11/05/23 11:24:02.45 aKNB4j2U0
>>335
うおお理想の鼓舞←朝←いー蒸す!!!
ごちそうさまでしたごちそうさまでした!
姐さんの書いた現実味で致すE/A読みたいっす!
351:The green knight runs through night前編 1/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:36:07.01 N+xvEwZZO
半生。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>190のまた後日の話、エロありです。女性絡み+当て馬注意。
二回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「……あっ、はあ、ブリシト……ダ、ダメだ……」
「何がダメなんだ力ト-。ここ、気持ちいいんだろ?ほら、こんなに締め付けてるぞ」
「うあっ!バカ、や、やめ……ブリシト!」
「やめるもんか。やめたら困るのはお前なんだぞ、力ト-」
俺は意地悪な口調と共にぐりぐりと指を動かし、シーツの上でのたうつ体に被さって甘く責め立てた。
熱く狭い中は塗り込めたジェルで潤い、突き入れた俺の指をくわえ込んで、ひくひくとうごめいている。
相棒の方も俺の中心を握って刺激を与えてくれていたが、下肢に施される愛撫の強さにその手は震え、動きが段々とそぞろになった。
ベッドの上、素っ裸で重なり合った俺達の体は、どちらも熱くなっていた。
俺は緩急を付けて擦ってやりつつ、俺の肩に縋って悶える奴の耳元に欲望を囁いた。
「なあ力ト-……もうそろそろ、いいだろ?」
「……いいって、な、何……?」
「おいおい、とぼけるなよ。お前の中に入りたいって、ずっと言ってるじゃないか。いい加減イエスと言えよ……力ト-」
ねだる言葉に合わせてぐっと突き上げると、相棒は高い声を上げてのけ反った。
あれから何回か肌を合わせたが、俺達はまだ本当の意味で結ばれてはいなかった。
男同士で繋がる行為を相棒が怖がり、指しか入れさせてくれないからだ。
まあ無理はない。自分の後ろに男のドデカいモノが入り込むなんて、俺だって想像しただけで怖い。
だから怯えてる奴の気持ちを汲んで、固いそこを時間をかけて丁寧にほぐし続けた。
相棒は初めての時と、それから何回かは、触れられる度にうろたえて戸惑った。だが優しく根気よく撫でて擦ってやるうちに、俺の指をすんなりと受け入れ、動きに合わせて締め付けるほどになった。
今夜は俺の三本の指を感じて、甘く切ない喘ぎを絶えず漏らしている。俺のモノは指なんかよりはるかにデカいんだが、この様子なら上手くいきそうな気がする。
荒く息をつく唇を吸って、俺はさらに問いかけた。
352:The green knight runs through night前編 2/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:40:00.37 N+xvEwZZO
「力ト-……入れていいよな?俺はお前の全部が欲しい」
「や……やだ、ブリシト……まだ、嫌だよ」
「そう言うなよ。大丈夫だ、痛くないから。うんと優しくしてやるからさ」
「あ、うっ……で、でもブリシト……やっぱり、んんっ」
「まだ不安なのか。しょうがないな……じゃあ、あれでも使ってみるか」
ため息をついた俺は動きを止めて、指を一旦引き抜いた。体を捻って、サイドボードの方に手を伸ばし、一番下の引き出しの中にある物を取り出した。
相棒は蕩けたような顔つきで俺の動きを眺めていたが、手にした物を見つめた途端に目を見開いた。
「……ブリシト!そ、それ」
「力ト-、こいつが入りゃ俺のだって余裕だろ。試してみようぜ」
「ダメ、やめろ!絶対に嫌だ!」
「なんでだよ!お前の為に、やってみようって言ってるんじゃないか」
「そんな思いやりいらない!どうせ、どっかの女の子に使ったんだろ。そんな物を入れられるのはゴメンだ!」
「そりゃ誤解だ力ト-。こいつは前に若気の至りで買ったんだが、女にはみんな使うのを断られた。だからまだ真っさらで、お前が初めてなんだ」
「……ちっとも嬉しくない!」
憤慨した相棒は俺に蹴りを入れようとしたが、重そうな脚の動きにいつもの切れはなかった。
たやすく脚を掴んだ俺は持っていたディルドをかたわらに置き、相棒の肩も掴んで一気に体をひっくり返させた。
「ブリシト……おい、ちょっと!」
「じっとしてろよ、力ト-」
あまりの嫌がり様が俺の悪戯心に逆に火を点け、少し奴を虐めてやりたくなった。
俯せた体にのしかかって押さえ、脚を開かせると、なだらかな曲線を描く尻の間に、再び握ったディルドをぐいっと押し当てた。
異物の先端がほんの少し潜り込み、同時に相棒が息を飲んで、体を固くするのがわかった。
「あ、あっ……!やだ、やめて……やめてくれ、ブリシト!」
「力ト-、力を抜けよ。そう力むと痛いかもしれないぞ」
「こ、このバカっ……最低野郎!やめろったら、そんな物まっぴらだ……うわ、あ!あーっ」
腰を抱え込み、うなじや背中にキスを落としながら、俺はディルドをじわじわと挿し入れた。
三分の一ほど埋め込んだところで相棒の切れ切れの罵倒は止まり、俯いた顔をシーツに押し付けて、唸るような声を絞り出していた。
353:The green knight runs through night前編 3/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:43:17.41 N+xvEwZZO
奴がびくびくと震えているのに気付き、ちょっと心配になって呼びかけた。
「力ト-大丈夫か、痛くないよな?俺、ちゃんと優しくしてるだろ」
「……バカ、バカ野郎、君なんか、嫌いだ……うぐっ」
悪態をついた声は弱く掠れていて、ひょっとしてまた泣かしちまったかもと焦った俺は、顎の下に手を差し込んで顔をこちらに向けさせた。
「ああ、やっぱり……泣くなよ力ト-」
「……君が悪いんだ、君が、ひどいことするから」
「わかったよ、俺が悪かった。今、抜いてやるから」
苦笑した俺は、流れる涙を吸い取るように頬にキスして、そうっとディルドを引き抜いた。
去った異物に安堵して力を抜いた相棒の体をまた返し、腕を回して正面から抱きしめた。
「力ト-、なんだかお前を抱く度に泣かせてる気がするな。あんなに嫌がるなんて思わなかったんだ、もうしないから泣くな」
「……あれは嫌だ。固くて冷たくて、気持ち悪かった」
「なら俺の指は、熱くて気持ちいいってことだな。だったらこっちはもっと気持ちいいぞ、そう思わないか?」
高ぶったモノを太股に擦り付けてやると、相棒は顔を赤く染めて口をつぐんだ。
俺は何も言わない唇を吸って、ねっとりと舌を絡めた。相棒は深くむさぼる舌に素直に応え、その手は俺の中心を包み込んだ。
俺も奴のモノを握り、口づけながら互いに甘く激しく快感を与え合った。
長く塞いでいた唇をやっと離すと、相棒は息を乱しながら囁いた。
「ブリシト……君を拒んで、すまないと思ってる……でも、僕は怖くて」
「うん、まあしかたない。誰だって、未知の体験は怖いさ。踏み出すには度胸がいるからな」
「……そうなんだけど、僕が怖いのは、ちょっとまた違うような……いや、違わない、のかな」
「何訳わからんこと言ってるんだ、力ト-」
「ゴメン、気にしないで」
「バカ、そんなだとますます気になるだろ。正直に言えよ力ト-、何が怖いってんだ」
手を休めた俺に真剣に見つめられて、相棒は困った表情で目を泳がせた。
もう一度名前を呼んで促すと、観念したように目を閉じた。
「僕が怖いのは……君に触られて、指を入れられるだけでもあんなに感じるのに……その、君自身を受け入れたら、一体どうなるのかが、こ、怖いんだ……」
354:The green knight runs through night前編 4/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:46:13.71 N+xvEwZZO
一息に告白した相棒は、俺の視線から逃げるように、体を翻してまた俯せになろうとした。俺は肩を掴んでそれを止め、弱くもがく相棒を上から見下ろした。
押し黙ってしげしげと見られているのがいかにも居心地悪そうに、相棒は目を逸らして忙しく瞬きを繰り返した。
「……何か言えよ、ブリシト。おしゃべりな君が黙ってると、やたらと気まずい」
「そうか。なんて言おうか、ちょっと迷ってたんだ。お前があんまりにも、かわいらしいことを言ってくれるもんだから」
「……やっぱり、しゃべらなくていい」
「そうはいかない。言葉は大切だぞ、力ト-。お前がただ痛みや、俺に入れられることを怖がってるんじゃないってことがわかって、俺は嬉しいんだ」
もういいから、と悲鳴のように叫ぶのを無視して、俺はさらに告げた。
「はっきり聞かせてもらった以上、お前を無理に抱いたりはしない。力ト-、気持ちが決まったら教えてくれ。俺は根気よく待つから」
「ブリシト、君……それでいいのか?」
「いいとも。実は俺は、楽しみは後にとっとくタイプなんだぞ、力ト-」
黒い目を覗き込んでおどけてやると、相棒はつられて頬を緩めた。
「ありがとう、ブリシト……それまでは、こっちで」
「……うお!そうだな、こっちで一緒にイこう、力ト-」
相棒の手にきゅっと握られて体を跳ねさせた俺は、笑って奴のモノを握り返し、扱き上げながらキスを交わした。
こうして互いの手で果てるのが、俺達のいつもの流れだ。結局今夜も最後までたどり着けなかったが、相棒の本心を知った俺に寂しさはあまりなかった。
俺が欲するように、こいつが俺を求めてくれる時が来る。それまでは惜しみない愛撫を与え続けて、ひたすら待とうと思った。
それほどまでに愛しく、大切な奴なんだと自覚した。
