モララーのビデオ棚in801板64at 801
モララーのビデオ棚in801板64 - 暇つぶし2ch70:ヘタレくんとツンデレくん1/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:23:57.43 etzSJQNh0
 闇金ウシジマくんで高田×社長。エロなし。取り立てくんをベースに社長の座敷犬状態のヘタレイケメン×ツンデレ女王様な話です。社長がらしくない程優しいですが、
甘く穏やかな話しが書きたいと思いまして・・・。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 
 高田は大手レコードーショップで買い物を終え、自分が借りているアパートに戻ってきた。外から自分の部屋を見ると、部屋には灯りがついている。一人暮らしの高田
だが、美麗な見かけの為に相手には苦労したためしがないので、誰かが部屋で高田を待っている状況は別に珍しくはない。
 けれど、今日部屋に居るのはそんじょそこらの女ではない。早くあそこに帰りたいと急く反面、嬉しくてここで眺めていたいと思う。
 「好いもんだな」
 部屋の灯りを見ながら呟くと、冬の冷たい風が急に気紛れをおこして強く吹き始めた。
 「寒いっ」
 買ったばかりのインナーを見せつける為に恰好をつけてコートの前を開けていたが、堪らず両手で前を合わせながらアパートの中に飛び込んで行った。
ー--------------------------------------------------------------------------- 
 「ただいま」
 部屋の出入り口のドアを開け、靴を脱ぐ。
 「ん?美味しそうな匂い」
 ふわりといい匂いがした。唾液が一気に湧き、胃が空腹で切なくなる。小さな玄関に靴を置き、部屋の一番奥にある台所の方に歩いて行く。近づけば近づくほど匂いも
近くなる。1DKの小さな我が家だが、何だかいつもより居心地がよく感じるのは匂いのお陰だろうか。

71:ヘタレくんとツンデレくん2/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:25:05.84 etzSJQNh0
 数歩歩くだけで台所との間のドアの前に行きつき、ノブに手をかけて開けた。
 「社長、戻りました」
 「おう」
 台所には丑嶋が立っていて、鍋を掻き混ぜながら返事をした。高田は丑嶋の大きな背中にそれとなく手を這わし、鍋の中を覗いた。中には茶色のスープと大きく切られ
た肉と野菜の塊がグツグツと煮込まれている。
 「カレーですか?」
 「あ?ビーフシチューだ。匂いで分かるだろうが。もう少しで出来るから」
 言われてみれば匂いがカレーとビーフシチューでは全く違うのだが、料理が出来ない高田にとっては、見かけにおいてはカレーとビーフシチューの見分けはつかない。
 会社の前で別れ、レコードショップに向かった高田と、高田の部屋に向かった丑嶋。高田が留守にした時間は2時間近くだが、料理をしないので2時間足らずでビーフ
シチューを作れるのが手早いのかも分からない。 
 美味しそうな匂いがした時点で何かが台所で行われているのは分かっていたが、まさか鍋まで持ち出して本格的に料理してくれているとは思わなかった。
 何しろ、高田としては我が家の台所なのに、丑嶋が今使っている鍋などの調理器具があったことさえも知らなかったのだ。恐らく調理器具自体は以前に部屋に来た何人
かの女性達が買いそろえてくれて、丑嶋が来る前からあったのだろう。それでも知らなかったのは、来てくれた女性達が料理する姿なんて一切興味がなく、出来る料理に
も興味が左程なくて、今のように台所に乗り込んで来たのは初めてとも言えるからだ。 
 焦げないように鍋を掻き混ぜる丑嶋を見ていると、後ろから腰に腕を回して広い背中に顔を埋めてしまいたくなってしまう。そんなことしたら丑嶋はどういう反応をす
るだろうか。いつも通り冷静さを崩さずいるだろうか。それとも、照れ隠しに怒りだすだろうか。

72:ヘタレくんとツンデレくん3/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:25:58.10 etzSJQNh0
 けれど、怒られても少し、いや、かなり困ってしまう。何しろここには刃物があるので、人の頭を金属バットで砕いてしまうような男相手では虎穴に虎の子を取りに行
くようなものだ。
 高田は腰に近づきはじめていた腕を急遽進路変更し、鍋を掻き回すお玉を握る手に向けて行く。
 そっと近づけ、後少し、後少しと近づけ、指先があと少しで触れる、とまでなった時、丑嶋の手が動いた。
 「ほら」
 「は?!」
 丑嶋の手は握っていたお玉を鍋の上にあげ、高田の手に握らせた。お玉に入っていたビーフシチューはお鍋の中に落ち、少しだけ跳ねて鍋の表面に付いた。
 「は?!これをどうしたら・・・」
 持たされたお玉に戸惑う高田に目も合わせず、丑嶋は忙しげにコンロから離れ、机の上に乗せてあったボールの方に向かった。
 「いいって言うまで掻き混ぜてろ。俺はその間にこっちをやるから」
 戸惑ったままで手を動かさない高田と違い、丑嶋はボールの中に入っている野菜に調味料を掛け、手早くサラダを作っていく。
 「混ぜるって、えー・・・」
 やれと言われたものの、ただ単純に混ぜるだけの作業でも、やったことがない高田にはそれさえも上手に出来ない。
 モジモジと手を蠢かしていると、丑嶋が大股で歩いてコンロの方に来た。
 「こうだ、こう」
 言うが早いか、丑嶋はお玉を握る高田の手の上に手を重ね、ゆっくりと鍋の底から掻き混ぜさせた。

73:ヘタレくんとツンデレくん4/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:26:44.14 etzSJQNh0
 「焦げないように、こうやってやるんだ」
 自分から触れようとしていたのに、先に触れられてしまった。かえって高田の方が緊張して赤くなってしまう始末だった。
 高田がぎこちなく手を動かし始めると、丑嶋の手が離れた。
 「サラダもすぐ出来るから、そうしたらもう掻き混ぜなくていいぞ。終わったら、そこに置いてある皿に盛れ」
 丑嶋は高田の顔の赤さには全く気付かず、再び机の方に戻って行く。
 高田は丑嶋の方を振り返るが、手は言われたままにお玉を動かしている。折角の共同作業だったというのに、触れられたのは本当に一瞬だ。相手が女だったら自分はこ
んなにヘタレではないのに、と気落ちしてしまう。
 もし高田に犬の尻尾がついていたら、さぞかし情けなさげに下に向かって垂れさがってしまっていることだろう。本当ならご主人さまに飛びついて喜びを態度に表して
興奮していまいたいのに、こう、あまりにつれないご主人さまだと、高田の方のテンションだって下降してしまう。
 丑嶋は、高田のテンションを知らず内に上げ、次の瞬間に急降下させたことなど知らないし、考えもしない。味を調えたサラダの味見をするべくボールの中にスプーン
を入れ、それをペロリと舐め上げる。赤に近い桃色の舌、銀のスプーン、薄クリームのドレッシングがそこに絡む。舌の先がスプーンにめり込んだかと思うと、こそぐ様
に付着していたドレッシングを舐めとる。赤に近い桃色の舌に移動した薄クリーム色のドレッシングは舌ごと口内に招き入れられ、ほんの少しの間を置いて嚥下によって
丑嶋の体内に入って行った。ボコリと上下運動した喉仏は綺麗な肌色で、ドレッシングが進んでいく体内は舌と同様に赤に近い桃色なのだろうか。
 ただ単なる味見をしている光景なのに、何故か妖しさを漂わせる。高田は少し鼓動が五月蠅くなったのを感じ、慌てて視線を鍋に移して一心不乱に手を動かす。
 本当に情けない。中学生ではあるまいし、興奮する沸点が我ながら丑嶋相手では引きすぎると思う。
 「うん。これぐらいだな。高田、もう出来たぞ」

74:ヘタレくんとツンデレくん5/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:27:40.79 etzSJQNh0
 高田は、本来なら卑猥でも何でもない光景に僅かばかり興奮していたが、我に帰ってコンロの火を止め、用意されていた二つの皿にシチューを盛りつけてる。まずは液
状部分のシチューを入れ、続いて大きな具材を見栄え良く入れる。皿の淵についたシチューは綺麗な手拭いで拭きとる。
 机に置いて見ると、素人ながら綺麗に盛りつけられたのではないかと思う。
 丑嶋もシチューの皿より小さい皿を出し、サラダを盛りつけていく。数種類の野菜の彩りよく、高田の盛ったシチューよりもだいぶ綺麗だ。感心していると、丑嶋の視
線がビーフシチューを盛った皿に注がれた。
 「綺麗に出来たじゃねェか」
 丑嶋はニヤリ、と笑いながら高田を褒めてくれる。テンションの下がっていた高田だが、一気に嬉しくなってしまった。もし高田に犬の尻尾がついていたら、空へ舞い
上がれる速度で尻尾を振っていただろう。
 「それじゃ、食うか」
 それぞれ各自、出来た料理の皿を持ち、台所から部屋に移る。
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 広い部屋ではないが、綺麗に片づけてはある。いつも使っている机を拭き、食卓へと変化させる。皿を置き、丑嶋が座る。高田は腕に掛けていたレコードショップの袋
から買ってきたばかりのDVDを出し、デッキにセットした。
 再生が始まると、食事も始める。
 「うまいっ」
 ビーフシチューを一口食べて、食事中だと言うのに思わず大きな声を出してしまった。丑嶋は何も言わない。だが、テレビに映るのは面白くない他の映画の予告篇なの
に、口角が僅かばかりに上がり、高田には笑顔のように見えた。

75:ヘタレくんとツンデレくん6/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:28:30.26 etzSJQNh0
 「社長、うまいです」
 わざわざ二回も言う必要ではないのに、高田はわざわざ丑嶋の顔を見ながら言った。
 「いいから、DVD見てろよ」
 「はい・・・」
 失敗したかなぁ、と思った高田だが、それとなくだが、丑嶋の横顔は先程よりも嬉しそうに見えた。めったに見せてくれない笑顔に、高田も嬉しくなった。
 嬉しいやら、美味しいやらで思わず含み笑いを堪えていると、DVDは本編に突入した。
 今日買ってきたのは、大手会社制作のCGアニメーションだ。ついこの前、丑嶋とマサルと加納と小百合、それに高田の4人で映画館に観に行った作品のシリーズの一
番最初の作品だ。
 この前観にいったのは3作目だった。丑嶋はこの作品のシリーズを見るのは初めてらしかった。だが、映画館の帰りに珍しく沢山喋っていたので、おそらく気に入った
のだろうと感じ、高田がわざわざこうしてDVDを買って来たのだ。
 最初はただ単に丑嶋との共通の話題となればいいと思い、1作目と2作目のDVDをプレゼントするつもりだった。
 だから、今朝、高田がプレゼントすると申し入れたところ、丑嶋は高田にそんなことをされる覚えはないと断ってきた。
 別に下心があったわけではないので、せっかく気に入ったなら、1作目から見た方が先日観た3作目の面白さが分かると言い、半ば自分勝手に高田が会社帰りに買って
しまうと宣言したのだった。 
 そしたら何と、丑嶋が一人で見るより二人で見る方が楽しいから、と一緒に観ようと申し出て来たのだ。しかも、高田がオーディオショップに買いに行っている間、高
田の家で食事を作って待っていてくれると言ってくれたのだ。

76:ヘタレくんとツンデレくん7/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:29:31.92 etzSJQNh0
 正直、高田は飛び上りそうなほど驚いた。驚くと格好悪いのではないのだろうか、と思ったので、表面上はいつも通りの長い髪を指で弄りながら笑顔で応じたのだが。
 まさか、丑嶋がそんなことを言ってくれるとは想像も出来なかった。そんなこと言われては、下心なんてなかったのに、下心が生まれてきても仕方がないではないか。
 何故丑嶋は、今の状態のような素敵な提案をしてくれたのだろうか。もしかしたら、下心をもっても良いということなのだろうか。
 こういうことをグルグル考えること自体が下心の始まりと言えなくもない。テレビの画面には沢山の動くおもちゃ達が出てきて楽しげのようだが、高田は映画どころで
はなかった。ただ、冷めてしまう前に食事を美味しいそうに平らげることで精一杯だった。
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 食事を終え、DVD一本を見終わった後、丑嶋はきっちり片付けをしてくれていた。高田も微力ながら手伝っているが、ほとんど何も出来ないも同じだったと自覚して
いる。ありがたいことに、丑嶋が洗って拭いた皿を、自宅だと言うのに収納場所さえもおぼつかなく、言われるがままにしまっただけで「うん」、と機嫌のよさげな声を
頂いた。
 ろくに台所に入ったことがないし、片付けなんてしたことがなかった高田だが、何となく、何となくだが、こういうのもいいと感じてしまうのだった。
 丑嶋が残った食材を入れようと冷蔵庫を開けると、先ほどの機嫌のよさげな声とはかなり響きの異なる声を上げた。
 「おい、何で水と調味料ぐらいしか入ってねェんだよ」
 「あー・・・、いや・・・」 
 別にとやかく言われても構わないのだが、丑嶋の低い声には適度な緊張感を自然と生む作用があるようだ。高田は恐縮しながら丑嶋の後ろから冷蔵庫を覗きこんだ。
 「あ、でも、確か他にも入ってたような気がします」

77:ヘタレくんとツンデレくん8/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:30:10.82 etzSJQNh0
 言い訳をするように冷蔵庫の中を探すと、申し訳程度の食材があった。ただ、入っているのは豚肉のスライスパックやら、もとは数枚入りだったはずなのに、半分干か
らびかけた物が一枚のみ残っている油揚げの袋やら、高田には最早何なのか思い出す気にもなれない茶色のキノコらしき真空パックが入っている位だ。これでは、「ほら、
水と調味料だけではないでしょ」、と偉そうに言えないだろうと言う事は、料理をしない高田でも分かった。
 「この、キノコ・・・?何でしょうか?」
 「ナメコ。汁物にすると美味いんだ。お前なぁ、名前も知らないで買ってくるんじゃねェぞ」
 「あー、そうそうナメコですね」
 適当に相槌を打ってみる。心許ない食材はでさえ、数日前に使いやすいという理由で手を出している女の奴隷くんが泊まって行った時に、料理を作ってくれたので残っ
ていた物だ。せっかく二人でそれなりにいい雰囲気になっている時に、そんなことを言うべきではないので言葉を濁す。
 高田が髪の毛を弄りながら苦笑いをすると、丑嶋は冷蔵庫を閉めながら上目づかいで何かを考えて始めたようだ。
 「豚肉に、油揚げ、ナメコに、今日の残りの物と・・・。うん、味噌と生姜とくらいあれば、味噌汁と、煮物と、豚の生姜焼きは作れるか」
 今ある物と、足りない食材をすぐ掛け合わせ、すぐにバランスのよさそうな献立を思いつく。高田には出来ない芸当なので、素直に感心してしまう。
 しかし、そんな献立を思いつかれても、高田には作る事は出来ない。
 「よし、明日にでも作りに来てやるか。外食ばかりじゃ栄養偏るしな」
 「はい?!作りに来るって、社長がですか?!明日もですか?!」
 「何だ、嫌なのか?」
 「いえいえいえ、凄く嬉しいですけど」

