05/07/13 22:45:13 INEUhaNV
幻影の王
人との出会いは不思議なものだ。人は時として、初対面なのに関わらずその相手にある
種の感情を抱くこともある。別段その人の噂を聞いていたり、容姿が好みだというわけで
もなく、本当に一目見ただけである種の名状しがたき感情を抱くことがあるのだ。
――僕がその女を見たときは吐き気を催す忌まわしき反感を抱いた。 別段女の噂を
聞いていたわけではなく、容姿が胸を悪くするようなものでもないのに、僕はその女にい
われなき嫌悪感を持った。本当に僕は一目見ただけでこの女の全てが嫌いになった。いう
ならば、存在そのものが僕と見事なまでにかみ合わないのだ。自分でもなぜここまで病的
なまでにその女を気に食わないのか分からず、混乱した。
その女、瑠琉家旭(るるいえあきら)は教壇に立ち、その厭わしい瞳で、教室を見回し
ていた。僕のクラスメイト達はこの2学期から一緒に学校で学ぶことになる、その転校生
を好奇に満ち満ちた目で観察していた。
「おぃ、可愛くねぇ?」
「いや、あれはマジ可愛い。」
「やべぇー、俺惚れそう。」
確かに、旭の容姿は美しかった。完璧なまでのフギィア体型と、さらりと肩にまで届く黒
髪、顔も整っておりまさに、男の妄想の戯画化されたような姿だった。しかし、僕はそい
つを始めてみたとき、奇怪な悪寒が全身を覆い、僕は身体を思わず震わせた。