11/05/29 23:02:14.07 IESQ3gGiO
半生。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>351の続きで、エロありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
しばらく俺のシャツを濡らしてから、相棒は静かに口を開いた。
「……ブリシト、信じてくれないかも知れないけど、僕は本心から、君が欲しいと言ったんだ」
「でも力ト-、お前……」
「僕の頭は確かだよ、ブリシト。さっきの言い方はそりゃ、酷かったけど……あんな目に合って君に助けられて、真っ先に思ったんだ。君に、抱かれたいって」
溢れる涙をそのままに、相棒は顔を上げて俺を真っすぐに見つめた。目には真摯な光が宿り、嘘をついてるようには見えなかった。
「力ト-……本当にいいのか?そんな風に言うと俺、付け込んじまうぞ」
「いいよ。付け込んでくれて構わない」
本当に本当か?とさらに確認する俺の唇を、奴は自分の唇で塞いだ。
流れ込む涙と血の味がする深いキスを、俺達は夢中で交わした。
長く合わせていた唇を離すと、相棒が俺の耳に駄目押しの一言を囁いた。
「ブリシト、僕に君の全部を感じさせて……」
俺の理性はものの見事に、木っ端みじんに吹っ飛んだ。
お互いに脱ぐのももどかしく、俺は服を着たままで、はだけたシャツ一枚の裸の体に触れた。
顔や唇はもちろん、胸や腹、内股や膝の裏側にまで舌を這わせ、丁寧に撫で回した。いつにもまして相棒は敏感に反応し、たまらず喘いでは俺の名前を必死に呼んだ。
今夜は相棒の全てを味わいたくて、開かせた片脚を肩に乗せ、いきり立つモノを口に含んでやると、高い悲鳴を上げて驚いた。
イッてしまいそうだからやめてくれ、と俺の髪を握って哀願するのを、さらに深くくわえて拒んだ。
イクなら俺の口の中でイケばいいさと囁いて、ぴちゃぴちゃとしつこく舐め回し、強く吸い立てた。相棒は我慢し切れず、とうとう俺の喉に向かって欲望を放った。
音を立てて飲み下すと、泣きそうな声でバカ、と叫んだ。俺は笑って、恥ずかしさに火照る体を上から抱きしめた。
そのまま口づけると、自分の出したモノの味に少し顔をしかめたが、相棒は拒まず、大胆に舌を絡めた。
401:The green knight runs through night 後編2/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:06:05.41 IESQ3gGiO
俺はいつものジェルを使い、萎えた相棒の中心を扱いて大きくさせた。相棒の方も、震える手で俺のベルトを緩めファスナーを開けて、下着の中の俺自身を擦ってくれた。
喜んでまたキスを交わして、甘い刺激に酔いながら、俺はジェルまみれの中指を相棒の後ろに押し込んだ。
吸い込むように受け入れた中は、かなり熱くなっていた。
前を擦りつつ段々指を増やして行くと、濡れた下の口は淫らに音を立てて締め上げた。
念入りに抜き差しを繰り返す俺に、ブリシト、もういいからと相棒がその先を促した。かすれた甘い声で何度も名前を呼んでねだられ、上着を引っ張られて、俺はやっと奴から指を抜いた。
男同士だと楽らしい背後からの挿入を、顔が見えないからと嫌がるので、仰向けのまま腰の下に枕を入れて、受け入れる態勢を取らせた。
下げたズボンから飛び出した俺のデカい一物を見て、相棒は目を見張って喉を鳴らした。
サイドボードからゴムを取り出した俺に、そんなのいらないよ、と相棒が焦れた。だがいくらのぼせていたって、大人の男としての嗜みを忘れる訳にはいかない。
そう言うな、後で大変なのはお前なんだからと説き伏せつつ、ゴムをきっちり被せた。
「力ト-、入れるぞ。いいんだな」
「うん、いいよ、ブリシト」
「途中でやめようは無しだぞ、わかってるな力ト-」
「ブリシト、くどい男は嫌われるぞ」
そりゃマズいなと笑って後ろにあてがうと、相棒は息を飲んで頭を反らした。
ジェルを塗りたくった猛るモノを、脚を抱えた俺はゆっくり慎重に中に突き入れた。相棒は震えて枕の端を握りしめ、目を閉じて細かく喘ぎ続けた。
今まで十分に下準備をしていた甲斐あって、俺は難無く、待ち望んだ奴の奥深くに侵入を果たした。
埋め込まれたモノの大きさに相棒は身悶え、力を抜こうと懸命に呼吸した。俺はやっと征服出来た相棒の中が、想像以上に心地良いことに感動していた。
「あ、あ……ブリシト、大き……っ」
「力ト-、大丈夫か?ちゃんと息しろよ」
「ん、だ、大丈夫……はあっ」
全てを飲み込んで、ちょっと苦しそうに笑う相棒に、俺はたまらない愛しさを感じた。
「力ト-、つくづく無事でよかった。ここまでお前を開発したのはこの俺なのに、危うく横取りされるとこだったんだからな」
「か、開発って……バカ野郎!」
402:The green knight runs through night 後編3/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:09:26.07 IESQ3gGiO
「そろそろいいな、力ト-。動くぞ」
「……あ!ま、待って、待てよブリシト……う、ああ!」
止めようと腕を引っ掻くのに構わず、腰を緩やかに動かした。相棒は突かれる度に声を上げたが、痛そうな様子はなかった。俺は両脚を肩に担いで、深く浅く突いては引いた。
爛れるような熱さに俺は酔いしれ、絶妙に締め付けられて思わず唸った。相棒も涙を浮かべて感じまくっているようで、絶えず俺を呼んではよがり声を上げた。
「あう、ふ、ああっ、ブリシト、ブリシト……」
「力ト-、ああ、たまらない……お前の中、よすぎるぞ。イッちまいそうだ」
「い、い……イッて、いいよ……僕も、僕……あ、うあ……っ」
甘い声に煽られて上から激しく貫くと、相棒は俺の首を抱き寄せて唇を吸った。滴る唾液にも構わず、繋がったままで口内をむさぼり合った。
唇を離すと、相棒が俺を見てふいに笑った。
「なんだ、何かおかしいか、力ト-」
「ふふ、へ、変だ……グリ-ン・ホ-ネットが、僕を抱いてる……」
「変なもんか。ホ-ネットが抱くのは、相棒だけだ。お前だけなんだぞ、力ト-」
緑のスーツとコートを纏ったままの俺は苦笑して、からかう相棒の頬にキスした。
「僕だけ、か……そうだ、僕だってそうだよ、ブリシト」
「何がだ?力ト-」
「僕が欲しいのは、君だ。冷たいオモチャでも、タチの悪いオンナ男でもない、君だけだ。ブリシト、君だけが、僕を好きにして、いいんだ……」
相棒が殺し文句を吐くのは、これで一体何度目だろう。歓喜に満ち溢れた俺は、唇にまたキスをして、腰を大きく動かし打ち付けた。
容赦なく擦られ、甘い口づけを与えられて、相棒はもう限界だと首を振った。
「ブリシト……ブリシト!もうダメ、い、イク……あ、ああ!」
「力ト-……ん、ううっ!」
ぴんと背中をのけ反らせて相棒が果て、同時に俺も呻いて奴の中で達した。
衝撃に相棒の体は波を打ち、シーツの上に腕を投げ出した。目を閉じて意識を失ってしまった相棒に俺は慌て、肩から脚を下ろし、中の萎えたモノを引き抜いた。
外したゴムを結んでゴミ箱に捨てると、相棒の頬を軽くはたいて呼びかけた。
「力ト-、おい力ト-!しっかりしろ」
「……あ、ふうっ、ブリシト」
目を開けた相棒は、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。俺はほっとして、汗ばんだ額に手を当て、大丈夫かと尋ねた。
403:The green knight runs through night 後編4/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:12:17.08 IESQ3gGiO
「很吃驚……我、我想是不是死……!」
「うん、そうか。悪いがもう一回、英語で頼む」
「び、びっくりした……」
「気を失うほどよすぎてびっくりしたのか、力ト-」
笑って頬をつねると、相棒は俺の手を取り、指に軽く噛み付いた。
「いてっ!……力ト-、俺だってびっくりしたんだぞ。寝た相手に気絶されたなんて、初めてだ。あんなこと本当にあるんだなあ」
「妙なことで感心するなよ……」
呆れて俺を睨んだ相棒は、言葉の後に大きなあくびをした。眠いなら先に寝ていいぞと告げると、頷いて目を閉じた。
俺は相棒の体の汚れや汗を、蒸しタオルで軽く拭ってやった。
気持ち良さそうにしていた相棒は、いつの間にか眠りについていた。上から布団をかけてベッドから離れ、奴の飛沫で汚れたスーツを脱ぎ、パジャマに着替えた。
再びベッドに戻り愛らしい寝顔を眺め、額に軽いキスをした。相棒の黒髪を撫でて、本当に間に合ってよかったとあらためて安堵した。
朝になり、俺がシャワーを浴びてバスローブを羽織り部屋に戻ると、俯せに寝ていた相棒は唸り声と共に目を覚ました。
ふいに勢いよく顔を上げて、きょろきょろと周りを見回した。
俺ならここだぞ、と近寄って声をかけると、俺を見つめた顔はみるみるうちに赤くなり、再び枕に顔を埋めた。
「なんだ力ト-、照れてんのか?」
「……照れてなんか、ない!」
「照れるのはいいが、怒るのは無しだぞ。夕べ俺はお前に、何回もいいのかって確認したんだからな」
「ブリシト……わかってる。だからもう、何も言わないでくれ」
ベッドに腰かけた俺は、それならいいんだ、と俯せた頭を撫でた。
「力ト-、気分はどうだ?良くないようなら、うちの掛かり付けの医者に診てもらおう」
「……いや、大丈夫。後に残らないタイプの薬だったみたいだ。頭はしっかりしてるよ」
顔だけをこちらに向けて答えた相棒は、確かにいつも通りの様子だったので俺は安心した。飯を食うかと訊くと、先にシャワーを浴びたいと答えた。
頷いて腰を上げると、ベッドから下りて歩こうとした相棒が、体のバランスを崩してすっ転んだので俺は驚いた。
「おい力ト-!何やってんだ」
「……おかしい。脚にうまく力が入らない」
床に手と膝をついて、相棒はしきりに首を傾げた。俺はシャツ一枚の体を抱えて、ベッドの上に戻してやった。
404:The green knight runs through night 後編5/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:15:16.96 IESQ3gGiO
「力ト-、どうもこれは、俺のせいだな」
「どういうこと?」
「つまり、激し過ぎたんだ。俺は精一杯、優しくしたつもりだったんだが……腰を抜かされたのも、お前が初めてだ。まあ、お前が慣れてないせいでもあるんだろうな」
初めて尽くしだな、と陽気に告げた俺に向かって、相棒は枕をぶん投げやがった。
「笑ってる場合か。これじゃ僕はとても身が持たない」
「大丈夫だ力ト-、次は気を付けるからさ」
「どうだか……君の大丈夫は、当てにならないからな」
顔に命中した枕を手渡すと、相棒はそれを抱きしめて何やら思案した。なんかかわいいな、とその姿を呑気に眺めていた俺に、奴は向き直って言った。
「ブリシト、提案なんだけど、その……入れるのは毎回じゃなくて、時々にしないか」
「時々って、どの程度だ」
「……月一回」
「月一回だあ!?そりゃ殺生だ、力ト-!」
大いに不満を訴えると、相棒は膝に乗せた枕を拳で叩いて言い返した。
「だって!君はいいかもしれないけど、度々歩けなくなるようじゃ僕が困る。特に夜のパトロールにひびくだろ」
「だから次は加減するって!頻繁にってのは無理だとしても、月イチはあんまりだぞ」
「どうせ君は女の子と遊ぶんだから、僕との……行為が少なくたって、別に構いやしないだろ」
「それとこれとは別問題だ!せっかくお前が許してくれたのに、心ゆくまで愛してやれるのがたったの月イチだなんて、そんなの切な過ぎるじゃないか!」
俺の心からの悲痛な叫びに相棒は目を見張り、黙ってまた何か考えた。
「じゃあブリシト、何回ならいいんだ」
「週イチだ!」
「……無理」
「じゃあせめて、月に三回」
「それもダメ」
押し問答を繰り返した結果、俺が大幅に譲歩して月二回で落ち着いた。相棒はまあいいかと納得したようだが、俺はそんな約束をしおらしく守る気はさらさらなかった。
いざベッドに入ればこっちのものだ、口車と押しの一手で、もうちょい回数を増やしてやろう。そう企んでいるのが顔に出たのか、相棒が怪訝そうに俺を見た。
「……ブリシト、何ニヤついてる」
「力ト-、さっきの俺達のやり取りって、痴話ゲンカ……いや、ちょっと夫婦ゲンカみたいだったよな」
いっそうニヤついた俺の顔に、また枕が飛んで来た。
405:The green knight runs through night 後編6/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:21:30.90 IESQ3gGiO
一日休んで出社した相棒に、秘書が一体どうしたのかと心配そうに尋ねて来た。
奴が口を開くより早く、こいつは女とシケ込んでてちょっと痛い目に合ったんだ、と俺が答えた。秘書はあらそう、それはお気の毒と返し、相棒に呆れたような一瞥をくれて仕事に戻った。
相棒は俺の腹に肘鉄を浴びせ、弁解しようと慌てて秘書の側に駆け寄った。俺は腹を摩り、大笑いしてその光景を眺めた。
俺があの女の会社との取引を断ると切り出すと、事情を知らない秘書は、契約違反で訴えられることを危ぶんだ。
だが先方に電話した際に、うちの経営パートナーの意見で方針が決まったと告げると、相手はしぶしぶと承諾し、訴えはしないとの確約を取り付けた。
電話を切った後、そういえばあのスケッチは捨てたのかと相棒に訊くと、今後の戒めとして残しておくよ、と神妙に答えた。
俺なら即破り捨てるんだが、東洋人の発想はやっぱり違うんだなとしみじみ思った。
後日あの女には、薬物法違反で警察の手が回った。
俺達が逃げた後、あのビルに入り込んだホームレスが、人が倒れているのに驚き通報した。駆け付けた警察は女の様子と、グリ-ン・ホ-ネットが襲撃した事実について不審を抱いた。
そして捜査を進めた結果、女の会社が裏で、あらゆる種類の違法な薬を扱う商売をしていたことが明らかになった。
ライバル社にすっぱ抜かれたのは実にマヌケだが、社長室でその記事を見た俺は、ざまあ見ろと快哉を叫んだ。
相棒に新聞を渡し、こういうのを怪我の功名って言うんだよなと笑うと、奴は複雑な顔をして、そうかもね、と返した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
読んで下さってありがとうございました。デブイデ楽しみ!
406:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 1/4
11/05/30 01:19:59.38 zAAORjfF0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )感想励みになります!感謝!!忍法帖規制で短いです
彼曰く、『俺って有名人だから。創造都市でも満月都市でも来光都市でも
善の英雄なんだぜ』と、ふんぞり返っていた。
変なヴァンパイアと変な人間の間に、友情がわずかに生まれていた。
「え、聞いてないの?」
バルドが、つまらなそうにつぶやいた。
407:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 2/4
11/05/30 01:37:17.70 xjHGUKd4O
「あ、ああ、すまない。考え事をしていた」
「でもホント、この人普通のヴァンパイアとは違うよね」
謝るヴァンパイアを前に、ズバッと魔法使いの女は言った。
盗賊も頷きながら、バルドをみる。
「面白いじゃん、可愛いじゃん?」
408:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 3/4
11/05/30 01:41:56.77 xjHGUKd4O
その言葉にふんぞりかえりながら、バルドは言い放った。
「そう思うバルドも、十分人間としておかしいと思う」
ヴァンパイアがそう告げると、ほかの二人はくすくすて笑い出す。
ちなみにバルド、という名前を呼び捨てに言えと言いだしたのは本人だった。
409:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 4/4
11/05/30 01:48:55.18 xjHGUKd4O
最初は『バルドさん』と呼んでいたが、くすぐったい、おかしい、と、さんはやめろと言い付けたので、呼び捨てにしている。
当然だ、あの傲慢なヴァンパイアが、尊敬語で人間の名前を呼んでいる。
□ STOP ピッ(略)すみません、規制で携帯からになりました…。
410:風と木の名無しさん
11/06/02 00:02:47.09 mQtqTbPUO
まとめも避難所も落ちてる?
411:風と木の名無しさん
11/06/02 02:04:03.00 5sO9v8V20
入れないね
412:風と木の名無しさん
11/06/02 16:03:04.88 xVlFDtAs0
>>410-411
あせって見に行ったら入れた
良かったー
土星に引き続き、ココまで閉鎖されたらどうしようかと
413:BECK 南×平 1/6
11/06/02 21:22:12.80 JX2mb/ZT0
専スレで盛り上がったので投下します
今更なカンジですが別句原作6弦×4弦です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「平くん、最近ピアスしてないよね」
「んー?」
たまり場になっているおれの部屋で、テレビに向かってコントローラを操作している平くんの背中を見つめながら声をかけた。
目線を彼の右耳に注いで。
右手にスコッチウイスキーの瓶。左手に氷の入ったグラス。
背中を向けたままの平くんはおれを振り返りもしないで生返事。ゲームに集中してんのかな?
彼の右側に腰を下ろして、胡坐をかいて、床に置いたグラスにスコッチを注ぐ。
ちらりと平くんがおれのほうを意識した気配。途端画面からクラッシュ音。
「あー」
「いっつもここでやられるんだよな」
「へー」
コントローラを放り出した平くんがやっとこちらを向いた。
「さっき、なんか言ってなかったか?」
「ああ」
おれはグラスの中身を呷って空にすると、それを床において平くんの肩に手を回した。
一瞬戸惑うみたいな目の色に、なんとも言えない独占欲みたいのがこみ上げてくる。
思わずこぼれる笑みを隠すみたいに平くんの耳元に口を近づけて言った。
「ピアスしてねーなって」
「……なくしたんだ」
「新しいのすればいいじゃん」
「気に入った奴がなかなか見つからないんだよ」
414:BECK 南×平 2/6
11/06/02 21:24:31.03 JX2mb/ZT0
おれの手から逃れるように平くんは距離をとって座りなおす。
それから空になったおれのグラスにスコッチを注ぎ、それを口にした。
ちょっとむせるみたいに咳き込んで、なんか慌ててる風情が見て取れる。
おれの腕がまた平くんの体に伸びて、抵抗で固くなる体を無理矢理引き寄せて、背中側から羽交い絞めに。
睨みあげられても全然怖くなくて、むしろやっぱりかわいいななんて思っておれは舌先で平くんの右耳を舐めた。
「なにしてる」
「んー?」
結構筋肉質で男っぽい体してるくせに、こうやって抱きしめたらおれの腕の中すっぽりサイズとかたまんねぇ。
夢中でおれは耳にキスして。
そのたび跳ね上がる平くんの体を逃げられないように抱きしめた。
……でもそんな風に捕まえてなくても、おれがキスするたびになんとなく従順になってくのが分かる。
こういうとこも、なんかいい。
ちょっとアルコールも入ってるし。
おれはだんだん大胆になって後ろから平くんのシャツの中に手を突っ込んだ。
そしたら流石にやめろって目でおれを見たんだけど、
さっきみたいにピアスの方の耳を舐めてたらおとなしくおれに体を預けてくるし。
こらえるみたいに声を押し殺してるのも分かる。
415:BECK 南×平 3/6
11/06/02 21:26:02.14 JX2mb/ZT0
「ここ、弱いよね」
「……っ」
「まだちゃんと穴開いてるんだ」
おれの腕にしがみつく平くんが、こらえ切れないみたいに声を漏らす。
「ぅ……あっ」
「気持ちいいんだ」
本気で嬉しくなってきて、思わず歌うみたいな口調になってしまう。
抵抗されないうちに前から抱えなおして、押し倒して耳朶を軽く噛んだ。
「……ん、あ」
柔らかい部分を楽しむみたいに唇でもてあそんで、そして舌で強く舐める。
その感触にこっちも気持ちよくなってくる。
平くんが抗議の目で睨む。
鋭い視線のくせになんだか潤んでて、そんな目で見たって全然怖くないよなーって思った。
至近距離で感じる平くんの息遣いは余裕がないみたいに思えて、
それが余計な考えや理性はすべて取っ払ってしまえって、
脳内を支配する欲だけを追い求めていけって言われてる気がしてくる。
「りゅう……すけ」
「ん?」
おれにすがりつくみたいに腕を回した平くんが、やっと聞こえるくらいの小さい声で呼ぶ。
「なに?」
問いかけるおれに、平くんはさっきと変わらず鋭い視線を向けたまま。
「ん?」
もう一回口を開きかけた瞬間、平くんはおれを強く引き寄せてキスしてきた。
ダイレクトに口ん中に舌突っ込まれてかき回されて、その途端おれの中でちょっとだけ残ってた理性がどっか行ってしまった。
畳の上に抱き合ったまま転がって、下になった平くんをそこに貼り付けておれは夢中で舌で応戦した。
さっきお互い飲んだアルコール混じりの息が脳髄を麻痺させる。
熱い口内の温度。平くんのおれをその気にさせる舌使い。
分かってたけどおれは到底この人にはかなわない。
416:BECK 南×平 4/6
11/06/02 21:30:16.16 JX2mb/ZT0
下から突き上げながら、おれは自分の体の上の彼を見つめた。
顔を隠すように俯いたまま、声を押し殺すみたいに唇を噛んでる。
汗ばんだ首筋から手を回して、薄い色の髪の毛をかきあげてやる。
わずかにおれに注がれる視線。でもそれはすぐにそらされる。
確かに感じているはずなのに、なんでこう強情なんだろ。キスで誘ったくせに。
「平くん」
名前を呼ぶとまたちらりとこちらを見上げる。そのままの姿勢で、おれはわざと腰を使う。
「……っ」
そうしてやると、息を吐いて倒れこみそうになる自分を必死でこらえてる。
「気持ちよくない?」
「……」
「痛くない?」
「……」
「なんか、言ってよ」
頭を振るだけで何も言わない平くんの、顎を掴んで無理矢理上を向かせる。
目は潤んでるのに、おれを睨む色の鋭さは変わらないまま。
引き寄せて、右耳を噛む。目線を落とすと耳朶の真ん中にピアスホールが見えた。
そこを舌先でつつくみたいに悪戯すると、抱き締めた体が目に見えてビクリと震えた。
「あっ……あ、……っ」
背中に回った腕が強い力でしがみつく。おれを受け入れる体内もおんなじくらい強くおれ自身を締め付けた。
417:BECK 南×平 5/6
11/06/02 21:32:42.20 JX2mb/ZT0
「平くん、エロいよ」
耳朶を舌で攻めながらおれは言う。
その言葉に平くんは頭を振って否定するみたいな態度。なのに体は全然違うみたいだ。
「すっげぇぎゅうぎゅうしてる」
「……うるせぇ」
やっと返事くれたと思ったら。でもそんなんでもなんか可愛いし嬉しいんだよな。
思わず笑ってしまって、また平くんに睨まれた。けどもうこっちも限界。平くんを抱えて寝かせてのしかかる。
「う、あっ」
角度が変わったせいか苦しげな声を上げる平くんの耳元をまたキスで攻めて、そしたら顰められた眉根がちょっと緩んだ。
なんかホッとする。ゆっくりと手を下半身に伸ばして、確かに反応している平くん自身を掴んだ。
怒ったような顔で一瞬こっちを見るけど、無視して続ける。濡れた先端から擦り付けるみたいに扱いた。
「……んんっ」
平くんがかすれた声をわずかに上げた。余裕のない表情がおれを見据える。きっとおれも同じような顔をしてるんだろう。
浮き上がった腰を押さえつけて、自分の欲を吐き出しにかかった。
自分の目元を隠すみたいに、平くんは腕を顔に回す。それをゆっくり剥がしておれは平くんを見下ろした。目が合う。
「……気持ちいい?」
「……」
頷いた平くんにおれは心底安堵する。
真っ白になりそうな頭の中で、
自分の欲より目の前のこの人に快楽を与えられているかの方が気になっていた。
「竜介」
「……ん?なに」
暗闇の中で、ライターを擦る音がして、その周りだけがぼんやりと明るくなる。
一瞬そこだけが照らされて平くんの顔が浮かび上がった。珍しくタバコなんて咥えてる。煙のにおいがゆっくり漂ってきた。
「穴の中をな」
「え?」
「……ピアスの」
「ああ、うん」
言葉の意味が一瞬分からず戸惑ってしまう。
418:BECK 南×平 6/6
11/06/02 21:35:37.00 JX2mb/ZT0
「そこを何かが通りぬけてく感覚って分かるか?」
「え、……いやわかんない」
おれの答えに、平くんは喉を鳴らして笑ってる気配。
「なんでピアスしてないんだ?って聞いただろ?」
「あ、うん」
「おれはその感覚が結構好きなんだ」
「……」
「他にない感じだし」
「……」
「だからだよ」
平くんの言葉を頭の中で反芻していて急に分かった。
別に深い意味なんてなくて目に付いたから話題にしたピアスのことだったけど、実は平くんはそこがめっちゃ感じるんだってことだよね。
……なんか嬉しい。
またひとつ、これで平くんのことを理解した。
それにしても
「なんかすごいエロいこと言ってない?」
「は?」
「だって、穴の中を通り抜けてく感触なんて」
「……」
平くんが盛大にため息ついた音がした。
それから暗闇の中で立ち上がって、身支度する気配。
あーあ、なんか余計なこと言っちゃったか。元々シモネタあんまり食いついてこないもんな。
とっとと衣服を着けたらしい平くんは、楽器をかついで入り口へ向かう。
本気で帰っちゃうの?
おれは慌ててシーツを腰にまきつけて立ち上がった。足と布がもつれて転びそうになる。
「ちょ、平くん、マジで帰るの?」
しまった!配分間違えて終わりませんでした_| ̄|○
続きます…!
419:BECK 南×平 6/6-2
11/06/02 21:37:43.04 JX2mb/ZT0
がらがらと開いた引き戸。そこから空を見上げたら満月だった。
真っ暗な部屋では見えなかった平くんの顔が月の光に照らされてうっすら見えた。
入り口に立ち止まって半分振り向いた彼の手をおれは捕まえる。
平くんはおれから目をそらせたまま、何か言いたげに唇を開いた。でも何も言わないで、口を閉じて。
それからゆっくり視線をあげて「じゃあ、またな」って言ってそっと手を引いた。
「うん」って答えたおれにさっさと背を向けて。
平くんの足音が遠ざかっていくのをおれはそのまま見送っていた。
なんだかいつも別れる時は物足りない気持ちになる。
「またな」っていういつもの挨拶を、また会えるんだって変換してちょっと嬉しがったり、本当は何を言いたかったんだろうってちょっと不安になったりする。
それからさっきまでの時間を思い出して、幸せになったりも。昔よく右耳にはまってたシンプルなシルバーがなくなったのに気づいたのって
やっぱおれが平くんのことばっかり見てるからなんだろうな。
なんでだろう?
やった後に相手のことこんなにも考えるなんて、音楽のこと以外にこんなにも執着するなんてのも、普段のおれにはありえない。
切ないけど嬉しい。ため息が出るけどわくわくしてる。
この気持ちの種類はとっくに知ってる気がするけど、今は知らん顔していたいんだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングミスってしまった
申し訳ありません!
420:風と木の名無しさん
11/06/03 09:01:48.80 g6qJWPjl0
>>413
GJ!
体ら君の強情だけどドエロな感じがたまらんかったよ
やっぱりこのカプが好きだなー
久しぶりにhshsしました、ありがとう
421:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 1/5
11/06/03 23:43:02.92 d79woqV70
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )前回はLv1で辛かったけど今回は少し長めに!