78:ヘタレくんとツンデレくん9/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:31:00.59 etzSJQNh0
 突然ありがたい申し出を受け、高田は驚く。嫌な訳ないではないか。むしろ、今日のような美味しい料理だったら飽きることなく食べたいし、及ばずながらでも、丑嶋
の手伝いだったら料理も片付けも苦にならないし、楽しいくらいだ。だが、別に強請ったのではないのに、何故丑嶋がそんな気を使ってくれる必要があるのか。ただ単に
社員である高田の食生活を気遣っているにしても、それでは通い妻のごとく丑嶋が連日来てくれる理由としては弱すぎる。
 「何でそんな・・・」
 食欲が満たされ、すっかり忘れていた性欲というには小さい下心が再び芽生え始めてしまいそうだ。もしかして、と高田が身を乗り出し、丑嶋の頬に手を伸ばす。丑嶋
は明後日の方向を見つめ、小さく呟く。
 「さっきのアニメ、まだ2作目があるんだろ?明日観ようぜ」
 「ア?!アニメ、ですか。そうですね・・・」
 よっぽどあのカウボーイと宇宙レンジャーの出るアニメ映画が気に入ったのか、と悲しくも納得するしかない理由に頷く。だが、果たしてその理由は丑嶋の本心なのだ
ろうか、とも思う。高田がプレゼントすると言っているのだから、わざわざ高田の家に来て料理をしなくても、ただ今日、持って帰れば済むことではないか。
 高田は躊躇したが、丑嶋の頬に伸ばした手を前に少しずつ突き出していく。
 もう少し、となった時、丑嶋が後ろに一歩下がって笑った。
 「明日、な。今日はもう帰る」
 そう言うと、丑嶋は高田の脇をすり抜けて玄関の方に歩いて行き、すぐさま外に出て行ってしまった。
 高田は声をかける事も、追いかける事もしなかった。
 それよりも、先ほどの丑嶋の「明日」という言葉が、果たして何を示しているのかが気になって仕方が無かった。

79:ヘタレくんとツンデレくん10/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:32:06.32 etzSJQNh0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!お目汚し失礼致しました。高田×社長、竹本×社長等、社長受大好き派ですので、やっぱり高田×社長です。

80:風と木の名無しさん
11/03/19 16:20:34.21 gzZsZEJWO
>>79
お料理上手な社長可愛いぃいいい
続き楽しみにしてます!

81:風と木の名無しさん
11/03/19 17:17:45.04 KOp+3/0oO
>>70,75
>美麗な見かけ
>それとなくだが
違和感を覚える
他の言葉に置き換えろ

>>71,74
一行目書き直し

>>72
二行目(ry

>>73
>もし高田に~
イミフな例え方
犬の尻尾とかきめえ

添削飽きた
山田悠介とお似合いな文章力
小学校からやり直したら?

82:風と木の名無しさん
11/03/19 19:07:23.40 B9wf6aIE0
また出たよ

83:風と木の名無しさん
11/03/20 00:31:35.70 E+qok6i80
透明あぼーん余裕っす

84:風と木の名無しさん
11/03/20 08:40:25.98 Jlb5sT2VO
>>79
高田×社長キター(゚∀゚*)ー!
ヘタレワンコ攻めとツンデレニャンコ受けの組み合わせが最高です!つれないニャンコが不意に寄ってきてくれるとすごく嬉しいですよねw
優しいモード入ってる社長の「うん」に禿萌えました

本当にいつもありがとうございます!
暗い話題のご時世ですが、とても元気でました。

85:風と木の名無しさん
11/03/20 11:12:56.26 hsTqWXQ30
もういいかげん自サイト作ってそっちでやってほしいわ

86:風と木の名無しさん
11/03/20 22:14:36.74 E+qok6i80
>>85
絡みへいこう、な?

87:風と木の名無しさん
11/03/22 14:20:17.41 M/jw6ufH0
>>81
添削もいいけど、そんならお手本よろしゅう~。
しかし、IDが顔みたいでおもろい。


88:風と木の名無しさん
11/03/23 15:03:02.56 EYZ2xvw0O
>>78の人
だんだん質が劣化していって残念

89:風と木の名無しさん
11/03/23 21:04:17.48 oh2qDsF00
赤ペン先生多数出没中だな
そろそろ春休みなのかな?

90:地調課のかわいこちゃんたち 1/3
11/03/23 21:45:32.64 d1Ld/+2A0
シルバー事件25区で地調課の月と太陽コンビ。エロなしです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「せんぱぁい、僕ね、先輩の事、本気で尊敬してるんですからねぇえ」
「あーハイハイ分かったよ…」
「ちゃんと、好きですからね」
「そういうのは彼女に言えよ…」
「あれ?言いませんでしたっけ?ちょっと前に、別れちゃいましたあ!」
狭いアパートの一室で、オレとオオサトはだらだらと酒を飲み交わしている。
オオサトのヤツが酒飲みましょう、と唐突な誘いを掛けてきて、それに対して給料日前だから家飲みなら付き合ってやると答えたら、
じゃあビール買って先輩の家ですね!なんて勝手に決めた挙げ句俺の腕を引っ張って買い物カゴに大量に酒缶を突っ込み始め、今に至る。
というかオオサトよ、こんなむさくるしいアパートよりお前の新築間もないお綺麗なマンションへ案内しやがれってんだ。
そんな風に頭の片隅で愚痴りつつも、酒でぐでんぐでんになって背中にしなだれ掛かってくるこいつの体温に人恋しさを刺激されるのが我ながら情けなくてたまらない。
そして彼女と別れたと聞いて嬉しく感じてしまったのはオレの独り身故の僻みからだ、と自分に言い聞かせながら呷るビールはすでに気が抜けて温く、思考の転換にまるで役立たない。
「ね、先輩」
「何だよ…!?」
振り向いた瞬間口のすぐ横にキスをされた。
いや、頬だ。頬に決まっている。当たってない、当たってない!オレの混乱をよそにオオサトはけらけら笑いながら
「びっくりしましたあ?」
なんて言ってやがる。振り向きざまにするイタズラってのは頬を指で突付く程度が普通だろうが!
「だってそれじゃあただ不機嫌にしちゃうだけでしょ?先輩の驚く顔、僕好きだな」
「このバカ!悪趣味!」

91:地調課のかわいこちゃんたち 2/3
11/03/23 21:45:44.33 d1Ld/+2A0
コンビニの袋から新しいビールの缶を出し、プルタブを開けてかっ込むようにぐっと呷る。
オオサトはそんなオレをにやにやと眺めていたかと思うと、とんでもない事を言いだした。
「女の子の基準だと、キス出来たらその人とはセックス出来るって言うんですよぉ」
ビールが気管に入って盛大にむせた。咳き込んで苦しい。涙も出て来た。
お前はなぜこのタイミングでそんな事を言うんだ。オレはどうしてこんな目に遭わなければならないんだ。
「まあそんなワケなんで先輩、僕と寝てみます?」
「バカッ!お前なんか床で雑魚寝してろ!」
「もー、あんまりバカバカ言わないでくださいよー。からかい過ぎたのは謝りますけど、僕だって傷付きますよぅ…」
オオサトが体育座りでしゅんとし始めたのでハイハイ悪かったよーなどと言いながら肩を軽く叩いてやったらオオサトはぼそりと呟いた。
「…吐きそう」
「うわっ!トイレ貸してやるからここでは吐くな!吐くなよ!」
肩を貸す必要もない距離なのにオレはオオサトに肩を貸してトイレまで連れて行った。
気が付けば時計の針もすでに2時を指し、明日が休みとは言ってもオオサトの体調を考えればそろそろお開きだ。
「いやあ…先輩、すみませんでした」
「あのさオオサト、なんでこんな痛飲ってくらい飲んじゃったの?」
オレが何気なく放ったこの質問にオオサトはあー、だのうー、だの意味のない唸り声をあげながら柄にもなく逡巡している。
黒靴下の右足先がぶらぶらと揺れながら床を軽く叩き、俯けた視線も右に左に落ち着きなく床を滑っている。

92:地調課のかわいこちゃんたち 3/3
11/03/23 21:45:59.23 d1Ld/+2A0
まあ座れよ、何か愚痴でもあるなら聞いてやるから…と言い掛けた時にようやくオオサトは意味のある言葉を発した。
「いやあ…酔ってしまえば思い切れちゃうかなー…なんて、思ったり、した…んですけど、ね…?」
「え?何を?」
「っ、ははは!忘れてくださいよ!じゃあ僕、これで失礼しますね!今日はありがとうございました!」
まくし立てるように一息で言いながらオオサトは玄関から出て行こうとする。
オレは何故だか知らないがこのまま帰してはいけないような気がしてその腕を掴んだ。
でも、有り得ない。だって俺は普通に女の子が好きなのに。仕事であっても女の子の部屋とか入ると無性にはしゃいでしまうし、
街で女子高生とか華やかなOLの群れなんか見るとウキウキしてしまうし。
なんでだ。割り切れない感情なんてたくさん味わってきたと言うのにこんなの、本当に理不尽だ。
オオサトはオレに正面から抱き締められていた。
腕の中の身体は抵抗を見せないどころか、自らの腕もオレの背中に回してどこかうっとりした声で「ツキさん…」なんて呟いている。
思わず腕に力がこもってしまう。
「い、痛っ」
悲鳴が上がった。
「わ、悪い」
冷水を浴びせられたような心地で腕を解くとオオサトがなおもオレの背に手を回したまま問い掛けてきた。
「せんぱい、僕、喜んでしまっていいんでしょうか?」
大きめの、猫を思わせる鋭くも快活な瞳が潤み、いじらしく揺れている。
くそ、これも冗談だったらオレは失踪してやるぞ。そんな自棄っぱちな思いで、オレはオオサトに自分から唇付けた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

93:風と木の名無しさん
11/03/23 22:16:01.57 pehJsHfb0
>>90
ふっふぁー!ももももえた萌えたー!
ありがとうありがとう!
携帯から削除してないハズだからちょっと再プレイしてくる!

94:風と木の名無しさん
11/03/23 23:21:59.71 oVM9JF1i0
>92
GJ!…だけど、この位の長さなら前スレに投下して欲しかった

95:風と木の名無しさん
11/03/24 01:32:19.22 OHsPeL7tO
今、作品(とも言えない)書いてるんだけど、サイトを持ってなくて作る知識もなくてどこにもうpできない
たった二回のやっそんの話なんだけど、ストーリー性とかないのにすんごく長くなっちゃって一回じゃあとてもうpしきれない
おまけに下手。おまけにリバ…(一回目AB→二回目BA)
顔射編、事後編とかに分けて、トリップ付けて、連載(シリーズ物?)みたいな感じにして棚に投稿してっても大丈夫かな…
シリーズ物ってストーリー性がないとだめかなあ…とか思って
すごい下手なんだけど、でも自分で萌えて書いたものだから誰かに見てもらいたい、批判でもいいから何か言ってもらいたいんだ…

96:風と木の名無しさん
11/03/24 02:12:36.18 RD36Nkyu0
別にストーリー性が無くても構わん。っていうか、ここはどんな物を投下しても自由。
あんまり短期間に何回も投下すると文句付ける奴はいるだろうが、
そういうのは気にする必要はないし、
気になるんだったら一カ月に一回とかのスローペースにすれば文句はつかない(はず)
そしてここに投下したからと言って必ずしもレスがつくとは限らない。
(同人ノウハウ板の「評価スレ」なら絶対にレスはつくが、作品の欠点も指摘されるので、オススメしない)
それでもいいなら好きにするがいい。
(ブログを作ってそこにうpするって手もあるし、それが簡単で楽だとは思うんだが、嫌なら別にかまわない)

97:アキラ×ヒカル×アキラ 1/2 ◆k/mlQdBDxE
11/03/24 03:29:32.39 OHsPeL7tO
リバ注意!ヒカルの碁
アキラ×ヒカル、の後、ヒカル×アキラにかわります
ガチリバな二人でエロ。しかもその日の勝負で上下が決まるというベタなアレで…
顔射、事後、みたいなかんじで小分けにして続き物でちょこちょこやってくつもりです。
ヒカルの一人称(ヒカル視点)で進みます
とりあえず始めのほうの少しだけ。次はいつになるかわかりません…
アキラの部屋からはじまります

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

敷き布団だけを敷き終わった塔矢のスーツの袖から見える、淡い黄色のワイシャツを見て、ふつーの色のワイシャツだったら合うのになあ、
なんて思いながら、そのワイシャツから伸びる手がシーツを整えるのを眺めていると、あることに気がついた。
「あれっ、おまえ、碁盤と布団、場所変えんの?」
部屋の隅にあった碁盤が部屋の真ん中に、いつもは部屋の真ん中に敷く布団が部屋の隅の壁際に移動している。
「ああ、前々から思っていたことだけど……」
「うん」
「畳が傷むんだ」
「…あ、」
爪先を部屋の真ん中の畳に滑らせると、靴下越しに、確かに畳が微かに毛羽立っているのを感じる。
敷き布団を敷き終わって、スーツの袖を軽く払った塔矢は、身体に腕を回して、あちこちに唇をすりよせて邪魔をするオレをものともせず、
背広を脱いで、オレの首のうしろで器用にブラシをかけて、ハンガーに掛けている。
「そっか」
塔矢の腕がオレの腰に回って、もう片方の手がオレの背にブラシをかけた。
「壁際に寄せて、角に固定しておいたら、少しはマシだろう」
「だな」
肩と前見頃にも窮屈そうにブラシをかけている。
「腕出して」
右腕をほどくと、軽く塔矢が腕を持ち上げてブラシをかける。
次に左腕をほどいて、自由になった右腕を、塔矢のセーターの下に潜り込ませた。
「…あ、毛糸、…付くよ」


98:アキラ×ヒカル×アキラ 2/2 ◆k/mlQdBDxE
11/03/24 03:36:21.66 OHsPeL7tO
微かに身をよじる塔矢に構わず、人差し指でワイシャツの上から塔矢の背骨をなぞって、ぼんやり呟く。
「……先に敷くんだ、布団」
塔矢は、ふ、と洩らすと、進藤、上着脱いで、と言ってオレの背を撫でた。
「ん」
ゆるく回された腕の中で、身をよじりながら上着を脱いで、後ろ手に塔矢に渡す。
「この一週間ずっと忙しかった」
スーツの上着をハンガーに掛けてから、塔矢は、オレの額に額を擦りあわせて、前髪をじりじりさせながらそう言った。
「打とうか、進藤」
「……おう」
言いながら、碁盤の前に座る。塔矢も碁盤に座ると、まっすぐこっちを見据える。碁盤を挟んだ距離からでも、塔矢の両目にオレが映っているのが見える。
この目も、この瞬間も、失いたくない、かけがえのないものだと思う。
「…お願いします」
「お願いします」
塔矢の髪の、光を反射してできた輪が、頭の上下に合わせてつるりと揺れた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
とりあえずこれでいったん終わり


99:風と木の名無しさん
11/03/24 06:50:19.86 OHsPeL7tO
>>96
アドバイスありがとうございました

100:風と木の名無しさん
11/03/24 17:44:50.33 tunmJYEO0
>>97
スレでちょっとしたリバ祭りになってから三ヶ月…
長かった…

GJ!
気長に全裸で待機してます!!

