桜蘭高校ホスト部 5at EROPARO
桜蘭高校ホスト部 5 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
07/12/26 19:22:04 DD5nO1Pm
2げと

落ちたのね・・・orz

3:名無しさん@ピンキー
07/12/26 19:22:13 KtlCS7bZ
スクリプト荒らしで落ちていたので立てておきました

4:名無しさん@ピンキー
07/12/26 20:18:01 Zi6TioQ4
支援

5:名無しさん@ピンキー
07/12/26 21:20:25 +FRBwzb4
今回はひどすぎだろ…

6:名無しさん@ピンキー
07/12/26 21:32:53 +FRBwzb4
あ、>>1乙だよ~
うさちゃんかしたげるー♪

7:名無しさん@ピンキー
07/12/26 21:38:29 ocVH9Y9e
落ち着くまで立て直しはしない方がいいよ
下手にやると鯖に負荷がかかって全部飛ぶ

8:名無しさん@ピンキー
07/12/26 22:46:36 +FRBwzb4
|ω・)誰もいない…

9:名無しさん@ピンキー
07/12/26 22:54:35 shk+PBaW
>>1
乙!

10:名無しさん@ピンキー
07/12/26 22:58:24 +FRBwzb4
しばらくはage進行でよろしく

11:名無しさん@ピンキー
07/12/26 23:44:05 iQF6Ui3D
じゃ、1乙ついでにあげとく

12:名無しさん@ピンキー
07/12/27 01:43:34 87E61gSL


13:名無しさん@ピンキー
07/12/27 02:25:43 87E61gSL


14:名無しさん@ピンキー
07/12/27 03:39:47 87E61gSL


15:名無しさん@ピンキー
07/12/27 06:59:39 CKyQjvJv


16:名無しさん@ピンキー
07/12/27 17:58:03 BDhVP9wC


17:名無しさん@ピンキー
07/12/27 20:19:01 BDhVP9wC


18:名無しさん@ピンキー
07/12/27 20:24:41 EGY1RTk8


19:名無しさん@ピンキー
07/12/27 20:48:41 IL+K+mEh
いつの間に落ちたんだ?驚いたよ

20:名無しさん@ピンキー
07/12/27 21:27:46 87E61gSL
FOXと管理人がpink規制について喧嘩

FOX規制解除

スレ立て荒らしやりたい放題

巻き添えでホスト部スレあぼん

また爆撃来たら落ちるかもな

21:名無しさん@ピンキー
07/12/28 02:25:34 doi1lgK8
前スレ、やっぱり落ちてたんだね・・・
このスレは、pinkでここしか見てない人もけっこういるだろうし、そういう人たちはまだ気づいてないかもだよね・・・
前スレの228さんを楽しみに待ってたんだけど、気づいてるかなぁ。
しばらくは寂しそうだねorz

22:名無しさん@ピンキー
07/12/28 14:51:09 lkqZ6OXB
前のスレの最後の方に妄想したのをSSするからしばらく待ってて言ってた人ですよね
ちなみに妄想したの自分

23:名無しさん@ピンキー
07/12/28 15:27:50 DiG+ci6M
心配させてしまったみたいですみません、4-228です。
毎日コツコツ書いているので、全部出来てから投下しようと思います。

24:名無しさん@ピンキー
07/12/28 17:39:54 QuKVBpoD
wktk!エロ濃いめだといいな…

25:名無しさん@ピンキー
07/12/28 20:56:46 cmtRuzRy
本スレで環目線のモノローグは激しくウザそうって話題出てるけど
本当そうだよなw俺は環目線書こうとして挫折したw
ビスコたんでさえも考えるの大変なんじゃなかろうか?w

26:名無しさん@ピンキー
07/12/28 22:43:24 imhTEwBa
>>25
環×ハルヒ書こうとすると話が長くなるんだよねw

27:名無しさん@ピンキー
07/12/28 23:19:20 QuKVBpoD
だって環あの性格だしw
でも難しいだけあってちゃんと完結した投下作品は神多いと思う

28:名無しさん@ピンキー
07/12/29 04:13:57 KflJ5L/I
wktk

29:名無しさん@ピンキー
07/12/29 11:19:13 VioZcTtD
他のカプも神多いよ
他のカプも待ってます

30:名無しさん@ピンキー
07/12/29 18:56:25 Ue7eXyyE
みんな忘れていないか?
環視点もウザそうだが、同じくらいきっついのがハニー視点とかれんげ視点だよ!

れんげ視点で、
キャー!愛し合う双子に前後から責められるなんて、最高ですわ!ご飯3杯いけますわっ!とか
やっぱり鏡夜様とのうきメモプレイが一番萌えでしてよ!次の新刊は決まりですわ!
みたいな疲れるやつとか、前にあったウザいハニー一人称みたいの読んでみたい…

31:名無しさん@ピンキー
07/12/31 01:05:50 PD7LCN0R
wktk

32:名無しさん@ピンキー
07/12/31 21:28:15 n4Cw3iZE
あまりにウザいタマハルは勘弁
行き過ぎになってるのも多いからな

33:名無しさん@ピンキー
07/12/31 22:31:01 8LWxXdmT
このスレのはそうでもない気がする

34:名無しさん@ピンキー
07/12/31 23:05:00 g1qxI5SV
きちんとキャラ掴んでエロく書いてて凄いなあと思うよ。
来年も神作品が沢山読めますように!

35:名無しさん@ピンキー
07/12/31 23:26:12 4hG79pgt
個人的には淡白だろうが多少うざかろーがそのキャラを掴んだ良作ならどっちもウェルカムですよ!
たいがいの書き手はカプシチュ表記するし、苦手なものがある人は読まなきゃいいだけだ


36:名無しさん@ピンキー
08/01/01 01:53:24 zfA8jnka
キャラの性格がちゃんと合ってるカプシチュは良いと思うw
過去のエロパロでリアルですごいと思ったのは
【姫君の憂鬱と王様の杞憂】のタマハルです。メイがハルヒに自覚させたようなものだし。

37:名無しさん@ピンキー
08/01/01 01:59:54 U4OcS2OQ
確かにww
今月号読んだらエロパロスレのっぽい!って思ったw

38:名無しさん@ピンキー
08/01/01 06:08:22 mmjjJOXa
必死だな

39:名無しさん@ピンキー
08/01/01 20:34:52 cFmoXq8y
wktk

40:名無しさん@ピンキー
08/01/02 21:25:55 5n0cBIXX
あけましておめでとうございます、前スレ228です。
ララ2月号ネタに、少し変わってしまいましたが前スレ227様のネタを盛り込んで書いた話です。
総レス数多めなので、前後編で投下します。

注意書き
・組み合わせは環×ハルヒ
・ララ2月号までのネタバレを含みます
・ハルヒ視点と環視点の部分があり、環視点部分はウザめだと思います

以上のことが苦手な方は、スルーかタイトル「Voi che sapete」をNGワードでお願いします。

41:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:27:37 5n0cBIXX
その人の事を考えると胸が痛くなる……。
その人が嬉しそうだと自分も嬉しくなる……。
笑いかけられると泣きそうになる事がある……。
その人の…――。

「はぁ……」
保健室のベッドの中、毛布を頭まで被ったハルヒは小さな溜息をついた。
――やっぱり、自分は環先輩の事を好きなのかな……。
そう考えて、必死に頭を振る。
今まで恋愛事にあまり関心のなかった彼女に初めて芽生えた、不可解な感情。
しかも、よりによって非常に面倒くさい相手に。

環は、暑苦しい。
環は、うざい。
だけど、良いところがたくさんある尊敬に値する人だ。
そんな彼の事が気になりはじめたのは、いつからだろうか。
自分の気持ちに戸惑い、彼の事を考えると苦しくて訳もなく溜息が漏れる。
恋心を否定しようとしても、脳裏に浮かぶのは彼の事ばかり。
どうして良いのか分からず、ハルヒは自分の感情を持て余していた。

ベッドの中で身動ぎながら、ふと疑問が湧く。
自分の環に対する感情が恋だとして、彼は自分をどう思っているのだろう?
やたらと世話を焼いてくる彼の態度からして、好かれているとは思う。
しかし、それがハルヒが彼に抱いている感情と同じであるかといえば、難しい。
かといって、彼に直接本心を聞き出すのは怖い。
聞いてしまったら、今の関係まで崩れてしまいそうで……。
以前のハルヒであれば容易に言えたかもしれない言葉が、今はどうしても紡ぎ出せない。
恋とはこうも自分を気弱にさせるものなのかと、胸が痛む。
そんな思いを巡らせているうちに風邪薬が効いてきて、ハルヒは眠りに落ちていった。


とあるテーマパークの入り口にある噴水の前―。
待ち合わせの時間に少しだけ遅れたハルヒは、息を弾ませつつ愛しい人の腕にしがみ付いた。
「ごめんなさい環先輩、遅くなってしまって…。あの、待ちましたか……?」
「五分くらい、どうってことないよ。それより…そのワンピース、よく似合っているぞ。
何でも似合うのは、やはりハルヒが世界一可愛いからかにゃ~☆」
「もうっ!そんな…恥ずかしいですっ☆」

恥らうハルヒに、環はどこに隠していたのか薔薇の花束を差し出す。
「ほ~ら、ハルヒにプレゼントだ。今日は俺達が恋人同士になって一ヶ月目の記念日だからなっ」
「わあっ、ありがとうございます!すごく綺麗……」
うっとりとするハルヒを見つめながら、環は優しげに囁く。
「ハルヒのほうが、綺麗だよ……」
「環先輩こそ……」
そのまましばし熱っぽく見つめ合った後、二人はどちらからともなく唇を重ねた―。


42:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:28:48 5n0cBIXX
「な、何、今の?夢にしてもイヤすぎる……」
ようやくハルヒが目を覚ましたのは、ほぼその日の授業が終わる時刻だった。
それにしても、強烈な夢を見てしまったものだ。
恋をすると人は変わるというが、まさかあそこまで変わるはずはないと自分に言い聞かせ、
ゆっくりと上体を起こす。
薬と十分な睡眠のおかげか、風邪はかなり快方に向かっているようで、
朝とは比べものにならないほど体の調子が良くなっている。
今日のところは部活を休んで家でおとなしくしていようと思って帰り支度をしていると、
唐突に保健室の扉が開いた。
近寄って来るその人の姿を確認したハルヒは、急激に鼓動が早くなるのを感じた。

「ハルヒ。もう、風邪は大丈夫かっ?!」
「ヒィィッ、環先輩っ!」
思わず悲鳴じみた声をあげて後ずさるハルヒに怪訝な顔ひとつせず、環は彼女の額に手を当てる。
ハルヒの顔が、見る見るうちに赤く染まっていった。

――環先輩の触れてるところが、熱い。そういえば、あの時も……。
額にキスされた時の事を思い出し、ハルヒは困惑した。
「まだ顔が赤いじゃないか、ハルヒ!や、やっぱり病院に…!」
環はにわかに取り乱し、ハルヒの腕を引く。
「い、いいです!部活を休んで家で静かにしていれば、平気ですからっ!」
ハルヒは必死に彼の腕を振り解いて、廊下に駆け出した。
……しかし、足が遅いうえに病み上がりなのですぐに追い付かれてしまう。

「自分は大丈夫ですから、環先輩は部活に行ってください!」
「ダメだ、ハルヒが心配なんだ!」
心配しているという環の言葉に、ハルヒの胸が高鳴る。
……が、それを打ち壊したのは、彼が次に言ったお決まりの言葉だった。
「ハルヒは俺の可愛い娘だからな、おとーさんが家まで送っていってあげよう!」

おとーさんと、可愛い娘。
環の家族設定は、今に始まったことではない。
以前だったら、それほど気に留めることもなかっただろう。
だが、彼への特殊な感情を自覚しつつあるハルヒにとって、それは残酷な響きになっていた。
それこそ、何の感情もないと言われるほうがまだマシかと思えるほどに。

自分は環に大切に思われている…、だけど恋愛の対象ではない。
そう思った刹那、ハルヒの中で燻っていた感情が堰を切って溢れ出す。
「じ、自分は……」
「んー?どうしたのかにゃ、ハルヒ?」
「自分は環先輩の娘じゃないし、先輩の事もおとーさんだなんて思っていませんからっ!!」
そう言って、ハルヒは再び駆け出した。

ハルヒの言葉に衝撃を受けたのか、今度は環も追って来ない。
そのままハルヒは帰路につき、自宅に戻ると早々に布団に潜り込んだ。
しかし、やるせない気持ちを抱えたままで眠りにつくのは、容易な事ではなかった。


43:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:31:08 5n0cBIXX
その翌日、ハルヒは珍しく学校を休んだ。
風邪はほとんど治っていたが、環と顔を合わせるのがどうにも辛くて、そうしてしまったのだ。
だからといって特にする事があるわけでもなく、
ハルヒは布団の中で参考書などを読んで過ごすしかなかった。
昼過ぎに、美容院の予約があるからと父が普段よりだいぶ早く出かけてしまった後、
彼女は何とはなしにメイが置いていった雑誌を手に取った。
一昨日何度も読み返した特集ページを開くと、ココロ診断チェックの見出し文が目に入る。

あの人の事をどう思っているの…?