それを聞いてひとしきり皆に笑われたが、ヴァンパイアはあまり笑わなかった。
というより、困惑して笑えるどころではなかった。
「うん、男に可愛いは褒め言葉じゃないよ、バルド」
「そういう問題ではない…」
おかしいのはバルドだけではなく、類は友を呼ぶという日倭のことわざにある通り、
この二人もヴァンパイアを前に、怖がるということはしなかった。
全く殺気など見せず、常に困った顔をするヴァンパイアを見ているうちに、警戒も薄れたらしい。
話を聞けば、バルドがここ、悪属性の日倭の首都に家を構えているのは、日倭が好きという理由だけ。
ガルズヘイムはベッドやレンガのうちが多いが、日倭はその逆で、
木造に畳や落ち着いた部屋が多く、寝るときは布団を使う。
日差しが入りやすい作りをしているので、
ヴァンパイアにとってはつらいが、少し眠くなる程度で大して害はなかった。
「あ、お前また眠ってる」
422:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 2/5
11/06/03 23:45:05.56 d79woqV70
バルドが、しっかりしろ、と彼の肩を揺さぶるが、彼はすっかり睡魔に支配されていて、うんうんと何度か頷いてから、ゆっくり立ち上がる。
「…眠い…。あの部屋で寝てていいか?」
あの部屋、というのは例の物置に使われていた部屋である。
バルドはそこを彼の部屋にと与えた。
しかしこの豪華な部屋に、バルド一人しか住んでいないかったらしい。
仲間もそれぞれ家を持っていて、さすがに三日たって、バルドが殺されていないか心配して見に来た程度。
そこにたまたま座って話していたのがヴァンパイアとバルドだった。
「んじゃ寝てれば?」
「…そうする…」
ごしごしと瞼をこする。
半分眠りそうな彼を支えて、バルドが部屋まで連れて行ってやる。
こういうところは意外に世話焼き。
さすが特徴が几帳面なだけある。
その割には物置兼ヴァンパイア部屋は汚いが。
目を覚ましたのは夜中だった。
423:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 3/5
11/06/03 23:47:19.89 d79woqV70
なんとなく寂しくなって、隣にあるバルドの寝室まで足を運んだ。
もう仲間は去ったあとで、バルドは寝ているかと思ったが、彼は夜更かしが好きだった。
そのおかげでここ三日は夜に話し相手になってくれている。
くれている、という思い方に、モンスターとしての自覚はないのだろう。
「バルド」
「お、起きたか」
バルドはごろりと布団の上に転がって、のんきに煎餅を食っていた。
手元には日倭の文字で書かれた書物である。灯籠の明かりだけをつけて、今まで煎餅を食いながら書物を読んでいたようだった。
「…寂しい、何か話してくれ」
その枕元に彼が座ると、バルドは本を閉じる。
何の本かはわからない、なぜならガルズヘイムヴァンパイアである彼には、ガルズヘイム国以外の文字の読み書きができないからである。
「面白い話してやろうか」
うんうん、と小さくうなずく彼に、バルドは昔語りをしだした。
「あのな、お前知ってる?異世界の噂話。有名なんだけど」
「?」
「この本に書かれてあるんだよ。これは吟遊詩人が記したものでな、異世界から買ってきたんだ」
424:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 4/5
11/06/03 23:49:52.09 d79woqV70
「?」
「この本に書かれてあるんだよ。これは吟遊詩人が記したものでな、異世界から買ってきたんだ」
その本をのぞくが、いまいちよくわからない彼に、バルドは続ける。
「異世界カルアディアの悪の英雄、ロウッドとその仲間のレインの話。
あくまで噂話程度なんだけど、お前をつれてきた理由がこの本を読んだからってのもある。長くなるぞ、よく聞け」
その言葉に、すっかり頭のさえた彼は、何度も頷いた。
「昔々、まあ、もう二百年も前の話さ。とはいってもこの世界と時間の進み方が違うから、どれくらい違うのかわからない。
ロウッドはいつも一人だったんだと、ロマールの戦士だったそうだ。退治も討伐も暗殺も誘拐もすべて一人だった。
ところがある日突然仲間を連れて旅に出だした。その仲間とは、この世界の人間にあり得ない髪の色と眼をしていたってさ。
ローブを着こんで、精霊の槍をもった、男。それが、ヴァンパイア。と、いう噂。
その二人によって三段階目のあのくそ強いムシュフシュが倒されたのはすげぇ有名な話なんだ!」
興奮気味に話すバルドは子供にでも帰ったかのようだった。
ムシュフシュといえば地方最強モンスターで、三段階の強さがあることは知っている。
最初の段階はあまり強くないが、三段階目は鬼のように強い。
425:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 5/5
11/06/03 23:52:05.30 d79woqV70
たった二人の人間が、いくらいい装備とはいえ、戦いに挑むのは無謀に近い。
それを倒したというのだから、名前が世界を超えて異世界にまでに知れ渡るのは当たり前だ。
「ヴァンパイアと旅だぜ?で、ムシュフシュとの戦いによって、ロウッドという悪の英雄は大怪我をして、
助からないといわれていた。ところが、たった六日で完治、傷跡さえなかった。
しかも、目の色が青だったはずなのに、赤に変わっていた。
赤の目の色といえばヴァンパイアの特徴だ。それ以降、その二人は二十年は旅をしていたのに、
年齢が全く変わらない。だけどある日突然いなくなった」
「ヴァンパイアと…旅」
彼にとっても信じられない話だった。
確かに周りのヴァンパイアはプライドがとても高く、人間とともに暮らすことや旅をするなんてありえない。
それゆえに、話に深く聞き入った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )続きます。懐かしいキャラの名前を出しました。インデックスにあるやつです。
426:風と木の名無しさん
11/06/04 02:01:44.13 jJTgdynpO
ヴァンパイア可愛すぎる
シリーズものに入ってるキャラが出てきて懐かしい!
427:風と木の名無しさん
11/06/04 17:48:49.54 YeCH5zZm0
>>421
ヴァンパイアかわいいよちくしょー!
毎回萌えさせていただいてます
428:D30とド荒 1/3 ◆CUcB0p/PMY
11/06/04 18:13:15.46 shMIMn2x0
里予王求 D30とド荒です
同ジャンル投下は数名の方がいらっしゃいますので
テンプレに基づきサブタイトルをつけようと思ったのですが
どうにも思いつかなかったのでトリップをつけました。
シリーズ物ではありませんが同ジャンル過去作品一覧 31-415 37-60 44-401 50-501
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
しゃちほこドームでのバイトは、時にドラマを見てしまう。
滅多にない事だけれど。
あ…盛野さんだ。ラッキー…
正直こういう所でバイトするのって、選手目当てだったりする。
働いてみれば試合も見れないし思っていたのとは全然違うけど、
たま~にこういう、裏ですれ違ったりするのが嬉しい。
まぁ、何食わぬ顔で通り過ぎるだけなんだけど…仕事中だし、相手は試合前のピリピリした時だ。
握手だサインだなんてのはもちろん禁止。
角を曲がった所で、つい隠れて盛野さんを目で追ってしまった。
トイレか。
ん?向こうから来る青いのは…
盛野さんとド荒がトイレ前ではち合わせた。珍しい光景に笑ってしまう。
盛野さんに「俺が先」と言われたド荒が「漏れちゃう」のポーズをする。そうだ、確かこの二人仲良いんだ。
微笑ましいやりとりについ、目が離せなくなった。
そういえば最近不調続きの盛野さん…よかった、笑顔だ。
結局盛野さんが先に入って、出てきたとたんにド荒が慌てて入って行った。
…あれ?
盛野さんが帰らない…。
ド荒を待ってる…?
429:D30とド荒 2/3 ◆CUcB0p/PMY
11/06/04 18:14:06.42 shMIMn2x0
ドアを開けてまだ居る盛野さんに大げさにびっくりするド荒。二度見、三度見、四度見あ叩かれた。
真顔で何も言わない盛野さん。……おいド荒……お前、出番だぞ。
僕は仕事を忘れ一人壁に隠れながらグッと拳を握り、二人を見ていた。
知ってるんだ。
見ちゃったもん。
泣いてなかったけど、泣いてた。
毎日毎日、終わりには沈んだ顔。次の日の朝には笑顔になって頑張っていたけど。
知ってるんだ。
「お前昨日バク転成功したな」
昨日を切り捨てて笑顔になる事がどれだけ大変か。
切り替え?日々は続いているのに。
「ずっと失敗ばっかりだったのに」
応援の声、罵声、野次。色々聞こえる。きっとお客様が思っているよりはるかにここにはよく響く。
期待に応えられない日々は、どんどん積み重なって盛野さんにのしかかっていた。
ド荒は一生懸命ジェスチャーで応えている。
「練習?ふーん。お前が?」
差し伸べられる手も握れなくなっているのかもしれない。
それでも、できる、できると暗示をかけて。
「練習したんだ。あっそ。……俺も練習したいな」
練習してるじゃないですか。あんなに。
…それは、二軍で、ってこと?
「…。」
お前なんか落ちちまえ、この役立たず。足引っ張るんじゃねぇ
そんな声は毎日聞こえる。
それでも監督は盛野さんを落とさない。
落とさない理由は、わかる。だけど、もどかしい気持ちにもなる。
落ちない事の有難さと、いっそ落ちてしまえたら…そんな挟間に盛野さんは居た。
黙ってしまった盛野さんを、ド荒はジッと見ていた。
そしておもむろに手を伸ばし、盛野さんの頭に触れる。
いいこ、いいこと、撫でた。
430:D30とド荒 3/3 ◆CUcB0p/PMY
11/06/04 18:14:54.13 shMIMn2x0
その手はすぐに払われた。
「ずうずうしく触ってんなよ人の頭を。」
めげないド荒は盛野さんを指差すとその手を拳にして自分の胸に当て、トントンと叩いた。
そして、親指をたててgoodのポーズをした。
(おまえの きもちは おれが わかってる だいじょうぶ)
「……あっそ。お前にわかられてもね。」
なにいってんだよ おれがいるだろ~??
とでも言うように、ド荒がずうずうしく盛野さんの肩を組んでもたれかかりお腹を叩いている。
あ、叩かれた。
あ、蹴られた。
大げさに痛がり、指を刺して抗議するド荒。
蹴られた足を引きずり、骨が折れたとアピールする。
相手にされないとわかると、盛野さんを指差して、泣くポーズをして、プーと馬鹿にして笑う。
当然また蹴られた。
盛野さんを指差し、自分を指差し、腕をパンパンと叩く。
(おれは おまえより うでがある)
盛野さんと自分を交互に何度も指差し、バッティングのポーズ。
(かわりに うってやろうか?)
「やっぱ天狗だわ」
よかった…盛野さん、めっちゃ笑顔だ…。
二人はもつれながら、叩き合いながら、グラウンドへと出て行った。
その日の三打席目、盛野さんは数試合ぶりにライトスタンドへ奇麗なアーチを描き、
その打点が決定打となりチームを勝利へと導いた。
ヒーローインタビューに答える彼に、スタンドからは拍手と割れんばかりの声援が降り注いだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
打てますように。
431:風と木の名無しさん
11/06/04 21:36:36.43 Heooele20
>>428
(・∀・)イイ!
432:風と木の名無しさん
11/06/04 22:14:02.01 yvHNSSeI0
>>428
おつ!泣ける…!
433:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 1/5
11/06/05 07:02:27.12 OMZgMJ2F0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )感想嬉しいです!マイカプですがよろしくです
「が、それから百年たって、名前も外見も、吟遊詩人が語るそのムシュフシュを倒した英雄そっくりの人物と、銀の髪と赤い眼をローブで隠した男二人がまた旅に出た。
それからまた何十年か単位でいなくなっては現れるを繰り返した。人間は百年たてば大抵死んでるさ。だが吟遊詩人は人間ではない、
一説では神と関係があるとまでもいわれている。まあそこはいい。その吟遊詩人が見る限り、何度も現れるその男二人は、いつまでも老いない。意味わかる?」
「ヴァンパイアが、人間を助けるためにヴァンパイアにした…生命力は桁違いだから」
頭に浮かんだのはその答えしかなかった。
助からないとされた大怪我が、たった六日で治ることはまずあり得ない。…ヴァンパイアでない限り。
「当たり。だけど本人たちは今でも旅を続けていて、素性は不明、しかも仲はすごくいいときた。
けど同性結婚もできる世界なのに、結婚しない。さてなんでだ」
ズビシと人差し指を、ヴァンパイアの目の前に持っていく。
ヴァンパイアは少し身を引いて考える。
「本人たちにその気があるのであれば、ヴァンパイアに戸籍はなく、人間のほうは時間が過ぎされば死亡とみなされて、戸籍抹消されるから、できないだけ?」
人間の世界に詳しいわけではない。
ただ、人間が持ってきたガルズヘイム製の書物を持ち去って静かに読んできたので、ある程度のことは知っている。
彼は読書が趣味だった。
434:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 2/5
11/06/05 07:05:01.69 OMZgMJ2F0
大抵のヴァンパイアは、人を殺し、血を啜ることを快楽とするが、彼は全くそういうところがなかった。
だから、いま目の前に獲物であるはずの人間がいるのに、素直に話を聞いているのだ。
「それも当たり。すごいよな、人間とヴァンパイアがそこまで心をかよわせる。
確かにヴァンパイアという種族はかなり美形が多いな。それだから傲慢でうざったい性格してるんだけど、
お前は、見目も綺麗なんだけど、性格おかしい。気が弱すぎる。普通人間に謝罪だのお礼だのしないぜ?仲間も不思議がってたけど、よくそんなんでボスクラスモンスターしてたな」
「バルドは、寂しくならないのか?」
一つ間をおいて、バルドは返事をした。実に間抜けな声だった。
「あ?何が」
ヴァンパイアが人間と心をかよわせることはとても珍しいが、その話が本当なら…。そう思い、ヴァンパイアはバルドの手を握った。
「だって、そのヴァンパイアも寂しかったんじゃないか。だから人間を助けて不老不死にしてまで一緒にいたかったんだと思う。バルドは、
こんな広い屋敷に一人でいて、いままで寂しくなかったのか」
頭を垂れて、ヴァンパイアは続けた。か細い声で。
「私は、あのダンジョンにいてもどこにいても、寂しくて仕方なかった。先ほど目が覚めた時も、近くに誰もいなくて寂しかった」
孤独なヴァンパイア。
どこにいても、たとえ取り巻きがいても、人間が恋しい。
人間になりたい。
その話の内容に出てくる二人はきっと楽しい人生を送っているはずだ。
死ねないというつらさも、二人でなら乗り越えられるかもしれない。
435:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 3/5
11/06/05 07:07:49.46 OMZgMJ2F0
それすら羨ましい。寂しがりやで甘えん坊。
まさにその言葉がしっくりくるような性格をしていた。
しゅんとして目を伏せる彼に、バルドは手を伸ばして頭を軽くなでた。
それはまるで、眠れない子供をあやすかのようだった。
「俺は平気。でもお前が寂しいなら、一緒に寝る?」
軽い冗談のつもりだった。
すぐに否定されていると思っていたが、ヴァンパイアの出した答えは違っていた。
「うん」
目を若干輝かせて、頷いた。
すぐに握った手を離して、ヴァンパイアは隣の部屋から布団を持ってきた。
ちゃっちゃと広い部屋の、バルドの隣に布団を敷く。
「面白いやつ、普通なら人間と一緒に寝られるかなんて思わない?」
そう切り返してきたが、ヴァンパイアは十秒くらい考え込んだ後、すぐに答えた。
「むしろ嬉しい」
「変なの。そうだ、お前って名前あんの?」
突然の言葉に、ヴァンパイアは記憶を探るが、生まれて気がついて現在まで、名前を決められたことはなかった。
そういえば先程の書物に載っていたとされるヴァンパイアには名前が付いていた。
ということは、自分で決めたか、人間につけられたかのどちらかだ。
436:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 5/5
11/06/05 07:10:22.39 OMZgMJ2F0
名前がほしい。仲間がほしい。一緒に話ができる相手がほしい。
「ない、だから」
「?」
「バルドがつけてくれないか」
「ん~。本によるとさ、ヴァンパイアの名前、ロウッドってやつがつけたらしいんだ。まあこれもあくまで噂。最初から名前あったのかもしれないけど、
雨の日に仲良くなって、それでレインって名付けたんだと。レインは、その名前をえらく気に入っていたそうだ」
ヴァンパイアは思わず外を見た。
開けられた窓からは、雨が入る兆しもなく、桜が顔をのぞかせていた。
満開の桜を見たのは、初めてだ。
拾った本に、日倭にある桜は美しいと、挿絵入りでかかれていた。その絵とほとんど一緒、だから桜だと思った。
雨は降っていないし、快晴とまでも行かない。
「俺、日倭の血が入ってんだよね。祖父が日倭人で、祖母がガルズヘイム人>
小さいころから祖父が刀の手入れしてるの見て育ってさ。もうその頃すでに家族はガルズヘイムにいたんだけど、
日倭のよさとか語るんだ。悪人の多い街なのに、雰囲気はほかの国をしのぐものがあるって。だから俺、日倭の名前つけるけどそれでいい?