101:The reason that you kissed me 1/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:42:13.00 JyDak/JGO
半生注意。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>46の続きでその夜の出来事。エチー未遂、ちょっと汚い描写あり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


タクシーから降りた俺は、べろべろに酔った相棒に肩を貸して屋敷に入った。
今夜は二人仲良く、高級中華料理店でディナーとしゃれ込んだその帰りだ。

ほんの行き違いから相棒の怒りを買った俺は、ご機嫌を取るために最高の店を予約した。
ごねる相棒を、ほとんど無理やり店に連れ込み丸いテーブルに着かせて、次々に料理を運ばせた。
美味さで頬が緩んだところに極上の老酒を進めつつ、いかに自分が相棒を頼りにして、その才能に敬意を抱いているかを並べ立てた。
俺の口車を聞きながら、相棒はまんざらでもなさそうな様子で料理と酒を口に運んだ。俺はここぞとばかりに誉めておだてては、奴のグラスに強い酒を何度も注いだ。
時が経ち、料理を平らげてそろそろ帰ろうという頃には、相棒はすっかり出来上がっていた。

「力ト-、しっかりしろよ。うちに着いたぞ」
「……已経不行、已経酒不能喝」
「何言ってるかわかんないぞ、力ト-」
「ブリシト……もうダメ、もう飲めないよ」
「言われなくても、もう酒はやらないさ。ったく、こんなに飲ませるんじゃなかったな」
注げば注ぐだけ飲み干すのが楽しくて、ついつい飲ませ過ぎてしまったのを後悔した。俺だって酔っちゃいるが、足腰が立たないこいつほどじゃない。

「力ト-、もう今夜は泊まってけ。ほら、ベッドに着いたぞ」
「うー……是床、發困……」
「だからわかんないって。力ト-、眠いのか?」
自室のベッドの上に降ろすと、相棒はだるそうにゴロリと転がりうつぶせになった。着たままの革ジャンが窮屈そうに見えたので、俺は手を伸ばして脱がせてやった。履いたままの靴も脱がせると、相棒は顔をこっちに向けた。
「……ブリシト、なんで脱がしてるんだ。僕は女の子じゃないぞ」
「バカ、何言ってる。お前が苦しそうだから、上着を取ってやったんじゃないか」
赤い顔をした相棒は、俺をからかってクスクスと笑った。いつもの少し斜に構えたような感じはなく、えらく楽しそうな奴を見て俺は思わず苦笑した。
「ありがとう。ちょっと、楽になった」
相棒は呟くと、仰向けになって手足を伸ばした。

102:The reason that you kissed me 2/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:45:16.18 JyDak/JGO
俺は部屋の隅のポールハンガーに、奴の革ジャンと、ついでに自分のジャケットも脱いで掛けた。それからベッドの側に戻り、寝そべる相棒の横に腰を降ろした。
「力ト-、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。でもおかしいな、こんなに酔うなんて滅多にないのに」
「そりゃまあ、あれだけアホみたいに飲めばな」
「ひどいな。飲ませたのは君じゃないか、ブリシト」
「悪い悪い。お前がニコニコ笑ってグイグイ飲むのが、なんだかおもしろくってさ」
「君が上手いこと言って調子に乗せるからだ。全くひどい野郎だな!サイテーだよ、君は」
罵りながらも、相棒の表情は相変わらず陽気だった。こいつは、酒が過ぎるとやたら明るくなるタイプのようだ。まあ暗くなってウダウダ愚痴られたりするよりは、はるかに健全な酔っ払いだ。
「力ト-、もう俺のことを怒ってないんだな」
「怒る……僕が何を、怒ってたって?」
「忘れたのか?口も聞いてくれないくらい、怒ってたくせに」
呆れて頭を軽く小突くと、相棒は首を傾げてちょっと目を閉じた。
「口も?くち……ああそうか、昨日君が僕にキスしたことだ」
「そうあらためて言われるとなんだか照れるが、まあそうだ」
キスしたと言っても頬と額に、あくまで友情のしるしとしてだ。だが相棒はそうとは受け取らず、俺にからかわれたと激怒した。
最高の環境でこいつをなだめて誤解を解くために、俺は今夜のディナーを用意したって訳だ。

「ブリシト、今だから言うけど……僕はあの時、怒ったっていうよりは、びっくりしたんだ」
「そうなのか?まあ俺だって、自分にびっくりしたけど」
「うん……君に悪気がないのはわかってるけど、僕はあんな風に……その、キスされたり、抱きしめられたことが、あんまりなかったから」
「おい、力ト-……お前まさかと思うが、童貞なのか?」
「……違うよ!そうじゃなくって、女の子以外でってこと」
「ああ、なるほどね。でもお前……」
家族とかには、と言いかけて口を閉じた。
こいつは幼い頃に両親を亡くしてるってのに、何を言おうとしたんだ俺は。いくら酔ってるからって、忘れる奴があるか、バカ野郎!

焦る俺の様子なんか気にも留めず、奴は夢見るような口調で言葉を続けた。

103:The reason that you kissed me 3/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:48:15.17 JyDak/JGO
「もし本当に兄弟がいたら、あんな感じでキスしたり、抱き合ったりしてたのかなって今は思う。
でも慣れてないからびっくりして、あの時はつい君を殴って、怒鳴ってしまったんだ。そしたらもう、どうにも引っ込みがつかなくって……」
「なんだ、やっぱり照れてたんじゃないか!力ト-」
意地悪く叫んで睨むと、相棒は首をすくめてゴメンと小さく囁き、ますます顔を赤らめた。
いつもは対等の兄弟分で、時には兄貴のように頼もしく振る舞う相棒が、今はまるで弟みたいにやけに愛らしく見えた。
俺は声を上げて笑い、相棒の黒い髪をぐしゃぐしゃと両手で掻き回した。奴も笑って、俺の手を避けようとしながら叫び声を上げた。

「……ブリシト、やめろよ!」
「この野郎、俺を振り回しやがって。もっと素直になれってんだ」
「いつも僕は君に振り回されてるんだ、たまに振り回すくらい、いいだろ!」
「……ああ、構わないさ。それがションディーってもんだ」
俺は手を止めると、左手で相棒の乱れた髪を梳いてやり、ポンポンと頭を優しく叩いた。
相棒は何も言わず、ぼんやりとした目で俺を眩しそうに見つめた。
「ションディーなら、キスなんてますます普通のことさ。たいしたことじゃない、だろ?」
「そうか……そうだね」
そうさ、と返して頭から放した俺の手を、相棒の手が掴んだ。
急に掴まれたことと、その手の熱さに驚いていると、奴はもっと俺を驚かせる行動に出た。
俺の頭の後ろにもう一方の手を回して引き寄せ、 近づいた俺の唇に自分のそれを重ね……つまり俺に、キスをしやがったんだ!
軽く触れた唇をすぐに離すと、相棒は間近にある俺の顔に笑いかけた。
「……本当、たいしたことないね」
楽しそうに笑い声を上げる相棒から、俺は勢いよく体を離した。
なんだ、何をしやがったんだこいつは!あんなにびっくりしたとか、照れてたとか言っといて……口にするか、普通!?
もちろん酔っ払いの悪ふざけに決まってるんだが、大いにうろたえた俺は、自分の頭に血が上っているのを感じた。

「ブリシト、顔赤いぞ。熱いのか?」
「あ、ああ、まあな」
「僕も熱い。実はさっきから、ずっと熱いんだ」
熱い熱いと言いながら、相棒は緩めていたネクタイを首から取り去り、白シャツのボタンに手をやった。だが酔いのせいで、上手く外せないようだった。

104:The reason that you kissed me 4/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:51:38.08 JyDak/JGO
「あれえ……指が動かないなあ」
「何やってんだ。脱ぎたいのか?」
「うん……ブリシト、手伝ってくれないかな」
器用な相棒らしくもなくモタつくのを見かねて、俺はボタンに指をかけた。しょうがないなとぼやきながら、俺の胸はなぜかドキドキしていた。
なんでだ、こいつは男だぞこのアホ!と自分にツッコミを入れつつ全部のボタンを外してやった。相棒はシャツの前をはだけて、ほうっと息を吐いた。
「ちょっとはマシになったか?力ト-」
「うん、涼しい。ブリシト、ついでにベルトも緩めて欲しいんだけど」
「……お前スッポンポンになるつもりか?俺は俺のベッドに、裸の男を寝かせる趣味はないぞ」
「違うよ、食べ過ぎたせいで苦しいんだ」
「ああ、そういうことか」

言われるままにベルトを緩めてやる俺の目の前に、相棒の裸の胸があった。
十代の少年のように、相棒の肌は滑らかだと思った。東洋人は男でも肌が綺麗だと聞いていたが、あれは本当なんだなと妙に感心した。
体毛は薄く、しなやかな筋肉を包む肌は象牙色をしていて、柔らかそうに見えた。酒と食い物のせいで、ちょっぴり腹がふくらんでるのがご愛嬌だ。
「趣味じゃないくせに、男の裸なんか眺めてて楽しいのか?ブリシト」
視線に気付いた相棒のからかう声に、俺は自分でも意外な言葉を返していた。
「力ト-、ちょっと触ってもいいか?」
「……いいけど」
普通に考えたら相当気色が悪い筈の俺の申し出を、事もなげに受け入れた。お互い酒のせいで、思考がまともに働かなくなってるみたいだ。
酔っ払いの俺は、超酔っ払いの胸にそっと手を這わせた。くすぐったがって身じろぐのがおもしろくて、俺は相棒の体をむやみに撫でた。

「バカ、やめろよ!くすぐったいだろ」
「お前って、えらくスベスベしてるな。手触りが良くて気持ちいい」
「僕は気持ち良くない!」
「なんだと、俺様のテクを甘く見るなよ!」
相棒は体をよじり、触り続ける俺から逃げようとした。じゃれ合う犬か子供みたいに、俺達はベッドの上でふざけていた。
逃げる体を捕まえようとムキになった俺は、奴の左肩と右手首を掴んで上からのしかかった。
かっちりと目が合った。つぶらな黒い目は少し潤んでいて、まっすぐに俺を見ていた。
半開きの唇はいつもより赤く、さっきこの唇にキスされたんだなとあらためて思った。

105:The reason that you kissed me 5/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:54:16.07 JyDak/JGO
吸い寄せられるように俺はキスをした。頬でも額でもない、赤い唇にだ。
相棒は嫌がらず受け入れた。しばらく押し当ててから離すと、今度は相棒の方からキスを仕掛けて来た。気が付くと、互いに口を開いて舌を絡めていた。
両手首を掴んで口内をむさぼると、苦しそうに呻いたので唇を解放した。荒い息の下から奴は、至極もっともな質問をした。
「……なんで、キスした?」
「さっきお前がキスしたからだ、お返しさ」
「僕のは、ションディーのキスだ」
「俺だってそうだ」
「夕べのは、だろ。今のはションディーのキスじゃない」
「じゃあなんのキスだって言うんだ、力ト-」
「ブリシト、僕が君に訊いてるんだよ」
相棒は困ったように笑ったが、構わず俺はまた口づけた。下にした体を掻き抱くと、相棒は自由になった腕を俺の肩に回した。段々とキスは激しさを増し、水音が響くほどになった。
俺は離した唇を首筋に埋め、音を立ててそこにもキスを落とした。両手はつややかな肌の上をするすると這い回り、熱を帯びた相棒の上半身を飽きずになぞった。
呼吸を乱して、相棒は切なそうに俺の名前を小さく呼んだ。俺も荒く息をつき、唇や顔と首のあらゆる箇所に繰り返し口づけた。
俺達はどこへ向かってるんだろうと思ったが、俺のキスに応える相棒がいじらしくかわいくてたまらず、もう勢いは止まらなかった。
震える喉元を噛むようにキスして、鎖骨の真ん中の窪みに唇を滑り落とすと、相棒が悲鳴のような声で俺を呼んだ。
「……ブリシト、ブリシト!待って、待ってくれないか」
「ダメだ力ト-、もう止められない。なんだかわからないが、火が点いちまったんだ」
「ダメ、ダメなんだブリシト、お願いだから」
「力ト-、今さらどうした?俺が嫌なのか」
「い、嫌じゃない……ないんだ、けど」
気付くと、捕らえた相棒の体はブルブルと震えていた。驚いて見直すと赤かった顔はやや青ざめて、何かを耐えるように唇を噛み締め、眉を険しく寄せていた。
「力ト-……やっぱり、嫌なんだな」
「違うよ、そうじゃなくて……ううっ!」
ふいに体を翻して背中を向けると、相棒は拳を握りしめてベッドに顔を伏せた。
「力ト-!?なんだよ、一体どうしたって……」
訳がわからず肩を掴んで軽く揺さぶると、相棒は苦しそうに、心底苦しそうに呟いた。

106:The reason that you kissed me 6/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:57:16.07 JyDak/JGO
「……不舒服快要、吐出了……!」
「英語で言えって!」
「……きもち、わるい」
「なんだって?」
次の瞬間相棒はぐうっ、というような声を喉から搾り出し、大きく体を揺らした。俺はようやくヤバい事態だと気付いたが、すでに後の祭りだった。
相棒は盛大に、俺のベッドの上に……をぶちまけやがった。おお、神よ!


