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突然ありがたい申し出を受け、高田は驚く。嫌な訳ないではないか。むしろ、今日のような美味しい料理だったら飽きることなく食べたいし、及ばずながらでも、丑嶋
の手伝いだったら料理も片付けも苦にならないし、楽しいくらいだ。だが、別に強請ったのではないのに、何故丑嶋がそんな気を使ってくれる必要があるのか。ただ単に
社員である高田の食生活を気遣っているにしても、それでは通い妻のごとく丑嶋が連日来てくれる理由としては弱すぎる。
「何でそんな・・・」
食欲が満たされ、すっかり忘れていた性欲というには小さい下心が再び芽生え始めてしまいそうだ。もしかして、と高田が身を乗り出し、丑嶋の頬に手を伸ばす。丑嶋
は明後日の方向を見つめ、小さく呟く。
「さっきのアニメ、まだ2作目があるんだろ?明日観ようぜ」
「ア?!アニメ、ですか。そうですね・・・」
よっぽどあのカウボーイと宇宙レンジャーの出るアニメ映画が気に入ったのか、と悲しくも納得するしかない理由に頷く。だが、果たしてその理由は丑嶋の本心なのだ
ろうか、とも思う。高田がプレゼントすると言っているのだから、わざわざ高田の家に来て料理をしなくても、ただ今日、持って帰れば済むことではないか。
高田は躊躇したが、丑嶋の頬に伸ばした手を前に少しずつ突き出していく。
もう少し、となった時、丑嶋が後ろに一歩下がって笑った。
「明日、な。今日はもう帰る」
そう言うと、丑嶋は高田の脇をすり抜けて玄関の方に歩いて行き、すぐさま外に出て行ってしまった。
高田は声をかける事も、追いかける事もしなかった。
それよりも、先ほどの丑嶋の「明日」という言葉が、果たして何を示しているのかが気になって仕方が無かった。