男ヤンデレ専用エロ小説スレ Part1at EROPARO
男ヤンデレ専用エロ小説スレ Part1 - 暇つぶし2ch451:ジュリマキ
11/03/03 21:36:41.45 ePZToOLj

女の敏感な場所に指を軽く押し当てたとたんに、可愛らし過ぎる反応が返ってきた。
優しく円を描くように動かすと、脇腹を蹴っていた太股がびくびく震え、腰が浮き上がる。
もはや肘鉄を放つ余裕はなくなったらしい。
口で乳房を愛撫するジュリエッタを引き剥がそうとする手も、すっかり力が弱っていた。
十分に濡れているし、これならもう繋がっても大丈夫そうだが、念には念を入れて、できれば二,三度イかせてからにしたい。
前は急ぐあまり、軽く一回イかせただけで進もうとして、反撃の余裕を与えてしまった。
今回は抵抗する気力も完全に削り取っておかねばならない。

実のところ、ジュリエッタがマキを犯そうとするのはこれが初めてではない。
一度目は、彼女の蹴りによってハートをブチ抜かれた日。もう彼女しかいないと思った。
キスで弱らせたところを自宅に連れ込んでコトに及ぼうとしたが、顔面を蹴られて逃げられた。
二度目は彼女の風呂上りで、全裸の彼女を見た途端に辛抱たまらなくなって押し倒した。
その時は抵抗を受けつつも本番手前まで進められたが、スーパーMAX状態の男根を膝で破壊されて意識が飛んだ。
こういうわけで、三度目の正直と言おうか、今回ばかりは何としても思いを遂げたかった。

「ん、ふっ…んん…!!」

敏感な突起を指でこね回しているうちに、マキはあっさり一度目の絶頂を迎えた。
快感に顔を歪め、激しく体を痙攣させながらも、唇を噛み締めて声だけは押し殺している様のなんと可愛らしいことか。
切なげな表情をじっくりと観察しつつ、彼女の痙攣が収まっていくのに合わせ、指の動きを少しずつ緩めていく。
もう今すぐにでも下半身で疼く熱の塊をねじ込みたくなってしまうが、ぐっとこらえる。
男を知らない体を慣らすため、突起を嬲っていた指をぬめる花弁の中に滑り込ませた。

「あっ、やぁっ!」
「ごめんな、いきなりで…すぐ良くなるから、ちょっと我慢してくれ」
「このっ…くたばれっ!」

さすがに絶頂の余韻どころではなくなったようだ。
マキはわずかに気力を取り戻したようで、今までより必死な形相で肘打ちと蹴りを再開した。
指で中を探るたびに強烈な打撃が体のあちこちにぶち込まれるが、気にせず彼女のあちこちにしゃぶりつく。
ストリートファイトで鍛えられているせいなのか、マキの中はかなりきつく、挿し込んだ指を押し潰さんばかりに締め上げた。
中はくちゅくちゅと音がたつほどに潤っていて、ジュリエッタをたまらなく興奮させる。

「ひぁっ!」

壁の中に潜む“泣き所”を探り当てたとたんに、罵声が甲高い嬌声へ変わった。

「ん、ここか?」
「ちが…あぅっ!ん、んんっ」

口で否定してはいても、中は“そこ”を擦り上げるたびにひくひくと蠢いて、実に正直な反応を返してくれる。
指の動きで生み出される快感に、彼女は顔を歪めて耐える。
それがなんとも健気で、もうとことん可愛がってやりたくなった。
少しずつ指を増やし、色んな角度や動きで彼女の中で眠る快楽を呼び覚ましていく。

「ん、んぅ、んんーっ…!」

一度イって感覚が鋭くなっているのか、それほど時間も経たないうちにマキは泣きそうな顔で再びイった。
しかし声を我慢できているところを見ると、まだ心は折れていないようだ。
いったん指を引き抜き、絡み付いた彼女の蜜を舌で味わう。
それは今までに味わったことのない、舌を通して脳神経を焼かれそうな、甘美でいて官能的な味だった。

―マキの蜜をもっと味わいたい。
ぼんやりと考えながら、ジュリエッタは脱力したマキの太股を持ち上げる。
今までジュリエッタの体を蹴り続けていた脚は、さしたる抵抗もなく開いた。

「やああぁっ!」

452:ジュリマキ
11/03/03 21:37:58.95 ePZToOLj

気がつくと、彼女のぬらりと艶を帯びたソコに誘われるようにして顔を突っ込んでいた。
女性器を舐められるのは初めてらしく(当然か)、マキの反応は今までで一番大きかった。
顔面を蹴ろうと動いた太股を片腕で封じ、もう片方の足に頭部や肩を蹴られつつも、勃ち上がって顔を出した小さな突起に吸いつく。

「やあっ!そこっ…やめてえぇっ!」

悲痛な涙声を無視し、彼女の中を溶かすべく、突起を軽く吸ったり舌で転がしたりと刺激を与えていく。
頃合いを見て、先ほどジュリエッタの指を咥え込んでいた膣に舌を挿し込み、シーツを濡らすほどに溢れた蜜をすする。
甘酸っぱい味が強烈な快感となり、脳天から背骨にかけて駆け巡った。

「やぁ、あ、あぅっ、く…」

突起を指でこね回し、絶えることなく湧き出る愛液を舌と唇で吸い取るたびに、マキは上ずった嬌声を途切れ途切れに漏らす。
彼女の心が折れかけている証拠だ。
しかし今は彼女を屈服させることよりも、彼女の味を脳に刻み込むことで頭がいっぱいだった。

「ふぁ、んぅ、んっ、んんーっ…!」

マキが何度か続けてイったことにも構わず、ジュリエッタは彼女の秘所を指と舌で味わい続けた。


「も…や、め…」

マキの味をたっぷり堪能したジュリエッタは、息も絶え絶えのマキを優しく撫でた。

「…ごめんな、先に謝っとく。手加減できなかったら、ごめんな」

心から謝罪しつつも、はちきれそうなほど硬くそそり立ったモノを、彼女の入り口へ押し付けることはもはや止められなかった。
体内に侵入しようとする異物を感じてか、マキは脱力しきった体で弱々しくジュリエッタを突っぱねる。

「や、め…」
「キツいだろうなあ…初めてだもんなあ…。痛かったら殴っていいからな、止められないけど」
「…死ねっ!」

渾身の右ストレートがジュリエッタの顔面を捉えた。
マキのくびれた腰をわし掴み、体がグラつくのを堪えきると、彼女の体に覆い被さって腰を確実に推し進めていく。
鼻先からぽたりと水滴が流れ落ち、彼女の頬に赤い染みを作った。
赤はマキの肌にとても映える。
彼女は顔を強ばらせてそれを拭いとるが、かえって広がるだけだ。それに、赤い雫がポタポタと続けて落ちて行く。
愛しい女が自分の血でみるみる染まっていく様は、まるで彼女を自分の色で染めているようで、たまらなく嬉しい。

先端が中にめり込むと、マキが呻き声を漏らし、ジュリエッタは先端からダイレクトに伝わる強烈な快感に息を呑んだ。

―ああ、これがマキの中か…!

十分に濡れた彼女の中は、ジュリエッタと同じくらい熱かった。
指で十分広げたはずなのに、奥へ進めば進むほど拒絶するかのようにきつく締まり、少し動いただけで我慢しっぱなしだった分身が暴発しそうになる。
なるべく長く快感を味わっていたいのに、もう限界寸前まで高まってしまった。

「ああ、マキ…!お前の中、イイなあ…!」
「う、るせっ…おら、さっさと、抜けっ!『安心』、やっただろ…!」

顔を痛みに歪めながらも、マキは気丈に吐き捨てる。

453:ジュリマキ
11/03/03 21:39:01.42 ePZToOLj

彼女の言う『安心』とは、彼女の貞操―つまり処女のことである。
ジュリエッタは『安心』が死ぬほど欲しかった。
彼女の初めての男となることが、彼女の中で自分という存在を確固たるものにできる手段だと考えていた。
その強さ故か、彼女は男女問わず他者を惹きつける、不思議な魅力を持っていた。
彼女の周囲には彼女を色んな形で慕う者たちが集い、中には恋愛対象として意識する者もいた。
どこの馬の骨とも知れない輩に奪われる前にモノにしてしまえば、彼女の“特別”になれると思ったのだ。

確かにこれで、マキの初めての男はこの坂本ジュリエッタということになる。マキの“特別”という地位は手に入れた。
しかし考えてみて欲しい。
例えば、砂漠のど真ん中で、カラカラの喉に冷たい水を一口流し込んだだけで、人間は満足できるだろうか?
愛しさのあまり殺意すら抱いたほど惚れ込んだ女と、こうしてキスをして、体の隅々まで味わい、一つになって―
―男として、止められるだろうか?

「甘いな…甘いぞ…ここまで来てっ…“最後”まで行かずにいられるかっ…!」
「ぐあっ!」

根本まで一気に貫いた。マキがはっきりと苦痛の悲鳴を上げるが、今はそれも情欲の燃料にしかならない。
本能に突き動かされるままマキの中を往復する。
彼女が苦しまないように、すぐ終わってしまわないようになるべく優しく腰を動かすが、それでもやっぱり早々に限界が来てしまった。

「はぁっ、はぁっ…ぁ…!」

抗いようのない快楽の波が全身を襲う。背筋がゾクゾク震え上がり、頭の中が火花で埋め尽くされた。
今まで溜め込んできた欲望が堰を切って溢れ出し、大量にマキの中に注ぎ込まれる。
抗議の声を上げるマキの体を抱き竦め、あまりにも素晴らしい絶頂によって飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止めた。
射精で失神しそうになるのは、生まれて初めてだった。

全てを吐き出し終え、マキの体にどっかり全身を預けて心地良い脱力感に浸る。
すると、マキが怒りに任せてジュリエッタの脇腹を殴った。
肋骨が軋む音が聞こえた気がするが、頭がぼんやりしてあんまり気にならない。

「このバカ!さっさとどけっ」

マキはそう言うが、正直一回だけでは到底満足できなかった。
それに、まだマキのすべてを見ていない。
指でイく顔も見られたし、舌と指で攻められて泣きそうな顔も脳にしっかり刻み込んだ。
となると、ジュリエッタのモノでイく顔ももちろん見たい。

中に入ったままのジュリエッタが復活しつつあるのを感じたらしく、マキの顔がさっと赤く染まった。
バキバキの両腕に力を入れ、わずかに上体を起こし、真上から愛しい女を見下ろす。

「やっぱりなあ…ちゃんと俺のでイってもらわないとなあ…」
「そ、そんなの無理…くっ」

腰をゆっくり動かしてみる。先ほど注ぎ込んだ精液のおかげで、滑りは良好だ。
指で探り当てたマキの弱点を、今度は自分のモノで擦り上げる。
その間、拳や肘打ちを絶え間なく顔面に受け、上半身には幾度も蹴りがぶち込まれた。
しかし皮肉にも、その動きによってマキの中は激しく収縮を繰り返し、ジュリエッタに新たな刺激を与えてしまう。
あまりに具合が良いものだから、思わず腰を強く打ちつけてしまった。

「ああ…マキっ…マキぃっ…!」
「う、あっ、やぁっ、んっ…」

マキの声が、少しずつ苦痛ではない別の色を帯びていく。同時に、接合部からいやらしい水音が鮮明に聞こえるようになってきた。
じわじわと侵食しつつある快楽の兆しに抗おうというのか、ジュリエッタの体を蹴る力が一層強くなる。
そのうちの一撃がみぞおち近くに命中し、肋骨が数本折れる感触と共に喉の奥から生暖かい液体が逆流した。

「あ…」

454:ジュリマキ
11/03/03 21:40:23.34 ePZToOLj

マキの大きな胸元が赤く彩られた。
日に焼けていない白い肌に飛び散ったそれは、まるでバラの花弁のようだった。
激しく咳き込みながら、ジュリエッタは顔面蒼白のマキに微笑みかける。

「綺麗だぞ、マキ…とても、とても綺麗だ…」

血に塗れた唇でマキの唇に吸いつき、彼女の口内に舌で唾液と共に己の熱い血を送り込む。
ジュリエッタの色に染まった乳房を揉みしだきながら、様々な角度で当たるように腰を動かし、敏感な箇所を幾度も攻め立てた。
マキは突き上げるたびに上ずった呻きを喉から漏らしながらも、己の手足を振るってジュリエッタが与える快楽を拒絶し続けた。
数え切れないほど蹴りを受けた体はとっくに骨も関節もイカれて、精神力だけで体を支えている状態だったが、まったく辛くはなかった。
むしろ、これ以上ないというくらいに最高だ。
この数々の傷がマキから与えられているものであるという事実が、痛みをまったく別のものに変化させていた。
攻撃を受けるたびに体中の血管が激しく脈打ち、彼女と繋がった分身がびくびく跳ねる。
マキが殴れば殴るほどジュリエッタが元気になるという、彼女にとっては最悪な悪循環が出来上がっていた。

やがて、マキが限界に近付きつつあるのか、断続的にジュリエッタをきゅっと締め上げるような動きを見せ始める。
接合部はすでに、ジュリエッタが動くたびに二人の色が混ざり合った蜜が溢れ、シーツを淡い赤に染め上げていた。
何かから逃れようとするかのように、マキが首を左右に振ってうわ言を漏らし始める。

「もっ…ヤダっ…ヤダぁっ…」
「いいぞ、マキ…全部っ、見せてくれ…ちゃんと、見ててやるからなっ…!」

彼女の赤い髪を労るように撫でながら、再びこみ上げてきた絶頂に向けて、より深く奥を突くように腰を打ち付ける。
もはやマキの目は焦点を失い、切れ長の目の際からは雫が滲み出し、月明かりを受けてきらきらと光っていた。
それを舌で舐めとりながら、ジュリエッタはさらに激しく、強く彼女を攻め続ける。
ジュリエッタを殴り続けていた腕は、いつしかジュリエッタを求めるように首に回されていた。
たとえそれが、彼女にとっては苦しみからの逃避に過ぎないとしても、ジュリエッタにとっては歓喜の瞬間だった。

「やあっ…うぁっ、あ、あ、ああ…っ!」
「マキ、マキ、まっ…、きぃっ…!」

甘い嬌声と共に、マキの体が弓なりにしなる。
両足はびくびく痙攣しながらジュリエッタの腰に絡みつき、ジュリエッタ自身を深く咥え込んだ膣が、食いちぎらんばかりにきつく締め上げる。
愛しい女が己のモノによって絶頂に震える瞬間を網膜にしっかり焼き付けながら、ジュリエッタも二度目の絶頂を迎えた。
力尽きて意識を手放すマキの奥深くに、熱い想いの全てを最後の一滴まで注ぎ込む。
すべてを出し切り、全身から力が抜けていくさなか、胸の奥が今までに味わったことのない温かさに包まれるのが分かった。

「…最高だ…」

ジュリエッタは、ようやく満たされた。

***

しばらくして、ベッドの中で繋がったまま、意識を取り戻したマキがぽつりと呟いた。

「バカ」
「うん」
「変態」
「うん」
「ケダモノ」
「うん」
「…死ね」
「腹上死か…マキの上で…いいなあ、それ」
「いや、やっぱダメだ」

ジュリエッタは思わず笑ってしまった。

455:ジュリマキ
11/03/03 21:41:27.98 ePZToOLj

「愛してるぞ、マキ」
「バカ」
「愛してるぞ」

マキは頬をぽっと赤く染め、むっつりと押し黙る。
それでも構わず、ジュリエッタは繰り返し耳元で愛を囁き続けた。
やがて根負けしたのか、マキはそっぽを向いたまま、小さく漏らす。

「…あたしも、す…好き」

それを聞いた瞬間、マキの中で大人しくしていたジュリエッタの分身が―活力を取り戻し始めた。
マキもそれを感じ取ったらしく、赤い頬を引き攣らせた。

「ちょっ、まっ…」
「マキっ!もう一回だけ…いや、できれば二、三回っ…」
「やっぱり死ねっ!」

逃げようとするマキの腰を抱え込むジュリエッタ。
その顔面に、怒りの鉄拳が炸裂した。



明け方、坂本ジュリエッタは全身複雑骨折で、満面の笑みを浮かべながら病院に運ばれた。
病院のベッドで迎える心地良いまどろみの中、ジュリエッタはマキの面影を持つ少女の夢を見た。
なんとなくだが、彼女とは近いうちに会えそうな、そんな予感がした朝だった。

END

456:名無しさん@ピンキー
11/03/03 21:45:09.65 ePZToOLj
以上です。
本スレとこちらとどちらにしようか迷ったんですが、
自分的にはヤンデレネタとして書いたので、こちらに投下させて頂きました。
お楽しみ頂ければ幸いです。

ちなみに坂本ジュリエッタが自分のヤンデレ入門でした…
今ではヤンデレ男にしか萌えなくなっちまったぜ!

