12/01/02 04:20:19.47 JMbrK1Gv0
ある日のことだった。
俺はバイクで事故を起こし、左足を丸々切断することになってしまった。
意気消沈していた俺だったが、バイオに詳しい友人Aから実験の被験者にならないかという話が来た。
それは人体を再生する新技術の実験であり、ある程度の大きさの細胞から手も足も心臓も再生するというものだった。
これを使って俺の足を再生しようというのだ。
既に実験では成功していて危険性は薄いというAの熱心な説得や、もう一度自分の足で歩いてみたいという願望に負けて、俺は結局その提案に乗ることにした。
それ以来、俺はこの研究所で過ごしている。勿論、しっかりと自分の両足で立ってだ。
最初は不安だったが、成功した今となってはやはりこの話を受けて良かったと心から思う。
今はリハビリや副作用の確認の為にここから出られないが、早くこの姿を彼女にも見せてやりたい。
Aは再生された部位は、前の物と感じが少し違うかもしれないなどと言っていたが、何も問題は感じないしもう少しでここから出られるだろう。
…とはいえ最近、風邪っぽいんだよなぁ。頭痛もするし手も何か痺れるし、少しリハビリを張り切り過ぎたのかもしれない。
そういうと体を安静に保つ薬とやらを打ってくれるようになった。これでゆっくり休める。
左足だけは調子がいいんだがな。
……そう思って俺は気づいた。
心臓が止まりそうになって、慌ててこの研究所から逃げだそうと試みる。だが無駄だった。
ふらつく体を起こしてなんとか立ちあがった瞬間、部屋のドアが開いてあいつが出てきた。
何なんだ。どうしてなんだ。
泣き叫んだ俺に、寂しそうに笑ってAは代わりでも欲しかったと呟いた。
そして俺にはここでAと暮らすしかないということも。