たった一人の俺の相棒、俺の兄弟。今はもうそれ以上の、けして失いたくはない唯一の存在。
大切だ、と心の中で何度も繰り返し、俺は俺だけの相棒に深く深く口づけた。
ただならぬ仲になったとは言え、俺達は常にイチャついたりはしていない。
ベッドにいる時以外は屋敷でも会社でも、ごく普通に日常を過ごしている。
ふざけた俺が相棒の頬にキスして、軽く肩を殴られるなんてことはあるが、そんなのは俺達にとっては、もはやありふれたスキンシップだ。
355:The green knight runs through night前編 5/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:50:17.80 N+xvEwZZO
前より頻度は減ったが、俺はたまに女の子達と遊ぶし、二人とも脈無しと知りつつ、いまだに俺の美人秘書を意識している。
全くのゲイでもなければ、愛してると誓い合った単純な恋人同士でもないから、お互いに激しく嫉妬するなんてこともない。他人が知ればちょっとおかしな感じかもしれないが、俺達に問題はなく、ごく円満な関係だ。
その美女は、我が社の新聞の広告主になる予定の、下着会社の社長だった。
濃いブラウンの長い髪は緩めの巻き毛で、大きな目は黒く情熱的に輝き、ラテンの血が入っているらしいエキゾチックな容貌をしていた。秘書とはまた違った魅力の彼女を見て、俺と相棒は『イケてる女だ』と視線で会話した。
背の高い男前の部下を二人従えた彼女は、秘書も交えて社長室で俺と話をした。
相棒は壁にもたれて立ち、何やら手帳に熱心にメモを取っている……と見せかけて、得意のスケッチで彼女の姿を描き留めているに違いない。
話が纏まり、社長室を出た彼女は部下を先に行かせた。
俺と秘書と握手を交わし、最後に相棒の手を握った。その時顔を近くに寄せて、相棒の耳に何かを囁いたようだった。
手を離した相棒は、立ち去る彼女の官能的な後ろ姿を見送ると、ちょっとニヤつきながら応接スペースのソファに腰を下ろした。
秘書も自分の席に戻ったが、俺は美女の囁きがなんだったのか気になり、座って手帳をめくっている相棒に後ろから近付いた。
「おい力ト-、彼女お前に何て言ってたんだ?」
「ん?別に、なんでもないよ」
俺はとぼける奴の肩越しに、その手から手帳を奪い取った。案の定紙の上には、彼女のナイスバディがバッチリ描き写されていた。
「嘘つけ!彼女、お前の手だけ両手で握ってたぞ。正直に吐け、何言われたんだよ」
「ブリシト、そうムキになるなよ。たいしたことは言ってない。『あなた、私の前彼に似てるの。またぜひ会いたいわ』って言われただけさ」
「……そりゃ、たいしたことだろ!」
「でもそれだけで、連絡先を訊いた訳じゃないし。まあまた会社には来るだろうから、その時訊かれるかもしれないけどね」
まんざらでもなく鼻の下を伸ばす相棒を眺めて、俺はちょっとおもしろくない気分だった。俺は妬いてるのか。だとしたら相棒に?彼女にか?……多分その両方だ。
相棒の淡い期待が外れることを俺は何となく祈り、奴の手帳を放り投げて返した。
356:The green knight runs through night前編 6/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:53:15.49 N+xvEwZZO
その翌々日、ちょっとした異変が起きた。昼食がてら外出した相棒が会社に戻らず、俺に何の連絡もして来なかった。
夕刻、相棒の不在に気付いた秘書に、力ト-はどうしたの?と尋ねられたが、俺は肩をすくめるしかなかった。
しかたなく自分で車を転がし、自宅に帰った。夕食の席に着いたものの、相棒のことが気になってどうにも食が進まない。
俺は今日の昼のことを思い返してみた。来客で出られなかった俺は、相棒に買い物を頼もうと会社から電話をかけた。
街中にいた相棒は電話に出たが、途中で誰かに声をかけられたようだった。
焦った様子の奴は、後でかけ直すと電話を切った。しばらく待ったが一向にかかって来ないので、俺から再びかけた。
すると、電源が切れているというメッセージが流れた。なんだよあいつ!と鼻白んだが、さほど重要な用事でもなかったので、繋がらない携帯電話を置いて仕事に戻った。
それから何回か電話をかけたが、やはり電源は切られたままだった。
俺は不安に取り憑かれた。こんなことは、今までなかった。常に会社に行くのも帰るのも一緒だったし、何か用事があって出かける時は、必ず連絡をして来た。
無断で俺の側を長らく離れるなんて、奴が絶対にする筈がないんだ。
きっと相棒の身に何かあったに違いないと確信した俺は、食卓を離れてガレージに向かった。
万一の時の為に、俺達はそれぞれ発信機を身につけていた。俺はブラシク・ビューティーに乗り込んでナビを操作し、相棒の信号の位置を確認した。
そして緑のマスクと衣装に着替え、ガス銃と念のために相棒の銃も持った。
ガレージに寂しげに置かれたままの相棒のバイクを眺めてから、麗しの愛車と共に夜の街に飛び出した。
「全く、お前と来たら……美女にデレデレして油断するから、こんなことになるんだ」
「うるさいな、美人に弱いのは君だって同じだろ」
部屋に連れ戻した相棒に苦言を呈すると、俺のベッドに横たわった奴は、負けじと言い返して来た。
街外れまでやって来た俺は、古びたビルの下で車を停めた。相棒の信号は、ここの最上階から発せられていた。
今は使われていない様子のビル内に侵入すると、明らかに怪しい黒服の男が、エレベーターの前で見張りをしていた。
問答が面倒臭いのでガス銃を一発お見舞いし、上へと上がった。
357:The green knight runs through night前編 7/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:56:29.42 N+xvEwZZO
最上階は外観とは大違いに、金が掛かっていそうな洒落た内装になっていた。廊下の奥に進むと大きなドアがあり、その前にも黒服の男が頑張っていた。
俺に気付いて懐の銃を取り出すより早く、ガス弾を喰らわせて気絶させた。すると中から、問いただすような女の声が聞こえた。
相棒は女といるのかとちょっと驚いたが、ためらいなく鍵を掛けられた錠に実弾をぶち込んで壊し、勢いよくドアを蹴り付けて部屋に入った。
部屋の中には、とんでもない光景があった。相棒はベッドに転がり、柵にゴムのロープで両手首を縛り付けられていた。奴は上半身にシャツを羽織っただけで、ほとんど裸の情けない姿をしていた。
そのかたわらには、あの美しい女社長がいた。艶やかなワインレッドのガウンを身に付けていたが、前がはだけてあらわになった胸は真っ平らだった。しかも下半身にはなんと、隆々と猛った男の持ちモノがくっついていたんだ!
一瞬気が動転したが、赤い顔をして泣きそうになっていた相棒が、こちらを見て嬉しそうに笑ったので、俺は冷静さを取り戻した。
「おっと、俺としたことがどうやら場所を間違えたようだな、失礼した!」などとテキトーなことを叫んで、目を丸くする美女(?)に容赦なくガス銃を発射した。
ロープを解いてやり、そこらに散らばっていた服をひっ掴んで、ふらつく相棒の肩を支え、俺達はビルから抜け出した。
屋敷に帰ると、薬を使われたらしくやや朦朧としている相棒を、とりあえずベッドに寝かせた。帽子とマスクを外して、横で椅子に腰掛けた俺に、相棒はことの経緯をとぎれとぎれに語った。
昼食を取り終えて俺と電話で話していた相棒に、偶然を装いあの女が声をかけた。一緒にお茶でもどうかと誘われ、車に気軽に乗り込んだ奴の首筋に、女は何かを注射した。気絶した相棒の携帯電話の電源を切ったのも、もちろんあの女だ。
相棒が気付くと見知らぬ部屋のベッドに縛られていて、目の前にはガウンの女が妖しく微笑んでいた。
「結局あの美女は実は男で、会社で会ったお前に目を付けて掠い、無理矢理その……モノにしようとしたって訳か」
「……あいつ、僕が前の男に似てるって、それは本当だったらしい。可愛いがり過ぎたら姿を消してしまって、寂しかったところに僕が現れて……どうにもたまらなかったんだって」
「可愛がり過ぎた、って……想像するのが怖いな」
358:The green knight runs through night前編 8/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:59:19.34 N+xvEwZZO
眉を寄せて忌ま忌ましげに話す相棒を心から気の毒に思ったが、俺にはもっと気になることがあった。
だがそれを切り出すのが気まずくてチラチラと顔色を窺っていると、相棒は心を読み取ったらしく、ため息混じりに言葉を吐いた。
「……ヤラれてないよ」
「ホントか力ト-!そりゃよかった」
思わず叫んでベッドに膝を乗り上げ、満面の笑みで手を握った俺を、相棒は真っ赤な顔で睨んだ。
「本当だよ……さらに変な薬を嗅がされて、襲われかけたところに君が来てくれた」
「そうか、間に合ってよかった!お前の貞操が無事で何よりだ、力ト-」
「貞操って……」
「くそっ、あのオトコ女!いや、オンナ男か?ご自慢の顔に一発、ぶちかましてやるんだった!俺の相棒をひどい目に合わせやがって!」
俺は可哀相な相棒の上体を抱き起こし、強く抱きすくめてやった。すると相棒は、居心地悪そうに体をうねらせた。
「どうした力ト-、気分悪いのか」
「ブリシト……僕、僕は」
抱きしめた相棒の体温は上がり、絶え絶えの呼吸は荒く、逸らされた目は潤みをたたえていた。ふと下肢に目をやると、奴の中心は立ち上がって、切なそうに震えていた。
「おい力ト-、薬って……まさか」
「……て、ブリシト」
「力ト-、なんだ?何が言いたい」
「だ、抱いて……ブリシト、僕を、抱いてくれ……」
……今何て言った?