457:名無しさん@ピンキー
11/03/03 22:32:29.34 oJFhokMQ
>>456
GJ!
原作知らんが萌えた
ちょっと明日漫喫行ってくる

458:名無しさん@ピンキー
11/03/04 00:47:06.00 hYPs2lUX
>>457
恐縮です!
絵にかなり癖がありますが、キャラが魅力的なのでぜひ!
坂本さんは三巻の終わりごろから出ますので、どうぞよろしく

459:名無しさん@ピンキー
11/03/04 23:18:21.39 GR2ZgQl+
こんなところでジュリマキが見れるとは…!GJ!!



460:名無しさん@ピンキー
11/03/06 17:15:52.77 7JiV8+kS
うわあ~~~GJGJGJ!!
この二人大好きなんだ!!
まさかエアマスのSSが見れるとは思わなかった・・・!!すごく嬉しい!

というか半端ない描写力と再現率・・まんまあの二人だな。
原作、絵が・・・っていう人はアニメから入るのがおすすめ。
自分はジュリエッタほど幸せなendを迎えたヤンデレは知らん。
ジュリエッタ最高に格好いい。マキちゃん死ぬほどかわいい。

461:名無しさん@ピンキー
11/03/07 00:24:27.34 YDxk6yZ7
久しぶりに>>248-252読んだら悶えたww
クラシス兄ちゃんヤンデレ過ぎるww

462:名無しさん@ピンキー
11/03/07 00:29:28.66 YDxk6yZ7
>>456 超GJ!!
素晴らしい文才!原作知らないけど惹きこまれた。
ほかの作品ぜひぜひ!!
みんな文章力高すぎ。
久しぶりに>>248-252読んだら悶えたww
クラシス兄ちゃんヤンデレ過ぎるww

463:名無しさん@ピンキー
11/03/07 17:22:29.01 ThgBBtaX
続きを待ってる作品が多い……

464:456
11/03/07 18:35:39.49 qP4vixAF
おお、エアマス知ってる人がいて嬉しいなあ!
お褒めの言葉、皆さんありがとうございます!
坂本さんは人間としてはアレなんだけど、愛の深さはガチなんだよね
この人がマキちゃんに吐く台詞は熱い名言のオンパレードで心が震える
興味を持たれた方はぜひ、彼の恋の結末を見届けてあげて下さい

では、神様の降臨を待ちながら自家発電に戻ります

465:名無しさん@ピンキー
11/03/17 05:11:08.55 uHB6hAHr
皆様無事かな?
また投下や雑談で賑わいますように

466:名無しさん@ピンキー
11/03/18 07:06:39.88 VZo9goFk
なんとか生きてるぜ
東北もそうだけど、関東圏の人たちも停電とかで大変そうだね
今は一日も早く復興することを祈るばかり…

467:名無しさん@ピンキー
11/03/20 21:21:05.34 LZnW1hqx
キオたんと弟子の女の子の続き待ってる

468:名無しさん@ピンキー
11/03/29 22:40:43.76 liTDWOIB
投下期待

469:名無しさん@ピンキー
11/03/31 20:19:01.42 Zv4IJLDp
ところでヤンデレ男に犯される可哀想な女性はどんな人が良い?
個人的には儚げだけど芯は強いとか、エロい事には抵抗感を持ってたりすると最高なんだが
寝所で玩具みたいに扱われて犯されてガチ泣きしたりしてると興奮する

470:名無しさん@ピンキー
11/03/31 22:13:23.38 AJsZ8K6j
芯が強い禿同!あと内気で健気な子や、対局で前向きで芯が強く正義感とかある子が可哀想な感じになるの萌える。
そんな子が墜ちる瞬間たまらんw個人的にヤンデレの性格は内気な子なら表向き明るい策士タイプで、芯が強い子なら内向的で感情が一途過ぎて歪む様なのが好きだなー。

471:名無しさん@ピンキー
11/03/31 23:11:11.12 iO1S1Amy
やっぱりすぐには屈しない芯の強さは重要!
個人的には、他に片思いでしてる人がいたんだけどヤンデレ男に犯されて
ストックホルム症候群みたいに段々ヤンデレ男に絆されてしまうNTRっぽいのも好き

472:名無しさん@ピンキー
11/04/01 13:50:37.53 ALBec79m
>>471とはうまい酒が呑めそうだ

473:名無しさん@ピンキー
11/04/01 23:59:21.26 m/t5KB/A
やっぱり堕ちるまでじっくり楽しみたいよな
ヤンデレ男に犯されてもすぐに諦めずに、必死に抵抗したり泣いたりして欲しい

474:名無しさん@ピンキー
11/04/03 17:51:16.24 IFbHdLuD
スレッド一覧で別スレクリックするはずが
偶然間違えてこのスレにたどり着いたんだが
こんなところでジュリマキ見れるなんて望外の喜び>>456乙!!

今構想してるのが
女上司に初恋してしまったモテ男新入社員が
思わせぶりな女上司の態度にオレいけるよな!と期待していたら
実は女上司の妹に好かれていて、妹を付き合ってくれない?と言われ
妹のためなら何でもできるっていうシスコン女上司にヤンデレて
関係を無理矢理強要→写真を撮られて妹にばらされたくないですよね?で
妹とのさわやか交際を日々事細かに報告という名の名目で女上司を犯し続け
勿論避妊はせず、子供出来たら産んでくださいよ、認知はしないけどと
心の中ではめっちゃ生んで欲しいと思いながら犯し続け
無限ループに陥るっていうのはこのスレ向きだろうか…

475:名無しさん@ピンキー
11/04/03 18:22:01.95 gSLUhnZ2
>>474
恐ろしいほどヤンデレ男じゃないか!

476:名無しさん@ピンキー
11/04/03 22:00:15.56 zKGezXOo
>>474
さあ、早くその構想を作品化する作業に入るんだ

477:名無しさん@ピンキー
11/04/03 22:13:29.90 /PUAmFb3
>>474 何故かレンホウ思いだした
「私にこだわる理由はなにがあるんでしょうか。妹(二番目)じゃだめなんだしょうか」
貴方(姉)じゃなきゃ意味がない。二位じゃ意味がないんだあっ
姉は世界一いいいい

しかし妹は不憫な子

478:名無しさん@ピンキー
11/04/03 23:07:35.96 IFbHdLuD
あ、よかったこのスレ向きだったか
他のスレだとなんか違うような気がして
ここが一番近いのかなとおもって聞いてみてよかった。
頑張ってみるが、期待はしないでいてくれw

>>477
レンホウ気になったのでKwsk

479:名無しさん@ピンキー
11/04/04 00:42:46.91 0tCfm+tT
>>478
事業仕分けの蓮舫
全然関係ないうえに原型もなくなってたな
変なテンションだった、すまない。

480: 忍法帖【Lv=2,xxxP】
11/04/04 15:18:12.65 nzCPW7ph
俺も読みたい
しかし完全に話の出汁な妹哀れw
まぁ、こういうキャラが出るとより一層男のヤンデレっぷりが際立ちそうだが

481:名無しさん@ピンキー
11/04/06 08:59:26.54 b0CPGxYW
投下期待

482:名無しさん@ピンキー
11/04/07 22:26:47.84 Tlq52Qij
狂四郎2030を読みはじめたばかりなんだが
八木少将がヤンデレチックでかなり素敵だw

完璧な遺伝子をもつ完璧な男の八木少将は
ヒロインには爽やかな面しかみせていないんで
過去リアル男から性的暴行ばかり受けていたヒロインは信頼してて
でも裏ではヒロインがバーチャルセックスで自淫している所を見て
わからない事をいいことに胸に精液かけていったり
心の中ではヒロインを犯したくて堪らなくて
ヒロインを過去犯してた上官(八木少将にとっては下)を陥れたり
ヒロインが遺伝子的に劣っているから
セックスパートナーとしては不合格だとしると
遺伝子改造しちゃうぞ!な狂愛っぷりがいいw

483:名無しさん@ピンキー
11/04/08 01:27:15.50 uHm9Poc2
>>482
どんな奴かと思って画像検索かけたら吹いちまったじゃないかw
ターちゃんの中の人の作品か、これはいいヤンデレ軍人…

484:名無しさん@ピンキー
11/04/08 07:42:17.41 gr5sqps5
ほんとだ八木少将でググって画像検索で一番に出た画像が酷すぎるw
保守ついでに八木少将のその後



ヒロインは八木少将の本性を知り
遺伝子操作された化け物にしか見えなくなるが
段々とヒロインを人間らしく好きになっていきその証を見せ始める彼に
人間に見えるようになり殺して逃げる決心が鈍り始める
しかし八木少将はヒロインに真に好きな夫が居る事を知り逆上
刑務所の女に飢えた男たちの前で強姦し裸で放置するが
それはヒロインが助けを求めるようにしたお仕置き…で男たちを皆殺しにする
この劣性遺伝子の屑がと呼びながらもヒロインを手放すことが出来ない
その後夫を殺せばヒロインは自分の物になるで夫と対決で死亡
死亡した後に録画していた映像がヒロインにながれて
その映像では人間らしい部分の八木少将がヒロインに
今までの事を謝罪するというものだった…

段々と人間らしくヒロインの為に変わっていく少将とか
ヒロインの裏切りに怒りながらも手放せないとか萌え滾ったぞw

485:名無しさん@ピンキー
11/04/08 20:23:04.04 oY5lxK/3
やはり男ヤンデレは好きな女を苛めてこそだよな
溢れんばかりの過剰性欲をブチ撒けて欲しい

486:名無しさん@ピンキー
11/04/09 01:14:11.28 W88Iud0+
クラシスとリレアの続きが書けたので投下させて下さい。

一応監禁編への繋ぎとして書いたのでエロは薄めで全16レス程度。
多少の血腥い描写があるのでそこだけ注意。

NGはかくれんぼでお願いします。

487:かくれんぼ 1/16
11/04/09 01:14:56.88 W88Iud0+
女が、薄暗い森の中を只管に駆け抜けている。
我武者羅に走り、転び、それでも再び立ち上がり、擦り剥いた膝から、
血が出ていることなどお構いなしに、走り続け何かから、必死に逃れようとしていた。
森の中を昼夜問わずに駆け抜け、気が付けば三日近く碌に寝てはいない。
食事を摂る暇すら惜しみ、走り続けた所為もあってか、既に身体は限界を超え、悲鳴を上げている。

女が逃げなければならなかった理由は、多々あるが、逃げ出す決め手となったのは、
突然父親から告げられた、望まぬ相手との婚約に起因する。
望まぬ相手…である『クラシス』と女は、所謂幼馴染の間柄。
彼の祖父と自分の父が勝手に取り決めた婚約から、女…『リレア』は逃げ出したのだ。

「も…もう駄目…足が…」
リレアは、木立に疲れ切った身体を預け、暫しの休息を得る事にした。
さらさらと流れ行く風が、疲れで火照った頬を撫でて行き、とても心地が良い。
「喉…も…乾い…て…」
喉が焼け付く様に渇き、身体が、頻りに水分を欲する。
途中、沢で汲んで来た新鮮な水を詰めた水筒の蓋を開け、その中身を一気に呷る。
「んっ…んっくっ…はぁっ…美味しい…」
乾ききった心ごと包み込む、優しい生命の源の味が、身体の奥深くへと染み渡る様に広がり、
リレアは不意に涙が毀れそうになった。
途中、呷り切れなかった水が、唇より溢れてやがて零れ落ちる…。
着ている僧衣の間に水が、巧みに滑り込み、肌を伝うその冷たさで、ふるりと一度身体を震わせた。
(…どうしてこんな事になっちゃったのかな…)
リレアは、膝の治療がてら、大きな溜息とともに、そう心の中で呟き、先程迄、呷っていた水筒の残り水を、
血の滲んだ膝へと掛け、傷口に付着する砂や、泥を丁寧に洗い流す。
「…んっ…つうぅぅ…」
傷口に水が滲みたのか、じくじく感じる僅かな痛みに、一度眉を寄せれば、懐より、清潔な白い布を取り出し、
洗い流され綺麗になった、傷口へと丁寧に巻き付ける。
「…本当に、どうして…」
きっと今頃、逃げ出した自分に向かって、追っ手が放たれている事だろうと、リレアは確信する。
だから、捕まりたくない一心で、一歩でも、一秒でも良いから遠くへ逃げたかった。
否、逃げなければならなかった。
そうしないと、望まぬ永久への契りを、クラシスと交わさねばならず、それは自分の本意では無い。

「あの日から皆、おかしくなっちゃった…」
集落に住む人達の、リレアに対する態度が急変した刹那の記憶を、思い出せば彼女の心は、
その都度ずきりと痛み、散々に乱れる。
「皆がおかしくなったのは、きっと、全部、私の所為…」
そう、一言呟くと、青金石(ラズライト)色した瞳から、大粒の涙をほろり、ほろりと零していく。
「お父様もお母様も、あの日から、人が変わってしまった…」
それは、リレアの両親すら例外ではなく、リレアの能力が顕現してからは、自分達が産み、育てた娘である、
リレアの足元に傅く様跪き、恭しい態度で逐一、自分のご機嫌取りをして来る様になったのだ。

488:かくれんぼ 2/16
11/04/09 01:15:29.55 W88Iud0+
「こんな能力なんて…私は要らないのに…」
望まぬ能力を、開花させてしまったリレアにとって、切実にそう願うのは、無理も無い。
「どうして、こんな…」
俯いたまま、呟き、そこ等辺に生えている草を、土ごとぎゅっと握り締め、きつく唇を噛み締める。
「…こんな能力なんて、欲しく…なかった…っ」
そして、声を殺し、木々のざわめきにそっと忍ばせると、心の中に蟠る本音を、ゆっくりと吐露していく。
豹変した、あの日の事をどうにか忘れたくて、頭を過振りするが、その記憶は油の入り混じった、
泥の様にリレアの脳裏へとこびり付き、中々忘れさせてはくれない。

