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>>616
ある夜、家族が寝静まった頃、ベッドに忍び寄る影。
その姿は漆黒のマントにタキシード姿、血のように赤い目、口角からちらりと覗く二本の牙・・・
そう、彼はブラド家末裔の吸血鬼だった。
何故彼がこの日本の極普通の家庭にいるのか、それは彼の眷族となる者の適合者がこの家族の一人の年若き女であった為だ。
彼は彼女にそっと近づく。
彼女はぐっすりと眠っており、閉じた瞼には長い整った眉毛、小さな鼻は安らかな寝息が聞こえて来る。その鼻のすぐ下には桜色に色づく艶やかな柔らかそうな唇があった。
彼はその唇にむしゃぶりつきたかったがそれで起きられては面倒なことになる。まずは目的を果たしてから後でゆっくりと楽しもうと思った。
彼が純粋な眷族を創れるのはただ一度きり、これに失敗しては元も子もない。
ゆっくりと彼女の首筋に牙を立てる。そして、一気に彼女の血液を吸い込んだ。彼の喉を熱い血が流れ、変わりに彼女の中には彼の魔力が流れ込む。