14/12/23 21:56:26.91 cfIA3V940
大先生の本音は基本これだからね
--38年目の妄言いろいろ-- 虚淵玄
初恋の女性の夢を見た。
夢の中の彼女は、それこそ俺が想像つく限りの醜悪さの塊のような男と結婚し、虐げられながらも五人の子供の育児
に追われていた。窶れ果て、疲れ切った虚ろな目で繰り返し「幸せです」と呟きながら、それでもなお俺が惚れていた頃そ
のままに綺麗な人だった。--目が覚めたときの欝たるやもう。なぁ虚淵玄よ。せめて自分が見る夢の中身ぐらい、もっと
幸せなもんを用意してくれよ!
振られたときの言葉は忘れられない。当時は悔しかったが、今となってはまぁ無理もなかったなと思う。いくら照れくさ
かったからとはいえ、あんなにも浮ついて芝居がかった告白の仕方をしたら、そりゃ向こうも本気だなんて信じてくれな
かったのは当然だ。あの頃の己の馬鹿さ加減には、今でも思い出すたびに後悔する。
あの失恋から、気がつけば3倍近い時間を生きてしまった。彼女はどうしているだろうか。せめて近況だけでも分かった
らさっきの夢を笑って否定できるというのに、今ではもう何処でどんな暮らしをしているのかすら知れない。願わくば、そ
の人生が幸福で健やかなるものであってほしい。
あの人、今でもアニメは観ているだろうか? 「魔法少女まどかマギカ」って知っているだろうか。
それの脚本書いた虚淵玄ってね、実は俺なんだよ。貴方の記憶に残っているか、今となってはもう定かでないけれど。かつ
て一度は貴方と人生が交差したことのある誰かさんなんだよ。
ああ、確かに俺は成功した。俺はいま大勢の人に褒められている。そうして賜った賛辞を受け止めて、俺はいま自分のこ
とを誇りに思っても良いのだろう。
でも本当にそれを自慢したかった相手、認めてもらいたかった相手と、どれほど距離が離れてしまったことか。
どれほど長い時間が経ってしまったことか。こんな感情、若い頃には想像だにしなかった。
歳を取ってから解ること、というのも色々とあるもんだねー。