そこでごく自然に環の顔を思い浮かべ、ハルヒは胸の疼きを覚えた。
試しにもう一度診断チェックを試みるが、結果はこれまでと全く同じである。
さすがに、項目の下のほうにある【その人とHするところを想像したことがある】や、
【想像を元にひとりHしちゃったことがある】などは当てはまらないが、
他はだいたいパーフェクトだった。
――やっぱり自分は、環先輩が好きみたいだ。
 …イヤだ、どうしてこんな事になっちゃったんだろう……。

ようやく恋心を自覚した自分と、はっきりしない環の態度を考えると、切なくなってくる。
自分が一人で胸を痛めているのに彼の態度は相変わらずで、全く本心がつかめない。
それに苛立って、初めて力いっぱい彼の家族設定を否定した。
恐らく、あの後彼はショックに打ちひしがれただろう。
だが、ハルヒの悲しみはそれ以上だった。
気持ちのすれ違いが、こんなにも苦しいなんて……。

辛い気持ちを紛らわす為に、ハルヒは今まで目を通していなかった後方のページを捲った。
「……えっ、何この特集?!」
そこにあった予想外の特集ページに、思わず声をあげてしまう。
それは、【愛されギャルのための激ヤバ☆セクシーテク】というもので、
彼氏をその気にさせる方法から、かなり過激なHのテクニックまでが載っていた。
綴じ込み付録が付いていたので何かと思えば、
【彼との愛をもっと深めたいギャル達にプレゼント!
 このフェロモンの香りつきスキンを使えばラブ度UP間違いナシだねっ☆】
などと書かれている。

数分後。
記事の過激さにびっくりして一度は雑誌を閉じかけたハルヒだったが、
わずかな好奇心に負けてついついその特集を読みはじめていた。
「…わっ、すごい。こんな事までするんだ……」
彼氏を悦ばせるテクニックや好きな体位で分かる彼の性格診断など、
それまで勉強ばかりしてきた彼女の目には、ほぼ全てが新鮮に映る。
いけないと思いながらも、次第に夢中になっていった。

――も、もしいつか環先輩とこんな事になったら…、イヤ…そんな…で、でも……。
いつしかハルヒの脳内では、イラストの男女が自分と環にすり替わっていた。
どうしようもなく胸が締め付けられ、体の奥のほうから得体の知れない熱が湧き上がってくる。
初めて感じるそれが何なのか、よく分からない。
だが、不思議と嫌な感じはしなかった。

*          *

44:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:32:48 5n0cBIXX
一方そのころ、第三音楽室。
本日の部活はミーティングの予定だったが、話し合いがほとんど進まないため、
早々に解散となった。
ハルヒの欠席は仕方がないが、問題はそれだけではない。
昨日のハルヒとの一件から、環はまるで抜け殻のようになっていた。

「昨日、ハルヒと何かあったのか?」
他の部員が帰った後、環は鏡夜に呼び止められた。
他の部員の前で問いかけられる雰囲気ではなかったので、二人きりになるのを待っていたという。
そういえば、最近やけに光が苛立っていてみんなの様子も微妙におかしいとは思っていたが、
その理由が分かる環ならば、ハルヒとの一件で悩むこともなかっただろう。

「…ハ、ハルヒに、言われた……」
「……何をだ?」
「おとーさんでも娘でもないと言われたアアアァァ~ッ!!」
目に涙を浮かべながら、環は昨日のやりとりを一気に捲し立てた。
一人で考えてもハルヒの態度の意味が全く分からず、
本当はずっと誰かに相談したくて堪らなかったのだ。

一通り聞いてから、鏡夜が尋ねてきた。
「それで?おまえは、何故そう言われたのだと思う?」
「病院に連れて行こうとする俺が鬱陶しかったのか…いや、しかしそんな事で、
あそこまで言わなくても……。それとも、熱のために思ってもいない事を……?」
環は、まるで見当違いな自問自答を繰り返す。
そんな彼に苦笑しつつ、鏡夜が思いがけない助け舟を出してきた。
「思い切って、見舞いがてら本人に尋ねてみるのはどうだ?」
「…そ、そうだな。今日は仕事見学の予定もないし、そうしよう!ありがとう鏡夜、
やはり持つべきものは親友だなっ!」

顔を上げて意気揚々と部室を出て行く環の背中を見送りながら、鏡夜が呟く。
「…まあ、いいか。ハルヒに余計な助言をするなと言われたが、
おまえにするなとは別に言われていないからな……」
「……ん、何か言ったか?」
「いいから、早く行け!ああ、それと見舞いの品は、部費からじゃなくおまえ個人で出すように」

     *       *       *


45:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:33:42 5n0cBIXX
……どれくらいの時間が経っただろう。
ハルヒは、熱に侵されたかのように何度も先ほどの特集ページを読み返していた。
ひょっとしたら、一昨日ココロ診断の記事を読んでいた時よりも夢中かもしれない。
正に、一心不乱という言葉が当てはまる状態だ。
そんな彼女の意識を、唐突に鳴った玄関のチャイムが現実に呼び戻す。
「……!!」
我に返ったハルヒは、雑誌を慌てて枕の下に隠して起き上がった。

父は美容院の後そのまま仕事に行くと言っていたし、宅急便が来る予定も聞いていない。
いったい誰だろうと思いつつ、覗き穴から様子を伺ってみる。
「あっ……!」
訪問者の姿を確認したハルヒは、心臓が跳ね上がりそうになった。
誰よりも会いたかった、そして会いたくなかった人がそこにいたのだ。
――ど、どうして環先輩が!!?
ゆっくりと深呼吸して少しだけ心を落ち着けてから、ハルヒは意を決してドアを開けた。

「や、やあハルヒ。心配で見舞いに来たのだが、上がってもいいかな?」
ぎこちなく微笑みながら果物籠を差し出す環を目の前にすると、ハルヒの顔は俄かに紅潮した。
「…ど、どうぞ。風邪ならもう良くなりましたけど」
籠を受け取り、赤くなった顔を見られぬように後ろを向いて部屋に戻る。
だが、変な所で目ざとい環には、たちまち気付かれてしまう。
「その割にはまだ顔が赤いではないか、寝ていなければダメだろうっ!?」
と、彼は部屋に上がるやいなやハルヒの腕を引き、有無を言わせず布団の中に押し込んだ。

「本当に、もう平気ですからっ!…これは風邪のせいじゃなくて……」
ハルヒは、すぐに上体だけを起こして抗議しようとした。
だが、風邪でなければ何なのかと説明することも出来ずに、途中まで言いかけて沈黙する。
そんな彼女を環はしばらく布団の傍に座って無言で見ていたが、
やがて姿勢を正すと、少しずつ話を切り出した。

「…ハルヒ、昨日の事なのだが……」
「……はぁ」
「俺は、本当にハルヒの事を可愛くて仕方がないと思っているんだ。
だから、おとーさんでも娘でもないとか言われて、正直悲しい……」
そう言って寂しげに眉根を寄せる、環。
そんな彼の姿に、ハルヒの胸が痛む。
彼を哀れんで、申し訳ないと感じたわけではない。
やはり彼にとって自分は娘でしかないのだと、再認識させられた悲しさからだった。



46:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:36:13 5n0cBIXX
     *      *       *

「そうですか……」
淡々とした、ハルヒの声。
自分の話など聞く耳持たないとでも言いたげな生気の篭らぬ声音に、胸が締め付けられる。

ハルヒがどうしようもなく可愛くて、構いたくて堪らない。
笑顔を見ると嬉しくて、傍にいるとキスしたいと感じるほど、愛しく思っている。
彼女がこんなにも愛しいのは、何故だろう?
肉親以外にこんな気持ちを抱いたのは、初めてだ。
遠く離れた母を思う気持ち、父に褒められて嬉しい時の気持ち……。
それと似ているような、少し違うような不思議な感情。
それが何なのか、分からない。

分からないから、素直にこれは肉親への愛情と同じ類のものなのだと思うことにした。
血が繋がらなくても、強い絆で支え合う義理の親子だってたくさんいる。
だから、自分はハルヒの父親のようなもので、彼女は可愛い娘。
やたらと彼女を構わずにいられないのも、キスしたいと思うのも、父親ならば当然の事。
おかしいわけが、あるものか。
ずっとそう思ってきた、それで満足だった。

それなのに……。

この頃、どうにもハルヒに避けられている。
以前にも反抗された時期があって、その時はすぐに元通りになったが、今回は本格的だ。
傍に寄れば、逃げられる。
話しかけても、視線を逸らされる。
具合が悪いせいかと思って心配すれば、父でも娘でもないと言われた。

父ではないというなら、ハルヒにとって自分の存在は何だろう。
絆がなくなってしまうのが辛い、彼女がどう思っているのか分からない。
鏡夜は、分からないならば本人に聞けば良いと言った。
だから、環は勇気を出してハルヒに問う。
「…ハルヒは、おとーさんだと思っていないと言ったが、だったら俺はハルヒの何なんだ?」

     *      *        *

「それは……」
ハルヒは下を向いたまま、掛け布団を強く握り締めた。
「…以前は、娘と言われても全く平気でした。でも、今は違います……」
「何故だ?」
首を傾げる環に僅かな苛立ちを覚えながら、ハルヒは軽く深呼吸する。
そうすることで、爆発してしまいそうな感情を抑えようとした。


47:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:38:16 5n0cBIXX
「最近、正直言って自分は環先輩と一緒にいるのが辛いんです」
「つ、辛いって…。や、やはり俺を嫌いに……?!」
ハルヒの言葉にショックを受け、環はこの世の終わりのような顔をする。
「ち、違うんです!ただ…」
慌てて否定するが、その後が続かない。
「そうか、それなら良いが。…それで?」
環は胸をなでおろし、ハルヒの言葉を促す。
「い、一緒にいるととても胸が苦しくて、それなのに環先輩の事ばかり考えてしまって、
風邪だと思ったけど実は違って…あの、その……」
言葉を紡ぐ度に緊張感が高まり、次第に自分が何を言っているのか分からなくなってくる。

「…そ、それでやっと分かったんです。自分が…環先輩に恋…してるって!」
「…こ、恋……?!!」
環の瞳が、大きく見開かれる。
その表情から自分の発言に気付いたハルヒは、しばしの動揺の後ゆっくりと唾を飲み込んだ。
そして、勢いよく布団を撥ね除け、環を見据える。
「…好きなんです。だから、たとえ環先輩が自分を娘だと思い続けても、
もう自分は環先輩の娘ではいられません!」
「ちょ、ちょっと待てハルヒ!…こ、恋とか好きとか…って……」
環はシドロモドロになっているが、彼女はさらに続ける。
「親子の愛と恋する相手に対する気持ちは、似ているところもありますけど、別のものです。
だから自分は環先輩に、出来る事ならば…女の子として意識してほしいんです!」

言い終えた後で、ハルヒはうつむいた。
環に思いの丈を全て打ち明けた……。
勢いで捲し立てたものの、じわじわと恥じらいと不安が押し寄せてくる。
これで良かったのだろうかと、後悔の念に苛まれる。
今まで環はハルヒを娘のように思い世話を焼いてきて、
ハルヒはそんな彼を時にうざいと思いながらも尊敬してきた。
しかし、気持ちを伝えてしまったからには、もう今までどおりではいられない。
ふと環を見上げてみると、彼は未だ衝撃覚めやらぬらしく、どこか焦点の合わない目をしている。
そんな彼の様子は、ハルヒをさらに不安にさせた。

    *      *       *

ハルヒの突然の告白は、環の心を激しく掻き乱した。
彼女は環に恋愛感情を抱いているから、娘だと思わないでほしいという。
そして、肉親に対する愛情と恋愛感情は、似て非なるものだというのだ。

――…では、ひょっとしたら俺のハルヒを可愛いと思う気持ちは、父性愛とは違うのか?
 いや、しかし可愛い子供にちゅーしたいと思うのは普通だと、誰かに言われたような…?
 …待てよ、でもハルヒは俺に恋していて、恋というのは普通親子ではしないもので……。
 だとすれば、俺はハルヒを……?…いや、でも……。


48:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:40:08 5n0cBIXX
ハルヒに対する感情は父としてなのか、そうではないのか。
環の脳内で二つの考えが交錯し、今まで揺るぎのないものだった、
勘違いと思い込みで築かれた心の枷が綻びはじめる。
しかし、恋愛感情なのかといえば…正直よく分からない。
持ち前の女性に優しい性格と接客テクニックから、女性の扱いに慣れてはいる環だが、
実のところ誰かに恋をした事はまだ一度もなかった。
正直、どんな気持ちが恋なのかがよく分かっていない。
だからこそ、それが知りたくてストレートに質問してしまう。
「…ハルヒ、聞いていいか?恋って…どんな気持ちなんだ?」

     *       *      *

「ま、まさか分からないんですか?」
環が頷くと、ハルヒはしばし呆然とした後、枕の下から雑誌を取り出し、
ココロ診断の特集ページを開いて渡した。
自分がそれを読んで恋心を自覚したように、環にも同じ効果がおとずれる事を祈って……。
「どうぞ、男の人だと少し違うかもしれませんけど……」
雑誌に目を通しながら頷いたり考え込んだりしている環を見つめつつ、ハルヒは溜息をついた。
自分もそれを読むまで気付かなかった事はとりあえず棚に置いて、考える。
――はぁ、本当に何でこんな面倒くさい人を好きになっちゃったんだろう……。

数分後、環が無言で雑誌を返してきた。
ハルヒはそれを布団の上に置いて、恐る恐る尋ねる。
「…で、どうですか?分かりました?」
「……!!!」
途端に、彼は弾かれたように肩を震わせる。
「……し、しばらく、一人になりたい!」
と、環はハルヒの返答も待たずに立ち上がり、隣の部屋に行く。
……が、一分も経たないうちにイライラした様子で襖を開けた。
「ええい、落ち着かんっ!他に部屋はないのかっ!?」
「他の部屋って…、お風呂かトイレしか……」
二部屋しかないアパートを豪邸と一緒にされては困ると思いつつ答えると、
彼は一目散にトイレに向かった。
「…環先輩、どうしちゃったんだろう…?」
ハルヒは彼の行動の意味が理解出来ず、キョトンとした顔で首を捻った。


かなり時間が経ってから戻ってきた環は、、やや上気した面持ちで言った。
「…な、何というか…俺の疑問と矛盾が全て繋がったような……」
「え?それってどういう……」
ハルヒが首を傾げていると、彼は何度か咳払いをしてから話しはじめた。


49:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:40:58 5n0cBIXX
「ハ、ハルヒ!聞いてくれるか?…俺は今、家の事業のサービス分野について学びはじめたが、
それは自分の働きで多くの人々を笑顔にしたいと思ったからなのだ!」
「はい、それはこの前聞きましたが…」
「人が幸せそうに笑っているのを見ていると、自分まで嬉しくなるだろう?」
この話をする時、決まって環は活き活きとしている。
ハルヒはそんな彼の表情が好きだが、何故それを今話すのかと少し不思議に思った。
そういえば、ココロ診断にも『その人が嬉しそうだと自分も嬉しくなる』と書かれてはいたが…。

「…それで、ハルヒはどうすれば笑ってくれる?」
「……え?」
そう言われて、ハルヒは環を凝視した。
「以前からハルヒの表情が曇っているのを見ると、胸が痛んだ。そんな時は決まって、
可愛い娘が心配なのだと思っていたが、どうやら俺はずっと自分の気持ちを穿き違えていたらしい。
一番見たいのはハルヒの笑顔だ。だから、出来れば俺の傍で笑っていてほしいのだが…ダメか?」
「そ、それって、娘としてじゃなくて……?」
ハルヒは、今までにないくらいの胸の疼きを感じた。
環が自分を見つめて何か言っているが、激しい鼓動と緊張でよく分からない。

ただ呆然としていると、不意に優しく抱き寄せられた。
背中にまわされた彼の腕のぬくもりと、首筋にかかる熱い吐息。
それが与えてくる不思議な安心感に、胸のつかえが和らいでいく。
「…ハルヒが好きだ。多分、ずっと前から……」
「環先輩っ……!」
ハルヒは少しだけ環の腕が緩むと同時に、顔を上げる。
先ほどまでは不安で堪らず、氷の世界にいるようだった。
だが、今はこんなにも暖かい。
自然と笑みになるのが、自分でもよく分かる。

