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「うむ。よい食い締めだ。それでこそ我が一族だ。よし、もう少し可愛がってやる。それいさ」
「は、ひいいい。お武家さま、なぜ、なぜ抜くのです。ああ。なぜ」
母の声がかすれて夜の闇に響いた。
「淫らな女を、もっと善がらせたいのでな。どうだ、まだ欲しいかいさ。おい」
「ああ、欲しい。お武家さまのまら、欲しい。いさのほとに、また、早く。あああ」
娘が駄々をこねるように、湯壷の縁で体をくねらせる母いさの姿。
畑を耕し、快活に笑む母の顔とはまるで違う、熱に浮かされたような顔だ。
「ならば這え」
「あああ、んん」
「這って馬のようにしてみよ。尻を振りねだり、武家の者として俺に奉仕してみよ」
「ああ、そんな」
「まらが欲しいのだろう。ならばねだれ。這え。さあいさ、もうしてやらんぞ。くくく」
「ああ、嫌。ああああ」
嫌。嫌。この夜何度か聞いた言葉だ。
しかし口でそう言い放っても、母の白い体は湯壷の中でゆっくりと動いた。
まさしく物の怪に尻を向けるように、豊かな肉を回らせた。
落ち武者が言う通り、まるで盛った雌馬がそうするように。
尻を向け、あろうことかその尻を振った。肌に這った水しぶきが飛び散り夜に光るほどに。
「欲しい、欲しい。お武家さまのまらで、まだいさの奥を。ほとの奥を愛してくださいませ。ああ」
「おお、やはり馬のようだ。雌馬だ。武家の一門としてふさわしいぞいさ。くくく」
藤次は見る。透けていてもその落ち武者の口の端がひどく上がったのを。
母いさを責め始める前に見せた顔とまるで同じだった。
「ああ。後生です。まらを、まらをほとの奥に。ああ。ああ、ひいいいいいいん」
また、入れたようだ。藤次からは真横。母は馬のように四つに這っている。
両の足を湯に沈ませながら、その尻肉を物の怪に向けて揺らめかせている。
物の怪はそんな母に乗馬よろしく、手綱を捌くかのように尻肉を掴む。
先ほどよりずっとずっとざぶざぶと湯壷に波が立つ。
武家にふさわしいのが馬であると落ち武者は言う。
。だが藤次にはそうは思えなかった。
母は畜生のように振舞ってなお、物の怪のまらを欲しがっている。
喘ぎも動きも振る舞いさえも、母は盛りのついた雌馬のように思えたのだ。