ガルズヘイム人なのに、日倭の名前だけど本当にいいの?」
更に頷いて、ヴァンパイアはまっすぐ相手の目を見た。
日倭の名前というと、漢字が多い。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
437:全て彼のせい 1/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:50:28.45 Eu0ntPXB0
新359むそー6の早熟→叩き上げ。801要素低めのBADEND。人が死にます。
一応叩き上げの列伝ベースですが99%デタラメです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トウガイ、ドコマデモワタシノジャマヲスル...
爆発にも似た轟音と共に門扉が吹き飛んだ。
俄かに速まる鼓動を感じながら、すい、と手を上げる。浮き上がった剣が己を守るように音もなく整列した。
木っ端だの鉄屑だのが混じった砂煙を風が払った後には、予想した通りの姿があった。
九尺にも届かんばかりの巨躯。その身すら超えるほどに巨大な螺旋形の槍を、片手で軽々と振り回す強靭な筋肉。額に巻いた布の下から覗く鋭い眼光もあいまって、その姿は歴戦の勇士さえ圧倒する。
もっとも、今さら恐れなど抱きはしない。そう言い切れるだけの時間を共にしてきた。
何度も肩を並べて戦った。厳つい相貌とは裏腹に、無用の争いを好まぬ、心根の優しい男であることも知っていた。どれほど近くにあろうとも、その槍が己に向けられる心配など必要なかった。
……昨日までは、の、話だ。
軽く息を吸うと、喉がひくりと音を立てた。何か言おうかと思ったが、やめた。普段通りの声を出せる自信がなかった。
彼の喉元を見つめながら、悟られぬよう息を整える。顔を直視することはできなかった。彼はきっと、己が予測した通りの表情をしている。
「なにゆえ魏を裏切った、鍾l会殿?
いや……鍾l会」
ああ、やはりだ。表情を窺う必要さえない、思った通りの声音。また、喉が塞がる感覚がした。
彼には理解できるはずもない話だ。多分、一生。
幼少の頃から、およそ思い通りにならぬものはなかった。人の心を除いては。
天賦の才と、その才を磨くに申し分ない環境の双方に恵まれ、何より人一倍に努力した。
いかなる賞賛を受けようとも飽き足らず、ただ貪欲に高みを求めた。己は選ばれた人間だと信じて疑わなかった。いつかこの手で、全てを手に入れるのだと。
必然的に強烈な反感を買ったが、相手にしなかった。努力もせず他人を貶めるばかりの人間による中傷は、いっそ優越感を煽りさえした。
仕える主すら、のし上がるための踏み台と考えていた。己の自尊心を満足させる程度には優秀だったから、今の主に不満はなかった。
そんな主の下で、彼と出会った。
438:全て彼のせい 2/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:53:32.49 Eu0ntPXB0
最初から気に食わなかった。ちゃちな実績を重ねてようやく出世した、時代遅れの泥臭い人間。そのくせ、皆から一目置かれている。歴戦の将、彼がいれば安心……位の上下を問わず、時には敵将までもが彼を高く評価する。
無性に腹が立った。あんなつまらない男より、己の方がずっと優れている。すぐにでも蹴落としてやると、そう思った。
何かにつけて敵愾心をあらわに噛みついた。何気ない言動に難癖をつけ、少しの失敗にも嫌味を浴びせ、機会があれば出し抜こうと企んだ。顔を歪めて罵倒してきたら、存分に嘲笑ってやるつもりだった。
だが、事態は思いも寄らぬ方向へと進んだ。
彼は、そんな己を全面的に受け入れた。
言いがかりでしかない要求もすんなりと呑み、自らの非を認めれば率直に詫びる。危地に陥った己を我が身も顧みず救出に来ておいて、礼の一つも言わぬことを咎める風もない。早すぎる出世を妬むどころか、勉強熱心だと手放しで褒め称えさえした。
予想もしなかった反応に戸惑い、次いで妙な苛立ちを覚えた。己の敵対的な姿勢にも誠意で応える彼が理解できなかった。
時を重ねるにつれ、彼と組むことが増えた。何度も行動を共にするうちに、いつしか彼の態度にも慣れた。
実際、彼はまったく理想的な同僚だった。確かな実力を持ちながら決して出しゃばらず、雑用から汚れ仕事まで、他人が厭う役割も率先してこなす。不遜極まる己の物言いからも的確に真意を酌み取り、心得た配慮を見せる。
知らず知らず、彼と共に在ることを快くさえ思い始めていた。
ずっとそのままでいられたならば、ある意味では幸せだったのかもしれない。
だが。
ある時、不意に気づいてしまった。
いつの間にか彼にすっかり心を許し、それどころか頼り切ってさえいる己に。
「旧式」だの「私の方が優れている」だのといったお決まりの悪態が、己の本心から遠く乖離してしまっていたことに。
大袈裟でもなんでもなく、その事実は己の存在そのものを揺るがすほどの衝撃だった。
己は誰よりも優れている。他人は全て、野心を叶えるための踏み台に過ぎない。そう信じる強烈な自尊心こそが、今日の己を成立せしめたのだ。他人を認めるなど、信じるなど、頼るなど、断じて許されることではない。
439:全て彼のせい 3/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:56:11.98 Eu0ntPXB0
躍起になって彼を否定しようとした。だが無駄だった。彼はどこまでも誠実で、勤勉で、謙虚で、どれほど不当に罵られようと己を思いやった。周囲が彼に与える高評価にも、何一つ否定できるものはなかった。他ならぬ己自身が、それを否定できなかった。
嫌いたいのに、見下したいのに、どうしても理由が見つからない。いっそ無視したくても、それすら叶わない。彼を意識するたびにたまらなく苦しくて、身体が二つに裂かれてしまいそうだった。
まったく、彼は理想的な同僚だった。……あまりにも、理想的にすぎたのだ。
このままでは壊れてしまう、と思った。そうならないために、もはや思いつく手段は一つしかなかった。
彼という存在を、現実から消してしまえばいい。そうすれば、もう二度と、こんなに苦しい思いをしなくて済む。
「と、う、がい……」
絞り出すように、彼の名を口にする。途端に膨れ上がった激情が喉を押し上げた。何かわめき散らしたい思いに駆られ、すんでのところで意味のある言葉にすり替える。
「あんたばかりが、魏で評価される。
あんたが、私の栄達を閉ざした! だから!」
他に言いようはなかったのか、と、頭のどこかで冷静な己が囁いた。これでは、ごねて暴れる子供そのものではないか。
理由なら用意してあった。己の才を天下に示す。全てを手に入れる。昨日までの主や同胞に問われたならば、鼻で笑ってそう答えるつもりでいた。
決して間違ってはいないはずだ。そのためにこそ、己は兵を挙げたのだから。だというのに、今はその理由が白々しく思え、かといって全てを告げるにも虚栄心が邪魔をした。
「それが、理由か……?
そのために、魏を……司l馬l昭殿を裏切ったというのか」
彼の声は揺れていた。怒りの色はない。ただ困惑しているようだった。
くっ、と、喉を鳴らす。歪みきった声音をもはや取り繕う気にもならなかった。端から無理な話だったのだ。彼を前にして平静を装おうなど。
「……そうだ。
ずっと、あんたが邪魔だった。あんたがいる限り、私は上へ行けない!」
言葉と共に、勢い良く腕を突き出す。放たれた剣が一直線に彼へ飛んだ。迫る数本の剣を、彼は手にした槍を操り叩き落す。一本が彼の右上腕を浅く掠めた。
440:全て彼のせい 4/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:59:15.16 Eu0ntPXB0
「なんと……」
ひどく苦い呟きが耳を掠めた。奥歯を強く噛み締める。聞きたくなかった。また、胸が軋む。
振り切るように、鋭く剣を操った。薙ぎ払われた槍が剣をまとめて弾き飛ばす。そのまま彼が踏み込んできた。腕を引き、剣を身に引き寄せながら大きく後退する。
あの巨大な槍の破壊力は凄まじい。一撃でもまともに喰らったが最後、命があったとて満足に立つことも叶うまい。防御は突き破られる。致命傷を負わぬためには、ひたすら逃げ回るしかない。
空を切った横薙ぎの攻撃に続けて、切っ先がこちらへ向く。思いきり地を蹴って横へ跳んだ直後、すぐ脇を巨大な塊が風を纏って過ぎた。
着地と同時に腕を振り、がら空きの背に向けて剣を放つ。彼は身をひねり、手甲で刃を強引に跳ね返した。さらにもう一撃。振り下ろした腕に従って上から剣が襲う。一本が髪を掠め、もう一本が肩当てを傷つけた。
もう一度。手を横に払い、横合いから切りつける。構え直された槍に阻まれ、金属同士のぶつかる嫌な音が響いた。一瞬拮抗した後、槍が剣を振り払う。
一旦手を止め、再び後退。追って距離を詰める彼の顔面めがけて剣を一本叩きつけ、受け止めた槍が視界を遮った瞬間に指を鳴らした。残りの剣が一斉に彼へと突き刺さる。腕や脚が切り裂かれて血がしぶき、くぐもった呻きが漏れた。
確かな手応え。今さら、背筋が震えた。噴き出した血が、彼の血が、赤い。
槍を握る手に力がこもる。構えが変わった。防御から攻撃。わずかに反応が遅れた。我に返り、咄嗟に後ろへ跳んだ己を追うように、槍が大きく振り抜かれる。
躱した。そう思った瞬間、腹に重い衝撃がきた。平衡を欠いた体が宙を飛ぶ。しばしの浮遊感の後、何か凸凹のある物に叩きつけられた。ず、と崩れ落ちる。背に擦れるざらついた感触は、木の幹か。
「は……っ」
頭がくらりと揺れた。ぶつけた背は鈍い痛みを訴えているが、腹はそれほど痛くない。風圧で飛ばされたらしい。
彼の気配が迫る。体勢を立て直す時間はない。地に伏したまま、ただ、顔を上げた。
目の前に、槍の先が突きつけられた。彼そのもののように、武骨で重く、鋭い金属の塊。こんなもので刺されたら痛いどころではないな、と、改めて思った。
441:全て彼のせい 5/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:02:19.97 Eu0ntPXB0
「降伏を勧告する。これ以上愚行を重ねるな」
静かな声が告げた。
喉が震えた。吸い込んだ息が鋭い音を立てる。
「愚行、だと……?」
「よもや、分からぬほどに分別を失ってはいるまいな?
現状も展望も見えぬまま武器を取り、安定しつつある国をいたずらに掻き乱す。それを愚行と呼ばず何と呼ぶ。
……姜l維は討った。将兵の大半は既に投降している。反乱は、もう終わりだ」
言われて初めて、周囲の静けさに気がついた。剣戟が聞こえない。足音さえしない。もう、残っているのは己一人なのかもしれない。
槍がすい、と引かれた。代わりに彼が一歩距離を詰め、膝をつく。つられて視線を上げ、今日初めて彼の顔をまともに見た。
酷い有様だった。鍛え上げられた体のあちこちに生々しい裂傷が開き、流れる血が肌も服も赤黒く染めている。全て、己が負わせた傷だ。
けれども、見下ろしてくる瞳には一片の敵意も、憐憫すら浮かんではいなかった。ただ、深い哀しみと……おそらくは、己を止められなかったことへの自責。
ああ、やはり彼は今も、己を敵だとは思っていないのだ。刃向かわれ身を裂かれようとも。名を呼び捨て地に叩き伏せようとも。
歯を食いしばっても、顔が歪むのを止められなかった。熱い塊が胸から喉元までせり上がって呼吸を塞ぐ。
「そ、んな……そんな目で、私を見るな……!
私は、有能だ……選ばれた人間なのだ……」
震えて上擦った声は、己のものとは思えないほど弱々しかった。
見なければよかった。辛辣な言葉よりも、彼の眼差しが深く心を抉る。
「確かに、お前の才は飛び抜けている。ただ、焦るばかりでは得られぬものもある。
小さくとも堅実な成功が、道を開く……お前は、それに気づけなかった」
目の高さを合わすためか体勢を低くし、己の目を真っ直ぐに見据えながら、彼は諄々と語りかける。
「だが、まだやり直せる。ここで降れば、再びの仕官も許されよう。お前は若い。時間は十分にある」
縫い止められたように動けない。せめて目を逸らしたいのに、視線すら動かない。
「だ、れが」
頭がくらくらと揺れる。熱い塊は今にも喉から溢れ出しそうだ。堪えて、必死に睨みつける。
「誰が、あんたの言いなりになど……! 言ったはずだ、あんたがいる限り、私は」
442:全て彼のせい 6/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:05:17.13 Eu0ntPXB0
「ならば自分は去ろう」
「…………は?」
すっと、頭から熱が引いた。
今、彼は何を言った? 言葉の意味を把握し損ね、ただ呆然と彼の顔を見る。
「お前の復帰を待ち、暇を願い出る。自分との接点が消えれば、比較に縛られ目が曇ることもあるまい。今後は己の器を正しく見定め、着実に上を目指せばよい」
彼は呆気ないほど淡々と告げた。部下に任務の内容を伝える時と同じ、少しも揺らぐことのない声。
空白になった意識に、彼の言葉が徐々に染みて形を成してくる。それにつれて、急速に体から体温が失せていった。
己が再び国に仕えるならば、代わりに今の立場を捨ててもいいというのか。
彼が今まで歩いてきた道。何十年もの時を費やし、心身に負った無数の傷に耐えながら、誠実に、愚直に、地道に、一歩ずつ足元を踏み固めて、必死の思いでここまで築き上げてきた、功績を、名声を、地位を、信頼を、
つまらぬ意地を張る反逆者一人のために、全て棒に振っても構わない、と?