第二波をもよおした相棒を我慢しろと励まし、慌てて洗面所まで引きずって行った。一人で大丈夫だからと言い張るので、俺は部屋に戻った。
空気を入れ換えるために窓を開けた後、凄惨な状態になった掛け布団を慎重に丸めて部屋の外に出した。
別の部屋から新しい布団を持ってきて、ベッドの上に広げた。布団以外には被害がなかったのが幸いだ。
後始末をしながら、以前酔いどれた俺が部屋で吐いたブツを、うちのメイドはこんな気持ちで片付けてくれたのかなと考えたりした。そして、もう二度と悪酔いはしないと心に決めた。

だいぶ気分はヘコんだが、粗相をやらかした相棒を責める気にはなれなかった。適量を越えるほど飲ませたのは俺だし、あいつの必死の訴えに早く気付いてやれば、こんなことにはならなかったからだ。
それにおかげで、危うい一線を越えずにすんだ。冷静になってみればあれは、あまりにも勢いに任せ過ぎていた。
酔っ払ってふざけ合った延長で、何となくキスしてサカって……なんて。男と女ならともかく、俺達にそんなことがあったら、後々関係が微妙になっちまう。
「……でもなあ、嫌だったわけじゃないんだよな」
思わず呟いて、自分でびっくりした。
そうなんだ、嫌じゃなかった。むしろ……ああダメだ、思い出しちまった。さっきまでの相棒の顔が頭に浮かんで、一人で赤くなった。俺は窓辺に立ち、火照った顔を夜気に晒して冷やした。
しばらくして窓を閉めると、奴が部屋を出て行ってから、けっこうな時間が経っていることに気付いた。どうしているのか心配になり、様子を見に再び洗面所に向かった。

ドアを開けると、洗面所の片隅でうずくまっている姿があった。タオルを頭にかけうなだれて、膝を抱えて体を小さくしているので表情は見えない。
俺は近づいて側にしゃがみ込み、優しく声をかけてみた。
「力ト-……落ち着いたか?」
「……ブリシト、ゴメンよ、本当にゴメン」

107:The reason that you kissed me 7/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 11:00:17.14 JyDak/JGO
か細い声は、啜り泣くような響きをしていた。もしかしたら、本当に泣いてるのかもしれない。
「いいんだ、元は俺がひどく飲ませたせいだからな。気にするな」
「……僕は最低だ。せっかく君がご馳走してくれたのを台なしにしちゃったし、君のベッドもあんなことに……怒っていいよ、ブリシト」
「怒るもんか。飯はまた食えばいいし、ベッドは布団を取り替えりゃいい。それだけのことさ」
もう取り替えたから安心しろ、と頭を撫でてやると、うつむいていた顔をようやく上げた。
鼻の頭と目を真っ赤にして、相棒はやっぱり泣いていた。流れる涙を被ったタオルの端で拭いてやり、俺は顔を寄せて笑いかけた。
「バカだな、そんな顔すんな」
「ブリシト……僕を嫌いにならない?」
「嫌いになんかなるもんか。俺達ションディーだぞ、忘れたのかよ」
おどけて肩を叩くと、相棒は笑顔を見せた。酔ったこいつは甘え上戸でもあるんだなと俺は悟り、頭からタオルを取ってやった。

「さあションディー、立つんだ。うがいはしたか?……よし、なら部屋に戻ろう。帰ったら水飲むか」
頷く相棒の肩と腰を支えて部屋に戻りベッドに座らせると、冷蔵庫から出したミネラルウォーターのボトルを開けて手渡した。
一気に飲み干した相棒は、眠気に襲われてあくびを連発した。俺は奴のシャツのボタンを何個か留めてやり、腰からぶら下がっていたベルトを引き抜いた。
明かりを弱めてもう寝ろと告げると、素直に従い横たわった。
俺も同じベッドで寝るのだと配慮したらしく、相棒は体を左側に寄せた。
「ブリシト、寝ないのか?」
「ああ、もうちょっと起きてる。お前は寝ろ、具合が悪いんだから」
「うん、今日はありがとう。それから……ゴメン、本当に」
気にするなって言ったろ、と頬を軽く叩くように撫でると、相棒はまた頷いて笑った。
やがて安らかに寝息を立て始めた奴の額に、俺はそっとキスをした。
「……これは、ションディーのキスだ」
涙の跡が残る寝顔を眺めて、俺は独り言を呟いた。

108:The reason that you kissed me 8/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 11:03:18.17 JyDak/JGO
カーテンを閉め忘れた窓から差し込む光の明るさに目が覚めた。
あくびをして体を伸ばそうとすると、肩にぶつかるものに気付いた。横を見やって、相棒が隣に寝ていることを思い出した。
体を横向きに、俺の肩に顔を寄せるようにして、相棒はまだ眠っていた。よく見ると苦しそうな表情でうなされているので、俺は奴の肩に手を置いて囁くように声をかけた。
「力ト-、力ト-どうした?気分悪いのか、起きろ」
「ううん……ああ、ブリシト、よかった」
「よかった?何がだ」
「君さっき、凶暴なパンダに襲われてたろ。助けようと思ったんだけど、足が動かなくって」
「そうか。この通り俺は大丈夫だ、安心しろ力ト-」
夢の中でもこいつは俺を助けてくれるんだな、とちょっと感動した。寝ぼけた相棒はよかった、とまた呟き俺の肩に額を押し付けたが、やや冷静な声になって質問をしてきた。
「ブリシト……なんで隣に君が寝てる?」
「力ト-、そりゃ違うな。お前の隣に俺が寝てるんじゃなく、俺の隣にお前が寝てるんだ。なぜならこれは、俺のベッドだからだ」
「……」
「お前、酔っ払って俺のベッドで吐いたんだぞ。覚えてないのか」
「……覚えてない。けど、悪かった。迷惑をかけたんだね」
「いや、いいけど……本当に覚えてないか?」
「うん……店を出た辺りからの記憶がない」
そうか、と返事をしたが、相棒のその言葉は嘘だと思った。ポーカーフェイスを装っているが、わずかに目が泳いでいたから俺にはわかった。
吐いた記憶を認めれば、俺達が夕べションディー以上のキスをしたことを覚えている、と認めることになる。相棒は気まずさか恥ずかしさから、酔いを理由にしらばっくれやがったんだ。
嘘をつかれてちょっとムカついたが、気持ちは理解出来た。正直に覚えているなんて言われたら、俺もきっと困っただろう。だからここは、おとなしく騙されてやることにした。

「そうか、残念だな。酔っ払ったお前は、えらく素直でかわいらしかったのに」
「何言って……っ!」
相棒は頭だけを起こして急に大声を張り上げたが、それが響いたらしい。低く唸って両手で頭を抱えると、またシーツに沈み込んだ。
「力ト-、二日酔いだ。静かにしてろ」
俺はベッドから抜け出ると、パジャマを脱ぎながら喋り続けた。

109:The reason that you kissed me 9/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 11:06:20.17 JyDak/JGO
「社長命令だ。今日は休んで、ここでゆっくり寝ろ」
「でも、ブリシト……」
「俺なら心配するな、仕事が終わったらまっすぐ帰る。食欲ないかもしれないが、メイドにお前の食事を運ぶよう頼んでおくからな」
「でも、悪いよ。それなら僕はうちに帰って……」
「ダメだ。お前の深酒は俺に責任があるんだから、言う通りにしろ。もし帰ったら絶交するぞ、いいな力ト-」
着替え終わった俺は、ベッドに戻って布団をかけ直しながら、断固とした口調で告げてやった。あくまで譲らない俺に根負けしたらしく、相棒はため息をついて頷いた。
「よし、それでいい。頭が痛むか?薬も持って来させよう」
「それほどじゃないよ。ありがとう、ブリシト」
「どういたしまして。さあ、おとなしく寝てろ力ト-」
笑って額を撫でると、相棒は素直に目を閉じた。手を放した俺は、ふいにその頬に音を立ててキスをした。
「……ブリシト!」
「ほらほら力ト-、大声出すな。覚えてないだろうが、ションディーならキスしてもおかしくないって、お前が言ったんだからな」
「バカ野郎っ!……ううぅ……!」
頭痛に呻いて布団を被った奴の耳が赤くなっていたのを、俺は見逃さなかった。布団の上からポンポンと相棒の体を叩き、俺は自室を後にした。

車の運転席に着くと俺はエンジンをかけ、ポケットから携帯電話を取り出して画面を開いた。
キーを操作して、ある画像を表示させた。
それは、夕べの相棒の寝顔を撮った写真だった。赤らんだ頬に涙の跡を残して、その表情はちょっと笑ってるようにも見えた。
これをネタにして相棒をからかおうとか、脅そうとかいうつもりは全くない。
ただ俺は、初めて知った相棒の顔を残しておきたかったんだ。俺しか知らないかもしれない、あいつの顔を。

携帯電話を閉じてポケットに戻し、俺は車を発進させた。いつもよりだいぶ早い出勤に社員達は目を丸くするだろうが、屋敷に俺がいちゃあいつは落ち着かないだろうからな、しかたない。
土産にテイクアウトの中華でも買って帰ってやるか。食べられるようになってるといいけど。

浮かれているような、でも切ないような不思議な気分で、俺は会社へ向かい車を転がした。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
助手をちょっと泣かせてみたかった。そしたら社長がわりとしっかり者になってしまいました。

110:風と木の名無しさん
11/03/26 21:07:52.04 jUIH63Aa0
>>101
おおお……萌えた、萌え滾ったよ……!
しっかりしてる社長もイイヨー、もどかしいふたりの距離感イイヨー!GJ!

111:風と木の名無しさん
11/03/26 23:13:40.31 qCw9gHjH0
前スレに投下してた者ですが、容量使い切ってしまい、
〆のAA部分だけ置けませんでした。
みっともないことしでかしてすみません。
保管庫で直しておきます。

112:大/航/海/時/代/4 ユキヒサ×イアン7 1 /1  ◆ycFqJ94wsyN8
11/03/26 23:40:49.16 Mty4yVjt0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )これで最後です!

「え、この子、名前イアンって言うの?兄って事は、もしかしてあの…?」
大人になって落ち着いたサムウェルが、ひそ、と、ユキヒサに耳打ちする。
「兄上と同じ名前なんです。それでですね、船に乗せてください」
混乱したユキヒサは、ふと、少年の腰にさしてあるものを見た。
それはいつしかにイアンの父親に渡した、護身刀であった。
「その護身刀は…」
「あ、これですか?兄上の形見なんだそうです。ユキヒサさんの所有物だったらしいですね、今では僕が貰っているんです」
水葬の際、父親はイアンの死体と一緒に入れなかったらしい。
いつか、息子が出来たときに持たせてやるのだと。
それを知ると、ユキヒサは優しく笑った。
「良いだろう、乗るがいい。兄のことを、よく聞かせてやる」
少年であるイアンは、凄く嬉しそうに、うなずいた。
「はい!」
その顔は、昔見た、笑顔のイアンにそっくりだった。

『十年後に会いに行くよ』


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )終わりです。長いことかかってすみません。

113:風と木の名無しさん
11/03/27 01:01:44.28 L8ce/UKx0
>>101
萌えすぎてニヤけたw
GJです!

114:風と木の名無しさん
11/03/27 01:59:26.13 2XPqSLwr0
>>111
ドンマイ!
なにより前スレを使い切ろうという姐さんの心意気に惚れたよ
SSも素敵でした。GJ!

115:風と木の名無しさん
11/03/27 09:44:16.24 8vTeX1MrO
>101
すごく萌え転がった
ありがとうございます

116:春よ来い1/2
11/03/31 00:47:37.10 tACKM/dT0
半生注意。ドラマ「刑事犬」シゲコマです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース


帰り支度を整えロッカールームから出てきたコマが、ふと手元の絆創膏に気付き小首をかしげた。
「その手、どうした?」
「ああ、今朝な。猫を撫でようと思ったらやられた」
「お前、そんなに猫が好きだったか?」
「そうでもないが、ちょっと可愛かったんだよ」
「とうとう見境なく猫にまで手を出したか、色男」

「お前に似てた」

やにさがった表情が一転、眉間に皺を寄せてこちらを睨みあげる。
(ああ、やっぱり似てるな)
触れることを許してくれそうな振りをして、一歩近付けば途端に警戒する。
見えない引っ掻き傷を散々俺に残してるくせに、肝心なところでは逃げ出してしまう。
ずるいなあ、お前は。

なかなかこの手に落ちてこない猫は捕まえてしまうに限る。
不穏な空気を感じたのか、珍しく何も言い返さずに背を向けて部屋を出ようとするのを
後ろから抱きすくめた。
そのまま、襟足にかかる柔らかい髪をかきあげコマの首筋に歯を立てる。
「っ・・・・・・!」

117:春よ来い2/2
11/03/31 00:50:41.92 tACKM/dT0
「バッッカ何しやがるっっ!」
「交尾のお誘い」
「この変態」
「恋の季節だからな」
「万年発情してる奴が言うな」
「相手がつれないからなあ」
「うるせー、けだもの」
文句を言いつつも大して抵抗してこないのは承諾と取っていいのだろうか。
気まぐれな猫の機嫌が変わらぬうちに、急いでコートを取って来なければ。
コマに気付かれぬようにんまりと笑みを浮かべながら、
もう一度、今度は柔らかいキスを首筋に落とした。

すこし肌寒い、春待ちの宵。
-------------------------
その後の13係フロア
「・・・行ったか?」
「行きました。シゲさんすっっげ笑顔でした」
「Spring has comeデスネー」
「あの二人はもう万年桜だろ」
「つーか、もう季節関係ないッスよね」
「あー・・・俺らは飲みに行くかー」
「「「「ウィーース」」」」
-------------------------
in 拘置所
「交通課から頼まれてシゲさんとコマさんのラブを隠し撮りしてるんですけど、
これってけーさつ不祥事になるんでしょうか???」
「総監、いや元総監に伝えておくよ・・・」
-------------------------
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

心にポエム、行動はエロ男爵なシゲさんが好きです。

118:半&半のCM 1/4
11/03/31 10:10:21.09 qb4TnRXU0
ちんたら書いてたら前スレにも同じネタorz で、でも吐き出させてくれ!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

side:coffee


その日は遅番だった俺がエントランスに向かうと、すでに彼はいつものようにてきぱきと仕事をこなしていた。
彼。ミノレクくん。ポーターの白い制服が誰よりも似合う――というのは俺の欲目ではあるまい。
ホテルの仕事というのは忙しいが退屈である。矛盾しているようであるが実際そうなのだ。
例えばドアマンである俺の場合。お客様のお顔やお車を覚えるというのは、慣れてしまえば酷く機械的な作業である。
お出迎えには細心の注意を払うがようこそ誰某様と微笑みかけ、お帰りの際は黙ってお辞儀をすればそれで終わりなのだ。
俺は。ポーターに至ってはもっと単純で退屈な仕事だと思っていた。
お部屋に到着される前にお荷物を届けるというのが唯一の注意点で、それも余程のことがなければ遅れるような事態にはならない。
お客様のお荷物をお部屋まで運ぶ。それだけだと。
実際、このホテルではそうだったのだ。彼が来るまでは。



お客様が彼に笑いかける。彼もにこにこと愛想を返す。
笑顔なのはお客様だけではない。俺を含めその場に居るホテルマンが、そんなミノレクくんをいつも微笑ましく見守っているのだ。
…と、危ない!
お客様に気を取られていたミノレクくんは足元にあったバケツに躓いてしまった。彼が抱えていたスーツケース群が宙を舞う。
よし、任せておけ。なぜこんなものに乗って移動していたのか自分でも謎だったが、この彼の危機を救うためだったのだ。

119:半&半のCM 2/4
11/03/31 10:15:27.16 qb4TnRXU0
バスン!バスン!