「戻れないって、過去は変えられないって、解っている…でも…」
そこまで言うと、両手の指先でそこ等の土ごと草を強く掴んで、憤りを超えた思いを、地面に八つ当たりする。
途中掌が握り締めた草によって切れ、鋭い痛みが神経を遡って、じわりと身体の内部へ広がるが、肉体に感じる痛み等、
今のリレアにとっては、どうでも良い事であった。
「…幸せだったあの頃に帰りたい…」
そう何度も呟き、胸の辺りを押さえて、蹲る。
瞳に涙を湛え、天を仰ぐと、在りし日の記憶を、心に呼び覚ます。
未だ、幸せだった頃の…幼き日々が走馬灯の様に脳裏へと駆け巡った。
その瞳から今も止まる事を知らぬ涙は、自分の心すら満足に癒してはくれない。
只、悪戯に悲しみを助長し、リレアを更に追い詰める。
「無理だって判っている…判っているんだけど…」
それまでは、極普通に接してくれた集落の人々が、急に自分の事を神か、悪魔を見るような目付きで、
態度で、接してくる様になったあの日の出来事が、又、リレアの脳裏を抉る様に掠める。
「もう一度、やり直したい」
頭を抱え、軽く過振ると、瞳を強く閉じて心に堪る、不快感や、不満と言った、
負の感情を咽喉奥から搾り出し、言葉にする。

「それに…私、今迄知らなかった…」
集落では、リレアの事を、『奇跡の神子』等と言って勝手に祀り上げる始末で、リレアの能力を当て込んだ、
宗教紛いの商売が盛んになり、依頼者に対して、能力を使う代償として、法外な金銭や、
高価な宝石等を請求したりしていると、逃げる際、壁越しに誰かがそう話していたのを、
リレアは悲痛な面持ちで思い出す。

「集落の皆が、そんな酷い事していたなんて…」
無論、多額の金銭を持たない者には、『奇跡の神子』の恩恵には与れず、邪険に扱い集落から追い返しているらしく、
その事実も、又、リレアの心を深く傷付けた。
「もう、何を信じれば良いのか判らない…」
勿論この事は、略、霊廟に軟禁されていた状態にある、リレアには、全く知らされてはおらず、あくまで無償の、
人助けの一環として彼女は、その能力を今迄使っていたのだった。
「…私…産まれてきちゃ、いけなかったのかな?」
答えの出ない応えを求め、そう、リレアは、自問自答を繰り返す。
「唯、普通の幸せを望んじゃいけないのかな…?」
呟いてその侭俯けば、再び、大粒の涙が、勝手に瞳からボロボロと零れて行く。
「私はただの『リレア』で、『奇跡の神子』なんかじゃないのに…」
そう、声を絞り出して呟き、己を慰める様に自らの肩を掻き抱く。
勝手に流れ落ちる涙を止められない、自分の弱さが今のリレアには只、歯痒い。

489:かくれんぼ 3/16
11/04/09 01:16:02.87 W88Iud0+
「でも…この能力の所為にしちゃいけない…よね…」
(この能力自体、決して悪い物じゃないって信じたい…)
と、リレアは心で付け足してからそう言うと、再び樹に身体を預けて暫く考え込む。
「それに…もし、この能力が無かったら、あの時、クラシス兄様を救えなかった…」
不意に、変わる前の、幼い彼の笑顔を思い出しては、あの時救えて良かったと、心より思う。
二人で過ごした幼き頃の…優しく穏やかな記憶が、彼女の胸中にずっと在り続ける限り、
リレアは、クラシスの事を心底嫌いに、なれはしない。
「…付いて来るなって、昔は良く怒られたっけ…」
涙を拭って晴天を仰ぎ、自虐的に笑うと、大きく溜息を吐く。
昔は、どちらかと言えば、リレアの方が積極的にクラシスへと近づいて行き、良く邪険に扱われたものだと、
リレアは、過去の記憶を思い出しがてら、苦笑いを一つ浮かべた。
そして同時に、多分、昔の…変わる前のクラシスであれば、喜んで婚約を了承出来たかも知れない…と、
刹那的に、リレアは思う。
「昔は、あんなに『好き』…だったのに…」
クラシスは、リレアにとって、優しくてとても頼りになる、憧れのお兄さんであり、又、初恋の相手でもあった。
幼い頃…皆と同じ、クラシスの態度が、豹変したあの日迄は、二人とも極普通の、幼馴染関係だったのだろうと、
自負出来る自信が、リレアにはある。
「今は、クラシス兄様が…『怖い』…」
どうやらリレアの心を蝕む、クラシスへの恐怖心が、無意識に現れたらしく、そう搾り出す様に呟けば、
全身をカタカタと、小刻みに震わせる。
その姿は、まるで、肉食獣に捕食される寸前の小動物の様であり、見ていてとても痛々しい。

「どうして…どうして変わっちゃったの…?クラシス兄様…」
リレアは一人、そう呟くと、なるべく嗚咽を立てない様、抱えた膝に顔を埋め、静かに泣き崩れる。
泣き崩れた所で、結局何の解決にも至らない事なんて、リレア自身良く解っていたつもり…だった。
だが、勝手に涙が溢れ出で、止まらない。
否、止める術など、生憎、今のリレアには持ち合わせては居ないのだ。

「僕が…どうかした…?」
樹に隠れたリレアの背後から、甘く…それでいて冷やかな、何時も聞き慣れてはいるが、
今一番聞きたくない人物の声がする。
その声を聞いた途端、リレアの全てが一瞬にして戦慄した。
咽喉の奥から、「ひっ…」と上擦った情けない声が、リレアの唇から漏れる。
一度大きく跳ね上がった心臓は次第に焦りを称え、鼓動を早めて煩く耳を突く。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…)
リレアの脳が、声にならない悲鳴を上げた。
(は…早く…ここから逃げる方法を、見つけなきゃ…)
リレアは心の中で、逃亡の算段を必死に考える。
だが、頭の中が、一瞬にして真っ白に塗りつぶされてしまっては、考えも巧く纏まらない。

お願いだから、聞き間違いであって欲しい…。
自分の勘違いであって欲しい…。
お願いだから…。

リレアは、そう祈る様に、そして自分に言い聞かせる様に、心の中で、何度も何度も繰り返し呟く。
額や掌からは、嫌な汗が滲み、日差しは麗らかで、気候的には寒くは無い筈なのに、悪心から来ているであろう、
震えが勝手に全身を包み、止まらない。
目線は完全に明後日の方向へと泳ぎ、動揺を如実に現していた。

490:かくれんぼ 4/16
11/04/09 01:16:42.76 W88Iud0+
「ク…ク…クラ…シス兄…様っ…?」
そのまま振り返ると、リレアは、完全に恐怖の覚めやらぬ唇で、声の主であろう、人物の名を紡ぐ。
必死に、咽喉奥から声を絞り出そうとはするが、リレアの思い通りには行かず、吃り、上擦って震えた。
「ふふっ…リレアみーつけた…」
その声の主が、台詞と同時にリレアの眼前に現れ、親しげに彼女の名を呼べば、
彼の持つ、金糸の髪が風に揺れ、炎よりも鮮やかな紅玉(ルビー)の瞳が、真っ直ぐリレアを射抜く。
「ど…う…して…?」
眼前に現れた人物…即ちリレアの婚約者である『クラシス』へと、リレアがそう問い掛けると、
「どうしてって…そんなの決まっている…」
間髪も入れずに、クラシスは、そう返事をする。
「愛しい、キミを、迎えに来たんだよ?」
そして、次に視点定まらぬ表情を浮かべて言い放ち、リレアの腕を掴んで、身体ごと強引に引き寄せれば、その内に抱く。
服越しだが、確かに伝わる仄かな温もりと香りが、クラシスの心の不安を優しく取り除き、
彼は、無常の安寧を得た。

「やっと、やっと見つけた…僕の…僕だけのリレア…」
(ああ…この感触…温もり…間違いない…本物のリレアだ…)
クラシスは瞳を閉じて、そう心で呟けば、温もりを…存在を感じていたくて、リレアを強く強く、抱きしめる。
「い…いやっ…ク…ラシスっ兄様…放して…」
息も出来ぬ程、強く抱き締められたリレアは、抵抗する様に、擁かれているクラシスの腕の中で、身動ぎを繰り返す。
だが、クラシスは、その腕でがっちりとリレアを包み込んで、決して放そうとはしない。
「駄目、放さない」
リレアを見詰めてから、次に耳元で、クラシスは、甘く囁く…。
そして囁きがてらに、彼女の姿を確認すると、クラシスは、一度愁眉を寄せた。
「膝もそうだけど、ここも…怪我してるね」
指をつうう…っとリレアの耳朶に這わせると、葉が掠って付いたであろう切り傷を軽くなぞり、
ぷっくりと浮き出ている、彼女の紅を巧みに指へと絡め取れば、そのまま唇の中へと放り込む。
「ん…っ」
不意に耳に触れられて、リレアの身体が軽く跳ねた。
ぞわりと駆け上がる、言い知れぬ悪寒の様な、この感覚を忘れたくて、反射的に瞳を閉じる。
「僕が消毒してあげる…」
クラシスは序に、耳朶へと唇を寄せると、そのまま挟み込み、舌でその感触を楽しむ様に、リレアの治療を開始した。
リレアの流す、鉄を含んだ紅が、クラシスの寄せる唇の中へと、吸い込まれれば、やがて唾液と共に混じり合う。
彼は、それを充分味わい、咽喉を鳴らしてこくりと美味しそうに飲み込むと、彼女が残す、
鉄の甘やかな風味が、口の中へと広がった。
耳朶を舐められ、リレアが再びぴくりと、反応する。
「…に…さまっ…おね…がい…だから、やっ…め…」
空かさず否定の言葉を口にするが、クラシスの行為は一向に収まらない。
「や…あっ…」
弱々しい声を立て、リレアの肩口が、僅かに震え始めた…。
表情は、恐怖で僅かに引き攣り、心もそれに合わせ急激に冷めていく。
「やめっ…て…くだ…っさ…」
リレアは、瞳をぎゅっと閉じ、顔を背けると、か細い両腕を使って必死にもがく。
ぴちゃぴちゃと耳朶を舐める音も、生温かなクラシスの舌の感触も、、今のリレアにとっては、
恐怖の対象にしかならず、疲労で桜色へと染めた頬は、見る見る内に青ざめ、彼女の胸中に、
言い知れぬ、不安な感情だけが色濃く宿る。

491:かくれんぼ 5/16
11/04/09 01:17:23.41 W88Iud0+
クラシスは、暫く、味わっていた耳から、名残惜しそうにその唇を放すと、
「リレア…僕の、僕だけのリレア…キミだけだ…キミだけなんだ…」
次に、リレアの新緑にも似た、長い髪の一房を優しく指に絡め取ってから、軽く口付けを落とし、
「キミだけが、こんなにも、僕の心を、狂おしく掻き乱し、惑わし、そして、救ってくれる」
再び耳元で、囁き呟けば、クラシスは慈しむ様な、艶笑を浮かべた。
「………!」
囁かれて言葉を失くし、リレアが僅かに硬直する。
表情は更に恐怖で引き攣り、じわりと滲み出た冷や汗が、不快な感触となって背筋を伝う。
「大好きだよ…リレア…愛してる」
クラシスがリレアへと捧げ、紡がれ続ける愛の言葉は、一筋の糸となって、リレアの心へと、
巧みに潜り込めば、その中枢を恐怖で絡めとり離さない…。
だが、その糸を断ち切らない限り、リレアに自由は無く、その自由を得んが為に、彼女は行動を起こす事にした。
絡め取られている糸を、断ち切ることは容易なことではないが、これで、もう、リレアの心は揺るがない。
「わ…っわ、私…は…っ」
必死に紡ぐ、自分にとって救いになる筈の台詞が、緊張で吃り上擦る。
唇が震えて止まらない。
「今の、クラシス兄様なんて、嫌いです」
やっとの事でクラシスの腕を振り解き、一歩後退すると、リレアは真剣な表情で彼を見詰め、言い放つ。
もう、言葉にしたのだから、取り消せないし、取り消すつもりなんて無いと改めて、リレアは思う。
「だから絶対に妻には、なれませんし、集落に帰るつもりもありません…!」
リレアは、纏う衣服をぎゅっと握り締め、勇気を振り絞って、クラシスに向かい、尚も必死に思いの丈をぶちまけた。
「妻…?ああ…結婚の事ならもう、しなくても良いよ」
リレアの台詞を聞いて、クラシスは、「何だそんな事か…」と心で付け足して、軽くあしらう様に嘲笑する。
クラシス自身、あれ程拘っていたリレアとの婚礼だったが、実際の所、それは彼女を手に入れる為の、
一つの手段でしか無い事に気付き、その形式に拘る必要は無いと、改めて思う。

無論、花嫁姿を見てみたい欲望はあるが、リレアを手中に収めてしまえれば、後から如何とでもなるだろうし、
これからの人生を、二人で共に過ごし、歩めれば、クラシスは、もう何でも良かったのだ。

「クラシス兄様…解って戴けたんですね!」
初めて理解を示す様なクラシスの言葉に、リレアの心は酷く安堵した。
(嬉しいな、これで私は、本当の意味で、自由になれる気がする)
心は暗雲から、晴天へと変わり、穏やかな気持ちが徐々に彼女を包む。
「…ですから、お願いします…」
リレアは、今、自分の感じる正直な気持ちの全てを、クラシスへと伝える事にした。
(今のクラシス兄様なら、解ってくれるかも…)
そんな、根拠の無い愚鈍にも似た淡い希望が、リレアの背中を僅かに後押しする。
「もう私の事なんて、諦めて忘れてくださ…」
「だって、妻になんかならなくても、リレアの全ては僕のモノって最初から、決まっている事だし」
だが、リレアの台詞を途中で遮って、クラシスが、更に彼女を叩き落すための言葉を、口走った。
「それに、僕達、これからずっと、ずっと死ぬまで一緒に暮らすんだから…ね?」
焦点の合っていない、虚ろな瞳を辺りに漂わせるクラシスの口角が、弧を描いて醜く歪むのを間近で見て、
やっと穏やかになりつつあったリレアの心に、暗雲が立ち込め始める。

