12/08/17 05:32:41.73 mSIS9J7g
「し、司祭様!」
日曜の説法も無事に終了。礼拝堂に集まった人々を見送り、一通りの挨拶も笑顔でこな
し、さて礼拝堂の掃除でも始めようかと気合いを入れ直していたエステル背後から、何処
に隠れていたのか誰かの声が。
「はい?」
少々不意を突かれたが、この程度のことで動揺を露わにしていては司祭としての沽券に
関わる。内心の驚きを微塵も出さぬよう顔面の筋肉を酷使しつつ声の方角に体ごと振り返
ってみると、柱の陰から恐る恐る顔を出した少女の姿が見えた。
「あ、あの……お疲れなのにすみません。私、どうしても司祭様に二人っきりで聞いて
頂きたい事があって、その……」
年の頃ならエステルと同じくらいか。何度か見かけたことのあるので敬虔な信者なのだ
ろう。その縋るような目と、恥じらう姿にエステルの職業スイッチがオンになる。
「告解……ですか? でしたら……」
「い、いえ、あの……」
もじもじもじもじ、と頬を染め手足を体に擦り合わせ視線を泳がせながら少女が柱の陰
から出てくる。
「???」
「わ、私、こんな事を誰に相談したら良いのかわからなくて。それで、あの、司祭様な
ら分かって頂けるかなって思って……」
「はぁ……」
しかも全く要領を得ない。くねくねと面妖な動きで体を揺らす少女にかける言葉すら見
つからない。とはいえ、この様子から察するに思春期特有の可愛らしい相談だろうから一
通り話を聞いた後で励ましてやれば良いだろう。
「あ、あの……」
「はい」
ようやく話す決心が付いたらしい少女に穏やかな笑みを向けるエステル。
「お、おおおお同じ女の子として相談に乗って頂いてもいいですか!?」
「ええ、良いですよ」