がくり、と体が平衡を崩した。視線を落とすと、地面についた手が震えていた。
違う。そんなつもりで言ったんじゃない。こんなことを望んでいたわけじゃない。全てを捨てろなんて言っていない。
―なら、何を望んでいた? 彼がどうすれば満足できた? そもそも、彼から命さえ奪おうとしていたのに?
体の震えが止まらない。一度下がった熱が、再びふつふつと湧き上がってくる。熱くて、苦しくて、痛くて、どうすればいいのかわからない。
「ふっ……」
「戦乱が終息しつつある今ならば、自分が役目を退こうとさほどの問題は……」
「……ざけるなァ!」
腕を素早く振り上げる。同時に、全身のばねを使って跳ね起きた。
「ぐっ!」
押し殺した悲鳴が漏れた。剣は過たず彼を斬りつけたらしい。それを確認する余裕もなく、もつれる足で転がるように距離を取る。
「お、お得意の、自己、犠牲の、つもりか? ぎ、偽善者が、わ、私を、あ、哀れむ、な!」
泣いているわけでもないのに、しゃくりあげるように喉が詰まった。
彼はゆっくりと立ち上がった。かすかに顔がしかめられ、足元がぐらつく。脇腹の辺りが赤く染まっていた。緩慢な動作で槍を拾い上げ、こちらを向く。その瞳は、変わらず真摯に己を見据えていた。
443:全て彼のせい 7/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:08:16.30 Eu0ntPXB0
「侮辱に聞こえたならば詫びよう。だが、決して哀れんでなどいない。犠牲のつもりもない。
お前は才気に溢れ、未来への大望を持ち、常に研鑽を惜しまぬ努力家でもある。大成の暁には、いかばかりの人物となるか……自分は、その末を見たい。他ならぬ自分が前途を妨げるのであれば」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!」
狙いも何もない。爆発した感情のまま剣を叩きつけた。これ以上、彼の言葉を聞きたくなかった。
なぜ、どうして、そんなことを言える? 身勝手な動機で殺意を抱き、反乱まで起こした相手に。
嘘なら、口先だけの世辞なら、それでよかった。彼の言葉に嘘などないと、本気だと知っているから、辛い。
「その薄汚い口を閉じろ、忌々しい旧式が! あんたが、あんたさえいなければ全てうまくいったんだ! あんたの存在自体が邪魔なんだよ! 消えるというなら、この世界から消えてしまえ!」
声の限りにわめき散らしながら、無茶苦茶に腕を動かす。攻撃とも呼べない攻撃を、彼は最小限の動きで防ぎながら声を張り上げた。
「冷静になれ! 分かった、もう何も言わん。個人的な憎悪は後で受ける。だが、今は降れ。これ以上抵抗を続けるならば、反逆者として討つ!」
耳鳴りがうるさい。目の前が赤い。体が軋んで、ばらばらになりそうだ。ああ、やはり、一刻も早く彼を消してしまわなければ。早く早く早く早く!
「だ、まれ……黙れぇっ! 旧式ごときが、その体で私を討てると思うな! 目障りだ、今日こそ処分してやる!」
力の限り腕を払う。受け止めた槍と剣との間に火花が散った。彼の表情がわずかに歪む。
「やむを、得んか……!」
槍が剣を払いのける。剣が己から離れた隙に、彼が踏み込んできた。後ろへ身を投げ出すと同時に、掬い上げるように槍が振りかぶられる。足元ぎりぎりを穂先が薙いだ。風圧に押されるまま転がって間合いを稼ぐ。
起き上がりざま、バン、と地面を叩き、剣を潜らせる。察知した彼は己に向けて振り下ろしかけた槍を地面に突き刺し、真上に跳んだ。一拍遅れて、無数の刃が噴き出し、彼の足を掠める。だが、傷を負わせるには至らない。
ふらつく頭を押さえて立ち上がったのとほぼ同時に、彼も着地して槍を引き抜いた。
444:全て彼のせい 8/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:11:23.12 Eu0ntPXB0
攻め手を緩めてはならない。彼の重く小回りの利かない攻撃とは逆に、己は軽く素早い攻撃を得手としている。彼の体力を考えれば、二発当てた程度で致命傷には至るまい。
攻撃を続けようと腕を引いた時、彼の左手が動いた。黒い塊が放られる。まずい。即座に剣を引き戻し、己を庇うように展開する。直後、目の前で爆発が起きた。
爆風と共に、熱が、煙が、無数の破片が全身を襲う。それらをできる限り剣の腹で遮りながら、吹き飛ばされまいと足を踏ん張る。
まともに喰らいさえしなければ、爆破の衝撃自体は大したものではない。雑兵はともかく、名のある武将ならば……
ひやり。そこまで考えた時、背筋に戦慄が走った。
そうだ。確かに、爆弾自体の威力は強くない。それを彼はどう使っていた? 己は知っていたはずだ。
「あ……」
理解した時には、既に遅かった。
身を引く暇さえなかった。眼前に迫る気配。黒煙を割って現れた槍の切っ先を、現実感もなく、ただ、見つめて、そして。
大きな衝撃が襲った、はずだ。音もひどいものだっただろう。だが、何一つ感じ取れなかった。全ての感覚が灼きついたようにただ、白くて。
気がつくと、目の前に彼が立っていた。景色は動いていない。どこかに叩きつけられて止まったらしい。視線を落とすと己の腹に槍が埋まっていたが、麻痺したのか痛みは感じなかった。ただ、少し寒いような気がした。
「自分の技量では、ここまで……恨むな、とは、言わぬ」
重く、感情を押し殺した呟きが聞こえた。落ちかかる瞼をこじ開けて映した瞳は、やはり痛ましげに沈んでいた。自身の傷よりも、相手の痛みを思う色。
唇がわなないた。笑いたいのか泣きたいのか、己自身にも判らなかった。
どうして、彼がそこまで気に病むのだろう。彼は何も、悪いことなどしていないのに。
出会ってから今まで、何一つ善いものなど返さなかった。生意気な口ばかりきいて、何かにつけて反発して、差しのべられた手にも不満ばかりぶつけて、ついには彼の存在自体を否定して。
それなのに彼は、全てを許して、受け入れて、譲り渡して、今もなお、己の理不尽な言い分に怒りもせず、自らの無力を責めている。任務のためには殺すべき私情を入れてまで、己を生き残らせようと心を砕いて。
445:風と木の名無しさん
11/06/08 01:12:40.81 4bSiCUR60
支援
446:全て彼のせい 9/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:14:43.07 Eu0ntPXB0
ああ、だからいけないのだ。
いつもいつも、無条件に優しくして。散々突き放したのに、ためらいもなく助けようとして。失礼な態度を咎めもせず全て受け止めて。
彼がそんな風だから、揺らいでしまう。甘えてしまう。彼には勝てないと認めたくなってしまう。そんなことは許されないのに。
己は誰よりも有能で、孤高で、絶対の存在でなければならない。他人の優位など認めてはならない。ましてや、己とは何もかもが違う、武骨で古臭い人間など。
せめて、嫌ってくれたらよかった。己を妬む大勢のつまらない人間と同じように、悪意を向けてくれたら。そうしたら、こんなに苦しむこともなかった。嫌いにならせてもくれないなんて、酷すぎる。
だから、やっぱり、
全ては、彼のせいなのだ。
不意に彼が膝を折った。彼の体にも、限界がきたのだろう。
早く手当てしてくださいよ。いつもの皮肉な調子で、声に出さず呟く。さっさと養生しないと、皆の迷惑でしょう。……あなたは、まだ必要な人間です。
地面に膝をついたまま、彼は槍に貫かれた己を見上げ、小さく笑った。
「自分と出会うことがなければ、大成の道もあったろう。
次の生が、もし存在するならば……自分と関わることなく、幸福を手にするよう願っている」
全てを諦めた笑みだった。
ざわり。体の奥で、何かが蠢いた。
ここで終わってしまうのか。本当に、他の道はなかったのか。
まだ、彼に何も言っていない。彼の言葉をきちんと聞いていない。感情的に突っかかるばかりで、まともに話をしようともしなかった。それなのに。
ゆっくりと暗くなる視界は、彼の顔をもう捉えられない。わずかに残る感覚さえ、砂がこぼれ落ちるように消えてゆく。
何か、言わなければ。もう何もかもが遅いとしても、せめて最期に一言だけ。今まで言えなかった、本当のことを。
あるだけの気力をかき集めて、口を動かす。薄く開いた唇が、かすかに震えて。
ぶつり。意識が、途切れた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イツカコウナルヨカンハシテイタ
身長は漢代の尺(1尺=約23cm)に従って記述しました(“彼”の身長は200cm)。
繰り返しますが99%くらい嘘っぱちです、戦闘も含めて。史実に至っては掠りもしていません。
これでもかなり詰めましたが、長々と失礼を。
447:風と木の名無しさん
11/06/09 22:08:24.01 El8+0eK00
半生です。仮面ライダー大図、竪琴
時系列は18話くらい。
初めてなんでうまくいくかどうか…
多少エロ、多少出血ありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
448:竪琴
11/06/09 22:13:01.34 El8+0eK00
「ハーイ、お目覚めかな?後藤ちゃんだっけ?こんばんは」
軽い話口調で声をかけられた。
ここは…このソファーは、俺の部屋か…?
確か会長の部屋でケーキを食べて、それから急に眩暈がするほどの眠気が襲ってきて…
会長がハッピーバースデイって叫んで…
あれ?なんで叫んだんだ?大体何の話をしてたんだ?
頭が痛くて思考が纏まらない。
「あれ?まだ朦朧としてる?ちょっと多かったかな…、俺覚えてる?」
忘れられる訳無いだろ。こんな大男。
「…伊達さん…?」
なんでこの人が俺の部屋に?
449:竪琴
11/06/09 22:15:09.89 El8+0eK00
「あっ覚えててくれたんだ。ん?状況がわかんない顔してるねぇ。そりゃそうだ。」
おい、俺体の自由が利かないんだが、まさか縛られてるか?
「俺が倒れたあんたをここまで運んだんだぜ、まぁ男の割りに軽くて助かったけどよ」
「…ありがとうございます、なんで俺縛られてるんですかね。」
「そりゃ、暴れられたら困るからさ。いくら軽くっても暴れる男を担げないぜ。」
運ぶために縛ったのか。そんなことするぐらいなら会社の床にでも転がして置いておけばいいものを。
横たわっていたソファーから上半身を起こし確認してみる。
縛られているのは手首と足首と膝か…。
450:竪琴
11/06/09 22:18:17.89 El8+0eK00
「それはご迷惑をおかけしました。解いてくれませんか。俺はもう大丈夫ですから…」
お帰りください、と続けようとしてドンっと胸をつかれまた倒れこんでしまった。
「いやいや、これからご迷惑かけるのはこっちだから。」
「それは、どういう…」
こちらの質問にはまったく答えず、伊達さんは部屋を勝手に見回りはじめた。
「寝室こっち?おおーデカイ鏡。意外とやらしいねぇ。風呂とトイレはこっちかな?1LDKか。ひろいねぇ。ライドベンダーの隊長さんも結構もらってるね…」
451:竪琴
11/06/09 22:25:12.28 El8+0eK00
「…伊達さん…?」
なんでこの人が俺の部屋に?
「あっ覚えててくれたんだ。ん?状況がわかんない顔してるねぇ。そりゃそうだ。」
おい、俺体の自由が利かないんだが、まさか縛られてるか?