492:かくれんぼ 6/16
11/04/09 01:17:54.54 W88Iud0+
「…え…何を言って…る…んですか…?」
その台詞を聞いたリレアの表情が、若干硬くなる。
「お願いですから、ちゃんと、私の話を…!」
クラシスを説得しようと、リレアは、真剣に彼を見詰め、語り掛ける。
「聞いてるよ…?」
優しい視線を、リレアへと向けると笑い、クラシスは答える。
「だったら…私の言っている事が…」
「うん…解ってる」
そう頷いて、リレアに向かい呟けば、間髪入れずに、
「そうか…嫌いになるまで、リレアは、僕の事を想っていてくれてたんだ」
(愛憎の感情と言うのは常に表裏一体だと言うし)
クラシスは、そう語りつつ、脳内でリレアから送られた言葉の意味を操作する。
「嬉しいな…」
(だから、先程のは、リレアが僕に与えてくれる、愛情の裏返し…と言う奴なんだ)
リレアの語る言葉は、クラシスの脳内で全て操作され、完全に真逆の意味へと、変化を果たす。
彼女が否定の言葉を幾ら紡いでも、それはもう、彼の中では意味を成さない。
「…私、そんな意味で言ったんじゃないんです…!」
クラシスの言葉を否定する為、声を張り上げ、頭を横に振れば、自ら纏う僧衣の胸辺りを、軽く掴んで、
「確かに昔は尊敬してましたし、憧れていました…でも、今のクラシス兄様は………!」
感極まったのか、瞳にうっすらと涙を浮かべ、リレアは訴える。
「今の僕は…何?」
クラシスは、その先の言葉が気になり、聞き返す。
「…どうして…どうして、変わってしまわれたんですか?昔はあんなに優しかったのに…」
リレアは、お互い、なるべく傷付け合わずにすむ様に言葉を選び、慎重に彼へと伝えた。
「ねえ…リレア…覚えている…?昔の事」
リレアの問いに答えるべく、遠くに視線を漂わせ、クラシスはぽつりと昔語りを始める。
「昔キミは、その能力で以て、僕を助けてくれたよね…?」
胸を焦がす様な、愛しいリレアへの熱情を、消さない様自らの掌で優しく覆い隠し、
「あの時程、キミの存在が、こんなにも尊く、そして愛しいものだと思ったことは無かった…」
瞳を軽く閉じれば、そう呟いて、
「『初めて』を僕にくれた時、僕の中にキミとの繋がりを、はっきりと認識することが出来たよ」
嬉しそうに表情を弛めれば、クラシスは語る。
「そんな…初めてだなんて、誤解を招く様な言い方、しないで下さい…!」
クラシスから投げかけられた言葉に、リレアは、慌てて言葉を重ねる。

あの時の事が、クラシスの脳裏を過ぎる。
それは、リレアにとって生涯忘れえぬ最悪な日であり、彼女が彼女として生きられなくなってしまった、原因の日。

図らずも彼女がその身に宿す、能力の恩恵を…祝福を、一番最初に…文字通り『初めて』自らの身で体験したからこそ、
特別な感情を抱くのは無理も無く、この出来事が切っ掛けで、クラシスは、心に眠るリレアへの想いを自覚するに至ったのだ。

493:かくれんぼ 7/16
11/04/09 01:18:25.04 W88Iud0+
「でも、そのお陰で、僕は、こうして、真実の愛を知る事が出来たんだから…」
リレアを熱く見詰めれば、クラシスは、何処までも優しく微笑む。
祝福を受けた、その後、彼は、自らを『神子の騎士』と勝手に名乗り、護衛と称し彼女に四六時中付き纏う事となる。
その付き纏い方…否、愛し方は、病的な程過剰なもので、昔のクラシスを誰よりも良く知り、
彼の事が好きだったリレアは、劇的な態度の変化に、当時酷く戸惑ったのを、今でもはっきりと覚えている。
「は…はぐらかさないで、真面目に…」
優しく微笑むクラシスに、好きだった頃の、彼の面影が刹那的に重なり、リレアは思わず、頬を紅に染め上げた。
「それに、前にも言いましたけれど、あ…あれは、完全に不可抗力だったんです…!」
その幻影を振り払う為に、必死に否定の言葉を積み重ねれば、
「と…兎に角、私は、クラシス兄様と一緒に、集落に帰るつもりはありません・・・!」
成るべく顔を見ない様に背け、焦りつつリレアは、思いを告げる。
やはり、クラシスが何を言っても、今のリレアには、帰るつもりなど毛微塵ほども無い。
「ああ、そうだ…一つ言い忘れてたけど、集落には、もう、帰らなくても良いんだよ…?」
そんなリレアの頬を、慈しむ様に撫で、
「正確に言えば、『帰れない』…の方が正しい、かな?」
瞳を細めると、意味深にクラシスは、言葉を紡ぐ。
「帰れない…って、どう言う…?」
リレアは、彼の言葉が気になり、答えを求め、彼へと問い掛ける。
瞬時に感じる嫌な予感が、彼女の胸中を幾重にもざわつかせた。
「キミの居ないあんな場所なんか、もうなんの価値も無い…だから」
柔らかく、それでいて穏やかに笑い、
「キミが居なくなった次の日の朝に、僕が全部、跡形も無く『壊して』きたんだ」
クラシスは自らの犯してきた罪を、褒めて欲しくて、嬉しそうに告白する。
曇りの一切混じらぬその笑顔は、傍から見ても、ゾッとするような美しさと共に、何処か人事の様な、
冷めた雰囲気を醸し出しており、心にある、語り切れぬ何かが、彼の心を支配しているだろう事は、容易に想像が付く。
「そ、そんな、う…うそ…ですよ…ね…?クラシス…にい…さま…」
クラシスが言い放つその言葉に、リレアの心は激しく動揺する。
動揺から来る身体の変調によって、軽い耳鳴りと共に、血の気が一気に引き、足元が覚束ない。
喩えるなら、砂浜の波打ち際に、素足で立っている様な感覚に近く、何時足元を掬われ、崩れ落ちるのか、
と言った、漠然たる不安が、彼女の胸中へと飛来し、巣食う。
「僕は、リレアの前で嘘なんか、絶対に付かないよ?」
「疑うなんて酷いなぁ…」と後から付け足して、屈託のない笑みを浮かべれば、クラシスが答える。
「わ…私は、そんな言葉、信じません…!」
珍しく声を荒げ、リレアが反論を示す。
虚偽一切が判らぬ中、クラシスの語る事柄が余りにも重く、リレアは、中々その事を信じられないでいた。
「本当かどうか、僕の姿をきちんと見れば、直ぐに判ると思うけど?」
含み笑いを浮かべたクラシスが、リレアに向かい、自信たっぷりにそう、放言する。
「………」
リレアは、半ば、祈る様な思いで、集落に住む人達の安否を願うと、真実かどうかを確認する為に、
恐る恐るクラシスの容貌を、その瞳に映す。
「…これで、信じてもらえたかな?」
リレアを見詰め、溜息を吐き捨て、クラシスは言いのける。
確かに彼の纏う白い外套には、どうやら剣を拭った際に付いた返り血らしい、赤黒い染みの様なモノが、
あちらこちらに、べっとりとこびり付いており、リレアが無い知恵を絞り、幾ら考えても、最終的にはクラシスの供述を、
裏付ける結果に合点が行き、集約されてしまう。

494:かくれんぼ 8/16
11/04/09 01:18:56.39 W88Iud0+
「う…うそ…嘘…そんなの、そんな事信じたくないです…!」
リレアはクラシスを見詰めれば、ありったけの声量で叫ぶ。
心の中では、即時に、両親や集落の皆の安否等、様々な思いが錯綜するが、思考が中々、追い付いて来ない。
「未だ疑うんなら、剣も見せようか…?」
少しむっとした表情で、クラシスは、そう言い返すと、腰に差すバスタード・ソードを、得意気に鞘から、抜く。
抜く際にシャキンと言う、小気味の良い音が、辺りに響いた。
次に、クラシスは、簡単に拭取ってはいるが、人の流す赤黒いソレと、脂の入り混じったモノが浮く、
剣身をリレアへと見せ付ける。
「…どう、これでも信じない?」
狩りを覚えたての獣が、初めての狩りを終え、戦利品を皆に褒めて欲しくて、
見せびらかす様な…そんな自信に満ち溢れ、期待で顔を綻ばせた、クラシスが、言う。

リレアは、怖い気持ちを押し殺し、恐る恐るその剣を凝視すると、握りや、鍔の部分にも、
多少ではあるが、入り混じるモノが、こびり付き、飛散しているのが確認出来た。

「い…いや…いや…いやあぁぁぁっ!」
襲い来る現実と感情とのズレにより、半狂乱になって、リレアは頭を過振りすれば、よろよろと一、二歩程後ずさる。
上半身を支える腰は、その場で抜ける様に力を失い、そのままの格好で、ずるずるへたり込んでしまう。
「来ないで…来ないでえぇぇっ!や…やだぁ…っ」
儘ならない身体を引き摺らんが如く、元来余り無いであろう、腕の力を必死に使い、
リレアはクラシスとの距離を取ろうと、尚も逃げ惑う。
逃げ惑い、引き摺る手足に、無数の擦り傷が刻まれて行くが、今の彼女には、その痛覚さえ感じない。
先程摂取した水分しか含まぬ、胃の中からは、熱いモノが徐々に込み上げて来て、その都度胸を焼き焦がす。
吐き気に苛まれながらも、クラシスの外套を染め上げている、赤黒いソレに、剣に浮かんだ脂の中に、
自分の友人や、知り合いのモノが、どれ位、混じっているのだろう…?と、リレアは反射的に想像してしまう。
余り熟考に沈みたくは無いが、その中には、自分の両親のモノやら、クラシスの祖父のモノが含まれているかも知れないと、
ほんの少しでも思惟するだけで、彼女の精神は、どうにかなってしまいそうだった。
「あははっ…変なリレア」
そこら辺に剣を投げ捨てれば、視線を辺りに漂わせ、けらけらと、クラシスは愉しそうに笑う。
「やっ…こ、来ないでえぇぇぇっ…」
慄然とした表情で、リレアは、逃げ道を探す。
だが、背後へと存在する樹に行く手を阻まれ、逃げる事は叶わない。
「全てキミの為にやった事なのに、どうしてそんな事言うの…?」
訳が判らないと言った面持ちで、クラシスは、リレアを視線で捉え、一歩又一歩とにじり寄り、次第に距離を詰めて行く。
「僕はね…リレア、全ての汚い物から、唯、キミを護りたいんだ…」
光を宿さぬ瞳を漂わせ、クラシスは呟く。
「だからって…こんな事、許されて良い筈がないです…!」
クラシスに対する怒りと、憎しみ、そして言い知れぬ悲哀に似た感情が、綯い交ぜになって入り混じり、
リレアの精神は、動揺を隠せない。
「何でそんな酷い事をしても、クラシス兄様は、平気でいられるんですか…!!」
胸の奥に宿る、遣る瀬無い思いが、リレアの心を支配する。
上ずる声で、リレアは、精一杯の罵声をクラシスへと浴びせた。

495:かくれんぼ 9/16
11/04/09 01:19:25.97 W88Iud0+
「リレアだって、心の底では、それを望んでいた筈だよ…」
心外だと言わんばかりの表情を浮かべ、追い付いたリレアの前へ立ちはだかれば、一瞬、仄暗い表情を浮かべて見下ろし、
「だって、リレアは、僕の愛を試すために…」
しゃがみ込んで、リレアの頬へと優しく触れる。
「僕に、こうして全てを『壊して』欲しくて、僕の前から姿を消した…そうだよね?」
と、間髪入れずに、慈愛に満ちた笑みを浮かべ、クラシスが甘ったるく囁く。
「そ…そんな事…私、望んで…っ!」
そこまで言って、リレアは、はっと気付く。
「もしかして…わ…私が、逃げた…所為、なんです…か…?」
声を搾り出す様にして、続けてリレアが呟く…。
クラシスは、その問いに、よく出来ましたと、にっこり笑って答え、嬉しそうに軽く頷く。
知りたくなかった答えを、知ってしまったリレアは頭を抱え、ぎゅっと強く瞳を閉じる。
閉じた途端に、その瞳から大粒の涙が一筋、零れ落ちた。
「あっ…あ…ああああああぁぁぁぁぁぁっ…」
声が嗄れそうな程、泣き崩れながら、リレアは、心の中で、
(お父様、お母様、皆…ごめんなさい…)
何度も何度も繰り返し、届かぬ謝罪の意を口にする。
(全部、全部、私の所為…私がクラシス兄様を、拒絶したから…)
そう再び心の中で呟けば、尚も、リレアは思い悩む。
(私っ…私…逃げなければ良かった…)
自分の引き起こした、短絡的な行動の所為で、両親や、罪の無い集落の皆が、無慈悲にも、
死門に追い遣られてしまったと言う、自責の念が、リレアを蝕んで、追い立て続けた。
(そうすれば、誰も死なずに済んだのに…)
悔しい思いが、後から後から溢れて来て、その都度、彼女の瞳を涙で曇らせる。
そんな状態のリレアを、クラシスは、人を殺めたその腕(かいな)へと、再び抱けば、涙を指で優しく拭ってやり、
「優しいね…リレアは、罪を感じることなんて、何も無いのに」
微笑んで、思っている事を、包み隠さず切言した。
「悪いのは、リレアの苦しみを理解しなかった、あいつ等の方なんだから…」
さも、『自分だけはリレアの苦しみを、全てを解っているんだ』と言った面持ちで、声色で、
クラシスは台詞を吐き捨てる。
「…な…なん…で…どうしてそんな…」
リレアはすっかりと憔悴しきり、弱々しく声を落とせば、怯えた表情で、彼を覗き込む。
「何の罪も無い小さな子供だって、居た筈なのに…」
心を蝕む、施しようの無い悲しみが、痛みとなってリレアを内側から苛んだ。
「それに、集落の皆が皆、悪いって訳じゃ…」
泣き腫らした眼で、クラシスを見詰め、呟くとリレアは直ぐに項垂れた。
「何でリレアは、そんなに、あいつ等の事を気に掛けるの…?」
リレアの台詞に、ざわり…とクラシスの心が、波風を立てる。
「キミの能力に寄生し暴利を貪る、只のろくでなしに成り下がった、あいつ等とは違って」
理解しがたいと言った表情で、クラシスは、矢継ぎ早に、尚も、荒々しく言葉を紡ぐ。
「あいつ等に虐げられた、謂わば犠牲者…なんだよ?キミは…」
次に、リレアの肩を強く掴んで揺さぶれば、クラシスが吼え立てる。
「それを折角、僕が救ってあげたのに…」
強く掴まれて、彼女の柔らかな肌に、彼の爪が強く食い込む。

496:かくれんぼ 10/16
11/04/09 01:20:02.64 W88Iud0+
リレアが逃げ出した当時、翌朝には、集落では捜索隊が既に結成されていた。
貴重な金蔓が消えたのだから、皆は躍起になって、探し出そうとしていたのだが、
何故かクラシスは、それに加わろうとはしなかった。
彼女の信頼と、愛を得るのは自分だけで良いし、もし、万が一にでも、他の連中が自分より先に、
彼女を見付けてしまったら…。
そんな恐怖と不安が、彼の精神を悪戯に逆撫で、犯す。
それを全て薙ぎ払う為に、彼は、彼女に媚び諂い、彼女の優しさを集団で貪る、気に食わない集落の連中を、
血祭りに上げる形で、全て排除してきた。
あんなに尊敬していた祖父を、虫けらの如く簡単に殺め、許しを請う彼女の両親をも手に掛けた。
その手は血に塗れ、どんなに洗い流したとしても、怨念が染み付き、綺麗になる事は決して無いだろう。