狙いを定めてカートを停めると綺麗な弧を描きながらスーツケースが飛び乗ってくる。
おお、我ながらバッチリなコース読みだ。体勢を立て直したミノレクくんも最後のひとつを見事にキャッチした。
お客様の前での私語は厳禁である。仕方なく親指を立てて見せるとミノレクくんが荷物を支えている腕の下からニコリ、と密かな笑顔を覗かせた。
「……………!」
か、かかかかか可愛い――!!!


オホン!


マネージャーの咳払いで我に返る。
カートをそのままミノレクくんに託し、次のお客様をお迎えするべく俺はエントランスに向かった。と思う。
正直、舞い上がっていたのでよく覚えていない。

120:半&半のCM 3/4
11/03/31 10:21:51.85 qb4TnRXU0
side:milk

「……………!」
お、重い。どうしよう……。

その日は遅番だった僕がエントランスに向かうと、すでに彼はいつものようにきりりと仕事をこなしていた。
彼。珈琲さん。ドアマンの黒い制服が誰より似合う――というのは僕の欲目だけではないと思う。


僕はこのホテルのポーターである。故に僕の仕事はお客様のお荷物をお部屋まで運ぶことである。
運ぶことである、のだが……。
たった今到着された……サーカス団、だろうか?のお客様のお荷物である、何が入っているのかわからないがその木箱は相当な重さで、日々それなりに重い荷物を持っている僕でも到底運べそうにない重さだった。
ヘルプに入れそうなポーターは居ない。どうしたものかとパニックになりかけたところでポンポンと肩を叩かれる。
「………………!」
振り向くと珈琲さんが横に立っていて、僕は思わず声を上げそうになった。
こちらの動揺をよそに彼はさっさと木箱に手を掛ける。あれほど持ち上がらなかった箱がふわりと宙に浮き、僕はついうっとりと珈琲さんを見つめてしまった。
「フフフ………」
そんな珈琲さんを面白そうにご覧になったお客様が、パチリと指を鳴らす。
すると、目の前の木箱が一瞬にしてライオンの入った檻に変わったのだ!
「……………!」
これにはさすがの珈琲さんも驚いたようで、声こそ上げなかったものの、檻を支え直した拍子に……。
バリリ!


珈琲さんの。制服のズボンが裂けて……下着が見えた。
珈琲さんの、下着が。
「あっ………!」
考えるより先に自分の帽子を脱いでそれを隠すことに努めたが。
(ハ……ハート、だった?)
檻を落とさないように珈琲さんと息を合わせつつ運ぶ作業の裏で、ついつい瞼に映る残像を確認してしまう。
それは、他ならぬ珈琲さんだからで。
(意外に、可愛いパンツ穿いてるんだなあ……)

121:半&半のCM 4/4
11/03/31 10:26:35.79 qb4TnRXU0
half & half


「お疲れ」
「あ、お、お疲れ様です」

休憩室でもないこの部屋は狭い。簡易的なテーブルと、揃いでもない椅子が2脚あるのみなのだ。こんなところに来るのは自分だけだと思っていて、
実際今まで誰と顔を合わせることもなかったが、きょうは先客である珈琲が寛いでいる。
さてどこに腰を落ち着けるか――逡巡するのも束の間、珈琲が傍らの椅子を丁寧な仕草で示したのでおずおずとミノレクはそこに座った。
「フォロー……ありがとうございました」
「……ああ。いや、こちらこそ」
昼食のサンドウィッチを広げるミノレクにちらりと視線を寄越したものの、何を言うでもなく珈琲は手にしていた雑誌をまた読みはじめた。
沈黙の中、自分の咀嚼する音がやけに響く気がするのを気まずく感じながらも、ミノレクはそんな珈琲をしげしげと見つめる。
(ああ……やっぱり、カッコいいなあ……)
そんな彼の視線の先を追い、手にしているページがまったく進んでいないことに気付いて首を傾げた。
「なにか、面白いことが書いてあるんですか?」
「え!?……あ、いや……」
ぱたりと雑誌を閉じ、身体はミノレクの方へと向き直ったのだが、視線はうろうろと彷徨っている。
ちらり、また寄越された視線がばちりと合い、今度はミノレクのほうが目を逸らせた。
「なんだか落ち着かないな、君にそんなふうに見られると」
「……え?……あ、す、すみません、他に見るところがなくて……」
思ったままを口走ってから、それがかなり失礼な物言いであることに気付いて慌てる。
他に見るところがない、というのは少々語弊がある。他に何があっても彼を見つめてしまう、というのが正しい。正しいのだが。
「いや、別に見るなというわけじゃ……それより、」
しかし珈琲は特に気にした様子もなくさらりとそれを流してくれた。
(確かに、僕も珈琲さんにじっと見つめられたらご飯どころじゃないな)

122:半&半のCM 4/4α
11/03/31 10:31:25.57 qb4TnRXU0
「それより?」
「……あのパンツは、別に俺の趣味じゃない」
真正面から急にそんなことを言われ、口にしていた牛乳を吹きそうになる。
「あ……ああ。え、えと、か、カノジョとかの趣味ですか?」
「俺に恋人はいない。君はいるのか」
「ぼ、僕ですか?いや、いませんけど……」
「そうか……」
珈琲が立ち上がる。交代の時間が来たらしい。
「意外だなあ、珈琲さんにカノジョがいないなんて。そういえば、どういうタイプの人が好きなんですか?」
そういえば、どういえばだと心の中で突っ込みながら努めて明るく訊ねた。
「好きなタイプ……」
上着のボタンをきっちりと留めながら、珈琲が見下ろしてくる。
軽い世間話程度のつもりだったのに何故か視線が逸らせなくて、そのままミノレクはドキドキと彼の次の言葉を待った。
「そうだな……。基本綺麗だけど、笑うと可愛くて……なんか色々一生懸命なコかな」
「……綺麗で可愛い……いるんですか、そんな人」
「いると思う」

123:半&半のCM 4/4β
11/03/31 10:35:32.85 qb4TnRXU0


つい、と伸ばされた珈琲の指が、ミノレクの頬から唇の端辺りを舐め取る。
「………!?」
「ついてる」
そのまま彼がぺろりとその指を舐めたのを見て、羞恥とほんの少しの欲情に顔が赤らむのを感じた。
「……す、すみません……ありがとうございます……」
「ああ。じゃ、俺あがるから」
「はい、お疲れ様です」
悠然と歩いていく背中をポーッと見送ったミノレクは。


(……さ、触ってしまった、ほっぺとくちびる……。ぷにぷにだった……)


静かに閉まったドアの向こうで、そんなふうに珈琲が崩れ落ちていたことを知らない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

分割超足りなかった すみませんorz

124:星に願いを 1/3
11/03/31 19:59:04.08 GqJTSvxP0
半生超注意。
某中華麺図のコント「ア/ト/ム/よ/り」

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

昔読んだおとぎ話
馬鹿げた話だと思いながら、俺は今日も星を眺める

--------------------------

「・・・なんだこれ。」

昼寝から目覚めて鏡をみて気付いた異変。
なぜ俺の顔にでっかく"のす"って書かれているんだ。

「ノス~・・・おまえなあ・・・。」
「ノス!!俺が書いたノスよ!!」

なんにでも名前書きやがって。しかも油性で。

「あーもー、とれねーじゃねーか、なんてことしてくれてんだ・・・。」
「トガシ君が悪いんだわいよー!!せっかく休みなのになんでずっと寝てる
のす!!一緒に大マンモス展に行くんだわいよ!!」
「だったら普通に起こしゃいいじゃねえか。なんだって名前なんか書いてくれてんだ。」
「自分のものには名前を書くノス。お前のものは俺のものノス。トガシ君も俺のものノス。
俺はトガシ君が大好きノス。だから、今日は一緒に大マンモス展に行くんだわいよ!!」

子供のような顔してそんなことをいう。うれしそうに。
俺はおまえのものか。意味分かって言ってんのか。

分かってないだろうことは分かってるけど。


125:星に願いを 2/3
11/03/31 20:03:07.12 GqJTSvxP0
「言っとくけど俺は行かないからな。あと名前書くならせめて水性にしてよ。」
「それじゃ消えちゃうノスよ。だから油性で書くノス。」
「消えてくれないと俺が困るんです。」
「俺はトガシ君とずっと一緒にいたいノス。消えたらいなくなっちゃうかもしれないノス。
名前は、失くしたくないものに書くんだわいよー。消したら意味ないノス!!」

・・・なに言ってんのこいつ。

「あのな、名前が消えたって俺はいなくなんかならないよ。」
「ほんとノスか?」
「ほんとほんと。なに、そんなに怖いの。俺がいなくなっちゃうかもしれないことが。」
「俺はお前が大好きノスからねー。」
「そっか。」

いなくなんかならないよ。俺だってお前とずっと一緒にいたいよ。大好きだよ。
でも俺はそんなこと言ってやらない。言っちゃいけない。

だってお前と俺は違うんだから。
好きの意味も、それ以外も。

だから俺は思うんだ。おとぎ話みたいに星に願ったら来てくれないかなって。


126:星に願いを 3/3
11/03/31 20:06:09.23 GqJTSvxP0
「トガシ君大マンモス展がだめなら大ねずみ展に行くノス。でっかいノスよー、ねずみ!!」
「行きたくねえなー。」
「なんでだわいよー!!せっかくの休日ノスよー!!」
「たまにはいいじゃん、家でごろごろするのもさ。」
「あ!じゃあキャッチボールするノス!!」
「えー、お前なんでそんな元気なの。」
「えーっとグローブはどこにやったノスかねー、さっき・・・」
「グローブなら俺が昼寝する前お前さわってたじゃん。」
「・・・・・・・」
「ノス?・・・・ああー・・・」

ほらきた、現実に引き戻される。

「バッテリー・・・あったかなあ・・・。」

充電しなきゃ動かないんだもんお前。機械なんだ、人形なんだよ。

好きで好きでたまらないんだ。
キスして抱きしめて離したくないんだ。
ずっと一緒にいたいんだよ。

それなのに、なんでお前は人間じゃないんだ。

だからさ、俺のとこにも来てよ、ブルーフェアリー。
あの木の人形を人間にしたみたいにさ、こいつも人間にしてくれよ。
それか俺を機械にしてさ、このどうしようもない感情を消してくれよ。
苦しくてたまらないんだ、ロボットに恋をするのは。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ゲ仁ンネタって書いていいのかしらと思いつつ。お粗末さまでしたー。

127:風と木の名無しさん
11/03/31 20:45:52.61 To1a6tZHO
>>116
ありがとうありがとう!
「シゲさんすっげ笑顔でした」はヤナちゃんでばっちり脳内再生されてニマニマしたよ。

128:風と木の名無しさん
11/03/31 21:58:34.39 e1LxN6g30
>>124
GJ!本人達の声で再生されて、泣けた
久々にDVD見るノス

129:1
11/03/31 23:34:04.24 wL5PqepAO
弟が今日引退した、某ナマモノツインズの話。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

俺たちは同じ日に生まれ、同じ容姿で、同じ道を歩いてきた。


「辞めんのか」
「うん。体がボロボロだしね」

勉強以外、いつも俺の後をくっついて回っていた彼は、今日新たな道を歩み始める。
生まれて初めて、俺たちは別々の道を歩く。

「ごめんな」

別な生き方もあったはずだった。
それを同じ道に連れてきたのは、間違いなく俺だ。

「何で謝るんだよ。俺、お前と一緒にここに来たこと、全然後悔してないし」
「でも」
「俺は、この仕事に就けたことを誇りに思ってるよ。大したことはできなかったけど、貴重な体験はたくさんできたから」

思えば、この仕事に就いてからの彼は、常にケガと戦っていた。
それでも諦めることなく、いつも全力を尽くしていた。


「1つ頼みたいことがある」
「なんだ?」
「まだまだ先の話になるとは思うけど、いずれは先生になるつもりでいる」

彼の口からは、とてつもない夢が飛び出した。
同期に、ずっと試験を受け続けているにも関わらず、未だに受からないヤツがいるから難しさは当然分かっているはずだ。

130:2
11/03/31 23:35:16.26 wL5PqepAO
「どんだけ先の話だよ」
「まあね。でさ、そんときはメインで乗ってもらいたいんだよね。だから、お前それまで現役でいろよ?」

笑ってごまかそうと思ったが、真剣な目つきに気付いてちゃかすのは止めた。
その目には、はっきりとした意志が見える。

「…50とか60とかまでは待てないからな」

励ましの言葉のひとつでも言えたらいいのに、自分に言っているような気がして、うまいことが言えない。
それでも気持ちはきっと通じているはずだ。

「頑張れよ、ミサキ」
「ダイチもな」

進む道が分かれても、俺たちの絆は変わらない。
新たな夢に向かって歩き出した弟が、少しだけいつもより頼もしく見えた気がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
内容は勿論フィクションですが、同じくツインズのミズノ先生の例もあるので、ちょっと期待してます。
お疲れ様でした。

131:風と木の名無しさん
11/04/01 11:34:26.52 yN/ZaWyeO
>>129
この兄弟の話が読めるとは…GJです!
まだまだ厳しい状況は続きそうですが、それぞれの道で頑張ってほしいです

132:風と木の名無しさん
11/04/01 23:25:20.38 FoK1pThw0
>>118
もっとあのCM続編が出てほしいと思いつつGJ!

133:風と木の名無しさん
11/04/02 09:25:04.09 w75lK09yO
>>124
ノス可愛いノス
ロボと人間は永遠の切な萌えだな…

134:風と木の名無しさん
11/04/03 02:10:21.73 ciAz/BNqO
>>118
GJ! このCM気になってたんだ。次はカフェオレ展開超希望!