「俺が倒れたあんたをここまで運んだんだぜ、まぁ男の割りに軽くて助かったけどよ」
「…ありがとうございます、なんで俺縛られてるんですかね。」
「そりゃ、暴れられたら困るからさ。いくら軽くっても暴れる男を担げないぜ。」
運ぶために縛ったのか。そんなことするぐらいなら会社の床にでも転がして置いておけばいいものを。
452:竪琴
11/06/09 22:32:22.00 3j673HVQO
やっぱり失敗したあげくサルになってしまいました。
修行して出直して来ます。
スレ汚しすいませんでした。
453:風と木の名無しさん
11/06/09 22:36:10.92 EHGl27OC0
>>452
ドンマイ
454:風と木の名無しさん
11/06/09 23:24:41.70 N/rsQUINO
>>452
楽しみにしているからドンマイ。
455:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼5 1/5
11/06/11 01:44:08.19 d0jx2/2x0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )名付け編です。
男の場合は苗字があるが、苗字はいらないから名前だけほしいと伝えると、バルドはしばらく天井を眺めた。木の天井が見える。
そのあと窓の外に目をやり、桜が満開なのを見て思いついた。
夜桜というものは暗闇に白く映えてとても美しく、それとヴァンパイアはよく似ている。
暗闇によく映える白い肌に、赤い眼。
「夜桜」
「え?」
「こう、漢字でただな…こう書くんだ。読み方は『よざくら』。今どき全国の文字の読み書きができないと人間と一緒に暮らせないぞ。で、だ、女みたいな名前だな、いや?」
すらすらと、そばに置いていた羽ペンにインクをつけて、手元にあった和紙に漢字を書いていく。
夜桜と名付けられたヴァンパイアにとって、全く理解できないし、読むことすらできない文字であるが、なんとなく、その形が綺麗なものに映った。
「全然。じゃあこれからそう呼んでほしい」
そこでバルドはにっこりと笑った。
「おー、よく似合う名前だ。気の弱いお前には儚い桜の名前はぴったりだな」
「桜って儚いのか。いつまでも咲いているわけではないのか?」
それを聞いて、ぷぷぷと笑いだすバルド。何か変なことでもいったか、と戸惑う夜桜に、バルドは続けた。
456:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼5 2/5
11/06/11 01:46:52.81 d0jx2/2x0
「お前本当に世界のこと知らないんだ、桜はすぐに散るんだよ。だから美しいんだ。だけどまあ、お前にはすぐに散ってほしくないなー」
またもぐりぐりと頭をなでてきた。
お前にはすぐに散ってほしくない、という言葉が妙に嬉しい。
すぐ顔に出る夜桜は、軽く腕で顔を覆い隠した。
その下に見えるのは、少々赤くなった整った顔立ち。
それでもバルドは夜桜の頭をなでづけた。
「だってお前、素直に言うと可愛い。邪気なんてほとんどないし、そりゃ人殺しはだいぶしたみたいだけど、そのせいで憂鬱になってたんだろ?嫌々人を殺すヴァンパイアもおかしいおかしい」
(馬鹿にされている気がしないでもない)
だが、この男もまた憎めなかった。お互い変わり者同士、うまくやっていけそうな気がする。
「っと、もうこんな時間か」
懐中時計を取り出し、眠気を感じたので、バルドは時間を確認する。
時間は三時半だった。
眠くもなる時間だ。
「俺さー、一か月くらいここで滞在しようと思うんだ」
一つあくびをすると、布団にもぐりこんだ。
457:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼5 3/5
11/06/11 01:48:53.75 d0jx2/2x0
「冒険に出ないのか」
「あー、なんか討伐とか退治とかいろいろやってたら金が有り余るほどたまって。それにお前がいるし?寂しがり屋の夜桜を放っておくことできないじゃない?」
「さ、寂しがり屋」
「一カ月したら、あのレインのようにローブ羽織って行け。ガルズヘイムの魔法使いくらいには見えるかもしれない」
その言葉が意味するのは、家に置いていかないで、冒険者としてついて来いということだった。
「じゃあ灯籠消すからお前も寝れ」
「起きたばかりだというに」
「仕方ないな。そうして三日も話にきてるもんな」
何か考えたそぶりをすると、布団をめくりあげる。
バルドは両手広げて、にっこり笑った。
「添い寝してやろうか?今度は俺の小さい頃の話でもしてやるよ、そのうち眠っちまうけど」
どうせ来ないと思ってからかうつもりでやってみたが、相手の反応は違うことだった。
「…添い寝…」
それだけ言うと、夜桜はもそもそとその腕の中におさまってきた。
意外に身長高いと思っていたが、腕の中にすっぽり収まる。
バルドの身長は百八十五くらいはあるが、夜桜は百七十五くらいだ。体格差もあって、ずいぶん小さく見えた。
458:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼5 4/5
11/06/11 01:52:03.46 d0jx2/2x0
思わずバルドも口元が緩む。
それにしても、どれだけ寂しがり屋なのか。
一体何年生きてきてこうなったのかはわからないが、人が恋しいというあたり、相当孤独に耐えてきたのだろう。
「添い寝とか。一緒に暮らすとか。話すとか。憧れていた。人間は冷血だという仲間もいたけれど、温かい。
仲間のほうが冷血なのが多い」
「お前そんな素直だと変な人間さんに食われちゃうぞ。主に俺とかに」
「?食うとは?人間は血を吸わないのに」
そう切り返されて、言葉に詰まる。
十八禁な発言をしかけたが、やめてうやむやにした。
見つめる瞳の無垢なこと無垢なこと。
「バルドの昔話は?」
「ああ、そうそう。俺は生まれも育ちもほとんどガルズヘイムなの。ただ、祖父が日倭だったから日倭が好きで、
初めて冒険者として日倭の都市に立ち寄った時はさすがにびっくりしたな。ま、ガルズヘイムでも日倭人は沢山見たけど、
日倭と、あと長唐の人間はかなり浮いていたよ。この世界に長唐はないからそのせいだけど」
何度か頷いてるのが感触でわかる。軽く抱きしめてやると、しがみついてきた。
459:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼5 5/5
11/06/11 01:54:32.83 d0jx2/2x0
「あー、それで、冒険者デビューして数年たったころね。俺、すげーモテるのね。驚いたね、宿に泊ってると男女問わず訪ねてきて、
もう有名になった頃には、いい加減寝かせてくれと思ったほどだ。たぶんモテるのは祖父がそう言う体質だったからだけど、
祖父は男に興味ないからって同性からの告白は受け入れてなかったんだと。俺その逆。別に男でも行けるし。男役でのみなら。
好みのやつなら誰とでも寝たよ。ぶっちゃけバイだ。だからさ、夜桜」
「ん」
夜桜はすでに眠くなりかけている。
人間の心臓音が心地いいらしく、話もちゃんと聞いてるが、うとうとして目をつむったまま聞いていた。
「お前も気をつけろよ。主に俺とかに」
一瞬びく、と震えたような気がしたが、すぐに元の位置にとどまる。
「そういう意味か。襲ってきたら鈍器で今度こそ私のほうから殴りつける」
相当タコ殴りにされたことを根に持っているのか、鈍器でと言い出した。
普段のヴァンパイアといえば素手で長い爪による攻撃か、魔法のどちらかのパターンになる。
これでも夜桜はヴァンパイア。素手で十分痛い。
鈍器なんかで襲われたら相当痛い目に会うはずだ。
転がっているストーンクラブで殴られたら、死ねないのに延々と殴られ続けて苦しい羽目に陥りそうだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )続きます。長くてすみません…。
460:風と木の名無しさん
11/06/11 12:43:59.45 El4X3jNO0
>>428
新作キタ―(゚∀゚)―!!
なぜか不調がシンクロしてるこの一人と一匹が
はやく調子が上がってくれますように
461:風と木の名無しさん
11/06/11 20:44:43.86 Tmur+FVx0
>>455
かわいいなぁ吸血鬼
毎回楽しみにしてます
462:風と木の名無しさん
11/06/12 01:09:28.28 JGS6gpZj0
>>455
寂しがりやの吸血鬼かわいい~!
しあわせにおなり~。レインも好きです。
463:風と木の名無しさん
11/06/12 01:44:25.85 X+vogKev0
なんか投下しづらくなってしまったのかねえ
さるさんもあるし、忍者までw
といいつつ今だに忍者がなんなのか良く分からないけど、
投下したいけど出来ないなんて人がいなくなると良いな。
464:風と木の名無しさん
11/06/12 08:21:37.17 x8jyaRIj0
>>463
自分も忍者わからん。
なんかエラーになる人が多いみたいで、
投下も少なくなったような気がする。
465:風と木の名無しさん
11/06/12 08:25:19.17 x8jyaRIj0
あれ?ちゃんとsageたつもりなのに。
今度はさがってるかな。
またageてしまったらごめん。
466:風と木の名無しさん
11/06/12 11:06:21.13 fhIrrqJ30
>>464
忍者はLvが足りてないとものすごい連投規制と改行規制があるから、
長文投下は難しい
467:兎→虎3 1/5 ◆dU4hlANcIg
11/06/13 18:42:00.70 8gSKAiIr0
アニメ虎&兎の兎→虎です
10話あたりまでのお話です。
エロコラネタは受スレより拝借。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
この感情がなんなのかわからない。
変わった事と言えば、おじさんに自分の話を聞いてほしくなったという点だ。
マーべリックさん達以外の第三者に話す日が来るなんて思わなかった。
ちょっと前まで考えた事も無い、むしろ拒絶していた事だったのに。
今まで集めたたくさんの資料を見せたりもした。
おじさんに知ってもらうと不思議と心が軽くなる気がして、なんだか昨日も喋りすぎた気がする。
この間、おじさんに娘が居るとか奥さんが亡くなっているとか驚くような話を聞いた。
指輪をしているから結婚しているのかなとは思っていたけれど…
単純なおじさんの事はほとんどわかっているつもりでいたのに、
そんな根本的な事を知らないという事に驚いた。
おかしいな…なんだか腑に落ちない。
どうも納得がいかなくておじさんを目で追うようになった。
毎日顔を合わせてずっと見ていても、やはりよくわからない。
「ぁ、バニー?なんかさ…なんかお前、すっごいこっち、見てない?」
「見ていますけど、それが何か?」
「いや、何か?って、気になるだろぉ!!なんなんだよ一体!」
「観察しているだけなんで、あなたは普段通り過ごしていただければ結構ですよ。」
「観察ぅ?!日記でもつけてんのかぁ?」
露骨に変わる表情、抑揚のある話し方。
雑な事務作業といい加減な作業日報。
この人はヒーローとしての仕事の時以外は本当にいい加減だ。
まぁヒーローの時もいい加減…といえばいい加減だけど。
感情に素直で剥きだしで、まるで子供だ。
やっぱり単純でわかりやすい。気のせいか…?
468:兎→虎3 2/5 ◆dU4hlANcIg
11/06/13 18:42:47.35 8gSKAiIr0
「タイガー、バーナビー。これ、今日のファンレター。バーナビーまた増えてるわよ!」
事務の女性が段ボールを抱えてきた。
「重い物を持たせてしまってすいません。言って下されば僕が取りに…」
「いいのよこのくらい。タイガーのは1通しかないから軽いし大丈夫よ。」
「ありがとうございます。今度からは僕に任せて下さい。」
「あら気がきくわね。ありがとうバーナビー。はい、タイガー。」
「んあー」
僕の前に色取り取りのかわいい封筒のファンレターがいっぱい入った段ボールが置かれる。
おじさんの前には無機質な定型外の茶封筒が一通。
「ぐ…またこいつか…」
おじさんの顔色が変わる。そういえば、似たような封筒を受け取っているのを以前見た気がする。
ファンレター事態が滅多に届かないから覚えていた。
それにしてもおじさんあての手紙なんて、何が書いてあるのか気になってしまう。
なのに、一向に開けようとしない。
「読まないんですか?」
「んー…まぁな。バニーちゃんこそ。そんだけあったら早く読まないと明日になっちゃうぞ~」
あれ…これって話を逸らしたのか?
そういえばこの人、よくこういう風に話をすり替えている気がする。
…僕とした事が今まで気付かなかったなんて…
おかしい。
それどころか、言いながら封筒を机にしまってしまった。
絶対におかしい。
「気になるんですけど。」
「へ?」
「気になります。おじさんのファンレター。」
「な、なんで?」
「気になるんです。何が書いてあるのか」
「いっ今まで気にした事無かったろぉ!俺のよりそのいーーっぱいあるファンレターの方がたっくさん楽しい事書いてあるぞぉ?
ほらっこれなんか絶対かわいい女の子からだろ!よかったなぁーバニーちゃん!」
469:兎→虎3 3/5 ◆dU4hlANcIg
11/06/13 18:43:55.57 8gSKAiIr0
段ボールから一際ファンシーな封筒を手に取りぶんぶんと振る。もうその手には乗りません。
「僕はかわいい女の子より今はあなたの方が気になるんです。」
「へぇっ??!」
おじさんがなんだか目を白黒させている隙に手を伸ばして引き出しを開け封筒を奪う。
「だっ!!ちょっ!待てバニー!!」
おじさんが机に乗り上げて僕の方へ来た。そんなに嫌なのか。ますます気になる。
「ちょっとタイガー!子供じゃないんだから!!」
「返せ!俺のファンレターだぞ!!」
「おじさんが隠すのが悪いんですよ。」
肘でおじさんの顔を押しながら封筒を開ける。
中から手紙と、一枚の印刷物が出てきた。
「やめろっ!!見んなって!!」
「『ワイルドタイガー様 相変わらず僕はあなたが好きです』……男性の名前ですね」
「っだぁああああああああ」
「…!」
印刷物を見て、絶句した。
「見るなって言ってるだろお!!」
呆然としていたらおじさんに取り返された。
「おじさん…今の…」
「ぁあっ忘れろ!」
忘れられるわけがない。
そこに映っていたのは、あられもない姿のおじさんだった。
元の写真は見た事がある。
確か昔ワイルドタイガーの旧スーツがビリビリに破れた時があった。
敵によってではなく、崖から滑り落ちたか何かの自損事故だ。
翌日の新聞はこぞってそれを笑いの記事にしていた記憶がある。
もっとも、僕が見たいのはそんな記事ではなく、わずかでも手がかりになるような犯罪者の記事だったから、邪魔でしか無かったけれど。
その写真がCGで合成され、色々足してあり…とても卑猥な物になっていた。
470:兎→虎3 4/5 ◆dU4hlANcIg
11/06/13 18:44:46.87 8gSKAiIr0
…強烈だな…
「送り主は男性…でしたよね?」
「ああああーーー忘れろっ忘れろっ」
「何度か貰ってますよね?いつもこんな感じなんですか?詳しく話してください。」
「う…いいじゃんおじさんの事なんて気にすんなよバニー」
「おじさんの事が気になるのは僕の勝手ですよ。とやかく言わないでください。」
「あんたたち!そろそろトレーニングの時間よ。」
「あっそう?!トレーニングの時間だって!!おじさん先行ってるぅーー!!」
「ちょっと、どうせトレーニングなんてしないくせに逃げないでください!」
封筒を持ったままトレーニングルームに向かうおじさんを追いかける。
脚で僕に勝てるわけないのに。
階段を駆け上るおじさんを捕まえようと手を伸ばした途端、足を滑らせたおじさんが落ちてきた。
ちょうど伸ばしていた腕でダイレクトに支える。
「……何度お姫様抱っこさせたら気が済むんです?まったく。まさかあなたが僕のお姫様なんですか?」
「!…ぅるせぇよ…降ろせっ」
おじさんの頬が赤くなる。嫌味が効いたみたいだ。
「おじさんが逃げるからいけないんですよ。」
「お前が追いかけるからだろうが!いいから降ろせよっ」
「逃げませんか?」
「逃げてねぇよ。走るだけだ」
「じゃあ降ろしてあげません。早く詳しく話してください。」
「だっ!!」
トレーニングルームまでそのまま歩く。おじさんが足をばたつかせた所で、僕にとってはいい運動です。
しっかり封筒を抱きしめたままもう二度と見せないという態度だ。
「お前なぁ…誰にだって、話したくない事の一つや二つあるんだぞ。」
471:兎→虎3 5/5 ◆dU4hlANcIg
11/06/13 18:45:35.08 8gSKAiIr0
僕は話したのに。話したくない事を話したのに。
あれ、なんで話したいと思ったんだろう…
「…おいバニー?聞いてんのか?」
おじさんだから
この人なら
そう思っている?
「…おーい…無言で見降ろされてもアレだぞ…ぁーあと、とりあえず早くトレーニングルームに行こうぜ!