幸せそうな彼女の笑顔を確認した環は、
「ハルヒは普段も可愛いけど、笑顔が一番可愛いぞ!」
と耳元で囁いて、再び腕に力を込めた。
ハルヒの胸の奥が、キュンと疼く。
でも、それは今までとは違い、ちっとも苦しいものではなかった。


それからしばらくして、ハルヒはふと違和感に気付いた。
環が、布団の上を凝視している。
「どうしたんですか?環先……ぁああっ!!」
環の視線の先にある物に気付いて、ハルヒは蒼白になった。
先ほど彼に見せたギャル雑誌……しかも開き癖がついていたらしく、
【愛されギャルのための激ヤバ☆セクシーテク】のページが開かれている。
「イヤーッ!な、何見てるんですかっ!」
と、ハルヒは環の腕から抜け出して雑誌を取ろうとしたが、間一髪で彼に先に取られてしまった。


50:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:42:09 5n0cBIXX
「…そ、それは違うんですっ!自分は、その……」」
横であたふたとうろたえるハルヒを尻目に、環は食い入るように特集記事に見入っている。
その瞳が次第に怪しげな輝きを増していくのに気付くと、彼女の狼狽ぶりは加速した。
「た、環先輩!あっちの部屋でお茶にしませんかっ?!」
そう言って居間に行こうとするハルヒの腕を、環が掴んだ。
彼は頬を紅潮させて、真剣に尋ねてくる。
「ハ、ハルヒ。これが庶民の常識なのかっ?!!」
と、彼が指差したページには、こう書かれていた。

【大好きな彼とすぐにHした~い!これ、Lipギャルのマジ常識!!】

「そ、そんな事……!」
そこまで言いかけて、ハルヒは環が訪ねて来るまでその特集を読んで、
自分が想像していた事を思い出し、真っ赤になって口を噤んだ。
自分の想像を恥じるハルヒの姿を変な方向に勘違いしたのか、環はさらに頬を上気させて言った。
「今まで、こういう事はしばらく清い交際をしてからと思っていたが、ハルヒがそうしたいなら、
俺は別に今すぐでも構わないぞ……!」
予想外のセリフに、ハルヒは軽い眩暈を感じた。
その肩に、環の腕がまわされる。

「わぁぁっ、…ちょ、ちょっと……!」
ハルヒが慌てふためきつつ腕を撥ね退けようとすると、環はいささか寂しげな表情になった。
「俺に触れられるのが嫌なら、無理強いはしないが……」
そんな彼の潤んだ瞳に、ハルヒは釘付けになる。
角度によって微妙に色合いの変わる、生粋の日本人に比べて色素の薄い瞳。
彼に見つめられると、絆されてしまいそうになるのは何故だろう。
環から目を逸らせぬままで、考えを巡らせる。


51:Voi che sapete 前編
08/01/02 21:44:16 5n0cBIXX
――ど、どうしよう。環先輩に、これはごく一部の進んだ人達だけの常識だって言わないと…、
 で、でも何か既にその気になってるみたいな感じだし……。
 そ、そりゃいつかは…だけど、今からなんて……!

「た、環先輩。自分は……」
「ハルヒ……?」
環が、熱っぽく見つめてくる。
ハルヒはやっとの思いで僅かに視線を逸らし、消え入りそうな声で言った。
「嫌…じゃ…ないです……」

環はゆっくりと頷き、頤に指をかけた。
そのまま人差し指のみを動かし、唇をなぞる。
「ん……」
神経の細やかな唇の表面に触れられた僅かなくすぐったさと気恥ずかしさに、
ハルヒは思わず目を閉じた。
そこに感じた彼の吐息によって、互いの唇が近付くのが分かる。
緊張感と少しの期待に、胸が高鳴った。

しかし、それから十秒ほど経っても状況が変わらない事を訝しげに思って目を開けてみれば、
環は唇に触れる寸前で動きを止めていた。
そして至近距離で見つめられている事に気付き、慌てたように距離をとる。
「どうしたんですか、環先輩……?」
ハルヒが声をかけると、環は微妙に視線を逸らす。
「い、いや。ハルヒと初めてちゅーすると思うと、何だか緊張して……」
その言葉にハルヒは、そういえば彼の指が微かに震えていることに気付き、笑みを漏らした。

「こ、こら!笑うのは失礼じゃないか、ハルヒ」
「…あ、すみません。てっきり、環先輩はこういう事平気で出来る人だと思っていたもので……」
そう言いながら、普段お客様相手に王子様モードで接する環の姿や、
以前自分の額にすんなりと口付けた時の事を思い出す。
「あ、相手がハルヒで、もう自分がおとーさんではないと自覚するとだな……。
やはりドキドキするだろう、どうしても…!」
「……環先輩も、自分と同じなんですね。少し安心しました」
と、ハルヒは微笑んで、再び目を閉じた。
程無く環の吐息がかかるのを感じ、今度こそゆっくりと二人の唇が重なった。

軽く触れて一度離れた後、環の舌が唇をなぞり、少しずつ口腔へと侵入してくる。
その熱さとぬるりとした感触に、ハルヒは小さく身を震わせた。
好きな人とする口付けは、額にされるのとは比べものにならないほど心地良く、胸を高鳴らせる。
順応力が高いためか、先ほどまで緊張に震えていたはずの環は、早くも積極的に舌を絡ませ、
口内を刺激していく。
ハルヒは戸惑いながらも、次第に柔らかで熱い感覚の虜になっていった。

 後編に続く

52:名無しさん@ピンキー
08/01/02 21:56:21 DNXJJ9/C
>>51
GJ!
後編も楽しみだ

53:名無しさん@ピンキー
08/01/02 22:14:39 Dw1XQg8f
GJ!!!
二人のドキドキが感じられて、読んでるこっちまでドキドキしてきたw
後編楽しみにしてます

54:名無しさん@ピンキー
08/01/02 22:23:20 dnkbqmSa
ググググッジョブ!!
新年早々よいもの読ませていただきました。もち、続きにwktk

55:名無しさん@ピンキー
08/01/02 22:35:39 XJNOTo9l
新年早々キタ゚;・。*・。:*゚(゚∀゚)゚*:。・*゚゚!!GJ過ぎるだろ…

>>49の環の告白には不覚にもちょっと感動した。読んでて幸せになったんだぜ…。
「一人になりたい」ってのが環らしくてワロスw
にしてもいいとこで切りやがってw後編期待。

56:名無しさん@ピンキー
08/01/03 00:13:28 ecXFCbOf
あけおめGJ
今から後編を全裸にコート待ちだ!
ところでタイトルは何語ですか?

57:名無しさん@ピンキー
08/01/03 00:31:44 y9Vv1VRf
やばいほど、ドキドキしましたー!!最高です!!
ゆっくり自覚していくところとか感動しました!!キスに動揺するとかいいw
前編の純愛は本当に良かった!
後編もすごく楽しみに待ってます!!

58:名無しさん@ピンキー
08/01/04 13:08:27 RKURY6qB
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・) 後編ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__)+

59:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:05:55 4sAYYDZC
こんばんは、「Voi che sapete」の後編です。
注意書きは>>40にあります。
ちなみにタイトルはフィガロの結婚より「恋とはどんなものかしら」で、イタリア語です。

60:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:07:04 4sAYYDZC
十分に口腔の感触を楽しんだ後、環はハルヒをそっと布団の上に横たえさせた。
そして、上着の裾から手を差し入れて、下着越しに彼女の胸に触れる。
「…あっ……」
未だ口付けの余韻に浸っていたハルヒは、突然の刺激に声をあげた。
長袖カットソーと膝丈のハーフパンツという部屋着の下には、
薄いキャミソールとコットンのショーツしか着けていないため、
薄布一枚のみを隔てて、環の掌の感触が如実に伝わってくる。
彼はそのまま鼓動を確かめるようにハルヒの控え目な胸を包み込み、何度か緩やかに撫でると、
今度は上着をキャミソールごとたくし上げてきた。

「…あ、あのっ。じ、自分で脱ぎますからっ!」
ハルヒが恥じらいながら自分の上着を押さえると、環はいささか不服そうな顔をする。
「で、では、こういうのはどうだろう?俺の服はハルヒが脱がせていいから、
ハルヒの服は俺が…ということで」
「それも遠慮しときますっ!…いいから、少し後ろ向いててください」
環の提案をあっさり却下して上体を起こすと、ハルヒは背を向けた。
彼が後ろを向いて制服のブレザーを脱ぎはじめるのを確認してから、
少し恥じらいつつ上着に手をかける。

      *       *       *

互いに上半身のみ裸になってから、環はハルヒを再び押し倒した。
横たえられたハルヒは、両腕を胸の上で交差させ体を硬くしている。
彼の視線を少しでも避けようといじましい抵抗をしている姿が、何とも可愛らしい。
「ハルヒ、腕を退けてもらえるかな?」
「…い、嫌ですっ!」
ハルヒの胸は、同じ年頃の女生徒達に比べると幾分控え目な部類に入る。
普段は然程それを気にしているふうにも見えないが、やはり好きな相手に見られるとなると、
気になるらしい。

「ハルヒ、気にしなくていいぞ。俺は、胸が小さいくらいで嫌いになったりしないから…」
「環先輩、優しい口調でさりげなくひどい事言ってませんか?」
ハルヒは頬をますます紅潮させ、腕に力を込める。
彼女の緊張を解そうと思っての発言が裏目に出てしまい、環は焦った。
そして、いかにして状況を打破すべきかと、違う方法を考える。

「すまない、ハルヒ…。でも、さっき言った事は本当だから」
「だ、だから、それが……」
「好きだよ…」
文句を言いかけたハルヒの頬に軽く口付け、環は耳元で囁いた。
不意な口付けにたじろぎ、彼女の腕が緩む。
さらに環が貴婦人にするかのごとく左手の甲にも優しく口付けると、
ようやくハルヒは腕の力を抜いてくれた。
程無くして、環の眼前にハルヒの白く瑞々しい肌が晒される。


61:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:08:02 4sAYYDZC
サイズ的には控え目だが形の良い柔らかそうな双丘に、環は早くも釘付けになった。
吸い寄せられるようにそこに指を伸ばし、優しく包み込む。
「や…、くすぐったいです……」
敏感な肌に初めて他人の指が触れる感覚に、ハルヒが身を捩る。
柔らかく滑々とした感触を楽しんでいるうちに、
環はその先端が次第に硬さを増していく事に気付いた。
その部分を摘み指先で刺激すると、ハルヒの体がビクリと戦慄いた。
「やぁんっ……!」
自分の上げた声に驚き、口元に手を当てるハルヒ。
その柔肌が、桜色に染まっていく。
初めて聞いた彼女の甘やかな声音に、環は疼きを覚えた。
本などで得た知識から、男女の営みの方法とテクニックについて知ってはいたが、
実際にするとなると、新鮮な驚きの連続である。

まだ娘だと思っていた頃から、ハルヒの事を考えていると時折感じる熱い気持ち。
そんな時は決まって、おとーさんなのに娘に劣情を抱くなんて変態じゃないかと自分を責めた。
だが、ようやく自覚した今では違う。
先ほど読んだ雑誌によれば、好きな相手にそういう感情を抱くのはごく普通であるという。
それだから、もうひた隠しにはせず、感じた欲求に素直になろうと決めた。

――ハルヒの感じる声が、もっと聞きたい!
そう思いながら、環はハルヒの胸を執拗に愛撫した。
手の中にすっぽりと収まる柔肉を揉みしだき、硬く尖った先端を指先で捏ね回す。
それを続けながらもう片方の果実を口に含み、強弱を付けて吸い上げる。
「あ…環先輩、そこ…だめぇっ!」
ハルヒが高く掠れた声を上げ、むずがる子供のように首を振る。
その声と仕草、初めての快感に羞恥する表情などの全てが、環を昂揚させた。
体の奥から湧き上がる熱が、次第に理性を支配していく。

胸への愛撫に朦朧とするハルヒの腰を浮かせ、ハーフパンツを下ろしていく。
徐々に露になる白い下着と制服の時はズボンに覆われているほっそりとした太腿に魅入られつつ、
それを抜き取り傍らに置いた。
剥き出しになった足にヒヤリと空気が触れるのを感じたハルヒが、
そこで初めて下着一枚になっている事に気付いたのか、気恥ずかしさに身じろぐ。
環は彼女の内腿に手を這わせ、少しずつ上に撫で上げていった。
やがてショーツまで指を到達させると、軽く唾を飲み込んでから中心部に触れる。

薄いコットンの布越しにハルヒの体温が感じられ、次いでじわりとした湿り気が……。
そのまま指をめり込ませると、染み出した愛液が環の指を濡らした。
「…すごいな。ハルヒのここ、濡れてるぞ……」
「やあぁっ、言わないでください…っ…」
ハルヒは頬を赤らめ、恥ずかしげに目を伏せる。
堪らなくなった環は、彼女のショーツに手をかけた。

62:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:09:11 4sAYYDZC
「ちょ、ちょっと環先輩っ…!」
焦るハルヒの抵抗を難なく撥ね退け、一気に脱がせてしまうと、
彼女は小さく悲鳴を上げて太腿を閉じようとした。
しかし環は、それを遮って開かせようとする。
小柄なハルヒが男の力に敵うはずもなく、あっさりと彼女の秘部が彼の眼前に晒された。
初めて目にした薄い恥毛と無垢なスリットに、環はかつてない昂りと疼きを感じた。

期待と緊張で微かに震える指で陰唇を広げ、秘所の粘膜を露にしていく。
「みっ、見ないでくださ…いっ……」
ハルヒがそこを好きな相手に晒す羞恥に身を震わせるが、環は行為を続ける。
そして、剥き出しになったその部分を、なめるように観察し始めた。

幾重にも連なる薄いサーモンピンクの粘膜の襞と、奥に続く小さな窄まり。
その上にちょこんと存在する桃色の突起と、そこから覗く赤く充血した陰核。
それらが全てぬるぬるとした愛液で濡れそぼり、誘うように妖しく光っている。

「…ハ、ハルヒはいけない子だな、ここをこんなにグチョグチョにして…!」
「で、でもそれは…環先輩が…するから……!」
「人のせいにするなんて、いけませんっ!そんなハルヒにはお仕置きが必要だなっ!」
環は一喝して、さらに何か言おうとしたハルヒの唇を強引に塞いだ。
もしも冷静な時だったら、道理に合わない事を言っているのは自分のほうだと気付いただろうが、
今の環に最早そこまでの精神的余裕はなかった。
体の疼きに支配されて、自分を律する事が出来ない。

