08/09/04 18:37:47 ffpfriQs
いろいろ耐えに耐えて、結局耐えられず、女はさめざめ泣いていた。
ごめんなさいとひたすら繰り返しているのは、大きな声で啼いたからだろう。
啼かせたのは神田で、むしろ神田がミランダに謝るべきなのだということに、愚かな女は気がつかない。
普段なら、陰気くさく泣いている女をさらにどやしつけて泣かせる短気な神田だが、情事のときは別だった。
上気した頬。涙に濡れた瞳。赤い痕を散らした肌。
泣いていることが哀れで、同時に、ひどく満足している。
するときは泣かせたいと想い、終われば愛しい気がした。
頼りない、少女のような年上の女。
あれこれと、ミランダにかまう兄弟子の気持ちを、少しだけ理解する。
だから、神田にしては珍しく、穏やかにまぶたへ唇を寄せた。
言葉の代わりに涙を舐め取ってやると、ミランダは驚いたように神田を見る。
そのまま頬を撫で、緩やかな曲線を描く髪を梳いてやると、それだけでもう女は泣き止むのだ。
微笑んで神田の名を呼び、くすぐったそうに身をよじった。
その笑った顔が、あんまり幸せそうで、あんまり艶っぽいので、神田はいつも馬鹿だなと思う。
散々嬲られて、それなのにこんな些細なことで幸せになれる哀れな女。
心も体も正直な女は、たったそれだけのことで、中をきゅっと締まらせる。
だから、結局、まぁ振り出しに戻るわけだ。
その日も疲労困憊になるまで愛されて、神田は動けないミランダを担いで教団に戻ることになるのだが、それもまた自業自得の話である。
END