135:風と木の名無しさん
11/04/03 12:36:44.37 9KVW3oo5O
>>124
ノス可愛いよトガシ君切ないよー!
切な萌えたGJ。久しぶりにDVD見直すわ

136:ヒロ阪 1/7
11/04/03 21:50:40.23 UmpwlOcq0
クローズ(原作)よりヒロミ×阪東。原作終了後、ヒロミが上京した後の話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース 



 ライブが終わるといつも同じ気分になる。
祭は終わり、みんな家路についたのに自分だけが喧騒の後の散らかった通りに取り残されているような、そんな気分だ。
家に帰らなければいけないのはわかる。だが帰り方がわからない。
阪東を頼って故郷の街を出てからもうずっと、桐島には帰り方がわからない。
一人でそこに取り残され、灯も消えた暗い道端で桐島はただ立ち尽くす。阪東はどこだろう。いつもそう思いながら。

 奈良岡が運転する機材車の後部座席で桐島は窓を細く開け、煙草に火をつけた。
深呼吸のように深く吸い込み、尾を引く光の群れのような夜景に向かって紫煙を吐き出す。煙は窓の上の隙間から外に流れた。
なんとなくその様子をしばらく眺め、桐島は窓とは逆の隣の座席をちらりと盗み見る。
阪東は斜めに倒したシートに深くもたれ、腕を組んで目を閉じていた。眠っているのだろうか、よくわからない。
眉間には起きている時と同様の深い皺が刻まれている。眠っているのならよくない夢を見ているのかも知れない。
ならば起こすことはない。ざまを見ろ、そんな気分だ。だが桐島は心とは裏腹に手を伸ばして窓をもう少し広く開ける。
起きているのならきっと文句を言うだろう。さみぃんだよ、閉めろバカ。
そんなことを目を閉じたまま、桐島を見ないままで呟き、そして再び桐島を無視して眠ったふりをするだろう。
起きていればいいのに。起きて、自分をそう罵ってくれたらいいのに。
そんな思いで窓を大きく開く桐島に、運転席から奈良岡が声をかけた。

「オイ、閉めろよヒロミ。さむいじゃん」

 その声に桐島は我に返る。奈良岡に一部始終をバックミラーごしに見られていたのかもしれない。
照れ隠しに桐島は窓を閉めながらミラーに写る奈良岡の二つの目に向かって舌打ちして見せた。

「えええ!?舌打ち!?なんで!?」
「前見て運転しろよ、いいから」

137:ヒロ阪 2/7
11/04/03 21:51:20.61 UmpwlOcq0
 わざとらしく冷たい口調を作って言ってやると奈良岡はそれに抗議して大袈裟に騒ぎ立てた。
口で適当にあしらいながら桐島の目はもう再び阪東に向けられている。
頭が悪いくせにこうやって眉宇を寄せて目を閉じているとまるで憂える哲学者のような顔に見える、と少しだけ笑う。
生きるべきか死ぬべきか、どうでもいいことを苦悩するデンマークの王子様みたいだ。
実際そんなどうでもいいことを悩むのはむしろ桐島の方で、阪東はその種のことに一切心を煩わせないにも関わらず。
なんとなくおかしくなって桐島は笑う。煙草を挟んでいるせいでほんのり隙間が開いた唇から笑みは吐息のように空中に洩れた。
途端に、獣の唸り声のような声が阪東の唇から押し出された。

「……なにがおかしいんだ」

 桐島の笑いはますます大きくなりいっそ聞こえよがしなほどに桐島自身にも感じる。
あんな小さな音に反応して目覚めるとは、相変わらず獣のように敏感なことだ。それともやはり寝たふりだったのだろうか。
機嫌はあまりよくない。ライブの出来があまり良くなかった。と、本人はそう言っていた。
正直言って桐島にはわからない。阪東は、あまりにも高みを求めすぎる。
到達しようもない雲の上の頂点を目指し、至らない自分に塞ぎ込むのだ。寝たふりを決め込んでいる時はたいていそうだ。
阪東は生きるべきか死ぬべきかでは迷わない。生きるためになにを為すべきかで迷う。桐島にはそれがたまに不思議な気すらする。
自分とこの男は、根本的なところで決して分かり合えないのかもしれない。

「……別に。思い出し笑い」

 桐島の言葉に阪東は小さく舌打ちして再び口を噤んだ。
目は一度も開かない。いつものことなのに、今夜はやけにそれが気に障る。

「起きろよ、阪東」

 阪東はそれに再び舌打ちで答え寝返りを打って桐島に背を向けた。
苛立ちと、それ以上に寂寥感を覚えて桐島は阪東の背中に掌を当てる。軽く揺さぶり、阪東を呼ぶ。

「なあ、起きろよ、なあって」
「うるせえ、死ね」

138:ヒロ阪 3/7
11/04/03 21:51:52.15 UmpwlOcq0
 阪東がますます背を丸めて桐島を拒絶するのに構わず桐島はその背を揺さぶり続ける。
怒鳴られたり殴られたりした方がましだった。こんなふうに無視されるくらいなら。
なんでそんなに不機嫌なの。ライブの出来が悪かったから?なら俺やツネにも責任があるんじゃないのか?どうして俺を責めないんだ。
俺たちはバンドじゃねぇのか。一人でやってるつもりかよ。
言いたいことはたくさんあったがなぜか口から出てこなかった。そのどれもが、本当に言いたいこととは違った。本当に言いたいのはこうだ。

行かないでくれ。
置いてけぼりにしないでくれ。

「阪東……」

 阪東の手が桐島の手を振り払い、次に億劫そうに体の向きを変えて阪東が振り返った。
その目に浮かぶ怒りは桐島と目が合った途端に消え失せる。代わりに阪東の表情には戸惑いの気配があった。

「……なんてツラしてんだよ」

 呆れたように阪東はそう呟いた。自分は一体どんな顔をしているというのだろう、と桐島は訝しむ。
あまり情けない顔でなければよいが、と思いながら桐島は笑うかたちに顔を作る。
それが成功したかどうかは自信がない。なぜならそれを見た阪東の顔に浮かぶ戸惑いの色はますます濃くなったから。

「なんでテメェが落ち込んでんだ」
「さあ……」

 自分はそんなに情けない顔をしているのだろうか。気恥ずかしくなって桐島はそっぽを向く。
再び窓の外の尾を引いて流れる光の群れを眺めた。

「阪東が落ち込んでるから?」
「……落ち込んでねえよ」
「……うん、悪い」

139:ヒロ阪 4/7
11/04/03 21:52:27.50 UmpwlOcq0
 会話はそこで途切れた。話すことは特にない。いつものことだ。阪東と自分はちがう。
阪東は特別な人間で、自分はそうではない、犬と人間くらいちがう。阪東がいる高い場所に、桐島は届かない。窓の外の光と同じだ。
堅いガラスで隔てられた夜景はすごいスピードで流れていく。絶対に、触れることはできない。

「……お前がどうして欲しいのかわからねえ」

 ふいに阪東が小さく呟いた。弾かれたように桐島が振り返る。驚きに見開かれた目に阪東の戸惑った顔が映った。

「そんなこと気にしてたんだ」

 犬の機嫌など気にも止めないかと思っていた。桐島の唇が皮肉に歪む。
その笑みの意味するところがわかったのか、阪東は気まずそうに目を逸らした。再び寝返りを打って桐島から顔を隠す。
阪東は傲慢なのではない、ただ不器用なだけだ。
それは桐島にもよくわかっているし、それこそが彼の個性だというのも理解できる。だけど。

「……じゃあ、キスしてよ」

 阪東の背中がびくりと震え、ややあってゆっくりと桐島を振り返る。バカが、と吐き捨てられた。

「なに言ってんだ、ヒロミ」
「いいじゃん。たまには構えよ」

 桐島の言葉に阪東は舌打ちする。

「クソして寝ろ」
「いいからキスしろって。そんくらいいーだろ?」
「死ね」
「キスしてくれたらね」

 引き下がらない桐島に業を煮やして阪東は声を落とした。

「……ツネに見られんだろうが」

140:ヒロ阪 5/7
11/04/03 21:53:09.11 UmpwlOcq0
それは決定的な拒絶だった。
誰に見られても構わない、と強く思う桐島と、見られたくないと思う阪東とでは、やはり、住む世界が違うのだ。
桐島は肩をすくめて笑って見せた。阪東を安心させようと明るく答える。

「そうだな、悪かった」

 話はそれでお終いだった。諦めは吐息のような笑いとなって桐島の唇からむなしくこぼれた。
阪東が一瞬だけ、どこか痛みを堪えるような顔をした。桐島はそれを無視し、煙草を唇に挟んだ。
窓を細く開けると風の音が車内に満ちた。号泣する巨人のような音。
桐島はライターの炎を掌で覆い、くわえた煙草に火をつけ、そしてそれを捨てた。
フィルターの方に火をつけてしまったからだ。
新しい煙草を取り出し、今度は間違えないように火をつけ、そして桐島は再びそれを捨てるはめになる。
煙草を持つ指に力がこもり、途中で折れてしまったのだ。
桐島は驚愕に思わず折ってしまった煙草を唇に挟んだまま、呆然と自らの足下を見下ろす。
そこには阪東の頭があった。
上体を折って桐島の下半身に屈み込み、歯で桐島の革製のパンツのファスナーをじりじりと下ろしている。息が止まった。

「ば、なにやって……!」

 ひそめた声で咎めながら阪東の髪を掴むとその手を払って顔を上げた阪東にきつく睨まれた。
黙ってろ、そう呟かれ、再び顔をそこに埋められる。
ファスナーは下まで下ろされた。萎えた性器を阪東は取り出そうと四苦八苦している。
ファスナーが性器の根元に当たって桐島は思わずイテッ、と呻いた。途端に阪東にピシャリと腿を叩かれる。
静かにしてろ、そう囁かれた。桐島は息を呑む。再び阪東が桐島の脚を叩いた。
その意図に気付き、桐島は恐る恐る腰をそっと浮かせた。タイミングをあわせて阪東がずるりと桐島のパンツを下ろす。
暗闇に桐島の下半身が剥き出しになる。性器が、ぬるりと温かい濡れたものに包まれた。
桐島は前を窺う。バックミラーごしに奈良岡と目が合った、気がした。
思わず阪東の髪を掴んだ手に力を込めると、奈良岡がカーステレオの音量を上げた。偶然だろうか、それとも。


141:ヒロ阪 6/7
11/04/03 22:00:39.27 UmpwlOcq0
 思考は快楽に霧散した。阪東のたどたどしい動きはそれでも確実に桐島を追い詰めた。
なぜ阪東がこんなニンフォマニアのような真似をするのか桐島にはわからなかった。
わかるような気がしたが、やはりそれは、どう考えてもちがう、と思った。
まさか、これがキスの代わり、だとか。まさかそんなこと。
ちゅぷっ、と小さな音がカーステレオのジョニー・ロットンの声にかき消された。
阪東の小さな頭が激しく上下し、桐島の性器は濡れた口腔にみるみる堅く育ってゆく。
窓の外を眺めるふりをして桐島は震える指で煙草を取り出し、幾度か失敗しながら火をつけた。
深く深く吸い込むと、肺が痺れた。知らん顔をするのは至難のわざだった。
阪東のうすい舌が桐島の括れに巻き付き、先端の穴をつつき、唇が棹の部分を扱き上げた。
頬をすぼめる横顔が卑猥すぎて桐島はそれを直視できない。窓の外を見るふりでやりすごす。
腹筋に力を込めて堪えるが、あまり保ちそうになかった。

 阪東、阪東、阪東。声に出さずに呼び掛ける。
こんなことさせてごめん。おまえにこんな売女みたいな真似させてごめん。ただ少しわがままを言ってみたかっただけなんだ。
おまえが聞いてくれるなんて思ってなかった。聞いてくれなくてよかった。おまえはこんなことしていい人間じゃない。
おまえはもっと、雲の上のきれいな場所を目指していればいい。こんなことしちゃいけない。こんなこと。
心とは裏腹に体は昂ぶってゆく。阪東が、阪東が、俺に、こんなこと。

142:ヒロ阪 7/7
11/04/03 22:01:22.22 UmpwlOcq0
桐島が見る窓の外で尾を引く車のライトが滲んだ。丸く、花火みたいに重なる色とりどりの光たち。
喉を突く桐島の切っ先に阪東がえずいて唸り声を上げる。運転席の奈良岡が再びカーステレオの音量を上げた。
繰り返し繰り返し泣き叫ぶようにロットンがうたう。
未来なんかない、未来なんかない、俺たちには、未来なんかこれっぽっちもないのさ。

 桐島の、阪東の髪を掴む手に力がこもった。内腿の筋肉が強張り、性器が一気に膨らんだのがわかった。
引き剥がそうとする桐島の手の力に逆らうように阪東の頭はそこから離れない。
先端の括れを含んだまま、巻き付いた指が根元を激しく扱き立てる。桐島は機材車の天井を仰ぐ。煙草の煙で視界が曇る。
どうにでもなれ、と桐島は腹筋に込めた力を抜く。快感の突き上げるままに任せ、阪東の唇を、口腔を、喉を欲望で汚す。
桐島は目を閉じる。阪東の喉が大きく上下するのを感じる。
こんなことが長く続くわけがない。こんなことは、きっと今だけだ。阪東が俺のものでいてくれるのは、きっと今だけ。
近い将来自分たちのあいだにある齟齬は取り返しのつかないレベルに膨らみ関係は破綻する。
阪東がこんな真似をしてまで桐島を慰めてくれるのは、今だけなんだ。桐島は繰り返し繰り返し自分に言い聞かせる。
そうなった時にけして阪東を引き留めるような真似をしなくてすむよう、桐島はただ自分にそう繰り返す。
未来なんかない。未来なんかない。

俺たちに、未来なんかない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

143:Curry of Prime, and Spice. 1/2
11/04/04 16:53:30.61 jjCGjcBx0
半生。邦ドラ淑女より、監理官×係長。エロなし。#10以降のお話。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

藤/堂は少し浮かれていた。
彼はキッチンに立っていて、対面式のカウンターには先輩である柘/植がもたれかかっている。
彼は料理を作っていて、それを眺める柘/植は静かに頬笑みながらワインを飲んでいる。
こんな時間は何年振りだろう。

