屋に来なくなっていた。
洗っていない服と体から異臭を放ちながら壁にもたれ、健一郎はひたすらに無気力だった。
そのころには親には内緒で水を飲むのをストップしていたので、死が目の前にちらついていた。水断ちは、緩慢だが、断食よりはかなり早い自殺の方法だった。
水をまったく口にしなければ人は通常、五日以内で確実に脱水症状による死にいたる。
個人差はあるが、水の補充を断ったのちに体内の水分のわずか2~5%が失われるだけで、頭痛、めまい、幻覚などが起きはじめるのだ。ちなみに一日に体外排出される水分は2.5%である。
水は、億劫だから飲まなくなったのではない。はっきり命を断つつもりだった。
けれど最後に、美奈が来た。
美佳の服に身をつつんで。
外界のなににも関心を示さなかった健一郎の灰色の意識が、激怒の赤に染まった。
双子かと見まがうほど美佳とうりふたつの少女が、美佳の服を身につけて自分を叱咤する―目障りすぎた。
ひきこもってからはじめて声を荒らげた。その姿を見せるな、出て行けと怒鳴った。
美奈は……それまでおとなしくつねにひかえめで、姉や健一郎の言うことに従順だった美奈は、この日は決して従おうとしなかった。
涙をにじませた彼女に、腕にしがみつかれながら懇願された。
『いつまでこうしているつもりですか、部屋から出て何か口にしてください』
『なんのつもりだ、ミナ。腕をはなせ』
(出ていってくれ、おまえにその格好をされるとおまえすら憎くなってくるんだよ)
『このままだと死んでしまいます!』
『このまま死ぬつもりでやってるんだ。はなせ。出て行け。二度と来るな』
(本当にどういうつもりだ、この匂い―美佳の香水まで付けて。体をくっつけるな)
何十分だったか何時間だったか―美奈がまったく諦めず、互いの声が激しくなっていった。
健一郎の脳裏には、理不尽にもミカに糾弾されているような錯覚が起こっていた。
『お姉ちゃんだってケン兄が死ぬことなんてけっして望んでいません!』
『そうかい! あいつが気に病むというなら願ったりだよ!』
(この服は僕がミカに告白したときあいつが着ていた服だった)
(この香水は僕がミカに贈った物だった)
(そうか、ミカは僕のプレゼントを置いていったのか。本命のところに行ったんだからあたりまえだな、畜生が)
318:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:03:08 Yw+FasOY
『当てつけで死のうなんてそんな了見っ……意気地なし、弱虫っ!』
『……もう黙れ』
(きゃんきゃんうるさい。頭に響く)
(こいつを憎むな―筋違いの衝動だ、これは)
(これはミナだ、ミカじゃない―断じてミカじゃないんだぞ、混同するな。こいつは、僕に憎まれるようなことはしなかった)
『あの世に逃げようとしているだけでしょう、お姉ちゃんに去られた現実をこれ以上直視するのが怖いから!』
『離れろっての……』
(ぐらぐらする。水を飲んでいないせいで視界があやふやだ)
(こいつは思っていたよりずっとミカそっくりだ、怒るときのこの激しさ)
(似ているだけだ、こいつはミカじゃないんだ―ミカの匂い―ああ、くそ、柔らかい体―)
(ミカのように柔らかいこの体―)
人体は、極限状態におちいったとき、自分の遺伝子を残そうと性的欲求を増大させる現象をたびたびおこす。
水欠乏症で朦朧としていたことが、さらにまずかった。
それまでやり場のなかった慕情と憎悪が、行き先をもとめてぐるぐる渦巻き、それは自然に眼前の少女に向いた。
最後の一押しは、美奈のあの涙声での言葉だった。
『わたしは……わたしが……お姉ちゃんの代わりをします。
お姉ちゃんだと思って、怒りを全部ぶつけていいから……どんなことでもしていいから、水と食べ物を口にして……お願い』
その台詞を聞いて、
ぶつんと―
キた。
(お願い? ミカの手紙にはなんてあった? 〈ミナをお願い―〉)
(こいつを傷つければ、ミカの信頼を裏切ることになるな)
(……むしろ、僕はそうしてやりたい)
美奈の言葉が美佳の「お願い」を思い出させたとき、美奈の姿が「ミカ」と完全に重なった。
性的衝動と破壊衝動が削られていた理性を打ち負かした。
舌が動いて言っていた。
『ミカの代わりだ? 耐えられるなら耐えてみろよ』
美奈を引き倒して、のしかかって、床で処女を奪った。
破瓜の血だけを潤滑油にして健一郎が腰を動かしているあいだ、美奈は苦痛にかたく目を閉じていたが、叫びも、抵抗もしなかった。
すさまじい痛みで蒼白になりながらも、彼女は自分の手で口をおおって、悲鳴をもらさぬよう耐えていた。
319:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:04:15 Yw+FasOY