「何で?何でなんだ」
その表情は、狂気そのもので、どう見ても気が触れているのではないか?としか言い様が無く、
クラシスのそんな様子に、リレアは更に竦み上がり、痛みに耐える。
「クラシ…ス…にい…さま、い…痛い…っ…」
痛みに耐えかね、リレアが苦悶する。
苦悶する、彼女に気付かず、クラシスは、思うが侭爪を食い込ませ、リレアの肩口に傷痕を刻む。
薄っすらと血の滲んだ肩口には、半月の形をした紅い印が残り、当分消えそうも無い。
「解らない…僕には解らないよ…」
虚ろな視線を漂わせ、クラシスは、頭を抱え、独り言の様に呟きを漏らす。
「リレアをあんな狭い霊廟に閉じ込め、苦しめた奴等なのに」
クラシスは、徐々に声を荒げ、そこまで早口で語ると、
「それに、あいつ等全員、キミの事を、金儲けの道具としてしか見てなかったんだよ!」
少しでも解って貰う為に言葉を荒げ、捲し立てれば、彼は尚も、リレアへと詰め寄った。
「死んで当然…だって、リレアは思わないのか!?」
両の拳を強く握り締めると、尚も、自分の言っている事が正論だと主張する。
主張すればする程、胸の中に、もやもやとする不快な感覚が巣を作り、やがてクラシスを苛む。
彼自身、少しでも早く、この感覚を、唾棄したかったし、折角彼女の為に全て壊してきたのに、
肝心のリレアが、自分を褒めてくれない事に対する不満で、無性に腹を立てる。
「でも…それでも…です…っ」
詰め寄られた事に、恐怖を感じながらも、今度は、クラシスを真剣に見詰め、
「それでも、どんな事があっても」
大きく息を吸って、
「簡単に人を傷付け、殺しても良いと言う理由には、絶対になりませんっ!」
リレアが声を荒げ、啖呵を切る。
「それに、私が逃げた所為と言われるのなら」
鬱積した思いが爆発したのか、尚も、捲くし立てる様に、リレアは喋り続けた。
「何も告げずに逃げ出してしまった私にも、責任があります」
そして、クラシスを毅然とした態度で、見詰め、そこまで言い切る。

497:かくれんぼ 11/16
11/04/09 01:21:06.36 W88Iud0+
「そう…そうだ、そうだよ…勝手に逃げ出した、リレアが悪いんだ…」
クラシスは、仄暗い感情が篭る瞳を、辺りに漂わせればリレアを見据え、
「僕は唯、キミと一緒に居たいだけなのに…」
独り言の様に、ぶつぶつと呟くと、
「何も言わずに姿を消して、僕はとても、傷付いたんだよ」
自らの精神を追い詰め、悪戯に精神を掻き乱す。
「キミに傷付けられ抉られた、僕のこの心が痛みを訴え、啼くんだ」
一歩、又一歩と彼女に迫る。
クラシスに迫られ、リレアはじりじりと逃げ場を探す…。
…が、背中へと樹が当たり、完全に逃げ場を失ってしまう。
(どうしよう…もう、逃げられない…)
リレアの胸中は、焦りの色を隠せない。
心臓は、早鐘を打ち続け、冷や汗が背筋を凍らせる。
「痛い、痛いって…」
彼は、そう言いつつ、リレアが逃げない様に、覆い被さる形で一度樹へと両手を付く。
「いっ…いや…放し…てっ」
そして、嫌がるリレアの手を無理矢理取れば、自らの心臓へ取ったその手を宛がい、
「僕の受けた心の痛みが、キミに解るかい?」
悲痛な面持ちをし、自らが受けた心の傷を、少しでも解ってもらう為に声を荒げる。
「解りません…解る筈が無いです…」
リレアは、自分の纏う僧衣の一部を握り締めて、小声で呟く。
「確かに、真実を知った時は、愕然としましたし、とても悲しかった…」
そこまで語ると、引き裂かれる様な痛みが、リレアの心を支配する。
「でも、それでも、誰かを傷付け殺すなんて…やっぱり、間違ってます!」
瞳に涙を浮かべて、クラシスを真正面から見据え、真剣な表情で、言葉を紡ぐ。
「だって、これは私個人の問題で」
声色を下げれば、ゆっくりと搾り出す様に、リレアは語りだす。
「本来だったら、私が一人で解決しなくちゃいけない事…だったんです!」
(そうだ…クラシス兄様の事も含めて、全部一人で立ち向かわなくちゃいけなかったのに…)
自らに言い聞かせるが如く、自分の犯してしまったであろう過ちを曝け出し、
「それを、全て放棄して私は一人、逃げ出してしまった…」
(その所為で皆は…)
瞳に、後悔の念を宿して俯けば、涙を零し、自らの顔を、両手で覆い隠して、
「だから、責められるべきは、自分であって、決して集落の皆じゃないんです…」
(ごめんなさい…本当に…ごめんなさい…)
リレアは、同時に心で慟哭すれば、そう言葉を詰まらせる。
どんなに酷い仕打ちを受けようとも、結局自分は故郷に居た皆の事を、憎悪の感情を向ける程、
嫌いにはなれないのだと、リレアは後悔と共に、こうして思い知る事となった。
「…ぜだ…なぜ、何故、庇う…?」
だが、彼女の告解の言葉を聞いても、彼の嘆きや苛立ちは、一向に収まらず、
寧ろ悪化の一歩を辿っており、傍から見れば、その姿はまるで、母親の言うことを聞かない、
駄々っ子の様にも見えてしまう。
「どうして…僕の愛が伝わらない…」
中々伝わらない想いに、小声で呟いて、リレアを見詰めれば、
「どうして、どうして、解ってくれないんだ!?」
次にそう、煩い程、クラシスが捲し立てる。

498:かくれんぼ 12/16
11/04/09 01:21:40.90 W88Iud0+
(ああ、面白くない、面白くない、面白くない…)
リレアとの度重なる会話によって、クラシスの心の中には、どす黒い闇の様なモノだけが溜まっていく。
彼女が、集落の皆を庇い立てする様な態度が、クラシスには癪に障って仕方が無いのだ。
「わ…解りません…!」
クラシスを細腕で、押し退けて拒み、リレアが放言する。
「私の話を、まともに聴いて頂けない、クラシス兄様の事なんて、解りたくもありません!」
会話は、平行線を辿り、これ以上の解決など望めそうに無いと、リレアは、悟る。

「おかしいな…僕のリレアは、そんな事絶対に言わない筈…なんだけど」
(ここまで言っても、何故、あいつ等を庇うんだ…?)
(もしや、あいつ等に弱みでも握られてて…)
(いや、その可能性は薄いな…)
(そういう事が起こらないように、僕がずっと護ってきたんだから)
(それに、あいつ等は、僕が殺してきたんだから、今更何の問題も無い筈だし…)
様々な思考が、クラシスの脳裏を掠める。
「ああ…そうか、そうなんだ」
その思考が、自分の中で合点したのか、そこまで言うと、
「あいつ等に誑かされて、余計な事を吹き込まれる内に、心が穢されてしまったんだね…」
心半ばで命を落とした、集落の皆へと、憎しみと蔑みの感情を込めた、そんな表情を一瞬浮かべた後、
「だからそんな事を言うんだね…」
悲哀に満ちた痛々しい顔をし、クラシスは、リレアをじっと見詰める。
「な…何を…?」
リレアは、クラシスの語る言葉の意味が良く解らない。
いや…解らない方が良いと、心の中にある何かが、強く警告を発する。
「でも、大丈夫だよ」
そう言って、懐から何かを弄れば、リレアにソレを見せ付ける。
クラシスが、懐から取り出した、ソレは、玻璃細工の小瓶…であった。
細やかな宝飾が施されている、その小瓶の中には、紫色した液体が、並々と詰まっており、
見た目にも、禍々しい雰囲気が漂う。
「これで、リレアの― に張り付いた穢れを、取り除いてあげるからね…?」
まるで、この後の展開を、示唆するかのように、ざあぁ…と一斉に木々がざわめく。
クラシスの言う、『― に張り付いた』の部分が良く聞き取れず、リレアは困惑を隠せない。
「え…?何て…」
リレアは、その台詞が気になり、聞き返そうとする。
「………」
だが、クラシスは答えない。
答えの代わりに、硝子の蓋を開け中身を一気に呷ると、瓶を辺りに投げ捨て、リレアの腕を付かんで引き寄せる。
投げ捨てられた瓶は、近くの岩へと当たって、見るも無残に砕け散った。
リレアは、その砕け散る玻璃の小瓶と、自分とを一瞬重ね合わせてしまい、無意識に身体を硬直させる。
「やっ…クラシス兄…様…っ!」
そして、無理矢理唇を重ね合わせると、口に含んだ液体を、リレアの口膣の中へと、ゆっくり移していった。

499:かくれんぼ 13/16
11/04/09 01:22:12.67 W88Iud0+
「んっ…」
口付けされ、リレアは、一瞬大きく目を見開く。
なるべく口を閉ざそうと、抵抗を試みるが、彼がそれを許さない。
巧みに滑り込んだクラシスの舌が、リレアの舌を捕らえてなぞれば、互いの唾液と、液体が、口の中で混ざり合う。
「ん…ふっ…」
リレアは、その刺激に戦慄しながら、何とかしようと色々試みるが、頭を抱える様に、押さえつけられていては、
逃げる事さえ敵わない。
これを飲んだら絶対に駄目だ…と、リレアの脳は警告する。
だが、息もさせては貰えない程に、強く口膣内を犯されては、それも儘ならず、酸素を得るためには、
その液体を全て吐き出すか、不本意だが飲み込むしか、他の術はない。
(嫌…絶対に嫌…絶対に飲みたくない…)
リレアは、瞳に涙を湛え、心で叫びながら、只管苦しみに耐え続けた。
「んぅっ…」
唇より、互いの唾液が入り混じるモノが溢れて、端から零れ落ちる。

このまま全部、毀れ落ちて流れて行って欲しい…と、リレアは切に願う。
そうすれば、全て飲み込まなくて済むし、もし、飲み込んだとしても、軽度の被害で済むだろう。
この薬の効能が判らない今、リレアに出来る精一杯の防衛策は、これしかない。

「駄目だよ…ちゃんと全部、飲んでくれなきゃ」
そんなリレアを見透かしたのか、唇を解放させ、嘲笑うかの様に、クラシスが囁く。
「まあ、無理に飲みたくなければ、それでも良いけど」
リレアの背中には、何時の間にか、小型の短剣らしきものが、抜き身の状態であてられており、
彼女の体中に緊張が走る。
「でも、飲まなければ…解ってるよね?」
目を細め、口元を歪ませ、クラシスはあからさまにリレアを脅す。
溢れ出る、嫌な冷や汗が、不快な感覚を纏って、リレアの背筋を伝い落ちる。
「これは、キミの為…なんだから」
薄く笑い、クラシスは再び耳元で囁く。
これでもう、吐き出すと言う選択は、完全にリレアの中から排除される事となった。
飲まないでクラシスに刺されるか、飲んでどうにかなるしかないと言う、二つに一つの選択を、
リレアは今、選ばねばならない。
(嫌…絶対飲みたくない…)
(でも、飲まなかったら…)
(脅しに屈して、飲むくらいなら、ここで潔く、クラシス兄様に刺された方が…)
(それで、命を散らせてしまった皆の魂が、少しでも安らげるなら、その方が良いよね)
色々な事が、脳裏を掠めていくが、リレアの意思は、固かった。
自分の意思を枉げてまで、クラシスに屈したくは無い気持ちが、僅かに勝る。
(父様、母様…待っていて下さいね…もう直ぐ、お側に参りますから…)
リレアは、そう心で呟くと、瞳を閉じて、死門に立つ覚悟を決めた。

―― だが、前者の選択を許す程、クラシスは甘く無い。

「飲むのが、怖いんだね…だったら…」
新緑に似た、リレアの髪を強く掴むと、無理矢理後ろへと引っ張る。
「僕が飲ませてあげる…」
意図も簡単に引っ張られて、顔だけが天を仰ぐ形にさせられた、リレアの瞳に薄っすらと、痛みの涙が浮かぶ。
選択の余地さえ与えては貰えない事実が、更に彼女を苦しめる。
それ程迄に、クラシスの心は、余裕が無く、他に何を仕出かすか判らない程、追い詰められていたのだ。

500:かくれんぼ 14/16
11/04/09 01:22:43.13 W88Iud0+
「ねえ、リレア、知ってた?」
クラシスは、薄く笑ってリレアの咽喉元へと、自らの人差し指を、頤を通じ、鎖骨迄軽く這わせれば、
「こうすると、ほら…自然に咽喉奥へと入っていくんだよ…」
そう、嬉しそうに耳元で囁く。
「不思議…だよね」
咽喉元触れられて、ふるりとリレアが震えた。
クラシスの冷たい指先が、彼女の体温を奪っていく。
「………!」
与えられたその感覚に、リレアは軽い戦慄を覚える。
確かにクラシスの言うとおり、指を這わせる事により、自らの意思とは関係なく、咽頭が僅かに跳ねて鳴り、
薬の入り混じった唾液が食道を通り、胃の中へと落ちて行く、そんな感触が、
僅かな違和感と共に、咽喉奥を駆け抜ける。
飲み終えて、薬の持つ、仄かに甘く、苦い味が、舌を通じ、次第にリレアの鼻から抜け落ちた。
「うん…ちゃんと飲めたね」
良く出来ましたと、語尾に付け足して、クラシスは、掴んでいた髪を解放させ、優しくリレアの頭を撫でては、
熱っぽく見詰める。
指からさらさらと流れ落ちる、その感触がクラシスには堪らない。
「ごほっ…ごほっ…」
無理に飲まされ、二~三度、喘ぎ、リレアが強く咳き込めば、咽喉の奥に僅かな痛みが残り、
瞳には、息苦しさ故の涙がじわりと浮かぶ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
肺に入る空気が、ゆっくり満たされると、呼吸を整える為、リレアは、一つ二つと大きく息を吐く。

「なっ…なに…この…薬…変にあま…い!?」
薬が持つ余りの甘さに吃驚したのか、やっと呼吸の落ち着いたリレアが呟いた。
じわり、じわりと包む、妙な甘ったるさが、次第にリレアの体内に染み渡る。
飲まされてから数刻も経たないうちに、軽い眩暈の後、くらり…とリレアがよろめき、その場に蹲る。
身体がふらつき、立っている事さえ、今のリレアには、儘ならない。
「え…!?何…?…のど…が…あつ…いっ…」
咽喉を覆う、その甘さは、時と共にやがて牙を剥き、リレアを内側から、攻撃し始める。
じわじわと襲い来る甘い熱に焼かれ、犯された患部が感覚を失っていく。
(あ…あつ…いっ…咽喉が熱くて…それに意識…も…)
胸の鼓動が早くなり、身体中から、じっとりと嫌な汗が滲み出す。
咽喉奥の焼け付く様な痺れと共に、強烈な睡魔がリレアを襲った。
「………ぁぅ…っ…ぅぅぁぁぁっ…」
(…く、く…るしっ…いっ…だ…誰かたすけて…お願いだから、誰か水を…)
咽喉から、漏れ出る音が、声としての機能を、殆ど失っている事へと気付くのに、然程の時間は有さない。
ひゅうひゅうと、空気だけが、咽喉奥を捕らえ、悪戯に通り過ぎていく。
リレアの声帯はその機能を失い、新たに声を紡ぐ事すら出来なくなってしまったのだ。
「…ぁ…ぅぁぁぁっ…!」
(嘘…こ…声が…出ない…!)
リレアは、その事実に愕然となりながらも、咽喉を掻き毟る仕草をし、必死に届かない助けを呼び続ける。