長い、長い間、藤/堂と柘/植は離れていた。
同じ庁内に勤めているし、同じ帳場に入ることもある。しばしば顔を合わせていたし、少なからず言葉を交わしてはいたが、心が近づくことは決してなかった。
柘/植が藤/堂を意図的に遠ざけていたし、藤/堂もそんな柘/植にどう接して良いか分からなかった。あの事件以来、藤/堂と柘/植は先輩と後輩・上司と部下という距離感に加え、その間を絡まった糸で線引きされていた。
深く忌々しく、越えられないとさえ感じていた溝が、今では浅い堀になったようだ。
柘/植がキャリアルートを外れる原因となった誘拐監禁殺人事件は、C/P/Sの協力により5年の時を経て真の解決に至った。
C/P/Sをあまり良く思わない藤/堂だったが、この活躍により柘/植の心の闇が取り去られたことと、数例ではあるが難事件を解決に導いたことにより、その存在を認め始めていた。

C/P/Sメンバーの1人、香/月/翔/子が関係する"レ/ディーキ/ラー"事件が解決した後、藤/堂は柘/植を食事に誘った。誘ったと言うよりも「要求した」といった方が正しいだろうが。
「奢って下さいよ」「わかったよ」というその会話どおり、先日、美味いと噂のインド料理店に2人で赴いたのだが…

「たしかに、うまい。スパイスの香りが違いますね。」
「………」
「柘/植さん?どうしました、口に合わなかったんですか」
「……お前が昔作ってたのの方が、うまい」
「……じゃあ、今度は俺がご馳走しましょうか」

そういうわけで、藤/堂はせっせとカレーを作り、柘/植はそれを待っているのだ。

144:Curry of Prime, and Spice. 2/2
11/04/04 16:54:37.65 jjCGjcBx0
鍋はぐつぐつと煮えている。具材には十分火がとおっている。
藤/堂は一旦火を止め、パウチの中身を鍋に注いだ。どろりとした液体が、スープに色をつけていく。おたまで軽くかき混ぜると、それだけで食欲をそそる香りが広がった。
我ながら上出来だ。次のひと手間で、このカレーは完成する。

「よし。仕上げは…」
パックの封を開けようとした藤/堂の言葉に
「ルー。…だろ?」
柘/植が割って入った。
驚いて顔を上げると、頬杖をついてにっこりと笑いながらことらを見る柘/植と目があった。
藤/堂は、ペーストと固形ルーを併せる自分のレシピを覚えられていたこと、浮かれた自分を見られていたことを今更ながらに自覚して
「………です。」
としか、答えられなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お粗末さまでした。
監理官の中の人ネタです。最終回は凄まじかった

145:風と木の名無しさん
11/04/04 18:02:47.34 F2R3CtC40

半生  某自動車メーカーのCMより第2弾
宣伝部長→所長×研究員

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース

基本的にWEB限定ムービーを踏襲してますが、多少オリジナル設定が入ってます




146:某自動車メーカーのCM 1/3
11/04/04 18:05:30.97 F2R3CtC40

「T/N/Pを低燃費って、まんまCMやったら笑われるよ!」
「なに!?」
「なに!?」
憤りを抑え切れず、気が付けば椅子から立ち上がっていた。
隣を見ると、同じく新任の研究員も立ち上がっている。
広い会議室の空間は、途端に一触即発の不穏な空気を孕み始めた。
構わず、大きなテーブルを挟んで向かい側に座っている面々を睨み付ける。
一時の感情に任せた態度を表に出すのは余りスマートとは言えない。私の主義に反するが、どうにも我慢ならなかった。
利己主義で低俗な感覚に塗れ切った向かいの面々――宣伝部の連中に、スマートかつクールな我々研究者のアイディアを一蹴されるとは。
完全にあってはならないことだ。
ところが、諸悪の根源である宣伝部長は、さっきから我々を小馬鹿にした態度で呆れたように鼻で笑っている。
「おたくら本気?」
「いつだって本気ですよ!」
私が口を開く前に隣の丘田が喰らい付いた。…相変わらず可愛い。
うん、そうだ。私もそれが言いたかった。
にもかかわらず、だ。向かいの敵の口から発せられた言葉は、
「なんで」
なんで、だって?
馬鹿な。どうしたらそんな間抜けな言葉が出てくるんだ。お前にはこのJ/C/2なエスプリが、
「――分からないのか?」
「ちょっと格好良いからですよ!」
素早く私の言葉の後を継いで、再び隣の丘田が言い放つ。
そう、そうだ、丘田。そういうことだ。良く分かってるじゃないか。
何という以心伝心。
もう私と君は一心同体と言っても過言じゃない。まさにT/N/Pとエコア/イドルの関係の如しだ。
君という裏付けがあってこその私なんだ。いや、私のようなH/R/I心を持った上司に恵まれたからこそ今の君の成長があると言うべきか。いやいや、むしろ私のI/K/T/Rセンスが…。
……待て、今は我々二人の関係性を分析している場合じゃない。


147:某自動車メーカーのCM 2/3
11/04/04 18:07:34.74 F2R3CtC40

度重なる援護射撃に気を良くした私は、再び目の前の敵を見据えると、これが最後通牒とばかりに腕を振り上げて断じた。
「T/N/Pでバーン!といかないか!」
「…勘弁して下さいよぉ先輩」
それまでの木で鼻を括ったようなイケ好かない態度はどこへ行ったのか、急に眼前の敵が情けなく顔を顰めて項垂れる。
相手の様子が一変したことに驚いたらしく、丘田が私の方を向いて声を上擦らせた。
「せ、先輩!?」
「部活の後輩だ……バドミントン部だ」
こんな無粋な人間に成長してしまった後輩を持ったのは我ながら何とも不本意だが、やむを得ない。
中学の頃はあんなに小さくて可愛かったお前が。
今じゃチャラチャラした業界気取りのむさ苦しい男に成り下がってしまった。
あぁ、何という悲劇。時間とはかくも残酷なものなのだ。
しかし、それはそれ。過去は過去。私としては、この場を一歩も引く気はない。
「杉元!」
「参ったなぁ……」
もはや反撃することもなく、杉元は困り切ったようにただ呟いている。
敵の心理に綻びが生じたことを感じ取った丘田が、間を置かずして鮮やかな決定打を放った。
「それを格好良く作るのが宣伝部の仕事でしょう!」
よし、巧いぞ丘田。
案の定、丘田の言葉に変にプライドを刺激されたのか、敵はようやく我々のアイディアを盛り込むことを承諾した。
早速、T/N/Pをバーン!と掲げ、エコア/イドル搭載を角に慎ましく表示したフリップを準備した杉元が、我々に向かって同意を求めるように首を傾げる。
「どう?」
「…良い、と思います」
私の方をチラリと見ながら、丘田が少し自信無さげに答えた。
…可愛い。
ただ、もっと自分の感性に自信を持て、丘田。君はもう私と一心同体なんだから。
そこでようやく会議も終わり、会議室からスタッフ達が続々と退室していく。
最後に残った我々と杉元は、出入り口のドア付近でちょうど向き合う格好になった。


148:某自動車メーカーのCM 3/3
11/04/04 18:09:38.38 F2R3CtC40

杉元もようやくホッと安心したのか、目線で私を指し示しながら、丘田に向かって溜め息交じりに吐き出した。
「言い出したら聞かないんだよ、昔から」
なに!?
お前にそんな風に言われる筋合いはない!だいたいお前こそ昔から、――。
舌鋒鋭く反証を始めようとした私の耳に、突然、杉元らしからぬ気弱な言葉が飛び込んでくる。
「…こんな極端なやり方で、売れると思うか?」
一体どうしたんだ、杉元。こと宣伝にかけては自信過剰ともいえるお前が。
そうか、そうだったのか。
本当のお前は、日々不安を抱えながら、それを表に出すまいと尊大ぶった態度で自分自身に鎧を纏っていたんだな。
だが、杉元、もう安心して構わない。
我々が求めているのは結果だ。結果だけが全てなんだ。そして今回に限っては、必ず結果が出る!
何故ならこの私が考えたアイディアなのだから!!
そう言って元気付けてやろうと思ったのも束の間、杉元は勝手に自己完結したようだった。
「でも嫌いじゃないよ。…俺、実は結構、イケると思ってるゼ!」
いや、お前のその感性は全くイケてないだろう。I/K/T/Rのは私だ。
そう思わないか、と同意を求めるべく隣の丘田に顔を向けると、丘田は何故か優しそうな笑みを浮かべて杉元と見つめあっていた。
「時にはそうやって、恥ずかしがらずにまんま素直に表に出すってことも必要なんじゃないですか。僕も最初は戸惑いましたけど、今はそう思います」
「確かに、そうかも、な…」
杉元の方も、ひどく感慨深げに何度も頷いている。



149:某自動車メーカーのCM 4/3
11/04/04 18:12:02.90 F2R3CtC40

どういうことだ、この二人の間に漂う空気は。
「おたく、良い感性持ってるよ。技術畑には勿体ないなぁ」
照れ隠しのように丘田に陽気な笑顔を向けた後、杉元がふいに表情を改めた。
「先輩――」
なんだ急に。それに何だその目は。……まさか!?
駄目だ!絶対に駄目だ!
丘田は私の研究所の研究員なんだ!お前なんかにやるわけにいかん!!
それに丘田、お前もお前だ!奴にそんな可愛い笑顔を向けるんじゃない!杉元が誤解するだろう!
二人の間に割って入ろうとした私の両肩を、杉元がガッシリとした手で掴んだ。
「――実は俺、ずっと、…ずっと先輩のことが好きでした!俺の嫁さんになって下さい!!」
「ッえぇ~??」
「ッえぇ~??」



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

またしても改行ミスりました…すみません


150:風と木の名無しさん
11/04/04 22:11:54.72 PIZmygnG0
>>149なんとJC2な!
ラストのプロポーズでフイタw
展開だけ追うとハラハラ三角関係!?という感じだけど
どこかほのぼのしてて可愛いなあ
ごちでした!

151:風と木の名無しさん
11/04/04 23:05:33.37 MgvFv2sp0
>>149
第二弾ktkr!
ラストの展開に自分もニラ茶ふいたよw
第三弾も全力正座でお待ちしてます

152:風と木の名無しさん
11/04/05 00:23:39.10 wst59ch/O
遅レス失礼致します
>>101ー109等の姐さん
全ての作品素晴らしいです!読む毎に萌え力で元気になりました
緑蜂以前にも投下なさってらしたのでしょうか、文章の心地良さにすっかりファンです
予告編からワクテカだった作品を棚で拝見出来て感激し萌え再燃してます
更なる続きをお願いしたいですし続編撮って頂きたい位ですwありがとうございました


153:風と木の名無しさん
11/04/05 01:18:06.62 6XaeCukZ0
>>136
おおおおおヒロミと阪東のバンド物がここで読めるなんて!!
二人とも男っぽくて切なくてすごく良いです

154:風と木の名無しさん
11/04/05 19:29:43.38 LCr6pqfUO
売る振るず/しゃっきんだいおうの歌詞に萌えてインスパイアされた二次?BL未満妄想

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155:どうしようもない奴 1/5
11/04/05 19:30:26.71 LCr6pqfUO
あいつとの付き合いは長い。
初めて会ったのは幼稚園、桃組のとき。
父は仕事に忙殺され、母は生まれたばかりの妹にかかりきり。
ふて腐れ気味だった俺の手を引いて遊びに誘ってくれたのがあいつだ。
頭がよく運動神経は抜群。
顔立ちも悪くなく、だけど決して鼻にかけず誰に対しても分け隔てなく接する親分肌。
あいつは俺のヒーローだった。
―そう、「だった」だ。過去形。
十年以上前に、その一種憧れめいた感情は掻き消えた。
できるものなら俺は昔に戻ってあの頃の俺に言ってやりたい。
そいつはやめとけ、今に泣きを見るぞ、と。

「だからさ、ちょこーっとでいいんだって」
現在の時刻、午前5時30分。
寝不足で痛む頭を押さえる。ゆうべ会社から帰ったとき既に日付が変わっていた。
馬車馬のように働いたのは今日が貴重な休みだったからだ。
「おおい聞いてるか?」
「うるさい話を聞く気はない」
俺は眠い目を必死で開けて前方を睨みつけた。
相手はほんの10分前、チャイム連打で俺を叩き起こし、今も我が物顔で寛いでいる男だ。
中途半端に長い髪と無精髭はこいつのだらしなさをよく表している。
へらへらと笑うこいつの目的はいつだってはっきりしている。金の無心だ。
「何だよーケチケチすんなよー」
「お前は金の有り難みってもんをわかってない」
高校生が友人にアイス奢れと言うのとは訳が違う。
俺達はもう遊び歩くのを許されるようなガキじゃない。
社会人になって数年、友人は皆大なり小なり苦労して汗水垂らして金を稼いでいる。
無論、食うためだ。断じて目の前の阿呆に恵んでやるためじゃない。
それを、働きもしないこいつはしれっとした顔で言うのだ。

156:どうしようもない奴 2/5
11/04/05 19:31:23.51 LCr6pqfUO
「別に全財産寄越せってんじゃないんだからさ、ほんのちょびっと貸してくれたっていいじゃねーか」
阿呆かと。馬鹿かと。
目を開けたまま寝言言うんじゃねえよと。
貸すというのはいつか返ってくるからそう言うんじゃないのかね。
学生時代から今に至るまで、何年経っても一向に返さない相手に金を渡すのは貸すんじゃねえ、ドブに捨てるって言うんだよ。
俺が睨みつけるのを気にも留めないで、阿呆はへらへら笑った。
「だーいじょうぶ大丈夫。今回はマジだって。馬でも自転車でも船でもねーよ。ビジネス、いわゆる投資ってやつだ」
投資。いかにも胡散臭いな、おい。
「大当り間違いなしだ」
どんな根拠があるものか、奴は手のひら大の箱を投げて寄越した。
蛍光ピンクのパッケージにボンキュッボンの際どい服着た金髪ねえちゃんのイラスト。
大人の玩具かと疑う下品な箱の上にはでかでかと赤い文字が踊っている。
「……一粒飲めばアナタも魅惑のプロポーション! って……」
どう考えても騙されてるだろ!
叫びそうになったがぐっと飲み込む。
いかんいかん。もうこいつに振り回されるのはやめるんだ。
投げ返そうとしたとき、中身がこぼれた。
吐き出されたのは丸く平べったい白の錠剤。って待てよ。
「おいこれラムネに見えるぞ」
「ラムネじゃねえよ、流行りのダイエット商品だよ。ほら一粒飲めば魅惑のプロポーション!」
両手を使ってナイスバディを表現している阿呆は無視して粒を口に含む。
しゅわっと口溶けよく弾ける。やはり懐かしのあの駄菓子だ。
パッケージをもう一度見る。
心なしか、撫でると金髪ねえちゃんの辺りがざらざらするような。
―まるで絵の具か何かで描かれたように。

