11/05/27 19:34:41.98 P1y73j2P0
オリジナル。勢いで書いた。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
かつて大海を自由に泳いでいた頃の記憶は、すでに記憶の片隅にしかない。
あれほどしなやかであった体躯をうねらせることもすでにできず、
自身がかく水に溶けるように透明に広がっていたそのヒレは白く濁り、或いは欠けている。
確かに大海原の中では端役であったかもしれないが、
仲間と共に連れ立って泳ぎ、一塊となってするりするりと向きを変え、
喰らおうとする大魚の目をかわした時などは、己の小ささを忘れるほどに実に痛快であった。
今はこれほど小さいが、いつか八寸ほどになったら連れ添う相手もできるのだろうと、
青い水の向こうに心地良い前途を夢想していた。
だが今は、ただ小さな小袋の中に隙間無くぎゅうぎゅうと押し込められている。
はて、何がどうしてこうなってしまったのやら。
考えたところでどうとも答えは出ぬのだが、考えずにはいられない。
堂々巡りに陥っている頭の片隅に、どこからともなくしくしくとすすり泣く声が聞こえてくる。
動かぬ目を無理に動かしてそちらを見れば、己と同じように袋に詰められた仲間の姿が見える。
いや、見渡す限りそのような同士ばかりであるのだが、そのうちの一匹がさめざめと泣いている。