501:かくれんぼ 15/16
11/04/09 01:29:53.54 W88Iud0+
「ぅぅっ…ぁぁぁぁっ…っぁぁ…」
(…どう…して…)
どくん…どくん…と脈打つ胸の鼓動は、どうやっても、焦りしか生まず、更にリレアを追い詰める結果に結びつく。
「…効いてきた様だね」
飲ませた薬が、効果を発揮したのがそんなに嬉しいのか、リレアを見据え、クラシスは微笑む。
「ぁぁっ…ぁっ…ぅぁぁぁっ」
遠くなる意識の中、リレアは、必死に、精神を建て直し、打開策を模索する。
だが、幾重にも襲い来る睡魔が、それを阻害する様、邪魔をし、逆に彼女を追い詰めた。
「苦しい…?でも、これで大丈夫…」
耳元で、クラシスが囁く。
「大丈夫。これで、キミは救われるし、もう、穢れない」
その囁きは、悪魔の如く甘美で、苦しみに喘ぐリレアを更に、絶望へと追いやる。
「本当…こういう時、リレア…キミの能力…と言うか、体質は不便だよね…」
ふふっと笑い、苦しみに喘ぐ、リレアを見詰め、優しい声色で言葉を紡ぐと、
「キミは、他人であればどんな病気や怪我も、その体液で簡単に癒し、穢れを祓う事が出来るけど」
リレアの能力を自分の事の様に、得意気になって、嬉しそうに話す。
「肝心の自分の事は全く、癒せないし、祓う事もできないんだからさ」
(だからこそ、ほっとけないし、僕が、しっかりと護ってあげなきゃいけないんだけどね…)
そう心で付けたし、全く…と言った面持ちで、
「いきなり声が出なくなって、今は未だ不安かも知れないけど…」
頭をあやす様に撫で、クラシスが囁く。
「穢れを完全に取り除いたら、又話せるようにしてあげるから」
今度は先程よりも、簡素な作りの小瓶を懐から取り出し、リレアへと見せ付ける。
液体の色は、薄い水色をしており、不思議と禍々しさは感じない。
「…この中身が、何か…なんて、言わなくても解っているよね?」
クラシスは小瓶に軽く口付けを落し、リレアを横目でちらりと見る。
「………!?」
(も…しかして…)
その中身が、解毒剤である事に気付くのに、リレアは然程の時間を有さなかった。
確証も無ければ断定も出来ないが、声を取り戻せるかも知れないと言う、淡い希望が、心を駆け巡る。
「そう…リレアの考えている通りの、モノ…だよ?」
クラシスは、僅かな希望の宿る、リレアの表情の変化を、決して見逃さない。
そう言って、小瓶を玩具の様に弄り、その様をリレアへと見せ付ける。
途中態と、蓋を開け、中身を全部零そうとしたり、掌から落とす仕草をし(実際には零したり、落としはしなかったが)、
彼女の注意を引く事も、忘れはしない。
「ぅ…ぁぁっ…っ…」
(ああ…クラシス兄様やめてっ…そんな事したら薬が…)
リレアは、咽喉奥にじわりと染み渡る、甘い熱に侵されながら、苦悶の表情を浮かべ、呟く。
今は、一刻も早く、焼け付き、痺れる咽喉と強烈に襲い来るこの眠気を、彼女自身どうにかしたかった。
呻きながらも、その小瓶を手に入れようと、必死に手を伸ばす。
「この薬が欲しい…?」
が、伸ばした手はクラシスによって意図も簡単に阻まれ、後もう少しの所で届かない。
「駄目だよ…今は、未だあげない」
クラシスは、その薬を大事に懐へと仕舞うと、愉しそうに相好を崩し、リレアを見詰める。

502:かくれんぼ 16/16
11/04/09 01:30:34.16 W88Iud0+
「だから…」
リレアへと言い聞かせる様に、台詞を奏でると、
「この薬を手に入れたければ…これ以上無駄な事なんて考えないで…」
今度は、ふわりと軽く、優しく抱き締め、
「良い子で、大人しくしてなくちゃ…ね?」
彼女の耳元へと甘く、囁きを落とす。
「………!!」
告げられ、リレアは、瞳を一度大きく見開く。
彼の言っている意味を一瞬で理解し、精神が暗闇に落ちて行く様な感覚が、リレアを襲う。

囁かれたソレは、クラシスからの忠告と取引きを意味していた。
裏を返せば、無駄な抵抗はせず、クラシスに従順であれば、リレアに声を返しても良いと言う、
強腕的な提言が、この発言の主旨であり、この条件を飲むも飲まないも、全ては、彼女の意思次第…なのだ。
即ち、声を取り戻したければ、彼に傅き、愛を捧げ、情けを請うしか他に手は無い。

所謂、リレアを屈服させる一つの手段として、クラシスは、彼女自身の声を、人質にする事を、無意識に思い付く。
一時的にとは言え、声を潰してしまいさえすれば、他に助けを呼ぶ事は、難しくなるだろうし、
自分に対しての、否定的な言葉を、聴かなくて済むだろうと、これも無意識下ではあるが、考えていた。

―― 結果として、クラシスの目論みは、こうして成功を収めるに至る。

「…ぅぁぁ…ぁぁぅ…」
(駄目…駄目…駄目…ここで気を失っては…)
リレアは、襲い来る闇に閉ざされ、薄れ行く意識の中、涙で歪んだ視線の先へと存在する、クラシスを、
恐怖に引き攣った表情で見詰める。
「ぅ…ぁ…」
だが、ここで、遂に、リレアが限界を迎える事となった。
瞼が重くなり、身体が中々言う事を利いてはくれない。
クラシスの纏う外套を掴んだ手が緩み、空を切って徐々に、ずり落ちる。
力が抜け落ちていく感覚が、リレアを襲い、クラシスの腕の中で、今迄必死に持ち堪えてきた、
その意識を、一瞬にして、カクリと手放す。
クラシスは、崩れ落ちる彼女を、自らの腕で軽々と支え、
「これで、やっと全ての災厄から、キミを護ってあげられる…」
(これで、リレアは、僕のモノだ…他の誰にも渡しはしない)
同時に胸中にも呟きを落とし、リレアの頬に触れ、自らの腕の中で、眠ってしまった彼女を、
唯、狂おしい程に、熱い眼差しを向ければ、一度口付けを落とし、病的な笑みを浮かべた。

そして、そのまま、壊れ物を扱う様な手付きで、優しく横抱きにリレアを抱くと、
「おやすみ…リレア、良い夢を」
本人に届かない囁きを耳元に落とし、その侭森の奥へと消えて行く。

この後、目覚めたリレアを待ち受けるのは、無限の愛が燦々と降り注ぐ狂った天国か、暴力によって虐げられる地獄か…。
それは、意識を手放してしまった、今のリレア自身には判らない事であった。

~END~

503:名無しさん@ピンキー
11/04/09 01:31:05.98 W88Iud0+
今回の投下は以上になります。
ここまで読んでくださり有難う御座いました。
では神職人の降臨を待ちつつ再びROMに戻ります。

504:名無しさん@ピンキー
11/04/09 01:41:40.42 d/XkKKpO
>>503
GJ!!
リレアたんの聖女っぷりが
クラシス兄さんのヤンデレっぷりといい感じに合わさって萌える
続き待ってます

505:名無しさん@ピンキー
11/04/09 03:42:28.07 IuoBk7rG
クラシス兄様マジ酷いな(褒め言葉
リレアタンはペロペロしたいw
GJでした!!

506:名無しさん@ピンキー
11/04/09 12:34:44.13 Woc5b+vh
クラシス兄様マジこえぇぇぇぇぇ!!!!

乙、そしてGJ!

507:名無しさん@ピンキー
11/04/09 15:57:36.02 76Q3J4je
ヒャッハー!神の新作だァーッ
クラシス兄さんの言動の端々から滲み出る鬼畜の片鱗がシビれる憧れるッ
頑張れリレアさん!なるべく正気を保ってたっぷり可愛がられて下さいw

508:名無しさん@ピンキー
11/04/10 17:41:10.62 N4bA/Z2N
待ってた!!GJ!!
愛溢れる兄さんに折檻されるリレアが早く見たいww

509: 忍法帖【Lv=2,xxxP】
11/04/11 01:00:42.89 HJKlfjxM
クラシス兄様に折檻されるリレアたんか……股間が熱くなるな……ゴクリ

510:名無しさん@ピンキー
11/04/12 17:59:55.13 nGUfEui7
弟子の女の子とかキオたんの続きとか新作とかも待ってる

511:名無しさん@ピンキー
11/04/17 19:13:33.69 FTYQiAwO
ストーカー監禁系男子の弟とごく普通に弟を可愛がっている姉の話
今回はエロありませんがいずれ近親相姦・暴力表現等バンバン出てくる予定
前半姉視点後半弟視点
無理そうだったら『ご褒美』でNGお願いします

512:ご褒美 姉 1/3
11/04/17 19:15:56.88 FTYQiAwO
「お姉ちゃん、助けて」
八年ぶりに再会した弟が助けを求めてきたのは去年の冬のことだった。
両親は八年前に離婚し、父は弟を、母は私を引き取った。
キャリアウーマンの忙しい母との生活は大変なことも多かったけれど、
母は再婚もせず、男を作ることもなく、娘の私のことを大切にしてくれ、
大学に進学し、一人暮らしを始める私を快く送り出してくれた。
八年間父と弟とは一度も会わなかった。
そういう決まりだったから。連絡さえ取らなかった。

一方ある日突然私の前に現れ助けを求めてきた弟の八年間は私とは真逆だった。
家庭的とはいえない父は弟に金だけ渡し、家には寄り付かなかった。
突然帰ってきたかと思えば、再婚相手となった若い女性を連れてきて、家に住まわせた。
それでも弟は頑張って、父と新しく母となった女性と仲良くしようとしたが、
父と義母との間に生まれた子供の誕生と、思春期を迎えた弟を父が持て余すようになり、
弟は居場所を無くし、家の中で孤立していった。

そこで弟が助けを求めてきたのは姉である私だった。
目の前に私よりも背の高くなった中学三年生の弟が現れた時は弟の成長に戸惑ったけれど
弟の話を聞くにつれ、やはり成長しても弟は私の弟のままで。
五つ年下の弟は私が守らなければ。
そんな強い気持ちで父との話し合いに臨み、結果私は春から高校に進学した弟と暮らしている。

513:ご褒美 姉 2/3
11/04/17 19:19:53.45 FTYQiAwO
梅雨もあけ、大学は夏休みに入り、弟が通う高校も明日から夏休みに入る。
「ただいま」
玄関を開けると家の奥からお味噌汁の匂いがこちらまで漂ってくる。
パンプスを脱いで、台所に顔を出すと、弟が眉を吊り上げて私を睨む。
「お姉ちゃん遅い!痴漢に襲われたらどうするんだよ」
「大丈夫だよ。今が一番日が長いときなんだから。ご飯とお味噌汁と煮物と魚?
 お惣菜買ってきたけど、これだけあったらいらなかったね」
弟と同居を始めてから弟は自発的に家事をしてくれている。
本当は弟にもっと甘えてほしいのだけれど、弟に怒られることの方が多く、姉として情けない。

夕食後、できた弟は通知表を私に差し出してきた。
期末テストの順位が良かったことも知っているので、私は特に心配することなく通知表を開いた。
5、5、5、5、5―。
良いとは知っていたけどほとんどオール5の通知表に目を丸くした。
「すごい。頑張ったね」
家庭環境が変わって、家事も頑張っていたのに、勉強も手を抜かなかった弟を心からすごいと思った。
弟は年相応の無邪気な笑顔を日焼けした顔に浮かべる。16歳といっても笑った顔は幼い。

514:ご褒美 姉 3/3
11/04/17 19:22:12.32 FTYQiAwO
「お姉ちゃん。俺、頑張ったよね?」
「もちろん。私が一番隼人が頑張ってたこと知ってるよ」
「あのさ、頑張った俺にご褒美くれる?」
「うん。いいよ。何が欲しい?携帯古いって言ってたから新しいの買ってあげようか?
 それともご飯食べに行こうか?焼肉でもしゃぶしゃぶでもお寿司でも、遠慮なく言ってみな」
弟はにこにこと笑って「明日」と答える。
「明日になったらお姉ちゃんに言うよ」
欲しいものがたくさんあるのかしら。
弟は今まで我侭が言えない環境にいたから、その分私が聞いてあげよう。
弟の頼みならどんな高いものも買ってあげよう。
なんて暢気なことを考えながら床についた。

515:ご褒美 弟 1/3
11/04/17 19:23:49.57 FTYQiAwO
八年前の秋、母と姉は去っていった。
どんなに俺が「一緒に連れて行ってくれ」と叫んでも、二人は一度も振り向かずに、タクシーに乗り込んで、遠くに行ってしまった。
それからは父と俺、そして時々やってくる祖母との生活が始まった。
家には帰らない父、母への恨み言しか言わない祖母。
小学校の低学年までは家に帰るのが辛くて仕方なかった。
確かに父と母が離婚する以前も両親は帰ってくるのが遅かった。
けれども家には母が作っていってくれたご飯と姉がいた。
お姉ちゃん。
そう、生まれてからずっと俺の側にはお姉ちゃんがいてくれた。
一緒の保育園に通い、小学校に上がってからはお姉ちゃんが迎えに来てくれた。
お腹が空いたときにご飯を温めてくれたのはお姉ちゃん。
熱を出したときに看病してくれたのもお姉ちゃん。
思い出の写真を撮ってくれたのもお姉ちゃん。
父もいらない。母もいらない。
だけどお姉ちゃんは俺には必要だった。
でも母にもお姉ちゃんにも会ってはいけないと俺は周りの大人たちにきつく言い聞かせられてきた。
お姉ちゃんに会うことも、連絡も取ることもできずに、お姉ちゃんに会いたいという気持ちだけが募っていった。

516:ご褒美 弟 2/3
11/04/17 19:24:58.99 FTYQiAwO
中学に入学した頃、父は若い女性と再婚した。
その頃から俺は頻繁に友達の家に泊まるようになり、その日も寝床を求めて久しぶりに母方の祖父母の家を訪れた。
母方の祖父母は温かく俺を迎え入れ、現在の母とお姉ちゃんの様子を教えてくれ、写真まで見せてくれた。
中学校に入学したお姉ちゃん、陸上部で大会に出たときのお姉ちゃん、中学を卒業したお姉ちゃん、高校に入学したお姉ちゃん。
年を重ねるごとにお姉ちゃんは活発で素直なところはそのままに女性らしくなっていく。
母に愛されて育っただろうお姉ちゃん。
同じ父と母から生まれたのに、こんなに俺達は境遇が違う。
お姉ちゃんだけずるい。
憎たらしい。
でも大好き。
月曜日には高校入学時の高校名からお姉ちゃんの高校を突き止めて、お姉ちゃんの高校の前でお姉ちゃんを待った。
下校する高校生の中からすらりと背の高いお姉ちゃんを見つけるのは簡単だった。
声をかけることはできなかった。
ただただお姉ちゃんの姿を目に焼き付けることに必死だった。
お姉ちゃんは高校三年生になったばかりだというのに週四日も予備校に通っていた。
予備校がない日もお友達とおしゃべりがてらコーヒーショップで参考書を開く。なんて勤勉なんだろう。
お母さんのようになりたいという夢に向かって一生懸命な男っ気が全くないお姉ちゃんを俺はいつも見守った。
隣の席に俺が座ってもお姉ちゃんは俺が弟だということに気がつかない。
そんな鈍感で、警戒心のないところも可愛くて。
お姉ちゃんは俺が守ってあげないと。