ほんの三十分ばかり前に初めてしたのとは別人のような荒々しさでハルヒの唇を貪りながら、
陰核を指で刺激しはじめる。
すぐに硬くなってきたそこを二本の指で挟み、強弱を付けて擦ると、彼女の腰が小刻みに震えた。
「……っ!」
ハルヒが快感と息苦しさから何とか逃れようと、懸命にもがく。
さすがにやりすぎかと思い唇を解放してやると、彼女は酸素を求めて荒く息をついた。

「…ら、乱暴にしないでください!せめて、もう少し優しく……って、
ちょっと…た、環先…ぁああっ!」
そんなハルヒの抗議を受け流し、環は再び彼女の秘部を弄る。
普段の彼であれば、このような時はすぐに謝罪して行為を止め、
場合によってはしばらく落ち込んだかもしれない。
しかし、理性を失いつつある今は、そうではなかった。
まるで自分の中に眠っていた獰猛な獣が目覚めてしまったような感覚に、戸惑う。
ハルヒに酷い事をしたくはないのに、どうしても止められない。

粘膜の襞をかき分け秘洞の入り口を探り当てた環は、少しずつそこに指を埋没させていく。
「や…、だめっ、あああっ…!」
無垢な秘洞に初めて男の指を受け入れたハルヒが、異物感に顔を顰めた。
彼女のそこは環が想像していたよりも随分と窮屈で、彼の指をきつく締め付ける。

63:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:10:29 4sAYYDZC
「…うわ、ハルヒの中狭いなぁ…。でも……」
「…で、でも……?」
「ぬるぬるで暖かくて、気持ち良いぞ!」
と、環は挿入した指を動かしはじめる。
すぐにコツを掴んで、緩急を付けて抜き差ししたり内部の硬い部分を擦ったりしていくと、
ハルヒは甘い声をあげた。
嬌声を聞く度に環の中の獣が反応し、彼を煽り立てる。
堪らず彼は指を二本に増やし、ハルヒの中を夢中で蹂躙した。

「…っ!いっ、痛いです…、やっ、環せんぱ…いぃっ…!」
明らかに嬌声とは違う、ハルヒの呻き。
それに気付いて指を抜いてみると、愛液にうっすらと血が混じっていた。
どうやら、処女膜の一部を傷付けてしまったらしい。
彼女を傷付けてしまった…その事実に、いささか胸が痛んだ。
「も、もう少し優しくしてほしいです。…じ、自分は、初めてなんですから…」
責めるような、ハルヒの視線。
その瞳が潤んでいる事に気付いた環は、彼女の秘所に舌を這わせた。

「ひ、あぁっ!…な、何を……?!」
「すまない、ハルヒ。…でも、これなら痛くないだろう?」
そのまま、舌と唇を使って愛撫を続ける。
陰核を舌先で突付き、溢れてくる蜜を音をたてて啜る。
「あ、ああぁ、やぁっ…!」
指で弄られるのとは違った快感と淫らな水音から逃れるべく、ハルヒが耳を塞ごうとした。
その腕を掴んでシーツに縫い止め、さらに愛撫を続ける。
「あぁっ、先輩…環先輩ぃっ……!」
ハルヒが高く掠れた声を上げ、身を捩る。
桜色に上気した肌と熱い吐息、快感に喘ぐ悩ましげな表情。
それらの全てが、環の熱を駆り立てた。
昂りを失わぬまま、自分本位なだけだった感情に、
愛しいハルヒを気持ちよくさせたいという新たな想いが加わる。

そうしてしばらくの間行為を続けているうち、ハルヒが大きく戦慄いた。
「ひ…あぁ、やっ…あああぁぁんっ!!」
ビクビクと体を震わせ、一際高い声を上げる。
彼女が絶頂を迎えたのだと悟り、しばし満足そうにそれを見つめた環は、
自分の下半身に纏った衣服を脱ぎ捨てた。
そして、痛いほどに張り詰めた彼自身をハルヒの秘裂にあてがい、
緩やかに擦り付けつつ入り口を探りはじめる。
ようやく可愛いハルヒと一つになれると思うと、嬉しくて口元が緩んだ。


64:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:11:26 4sAYYDZC

      *      *       *

一方、初めての絶頂の余韻から醒めつつあったハルヒは、不意に穏やかでない感触に気付いた。
指や舌よりもずっと大きい、熱くて硬いものが、先ほどから秘所をノックしている。
「……?!」
まだ上手く働かない頭をフル回転させて、ようやく状況を把握する。
いつの間にか自分と同じく一糸纏わぬ姿になった環が、
自分の腰を浮かせてその中心に下半身を押し当てていた。
「…ちょ、ちょっと環先輩っ?!」
慌てて上体を起こすと、環は動きを止めてハルヒを見た。
「…ん?どうした、ハルヒ?」
「…ヒィイッ……!」
彼と目を合わせたハルヒは、ビクリと震えつつ呻く。

――た、環先輩が、怖い!!
上気した頬と、獣のような荒く乱れた吐息。
ぱっと見には普段とそう変わらぬ端正な顔立ち…だが、その目はぎらりと怪しく輝き、
口元には歪んだ笑みを浮かべている。
初めて見る彼のその表情は、肉食獣が獲物を前に舌なめずりをする時のそれに少し似ていた。
怖いのに、その目を見ていると不思議と体が熱くなり、逆らえないような気分になる。

視線から逃れるべく下を向くと、目に飛び込んできたのは、すっかり臨戦態勢の彼自身だった。
無論、ハルヒはそんな状態の男性器を今まで見た事がない。
普段の環からはおよそ想像も付かない、そこだけ別の生き物のような器官。
少し前まで自分の秘洞を蹂躙していた彼の指の何倍もの大きさを誇るそれが、
これから挿入されるのかと思うと、ハルヒは戦慄した。

「…イ、イヤ!怖いっ!!」
涙を浮かべて震えるハルヒに、環が問う。
「何が怖いんだ、ハルヒ?確かに女の子は初めてだと痛いというから怖いのは分かるが、
いくら何でも少し大げさな……」
「た、環先輩が怖いんです!最初は優しかったのに、何だかだんだん乱暴になっていくし、
今だって目付きとかが獣みたいじゃないですかっ!」
「け、けだものって……」
思い当たる節があったのか、そこまで言いかけて環は口を噤んだ。
そして、ハルヒに背を向けて項垂れる。

「…す、すまない、ハルヒ。俺はおまえに酷い事を……」
「環先輩……」
先ほどまでとは打って変わって暗い表情を浮かべる環の姿に、ハルヒの胸が疼く。
「何というか…初めて見たおまえの可愛くていやらしい姿に理性が飛んで、
自分の暴走を止める事が出来なかった……。いけないと思っても、
どんどん心に余裕がなくなって…」
「………あの…」
耐え切れずに声をかけると、環はゆっくりと振り向いた。
その目が、捨てられた子犬のように潤んでいる。
そんな彼を見ているうちにすっかり絆されてしまったハルヒは、言葉を続けた。
「…怖かったけど、もう大丈夫です。…だから、えーと…今度は自分が環先輩に、
何かしてあげたいと思うんですが……」


65:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:12:40 4sAYYDZC
ハルヒからの意外な申し出に、環が信じられないという顔をする。
「……な、何でもいいのか?」
「は、はい。…あんまり特殊な嗜好のは困りますけど、
常識の範囲内でなら出来る限り頑張りますので」
そう言うと、環はパッと瞳を輝かせ、傍らの雑誌を手に取った。
早くも立ち直ったのか、嬉々として特集ページをめくる。
そこには、女性から男性を愛撫する方法とやり方がいくつか紹介されていた。

「…うーむ、このパイ…ってのは無理か」
チラリとハルヒを見て、環は小さく溜息をつく。
「今、失礼な事考えてなかったですか?」
その意図を悟ってきつい視線を向けると、彼は必死で誤魔化した。
「そ、そんなわけでは…。そ、それよりこれなんか良いと思うのだが、やってくれるかにゃ?」
彼が指差した場所には、こう書かれている。
【ギャルが最高のフェラテク教えちゃう!これで彼もメロメロ?!】
ハルヒはその記事を読んだ時の事を思い出し、頬を染めてたじろいだ。

「…あ、嫌なら他のやつでも……」
そう言う環の前にちょこんと座り、ハルヒは軽く頭を下げた。
「…じゃあ、失礼します。上手く出来るか分かりませんけど……」
頷く彼の前に身を屈め、恐る恐る怒張したものに手を伸ばす。
――こ、怖くない!ここだって、大好きな環先輩の一部なんだから…!
自分の心にそう言い聞かせつつ、近くで見ても変わらずグロテスクなそれに先ずは指先で触れ、
徐々に握っていく。

――環先輩の、熱い…。それにこんなに硬くて大きくて……。
初めて触れた彼自身に戸惑いながら、ハルヒはそれをぎこちなく撫で擦りはじめた。
雑誌の記事を思い出しつつ、竿の部分を握り裏筋を指先で刺激する。
雁首の辺りを突付いてみると、彼の剛直がさらに膨張したような気がして、少しうろたえた。
「…ハルヒ、それもまあ気持ち良いが、出来れば舐めてくれないか?」
「…あ、ああ。そう言われてみれば、そうですね」

一度唾を飲み込んでから、思い切って根元のほうに舌を這わせる。
舌を平らにして、アイスキャンデーの要領で少しずつ上に向かって舐めていく。
太く浮き出た血管に触れると脈動がダイレクトに伝わって、吃驚するのと同時に気分が昂揚した。
「ハ、ハルヒ、もっと先のほうを舐めたり咥えたり…」
「…もー!環先輩は、静かにしていてください!」
一喝した後、ハルヒは口を大きく開けて、歯を当てないように注意しながら、
剛直の先のほうを咥えていく。
圧迫感に耐えつつ亀頭に舌を這わせると、先走りのぬるぬるとした液が纏わり付いた。
少し苦いようなしょっぱいような不思議な味……。
でも、それが愛しい人が自分の拙い舌技に興奮してくれている証拠だと思うと、ドキドキする。


66:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:13:44 4sAYYDZC
鈴口を舌で突付きながらチラリと環の顔を見上げると、彼は切なげな表情でハルヒを見ていた。
――初めて見た。環先輩って、こういう顔もするんだ……。
ハルヒの中に、自分でもよく分からないモヤモヤとした感情が生まれる。
もっとその表情が見たくて、彼に気持ち良くなってほしくて、行為を続けた。
陰嚢を指先で撫で上げながら、舌と唇で鈴口や雁首を強弱を付けて刺激する。
しばらく夢中でそうしていると、環自身の脈動が一際激しくなった。
それと環の低い呻きに吃驚して局部から離れようとしたハルヒの口腔に、熱いものが迸る。
さらに剛直から迸り続ける白濁は、口を開けたまま呆然とした彼女の顔を汚した。
強烈な臭いと異様に青臭い味のする液体が喉奥をつたっていく気持ちの悪さに、
ハルヒは堪らず咳き込んだ。

「…す、すまないハルヒ!」
我に返った環が、慌ててティッシュを差し出す。
「無理しないでいいから、早く吐き出せ!」
「…も、もう飲んじゃいましたから、いいです。うぅ…」
受け取ったティッシュで顔に付いた白濁を拭き取った後、ハルヒは再び環自身に舌を這わせた。
そうすることで、少し前まで感じていた不思議な高揚感が甦ってくる。
「ハ、ハルヒ、もういいから…!」
「で、でも雑誌には、キレイにしろって書いてありますから…」
そう言って、鈴口に残る残滓を吸い出し、雁首と竿に付いた白濁を舐め取っていく。
その刺激に、彼の局部が再び熱を帯びはじめる。
ハルヒが後始末を終える頃には、すっかり硬さと大きさを取り戻していた。
「…うわ、すごい!またこんなになって……」
ハルヒは高揚感醒めやらぬまま、うっとりとそれを見つめる。
最初に目にした時に感じた恐れと驚きは、最早消え失せていた。

      *       *       *

ハルヒの艶めいた表情に、環は息を呑んだ。
体の中心がどうしようもなく疼き、愛しい彼女を一刻も早く自分のものにしたいという欲求が、
湧き上がってくる。
「…ハ、ハルヒ!」
「…はい、何ですか?」
「そろそろ、ひ、一つにならないか、俺と。…い、良いだろう?良いはずだっ!
俺が決めた、そう決めたぁぁぁっ!!」
緊張のあまり、だんだん自分が何を言っているのか分からなくなる。
だが、何とか伝わったらしく、ハルヒは恥じらいの表情で小さく頷いた。
「…や、優しくしてください」
「よ、よし。出来る限り努力するから、安心して任せるがいい!」
力強く頷いた後、環はハルヒを抱き締め、そっと布団に横たえさせた。



67:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:14:39 4sAYYDZC
ハルヒの上に覆い被さると、思い出したように彼女が言った。
「…そういえば、環先輩。避妊具なんて…持っていないですよね?
保健の授業で習った計算だと恐らく大丈夫だとは思うんですけど、
やっぱり出来れば…その、困るんで……」
環は枕の下から避妊具を取り出し、自信たっぷりで答えた。
「……あ、あるぞ!ゴムなら、ここに!」
先ほどハルヒから雑誌を渡された時に、綴じ込み付録を外しておいて良かったと思いつつ、
注意書きを見ながらそれを自身に装着していく。
そして、ハルヒの安堵の表情を確認してから、彼女の両脚を抱えて互いの局部を密着させた。
「…あっ…んんっ…!」
密着したままで擦り付けると、ハルヒは何とも可愛らしく喘いだ。
しばしそうした後、秘洞の入り口に剛直の先端を押し当てた。
これからの行為を恐れたのか、ハルヒがギュッと目を閉じて力を込める。
「ハルヒ、最初は痛いと思うが…優しくするから……」
そう囁き、耳朶と首筋に口付けながら彼女の緊張を解していく。
ハルヒの表情が心なしか和らぎ力が抜けた時を見計らって、環は腰を突き出した。

「…っくぅぅ…、ああぁぁ…!」
ハルヒの無垢な秘裂が、侵入者を拒むかのように剛直を押し返す。
それでも諦めずに何度も侵入を試みていると、次第に彼女の粘膜が寛げ、
徐々に環自身を受け入れていった。
熱い粘膜に覆われていく感触が、薄いゴムごしにじわじわと襲ってくる。
口腔とはかなり違う、何とも窮屈で熱く滑る感覚が気持ち良い。
しかし視線を落とせば、そこには痛みに顔を顰めるハルヒの姿。
相当痛いらしく、腰を進める度に背中にまわされた彼女の指先に力が入るのが分かる。

