10/03/13 12:36:44 GltDQ47l
何気なく見てるつもりだった。
廊下ですれ違う時
笑ってる時
一生懸命野球やってる時。
その一つ一つがまるで宝石みたいに私の心に埋め込まれる。
そんな心の動悸を、阿部くんにはもちろん野球部員皆に気付かれる訳にはいかない。
部活内レンアイが禁止な訳じゃないけど、やっぱり変な気遣いをされるのは避けたかった。
だからいつも私は自分に言い聞かせる。
阿部くんは私のこと何とも思ってない、と。
「篠岡、ちょっといいか?」
「はいっ!」
阿部くんが話しかけてきても平常心、平常心。
とは言っても実は物凄く嬉しかったりする。
今日は何の用だろう。また三橋くんのことかな?
「あのさ、今日練習の後時間ある?」
「んー?あるよー。」
「じゃあ部室に来てもらってもいいか?
今度の練習試合の対戦校のビデオとデータ確認したい。」
「分かったー。」
やっぱりいつもの業務連絡。それでも嬉しくてニヤケてしまう。
あれ?聞くの忘れてたけど、もちろん監督か花井君もいるよね?まさか二人きりな訳…ないよね。
***
練習後、後片付けを済ませて部室に向かった。皆が帰っていく姿が見える。
相変わらず田島くんと三橋くんは仲良しだなあ。何だか微笑ましい。
…あれ?花井くん帰ってる?
なら監督と阿部くん?そうだよね。
ドキドキしながら部室のドアを引く。そこには、阿部くんしかいなかった。
「おっす。」
「あ、うん…。」
監督は、と聞こうとして思い出した。
監督は今日用事があって、練習が終わり次第帰るって昨日言ってた。
つまり、必然的に二人きりということだ。