12/10/12 04:54:20.31 bYwxEc/Q
しばらくは二人とも黙ったままちびちびとワインを舐めていた。本来文学の世界は人体改造くらいでがたがた騒いでいては
身が持たないほど幅が広い。だが、考えてみると文芸部にいたときから久子がグロテスクな表現の本を読んでいるのを見た
ことがない。久子には刺激が強すぎたようだった。
「で、ほかにどんなジャンルがあるの?」
「え、もう止めようって言いましたよね」
「陵辱ジャンルはね。話は続けてよ」
「そうですか」
あきれた顔を見せながら、一郎のほうはやや残念と言うのが本心である。久子がへこむところなどはじめてみたのだ。
曲がりなりにも昔は久子に胸をときめかせていたのだ。おー、なかなかかわいいななどと思っていただけに、あっさり立ち
直られるとつまらない。
「わかりました。陵辱以外のジャンルだと、学園物とか、サラリーマン官能小説とか、痴漢ものとか、いろいろありますね。
これらを書くときに重視すべき点は、和姦だということです」
「学園陵辱物はどうなるの?」
「突っ込んでくると思いましたよ。分類が完璧で無い事は認めますが、学園陵辱物は、学園主体の陵辱ではないんです。
陵辱と言うヒロインの意思を無視する枠組みがあって、その中でヒロインに恥辱を与えるためスパイスとして学園がある」
「ふーん、じゃぁ田中君の言う学園物は本当は和姦学園物じゃないの?」
「あー、まぁそれでもいいんですけどね、和姦の場合は事前の精神的な動きがジャンル毎に大きく変わるので別ジャンル
としてくくったほうが、私は理解しやすいってだけです」
「たとえば?」
「学園を舞台としたサラリーマン官能小説ってのもあります」
「学園物じゃなくて?」
「人によって学園物と分類する人もいるでしょう。しかし、学園を舞台としたサラリーマン官能小説の場合、学校だからと
いう禁忌性は極端には強調されないんです。あくまでモテモテ主人公の話です。」
「うーん、わかりにくい」
「教師が主人公の学園ものは、生徒、あるいは教師同士の恋という禁忌性を書く事で、セックスの背徳性を際立たせます。」
「あ、そこ重要な気がする」
「セックスの背徳性はジャンルわけの重要なキーです。どういう背徳性がどのくらいあるかを明らかにする事で、読者に与える
カタルシスの方向付けをします」