11/03/18 22:26:44.14 etzSJQNh0
「焦げないように、こうやってやるんだ」
自分から触れようとしていたのに、先に触れられてしまった。かえって高田の方が緊張して赤くなってしまう始末だった。
高田がぎこちなく手を動かし始めると、丑嶋の手が離れた。
「サラダもすぐ出来るから、そうしたらもう掻き混ぜなくていいぞ。終わったら、そこに置いてある皿に盛れ」
丑嶋は高田の顔の赤さには全く気付かず、再び机の方に戻って行く。
高田は丑嶋の方を振り返るが、手は言われたままにお玉を動かしている。折角の共同作業だったというのに、触れられたのは本当に一瞬だ。相手が女だったら自分はこ
んなにヘタレではないのに、と気落ちしてしまう。
もし高田に犬の尻尾がついていたら、さぞかし情けなさげに下に向かって垂れさがってしまっていることだろう。本当ならご主人さまに飛びついて喜びを態度に表して
興奮していまいたいのに、こう、あまりにつれないご主人さまだと、高田の方のテンションだって下降してしまう。
丑嶋は、高田のテンションを知らず内に上げ、次の瞬間に急降下させたことなど知らないし、考えもしない。味を調えたサラダの味見をするべくボールの中にスプーン
を入れ、それをペロリと舐め上げる。赤に近い桃色の舌、銀のスプーン、薄クリームのドレッシングがそこに絡む。舌の先がスプーンにめり込んだかと思うと、こそぐ様
に付着していたドレッシングを舐めとる。赤に近い桃色の舌に移動した薄クリーム色のドレッシングは舌ごと口内に招き入れられ、ほんの少しの間を置いて嚥下によって
丑嶋の体内に入って行った。ボコリと上下運動した喉仏は綺麗な肌色で、ドレッシングが進んでいく体内は舌と同様に赤に近い桃色なのだろうか。
ただ単なる味見をしている光景なのに、何故か妖しさを漂わせる。高田は少し鼓動が五月蠅くなったのを感じ、慌てて視線を鍋に移して一心不乱に手を動かす。
本当に情けない。中学生ではあるまいし、興奮する沸点が我ながら丑嶋相手では引きすぎると思う。
「うん。これぐらいだな。高田、もう出来たぞ」