俺の頭は真っ白になり、次いで顔が真っ赤に染まった。相棒がそんな風にねだるなんてことは初めてで、俺の胸は高鳴り舞い上がりかけた。
しかし待て、おそらくあの女に使われた媚薬か何かで、こいつはちょっとおかしくなっているんだと思い直した。
体は俺を求めていても、心が本当にそうとは限らない。俺は深呼吸して、腕の中の相棒を見つめた。
「待てよ力ト-。そう言ってくれるのは嬉しいけど、今のお前は、正気じゃないだろ?」
「正気だよ、ブリシト。僕は本当に、君が欲しいって……」
「そうか?薬で熱くなってるから、気も高ぶってるんじゃないかな。後で正気になったお前に怒られるのは俺なんだからさ、ちゃんと確かめときたいんだよ」
359:The green knight runs through night前編 9/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 02:02:29.34 N+xvEwZZO
「……なんだよ、その気になったら教えろって、君が言ったんじゃないか!せっかくその気になったのに、ウダウダ抜かすなよ!」
いきなりケンカ腰になられて驚いたが、それも薬のせいだと思って俺は相棒をなだめにかかった。
「落ち着けって力ト-。薬に惑わされてるお前に付け込みたくないんだよ、俺は。本当に俺が欲しいならいいんだが、お前はまだ、動揺してるだろうし……」
「動揺してるさ、女のフリした男に襲われかけたんだから!いいからしのごの言わずに抱けよ、ブリシト。あんな変態にヤラれるくらいなら、とっとと君に突っ込まれた方がマシだ!」
俺の肩を突き飛ばして叫んだ相棒に向かって、口より先に手が動いた。咄嗟に俺は、奴の横っ面を平手で張り飛ばしていた。
ぐらりと体を傾けた相棒はシーツに肘を着き、打たれた右頬を手で押さえた。
「力ト-、このバカ野郎!なんて言い草だ!そんなヤケクソな理由で欲しいなんて言われて、俺が喜ぶとでも思うのか?見損なうな!」
声の限り怒鳴り付けた後、震える相棒の口端に、血が滲んでいるのに気付いた。
しまった、と思った。今のこいつは普通じゃないのに、その言葉にキレてぶん殴るなんて、俺は一体何をやってるんだ。
たちまち後悔し、俯いたままの相棒の肩を両手でそっと掴んだ。
「……殴って悪かった。でもわかってくれよ、お前が本当に大切なんだ。心から俺を求めてくれてるんじゃなきゃ、お前を抱いたって虚しいだけだろ……力ト-?」
顎に手をやって上向かせると、相棒はぽろぽろと涙を零した。ああくそ、またか!と自分に舌打ちした俺の胸に、相棒は顔を埋めてもたれかかった。
背中に腕を回して抱き着く奴の頭や体を、俺は優しく撫でてやった。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
360:風と木の名無しさん
11/05/24 03:34:57.31 anK91vpqO
支援
は、早く続きをハアハア
361:風と木の名無しさん
11/05/24 17:29:21.42 ig+aLQtu0
|`ゝ
_//´
/ :;/' ただいま>>359はにぼしをドッキング中です。
_/@,;)ゞ
_/;@/ ̄ このまましばらくお待ちください。
/",:;ン
__/,/
362:風と木の名無しさん
11/05/24 17:37:25.02 atADEt8K0
最初から2回に分けて投下と書かれているし
初回の9/9すべてうp出来てるんだから支援は不要でしょ >>360
長編を短気に連続投下すると「占有」視されることもあるから
あまり急かすと作者さんが困惑すると思われ >>361
363:風と木の名無しさん
11/05/24 22:44:01.09 anK91vpqO
何このオバサン
364:風と木の名無しさん
11/05/25 04:49:06.66 O5jGVOKsO
>>335
ありがとう!超絶もだえました!
続き妄想がとまらない
365:風と木の名無しさん
11/05/26 20:57:31.48 utICRb+60
>>361
このAA、どっちが攻でどっちが受なんだ?
366:風と木の名無しさん
11/05/26 23:55:48.47 qG08s+WJ0
>>365
リバ
367:風と木の名無しさん
11/05/27 08:31:19.12 90xJRBmc0
つーか♂同士とは限らんだろw
368:風と木の名無しさん
11/05/27 12:19:03.50 KkWST6ND0
>>367
ここを何板だと思っているのかね
369:風と木の名無しさん
11/05/27 15:02:33.43 sA0O6KrJ0
そっくりすぎて、くんずほぐれつしてたら
どっちがどっちだかわかりません(><)
370:にぼし 1/3
11/05/27 19:34:41.98 P1y73j2P0
オリジナル。勢いで書いた。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
かつて大海を自由に泳いでいた頃の記憶は、すでに記憶の片隅にしかない。
あれほどしなやかであった体躯をうねらせることもすでにできず、
自身がかく水に溶けるように透明に広がっていたそのヒレは白く濁り、或いは欠けている。
確かに大海原の中では端役であったかもしれないが、
仲間と共に連れ立って泳ぎ、一塊となってするりするりと向きを変え、
喰らおうとする大魚の目をかわした時などは、己の小ささを忘れるほどに実に痛快であった。
今はこれほど小さいが、いつか八寸ほどになったら連れ添う相手もできるのだろうと、
青い水の向こうに心地良い前途を夢想していた。
だが今は、ただ小さな小袋の中に隙間無くぎゅうぎゅうと押し込められている。
はて、何がどうしてこうなってしまったのやら。
考えたところでどうとも答えは出ぬのだが、考えずにはいられない。
堂々巡りに陥っている頭の片隅に、どこからともなくしくしくとすすり泣く声が聞こえてくる。
動かぬ目を無理に動かしてそちらを見れば、己と同じように袋に詰められた仲間の姿が見える。
いや、見渡す限りそのような同士ばかりであるのだが、そのうちの一匹がさめざめと泣いている。
371:にぼし 2/3
11/05/27 19:37:05.58 P1y73j2P0
「どうした、何が悲しい?」
声をかけるとその彼は、努力の末こちらを見て言った。
「このまま自分が消えてしまうのだと思うと、あまりにも悲しいのです」
折角この世に生まれ出て、ここまで命からがら生き伸びてきたというのに、
訳も分からず硬い身体にさせられ、このまま消えていくのはあまりにも切ないと、
乾いた目から流れぬ涙を流しつつ、か細い声で訴えてくる。
生きた証もなく、ただこのまま消えていくのかと責めるように問いかけてくる。
同じ立場である自分になすすべなどある筈もなく、
その泣き声が日に日に弱っていくのを、こちらも日に日に聞こえにくくなる耳でただ聞いているしかなかった。
時々袋は大きく揺さぶられ、自身に覆いかぶさっていた大量の仲間達がどこかへ連れられて行く。
その度に上空から湿気た風がふわりと舞い込んでくるが、それはただ湿気っぽいばかりで、
生まれ育った海のような潮の香りはしない。
いつかは自分もああやってどこかへ運ばれるのだろうと、半ば諦めつつ揺さぶられるままに過ごし、
揺れに身を任せて袋の中を右往左往していたところ、
ふと見れば、あの日泣いていた彼がすぐ斜め下にいるではないか。
「おお、まだお前はここにいたか」
「貴方はあの時の……」
372:にぼし 3/3
11/05/27 19:39:04.27 P1y73j2P0
もう自分らの上には誰もいない。我々は次にここから出されるのだろう。
「そうして儚く消えてしまうのです。何も無くなるのです」
彼は搾り出すように言う。濁った視界にかろうじて映るその顔があまりにも切ない。
まだ動くだろうか。ギギと音を立てて無理に身体を伸ばす。
「生きた証が欲しかったと言ったね」
そう呟いて、目の前の唇にそっと自身の唇を重ねた。
幾ばくかでも慰められればとした口付けに、思いがけず心がかき乱される。
それは硬く干乾びていて、貪ろうにもカサカサとした音しか立てなかったが、
同じ運命を背負った者同士の最期の精を流し込むがごとく、あまりにも熱くそして甘美であった。
なるようにしかならないのだと悟ったような気でいたが、生きたいという欲にここで苛まれようとは。
「ありがとう……。忘れない……」
離した彼の唇から掠れた声がもれた。口付けたことを、後悔した。
次に生まれ変わることがあるのなら、お前と共にまた海に生まれよう。
並んで泳ぎ、餌を喰らい、こんな乾いた口同士ではなく濡れて艶やかな口付けを交わそう。
懐かしいふるさとのあの海原の中で。
373:風と木の名無しさん
11/05/27 19:39:24.72 P1y73j2P0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
374:風と木の名無しさん
11/05/27 19:41:55.58 +7DQNHnuO
なんか目から潮が
375:風と木の名無しさん
11/05/27 19:45:49.51 KCYlUOYo0
今日の味噌汁は煮干の出汁にする!
今は無き、なつかしのい も お と スレをほんのり思い出したよ・・・!!
376:風と木の名無しさん
11/05/27 20:07:15.29 XGuqwOkJ0
神、出現……!!
377:風と木の名無しさん
11/05/27 20:23:15.15 FFmrxiHR0
煮干しに泣かされる日がくるとは思わなかったよ
378:風と木の名無しさん
11/05/27 20:45:06.15 f8zeTeoj0
目から出汁が…!
379:風と木の名無しさん
11/05/27 20:50:49.04 mosAq8Os0
なんかすごいものを見た!!神文章とはこういうことか!
380:風と木の名無しさん
11/05/27 22:33:07.57 tnIkG5Fv0
なんて美しいにぼしなんだ…
泣かされちまった!ちくしょう!