517:ご褒美 弟 3/3
11/04/17 19:26:21.70 FTYQiAwO
一年後、お姉ちゃんは大学に合格し一人暮らしを始めた。
女性の一人暮らしは危険だ。
高校の時よりもお姉ちゃんはお洒落になったからなおさらだ。
大学にも、サークルにも、バイト先にも男はいる。
さりげなく追い払ってはいるものの限界がある。
お姉ちゃんが誰とも接触しなければいいのに。
いや、もっといいのはお姉ちゃんが家から出なければいいのに。
ずっと俺の側にいればいいのに。
願ったところで、祈ったところで、叶うことがないことはそれまでの人生でわかりきっていた。
行動して、努力して、そうなるように仕向けなければ何も手に入らない。
思い立った日から俺は少しずつ少しずつ周りの状況を整えていった。
家の中で反抗的な態度で振る舞い、家族との溝を深め、お姉ちゃんに大学から程近い高校に通えるように勉強した。
最後に父との仲がどうしようもなくなった頃にお姉ちゃんに助けを求めた。
優しいお姉ちゃんならば俺を助けてくれる。現に助けてくれた。
アイツもお姉ちゃんに俺を押し付けた。
最終的にまんまと俺は楽園を手に入れ、計画は最終段階に突入した。
お姉ちゃんは俺だけのもの。
俺もお姉ちゃんだけのもの。
お姉ちゃんと二人だけの日々が今、始まった。

つづく
以上です

518:名無しさん@ピンキー
11/04/17 21:57:19.35 FWTtb6bq
>>511 GJ!!! 続きが楽しみです!

519:名無しさん@ピンキー
11/04/18 00:18:21.99 vqNLw7e9
>>517
GJです
弟の狂気に期待

520:名無しさん@ピンキー
11/04/18 06:35:48.07 cyuOtUz0
>>517
GJ
続き待ってる

521:名無しさん@ピンキー
11/04/18 22:29:15.78 8KuPw72f
豊作だね

522:名無しさん@ピンキー
11/04/20 01:18:12.02 fhzWTchW
投下に期待

523:名無しさん@ピンキー
11/04/25 21:32:42.81 wWJmURkD
続きが気になる作品多すぎる

524:名無しさん@ピンキー
11/04/26 00:34:46.30 2h5FZYmD
期待

525:名無しさん@ピンキー
11/04/30 13:35:22.68 AyuG8Wot
男ヤンデレの魅力とはなんぞや

526:名無しさん@ピンキー
11/04/30 19:30:15.13 RmckH41Y
狂気

527:名無しさん@ピンキー
11/04/30 19:45:15.45 vsr3f+LA
迸るような狂気で女を犯して欲しいな
ヤンデレ男に犯される女ハァハァ

528:名無しさん@ピンキー
11/04/30 22:41:47.94 pSY2VkuT
狂気。それに
犯される女の子もたまらん
ただの嫉妬から病んでいくのとか
んー…色々あるけどさ。単純に
はなれたくないとか、はなしたくないとかだったのが…みたいな
俺はそういうのが好きだな。上の方にあった、パッと見
のほほんとした夫婦かと思いきや
嫁を閉じ込めておきたい旦那の話みたいなのも好きだけど

529:名無しさん@ピンキー
11/05/01 17:51:58.87 Nqxes7Lw
>>528
貴様キオたんは渡さんぞ

530:名無しさん@ピンキー
11/05/01 18:11:56.36 BKkkpXpm
キオたんの続き待ってる

531:名無しさん@ピンキー
11/05/02 23:34:37.43 ju4/y8WH
投下期待

532:名無しさん@ピンキー
11/05/03 01:51:55.73 ihzP9BrJ
まぁ、忍法帖とか規制とか色々あるし
このスレには素敵な書き手さんもたくさんいるし
気長に待とう

533:名無しさん@ピンキー
11/05/06 22:42:52.68 LYbwJlpc
面白い作品多くてすごく素敵ですね

534:名無しさん@ピンキー
11/05/08 01:39:34.40 ZeOPKZsB
URLリンク(www.youtube.com)

535:彼女の笑顔
11/05/08 08:35:14.70 1RqXgITi
投下いきます。
ダークで、鬱で、電波も含みます。

ハードな展開もありますが、精神的な病み具合を中心に書いてみたかったので、
このスレを選ばせていただきました。

では、よろしくお付き合いください。




536:彼女の笑顔
11/05/08 08:36:06.22 1RqXgITi
遠くに見える教材倉庫の扉を見ながら、僕は両足をガタガタと振るわせる。
倉庫の中で起こっている惨劇を、僕は分かっている。ひとりの女生徒が、大勢の獣に襲わ
れているのだ。なのに僕は、助けに行くこともできない。
早く終わってくれ。これ以上、白井さんを陵辱しないでくれ。
僕だけの天使が、手の届かないところで、汚されていく。

白井さんのことを、僕は思う。
当人に言えるはずもないが、彼女は、僕にとって最高のオカズであった。
僕の部屋にある机の、一番上の鍵付きの引き出し。そこに、僕にとっての天使がいた。昨
年の体育祭で撮られた、たくさんの写真。
その中の一枚では、リレーのアンカーだった白井さんが、見事にゴールテープを切り、ク
ラスを優勝に導いていた。そして感激に溢れたクラスメイトに囲まれ、女友達に小突かれ
ながら、満面の笑みを浮かべていたスナップ。
彼女と接点のない僕だったけど、偶然にも彼女の隣で写真に写ることができていた。切り
取られた世界の中で、お互いに笑顔を浮かべていたのだ。
その笑顔は、たくさんのクラスメイトがいる中で、僕に向けられたものだったのではない
かと、今でも僕は思っている。

話すことはないけど、写真を見ているだけで、幸せだった。
僕は、写真を見ているだけで、彼女と繋がっていると感じていた。

白井さんは、体操服が似合う。
後ろで短く束ねられた髪を携えて、白いシャツとブルマに身を包んだ姿は、何にも変えが
たい美しさを誇っていた。
胸はそんなに大きくないけど、むしろ華奢な上半身は僕の好みである。加えて、運動で鍛
え上げられた脚には、余分な肉がちっとも付いていない。
体操服をまとった、僕だけの天使だ。
天使には、笑顔が似合う。
だから、僕は許せない。天使を傷つけているだろう、不良たち。無理やり彼女を押し倒し
て、苦痛を与え続けているだろう、あの不良たちが。
でも最も許せないもの、それは自分だ。彼女がいま輪姦されているだろうに、踏み込むこ
ともできずにその状況を見守っている。
僕は弱い。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。
もっと早く、助けてあげたかったのに。


やがて体格のいい不良たちが、教材倉庫から出てくるのを、僕は双眼鏡で確認する。彼ら
は周囲を警戒している一方で、ニタニタと笑いを浮かべている。きっと、この学校の中で、
自分達に敵はいないと考えているのだろう。教師に見つかろうが、それが女教師なら平然
とレイプするのだ。
不良たちがぞろぞろと去っていくのと反対方向の廊下に、僕は静かに回り込む。部活でも
使われていない建物なので、放課後の今、人影は無い。不良たちの笑い声が遠く消えてい
けば、そこにあるのは静寂のみ。
だけど、静寂の教材倉庫に残された女生徒を、僕は知っている。
教材倉庫の前に立つ。
だが、そこで迷った。どういう風に入っていったものか。
輪姦されて無残な姿を晒しているだろう彼女に、どんな言葉をかけてやれるというんだ。
答えは見つからない。
だけど、僕はここに入っていくと決めたんだ。
お互いに、どんなに苦しみを伴うものであっても、僕は彼女を救うと決めたんだ。
あの笑顔を取り戻すために。


537:彼女の笑顔
11/05/08 08:37:05.76 1RqXgITi
「…」
「…」
精液くさい空間で、互いに無言。
「山本くんか。あんたも、お仲間なの?」
最初に口を開いたのは、彼女。仰向けに裸体を晒し、体中に精液をまみれさせて、虚ろな
目をたたえている。
もっとはっきり言えば、絶望をまとって、白井さんは僕の前にいた。
「いや…」
「あんたもさぁ、私とヤりにきたわけ?」
「いや、ちょっと待ってくれ」
「はぁ?」
何から話したものか。でも大声を上げて人を呼ぶようなことをしないのは、ありがたい。
この状況を人に見られたら、誤解されるのは確実だ。
「は、話をしよう」
「出てって」
慎重に言葉を選んで対話をしようとする僕を、彼女が制する。
「いいから、出てってよ。ここで見たことは誰にも言わないで。それでいいから」
すらすらと言葉を紡ぐ彼女は、極めて冷静に見えた。裸体を隠すそぶりも見せない。そし
て輪姦された事実も、次いで場違いに闖入してきたクラスメートに対しても、心を動かす
ことはない。
「聞いてくれ。廊下には誰もいない。…あいつらは、不良たちは遠くに行ったのを確かめ
てから、僕は入ってきた。だから、少しだけ僕の話を聞いてくれないか」

「あんたさ、今のこの状況、わかってんの?」
「いや、説明させる気はない。いきなり入ってきて驚かせたのも、すまないと思ってる」
「山本くんも、何考えてるのか分からないね。あいつらが帰ってきたら、殺されるよ」
淡々と、言葉を交わす。このあたりの会話は想定していた範囲だが、あまりに白井さんが
冷静なので、現実感が欠けている。
「で、何しにきたの?」
「何をって言われても、ちょっと答えずらいんだけど」
「なら、帰ってくれない?」
「僕に出来ることが、ないかな」
「は?」
当然の反応だ。僕の申し出が、やけに間抜けに響いた。
「その…今さら、入ってきて、何を言うかって感じだけど。僕はこれ以上、白井さんを辱
めることはしない。信じて欲しい」
「うん。それで?」
「あいつらが女を襲ってるって噂は、聞いたことがあったんだ。さっきも、こんな場所に
不良たちが集まっていたのを見たから、もしかしたらと思った。だけど、怖かった」
僕の声が震える。彼女は、黙って僕の話を聞いてくれていた。
「最近、白井さんの様子がおかしいのも、気づいてた。時々、すごく悲しそうな顔をして
るから。強姦されてるかもしれないとも思った。でも、そんな事を直接聞けるわけない。
何かを抱え込んでいるんだろうとは思ったけど、僕が何をしてあげられるのかわからなか
った」
「あー、山本くん、意外と鋭いのね」
「あいつらが倉庫を出て行くのを見て、何が起きていたのかは大体分かった。でも、いた
ずらに先生を呼んで騒ぎを大きくするのは、良くないかもしれないと思ったんだ」
「はは…冷静に考えたんだ。かっこいいね」
「黙って立ち去って、誰にも言うなと白井さんが言うなら、そうする。でも、ずっとこの
ままってわけにもいかないでしょ。体操服とかさ、持ってきてあげようか?」


538:彼女の笑顔
11/05/08 08:37:40.53 1RqXgITi
夕暮れの、静かな廊下。
僕の右手には、水と雑巾の入ったバケツ。左手には、白井さんの体操服。
人の目に付かないように、細心の注意を払って、再び教材倉庫の前に立つ。
「白井さん?僕だ、山本だ。入るよ?」
「うん」
薄暗い教材倉庫の中で、背の高いロッカーに隠れるようにして、彼女は座っていた。
「ほら、言われたもの、持ってきた。あと一応、人が来ないように見張ってるよ」
両手に持ったものを彼女のそばに置き、僕は彼女に背を向ける。そして窓から廊下を覗い
てみる。
「紳士ぶるねー。私のハダカなんて、さっきも見たでしょうに」
チャポンと雑巾を浸す音が、背中のほうから聞こえる。
「…」
「…」
会話が、途切れてしまった。
着替えを持ってくるという目的は果たしたんだから、僕はもうこの場を去るべきなのだろ
う。彼女も、そう思っているかもしれない。でも、今の彼女を一人にさせたくないと、僕
は思った。こんな事に首をつっこんだ以上、中途半端に切り上げるのは、はばかられた。
「…5回目なんだ」
静かに、白井さんが口を開いた。
「なに、が?」
「あいつらに無理やりやらされるの」
「…」
「ひと月くらい前に、外の体育倉庫であいつらに捕まった。それで、無理やりやらされて、
恥ずかしい写真いっぱい撮られた」
「うん」
「そっから先は、写真で脅されて、ズルズル」
人事のように、白井さんは自分の不幸を淡々と語る。
「誰かに。誰かに相談は?」
「言えると思う?」
「…ごめん」

「助けてもらったんだから、今のわたしのことくらいは、話そうかと思ってね」
「いや、ごめん」
「なにが?」
「そ、そんな事さ、話したくもないだろうに、言わせちゃったみたいでごめん」
「ははっ、別にいいの。なんかね、私も現実感、ないんだよね」
こんな話の中で、白井さんはケロっと軽い笑いを浮かべている。
「いつもの退屈な授業を受けて、放課後には部活に出る。わたし、陸上部なんだ。走るの
好きでさ」
「うん。去年の体育祭のときにも、なんか表彰されてたね」
「よく覚えてるねー。光栄でございます」
「いえいえいえ」
「でもね…」
軽い調子の語りが、にわかに陰りを帯びる。

「そんな普通の日常があるからこそ、自分が不良たちに襲われて、弱み握られて何度もさ
せられてるなんて、思えないんだ」
「うん…」
「あいつらが出てこなければ!それ以外の日常は、いつも通りなのよ!」
声を荒げる白井さんに驚き、振り返る。
うつむき、雑巾を握り締める彼女の顔から、ポタポタと涙がこぼれている。
「いつも通りの日常が続いているから、ああ、あれは悪い夢だったんだなと思おうとする
の。でもそんな時に限って、あいつらは現れる。あれが現実だったと私をうちのめすみた
いに!」


539:彼女の笑顔
11/05/08 08:38:27.84 1RqXgITi
「日常、か」
「そう!山本くんにも日常があるでしょ?親御さんとか友達と話したり、学校に来たりす
ること。そんな当たり前の幸せが、続いているのか、途切れているのか、今のわたしには
わからないのよ…」
感情が高ぶっている彼女は、少しの言葉で崩れてしまいそうに見えた。
慎重に、言葉を選んで答える。
「白井さん」
「うん…?」
「…何と言ったらいいかな。そんな無理をして、取り繕おうとしても、難しいのかもしれ
ない」