……………………………………………………
…………………………
……
寒気に体を丸めて毛布をかぶりながら、ぎり、と健一郎は回想に奥歯を軋らせた。
あの日、かれは美奈を犯した。
美佳の残した頼みも、姉妹の亡き母からの信頼も、実の妹のように親愛の情をいだいていたこの年下の幼馴染みとの関係も、残らず全部ふみにじったつもりだったのだ。
なのに……終わったあと、美奈は、一言も責めないどころか、
(笑いかけてきやがって)
脂汗をうかべてあんなに苦しそうだったくせに。
「ケン兄、泣かないで」と、下から、痩せこけて無精ひげを生やした健一郎の頬をそっとなでてきた。自分と健一郎双方の涙に汚れた顔に微笑を浮かべて。
「どうしてもお姉ちゃんが許せないなら、これからこうやって、好きなだけわたしにぶつけてください」と言って。
彼の全部を受け入れようとするあの泣き笑いが、いまにいたるまで健一郎の胸にとげのごとく突き刺さって抜けない。ときおり胸をうずかせ、苛つかせるのだ。
許せなかった。そのうずきが。
美佳への想いさえ薄れさせそうで。
(こいつが僕を憎めば―こんな痛みは残らなかったのに)
いっそ。
もっと踏みにじってやる。
こいつが僕を憎むまで。
もしくは、僕が、こいつをどう扱おうが気にならなくなるまで。
胸に刺さった、得体の知れない忌々しいとげが抜けるまで。
社会復帰した―表面上は。
学校にも戻った―勉強も部活も一切どうでもよくなっていたが。
学業放棄に抵抗はなかった。どうせ、自分という男の中身が屑であったことは、美奈を衝動的に犯したことでとっくに思い知っていたのだから。
屑なら屑らしくするつもりだった。
実際に毎日、放課後になると美奈の通う女子校まで迎えに行き、共に帰って部屋につれこんで犯した。夏休みのあいだも部屋に呼んだ。
たしかにしばらくの間は、「ミカ」を責め立てているつもりにもなれた。
美奈もわきまえていて、私服で来るとき、彼女は美佳の残した服をまとって訪れた。本当にどんな要求にも応じた。なにをされても受け入れた。
だが、その従順さは、なぜかますます健一郎を苛々させた。
320:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:05:17 Yw+FasOY
しだいに、「ミカ」へ憎しみをぶつけているのか、美奈本人を責め立てているのか曖昧になっていった。
体力的にすぐ限界を迎える美奈に「役立たず」と吐き捨て、彼女に装着した犬用の鎖と首輪をひっぱって床に引き倒し、首をおさえてむせこむ彼女に「あとは上の口でやれ」と命じもした。
そんな扱いをしても美奈は謝り、ひざまずいて命じられたとおり奉仕するのだ―可憐な唇と舌で奉仕しながら、目元を赤らめ、愛撫する肉棒に愛おしそうな様子さえ見せて。
あるとき、ただ乱暴に犯すだけから責め方を変えた。
処女を破ったときのことを思い返してみれば、美奈は意外に苦痛に耐性があるようだった。体質ゆえさまざまな病を併発してきたからだろうか。
暴力的な扱いはたぶん無駄だった。だから責めはもっぱら、強い羞恥や屈辱を与えるようなものに変えた。
……―美奈の体を気づかったのでは絶対ない。そう、健一郎は自分に言い聞かせていた。
皮肉なことに、美奈の精神は苦痛に強くとも、繊細な性の悦びには弱いようだった。きちんと手順を踏んで愛撫すれば、明敏な反応を伝えてくるのだ。
なら、それでもいいさ、と健一郎は暗く思った。
こちらがあいつをさげすめるようになるまで、どろどろに堕としてしまえばいい。
なんだ、こんな雌犬だったのかと軽蔑してしまえば、厄介な胸の痛みなどは消えるはずだと。
けれど美奈は、本質はけっして変わらなかった。
健一郎の目論んだとおり官能の毒にひたされきっても……熱く乱れた息の下でケン兄とささやく声には、幼いころにおぶった少女の声の響きが残りつづける。
胸のうずきはしだいに、耐えがたくなっていった。
● ● ● ● ● ●
ひんやりした感触が熱いひたいに触れた。
眠っていたようだった―ぱちりと目をあけると、美奈の顔があった。
熱を測るように触れてきていた彼女の手を反射的にふりはらい、健一郎は上体を起こした。ぐらぐら揺れて倒れこみそうになりながら、彼女をにらみつけた。
「なんだ……勝手に……入ってきやがって」
三日、迎えに行かなかったことになる。それまでほとんど空けたことがなかったのだから、美奈が不審に思うのは無理もない。
だが、彼女のほうからここに来るとまでは思わなかった。
かすむ視界がようやく定まって美奈の姿が澄明に見える。
美佳の服ではなく、いつものカトリック系女子学園の制服姿だった。