381:sage
11/05/27 22:47:36.95 xEyj+oph0
ホラーアニメビデオの「世にも恐ろしい日本昔話」の第2話「かちかち山」
卯之助(兎)×吾作(狸)誰か書いてくれないのかな?(自分では書けないし)
あの作画書いてる人って「からくりの君:「からくりサーカス」「うしおととら」の
漫画書いてる藤田和日郎先生だし。
382:風と木の名無しさん
11/05/27 23:32:10.54 VUYg6N800
なんだこいつ
383:風と木の名無しさん
11/05/27 23:42:43.22 VCghzPAK0
>>370
これからはにぼしを大事に食べます
ありがとうありがとう
384:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン.第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼 1/5
11/05/28 00:53:21.03 oyWHhL0Z0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )昔ルナドン話書いた人です。今回も吸血鬼テーマですが、かなり変な設定です
「…ってわけで、俺は…、ってことで…で、ってわけで…」
会話を聞き流す。
周りには三人、冒険者がいた。
目の前の座布団に座っているのはガルズヘイムの男戦士であり、名前は自分でも知っている。
その左右には、女魔法使いと男盗賊。
自分はなぜにこの日倭の都市にある大屋敷の居間にある座布団に、おとなしく座っているのだろう。
「だから…、あなたはそういう…ってことはこの子も…」
会話をひたすら聞き流す。
おしゃべりな三人は、ひたすら先程から世間話を繰り広げていた。
「…と、思わない?お前も」
ガルズヘイム戦士が急に話を自分に振ってきた。
正座をずっと続けるのは案外つらいな、とか、この日倭に甲冑着こんだガルズヘイム人は似合わないな、とか、その程度しか考えていなかったなだけに、彼は戸惑い、相手を見た。三人の視線が集中する。
「わ、私は…」
言葉を選ぶが、いい言葉が出てこない。
「すまない、あまり話を聞いていなかった」
だからなぜ、討伐対象である、有名モンスター・ガルズヘイムヴァンパイアの自分がここにいるのかの経緯を思い出した。
事の経緯は三日ほど前。
ガルズヘイムヴァンパイアの彼は、ダンジョンとして人があまり寄りつかない孤高の城にいた。
ダンジョン最深部に、他にうろうろとドラゴンがいたりするのを気にも留めず、倒した冒険者を足蹴りにして、啜った血がこぼれ出て、それを手で軽くぬぐう。
(うっ、やはりヴァーラクシャの戦士の血はまずい)
孤高の城の最深部までやってきたことは褒めてやる。
この部屋は屍であふれ、腐臭がすごい。
さすがに高潔な種族と一応は認識している彼は、取り巻きに合図しながら別の部屋に移る。
何人もの冒険者が挑んできた。
だが、このスティールエナジーとバンパイア・バッドの群れにかなうものはいないのだ。
バンパイア・バッドが八匹、そしてヴァンパイアが一人。
おまけにここは首都ダンジョンときた。
385:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼 2/5
11/05/28 00:55:05.07 oyWHhL0Z0
最深部を根拠地にしている自分にとって、ここまで来れる冒険者は大抵いないということだ。
なぜならば首都ダンジョンというだけで気軽に入る馬鹿な人間は、大抵入口にいるドラゴンやミノタウロスに返り討ちにされてしまう。
たどり着いても、何度休憩したかもわからないような顔をした冒険者は無謀にも突っ込んでくる。
バンパイア・バッドとヴァンパイアは体力を削られたら、スティールエナジーという体力を奪う魔法を使う。
(私に勝てる相手などいないのだ)
そう思いながら、ちょこんと埃まみれのベッドで体育座りをした。
はあ、とため息をつく。
(ほかのヴァンパイアたちはどうしているだろうか。最近人間で、それもガルズヘイム人の戦士がリーダーの…名前はなんだっけ?三人組が活躍しているようだが、殺されていないだろうか)
他の仲間もここに入るが、皆自由に移動しているため、出会ったことはあまりない。それに首都ダンジョンは無駄に部屋が多い。
孤高の城も例外ではない。
高潔なヴァンパイアは、孤独など気にしない。
(と、思う)
高潔なヴァンパイアは、人間などには殺されない。
(…はずたけど)
高潔なヴァンパイアは…
(人が恋しいなんて思うはずがない)
どうもこのベッドに座っているヴァンパイアは気が弱いようだった。
そこにバタンと大きく扉の音を響かせ、乗り込んできたのは先ほど考えていた、例の活躍している冒険者であるとみられるメンバーだった。
当然戦闘態勢に入る。
はずだったのに。
なんとなく戦う気がしなくて、彼はそのベッドの上にちょこんと座ったまま、リーダーであるガルズヘイム戦士の顔を見た。
手には正義の鉄槌。あからさまに善・秩序属性の装備だ。
金髪の男は、その正義の鉄槌を手に、拳を振り上げる。
後ろの魔法の女は、ストーンクラブを持っている。更にその隣にいる盗賊も同じ。
「いたぞ、ヴァンパイアだ、カードにするぞ!よしっ、ヴァンパイアめ、俺と戦え!!」
熱く語りだす戦士はビシッと、ベッドに座るヴァンパイアを指差した。
ヴァンパイアは下を向いて溜息をついた。
カードにする、というのは、敵を魔法でとどめをさすと、カードになってしまうという。
386:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼 3/5
11/05/28 00:56:31.37 oyWHhL0Z0
ここにはレアモンスターであり強いモンスターが大量にいる、それのカードを集めにこの孤高の城にやってきたのだと推測したが、ヴァンパイアは動かなかった。
むしろ、足に顔を埋めて、もう一度ため息をついた。
「ちょっと、聞いてるの!?」
後ろの魔法使いの女が、ストーンクラブを振り回し、高く声をあげた。
「嫌だ」
ヴァンパイアが言った。
「えっ」
「面倒くさい、戦いたくない、寂しい」
か弱い声。少しだけ見えた赤い眼は、泣きそうに潤んでいた。
「えっ」
冒険者三人の間の抜けた声が部屋に小さく響いた。
「…えっ」
そしてリーダーの男は、もう一度間の抜けた声を出した。
そこから一気に記憶がなくなり、気がつけばこの屋敷の、一室の布団の上にいた。
どうもその会話の後タコ殴りにされたらしい。
というのも、体中に鈍器のあとがあったからだ。
ズキズキと後頭部が痛み、起き上がろうとし、体中が痛んで思わず悲鳴を上げた。
ご丁寧に枕にきちんと寝かされていて、服はどういうわけか人間用のバスローブに変えられていた。が、脱がされたのはどうもいつも着ている青いコートだけらしい。
掛け布団も一緒にかけられていたが、起き上がったはずみで飛んで行った。
さて、屋敷中にヴァンパイアの悲鳴が響き渡り、そのうち一人の男が様子を見にやってきた。
この屋敷には似合わない、ガルズヘイムの格好をした男だった。
例の冒険者組のリーダーの男に間違いはない、が、甲冑は着ていなくて、彼もまた軽装であった。
しかしそんなことは構っていられない。ヴァンパイアはあまりの体の痛みに耐えきれず、丸まって頭を押さえた。
スティールエナジーを、と思ったが、それすらできないほど体中が痛かった。
相当殴られたのだろう。
「うう…」
ヴァンパイアが情けない声を出す。
「おおっ、目を覚ましたか、すまんすまん、殴りすぎた」
カードにされるはずだったヴァンパイアは、その気楽な声の方向に目をやる。すぐに近くまでやってきて、なでなでと彼の銀の髪をなでる。
「痛いの痛いの飛んでけー」
(馬鹿にしてるのだろうか)
387:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼 3/5
11/05/28 00:57:19.51 oyWHhL0Z0
と、思いつつも、体が動かせない。
「ストーンクラブ+2と正義の鉄槌で殴られたらそりゃあ誰でも気を失うもんねー、うちのは特製で、ストーンクラブには日倭製の頑丈な釘生えてんの」
ああ、どうりで体中が痛いどころの騒ぎじゃないわけだ。
そんな釘の生えたものと、ヴァンパイアの苦手な善・秩序属性の正義の鉄槌で殴られ続けたら、ここまでひどい怪我をする。
「コート、ボロボロになったから箪笥にあった俺の昔のバスローブ着せたんだけど」
(いやいや)
それ以前に聞くことがある。
「確かカードにするためと言っていた…うっ、痛っ!!けど、カードにしなかったのか」
首を動かしただけで、背中と関節が悲鳴を上げた。
目の前には青い目と金の髪、さわやかフェイスのガルズヘイムの人間。
困った顔をしたヴァンパイアは、特に攻撃するでもなく、蹲ったまま相手の顔を見続けた。
「カード手前までいったんだけど」
「…」
「何にも抵抗しないから、ぶっ倒れたお前を連れて帰ってきた」
アホがいる。
素直にヴァンパイアは思った。
「体痛いと思うけど、さすがにキュアー使ったらお前には逆効果だろ?」
と、さっとデッキからキュアーカードを取り出したのを見て、思わず身を引いた。
ハッと気づけば、周りにはいろんなアイテムが転がっていた。
まず、紅きコンドル。恐らくはこれを使ってファルコンという魔法を発生させ、カードにするつもりだったのだろう。
他にはチェインメイル+5の限界値のついたもの、ガードマンカード、とにかくいろんなアイテムが散らばっていた。普通にローブも転がっているかと思えば、盾が転がっていたり、ここは物置に使っていたらしい。
言い切ってしまえば、いわゆる汚部屋である。
ところで、彼はガルズヘイムの首都ダンジョンにいたはずだった。
ここが日倭であることには間違いないが、場所までは特定できない。
そこそこにぎわっている街だということは、外からの喧噪でわかる。
彼…ヴァンパイアは痛みがだんだん引いてきたので、少しゆっくりとため息をついた。
しかし体育座りは健在だ。
「なんでボスクラスモンスターが寂しいとかいうの?」
「?駄目なのか?」
赤い眼は困り果てて、冒険者を見つめる。
(この男の名前は…バ…バ…なんだっけ。馬鹿ならあってるはず)
388:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼 4/5
11/05/28 00:59:40.93 oyWHhL0Z0