「だ、大丈夫かハルヒ?!」
「…痛いけど、環先輩とひとつになるためなら、これくらい我慢出来ます!
だから…、このまま一気にやっちゃってください!」
「一気にって……」
ハルヒの男前な発言に、環はたじろいだ。
だが、確かにじりじりと痛みが続くよりは、そのほうがまだ彼女への負担が少なそうではある。
そう考えて、狭い秘洞の中を貫いていくペースを速める。
先が少し入った所にある僅かな抵抗を押し進むと、ハルヒが一際苦しげに喘いだ。
「あああぁぁっ…!!」
結合部から破瓜の血が混じった蜜が溢れ、白いシーツに赤い花びらを散らす。
さすがに心配になり顔を覗きこむが、彼女はいいから続けてくださいと言った。
その言葉に甘んじて、さらに深い所を目指す。
ハルヒの秘洞は狭く、奥に進むのは困難だったが、
ややあって壁に突き当たるような感覚があり、どうやら最奥に到達したのだと分かる。


68:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:15:33 4sAYYDZC
「ハルヒ、全部入ったみたいだぞ…」
そう伝えると、ハルヒは嬉しそうに微笑んだ。
その顔は汗と涙に塗れていたが、今まで見た彼女のどんな表情よりも胸を疼かせる。
慈しみの衝動に駆られ、環は腰の動きを止めたままでハルヒを抱きすくめた。
「…こうしていると、そんなに痛くなくていいです」
「そうか。…でも、何というか…むしろ本番はこれからで……」
「それは分かってます。でも、もう少しだけこのまま……」
ハルヒの言葉に頷き、互いの体をより密着させた。
彼女の体温と鼓動、そして熱い吐息がより身近に感じられ、甘い香りが鼻孔を擽る。
その全てが愛しく、同時に環の牡を刺激した。

「…あの、環先輩。そろそろいいですよ、続きしても……」
「よ、よし。では、始めるとするか…!」
ハルヒの言葉を合図に、環は彼女の脚を抱え直し、ストロークを開始した。
「…っ、あ…あぁっ!」
痛みがぶり返したらしく再び苦悶の表情を浮かべるハルヒを気遣いつつ、
先ずはゆっくりと動いていく。

動きに合わせて秘洞が収縮し、環自身をきつく締め付けてくる。
こみ上げてくる官能の痺れと昂りに、環は次第に夢中になっていった。
突き上げる度に響く湿った水音とハルヒの吐息交じりの喘ぎが、それに拍車をかける。
可愛い彼女の純潔を奪い自分のものにしているという征服欲と少しの罪悪感、
そして何よりも彼女を愛しいと思う気持ち……。
それらが組み合わさり、理性の箍を外していく。

そうしているうちに、少し痛みが薄れてきたのかハルヒの表情が和らぎはじめた。
「…ハルヒッ、痛くないか……?」
「…正直、まだちょっと……。でも、最初に比べたら大分ましになりましたんで、
もう少し激しくしても大丈夫ですよ…」
言われるままに、環は彼女の腰を抱える角度を変えた。
より体を密着させ、激しくハルヒを求める。
襲いくる快楽が徐々に自制心を取り去っていくのを感じつつ律動を速め、
それを貪っていった。
「あ…、はぁっ、環…先輩ぃぃっ!」
「ハルヒ、ハルヒ…ッ…!」
朦朧としていく意識の中で、しきりに名前を呼びながら互いを求め合う。
程無く、背筋を突き抜ける強烈な官能の渦に飲み込まれた環は、
熱く迸る欲望を吐き出した。

しばし行為の余韻に浸った後、環はゆっくりとハルヒの中から自身を抜いた。
続いて外した避妊具とシーツに付いた血痕を確認し、今更ながら蒼白になる。
実際の所たいした量ではないが、彼を狼狽させるには十分だった。
「ハ、ハルヒすまない!まさか、こんなに血が出るとは…。
それに、随分と痛い思いをさせてしまったな……」
「別に謝ることないです。初めてだったから、仕方のない事ですし……」
ようやく痛みから解放されたハルヒは力を抜いてぐったりとしていたが、
それでもやんわりと微笑んで答える。


69:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:17:07 4sAYYDZC
「それに、途中で少し怖い事もあったけれど、環先輩は十分優しかったですよ?
こうしていると、大好きな環先輩と結ばれたんだな…って実感が湧いてきて、幸せな気分です…」
そんなハルヒの笑顔を見ていると、無性に愛しさと幸福感がこみ上げてくるのを感じた。
彼女を抱き寄せ、勢いよく頭を撫でる。
「よしよし、頑張ったハルヒにご褒美だ!」
「ちょ、ちょっと!髪がクシャクシャになるじゃないですかっ!」
ハルヒは頬を膨らませたが、環は満足気に笑いながら続ける。
やがて彼女も諦めたのか、小さく苦笑した後そっと身をあずけてきた……。

      *      *       *

それからシャワーとあり合わせの夕食を済ませると、かなり遅い時間になっていた。
食事の後に呼んだ迎えの車が来る時間になり、環は名残惜しそうに靴を履く。
ハルヒは彼をアパート前まで見送るべく、自分もサンダルを履いた。
「…あ、そうだ!」
そこでふと思い出したように、環が言う。
「今度の休みに、デートをしようか!ハルヒはどこに行きたい?」
ハルヒは考えたが、とっさに言われてもせいぜいスーパーか近くのデパートしか思いつかない。
「すみません。自分はどうもデートで行くような所、詳しくなくて…」
そう言うと、環は軽く苦笑した。
「…では、前日までに俺が決めておこう。絶対楽しい一日にするから、任せておくがいい!」
まさか週末に彼がA型の本領を発揮した綿密な計画表を渡してくる事になるとは知らず、
ハルヒは期待に胸を躍らせる。
環との交際は、面倒で暑苦しそうだが、それ以上に楽しくなりそうだと思った。

「……あ、それと!デートも楽しみではあるが……」
「何ですか?」
そこで環は、いささか頬を染めつつ耳元で囁く。
「ハ、ハルヒの痛みが癒えたら、またしような……」
「…ちょっ、それは…そのっ……!」
途端に頬を染めて動揺したハルヒの額に、環は優しく口付けを落とす。
「ちょっと、環先輩…っ!」
「えへへ…、恋人同士だからいいんだもーん!」
そう言うと、彼はドアの外に出て行った。
「…もう、環先輩は…ずるいですよ……」
一人、玄関先に取り残されたハルヒは、さらに顔を赤くして呟く。
しかし、彼女の心は幸せな気持ちに満ちていた……。



70:Voi che sapete 後編
08/01/04 20:18:08 4sAYYDZC
翌日。ハルヒが帰宅すると、メイが待っていた。
環とどうなったのかと聞かれて、付き合うことになったと言うと、
彼女は自分の事のように喜んでくれた。
口調はいつものように蓮っ葉だったが、友情の暖かさが嬉しい。

「…そういえば、この雑誌ありがとう。すごく役に立ったよ」
ハルヒが件のギャル雑誌を返すと、メイはそれを何とはなしに捲りながら言った。
「でもさー、これ貸した時はまさかこんなモンで気付くかって思ったけど……。
ま、アンタ達くらい鈍感だと、ヘタに言うよりこーゆーのが役立つのかもね」
……と、後方までページを捲ったところで、不意にメイの手が止まる。
「……どうしたの、メイちゃん?」
「…アンタ、ここに付いてたエロい付録どうしたわけ?ま、まさか環くんと使ったとか?」
「………!!!」

ハルヒの顔が、見る見るうちに赤く染まる。
今まで特に気に留めていなかったが、環があの時どこからか取り出した避妊具は、
この雑誌の綴じ込み付録だったのである。
冷静に考えて、見舞いと仲直りのつもりで来た彼が、こんな物を予め用意していたわけがない。

「ヤッパリそうなんだ、信じらんない!環くんて、鈍いくせに手ェ早すぎじゃん!!」
ハルヒの顔色から全てを悟ったメイが、喧しく騒ぎ立てた。
「…あ、あのー。それは…その、環先輩が雑誌を見て、
庶民は恋人同士になったらすぐにするものだと勘違いして…そ、そのまま……」
「だからって、ハルヒもいきなりおとなしくヤらせちゃ駄目でしょーが!
男なんてのは、最初が重要なんだからさー!環くんみたいなタイプは案外エッチな事知ると、
トコトンのめり込みそうだし、もしこれから会う度にヤらせろって言われたらどーすんの?!」
以前、環をちょっと良いと言っていたとは思えないほど、メイは彼に対して言いたい放題である。
「メ、メイちゃん、それはいくらなんでもちょっと……」
「あー、もうっ!アンタが言えないなら、あたしが環くんにガツンと……!」
メイは携帯電話を取り出し、環の番号を検索しはじめる。
「イヤー!それは止めてぇぇっ!!」

結局、ハルヒが必死に阻止し続けるとメイは電話とメールを諦めてくれたが、
それにはかなりの時間を要したのだった。

―END―

71:名無しさん@ピンキー
08/01/04 20:35:26 pbbfnQFs
Voi che sapete面白かった!
作者&メイちゃんGJv

72:名無しさん@ピンキー
08/01/04 21:29:44 SZeMlwxC
GJ!!!!!!

ついでに嫉妬に狂った光の鬼畜物が見たいと言ってみる


73:名無しさん@ピンキー
08/01/04 21:34:59 B5/MjxRw
>>70
超GJ!の嵐

74:名無しさん@ピンキー
08/01/04 22:04:36 Znz53SDO
ひゃ~すばらしい!!!GJGJ!!
ところどころ吹きだしながら楽しめたです。
計画表、最後の締めにスペシャルスイートとかかましそうだな殿w

75:名無しさん@ピンキー
08/01/04 23:32:27 B/h/MUNb
神!
暴走中の環の嬉しい笑いがハルヒには獣に見えてるとことか、
さりげない伏線が回収されてる所とか上手いと思った

76:名無しさん@ピンキー
08/01/04 23:40:31 c29G6sok
おおおおお神きてたー!
GJすぐる
最後のオチもまた面白いw

77:名無しさん@ピンキー
08/01/05 00:52:50 URpEGTwu
乙!!

次はラブラブデート編だな!w

78:名無しさん@ピンキー
08/01/05 01:29:48 gjAHvuYK


79:名無しさん@ピンキー
08/01/05 01:30:45 URpEGTwu
今月のメイ師匠の虎の巻(ギャル雑誌)伝授はおいしいよねw
過激な性の知識を知っちゃったハルヒで妄想できるw

80:名無しさん@ピンキー
08/01/05 07:47:49 IyR673m3
GJ!
ひんぬー気にするハルヒ可愛いと思ってたら、殿の「ハルヒはいけない子だな」というキモ台詞で吹いたw

81:名無しさん@ピンキー
08/01/05 10:54:39 RPs5Vvuu
「恋人同士だからいいんだもーん!」の殿かわいすぐるw


82:名無しさん@ピンキー
08/01/05 15:07:14 wWTwXa0D
>>79
他のキャラ×ハルヒでも妄想できるね。
どなたか是非…!

83:名無しさん@ピンキー
08/01/05 15:19:48 E3XPifXe
>>81
それ、殿が最初にでこちゅーしたときのセリフとかけてあるのかな?だとすれば細かいな。
「えへへ、おとーさんだからいいんだもーん!」とかいうのがあったはず。

84:名無しさん@ピンキー
08/01/05 19:38:35 0K2rVBad
GJ!ハルヒも環も可愛いな(*´Д`*)
事後に頭撫でるシーンがツボでした

85:名無しさん@ピンキー
08/01/05 19:56:20 0K2rVBad
sage忘れたorz

86:名無しさん@ピンキー
08/01/05 23:47:24 4ljbDtrD
前スレ227のネタ妄想したもんです。
ウザエロイ環本当にウケました!!
ギャル本でハルヒが妄想したり、H中に利用する所GJです(^^)b
かなり興奮してしまいましたよw乙です!

87:名無しさん@ピンキー
08/01/07 18:26:21 R+AM7fZo
パラレルはアリ?

88:名無しさん@ピンキー
08/01/07 23:01:04 tMvxCwbC
>>87
投下してみれば?
あ、カプとかNGワードとか忘れずにね

89:名無しさん@ピンキー
08/01/08 23:21:31 Ne3m3jfW
スク水ハルヒマダー(・∀・)?

90:名無しさん@ピンキー
08/01/09 16:35:54 Phhj30/y
ハルヒのスク水着た殿で我慢しなさい!

91:名無しさん@ピンキー
08/01/09 19:22:44 wUNlLMu+
ちょっと思いついたんだけど
ハルヒのお母さんが死んだ理由はなんかなとか考えて
若くして死んでるから、癌か何かかなとか思って
んじゃ、ハルヒにも体質が遺伝してるかもとか考えて、

末期癌に冒されたハルヒが悲しむ環を慰める為に…、

自分には絶対無理なので誰か代わりに書いてくれ

92:名無しさん@ピンキー
08/01/09 19:37:07 0zyFVliA
>>91
恋愛映画に死んでしまう恋人とかが人気になるね
セカチューとか恋空☆
そういえばハルヒ母死んだ理由気になる!疑問に思った事無かった;
その設定見てみたい!!

93:名無しさん@ピンキー
08/01/09 20:07:35 HBV2SgyM
ゴミついてますよ

94:名無しさん@ピンキー
08/01/09 20:17:55 btwCby+/
>>90
バカー!想像しちまったじゃまいかーW
おまいのせいでスク水環が頭の片隅から離れないYO!

95:名無しさん@ピンキー
08/01/09 20:33:21 kLP5NLW9
>>90
スク水環ハァハァ……
って言うと思ったか!(・∀・)ゴルァ!!