黒のワンピース風の制服―コルセットでもはめたようにウエストが細く締まり、スカートや袖の丈は夏服というのに長く、なるべく肌を見せないようにしてある。
上にはおったボレロカーディガンの襟と袖口の折り返しだけが白で、首元にはベルベットの細いリボンタイが結ばれていた。
古風で禁欲的で単純なデザイン。女子修道服を意識したらしきその黒と白の制服姿は、それゆえにすらりと肢体にはりついて優美さを引き出している。
これだけは美佳より美奈のほうにイメージが合っているなと健一郎は昔から思っていた。美奈が似合いすぎているだけかもしれない。
321:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:06:17 Yw+FasOY
「具合が悪かったんですね、ケン兄」
美奈は奇妙に静かな声をだした。
「寝ていてください。何か食べましたか?」
「帰れ。お前が帰ったら寝る」
「食べましたか?」
食べていなかった―腹は減るが、胸のあたりにむかむかしたものがあって、最初の夜に吐いてからは食べ物を口にしていなかった。
「食べるか食べないかは、僕の勝手だ。薬は飲んでる―さっさと帰れと言ってるだろう」
「お粥を作ってきます」
「ああ?」
苛々―苛々。
「なんのつもりだ、お前―」
険悪に視線で刺す。
美奈は影絵のように微動もせず立っていた。
「治ったら呼ぶ。それまで来るな」
「治るものも、治りません。
その服、寝汗でべっとりですが、いつから代えていないのですか? 手伝います」
「お節介なんだよ、やめろ!」
とうとう怒号した。
「それとも何か? それが『お願い』でいいのか―」
それを皮切りに、とにかく追い払おうとして思いつく悪罵を次々投げようとして、直前で健一郎は黙りこんだ。
美奈は涙をためた瞳に強い意志をあらわし、唇を一文字にひきむすんで、凛然と健一郎を見返していた。
健一郎は知っていた。これは美奈が引き下がることを肯んじなくなったときの表情だと。
彼女は、ごくまれに、とても頑固になることがあった。彼を部屋から出したときのように。
―こうなったらこいつ、決して自分を曲げない。
ふいに、抵抗の力が体から抜けた。
「勝手にしろ。そのかわり早く帰れ」そうつぶやくのが精一杯だった。
322:ねがいごと〈中〉 ◆ncmKVWuKUI
11/01/16 00:07:43 Yw+FasOY
………………………………………………
………………………
……
美奈が作った、梅干しで味付けしたお粥を食べさせられた。
ミネラルウォーターのペットボトルに、大げさなことに病人用の吸い飲み器(水を飲むための器具)まで美奈は持ってきて、枕元に置いた。
「食はあとから吐いてしまうから食べなかったが、薬はちゃんと飲んでいた。水なしでも飲めるから大丈夫だった」と言い張る彼に、美奈は懇々と説き聞かせてきた。
たとえ後で吐いてしまうとしても、すこしは胃に残留して栄養として吸収されること。
それに、食後服用と注意されている薬を飲むときは、食べておかないと胃を痛めるから食事が必須であること。
錠剤やカプセル剤は、胃の中で水に溶けることを念頭において開発されているため、水なしで薬だけ服用することは『ちゃんと』とは言わないこと。
薬を飲み慣れている美奈の言うことである。
加えて、面には出ていないが、美奈からは怒っている感じがひしひしと伝わってきていた。
何も言い返せないまま、健一郎は粥を無言ですすることになった。
食べ始めると美奈が出て行ったので、健一郎はやれやれと肩を下ろした
……が、食べ終わって薬を飲んだとき、美奈が真新しい男物の下着とフリースの上下をもって戻ってきた。
また出ていき、つぎにはビニールシートとお湯のはいった洗面器とタオルをも。
おい、なんだそれは―その文句を口にする前に、美奈が彼に言った。
「お父さんの代えのフリースと、封を切っていない下着です。
着替えてください。寝汗は体力を奪います。ですから着替えのついでに、体も拭かせてもらいます」
「冗談もたいがいに―」
「恥ずかしいのですか? わたしは、あなたの体をすべて見ています。それに病人に恥ずかしがる資格はありません」
シスターを思わせる制服の美奈に、静かな迫力でぴしゃりと言われ、健一郎は口をつぐんだ。
好きにしろと言った手前、どうしようもない。それに、実をいえば、昔から美奈はめったに怒らないが、怒ったときは彼は逆らないことにしていたのだった。
……もともと昔は、といっても数ヶ月前のあの日までは、彼も美奈には本物の兄妹に接するように接していたのだった。
優しいけれど怒らせたら怖い妹と、成績はいいが案外に弱気な兄―美佳を中にはさんだ幼馴染み仲間で、それに似た親密な関係がかつてはあった。