157:どうしようもない奴 3/5
11/04/05 19:32:22.50 LCr6pqfUO
そこまで考えて俺は、今度こそ奴の頭めがけて箱を投げつけた。
「投資なんて嘘だろこれお前が作ったんじゃねーか!」
「ばれたか」
「ばれるに決まってんだろ!」
そうだった、こいつは昔から異常なほど手先が器用だった。
その器用さをもっとマシなことに使えよ!
まともに働いて金稼げよ!
「いいか、俺のお前に対する心証は元からマイナスだったが今ので臨界点突破したからな」
「えー俺お前にだけはひどいことした覚えねえぞ。金せびったけど」
それだけでも十分ひどいことだよ、と言いたいのをぐっと堪えて俺は声を低めた。
「俺はお前がマリコに手え出したの忘れちゃいないんだよ」
「なあに人聞きの悪いこと言っちゃってんの。
マリちゃんとは紳士的にお付き合いして話し合いの下円満にお別れしたよ」
そうともお前と妹とは今も仲がいいだろう。
だがそれが今までで珍しいってのはよく知っている。
こいつが女と揉めるたびにとりなしてきたのは他ならぬ俺だからだ。
今だってこいつはあちこち女の家を渡り歩いて暮らしている。
金がなけりゃ家もない。働く気概も情けに報いる誠意もない。
何というダメ男!
これはだめだ、もうだめだ。
今日までずるずると付き合いを続けてきたが、俺の愛想もストックが尽きた。
今まで何遍も思ったが今日こそ終わりだ。
「貸してやってもいいぞ」
そう言った途端、奴は目を輝かせた。
「マジで!」
「その前に今までの借金返すならな」
奴の動きが止まった。ほら見ろ、どうせ返せるはずがないんだ。

158:どうしようもない奴 4/5
11/04/05 19:33:50.32 LCr6pqfUO
「返せ、さあ返せ。全額耳を揃えて返せ」
「いやあの本当に俺今金ないのよ。今あんのって言や……あ、そうだ」
がしっと肩を掴まれ、上から覗き込まれる。
な、何だよ。何で目に力込めてんだよ。
無精髭が生えて、でもよく見ると鼻筋の通った男前がふっと微笑んだ。
奴の顔が近づき、俺の耳元で囁く。
「身体でご奉仕しちゃおうか……?」
ふうっと耳に息をかけられた瞬間、俺は奴を蹴り飛ばしていた。
「帰れ! もうお前二度と来るな!」
「えー! ちょっ金は!?」
「貸すわけねえだろこのタコ!」
暴れる奴を無理やり蹴りだし、扉を閉めた。
しばらくの間、お願いだのごめんだのとわめく声が聞こえたが、諦めたのかやがて足音が遠ざかっていった。
それを確認したら足から力が抜けた。
へたり込み、がつんと扉に頭を打ち付ける。

159:どうしようもない奴 5/5
11/04/05 19:35:20.60 LCr6pqfUO
昔、同じようにごく近く顔を寄せ合ったことがあった。
ガキの頃、近所の林に作った段ボールハウスは、高校に上がるまで俺達だけの秘密基地だった。
基地最後の日はよく覚えている。
中学の卒業式の後、今日のようにあいつがふざけて顔を寄せてきた。
冗談で返せばよかった。でも俺は逃げた。
次の日行ってみると基地は壊されていた。
そしてあいつは変わった。
俺の心臓は今、あのときと同じように扉を蹴破って走り出そうとしている。
きっと顔も耳も首も、どこもかしこも真っ赤だろう。
手が震えて、あいつが置いていった詐欺商品を握り潰した。
「ちくしょ、あいつ……くそっ」
マリコにツバつけたのがわかったときキレたのも未だにあいつを切れないのも。
原因は全部わかってるんだよ。
嗚呼、昔の俺よ、何だってあんな奴に惚れちまったんだ!

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

見捨てられないのは恋だよ!って突っ込みたい気持ちが堪えられなくなったので吐き出し。
捏造失礼しました。

160:風と木の名無しさん
11/04/05 19:39:29.61 hHmsZKwK0
>>136
まさか2でこの二人の話を読めるとは…
ありがとうございました!


161:アキラ×ヒカル×アキラ ◆k/mlQdBDxE
11/04/06 04:44:28.56 Tzg6JULmO
リバ注意!ヒカルの碁
>>97-98の続きです
アキラ×ヒカル、の後、ヒカル×アキラにかわります
ガチリバな二人でエロ。しかもその日の勝負で上下が決まるというベタなアレで…
続き物でちょこちょこやってくつもりです。
リバ苦手な方は専ブラでトリップをNGワードに設定推奨です。
ヒカルの一人称(ヒカル視点)で進みます
今回は押し倒し編。しかもビミョーにまだ押し倒してない
押し倒すだけなのになんでこんなに書くのに時間がかかるんだろう…
今はアキラ×ヒカルです
ややヒカアキっぽいかも知れないもしかしたら、自分ではわからない
ちょっと血を舐める描写が出てくるので苦手な方は気をつけて下さい
あと私が気づいてないだけでこの二人結構変態なのかもしれないどうしよう

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162:アキラ×ヒカル×アキラ1/2 ◆k/mlQdBDxE
11/04/06 04:52:10.88 Tzg6JULmO
負けた。オレの二目半の負けだ。
塔矢の家で、いや塔矢の部屋で塔矢が勝ったときはいつも、検討を終えて、碁石を片付けると塔矢がじりじり寄ってきて、
そのまま、布団側にいるオレを、敷布団の上に転がして………
そこまで想像を巡らせて思った。今日はどうすんだろ。
塔矢が碁盤と布団の配置を逆にしたから、いつもと逆で布団側に塔矢がいて、碁盤を挟んで反対側にオレがいる。
じりじり寄って、オレを力技で布団に引きずり込むつもりか。
それとも、オレが自分からにじり寄ってくるのを待ってるのか。
そんなことを考えているうちに、二目半の差で負けた碁の悔しさが込み上げてきて、はあ、とため息をついて碁盤に頭を垂れる。
かちゃ、という音を立てて、額の下で石の配列が崩れた。
「…あ、だめだよ」
顔を上げると、塔矢が碁盤に手を伸ばして元に戻そうとしている。
やっぱり忙しかったのか、唇がかさついている。手とか唇にばっかり目が行ってしまう。
かさついた唇を見てなぜか、いつだったか、掠れた、でも熱っぽい声で、碁に負けたキミの顔が好きだ、とぽつりと呟いていたのを思い出した。
そんな顔を見せたままでいるのもなんだか癪で、石の形を戻していた白い手を、手のひらで押し返す。
ばちばちと音を立てて盤面が崩れて、畳の上にいくつか碁石がこぼれ落ちた。
あっけにとられている塔矢の胸に手のひらを押し付けて、じりじり迫ってから体重をかけて力任せに布団に倒す。
スーツの布地が、毛羽立った畳に擦れてざらついた音を立てた。
「盤面、頭に入ってるから。あとで並べようぜ」
ダークグレーのセーターの下におさまっているネクタイの、結び目近くをぐいと掴んで、乱暴に引き寄せる。
「……今日はボクが上のはずだが」
そう、そうだよこの目。この目だ。ぎらぎらしたおまえの目、好きだ。身体中がきゅっと締め上げられる感じがする。
「んなことわかってるよ」
塔矢は左の手のひらを突いて腰を安定させると、下からそろりと右手を延ばしてきて、オレの頬から顎にかけてを、つっと撫でた。


163:アキラ×ヒカル×アキラ1/2 ◇k/mlQdBDxE
11/04/06 05:04:08.89 Tzg6JULmO
硬い指先が頬をたどる感触にぞくぞくする。やっぱり溜まってる。オレ。
「なあ……オレさあ、」
なに、と言いかけて開いた薄い唇を、最初はゆるく、だんだんきつく、きりきりと噛んだ。
微かな、生温かい感触と一緒に歯の間から鉄の味が広がって、塔矢の口から、あ、という微かな声が洩れる。血だ、と思った。
「ごめん、切れた?…」
かさかさしてひび割れそうだった唇を噛まれて、切れたか割れたかして血が出たらしかった。
自分の下唇に付いた血を舐め取る。口の中で、鉄っぽい味が唾液と混ざった。
塔矢と大差ないくらいかさついている自分の唇の感触を認めて、改めて、自分と同じようにかさついている、薄い唇に欲情する。
「ああ、……切れたみたいだ」
手の甲で口を拭って、その手の甲をちらっと確認しながら言う。
その仕草が妙に色っぽい、なんて思って、だめだこんな調子じゃ、こんなんじゃあんまりもたない、と思った。
左手で顎を持ち上げて、かさついた唇をすり合わせて、まるで噛みつくみたいに強く唇を吸う。
唇を少し舐めてから離すと、塔矢を布団の上に押し付けて、腰の上に馬乗りになって両手を塔矢の顔の横に突く。
塔矢のワイシャツの襟の上に、水色のネクタイの先がぱさりと垂れる。
「オレさ、いま、」
こうやって、塔矢を上から見おろすのは、なんだか好きだ。
塔矢がオレが作る影の中にいると、それだけで、ああ、こいつ今、オレ次第でどうにでもなっちゃうんだな、みたいな気分になる。
まあ、気分の上だけなんだけど。実際は、そうすんなり上手くは行かない。

164:アキラ×ヒカル×アキラ2/2 ◆k/mlQdBDxE
11/04/06 05:08:50.65 Tzg6JULmO
少し腕を曲げて体を近づけると、ごくんと白い喉が上下して、ネクタイの先が黒髪の上に滑り落ちた。
「すっげえ、したい」
たぶん塔矢の口の中にも、少しだけど血が残っている。今キスしたら、きっと血の味がする。
オレの口の中も塔矢の血の匂いがする。なんだか変な感じだった。口の中の唾液を飲み込む。やけに鮮明に喉を通った。
顔の横でシーツに食い込んでいる右手の、親指以外の四本の指に体重をかけて、無造作に広がった髪の上にある親指で、すりすりと髪の流れをなぞる。
「……こっから、やってみろよ」
今まで、塔矢が力ずくでオレを、っていうのはなかった。
大体、軽く布団に転がしたり、もつれるように倒れこんだり、みたいな感じだった。
力ずくでオレを押し倒すおまえを、ただ見てみたいと、そう思った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
読んでくれた方ありがとうありがとう
続きます


165:風と木の名無しさん
11/04/06 05:11:09.59 Tzg6JULmO
あああ、名前欄の分数おかしい、途中トリップできてない
ご迷惑かけました

166:風と木の名無しさん
11/04/06 09:09:14.94 2RpYltUk0
>155
つ、続きマダー? っていうかここで終わりとは殺生な…w
どうしようもない奴に振り回される主人公乙。


167:山鉄 1/3
11/04/07 22:18:43.75 EuD+DtZC0
一応ナマモノ。ymd×t兄(俳優)のつもりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 眠らなくても動く脳味噌とか食わなくても平気な腹とか、そういうのが欲しい。
眠る時間がもったいなくて、けれど特にする事もなくてただぼんやりと夜を明かしてドロドロに溶ける脳味噌は厄介だ。
何食べようとか考えるのが面倒で何も食わないでいたら、立ちくらみで世界が真っ暗に滲んだ。
カプセル一つで腹が膨れたりとか眠らなくても済む機械の体とかが欲しい。そろそろ未来、来ねぇかな。遅れてるよ、21世紀。

 ぐったりとソファーに倒れこんで、このまま死にたい、と思ってもない事を口に出してみる。
……いや、まぁ死にたくはねぇなぁ。何か辛い事でもあったっけ俺?と思いを巡らせてみても、特に何も思い出せなかった。
生きていると辛い事ばかりが降りかかるような気がするけれど、よくよく考えてみるとそのどれもこれもが大した事ではないように思える。
本当に辛い事なんて数える程しかなくて、俺はまだそれが思いつかない。
真実、俺を殺す悲惨な出来事。大抵の事なら、何があっても生きていける。随分と丈夫に育ってしまったので、大体は生きていけた。
けれど、いつか俺を殺すのはこの倦怠感なのかもしれない。心がね、ちょっとナイーブなのよ。
でもまぁ、今のところ死にたくなんてないから死なない。死にそうもないから死なない。さて、本当に俺は何か辛い事でもあったのだろうか。

 携帯の震える鈍い音が聞こえて、さっき床に落とした携帯を手探りで掴んだ。
ディスプレイをに表示された名前を見て、数秒迷ってから電話に出る。

『なにしてんの?』

 死にかけてるよ。

168:山鉄 2/3
11/04/07 22:19:14.87 EuD+DtZC0
 しばらく会っていない兄貴は、そういう探るような言葉でもって俺を誘い出す算段らしかった。
何と返したって、次に続く言葉はどうせ、「来いよ」とか、「来てよ」とか、なんとか。
 外に出るのはメンドイな。かといって家に来られてもメンドイな。
これは愛してるとか愛してないとかの問題じゃなくて、俺の生死に関わるアレコレなので勘弁して欲しい。
それとこれとは別問題で、ここの所を深く考えてしまうと俺のアレコレがより深いところまで落ちていってしまうので考えるのをやめた。

(人に気を使わせてまで死にたいフリを続けるのか。結局、外に行ったら行ったで楽しいのに。
それを突っぱねてまでも俺は死にたいフリを続けるのか。あー死にたい。ウソ、死にたくない。)

(あーだから考えるのやめろって。)

 結局いつもどおりの返事をして、俺は、とりあえず死にたいフリを一時中断して財布と鍵を掴む。
つうか、俺寝るとこだったんだけど。ブツブツ文句を言いながら家を出た。そんなに近くで飲んでるって事は確信犯だろう。
タクシーを捕まえて、タクシー乗ったよすぐつくよって言ってんのに電話の向こうの人は一向にぐだぐだと意味のわからない事を言って切ってくれない。
ほらもうついちゃうよ。ほら、もう、ついちゃった。通りに突っ立っている男を見つけて慌ててタクシーを止めた。
ちょっと待っててください、って言ったら嫌な顔をされたので財布を人質に置いて車を降りる。
なにしてんの、って声をかけたら、よっぱらいのどんよりとした目が俺を見つけて嬉しそうにほころんだ。

「なんだよ、その格好」

 笑いながら俺のジャージを引っ張って、あ、と動きを止めた。

「俺のじゃん」

 そうだっけ。道理で裾を引きずるはずだ。まぁいいじゃない。男の手を掴んでタクシーに乗り込もうとしたら、ぐいと引っ張られた。
振り返るとぼんやりとした顔がもごもご意味の分からない事を言うので、とりあえず金を払ってタクシーを見送る。
どうすんの、って見上げると、ぼんやりとした顔がぼんやりと照れた。おぉ、面倒くせぇな。


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