あとできれば降ろしてほしい!!」
おじさんの茶色の目がキョロキョロする。
この人はなんなんだろう。
なんで僕はこの人に自分を知ってもらいたくて、この人の事をなんでも知りたいと思うんだろう。
「あなたはなんなんですか?」
「やっぱり俺のお願いとか聞いてないよねー…あーそう…」
おじさんは不思議だ。
この人は一体、僕の…何?
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
兎はあの顔で王子様キャラを装っているにもかかわらず、こういう事に関しては
自分がとんでもない行動でとんでもない言葉を口走っていると気付いていない
新ジャンル『無自覚スーパー攻め様』だと思っております。
472:風と木の名無しさん
11/06/13 20:40:38.52 GYkwmpAg0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )しんげきのきょじん 団長×兵士長です
この部屋に入ってくる時,彼は決まって青白い顔をしていた。
夜の闇の中で足音を殺し,ゆっくりと扉を開ける。
懺悔をする罪人のように。あるいは,処刑を待つ殉教者のように。
初めて来た夜,彼は酒に酔ってひどく荒れていた。
真夜中の訪問者に戸惑う俺を睨みつけるように見上げ,
男はいけるかと乾いた声で尋ねてきた。
―さぁ,経験がないからやってみないとわからない。
酔っ払いの戯言だと思い,俺は軽くあしらった。
気難しい部下の珍しい姿に,微笑ましいとすら思ったはずだ。
しかし,それは大きな誤りだった。
彼が俺の夜着の胸元をつかみ,強い力で引き寄せた。
そのまま首筋に噛み付かれて,ようやく彼の行動の異常さに気付いた。
―おい,一体どうしたと言うんだ。
肩を掴んで引き離すと,彼が俺の手を払った。
―あんたが俺をここに連れてきたんだ。こんなところに!
彼の目は,暗く燃えていた。後悔,憎悪,絶望。
全てが織り交ざり,血の気のない顔の中で,瞳だけが異様な光を放っていた。
473:風と木の名無しさん
11/06/13 20:42:14.36 GYkwmpAg0
その日の夕刻,一人の兵士が死んだという報告があった。
異形の怪物に脚を喰われ,多くの血を失い,震えながら息を引き取ったという。
将来を期待された青年だったので,俺も名前は知っていた。
その兵士は,彼にとって初めての部下だった。
光る目を見て,俺は全てを理解した。
潔癖な彼が,なぜ自制を忘れるほど酒を飲んだか。
俺を責める口振りで,なぜ自分を傷つけるようなことを望むのか。
最強と呼ばれるにはあまりにも繊細な心を持ちあわせる部下に,何と声をかければい
いか俺は迷った。
「哀れむならアイツを哀れめ」
彼は吐き捨てるように言った。
―左手の癖が抜けていない,あんなグズは連れて行けない。
出兵前の訓練で,彼は断言した。それでも戦闘人数の確保のためだと他の者に説得さ
れ,半ば無理やり押し通す形で参加させることが決まったのだ。
彼は,俺が彼を拾い,兵団に入れたことを詰った。
それは司令官クラスの者なら皆知っている事実だ。
しかし,彼が真に責めているのは俺ではない。
兵士を戦地に連れて行った自分自身に,我慢できないのだ。
―俺がアイツを連れていったんだ。あんな危険な場所に。
悲痛な叫びが聞こえるようだった。
474:風と木の名無しさん
11/06/13 20:44:19.50 GYkwmpAg0
俺から手を伸ばしたのか,再び彼が噛み付いてきたのか,もう思い出せない。
小柄な体を抉じ開ける様にして抱いた。
ときおり跳ねる腰を宥めるように撫ぜた。
最後まで,お互い一言も声を上げなかった。慰めも赦しもそこにはなかった。
ただ白い背中を眺めながら,涙を流さずに泣くのだなと思った。
その夜から,彼は俺の部屋に訪れるようになった。
裁いてほしいのか,罰してほしいのか,俺は尋ねない。
強くて脆い部下の,唯一の逃げ場を奪う気にはなれなかったからだ。
今朝,婚約したばかりの女性兵士が命を落としたという。
彼はまた来るだろう。唇を噛んで,拳をきつく握り締めて。
本当は自分がどうしたいのか,俺はわかっている。
同時に,それが不可能なことも,誰より深く理解している。
だから今夜も,俺は彼を抱く。
―俺がお前を連れてきてしまった。こんな場所まで……。
言えない言葉を飲み込んで,不毛な夜を繰り返すのだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) 改行失敗しました…読みにくくてすみません
475:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼6 1/6
11/06/13 23:54:14.58 /fP4/mYV0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )感想ありがとうございます!嬉しいです!!
とは思ったが、この、天敵であるはずの人間の腕の中で静かに眠りかけている気の弱いヴァンパイアにはそれができるかどうか。
「くつろいでる最中に家の中で殴りつけるのだけはよしてくれよー」
ケラケラと笑ってみせる。
優しいその声に、夜桜はバルドを見上げた。
だがすぐにバルドの胸に顔をうずめた。
「…そんなことしない…、まだまだバルドと話もしたい、暮らしたいし、
人間の生活にいつまでいられるとかわからないけど、その本に書かれていた二人のように、いつまでも…仲良く…。仲…」
と、途端に声が小さくなった代わりに、寝息が聞こえた。
「おい、夜桜、よざ…おお、寝てる」
完璧に眠っている。
軽く、夜桜の額に口づけをしてみた。
灯籠の明かりを静かに消すと、そのままバルドも眠りに入った。
そういえば、誰かと一緒に寝るのは久しぶりだ。
結構心地いいものなのだと改めて認識する。
朝目覚めたが、夜桜は夜行性のせいか、起きる気配がないので、布団に彼を寝かせたまま、バルドは風呂に入ることにした。
湯船につかると、温かいお湯によって体も起きる。
(そういえば夜桜ずっと風呂入ってないな)
腹や胸や腕には無数の傷跡があり、今までどれほど戦ってきたか思わせるものがある。
筋肉は隆々としていて、逞しい。
それに女受けしそうな顔立ちで英雄ときたら、宿を訪ねてくる女も後を絶たないわけである。
(なんだっけ、ヴァンパイアはニンニクと水とサンザシと十字架と銀が苦手?)
苦手なもの多いなあと思いながら、湯船から出て、バスローブを着こむ。
476:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼6 2/6
11/06/13 23:56:15.27 /fP4/mYV0
食事を作るべく台所へ向かう。
バルドはガルズヘイム人だが、食事は日倭のものが好きだ。
特に甘いものが好きで、ケーキよりも饅頭が大好物だったりする。
(夜桜は饅頭食ったことないんだろうなー)
食事を作りながら、饅頭を一個頬張った。
「味噌汁にー、あ、やべ、味噌がなくなる。タイガーバターもなくなる。白飯炊いてー」
ごそごそと棚を漁ったところに、気配がして振り返ると、眠そうな顔をした夜桜が立っていた。
瞼をこすりながら、近づいてくる。
「早いじゃん、おはよう」
味噌を取り出すと、台所に置いた。鍋はすでにお湯を沸かしている。
「…もう一度…、もう一度したい」
「あ?どうした寝ぼけてんの?」
「…!あっ、わっ、私は、いや、その」
「?」
何をあわてているのか、夜桜は顔を真っ赤にして、たじろいだ。
「なんか変だけどどうしたんだよ」
「その…夢を見て…」
「夢?」
どうも夢で変なものを見たらしいのはわかったが、とりあえず朝食できるまで待っていてくれと、夜桜に頼んでちゃぶ台の前に座らせた。
「お前飯食えるっけ?この三日間何も食ってないけど平気なの?」
ちゃっちゃと用意するが、作った飯の量は一人分。これを分けることになるが、あとは茶菓子で腹を満たせば問題ない。
が、ヴァンパイアという種族は血しか飲まない。ので、夜桜はいらないと首を振った。
それより気になるのが、顔を赤くして今にも湯気が出そうなくらいに、下を向いている夜桜だ。
やっと茶と白飯とたくあん、味噌汁を用意すると、朝食が始まった。
「なんだよ、どうしたよ?」
「名前、ありがとう」
477:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼6 3/6
11/06/13 23:58:33.40 /fP4/mYV0
「これくらいどうってことねーし」
もしゃもしゃとたくあんを食らう。
相変わらず低姿勢の彼に、バルドは気にせず相手をしていた。が、どうも様子がおかしい。
「夢…、私はおかしいのかもしれない」
「なんの夢見たの」
「私が眠りにつくかつくかないかの時に、額に唇の感触がした。悪くないと思ったが、これは…、夢だと思うのに、先ほどから熱が止まらない」
思わず箸でつかんだたくあんを落とした。
ぺたりと音がして、たくあんはちゃぶ台に落ちた。
「…あんだって?」
「その、正直よくわからないけど、…よくわからないんだ。夢の中ではバルドは私の額に、キスして。これが欲求なのだろうか、そうだとしたら私はおかしい」
昨夜、こっそりと口づけしたことを夢だと思い込んでいるらしい。
たくあんを拾い上げると、白米の上に乗せた。
「…夜桜ってさ、女とやったりとかはしないの?」
「え」
「いや、何そのウブな反応。今どき人間でも珍しいぜ。だから、女とやらしーことしたことあんの?」
耳まで真っ赤になる夜桜に、確信した。
経験が全くないのだと。
「あっ、あるわけ…、二百年生きてきたけれど、そんなことあるわけないっ」
「二百年!?」
ある意味すごい。
味噌汁を飲みながら、すっかり真っ赤になった夜桜を見つめた。
(二百年生きてきて孤独で寂しい女経験なし。うーん、むしろ長生きしたからこそ寂しがり屋なのか?)
478:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼6 4/6
11/06/14 00:00:46.39 /fP4/mYV0
「よ、よく考えれば昨日もおかしかった!!バルドの腕の中で熟睡してしまうなんて、ヴァンパイアだったら普通しない、しないのに、私は変なんだ。
確かに私は寂しがり屋かもしれない、けれど、誰でもいいだなんて思ってない。話せる相手は、バルドだと楽しいし、私のことも気遣ってくれるところもあるし。
平気で添い寝までしてくれるなんて、私に全く警戒していない。そのせいか、やけに心が許せる」
素直にすべてを話す夜桜に、ちょっとしたいたずら心が芽生えた。
彼は自分を妄信している状態で、恋愛か友情かわからなくなってきているのだろう。
もちろん恋愛だなんてバルドも夜桜も軽く考えていない。
バルドはともかく、夜桜は全く経験がないうえに、恋愛すらろくにしたことがなかった。
「よっし」
飯をすべて平らげると、バルドは夜桜の顎をつかんで引きよせた。
目の前にバルドの顔がある状態で、夜桜はとても驚いているようだった。
「賭けしよう、賭け」
「賭け?」
「その感情が恋愛なら俺の勝ち、その感情が一時の気の迷いなら俺の負け。俺が勝ったら家事全てお前にやらせるし、
頼みも何でも聞け。ただし一カ月な。俺が負けたら、お前の好きなこと何でもしてやるよ。こっちも一カ月な。
答えが出るまで一週間待とう。どうだ?」
しばらく考え込んで、一週間の間に答えが出るものなのかと思った。
確かに一時の感情なら、熱はすぐにさめるだろう。
さめなければ、どうなるのだろう。
ぐるぐると考え込んでいるうちに、夜桜はすっかりパニックに陥った。
「大丈夫、手出しはしないから、な、無理やり抱いたりなんかしないしない」
「ほ、本当か?」
479:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼6 5/6
11/06/14 00:02:49.70 /fP4/mYV0
「ああ、でもまー、これくらいなら」
と、唇が唇に軽く触れた。
それが何を意味しているのか、一瞬思考が固まった夜桜はわからなったが、唇が離れた時、思いっきりバルドを突き飛ばした。
バルドは柱に頭をぶつけたが、すぐに起き上がって笑って見せた。
「!!!!!!」
「いてて。まあ、まだ俺に気があると決まったわけじゃないもんね、そりゃ拒否するよな」
「別にそんなことはどうでもいい!かっ、賭けとやら、乗ってやろう。ただし一時の気の迷いだ、これは、間違い…ない…と思う…よ!」
だんだん最後のほうに行くにつれ、言葉が弱々しくなっていくが、夜桜はその賭けに乗ってしまった。
何せ恋愛をしたことのない夜桜が、経験豊富なバルドに勝てるはずがなかった。
直感もかなりあるバルドには、もう答えはわかりきっているというのに、悩む姿が面白くて、ついつい意地悪をしてしまった。
(でも…夜桜が、俺に恋愛感情があるとすりゃ面白いよな)
そう、面白い。
嬉しいじゃなく、面白いのだ。
夕方になると、バルドは街に買い物に出かけてしまった。
調味料と食糧がないからだという。
ついていくと言ったのに、目立つと悪いからと、夜桜は連れて行ってもらえなかった。
当然だ、ヴァンパイアが街に出没したと分かれば、警備員が九人は余裕でやってくるだろう。
バルドならそれくらい蹴散らすことはつらいことではないが、夜桜のためによくないと判断してのことだった。
夜桜は、暮れていく空を見つめ、自室兼物置の布団の上で、体育座りをしていた。
まだ心臓がバクバクしている。
ファーストキスなのに、それをいともたやすく奪われてしまった。しかも、まだ好きだとも決まっていない、人間の男に。
480:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼6 6/6
11/06/14 00:04:50.91 /fP4/mYV0
いいや、そんなことはどうでも良かった。
ただ、口づけという行為が、好き者同士ですることを知っているがゆえに、バルドがふざけてやったのか、それとも何か意味があるのかとずっと考えてはため息をついた。
(一時の感情なら…私の勝ちだ。何をしてもらおう。ずっと話を聞かせてもらおうか。それともどこかに連れて行ってもらおうか。異世界にも行きたいし、
特にロマールは行ってみたい。この世界の街すべて案内でも楽しいかもしれない。…うん、そこら辺だ。まず人間のように冒険に出たい)
特に血を吸ってやるとか、こき使ってやるという感情はない。
当然血を吸わないと生きていけないが、四日ほど前に十分吸血したばかり、あと一カ月は吸わなくても平気だ。
一緒に遊んでもらいたい。一緒にいてもらいたい。一緒に異世界に冒険に出たい。一緒に、ずっといたい。
(寂しい)
ごそ、と、バルドの部屋を訪れて、敷きっぱなしの布団に寝転がった。
バルドの匂いがして心地いい。昨日寝たときの安心感を思い出した。
(あんなに心地よかった眠りは初めてだ)
それから夜まで、バルドは帰ってこなかった。
もちろん酒場で久しぶりに会ったなかま友人たちとたまたま飲んだだけであるが、ずいぶん待たせてしまったと反省しながら手土産を持って家に帰る。
がらがらと豪華な家の戸をあけ、大きな声を出した。
「おーい、ただいまー」
しん、と、大きな屋敷からは何も声が上がらなかった。
「夜桜ー?」
自分の部屋に戻ると、なぜか布団の上で夜桜が爆睡していた。
とても心地よさそうな顔をして寝ている夜桜の寝顔はとても無垢で、可愛らしい。
(本当にヴァンパイアなのかなー、なんかとのハーフなんじゃねーの?)