「いやだってヴァンパイアっていうセリフといえば『美しく殺してやろう』とか、そんな傲慢でナルシストな発言じゃん。なのにお前、いきなり『戦いたくない、寂しい』とかいうし。何なの?ヴァンパイアじゃないの?でも明らかに特徴はヴァンパイアだよな?」
ぺらぺらと男は続けた。
「あ、そーそー、なんだしなんか持ってくるわ。お前そこにいて」
そして気がつけば、丁寧に茶まで入れてくれて、ヴァンパイアはそれを啜った。
血とは違うが、温かくて心がほっとする。
相変わらず男は目の前でべらべらしゃべり続けているが、半分以上を聞き流していた。
「ところでここはどこだ。私は創造都市の孤高の城にいたはずだ」
ガルズヘイムの首都は創造都市。
「ここ?満月都市。日倭の首都だよ」
世界地図には詳しくなくても、この世界は海が多く、船をついでかなりの日数使わないとここに来れないのだけは知っている。
相当の時間はかかるはずだが、その時間ずっと気絶していたとは考えにくい。
「満月…都市」
「風の精珠使ってすぐにここにきて運び込んだ」
風の精珠と言えば、シルフを倒せば手に入るアイテムとして有名だが、実はそれは意外な使い道もあるというのは、ヴァンパイアの彼でも知っていた。
だが大抵の冒険者はそれに気づかない。
しかしこの男は知っている。そのアイテムを使えば、どこの都市にだって町にだって一瞬にたどり着くことのできる便利アイテムだということを。
「で、さっきの続きだけど、何で寂しいの?」
「…なんとなく…。私はボスモンスターに向いてないのかもしれない」
ぼそりと呟いた。
とても傲慢な種族のセリフとは思えず、男は腹を抱えて笑いだした。
目が点になるヴァンパイア。
それでも笑いは止まらず、バシバシと畳を叩いた。
「何それ!何その文句!今までヴァンパイア退治はすげぇしてきたよ!?でもそんなこと言うの初めてだ!!ネクロマンサーだってそんなこと言わないのに、あのうっざいくらいの傲慢なヴァンパイアがー!!」
ゲラゲラと声が響く中、ヴァンパイアは思わず、ぺこりと頭を下げた。
「すまない」
ぴたりと声が止まった。
「は?」
「いや、だからすまないと」
「ちょっと待って、俺、殴りすぎて頭おかしくさせた?」
どこまで失礼な奴だろう。
389:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼 5/5
11/05/28 01:01:40.42 oyWHhL0Z0
が、相手は本気で心配しているようで、じろじろと顔を覗き込んで、頭にこぶができていないか確認する。
殴られ続けたせいでこぶは大量にあるが、出会ったときのあの言葉からするに、このヴァンパイアは最初からおかしかったのだろうと本人は判断したらしい。
間違ってはいなかった。
「うんうん、素直な奴だな。俺の目に狂いはない」
「どういう…」
「ウサギみたいな目をして寂しいとかいうから、思わず連れて帰ってきた」
タコ殴りにした後で、と小さく付け加える。
「…ヴァンパイアが、ウサギ…」
プライドもなにも最初からない彼にとっては痛くもない発言だが、比べる対象があまりにも違う。
彼も今まで様々な冒険者を倒してきた。
たまたま、そのあとなんとなく気分的にテンションが下がってベッドにいたところを、戦いに挑まれたので拒否しただけ。
「かーいいかーいい。うん、可愛いな、お前、その性格面白い」
「…ありがとう」
「だからなんでその言葉が出てくんだよ」
「感謝してはいけないのか」
噛み合わない言葉のやり取りが続いた後、仕方なくヴァンパイアから言葉をつづけた。
「人が恋しい。人は羨ましい。仲間と連れ添って、いつも楽しそうだ。仲が良ければ死んだって蘇生してもらえる。私は人間に生まれたかった」
「でもお前にはバンパイア・バットいたじゃないか、仲間だろ」
「いるけど…違う。人間のように、人間と話したかった。けれど皆モンスターというだけでこちらの言い分など聞かずに襲ってくる、だから嫌だった」
「変なの」
男が、茶を飲み干して、畳に茶器を置いた。
「変…だな」
自分でもそう思う、と思いながら、ヴァンパイアは頷いた。
と、それから三日が過ぎた今、自分は彼らを前にしていた。
その間は殺してやろうとか、逃げ出してやろうとかは特に思わず、素直にその男の愚痴を聞いてやる相手をしていた。
名前は『バルド』というらしい。年齢は二十七で、結婚はしていない。
やっと思い出した、とヴァンパイアが頷いた。
その時のバルドの反応は、自慢げに、そうだろうそうだろう、と繰り返した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )続きます。ロウッド達の話が後で出てきたりします。覚えてる方いるのかな。
390:風と木の名無しさん
11/05/28 01:09:33.15 J18A8w+g0
>>384
なにこれカワイイ
元ネタ知らないけどカワイイ
391:風と木の名無しさん
11/05/28 09:38:56.10 GM9xjept0
>>370
文章力パネェっす……
これからにぼし大事に食べるよね
392:風と木の名無しさん
11/05/28 12:01:57.62 iVzRsqUb0
>>370
ギャ△コの雪のひ○ひらを思い出しました
393:風と木の名無しさん
11/05/28 12:23:06.15 Kp9emk9F0
>>370
生涯一度のキス・・・萌え滾る!
にぼしさんに惚れました。ありがとう!
394:真3マニクロ ライドウ×人修羅 1/2
11/05/28 14:17:09.30 ibTbpBe/0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )真3マニクロ ライドウ×人修羅です。
そのものの描写はないけど一応スパンキングなので苦手な方はスルー願います。
「僕は、君を仲魔にしたい訳ではない。一緒に捜査してほしい、一緒に闘って欲しい訳ではない。只―愛したいだけなんだ」
とある大正20年ののどかな午後、人修羅は高手小手に縛り上げられ、ソファに転がされていた。
「ライドウっ、ちょ・・・これ、きついんだけど・・・」
縛って転がした張本人、十四代目葛葉ライドウはもぞもぞと芋虫のように蠢くその様を熱い眼差しで見下ろした。
その手には、乗馬鞭が握られている。
「なにそれ。」
「何って。乗馬鞭だよ。これは馬術の障害飛越競技で使用するタイプの鞭で、短鞭とも云うね」
「そゆことじゃなくって・・・俺、馬じゃないんですけど。それで叩く気?痛いんじゃねえの」
「まあ、馬の皮膚は分厚いから。人間の尻を叩いたら、相当痛いだろうね」
感触を試すように掌に鞭を打ち付けながら、ああ、君は人では無かったねと意地悪く嗤った。
ライドウは時折このように人修羅を折檻する。しかしそれは落ち度に対する罰という訳ではない。
人間と悪魔との関係を「忠誠度」という指標で計ることしか知らないこの不器用なデビルサマナーは、
管に入れることの能わぬ愛しい悪魔の愛情を、素直に理解することが出来ない。
愛していると微笑まれても、甘い口吻をしても、その?に触れることを赦してもらったとしても。
初めて人修羅を縛ったとき、ライドウはこう問うてみた。
「愛している振なんて、いくらでも出来るからね。―君、僕にどんな目に遭わされても逃げないと誓えるかい」
愛する悪魔は驚いたように目を見開いた後、困ったように苦笑していた。
「ちょっとなに言ってるかよく分かんないんですけど・・・」
395:真3マニクロ ライドウ×人修羅 2/2
11/05/28 14:20:17.94 ibTbpBe/0
人修羅はソファの唐草模様をじっと見詰めながら、初めて縛られた時のことを思い出していた。
訳も分からず縛り上げられ、食い込む縄の痛みに泣きたいのはこっちだっていうのに、
なぜだか不安で泣きそうな表情をしていたのは、彼の方だった。
苦痛でしかなかったコトを終え、擦り傷になる程食い込んだ縄を外しながら、ライドウは独り言のように呟いていた。
「―逃げないよな。君は。僕のことを愛しているものな・・・」
返事はしてやらなかった。ただ黙っていた。だが、逃げなかった。
「何を考えている」
ライドウは衣嚢からガーゼと絹の手巾を取り出す。
「君はこれから暫く口をきくことが出来なくなるけれども。何か言っておきたいことはあるかい」
ライドウのことは好きだ。
黙って耐えさえすれば彼の歪んだ支配欲を満たすことが出来るというのならば、いくらでも耐えてみせようと思う。
でもやっぱり、痛いのはちょっとイヤだ。
この普通ではない付き合いを通じて、ライドウの屈折した愛情を文字通り痛いほど学習してきた人修羅は
何と言えば、この理不尽な苦痛の時間を短縮できるかを良く心得ていた。
「あいしてるよ。ライドウ。」
「まあ、そうだろうね」
苦しそうに微笑んだサマナーは、丸めたガーゼを愛する悪魔の震える唇に押し込んだ。
「有難う。御免よ。只―愛したいだけなんだ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・ω・` )
つたない文章で申し訳ないです。(文字化けの部分は「身体」ですorz)
ライ様には鞭が似合うなあと妄想したら居ても立ってもいられなくなったので。
396:兎→虎 1/3 ◆dU4hlANcIg
11/05/29 00:10:26.88 6FJNKrsm0
虎&兎の兎→虎です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
夢を見た。
小さな僕が、あの男をナイフで刺して殺した。
微かな喜びと、壮絶な絶望
あぁ、僕には
僕には幸せな未来なんか、どこにも無いんじゃないか。
いつも無茶をして飛び出して
物を壊して僕の計画を台無しにして
考え無しに動いては足を引っ張って
余計なお節介で人の心に土足で踏み込んで
あなたとコンビなんて組みたくなかった。
目を閉じれば瞼に浮かぶあの悪夢の、その登場人物への憎悪
全身の血が沸き立つような怒りに我を忘れた。
僕はずっと両親を殺した人間を殺す事だけを目的に生きてきたんだ。
いつもナイフを持っていた。
人一倍勉強して、人一倍鍛えて、持って生まれた能力を活かしてヒーローになった。
極力他人と関わらないように、誰にも邪魔されないように。
毎日情報を求めて歩いた。
全ては「ウロボロス」をこの手で葬るため。
その為だけだ。
僕にはそれ以外何も無かった。
397:兎→虎 2/3 ◆dU4hlANcIg
