11/12/29 01:10:18.85 5c+4fE4+0
彼が、僕をを見つめている。
僕の胸に、彼と暮らした数十年の年月が去来する。
彼の命が消えようとするこのときを、僕は心に刻みつけようと思った。
彼はたどたどしい言葉で、自分がいかに至らない恋人であったかを述べ始めた。
気が強かった彼が、このようなしおらしい言葉を口にするものなのか。
僕の心の中に、言葉で言い表しようのない感情が溢れてくる。
彼は、涙を流しているようだった。
この期に及んで、彼の悔悟の言葉を聞きたくはなかった。
「もういいんだよ」
僕はそういうと、手に力を込めた。