「無理をして?」
「うん。無理してる感じ、するよ」
「そう…」
複雑な顔をして、黙り込む。僕もまた、どんな表情で彼女に言葉をかけるべきか戸惑う。
「最近の教室での白井さんも、さっき自分のことを話してくれた白井さんも、すごく痛々
しい」
「そっか。そんな風に見えてたんだ」
「僕だけじゃない。他のやつだって、何か感じているかもしれない」
「じゃあ、もう私、おしまいかな」
彼女の両目が、まっすぐに僕を捉える。
「無理して取り繕っても、すぐに周りに知れちゃうって言いたいの?私がどんな気持ちで、
毎日を過ごしてきたか、わかる?こんな恥ずかしいことがみんなに知られたら、わたし、
絶対に学校にいられなくなるよ。わたしの人生、おしまいなんだよ。そう考えて、いつも
いつも怖かったのよ!」
僕は、白井さんの痛みを気遣うことも出来ず、軽率な言い方をしてしまったのかもしれな
い。
僕の言葉は、彼女の傷口をさらに広げているに違いない。
だけど。
それでも僕は、進まなければならない。
「正直さ、僕も、ここに入ってきて、白井さんに何て言葉をかけるかなんて、考え付かな
かった。大勢の男達に強姦されるなんて、どんなに怖いのか、臆病な僕は考えることもで
きない。だから、白井さんの痛みを分かるなんて、とても言えない」
「そうよ…だから、もう、私のことは放っておいてよ」
「だけど、ひとつだけ、言わせてほしい」
「なに?」
「少しでも、僕は白井さんを守ってあげたかったんだ」

緊張しながら、言いたかったことを言葉にした。
鼓動が早く感じる。
そりゃそうだ。愛の告白と同じ程度の台詞を、僕は放っているんだ。

「不幸な女の子に手を差し伸べて、かっこいいと思うの?わたしの心が、それで動くと思
った?」
だが、彼女は冷ややかな視線を投げかける。
「それで、感激したわたしが、あなたと恋に落ちるなんて、そんなバカなこと考えてる
の?山本くんは」
「白井さん、待ってくれ」
「あいつらと同じ!わたしを、弄びにきたっていうの!」
「白井さん、違うんだ。聞いてくれ」
「何が違うのよ!」
僕の言葉は、僕が思っていた場所とズレた場所に命中してしまった。危険だ。彼女を錯乱
させてはならない。ゆっくりと軌道を修正していく。
「僕は、怖かったんだ」
「怖かった?そうよね。不良たちにボコボコにされるのは、痛いでしょうよ。だけどわた
しは、そんな事…」
「いや、僕が怖かったのは、白井さんだ」
「…わたし?」

540:彼女の笑顔
11/05/08 08:39:15.19 1RqXgITi
実際のところ、彼女の言うとおりだったかもしれない。
僕の中には、彼女を助けて、彼女の心を多かれ少なかれなびかせる快楽も、思い描いかれ
ていたのかもしれない。
だけど、僕が持っていた感情は、言葉で恋愛と呼ぶものとは違っている。相互的な関係で
はない。自分ではそう思う。

「教材倉庫の扉に手をかける前に、すごく怖かったんだ。もし、扉を開いたら、白井さん
がそこにはいなくて、不良たちに殺されていたらと考えてしまった。あるいは、自分で窓
から飛び降りたりしてはいないかと、そんな風にも考えてしまった」
話しながら、また怖くなって、僕の頬を涙が伝う。
「な、なに勝手に泣いてんのよ。バカじゃないの」
「僕は白井さんとは、別に仲がよくなんてなかった。だけど、白井さんを助けてあげたい
と思った日から、僕は、救えなかった時の事を考えて、どこまでも怖くなってしまった。
怖くなって、何も見なかったことにしようと考えたこともある」
助ける助けないとか言いながら、僕の口から出るのは、自分自身の愚痴と弱みばかり。彼
女は少し困ったような顔をしていたが、段々と表情の強張りを解き、僕の言葉に耳を傾け
てくれていた。
「僕の行動は、どこまでも一人よがりだった。ヒーローになりたいっていう自己満足だ。
だから、白井さんには軽蔑してもらっても構わない。僕のこれまでの言動が嫌だったなら、
本当にごめん。だけど、僕は、笑っている白井さんが、素敵だと思ったんだ」
「さっきも言ってたじゃない。無理してて痛々しいって。それが素敵って言いたいの?」

「違うよ」
僕は断言する。無理してる彼女の姿なんて、見ていたくない。
「もっと前の、普段の白井さんの笑顔を、僕は見ていたかったよ。体育祭でゴールした時
とかさ。自分じゃ気づいてないだろうけど、白井さんの笑顔は、周りをみんな、幸せにし
てくれてたと思う」
「今さら…そんな事言わないでよ。もうわたし、笑えないよ。戻れないよ」
諦めたような顔をして、白井さんが答える。
じっさい、彼女を蝕んでいる絶望は、僕の一言二言で溶かせるような代物ではない。
それに、僕は彼女の絶望を、直接どうこうする資格なんて持ってないだろう。
「僕は…臆病だから、いたずらに白井さんを勇気付ける言葉なんて、言えない。白井さん
の手を引いて、この状況から、助けてあげられる自信もない。でもさっきバケツを持って
きたみたいに、少しでも白井さんの力になれるなら、そうしたいと思う。…もちろん、そ
れは僕のエゴだってのは分かっての気持ちだけど」

「…」
僕の正直な気持ちは、伝わっただろうか。
「は、ははっ」
彼女が、歪んだ笑いを浮かべる。先ほどの自嘲的な痛々しい笑いと似ているが、笑いなが
らもその目はこちらを見ている。
「バカじゃないの」
「そう…だね」
「勝手に意気込んで、わたしの心に踏み込んできて、結局は何も出来ないなんて、自己完
結にもほどがあるね。わたしに関わっても、山本くんは不幸になるだけだろうに。わたし
の笑顔がどうとか、わけわかんない。けど…」
白井さんの頬を、再び涙が伝う。けど、その顔は少し晴れやかに見えた。
「あー、ごめん。やっぱりわたし、うまくお礼は言えないや。山本くんのことも、そんな
に信用できないかも」
「やっぱり、キモかった?僕の話は」
「そうだね。ちょっとアレだね。でも、バケツと服を取ってきてくれたのは事実だし、そ
れについては本当に、ありがとね。助かったよ」
「そっか」

541:彼女の笑顔
11/05/08 08:40:10.09 1RqXgITi
長い時間、僕達は話しこんでいた。
彼女はその間ずっと、汚れた体中を雑巾で拭い、自分の体を清めていた。
そして、ようやく作業を終えたのか、彼女は雑巾をバケツに放り込んだ。
「さてと。じゃあもう一度言っとく。今日のことは誰にも言わないでね」
「ああ、わかってる」
「だけど、色々と、ありがとう」
「うん」
「少しだけ、山本くんに勇気をもらえた気がする」
「勇気?」
思いがけない言葉をいただいて、僕は戸惑う。
「山本くんは、自分の行動をエゴだなんて言った。だけどエゴだとしても、そこまで自分
に正直に行動して、わたしを助けに来てくれた山本くんに、勇気をもらった気がするの。
これからどうしたらいいのか、わたしにはわからない。元の生活に戻れるかもわからない。
だけど、前に進む勇気だけは、もらった気がするの」

「…じゃあ僕も、同じ言葉を返すよ」
「同じ言葉?」
白井さんが、戸惑った顔を見せる。今さっきの関係を、ちょうど逆にさせてしまった。
「こんな僕でも、誰かを救えるっていう勇気。僕のエゴに基づいた行動でも、白井さんを
少しでも救えたという勇気と自信かな」
「…あー、そんな風に捉えちゃうんだ。じゃあわたしも…って、それじゃキリないじゃ
ん!」
「あはははっ」
「ふふふっ」
真剣な話をしていたのに、お互い変なところで譲らないのがおかしくて、僕達は笑ってし
まった。
クスクスと笑い交わしながら、僕は少しだけ、彼女の心に近づけた気がした。
まだ痛々しい色を含んでいるものの、やっぱり白井さんの笑顔は、僕にとっては天使の微
笑みなのだ。

「ふふふっ…あーあっ。笑ったら、少しスッキリしたわ。んじゃ、せっかくだから、この
体操服を着て帰ることにしますかね」
僕の持ってきた袋から、白井さんが、ブルマを引き出す。
裸の白井さんと、ブルマ。
倒錯的な光景に、僕の視線は吸い寄せられる。
毎晩、体操服の白井さんをオカズにしていたなんて、口が裂けても言えやしない。だけど、
僕の視線に気づいたのか、白井さんは黙って背中を向ける。
「なんか、見られてると恥ずかしくなってきたわ…」
下着は汚れてしまったのだろうか。付ける様子はない。直接ブルマに足を通し、バランス
を取りながらずり上げていく。
「白井さん」
彼女の美しい肩甲骨を見ながら、僕は静かに問いかける。
「んー、なに?」
「僕は、僕のエゴのために、また白井さんに救いの手をさしのべるかもしれない。いいか
な?」
彼女が滞りない調子で、シャツを袋から引き出しながら、答える。
「ここまで来ちゃった以上は、ノーとは言えないよね。まあ、山本くんは意外に思慮深い
し、誰かに言うこともないか。わたしも、自分でどうすべきか考えようと思う。そして、
山本くんの助けが借りられそうになったら、お願いしようと思う…。それで、いいか
な?」
「ありがとう。白井さん」
シャツに頭を突っ込む彼女。
モゾモゾと動き、スルっとシャツの首から彼女の頭が抜け出す。




542:彼女の笑顔
11/05/08 08:40:53.35 1RqXgITi


スルっとシャツの首から彼女の頭が抜け出す。

シャツの首から彼女の頭が抜け出す。

頭が抜け出す。


その瞬間を、僕は見逃さない。
滑らかな動きで、懐に隠していたロープを取り出す。黄色と黒のロープ。学校でよく使う
代物だから、当然この倉庫にも置いてある。来るべき日に備えて、この倉庫にある束から
切り取って持ってきたものだ。
長いロープの一端を、背の高いロッカーの上に放り投げ、反対側に落とす。

そして、ロープのもう一端を僕は引き寄せる。そちらの先には、輪が作ってある。引っ張
ると輪が絞られるような結び方で。
後ろを向いている、彼女の無防備な首筋に、狙いを定める。
フワっと軽やかに。
軽やかに僕は首筋に襲い掛かり、首に輪をかける。
「えっ」
彼女が声をあげる。
だが大丈夫だ。突然の出来事に体が対応できるはずもない。
ロープが彼女の顎をくぐり、しっかりと深く収まったのを確認して、僕はロッカーの反対
側に回りこむ。
そして、力いっぱいロープを引いた。

確かな手ごたえだ。振動が手に伝わってくる。そして、ガンガンとロッカーの向こうから、
音が響いてくる。彼女がもがきながら、つるし上げられていく様を僕は想像する。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。
今は苦しいけど、少しだけの辛抱だから。
白井さんの味わっている肉体的苦痛を思って、僕は涙する。そして思う。彼女のことを。
白井さん、僕はきみが大好きだよ。
話すことはないけど、遠くから見ているだけで、幸せだった。
そう、あの日までは。

きみの様子がおかしいと、僕が思い始めたころのことだった。
きみの姿を、近所のドラッグストアで見かけた。きみの姿は学校でしか見ることはなかっ
たから、普段のきみを見る機会に恵まれたのは幸運だと思った。それに、最近きみを悩ま
せているのがなんなのか、僕は知りたいと思った。
僕は、他の客にまぎれながら、遠くからきみを観察した。
そして、我が目を疑ったね。
白石さん。きみが、妊娠検査薬を、そっと懐に隠して店を出て行ったんだから。

その日の晩、僕は発狂したよ。
そっと見ているだけで幸せだった、僕だけの天使。きみが、男相手に股を開いて、どんな
ことをしているのか、考えたくもなかった。なのに考えてしまって、僕はひたすら絶望を
味わったよ。
大切な写真をビリビリに破いて、全部燃やした。泣いて泣いて、夜通し泣いて、そして誓
ったんだ。
きみを、誰にも渡さない。独り占めしてやるってさ。

543:彼女の笑顔
11/05/08 08:41:37.72 1RqXgITi
不良たちにレイプされていると気が付いてしまってからは、それはもう、辛かったよ。純
白だった天使が、日に日に汚されていくのが分かっていながら、すぐに手を打つことが出
来なかったんだから。
僕は、じっと機会を待っていたんだ。
きみの時間を止めてあげる、この日をね。
汚されて、妊娠して、学校を辞めて、どうやったって、きみの未来には絶望しかないじゃ
ないか。
きみの笑顔は、未来永劫失われてしまうじゃないか。
体育祭のときに僕に見せてくれた天使の笑顔。それを完全に失ってしまわないうちに、早
く死ぬんだ。
きみは汚れた体を脱ぎ捨てて、本当の天使にならなければならない!

だから、僕が手を貸してあげるんだ。
きみも、さっき、そう言ったはずだ。
それに、僕は気づいていたんだよ。きみが教室でも、僕に視線を送っていたことを。今日
という邂逅を迎えるまでもなく、助けて欲しいというメッセージを送ってくれたきみのこ
とを、僕は気づいていたんだ。
そう、僕達は魂で結ばれていたんだよ!


「ふ、ふははっ」
どれくらい、僕はロープを掴んでいたのだろう。
どれくらい、彼女への愛を、頭の中で繰り返しただろう。
気が付くとロープに伝わっていた振動は、収まっていた。
僕は静かにロープを引き、引いたロープを古びた机の脚に結わえつけた。
そして僕はロッカーの反対側へと回りこむ。
僕だけの天使を、確認するために。

「っ!」
戦慄した。
あまりの、美しさに。
この情景を、何に例えることが出来るだろう。
蜘蛛の巣に引っかかった、純白の蝶?
深山幽谷の岩壁にひっそりと咲いた、可憐な山野草?
否。そんなチャチなものじゃない。
この世の中に並ぶものなんてない。間違いなく、ここは切り取られた異世界だ。
僕は、放課後の倉庫に現れた異世界に、ゆっくりと足を踏み入れる。

「う、うひゃあっ!」
だが、彼女に近づこうとした僕は、間抜けな声をあげてしまう。
「は、ははは。出ちゃった。出ちゃったよ…。白井さん」
僕は射精していた。
目の前の情景を見て、精神が極限まで昂ぶっていた。そして足を踏み出したとき、股が擦
れたのが引き金になって、僕は達してしまったのだ。
「う、うあっ…」
この場所に精液を垂らしておくのは、マズい。僕は手早くズボンを脱ぎ、股を垂れていく
精液をハンカチで食い止める。脚を拭い、最後に敏感になった亀頭を拭うが、射精が終わ
っても、僕の性器は猛りを止めてくれない。
仕方ないので、上を向いたままの性器を無理やりしまいこんで、ズボンをはいてしまう。
そして、改めて、彼女の姿を確認する。

だらりと四肢を投げ出し、彼女は絶命していた。
糞尿の香りが漂っているが、そのくらいは本で読んだので驚かない。
死装束に、彼女にもっとも似合う服である体操服を選んだのが幸いした。ブルマが黒いお
かげで、糞尿の染みがそんなに目立たない。太ももを伝う黄色い液体が、微かに靴下を濡
らすのを除けば、生きているときの彼女とそう変わらない。



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