11/05/29 00:11:28.53 6FJNKrsm0
むしろ、殺す事だけを生きる糧にしていたのかもしれない。
あの男がウロボロスに関する人物だったなら
あの男をこの手で殺す事ができたなら
少しは…
どれほどの思いで探してきたと思っているんだ。
何年何十年、それだけの為に生きてきたと思っているんだ。
全てを捨てて、全てをかけて。
冗談じゃない
なのになんでだろう。
「あぁ…バニー」
「…はい?」
「手形野郎がウロボロスじゃないってはっきりして良かったな…。」
いいわけない。
いいわけがない、のに。
よくわからない感情が胸に広がって締め付けられた。
なんでこんな気持ちになるんだろう。
「いや…よくねぇか…」
おじさんを乗せた救急車が走り去る。
なんで、僕の事なんか…
あなたには何度もひどい事を言ったはずだ。
あなたの優しい言葉を跳ねのけた。
あなたを散々バカにした。
「無理をしないでください」そう言ってきたのは僕の方だったはずだ。
頭に血が上った僕の攻撃はあいつには一切当たらなかった。…当然だ。
我を忘れた僕の目に飛び込んできたのは
僕をかばって攻撃を受けたおじさんの背中だった。
398:兎→虎 3/3 ◆dU4hlANcIg
11/05/29 00:12:18.67 6FJNKrsm0
どうして僕の事なんて。
いつも鬱陶しいくらい元気なのに痛そうにしないでください。
僕のせいで怪我なんかしないでください。
心のどこかでは分かっていた。
幸せなんて二度と来ないという事。
だけど僕にはそれしかないんだ。
僕には関わらない方がいいんだ。
だから…突き放しているのに。
何を言ったって何をしたって、何故あなたは僕の傍を離れないんですか。
僕の傍を離れずに、身を呈して僕を止めた。
もう二度とあんな辛い気持ちにはなりたくない。
人と関わらなければ、そんな感情を持たなければ…
無鉄砲で無防備で、他人のために命をかけてしまうような危なっかしい人。
ウロボロスに向けて構えている僕のナイフを、握りしめてくるような人…。
焼け焦げて千切れたおじさんのタスキを拾い上げる。
僕をかばって千切れたタスキに残るその文字は
”Let’s believe”
この気持ちをなんていうんだろう。
なんていうんだろう。
僕にはわからない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>325
最初は俺にしていた箇所もあるのですが、どうにも文才が無いせいで
書きわけができず、結局全部僕に統一しています。
399:風と木の名無しさん
11/05/29 00:58:53.95 6wvFPs6/0
>>384
ヘタレ吸血鬼萌えの私のハートをピンポイントで貫いた…
ヴァンパイアかわいいよヴァンパイア
続き楽しみにしてます。
400:The green knight runs through night 後編1/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:02:14.07 IESQ3gGiO
半生。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>351の続きで、エロありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
しばらく俺のシャツを濡らしてから、相棒は静かに口を開いた。
「……ブリシト、信じてくれないかも知れないけど、僕は本心から、君が欲しいと言ったんだ」
「でも力ト-、お前……」
「僕の頭は確かだよ、ブリシト。さっきの言い方はそりゃ、酷かったけど……あんな目に合って君に助けられて、真っ先に思ったんだ。君に、抱かれたいって」
溢れる涙をそのままに、相棒は顔を上げて俺を真っすぐに見つめた。目には真摯な光が宿り、嘘をついてるようには見えなかった。
「力ト-……本当にいいのか?そんな風に言うと俺、付け込んじまうぞ」
「いいよ。付け込んでくれて構わない」
本当に本当か?とさらに確認する俺の唇を、奴は自分の唇で塞いだ。
流れ込む涙と血の味がする深いキスを、俺達は夢中で交わした。
長く合わせていた唇を離すと、相棒が俺の耳に駄目押しの一言を囁いた。
「ブリシト、僕に君の全部を感じさせて……」
俺の理性はものの見事に、木っ端みじんに吹っ飛んだ。
お互いに脱ぐのももどかしく、俺は服を着たままで、はだけたシャツ一枚の裸の体に触れた。
顔や唇はもちろん、胸や腹、内股や膝の裏側にまで舌を這わせ、丁寧に撫で回した。いつにもまして相棒は敏感に反応し、たまらず喘いでは俺の名前を必死に呼んだ。
今夜は相棒の全てを味わいたくて、開かせた片脚を肩に乗せ、いきり立つモノを口に含んでやると、高い悲鳴を上げて驚いた。
イッてしまいそうだからやめてくれ、と俺の髪を握って哀願するのを、さらに深くくわえて拒んだ。
イクなら俺の口の中でイケばいいさと囁いて、ぴちゃぴちゃとしつこく舐め回し、強く吸い立てた。相棒は我慢し切れず、とうとう俺の喉に向かって欲望を放った。
音を立てて飲み下すと、泣きそうな声でバカ、と叫んだ。俺は笑って、恥ずかしさに火照る体を上から抱きしめた。
そのまま口づけると、自分の出したモノの味に少し顔をしかめたが、相棒は拒まず、大胆に舌を絡めた。
401:The green knight runs through night 後編2/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:06:05.41 IESQ3gGiO
俺はいつものジェルを使い、萎えた相棒の中心を扱いて大きくさせた。相棒の方も、震える手で俺のベルトを緩めファスナーを開けて、下着の中の俺自身を擦ってくれた。
喜んでまたキスを交わして、甘い刺激に酔いながら、俺はジェルまみれの中指を相棒の後ろに押し込んだ。
吸い込むように受け入れた中は、かなり熱くなっていた。
前を擦りつつ段々指を増やして行くと、濡れた下の口は淫らに音を立てて締め上げた。
念入りに抜き差しを繰り返す俺に、ブリシト、もういいからと相棒がその先を促した。かすれた甘い声で何度も名前を呼んでねだられ、上着を引っ張られて、俺はやっと奴から指を抜いた。
男同士だと楽らしい背後からの挿入を、顔が見えないからと嫌がるので、仰向けのまま腰の下に枕を入れて、受け入れる態勢を取らせた。
下げたズボンから飛び出した俺のデカい一物を見て、相棒は目を見張って喉を鳴らした。
サイドボードからゴムを取り出した俺に、そんなのいらないよ、と相棒が焦れた。だがいくらのぼせていたって、大人の男としての嗜みを忘れる訳にはいかない。
そう言うな、後で大変なのはお前なんだからと説き伏せつつ、ゴムをきっちり被せた。
「力ト-、入れるぞ。いいんだな」
「うん、いいよ、ブリシト」
「途中でやめようは無しだぞ、わかってるな力ト-」
「ブリシト、くどい男は嫌われるぞ」
そりゃマズいなと笑って後ろにあてがうと、相棒は息を飲んで頭を反らした。
ジェルを塗りたくった猛るモノを、脚を抱えた俺はゆっくり慎重に中に突き入れた。相棒は震えて枕の端を握りしめ、目を閉じて細かく喘ぎ続けた。
今まで十分に下準備をしていた甲斐あって、俺は難無く、待ち望んだ奴の奥深くに侵入を果たした。
埋め込まれたモノの大きさに相棒は身悶え、力を抜こうと懸命に呼吸した。俺はやっと征服出来た相棒の中が、想像以上に心地良いことに感動していた。
「あ、あ……ブリシト、大き……っ」
「力ト-、大丈夫か?ちゃんと息しろよ」
「ん、だ、大丈夫……はあっ」
全てを飲み込んで、ちょっと苦しそうに笑う相棒に、俺はたまらない愛しさを感じた。
「力ト-、つくづく無事でよかった。ここまでお前を開発したのはこの俺なのに、危うく横取りされるとこだったんだからな」
「か、開発って……バカ野郎!」
402:The green knight runs through night 後編3/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:09:26.07 IESQ3gGiO
「そろそろいいな、力ト-。動くぞ」
「……あ!ま、待って、待てよブリシト……う、ああ!」
止めようと腕を引っ掻くのに構わず、腰を緩やかに動かした。相棒は突かれる度に声を上げたが、痛そうな様子はなかった。俺は両脚を肩に担いで、深く浅く突いては引いた。
爛れるような熱さに俺は酔いしれ、絶妙に締め付けられて思わず唸った。相棒も涙を浮かべて感じまくっているようで、絶えず俺を呼んではよがり声を上げた。
「あう、ふ、ああっ、ブリシト、ブリシト……」
「力ト-、ああ、たまらない……お前の中、よすぎるぞ。イッちまいそうだ」
「い、い……イッて、いいよ……僕も、僕……あ、うあ……っ」
甘い声に煽られて上から激しく貫くと、相棒は俺の首を抱き寄せて唇を吸った。滴る唾液にも構わず、繋がったままで口内をむさぼり合った。
唇を離すと、相棒が俺を見てふいに笑った。
「なんだ、何かおかしいか、力ト-」
「ふふ、へ、変だ……グリ-ン・ホ-ネットが、僕を抱いてる……」
「変なもんか。ホ-ネットが抱くのは、相棒だけだ。お前だけなんだぞ、力ト-」
緑のスーツとコートを纏ったままの俺は苦笑して、からかう相棒の頬にキスした。
「僕だけ、か……そうだ、僕だってそうだよ、ブリシト」
「何がだ?力ト-」
「僕が欲しいのは、君だ。冷たいオモチャでも、タチの悪いオンナ男でもない、君だけだ。ブリシト、君だけが、僕を好きにして、いいんだ……」
相棒が殺し文句を吐くのは、これで一体何度目だろう。歓喜に満ち溢れた俺は、唇にまたキスをして、腰を大きく動かし打ち付けた。
容赦なく擦られ、甘い口づけを与えられて、相棒はもう限界だと首を振った。
「ブリシト……ブリシト!もうダメ、い、イク……あ、ああ!」
「力ト-……ん、ううっ!」
ぴんと背中をのけ反らせて相棒が果て、同時に俺も呻いて奴の中で達した。
衝撃に相棒の体は波を打ち、シーツの上に腕を投げ出した。目を閉じて意識を失ってしまった相棒に俺は慌て、肩から脚を下ろし、中の萎えたモノを引き抜いた。
外したゴムを結んでゴミ箱に捨てると、相棒の頬を軽くはたいて呼びかけた。
「力ト-、おい力ト-!しっかりしろ」
「……あ、ふうっ、ブリシト」
目を開けた相棒は、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。俺はほっとして、汗ばんだ額に手を当て、大丈夫かと尋ねた。
