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透けた落ち武者は笑った。惨めないさを見て笑っている。
藤次にも、それは分かった。
しばらく、落ち武者は動きを止めていく。
母いさは、逆に動きを大きくする。尻をそちらに向かって振りたくる。
嫌だと言っていた動きをすすんでして、今は止めるのは嫌とむせび泣く。
物の怪にしたら、滑稽で仕方ないに違いない。
「ほら止むぞ。どうか。言うか、言わぬか」
「ああお武家さま、止めるの、ひいい。いさの、いさの。あう、ううん」
「ほら、もう止む。もう二度と気をやれんぞ、女。くくく」
落ち武者は、また笑う。母は笑われても気にしない。藤次は。
「ああ、言いますお武家さま。ほ、ほ、ほとです。いさのほとがおかしくなります。あひい」
「そうか、ほとか。ほとがおかしくなるかいさとやら」
「はい、はいい。ほとがおかしくなります。ですから、ですからお武家さま」
「どうしたいさ。何でどうして欲しいのか、言えほら言え。女、ほら」
「あ、ううう。いさのほとを、あ、うん。いさのほと、を。お武家さまの、あ、ああん」
「言え、いさ」
物の怪は一度大きく腰を突き出して、口の端を上げた。
藤次は気づいた。また奴は母を笑う気なのだ。
そして、母は笑われるようなことを言うのだ。するのだ。