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では【アーク型神姫】【ちくわ】【耳かき】の三つを題材としてひとつ書きましょうかな。
タイトルは、『俺のアークがちくわ過ぎてマジ耳かき欲しい』
バレンタインチョコを貰えなかった。
彼はその日、絶望していた。
自分の神姫からさえ、手に入れることができなかった。
マスターにチョコを渡さない神姫なんていたのか……!?
彼の常識は崩壊しかけていた。
死んだ目をして彼はネット掲示板を開く。
似た境遇の者らが集う板を読みあさっていると、ある書き込みを見つけた。
彼の脳裏に衝撃が走った。
「これは……! ふ、ふはははははははははっ!!」
狭い室内に彼の声が響き渡る。
「ねえ、マスター。いくらあたしにチョコを貰えなかったからってそこまでおかしい笑いを出すのはちょっとどうかと思うわよ」
耳元で声がした。肩に乗せたアーク型神姫の口から出たものだった。
「なあ、アーク。時代はさ、ちくわだよ。ちくわだよ、ちくわだちくわちくわちくわ!」
嬉しそうな彼の肩に乗ったまま、アークは首を傾げる。
「ちくわ、ですか……? 料理ならやってやれないこともないとは思いますが」
「違うんだよ。貴様がちくわの穴のなかに挿入されるんだよ、アーク!」
彼の手に握りしめられ、アークはもがく。
「は、離してくださいマスター、一体なんの話ですか!」
彼は神姫の手触りを愉しみながら、冷蔵庫をあさる。
「へ、変なところ触らないでください……! どうしたんですかマスター!」
「今大事な場面だ。口閉じてろ」
冷蔵庫の中にはほとんど何もなかった。
「仕方ない……ちくわを買いに行くのも一興、か」
「わけわかんないですって、ちょ、どこ行くんです! 今月は遊びに行けるだけのお金なんて残ってないでしょ!」
後ろ手に玄関扉を押して、彼は鍵を閉めた。
「どこって……スーパーに行くんだよ!」
彼の目は血走っていた。
アークは彼の手から逃れようと暴れる。脱力して溜め息を吐くようになるまで長くなかった。
「ちくわを買うだけの余裕が今のマスターにあるとは思えないんですけれど……」
彼は焦点の定まらない視線で街中を駆けている。
「マスター? おーい、マスター? ……返事がない、ただの動く屍のようだ」
近所のスーパーに着くと、彼は足を止めた。
「一度止まって正しいと書く。これで俺は正しいぞ」
「そういう意味じゃないと思いますが……いい加減離していただけると嬉しいんですけど。もうここまで来たし、逃げませんので」
彼はアークを数ヶ月間散髪していないぼさぼさの長髪の中にしまった。アークはくぐもった声で何事かを言ったが、彼は無視する。
「バレンタインチョコをくれない神姫なんて童貞の敵だ……む?」
「げほっ、ごほっ……ど、どうしたんです、マスター」
むせながら這い出て、彼の頭頂にしがみついたアークは……目を細めた。
痺れるような怒鳴り声や罵声が彼の耳を震わせる。
喧騒はスーパー店内から聞こえてきた。