403:The green knight runs through night 後編4/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:12:17.08 IESQ3gGiO
「很吃驚……我、我想是不是死……!」
「うん、そうか。悪いがもう一回、英語で頼む」
「び、びっくりした……」
「気を失うほどよすぎてびっくりしたのか、力ト-」
笑って頬をつねると、相棒は俺の手を取り、指に軽く噛み付いた。
「いてっ!……力ト-、俺だってびっくりしたんだぞ。寝た相手に気絶されたなんて、初めてだ。あんなこと本当にあるんだなあ」
「妙なことで感心するなよ……」
呆れて俺を睨んだ相棒は、言葉の後に大きなあくびをした。眠いなら先に寝ていいぞと告げると、頷いて目を閉じた。
俺は相棒の体の汚れや汗を、蒸しタオルで軽く拭ってやった。
気持ち良さそうにしていた相棒は、いつの間にか眠りについていた。上から布団をかけてベッドから離れ、奴の飛沫で汚れたスーツを脱ぎ、パジャマに着替えた。
再びベッドに戻り愛らしい寝顔を眺め、額に軽いキスをした。相棒の黒髪を撫でて、本当に間に合ってよかったとあらためて安堵した。
朝になり、俺がシャワーを浴びてバスローブを羽織り部屋に戻ると、俯せに寝ていた相棒は唸り声と共に目を覚ました。
ふいに勢いよく顔を上げて、きょろきょろと周りを見回した。
俺ならここだぞ、と近寄って声をかけると、俺を見つめた顔はみるみるうちに赤くなり、再び枕に顔を埋めた。
「なんだ力ト-、照れてんのか?」
「……照れてなんか、ない!」
「照れるのはいいが、怒るのは無しだぞ。夕べ俺はお前に、何回もいいのかって確認したんだからな」
「ブリシト……わかってる。だからもう、何も言わないでくれ」
ベッドに腰かけた俺は、それならいいんだ、と俯せた頭を撫でた。
「力ト-、気分はどうだ?良くないようなら、うちの掛かり付けの医者に診てもらおう」
「……いや、大丈夫。後に残らないタイプの薬だったみたいだ。頭はしっかりしてるよ」
顔だけをこちらに向けて答えた相棒は、確かにいつも通りの様子だったので俺は安心した。飯を食うかと訊くと、先にシャワーを浴びたいと答えた。
頷いて腰を上げると、ベッドから下りて歩こうとした相棒が、体のバランスを崩してすっ転んだので俺は驚いた。
「おい力ト-!何やってんだ」
「……おかしい。脚にうまく力が入らない」
床に手と膝をついて、相棒はしきりに首を傾げた。俺はシャツ一枚の体を抱えて、ベッドの上に戻してやった。
404:The green knight runs through night 後編5/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:15:16.96 IESQ3gGiO
「力ト-、どうもこれは、俺のせいだな」
「どういうこと?」
「つまり、激し過ぎたんだ。俺は精一杯、優しくしたつもりだったんだが……腰を抜かされたのも、お前が初めてだ。まあ、お前が慣れてないせいでもあるんだろうな」
初めて尽くしだな、と陽気に告げた俺に向かって、相棒は枕をぶん投げやがった。
「笑ってる場合か。これじゃ僕はとても身が持たない」
「大丈夫だ力ト-、次は気を付けるからさ」
「どうだか……君の大丈夫は、当てにならないからな」
顔に命中した枕を手渡すと、相棒はそれを抱きしめて何やら思案した。なんかかわいいな、とその姿を呑気に眺めていた俺に、奴は向き直って言った。
「ブリシト、提案なんだけど、その……入れるのは毎回じゃなくて、時々にしないか」
「時々って、どの程度だ」
「……月一回」
「月一回だあ!?そりゃ殺生だ、力ト-!」
大いに不満を訴えると、相棒は膝に乗せた枕を拳で叩いて言い返した。
「だって!君はいいかもしれないけど、度々歩けなくなるようじゃ僕が困る。特に夜のパトロールにひびくだろ」
「だから次は加減するって!頻繁にってのは無理だとしても、月イチはあんまりだぞ」
「どうせ君は女の子と遊ぶんだから、僕との……行為が少なくたって、別に構いやしないだろ」
「それとこれとは別問題だ!せっかくお前が許してくれたのに、心ゆくまで愛してやれるのがたったの月イチだなんて、そんなの切な過ぎるじゃないか!」
俺の心からの悲痛な叫びに相棒は目を見張り、黙ってまた何か考えた。
「じゃあブリシト、何回ならいいんだ」
「週イチだ!」
「……無理」
「じゃあせめて、月に三回」
「それもダメ」
押し問答を繰り返した結果、俺が大幅に譲歩して月二回で落ち着いた。相棒はまあいいかと納得したようだが、俺はそんな約束をしおらしく守る気はさらさらなかった。
いざベッドに入ればこっちのものだ、口車と押しの一手で、もうちょい回数を増やしてやろう。そう企んでいるのが顔に出たのか、相棒が怪訝そうに俺を見た。
「……ブリシト、何ニヤついてる」
「力ト-、さっきの俺達のやり取りって、痴話ゲンカ……いや、ちょっと夫婦ゲンカみたいだったよな」
いっそうニヤついた俺の顔に、また枕が飛んで来た。
405:The green knight runs through night 後編6/6 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/29 23:21:30.90 IESQ3gGiO
一日休んで出社した相棒に、秘書が一体どうしたのかと心配そうに尋ねて来た。
奴が口を開くより早く、こいつは女とシケ込んでてちょっと痛い目に合ったんだ、と俺が答えた。秘書はあらそう、それはお気の毒と返し、相棒に呆れたような一瞥をくれて仕事に戻った。
相棒は俺の腹に肘鉄を浴びせ、弁解しようと慌てて秘書の側に駆け寄った。俺は腹を摩り、大笑いしてその光景を眺めた。
俺があの女の会社との取引を断ると切り出すと、事情を知らない秘書は、契約違反で訴えられることを危ぶんだ。
だが先方に電話した際に、うちの経営パートナーの意見で方針が決まったと告げると、相手はしぶしぶと承諾し、訴えはしないとの確約を取り付けた。
電話を切った後、そういえばあのスケッチは捨てたのかと相棒に訊くと、今後の戒めとして残しておくよ、と神妙に答えた。
俺なら即破り捨てるんだが、東洋人の発想はやっぱり違うんだなとしみじみ思った。
後日あの女には、薬物法違反で警察の手が回った。
俺達が逃げた後、あのビルに入り込んだホームレスが、人が倒れているのに驚き通報した。駆け付けた警察は女の様子と、グリ-ン・ホ-ネットが襲撃した事実について不審を抱いた。
そして捜査を進めた結果、女の会社が裏で、あらゆる種類の違法な薬を扱う商売をしていたことが明らかになった。
ライバル社にすっぱ抜かれたのは実にマヌケだが、社長室でその記事を見た俺は、ざまあ見ろと快哉を叫んだ。
相棒に新聞を渡し、こういうのを怪我の功名って言うんだよなと笑うと、奴は複雑な顔をして、そうかもね、と返した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
読んで下さってありがとうございました。デブイデ楽しみ!
406:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 1/4
11/05/30 01:19:59.38 zAAORjfF0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )感想励みになります!感謝!!忍法帖規制で短いです
彼曰く、『俺って有名人だから。創造都市でも満月都市でも来光都市でも
善の英雄なんだぜ』と、ふんぞり返っていた。
変なヴァンパイアと変な人間の間に、友情がわずかに生まれていた。
「え、聞いてないの?」
バルドが、つまらなそうにつぶやいた。
407:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 2/4
11/05/30 01:37:17.70 xjHGUKd4O
「あ、ああ、すまない。考え事をしていた」
「でもホント、この人普通のヴァンパイアとは違うよね」
謝るヴァンパイアを前に、ズバッと魔法使いの女は言った。
盗賊も頷きながら、バルドをみる。
「面白いじゃん、可愛いじゃん?」
408:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 3/4
11/05/30 01:41:56.77 xjHGUKd4O
その言葉にふんぞりかえりながら、バルドは言い放った。
「そう思うバルドも、十分人間としておかしいと思う」
ヴァンパイアがそう告げると、ほかの二人はくすくすて笑い出す。
ちなみにバルド、という名前を呼び捨てに言えと言いだしたのは本人だった。
409:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼2 4/4
11/05/30 01:48:55.18 xjHGUKd4O
最初は『バルドさん』と呼んでいたが、くすぐったい、おかしい、と、さんはやめろと言い付けたので、呼び捨てにしている。
当然だ、あの傲慢なヴァンパイアが、尊敬語で人間の名前を呼んでいる。
□ STOP ピッ(略)すみません、規制で携帯からになりました…。
410:風と木の名無しさん
11/06/02 00:02:47.09 mQtqTbPUO
まとめも避難所も落ちてる?
411:風と木の名無しさん
11/06/02 02:04:03.00 5sO9v8V20
入れないね
412:風と木の名無しさん
11/06/02 16:03:04.88 xVlFDtAs0
>>410-411
あせって見に行ったら入れた
良かったー
土星に引き続き、ココまで閉鎖されたらどうしようかと
413:BECK 南×平 1/6
11/06/02 21:22:12.80 JX2mb/ZT0
専スレで盛り上がったので投下します
今更なカンジですが別句原作6弦×4弦です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「平くん、最近ピアスしてないよね」
「んー?」
たまり場になっているおれの部屋で、テレビに向かってコントローラを操作している平くんの背中を見つめながら声をかけた。
目線を彼の右耳に注いで。
右手にスコッチウイスキーの瓶。左手に氷の入ったグラス。
背中を向けたままの平くんはおれを振り返りもしないで生返事。ゲームに集中してんのかな?