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )レインの回より短くします。レイン覚えてくださってありがとうございます!!
481:風と木の名無しさん
11/06/14 10:16:14.36 smwiSFO9O
自分でサイトでも作れば?
482:風と木の名無しさん
11/06/14 10:30:21.93 Qisrttmg0
>>481も作ってそこに愚痴でも書けば?
483:風と木の名無しさん
11/06/14 14:31:59.78 gbXthSdDO
481ウザいよ
楽しみにしてる人いんのに
484:風と木の名無しさん
11/06/14 16:15:16.84 K2J4GXo/0
いやでもさすがに連投し過ぎのような
このスレだけで、5/28、5/30、6/3、6/5、6/11、6/13と6本
しかもだいたい2日開け
トリップくらいはつけた方がいいと思う
485:風と木の名無しさん
11/06/14 16:19:13.77 ACNsg2zS0
>>481-484
相談・議論等は避難所の掲示板で
URLリンク(bbs.kazeki.net)
>>1くらい読もうぜ。
486:風と木の名無しさん
11/06/15 00:46:26.43 /2clqGL5O
>>484
いつから長編駄目傾向になったんだか
つか調べてるとかキモい。掲示板池
487:風と木の名無しさん
11/06/15 10:41:46.22 Z5p3z2Vv0
>>486
いつからも何も、昔の方が長編の連投はフルボッコだった
488:風と木の名無しさん
11/06/15 14:26:00.30 WAwnHgYh0
傾向はわからんが、眺めてて、文句言われてるから駄目なのかな~と
思うと、なんかが長文連投でも文句言われてなくて、誰か特定の個人が
気に入らないと文句言うのかなぁって見てた。
489:風と木の名無しさん
11/06/15 15:00:53.43 MsCNh7U40
同じ書き手が、同じカプで、多レス、間隔を空けない投下、←これが2スレほど続く
と、だいたい叩かれる。自サイト作ってそこでやれ、と。
公共の設備を占領して、「公共の設備だから自分が使っても問題ないだろ」と言うのと似ている。
490:風と木の名無しさん
11/06/15 15:29:06.78 XbpOpqwSP
そんなに長編がNGなら、読み切り推奨とか書いとけばいいじゃん
このままじゃなんのためのスレなのかわかんないよ。
491:風と木の名無しさん
11/06/15 16:06:43.04 UO8uls2G0
相談・議論等は避難所の掲示板で
URLリンク(bbs.kazeki.net)
492:風と木の名無しさん
11/06/15 17:00:17.53 gK3PQ1L40
この誘導って意味あるんかね
493:風と木の名無しさん
11/06/15 17:20:42.72 zsJRH+Rz0
読み専だけどまったく占領されてるなんて感じないよ
494:風と木の名無しさん
11/06/15 17:56:40.05 nhObPh4S0
気にせず投下すればいい
廃れるより投下が多い方がずっといい
ただしケチ付けられないようにID付けてくれ
495:風と木の名無しさん
11/06/16 09:16:53.91 11Sl1o8j0
擁護レスの方が不快な言葉遣いなのが・・・
ジャンルそのものの心象が悪くなるから気をつけた方がいいよ
496:風と木の名無しさん
11/06/16 10:44:31.93 Q1C+9iFT0
避難所にて投下代行等について検討中
ご意見のある方は、是非
URLリンク(bbs.kazeki.net)
497:風と木の名無しさん
11/06/16 12:44:26.97 mtVABCsIO
ところで、もうすぐ新スレの季節ですね。
申し訳ない事に私は建てられる状況ではないので、可能な方にお願いしたいです。
長編はたくさんあるけど、今までの様子からすると意見が出るのは投下感覚が短い物だけのようです。
これを機に長編投下は「一週間空ける」とか明確なテンプレを決めるのもいいかもしれませんね。
498:風と木の名無しさん
11/06/16 15:22:36.44 yYZkQZBYO
>>397
それだったら空ける日を一日二日にしてトリップ徹底の方がいい
499:風と木の名無しさん
11/06/16 15:38:07.74 /JKJVE2m0
テンプレ2
_________
|┌────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^───────
└───│たまにはみんなと一緒に見るよ
└────────
_________
|┌────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────┘
500:風と木の名無しさん
11/06/16 15:39:00.40 /JKJVE2m0
誤爆です
失礼しました
501:風と木の名無しさん
11/06/16 15:41:55.61 /JKJVE2m0
というわけで次スレ
モララーのビデオ棚in801板65
スレリンク(801板)
502:風と木の名無しさん
11/06/16 18:13:53.74 gW+ar76UO
乙!
503:風と木の名無しさん
11/06/17 00:10:17.33 iDzPwOULO
スレ立てにくい状況の中>>501おつあり
長編も短編も、興味があれば読む、興味なければヌルー
いままでもそうしてきたし、自分はこれからもそうするし
そんな訳で字書きさんたちにはこれからも良質な萌えを期待
いつも萌えをありがとねえ、これからもよろしくねえ
504:風と木の名無しさん
11/06/17 00:47:25.72 9YPCEN1rO
君が好きだった
だから無防備に向けられた君の背にためらいなく刃を突き立てた
君は振り返ることもなくあの暗い井戸に落ちた
水道が引かれ使われなくなった裏山の井戸
板で蓋をし重り石を乗せてしまえばきっともう二度と開けられることはない
冷たい石の井戸の側面に頬ん寄せる
石の隙間から冷えた空気がわずかに漏れてくる
君の苦しげな声も
助けを求めているのか?私への呪詛の言葉が?耳を寄せた
“あい……し……てる……”
なんだって
“……愛して…る”
誰を
“愛している”
やめろやめろやめろやめろやめろやめろ
鮮明になる言葉近くなる声
刺され井戸に落とされ閉じ込められ
それをした男に愛を囁くこの男はなんだ!人ではないのか?
私の愛した人は井戸で変容したのか
それともあの人は井戸に落ちてはいないのか
どちらにせよ今ここに閉じ込められているモノは人ではない化け物だ
逃げなくては逃げろ逃げるんだ
そして逃げた脱兎の如くに
それっきりあの井戸には行かなかった
長い年月の後死を前にして私はひどく穏やかだ
妻と子供たちとその伴侶、たくさんの孫たち
ああなんて……
「愛している……」
その瞬間あの井戸が脳裏に浮かぶ
全てを理解し私は苦しみと後悔の中生涯を閉じた
505:風と木の名無しさん
11/06/17 00:52:38.64 u4lNLr110
なんぞ?
506:風と木の名無しさん
11/06/17 01:02:44.97 4dPfdfRGO
>>504
山に井戸…?
湧水を樋で引いてくるとかじゃなくて?
507:風と木の名無しさん
11/06/17 09:52:18.80 c6i0fPXq0
飲用なら井戸の方いいんじゃ?
放射能で閉鎖されちゃった某村も、ある意味山に井戸。
508:風と木の名無しさん
11/06/17 15:24:25.15 WFUoyQgn0
テンプレもないし、タイトルもない
どっかからのコピペなんじゃないのか
509:オリジナル 1/3
11/06/17 18:14:20.25 Uh3230jCO
>>501乙
埋めがてら、中途半端に書いたものを供養させて下さい。
オリジナルで高校生
演劇部女装中男子×サッカー部
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「長い髪に、…ほら、パンツも女物なんだよ」
恥ずかしげにはにかみながら、裾を摘んで持ち上げられたスカート。
その下にはスラリと伸びた白くて細い脚。
全体的に透けていて、レースの縁取りがされた三角の生地。
サラサラのプラチナブロンドが頬に当たる。
サランだかなんだかいう材質の、腰まであるカツラ。
化粧で目鼻立ちのくっきり強調された顔。
瞼まで突き刺しそうに伸びた睫。
赤い唇。
華奢な作りの体。
絢爛豪華な鹿鳴館スタイルのドレス。
レースのパンツ。
パンツからちょっとはみ出てる金玉。
舞台の最奥の控え室。
全員着替えが終わって、役者、音響、大道具、クラスのみんなは荷物をごっそり持って、緞帳付近でてんやわんや。
そんな中、テーブルに押し倒されたメイドのオレと、シンデレラの意地悪な姉2。
周りは現代の脱ぎ散らかされた制服と校舎。
劇の最初に延々シンデレラを罵倒する、そこそこ台詞があるコイツと、「おかえりなさいませ」の一言だけで笑いを取る為の出落ちのオレ。
硬質な美人の意地悪な姉2が誰かと、文化祭前から騒然となった数日前が懐かしい。
それが今、何故こうなった。
世界観が滅茶苦茶だ。
「おま…、遊んでる場合じゃないだろ、本番もう…」
「意地悪な姉なら一人居れば十分」
そういって笑ってみせる顔は、そこらの女子よりよっぽど綺麗で可愛い。
シンデレラは、クラスで一番可愛い当馬子よりも、こいつがした方が似合ってたろうに。
510:オリジナル 2/2
11/06/17 18:19:33.42 Uh3230jCO
その意地悪な姉2が、オレの質素な紺のメイド服の裾へと手を入れ腿を撫でる。
ついでにパンツまで引き下げにかかる。
ちょっと待て。
こんな冗談シャレにならない。
「ちょ、マジで」
「あー、やっぱり受井っていい筋肉してるよな。サッカー部だろ?毎日走ってるもんな」
明らかにパンツと部活は関係ないし、何故強引に脱がしにかかるのか。
「パンツと部活関係ねぇだろ」
「知ってる」
いつもは無臭の癖に、部活帰りには偶に化粧品の良い匂いもして、女子みたいに細いと思っていた攻山。
その肩を押し返して、案外ちゃんと育った男の骨格だと知った。
舞台に立つとき以外は猫背で俯き加減で小さいイメージだったのに、抱き合えばそう変わらない身長だとも今知った。
「みんな、お前の長台詞…待ってるの」
「知ってる」
演劇部万年色白貧弱で大人しい攻山を、からかうために作られた、それはクソ丁寧に長い長い長台詞。
全部間違えずに言えるか賭の対象になってる。
5分以上ある台詞を、一度も咬んだり間違えないくらい舞台好きなんだろう?
「好きだよ」
心の中を見透かされたような言葉。
舞台以外でそんな台詞をいう奴だったのか。
ヌルリと自分の舌へと攻山の舌が重なる。
今日の舞台、初めて攻山へ賭けたのに、本人居なきゃ掛け金どうなんだ?
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンガオオクリシマシタ!
511:風と木の名無しさん
11/06/17 20:36:10.26 cikai9vD0
梅がてら、サイトと逆カプになってしまったのをっと。仮面ライダー大図 腕パン
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
どうしてこんなことに-AGは呆然とベッドに押し倒されていた。
何も悪いことはしていないハズだ。アソクの気に障ることをいった覚えもやった覚えもない。
グリード相手だからと人間相手よりちょっとは、キツいあたりをしたことはあるかもしれないが
それがどうしてこのようなことになるのか、ちょっと意味がわからない。
仕事が終わって部屋に入ってきて、なんだか知らないが急に押し倒された。
ベッドに頭を打ち付けて、文句を言おうとした口をアソクにふさがれる。
舌先まで入ってきて抵抗する前に、ぐいぐい攻め立てられてよくわからなくなる。
舌先が触れる部分全部が熱い。どうにかなってしまいそうだ。
おとなしくやられる気はないのだが、アソクに睨まれるとそうもいっていられない。
何度か抵抗を試みたが、ギロッとあの目に睨まれて身動きがとれないのだ。
正直男相手にナニとか個人的にかなりどんびきなのだが、
あの瞳でじっと見つめられると、抵抗することがまるでいけないことのように思えてしまう。
それぐらい威圧する勢いでのしかかってくる。なにより下手に抵抗すると刑事さんの身体に
なにかあったらとついつい自制してしまうのだ。
「AG」
名を呼ばれて顔をあげる。にぃっと笑うアソクと目があった。
「俺以外のことを考えるな」
グリード、欲望そのものの名を持つだけあってアソクが欲望をむき出しにすればそれだけで気迫がある
。
圧倒的な王者の瞳だ。これは逆らえそうにない。
「・・・アソク、ちょっと」
「うるさい!」
俺、何されるの?とわかりきったことを聞こうとして止められる。アソクの手がばさばさとAGの服をたく
しあげる。
512:風と木の名無しさん
11/06/17 20:37:50.73 cikai9vD0
「面倒だ」
アソクが長いツメのついた手をAGのシャツにひっかけようとした瞬間だけAGは抵抗した。
「うわああ、ストップ!!ストップ!脱ぐから!脱ぐからッ!!やめて、やぶかないで!」
最後の方はほぼ悲鳴だった。金のないAGにとって服はかなりの生命線だ、安いとはいえ気に入った服を
破かれてはたまらない。
「チッ」
舌打ちしてアソクが手を止める。グリードの姿をしていた手が元にもどった。
「その気になったか」
「いや、そういう・・」
「なに!」
「いえ、ハイ。ソウデス」
もう脅しだよ、これ・・・。半分泣きそうになりながらAGが一枚一枚服を抜いて畳んでいく。
「ア、アソクは?」
まあ自分だけ脱がしてどうこうするわけでもないので聞いてみると仕方なさそうに脱ぎ始めた。
「うん・・・いやわかってた」
そういうことなんだろうなあと思う。他の女のところに行かれても面倒だし、自分が相手をして我慢すれば
誰かが救われるのだ。そうに違いない。前向きに考えろ!と自分を奮い立たせるが。割合絶望的な気分になってくる。
少なくとも男に抱かれる趣味はない。この状況をどう逆転すべきか、アソクの顔を見るがいいアイデアなど出てきそうにない。
その間もアソクはバサバサと服を脱ぎ捨てている。
「おい」
「あ、はい・・」
睨まれてシャツをぬぎ、ズボンを脱ぎ、パンツ一枚になる。そういえば初めて刑事さんにあったときもパンツ一枚だったなと
どうでもいい思い出に浸りたくなった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンガオオクリシマシタ!
ここまで書いて「おれはしょうきにもどった!」つづかない。