96:名無しさん@ピンキー
08/01/10 15:01:10 YT543a6x
二人の身長差は28cm。ハルヒサイズのスク水着たら色々やばいような…
というか、ハニー以外の部員が着たら漏れなくお宝くっきり、おいなりコンニチハ…((( ;゚Д゚))))

97:名無しさん@ピンキー
08/01/10 16:26:34 aq5RAlrn
「ハルヒこれ!スク水着てーv」
「ヤですよ…変態ですか」
「え~…あっそうだ!俺も着るから恥ずかしくないゾ☆おそろいだぞー?」
「ちょwww着るなwww」

な流れで着そうな気も…w

98:名無しさん@ピンキー
08/01/10 23:20:16 q5+Mc8am
>>96
それはそれで、なかなか趣深いですなw

99:名無しさん@ピンキー
08/01/11 01:03:11 5b6MgkFV
>>96
まさに放課後電磁波クラブ

100:名無しさん@ピンキー
08/01/12 01:14:29 yKpLzc/8
本スレの流れでご飯3杯はいける

101:名無しさん@ピンキー
08/01/14 02:12:52 sreJKl4R
女体化ハニー×モリ

102:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:06:02 ejv9ZalE
環×ハルヒ←光で、環ハルと光ハル未遂あり。
苦手な方はスルーもしくは「タイセツナトモダチ」をNGワードでお願いします。

103:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:07:36 ejv9ZalE
「…ふ、…ぁん…んぅぅっ…」
その日の部活が終わってしばらく経った薄暗い第三音楽室に、
湿った音と吐息交じりのくぐもった声が響いている。
入り口から死角になった衝立の陰、一番奥のソファの上で、ハルヒは環に抱かれていた。
彼のたっての希望で、今日はロングの鬘と中等部のセーラー服を身に付けたままという姿だ。

二人が付き合い始めて、一ヶ月あまり。
お互い自覚するまでが長かった反動か、結ばれるのにそれほど長い時間はかからなかった。
ひと月前に環が付き合い始めたことを早速鏡夜に報告したとき、
混乱を避けるために他の皆にはしばらく秘密にした方が良いと言われたので、
二人の関係が変わった事を知るのはごく少数の人間だけである。
それだから、普段は極力今までどおりに過ごし、休日のデートとお互い用事のない部活後に、
こうして恋人同士の時間を過ごしていた。

「…ぁ、はぁ…ふ、ああぁっ…!」
ハルヒは、身をくねらせて喘いだ。
下から激しく突き上げられるたびに、環の膝の上で華奢な肢体が揺れる。
彼が好む、向かい合って体を密着させた体位は、互いの鼓動と熱をより感じさせる。
最初の何回かは苦痛を伴った行為にもようやく慣れ、
ハルヒは快感に悶える自分に少し戸惑いながらも、環に愛される悦びを感じていた―。


一方そのころ、人影も疎らな南校舎の廊下を走る光の姿があった。
帰りの車内で部室に携帯ゲーム機を忘れてきたことに気付き、急遽引き返して取りに行くところだ。
馨は明日でもいいだろうと言ったが、今プレイ中のRPGの続きが気になるからと、
彼を車内に残し、一人で校内に戻ってきたのだ。

部室の前に着いてドアを開けようとすると、鍵がかかっていた。
部活が終わってしばらく経つのだから、さすがに皆帰ったかと思い、
鍵穴に部員に一本ずつ渡されている合鍵を挿し込み、中に入る。
光のゲーム機は入り口に近いテーブルの上にあったので、すぐに見付かった。
あまり馨を待たせては可哀想なので、それをポケットに入れてさっさと戻ろうとしたとき……。

「……ぁ…ん……」
不意に部屋の奥から聞こえた声に、光は振り返った。
「………?」
無人だと思っていた部室内に、自分以外の誰かがいる。
それを確かめるべく、逸る好奇心を抑えつつ、そろりそろりと声のした方に近寄っていく。

入り口から死角になった一番奥の席で、人影が揺れていた。
ソファの上で抱き合う、高等部の男子と中等部の女子。
乱れた制服と吐息から、二人が何をしているのか分かる。
よほど夢中になっているのか、二人は自分に気付く様子もない。
長い髪と相手の腕に阻まれて女子の顔は見えないが、もう一人の顔は確認出来る。
……光は、自分の目を疑わずにいられなかった。
もしもここが部室ではなく相手が見知らぬ人物だったなら、たいして心も騒がなかっただろう。
だが、少なくとも男子の方は光の非常によく知る人物で……。


104:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:09:04 ejv9ZalE
―ど、どういうことだよ?!何で殿が中等部の子と……?!!
光の知る彼は、無自覚ながらもずっと前からハルヒに好意を寄せているはずだ。
そんな彼が、皆の知らないところで見知らぬ中等部の女子といやらしい事をしている。
今まで築かれたイメージが崩壊し始め、訳の分からなさに頭の中が混乱していく。
酷くいけないものを目撃してしまった気がして、光は彼に気付かれぬように後ずさった。
―み、見なかったことにしよう!馨を待たせてるし、早いとこ戻って……。
そう思って踵を返したとき、環に抱かれている女の子が大きく嬌声を上げた。

「…あ、あぁぁっ、た…環先輩、そこ…もっとしてくださ…ぃぃっ!」
聞き覚えのある声だった。
そして、今一番聞きたくない愛しい人の声だった。

光が反射的に振り返るのとほぼ同時に、二人が体勢を変えた。
それによって、今度は彼女の顔がよく見えるようになる。
上気した頬とトロンとした瞳、半開きの唇からチロリと覗く濡れそぼったピンク色の舌。
初めて目にしたハルヒの恍惚の表情は、ゾッとするほど艶めかしく、
それ故に光の胸をきつく締めつけた。
どうにも居た堪れなくなって、声を漏らしそうになるのを必死に抑えて入り口に向かう。
「や、はぁん、ああっ…、だ…め、たま…先輩ィィッ!」
その間にも聞こえるハルヒの喘ぎ声に耳を塞ぎながら、何とか部屋を脱出して鍵を掛け直すと、
光は一目散に廊下を駆けていった。


「どうしたんだよ、光?顔が真っ青だけど……」
車に戻った光の様子を見て、馨は訝しげな顔をした。
彼に先ほど部室で見た光景を話してしまいたかったが、心配をかけては…と思い、ぐっと堪える。
「…い、いや。何でもないけど、…ほら、人がいない校舎って何か怖いじゃん?」
「そう、それなら良いけど……」
適当にごまかすと、馨はそれ以上追求してはこなかったが、
まだ少し腑に落ちないという顔をしていた。
やはり双子だけあって、彼を欺くのは難しい。
それでも何とか心の内を探られまいと、無理に明るい表情を作って、
ポケットからゲーム機を取り出す。
「…さ、さてゲームの続きしよ。もうすぐ中ボスなんだよネー!」
わざと大きな声で喋りながら、電源をオンにしてゲームを始める。
しかし、夢中なふりをすればするほど、反比例するかのように内容はちっとも頭に入らなかった。




105:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:10:27 ejv9ZalE
帰宅すると、光は今日はゲームに熱中したいからと言って馨のお茶の誘いを断り、
普段はあまり使われていない客用寝室に閉じこもった。
一人になると途端に、部室で見た光景が脳裏に甦ってくる。
激しく求め合う二人、自分以外の相手によって引き出されたハルヒの艶めいた声と表情……。
以前の短気な自分だったら、あの場で騒いでいたかもしれない。
心を落ち着ける特訓をしておいて良かった。
……と、そこまで考えて頭を振る。

―僕が心を落ち着ける訓練したり本を読んだりして頑張ったのは、
 いつかハルヒに告白するためだった。…だけど、その間に二人は……!
相当鈍いと思っていた二人が、自分の知らないうちに自覚し合って関係を進めていた。
慣れた感じから察するに、今日が初めてというわけではなさそうだ。
いったい、いつ頃から付き合っている…?

これまでの事を、思い返してみる。
最初は、環が一方的にモーションをかけているだけで、ハルヒは相手にしていないと思っていた。
だけど、メイに彼女もまんざらでもないのだと言われて……。
それからは、二人が一緒にいるのを見たりハルヒの口から環の話を聞いたりする度に、
イライラするようになった。
彼女のことで馨と喧嘩して、自覚して、仲直りして……。
そうしているうちに、いつの間にか彼女は環を前にすると、動揺したり頬を染めたりしだした。
…でも、先月あたりから彼女の彼への態度が柔らかくなってきたように思う。
そこまで考えて、光は唐突に気付いた。
丁度その頃から、環は“おとーさん”だの“娘”だの言わなくなっている。
きっと、二人はその頃に付き合い始めたのだろう……。

―…そうか、そうだったんだ!どうして今まで気付かなかったんだよ?!
そこで、自分以外の部員はどうなのかと考えてみる。
…おそらく、環の親友である鏡夜は知っているだろう。
もしかしたら、二人にまだ関係を口外しないようにアドバイスしたのも彼かもしれない。
そうだとしても、不思議と勘の鋭いハニーとモリが気付いている可能性は高いし、
ひょっとしたら馨も……?

―これじゃ、気付いていなかった僕が一人でバカみたいじゃんか!
そう思うと、次第に黒い感情が渦巻いてくる。
皆への不信感。
環に対する嫉妬。
そして、ハルヒへの複雑な思い……。

どうして、ハルヒに選ばれたのが自分ではなく環なのだろうか?
自分だって、彼女のことが好きなのに……!
恋愛事に鈍感な彼女のことだから、未だに自分に想われていることにも気付いていないだろう。
傍に居ても何らかのスキンシップをとっても、全く意識してくれないくせに、
好きな相手には別人のように艶っぽい顔を見せる彼女。
そんな彼女の姿を見たくなかった、…見なければ良かった。
想いを伝えて断られるよりも、ずっと残酷な失恋の仕方……。
辛くて、苦しくて、どうしようもなく胸が痛い。

気の済むまで一人で泣いてから、平静を装って馨と一緒に夕食を摂った。
食卓に並んだシェフの自慢のメニューの数々。
いつもと変わらぬはずなのに、今日は全く味がしない。
入浴してもベッドに入っても癒されぬまま、光は眠れぬ夜を過ごした―。



106:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:11:28 ejv9ZalE
夜が明けて……。
出来ることならサボってしまいたかったが、馨に心配をかけないために、無理をして学校に行った。
しかし、ハルヒの姿を目にすると、どうしても昨日の出来事を思い出してしまい、
授業に殆ど集中出来ずに半日が過ぎた。

今日は午後から二、三年生の進路説明会で、一年生は一時間早く授業が終わった。
馨が日直の用事で忙しかったので、一人きりで教室を出ようとすると、
後ろからハルヒがついてきた。
「光、これから部室?それなら、一緒に行こうよ」
昨日の光の行動に気付いていない彼女は、いつもと同じように屈託なく話しかけてくる。
断るわけにもいかずに、仕方なく一緒に廊下を歩くことになった。

南校舎まで来たとき、ハルヒが第三図書室に寄っていいかと聞いてきたので、従った。
校内にいくつかある図書室の中でも目立たない場所にあるそこには、他に誰も居らず、
今の時間は司書も席を外しているようだ。
黙ってついて行くと、ハルヒはフランス文学の棚の前で立ち止まり、目当ての本を探し始めた。
「へー。ハルヒって、フランス文学とか読むんだ?」
つい、そう言うと、彼女はにっこりと笑って答える。
「うん。この前環先輩に昔読んだ名作の話を聞いてから、興味が湧いて……」
そのまま、彼女は楽しそうに環の話を続けた。
相変わらずの可愛らしい笑顔に、胸が高鳴る。
でも、その笑顔が自分に向けられたものではないと思うと、すぐに苛立ちに変わった。
胸の奥で燻り続けていた嫉妬の炎が一気に燃えさかり、感情を抑えられなくなる。

「…ハルヒ。嬉しそうに殿のこと話すの、やめてよ!」
口を付いて出た言葉に、ハルヒが困惑する。
「…ご、ごめん。ひょっとして、何か気に障った?」
「何か、じゃないよ!…ハルヒはいつもそうやって、殿のことばかりじゃないか!」
たじろぐ彼女を前に、光は声を荒げていく。
「僕だって、…僕だってハルヒが好きなのに、ハルヒは気付きもしない!!
 …分かる?僕の前で殿のことを話すのが、どんなに残酷かってことが!!」

「……ひ、光が…自分のことを?!」
いかにも、告白されて初めて知ったというようなハルヒの表情。
それを見て余計にイライラを募らせた光は、彼女を近くの壁に押し付け、頬に口付けた。
「……やっ!」
突然の事にハルヒは身じろぎ、眉根を寄せる。
そんな彼女を冷ややかに見下ろしながら、光は言った。
「…ハルヒは、変わったよね。前は僕や馨に同じ事されても、平然としてたくせにさ」
「い、以前は自分も恋愛とかよく分かってなくて…。だけど、今は……」
「ふーん。今はもう殿と付き合ってるから、他の男にキスされると困るってヤツ?」

「……知ってた…の?」
ハルヒは大きな目を瞬かせて、光を見上げた。
僅かに朱を帯びた彼女の顔に、昨日見た痴態が重なる。
「…知ってたというか…、昨日忘れ物を取りに戻ったときに偶然見たんだ。
二人が…してるところをさ!」
「…え?!で、でも、そんな……!」


107:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:12:22 ejv9ZalE
光は真っ赤になってうろたえるハルヒの隙を突いて押し倒し、その上に馬乗りになった。
じたばたと足掻く彼女の華奢な両手首を、片手で器用に床に縫い止める。
「二人とも夢中で、僕に気付かなかっただろうけど…。どんなに僕がショックだったと思う?
 聞きたくなかったよ、殿に甘えるハルヒの声なんか!」
言いながらハルヒの上着のボタンを外し、シャツの上から乱暴に胸を弄る。
「や、やだ!やめてよ、光っ!どうして、こんな事…」
光は彼女の抵抗をあっさりと受け流し、指に力を込めた。
シャツ越しに胸の先端の突起を押し潰しながら、激情をぶつける。
「…ねぇ、ハルヒ。どうして殿なのさ?何で…何で僕じゃダメなんだよっ!?」


「くぅっ……」
ハルヒは堪らず、顔を顰めた。
力任せに揉みしだかれ、敏感な部分が下着と擦れて悲鳴を上げる。
いつも環にされているのとは違う、優しさの欠片もない愛撫は、痛みしか感じない。
時折、興奮しすぎた彼に激しく弄られる事はあるが、現在光にされている一方的な行為は、
官能の痺れに変わることはなかった。

「…どうして答えないのさ?やっぱり、体に訊くしかないみたいだね……!」
と、光はハルヒのベルトとファスナーを寛げ、ショーツの中に指を侵入させる。
「ダ、ダメ!これ以上は、もう……!」
ハルヒは身を捩って光の束縛から必死に逃れようとするが、彼はびくともしない。
大切な友達だと思っている彼も男なのだと初めて意識すると、体がひとりでに戦慄く。
光の指が肉芽を弄り、乱暴に擦ってくる。
「っ、うぅ……ッ!」
いきなりの強い刺激は刺すような痛みしか与えず、ハルヒは呻いた。

そんな彼女の様子に構わず光は秘裂を探り、膣口に指を押し当てる。
「ハルヒが、いけないんだ!…ハルヒが、僕の気持ちに気付いてくれなかったからッ!」
「い…嫌っ、…く、…ぅあああぁっ!」
光の指が一度に二本突き入れられ、強引に奥へと進んでいく。
初めての事ではないとはいえ、全く濡れていない場所を抉じ開けられる痛みに、堪らず声を上げた。
「ひ、光!お願い、やめて…痛い…ッ!」
「…ふーん、これ位で痛いわけ?昨日は、指なんかよりずっと太い殿のモノを奥まで飲み込んで、
 あんなに悦んでたくせにさ!」
冷ややかにそう言い放ち、光は更にもう一本指をねじ込んで荒々しく律動させる。
「ぁ…ぐっ……!」
ハルヒは、痛みに柳眉を歪めつつ彼を見上げた。
―このままでは、光に犯される……!
そう思うと、胸が凍りつく。

大声で助けを呼び続ければ、叫びを聞いた誰かが来てくれるかもしれないが、
そうすれば光との友情を永遠に失うだろう。
だが、彼の為すがままにしていれば、それよりもずっと大きなものを幾つも失う。
どうして、こんな事になってしまったのか。
彼の言うように、彼の気持ちに気付かぬまま環と結ばれた事が罪なのか。
環との恋愛と光との友情を両立していけると思っていたが、それは不可能なのか。
幾つもの疑問が、脳裏に浮かぶ。


108:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:13:24 ejv9ZalE
光が自分に思いを寄せている事は意外だったが、それでも自分にとって彼は大切な友達で、
それ以上にもそれ以下にもなりえない。
彼の表情は怒りに満ちているのにどこか哀しげで、ハルヒの心を締め付ける。
体の痛みと、彼の想いに応えられない痛み。
それが綯い交ぜになって、ハルヒは涙を溢した。
「やだ…、こんなの嫌だよ、光……。光のこと、大切な友達だと思ってるのに、こんな……!」
涙が絶えず溢れて、次第にすすり泣きになっていく。


身を震わせてすすり泣くハルヒを見て、光は鋭い刃物で貫かれたような衝撃を覚えた。
思わず彼女の中から指を引き抜き、その身を解放して後ずさる。
―…ち、違う!僕はハルヒのこんな顔を見たかったんじゃない!
 ただ、笑ってほしかった。僕の傍で笑ってほしかったのに、どうしてこんな……!

