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バニーちゃんのBad Luck Modeな一日・その2
「僕はね、虎徹さん。風の強い日が嫌いなんです」
「そらまたなんで?」
「髪が乱れるでしょう」
「…あーそーですか。ていうかそれ、スカイハイには言ってやるなよ。落ち込むだろ」
「言いませんよ、そんなこと。じゃなくて、本当は理由があるんです。
まだ10代のころ、犯罪について詳しく情報を得たければ、裁判を傍聴するのがいいということをやっと知りました」
「…普通は、もっと後まで知らなくてもいいもんだ。いや、ごめんな。それで?」
「そのころニュースで話題になっていた、強盗放火殺人の事件の裁判があると知ったんです。
強盗、殺人ときて被害者宅に放火ですから、…手口が似ているでしょう。
とにかく詳しく聞こうと思って、裁判当日に法廷へ行きました。
当時マスコミを騒がせた事件だったので、傍聴券の配布に行列ができてて」
「あるな、そういうの」
「なんとか間に合ったので、傍聴券は手に入れられたんですよ。開廷まで待機していたら
知らないTVクルーに券を渡すように言われました」
「ハァ? 何で?」
「どう見ても法学部の学生とかそういう感じじゃなかったですからね、僕は。配布の行列に並ぶ
アルバイトだと思われたみたいなんです。渡しなさい、嫌だで押し問答になって」
「何だそいつら! それでどうしたんだよ!?」
「後ろ手に隠そうとしたんですよ。うっかり手から券がこぼれて、風の強い日でしたから」
「飛んでいっちまったのか!」
「後でTVクルーには謝られましたけど、一枚きりですしね。僕の素人捜査は、大失敗で始まったというわけです。
だいぶ後になってもう一度よく調べたら、別にウロボロスに関係ある犯人ではなかったようですけど。
なんだかもう、がっかりしてしまって。
それから風の強い日は、僕にとってBad Luckの日、みたいなものだったんですよ」
「……今でも、そうなのか?」
「スタジアムの屋上で、虎徹さんが僕に語りかけてくれたとき、ずっと風が吹いてました」
「そう、だったっけか」
「あとであなたの髪、けっこうボサボサだったじゃないですか」
「えー、そうかぁ?」
「100パワーで駆け抜けているときもね、風を感じます」
「そうだな。俺もだ」
「BadかGoodかわからないですけど、風が吹くのは変化の兆しですよ。だって僕らの関係も変わったでしょう?」
「じゃあ俺には、Good Luckの風だ。バニー、お前、風に背中押されて俺の腕の中に来たのか?」
「そうかもしれません、ね」