12/01/06 08:19:21.68 kdO8OFw30
病室の最愛の恋人を見舞った男はその日、一枚の絵葉書を持参した。
「お前宛てだよ」
どこか異国の街角を描いた絵。
受け取った少年が裏返してみると、差出人の名はなく、ただひとこと、
〈俺です。まだ思い出せませんか?〉
「何だろこれ。誰からかな」
「さてね」
しばらくして少年はふと、絵葉書の景色が、いつか見たことのある場所のような気がしてきた。
そう、間違いなくここにはかつて行ったことがある。
いつだった?どこだった?
思い出した。
その瞬間、あっ、と少年は小さく叫ぶ。
それに応えて男が言う。
「俺も今、お前と同じことを考えているよ。いや、本当はずっと……そのことだけを考えてた」
そして少年は、やっと差出人が誰なのかに気付く。