ハルヒの怯えた表情と苦しみの声が、フラッシュバックする。
このままハルヒを犯しても、彼女の心が自分のものになるとは限らない。
……むしろ、離れてしまうだろう。
それなのに、嫉妬のあまり間違った事をしていた……。
馬鹿な事をしてしまった自分を、ハルヒは許してはくれないかもしれない。
そう思うとどうしようもなく涙がこみ上げてきて、光は項垂れた。

ようやく自由になったハルヒは、泣きながら衣服を整えている。
「…ぁ……」
そんな彼女に声をかけようとしたが、喉の奥が乾いて上手く発音出来ない。
「…ハ、ハルヒ。その…、ごめん……」
唾を飲み込んで何とかそう言うと、ハルヒは小さな声で答えた。
「…自分こそ、ごめんね……」
「ハッ、ハルヒが謝ることなんか…!…悪いのは、全部僕なんだから……!」
光の言葉を遮るように、ハルヒは首を振る。
「他の誰かに想われてるなんて知らなかったから、光の気持ち…考えたことなかった。
自分の鈍さで人を傷付けてるって、もっと早く気付けば良かった……」

「ハルヒは…僕を許してくれないよね……?」
そう言ってから、自分でもよくそんな馬鹿な事を尋ねられたものだと思う。
昨日彼女と環の情事に遭遇して、自分の想いが叶わなかったという事実を受け止めきれず、
嫉妬の炎を燃やした。
彼女の鈍さが、そして自分を愛してくれないことが罪だと思い、どす黒い感情をぶつけた。
そして間違いを犯しかけた自分を、誰が許すというのだろう……。

しかし、ハルヒの答えは意外なものだった。
「…いいよ。ただし、二つだけ約束してくれるなら」
「約束……?」
「うん。さっきの事忘れるから、光も忘れて。…それと、これからも友達でいてくれる?」
「そんなことで、いいの?僕は、ハルヒに酷い事したのに……」
頷く彼女は、もう泣いてはいなかった。
光が今更ながらハンカチで頬に残る涙を拭ってやると、微かに笑って小指を差し出す。
「はい、約束!」
光は言葉を返す代わりに、彼女の細い小指に自分の小指を絡ませた。


109:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:15:31 ejv9ZalE
「…あのさ、良かったら教えてくれない?ハルヒがどうして殿を好きになったのかを」
図書室を出て部室へ向かう階段を上りながら、光はハルヒに尋ねた。
クールな彼女が正反対な環に惹かれた理由が、どうも今ひとつ分からなかったからだ。
その問いに、彼女は少しはにかみながら答える。
「…最初は、暑苦しくてお節介で、自分にはついていけないテンションの人だと思っていたよ。
 でも、少しずつ先輩の事情を知ったり、人がなかなか出来ない事をやれるすごい人なんだって、
 分かったりしていくうちに、尊敬する相手になって、それがいつしか恋に変わっていったんだ。
 …気付くまで、随分と時間がかかっちゃったけどね……」
そう言って幸せそうに微笑むハルヒは、ドキッとするほど眩しく見えた。

自分が見たかったのは、そんな彼女の表情なのだと思う。
たとえ、それが自分に向けられたものでなかったとしても……。
そしてハルヒの言葉から、光は自分と馨がホスト部に入部を決めた時の事を思い出していた。
―…ハルヒを譲るのはちょっと悔しいけど、結局殿には敵わないよなー。何だかんだ言って、
 僕だって殿のこと好きだし……。

光は苦笑して、ハルヒの肩に腕をまわした。
「ねえ、ハルヒ。僕はこれから応援することにしたからさ、殿と幸せになるんだよ。
 そんなことはないと思うけど、もし他のヤツを好きになったら怒るからネッ!」
と、彼女の頬を軽く抓る。
「イタタッ、やめてよ光!分かったからっ!」

「それと、もう一つ約束。…いつか、僕にハルヒよりもずっと好きな子が出来たら、
 応援してくれること!」
「……うん、約束するよ。光は、自分の大切な友達だもんね」
光とハルヒは、互いに笑って指きりをした。
気が付けば、部室はもう目の前である。
二人は頷き合うと、一緒にドアを開けた……。


何事もなかったかのように部活の時間を終えて帰宅した後、光は馨に告げた。
「僕、ハルヒに告白したんだ。でもさ、断られたよ……」
「……えっ?!」
突然の告白に、馨は顔色を変える。
「昨日から様子がおかしかったのって、ヤッパリ…?あれほど、まだ早いって言ったのに…」
「ハルヒは、先月から殿と付き合ってるんだってさ。馨は、知ってた?」
その問いかけに対し、馨は申し訳なさそうに答えた。
「…ごめん。はっきりとじゃないけど、少し前から何となくそうなのかな…とは思ってた。
 だけど、光の気持ちを考えると言えなくて……」

「そっか。でも僕、これからは友達としてハルヒを応援することに決めたから、
 馨も協力しない?」
そう言うと、馨はますます驚いた。
「ひ、光!ハルヒのこと、もういいワケ?!何か、あっさりしすぎじゃない?」
光は、自嘲的に肩を竦めてみせる。
「正直、知った時は辛かったよ。何で僕じゃないんだよって、ハルヒに詰め寄った。
 …だけど、ハルヒに泣かれるより笑顔のほうがいいって気付いちゃった。
 だから、身を引くことにしたよ。完全にふっきれるまでは、ちょっとかかりそうだけ……」
言い終える前に、馨に優しく抱き締められた。
彼の腕が震えていることに気付いた光は、そっと抱き返す。
「…もういいよ、光。無理しないで、辛かったなら泣いていいから!」
「やだなー、そう言う馨がもう泣いてるじゃん……」
言いながら、次第に瞳が潤んでくるのを感じる。
そのまま二人は、しばらくの間静かに涙を流した。



110:タイセツナトモダチ
08/01/14 21:16:25 ejv9ZalE
「…ところで、友達としてハルヒを応援って言うけど、具体的に何すんの?」
「んー、この先ハルヒが殿との事で悩んだり困ったりしたら、力になるとか……」
気の済むまで泣いた後、光と馨は紅茶を飲みながら話し合っていた。
「それじゃ、ハルヒに困り事が出来るまではどうしようか?」
「そりゃー、決まってるでショ!」
馨の問いに、光はニマリと笑ってみせた。
すぐに全てを察した馨は、彼と同じ表情になる。
「分かった!ハルヒを射止めた果報者を、今まで以上にからかって遊ぶ!!」
「そー、その通り!」
しばし笑った後、二人は遅くまで悪戯の計画を立てて盛り上がった……。


その翌日。部活の営業が終わると、光と馨はこっそりとロッカーから環の鞄を取り出した。
当の本人はそれに気付かず、離れた所で鏡夜と談笑している。
これ幸いと鞄を開け、二人はネタになりそうな物を求めて中を漁った。
拍子抜けするほどあっさりと、“お宝”が幾つか見付かる。
「…ちょっと、これどう思う?」
「うっわ、それキツイって!…これもすごくない?」
…などと小声で囁き合っていると、いつの間にか後ろに環が立っていた。
「おまえら、人の鞄を勝手に漁るのはやめろと、何度言ったら……!」

怒りの形相で腕を組み、環は声を荒げる。
「だいたい、おまえらは常識が足りなさすぎるぞ!今日という今日は許さんっ!」
そんな彼の前で、二人は全く物怖じせずに鞄から取り出した物を広げた。
「今どき交換日記してるような人に、常識とか言われてもネー…。しかも、何これ?
 ハルヒは一枚ずつなのに、殿だけ毎回何枚も書いちゃってるし!」
「ギャハハハ、このデート計画表って何?分刻みのスケジュールって、ありえなさすぎ!」
笑いながら囃し立てられ、感情の起伏の激しい環は早くも肩を震わせる。
彼が追いかけて来ることを見越して、二人は逃げる準備をした。

「……えーと、これはどういう状況ですか?」
買出しから戻ってきたハルヒは、追いかけっこをしている三人を見て首をかしげた。
「いつもの事だろう。今更気にする必要があるか?」
「それは……、そうですね」
鏡夜に言われて頷いた後、ハルヒは、楽しげにふざけている光を見て静かに笑った。

そこに、光と馨が近寄ってきて話しかける。
「ハルヒ。この後、家で一緒に英作文のレポートやらない?」
「いいけど、作文って普通は一人で書くものじゃ?」
「いいじゃん、おいでよ。友達同士で一緒にやったほうが楽しいって!」
「よーし!それでは、皆で行こう。ハルヒは休憩の時に食べるお菓子、何がいいかにゃー?」
当たり前のようにちゃっかり会話に入ってきた環を、光と馨が冷ややかに見つめた。
「何言ってんの?友達同士で宿題したいなら、殿は鏡夜先輩とすれば?」
「そーそー。ハルヒの“友達”じゃない人は、来ないでクダサーイ!」

……それから、以前よりもエスカレートした双子の悪戯は、しばらくの間続いた。
傍から見れば騒がしい光だが、そんな彼を見たハニーとモリは、
ひとまわり大人になったと言って頷き合っていたという……。




111:名無しさん@ピンキー
08/01/14 22:37:35 Pi1Aotv/
GJ!

112:名無しさん@ピンキー
08/01/14 23:44:45 r2FLi3MS
GJ
光せつないな…でもオチが明るくてよかった

113:名無しさん@ピンキー
08/01/15 00:46:05 8HFAZRhC
乙!!いいねいいね
行為目撃シーンでいたたまれなくて先を読み進めるのがためらわれた
これはヘタレ鏡夜以来だ…w
図書室でのやりとり切なすぎ
環以外の相手で原作準拠でエロだとどうしても切なくなるなー

114:名無しさん@ピンキー
08/01/15 20:33:49 5OtbAKkJ
光の嫉妬でハルヒにあたる所は切なすぎたけど、
その後の光と馨のやりとりに感動しつつ、
最後の殿にイタズラする双子はいつも通りだけど、大人になったって所が良かった!
いい話しだった!!

115:名無しさん@ピンキー
08/01/15 22:34:22 n/av/nyh
GJ!!
最後が明るくて、読んだ後も後味良かった!

116:名無しさん@ピンキー
08/01/16 20:36:46 T4fHj4ak
ハニー先輩とモリ先輩がラストをビシっとまとめてくれた!
GJ!

117:名無しさん@ピンキー
08/01/17 15:27:44 tKulUVvP
一途なハルヒとか失恋を乗り越えて頑張る光とかイイ!
でもタマハル純愛話のあとにこれ読むと、余計切ないね・・・

118:名無しさん@ピンキー
08/01/21 21:24:30 Stex5250
ほしゅ

119:名無しさん@ピンキー
08/01/23 02:51:44 VsRbkBhT


120:名無しさん@ピンキー
08/01/23 02:58:58 0s7loxOx


121:名無しさん@ピンキー
08/01/23 03:11:55 Bp+j++Tv
(^Д^)笑

122:名無しさん@ピンキー
08/01/23 09:08:20 CUvlaVoG
切ねぇ…(/_;),

123:名無しさん@ピンキー
08/01/23 16:51:24 QOa4ouEZ
ハルヒが環を責める話も読んでみたいな

124:名無しさん@ピンキー
08/01/23 17:07:54 Bp+j++Tv
>>123、それは無理なんじゃない?

だって主人公の設定がツンツンで、何に関しても無頓着だしv
まぁ、ハルヒみたいな人じゃないと環先輩みたいな人のお相手なんて出来ないと思うからOKなんだけどね♪
環先輩ってうざいもんね~(褒め言葉ですv)

125:名無しさん@ピンキー
08/01/23 19:17:55 suS8fPz3
でも最近のハルヒは恋に気付いて、前ほどツンで無頓着でもなくなってきてる。
前に2回目以降のHしてくれない環にハルヒから迫るSSがあったけど、
そんな感じのハルヒ攻めならアリだと思うよ。
性格無視したドSハルヒなんかだと違うけど・・・。

126:名無しさん@ピンキー
08/01/24 02:52:05 h8r+YGeW
環がMっぽいわりに、ハルヒにS要素があんまないからな…
ハルヒは素でドSっぽい鏡夜・ハニー・馨との絡みが浮かびやすいかも。

あるとしたら天然ハルヒのなにげない一言一言に
環がいちいちショック受けて、一人言葉責めみたいな感じになるとか…
環の要望で縛ってあげていた淡白ハルヒが急用で持ち場放棄、
ハルヒが帰ってくるまでスリルを味わいながらMを満喫とか…
きめえwww


127:名無しさん@ピンキー
08/01/24 13:29:05 IoCkRRmc
環が設定したライトSMごっこに付き合わされるハルヒとか…?
「えーと…縛られてこんなに勃起しているなんて、環先輩は本当にいやらしいですね」(環の書いた台本読んでるだけ)
「ああっ、もっと俺を罵ってくれ。ハルヒ女王様ッ!」(一人でノリノリ)
「自分の中に入れたいですか?…ふん、こんな変態○○○には足コキで十分ですよ」(超棒読み)

……ねーよ(・3・)

128:名無しさん@ピンキー
08/01/25 01:31:22 C8WuG0ti
初恋ラブのせいで一人エッチを始めるハルヒ…
「え…っと、確か裸でこういう体位のまま…んぎあああΣ◇☆※〒」


129:名無しさん@ピンキー
08/01/28 20:50:07 tRkc41Yj
>>127わらたw

ハルヒと殿だとエロもギャグ調になるな

130:名無しさん@ピンキー
08/01/28 23:58:15 a6a3XRBL
緊縛放置プレイ環ハルヒ

ぐるぐるぐるぐるぐる
「はい、環先輩、朝までおとなしくしててくださいね。ではおやすみなさい」
「ハ、ハルヒィ~…これ俺の想像とちょっと違う…」
「…zZZ」
「!!!…ハルちゃんは寝付きいいなぁ…あはは(;∀; )」

131:名無しさん@ピンキー
08/01/30 21:27:06 XnM4HO0L
環は腐っても仏国紳士だからね。
エスコートは完璧、愛撫もねっとり長めだと予想。
フランス仕込みなら足の指まで舐めてくれるはず。

132:名無しさん@ピンキー
08/02/02 18:19:09 utr6aLfS
本誌でハルヒが貧乳気にしたのって初めてだっけ?

