13/02/05 09:54:50.82 yeZsTy0i
39.
どうやら問題なく、やりすごすことが出来たようだ。
いや─けれども。
何かが、俺の心に引っ掛かった。
母さんの会話の内容を思い返す。どこかが妙ではなかったか。
どうして当たり前のような電話をわざわざ掛けて来たのだろう。
─今日はもう、本当に帰ってこないの?
夕方にすでに告げていたことを、もう一度、念を押して確認するかのように。
確認?
俺が、安田の家に、“間違いなく”泊まっていることを?
嵐の前兆の黒雲が圧し掛かってくるような予感に、俺はブースの中で思わず立ち尽くした。
─明日は、安田くんの家から、そのまま学校に行くのね?
まさか。
母さんは、確かめようとしたのではないか。
俺が、間違いなく今夜は家に帰ってこないことを?
そして、明日の朝、着替えのために帰って来たりもしないことを?
─分かった。それじゃあ…聡、おやすみなさい。
俺が、今夜、家にいない。
ならば、今の母さんはどうする?
もしくは、杉浦がそのことを知ったら、どうする?
俺のいない家で─何が起こる?
「…まさか」
携帯を持った手が、小刻みに震えるのを俺は感じていた。