133:名無しさん@ピンキー
08/02/02 22:11:54 NbUsbuKg
貧乳を気にしたのは今月初めてじゃないか?
メイちゃんが着替えさせてる背後からこっそり環が見るわけ…ねえよ(笑)

134:名無しさん@ピンキー
08/02/03 22:05:22 Q1rRYAIx
ないとは思うが、実は布団を敷き終えた環にメイちゃんが
「買出しに行ってくるから、それまでにハルヒの着替えと汗のふき取りしといて。
あ、ハルヒにはあたしが着替えさせたって言っとくこと!」
とか頼んでたとしたら、おいしい&メイちゃんGJ…とかちょっと妄想した。

135:名無しさん@ピンキー
08/02/05 18:23:11 c9XtYgIv
過疎age

136:名無しさん@ピンキー
08/02/07 01:00:22 zUYVWyWT


137:名無しさん@ピンキー
08/02/07 01:11:49 JutpSFPp


138:名無しさん@ピンキー
08/02/08 00:43:46 6A4mLiQ6
環の頭の中はおフランス仕様なんだろうか?

外人さんは日本語下手な方がモテるって話を聞いて唐突に気になった

139:名無しさん@ピンキー
08/02/08 15:15:37 Q1u8gCwM
今はそこらの日本人以上に日本人ぽいだろうが、日本に来たばかりのころは
ふと気付くとフランス語で考えてたり、咄嗟に口走ることも少しはあったんじゃまいかと予想

つーか、もしもエロパロのセクロスシーンのフィニッシュで
「うっ…ハルヒ!好きだ、ハルヒッ!!」とか言いながらイクとこが、
「オ~ゥ、ハルヒ!ジュ…ジュテーム、モナムールゥッ!!」だったら、どんな神作品だろうがコーヒー吹くよww


140:名無しさん@ピンキー
08/02/09 00:46:16 Kd0MSMRs
>>139
wwww

141:名無しさん@ピンキー
08/02/09 01:24:05 3BPdHOaA
>>139
ちょww本当にコーヒーふいたwww

142:名無しさん@ピンキー
08/02/11 18:49:41 RsjASeOf

 

143:Tears of Spring
08/02/12 02:15:50 je/ajsAt
環×ハルヒです
エロなしです
その割に長いです。すみません。

144:名無しさん@ピンキー
08/02/12 02:40:54 iAB5h3rD
よろしく~ww

145:名無しさん@ピンキー
08/02/12 02:53:47 4az+oaf9
お待ちしてますw

146:名無しさん@ピンキー
08/02/12 07:27:10 sJrmiwzv
あ、あれ?>>143さんは?待ってるのだが…

147:名無しさん@ピンキー
08/02/12 17:40:55 w0W41vCm
これは?携帯だけだけど
URLリンク(courseagain.com)

148:Tears of Spring①
08/02/12 18:53:51 je/ajsAt
すみません!
昨日寝落ちしてしまいました…あと追加注意でこの前の環×ハルヒの続きという設定でお願いします。




「はぁっはぁっ…この服…めんどくさい…」

200X年-月-日
9:00 ○△駅 噴水前 集合

ただでさえ足の遅いハルヒは彼女なりの精一杯で休日の人混みのなかを走っていた。走りにくいであろう白いレースのワンピースを着て。そう、なぜなら環から昨日渡された予定表の集合時刻が目前に迫っていたからだ。
「はぁっ…はぁっ…た、環先輩…おはようございます…」
「おおっおはようハルヒっ!!今日も一段と可愛いなっ!その清楚なワンピースがそこまで似合うのは世界中を探してもハルヒぐらいなものだよ!
さあ今日の空を見たまえ!まるで我々の初デートを…おっといけない!あと5分で電動機関車なるものが駅に到着してしまう!!行くぞハルヒ!」

環は会って早々そう言い放つと、猛烈な勢いで自動改札に駆け込んでいった。

「はぁ…ところで先輩…切符…」

大好きなハルヒとデートできるという興奮と喜びのあまり30分も前から待っていた環には、もはやハルヒの声は届いていなかった。
ビーっビーっビーっビーっビーっビーっビーっビービービービー!!
けたたましい音が辺りに鳴り響く。どうやら自動改札機のセンサーが作動してしまったらしい。
休日の駅舎内の視線が、金髪の、青い瞳で、背の高い、顔立ちの整った、世界一(ハルヒが今まで会った中で)のお馬鹿さんに集まるのがハルヒには分かった。

「!!??ななななっ!!??ハ、ハルヒぃぃっ!このゲートはいったい何を判別するものなんだ!?いったい俺のどこが、どこがいけないというのだぁっ!?」
「…お客さぁん…切符を買ってもらわないと…」
「きっぷ?きっぷとはホテルのボーイなどに…」
「すみません。環先輩、はい、これ。」
自動改札機に切符を入れると、今度は素直にゲートが開いた。
「す、すまないハルヒぃぃっ!!!!今日はすべて俺がぁっ!」
「いえ、お気になさらずに。切符代ぐらい自分に払わせて下さい(というかそれぐらいしか払えないし)」
出来ることなら他人のふりをしてこの場から逃げ出したいぐらいだったが、ここまできてしまったなら、腹をくくるしかない。そう思い直し、環に切符を手渡した。
「電車の乗り方も知らないのに一人で突っ走らないで下さいね(恥ずかしいから)」
「ハ、ハルヒがそんなに言うのなら、て、手を繋がないことも無いぞ…」
「(またこんなときに…)いいですけど(一人で迷子になられても困るし)」
ハルヒが心ではこんな事を考えているとは露知らず、小首を傾げて見上げる瞳に早速ノックアウトされている環であった



149:Tears of Spring②
08/02/12 18:58:42 je/ajsAt

「…ハ、ハルヒ!!では、さっそく…」
ハルヒの華奢な、それでいてしなやかな手にそっと触れる。普段水仕事をしているせいだろうか、環は心なしか荒れているような気がした。其処がまた環の心をくすぐる。
ええぃと思い切ってギュッと握ると優しく握り返してくれる。
…どっきんどっきんどっきんどっきんどっきんどっきんどっきん…
「環先輩…」
「な、なにかな?」
「そんなにドキドキしないで下さい。自分までドキドキが伝わってきますから…」
「そそそんな、お、俺はドドドキドキなぞっ!」
「あ、あと、」
「んんっ?」
「電車…とっくに行っちゃいましたよ?」
「ぬうわぁにいぃっ!?」
ガ―――( ̄□ ̄;)!!―――ンっ


9:07 予定失敗。



150:Tears of Spring③
08/02/12 19:02:13 je/ajsAt
――――――
一方その頃…

「ツーか、なんだかんだ言って、上手くやってんじゃん、殿とハルヒ。」

双眼鏡を目にあて光がつまらなそうに言った。

「おててつないで楽しそうだねぇ~」
「……そうだな」

同じく双眼鏡を目にあてたハニー先輩と彼を肩車したモリ先輩がそれに応える。

「まあ計画は上手くいっていないようですが」

5人の手には環お手製の『環andハルヒのドキ☆ドキ初デート計画表』があった。
「でも鏡夜先輩どうやってこの計画表手に入れたのサ?」
「ふ、愚問だな。俺は環の『親友』だぞ?あいつが自分から見せてきたに決まっている。この俺に自分の計画の不備を指摘してほしいと言ってきたから協力してやったまでのことだ」
「「さすがー」」

双子が気のない拍手をしていると、ハニー先輩が声を上げた。

「あ、ねえねえ次はさくら遊園地に行くらしいよお~いいなあ遊園地、僕らもいきたいねえ~」

鏡夜が怪しく光った眼鏡をすり上げる。

「では、そろそろ移動することにしましょうか」

「「「さんせ~っ!」」」

151:Tears of Spring⑥
08/02/12 19:27:36 je/ajsAt
――――――


さすがに休日なだけあって、園内は家族連れやカップルで賑わっている。手を繋いで歩く母と子、息子を肩車した父親、ハニー先輩を肩車したモリ先輩…

「…ってエエエッ!?」
「どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもないよ…」

(い、今のは見間違いだ、ままままさか…こんな庶民遊園地にあの人たちがいるはずがない!きっと幻覚だ!そうだ、そうに違いない!)
環は頭をブンブンと振って自分に言い聞かせた。

…それから環は急にキョロキョロして挙動不審になり、どう見てもなんでもなくはない様子。
ハルヒは少し気になったが、環がなんでもないと言い張るのでしつこく聞くのも気が引けてあきらめた。

(どうしたのかな?一人で抱え込まなきゃいいんだけど…)

「そ、それよりハルヒ!初めはアレに一緒に乗ろう!まさに俺のためにあるような乗り物じゃないかっ!?」

彼が指差したのはそう、
ファンシーな音楽の調べに合わせて、白馬や馬車がゆっくりと回転する『メリーゴーランド』であった。

「…はぁ…」
「の、乗りたくないのか…?」

捨てられた子犬のような目で環はハルヒを見つめる。もう目の縁には涙がたまっていて、今にもこぼれ落ちそうだ。視線をなんとか反らしても、結局どちらが負けるかは明らかだ。

「いいですけど…」
「本当か!?じゃ、じゃあ…あの白馬にしよう!青い瞳の!」

環はすぐに目を輝かせ、まっ白い身体に額に大きな角が生えた、空想上の生き物、ユニコーンを模倣した乗り物を指差した。

「えっと…じゃあ自分は…」
「何言ってるんだ?ハルヒは俺と一緒に乗るに決まっているだろう!?」
「ハァ!?ちょ、ちょっと待って下さい、一緒にって、馬車とかじゃなくて、あの馬に…?」
「無論!カップルというのは一頭の馬に跨がり身を寄せあって愛を確かめあうものだ、とある雑誌に書いてあった!」

(どんな雑誌だ…)

心の中でツッコミを入れてみたものの、自分の恋心に気付いたのも、メイから借りた雑誌によるものなので、あながち嘘呼ばわりするわけにもいかなかった。


152:名無しさん@ピンキー
08/02/12 20:56:53 je/ajsAt
>>151
訂正
Tears of Spring⑥
→Tears of Spring④
でした。すみません。

153:名無しさん@ピンキー
08/02/12 21:32:36 5VV8uEmA
( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )

154:名無しさん@ピンキー
08/02/12 21:49:05 Za3TaOJb
ニヤニヤ展開&環のおバカさがいい(゚∀゚)!!
続きを期待してます

155:Tears of Spring⑧
08/02/12 22:22:33 je/ajsAt
――――――


「ハルヒっ!!」
「なんですか、もう追っかけてこないで下さい!」

自分でも、こんなの子供がすることだって解っている。…けど、あの人といると自分も子供になってしまう。言いたいことを抑えられない。昔は感情的になることなんてなかったのに。

それは、変化の証なのだろうか、それとも…

不意に腕を掴まれ背後から抱き締められる。広い胸を背中に感じる。
あったかくて、優しい胸。
「…っ離して下さい!」
「嫌だ」

そう言うと環はハルヒの首もとに頭を寄せた。吐息が首にかかる。

「ごめん、ハルヒ。俺あの時とにかく少女を助けることで頭が一杯で…」
「…知ってます」
「しかも馬車の中にハルヒのこと置き去りにして…」「そうですね」
「…俺は、俺は……俺はなんて最低な男なんだあああ!!!!!!」

頭を抱えふらっと地面に膝まづいた挙句、例のポーズでシクシクと泣き出してしまった。


「………環先輩は最低なんかじゃないですよ?」
「へ?」

環の目の前にしゃがんでハルヒは続ける。

「人間思いで優しくて、どんなときでも全力で本気で…」
「ハル…」
「…私の尊敬する、たった一人の大切な先輩です」

その笑顔はまるでそう、春の日差しのようにあたたかで、桜のように美しかった。環は今までのどんな時よりも強く、強く、ハルヒを抱き締めた。

「環先輩…苦し…」
「ハルヒ……俺は…誰かをこんなに愛しいと思ったことはない……!!」

ハルヒは自分の頬が染まり、胸の鼓動が早くなり、体温が上がるのが分かった。そしてそれは環も同じだということにも気付いた。

もう目は反らせなかった。

「…愛してる……」



156:Tears of Spring⑨
08/02/12 22:28:04 je/ajsAt
――――――


その頃の光&馨…

「殿たちどこいっちゃったのかなー?」
「さすがにちょっとやり過ぎちゃったもんネ」
「高速回転のメリーゴーランドで殿を酔わせてハルヒを幻滅させる予定だったのにー」
「ま、殿にちょっと怪我させたのは悪かったケド、他に怪我人出なかったんだし良かったんじゃない?」
「だよね、殿はハルヒを一人占めした罰だよ」
「じゃあそろそろ飽きたし帰ろっか!」
「あれ、あの人影は……ハニー先輩!モリ先輩!」

肩車からおんぶに変わった二人組がこちらに気付いた。

「あ、ヒカちゃんカオちゃん!」
「…」

「先輩たちは何してたの?」

満面の笑みでハニー先輩は答えた。

「あのねーあっちでケーキ食べ…」

「「アアもう分かった」」

呆れ顔で二人は声をそろえた。

「じゃあもう僕ら帰るから、鏡夜先輩にあったらヨロシクー」
「うん、じゃあねえ~♪」

肩を並べて帰る二人を見送って二人も出口へと向かっていった。

「なかなか今日は面白かったねえ~」
「…ああ」
「タマちゃんとハルちゃんも仲良しになってたしねえ~」
「…そうだな」
「僕もあのメリーゴーランド乗りたかったなあ~」
「…遠慮しとく」
「一体鏡ちゃんは、どんなことを企んでたのかねえ~」
「…さあ、それは次回のお楽しみだろう…」
「それもそうだねえ~」


こうして部員たちの休日は過ぎていくのであった…


【おわり】



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