彼の右側に腰を下ろして、胡坐をかいて、床に置いたグラスにスコッチを注ぐ。
ちらりと平くんがおれのほうを意識した気配。途端画面からクラッシュ音。
「あー」
「いっつもここでやられるんだよな」
「へー」
コントローラを放り出した平くんがやっとこちらを向いた。
「さっき、なんか言ってなかったか?」
「ああ」
おれはグラスの中身を呷って空にすると、それを床において平くんの肩に手を回した。
一瞬戸惑うみたいな目の色に、なんとも言えない独占欲みたいのがこみ上げてくる。
思わずこぼれる笑みを隠すみたいに平くんの耳元に口を近づけて言った。
「ピアスしてねーなって」
「……なくしたんだ」
「新しいのすればいいじゃん」
「気に入った奴がなかなか見つからないんだよ」
414:BECK 南×平 2/6
11/06/02 21:24:31.03 JX2mb/ZT0
おれの手から逃れるように平くんは距離をとって座りなおす。
それから空になったおれのグラスにスコッチを注ぎ、それを口にした。
ちょっとむせるみたいに咳き込んで、なんか慌ててる風情が見て取れる。
おれの腕がまた平くんの体に伸びて、抵抗で固くなる体を無理矢理引き寄せて、背中側から羽交い絞めに。
睨みあげられても全然怖くなくて、むしろやっぱりかわいいななんて思っておれは舌先で平くんの右耳を舐めた。
「なにしてる」
「んー?」
結構筋肉質で男っぽい体してるくせに、こうやって抱きしめたらおれの腕の中すっぽりサイズとかたまんねぇ。
夢中でおれは耳にキスして。
そのたび跳ね上がる平くんの体を逃げられないように抱きしめた。
……でもそんな風に捕まえてなくても、おれがキスするたびになんとなく従順になってくのが分かる。
こういうとこも、なんかいい。
ちょっとアルコールも入ってるし。
おれはだんだん大胆になって後ろから平くんのシャツの中に手を突っ込んだ。
そしたら流石にやめろって目でおれを見たんだけど、
さっきみたいにピアスの方の耳を舐めてたらおとなしくおれに体を預けてくるし。
こらえるみたいに声を押し殺してるのも分かる。
415:BECK 南×平 3/6
11/06/02 21:26:02.14 JX2mb/ZT0
「ここ、弱いよね」
「……っ」
「まだちゃんと穴開いてるんだ」
おれの腕にしがみつく平くんが、こらえ切れないみたいに声を漏らす。
「ぅ……あっ」
「気持ちいいんだ」
本気で嬉しくなってきて、思わず歌うみたいな口調になってしまう。
抵抗されないうちに前から抱えなおして、押し倒して耳朶を軽く噛んだ。
「……ん、あ」
柔らかい部分を楽しむみたいに唇でもてあそんで、そして舌で強く舐める。
その感触にこっちも気持ちよくなってくる。
平くんが抗議の目で睨む。
鋭い視線のくせになんだか潤んでて、そんな目で見たって全然怖くないよなーって思った。
至近距離で感じる平くんの息遣いは余裕がないみたいに思えて、
それが余計な考えや理性はすべて取っ払ってしまえって、
脳内を支配する欲だけを追い求めていけって言われてる気がしてくる。
「りゅう……すけ」
「ん?」
おれにすがりつくみたいに腕を回した平くんが、やっと聞こえるくらいの小さい声で呼ぶ。
「なに?」
問いかけるおれに、平くんはさっきと変わらず鋭い視線を向けたまま。
「ん?」
もう一回口を開きかけた瞬間、平くんはおれを強く引き寄せてキスしてきた。
ダイレクトに口ん中に舌突っ込まれてかき回されて、その途端おれの中でちょっとだけ残ってた理性がどっか行ってしまった。
畳の上に抱き合ったまま転がって、下になった平くんをそこに貼り付けておれは夢中で舌で応戦した。
さっきお互い飲んだアルコール混じりの息が脳髄を麻痺させる。
熱い口内の温度。平くんのおれをその気にさせる舌使い。
分かってたけどおれは到底この人にはかなわない。
416:BECK 南×平 4/6
11/06/02 21:30:16.16 JX2mb/ZT0
下から突き上げながら、おれは自分の体の上の彼を見つめた。
顔を隠すように俯いたまま、声を押し殺すみたいに唇を噛んでる。
汗ばんだ首筋から手を回して、薄い色の髪の毛をかきあげてやる。
わずかにおれに注がれる視線。でもそれはすぐにそらされる。
確かに感じているはずなのに、なんでこう強情なんだろ。キスで誘ったくせに。
「平くん」
名前を呼ぶとまたちらりとこちらを見上げる。そのままの姿勢で、おれはわざと腰を使う。
「……っ」
そうしてやると、息を吐いて倒れこみそうになる自分を必死でこらえてる。
「気持ちよくない?」
「……」
「痛くない?」
「……」
「なんか、言ってよ」
頭を振るだけで何も言わない平くんの、顎を掴んで無理矢理上を向かせる。
目は潤んでるのに、おれを睨む色の鋭さは変わらないまま。
引き寄せて、右耳を噛む。目線を落とすと耳朶の真ん中にピアスホールが見えた。
そこを舌先でつつくみたいに悪戯すると、抱き締めた体が目に見えてビクリと震えた。
「あっ……あ、……っ」
背中に回った腕が強い力でしがみつく。おれを受け入れる体内もおんなじくらい強くおれ自身を締め付けた。
417:BECK 南×平 5/6
11/06/02 21:32:42.20 JX2mb/ZT0
「平くん、エロいよ」
耳朶を舌で攻めながらおれは言う。
その言葉に平くんは頭を振って否定するみたいな態度。なのに体は全然違うみたいだ。
「すっげぇぎゅうぎゅうしてる」
「……うるせぇ」
やっと返事くれたと思ったら。でもそんなんでもなんか可愛いし嬉しいんだよな。
思わず笑ってしまって、また平くんに睨まれた。けどもうこっちも限界。平くんを抱えて寝かせてのしかかる。
「う、あっ」
角度が変わったせいか苦しげな声を上げる平くんの耳元をまたキスで攻めて、そしたら顰められた眉根がちょっと緩んだ。
なんかホッとする。ゆっくりと手を下半身に伸ばして、確かに反応している平くん自身を掴んだ。
怒ったような顔で一瞬こっちを見るけど、無視して続ける。濡れた先端から擦り付けるみたいに扱いた。
「……んんっ」
平くんがかすれた声をわずかに上げた。余裕のない表情がおれを見据える。きっとおれも同じような顔をしてるんだろう。
浮き上がった腰を押さえつけて、自分の欲を吐き出しにかかった。
自分の目元を隠すみたいに、平くんは腕を顔に回す。それをゆっくり剥がしておれは平くんを見下ろした。目が合う。
「……気持ちいい?」
「……」
頷いた平くんにおれは心底安堵する。
真っ白になりそうな頭の中で、
自分の欲より目の前のこの人に快楽を与えられているかの方が気になっていた。
「竜介」
「……ん?なに」
暗闇の中で、ライターを擦る音がして、その周りだけがぼんやりと明るくなる。
一瞬そこだけが照らされて平くんの顔が浮かび上がった。珍しくタバコなんて咥えてる。煙のにおいがゆっくり漂ってきた。
「穴の中をな」
「え?」
「……ピアスの」
「ああ、うん」
言葉の意味が一瞬分からず戸惑ってしまう。
418:BECK 南×平 6/6
11/06/02 21:35:37.00 JX2mb/ZT0
「そこを何かが通りぬけてく感覚って分かるか?」
「え、……いやわかんない」
おれの答えに、平くんは喉を鳴らして笑ってる気配。
「なんでピアスしてないんだ?って聞いただろ?」
「あ、うん」
「おれはその感覚が結構好きなんだ」
「……」
「他にない感じだし」
「……」
「だからだよ」
平くんの言葉を頭の中で反芻していて急に分かった。
別に深い意味なんてなくて目に付いたから話題にしたピアスのことだったけど、実は平くんはそこがめっちゃ感じるんだってことだよね。
……なんか嬉しい。
またひとつ、これで平くんのことを理解した。
それにしても
「なんかすごいエロいこと言ってない?」
「は?」
「だって、穴の中を通り抜けてく感触なんて」
「……」
平くんが盛大にため息ついた音がした。
それから暗闇の中で立ち上がって、身支度する気配。
あーあ、なんか余計なこと言っちゃったか。元々シモネタあんまり食いついてこないもんな。
とっとと衣服を着けたらしい平くんは、楽器をかついで入り口へ向かう。
本気で帰っちゃうの?
おれは慌ててシーツを腰にまきつけて立ち上がった。足と布がもつれて転びそうになる。
「ちょ、平くん、マジで帰るの?」
しまった!配分間違えて終わりませんでした_| ̄|○
続きます…!
419:BECK 南×平 6/6-2
11/06/02 21:37:43.04 JX2mb/ZT0
がらがらと開いた引き戸。そこから空を見上げたら満月だった。
真っ暗な部屋では見えなかった平くんの顔が月の光に照らされてうっすら見えた。
入り口に立ち止まって半分振り向いた彼の手をおれは捕まえる。
平くんはおれから目をそらせたまま、何か言いたげに唇を開いた。でも何も言わないで、口を閉じて。
それからゆっくり視線をあげて「じゃあ、またな」って言ってそっと手を引いた。
「うん」って答えたおれにさっさと背を向けて。
平くんの足音が遠ざかっていくのをおれはそのまま見送っていた。
なんだかいつも別れる時は物足りない気持ちになる。
「またな」っていういつもの挨拶を、また会えるんだって変換してちょっと嬉しがったり、本当は何を言いたかったんだろうってちょっと不安になったりする。
それからさっきまでの時間を思い出して、幸せになったりも。昔よく右耳にはまってたシンプルなシルバーがなくなったのに気づいたのって
やっぱおれが平くんのことばっかり見てるからなんだろうな。
なんでだろう?
やった後に相手のことこんなにも考えるなんて、音楽のこと以外にこんなにも執着するなんてのも、普段のおれにはありえない。
切ないけど嬉しい。ため息が出るけどわくわくしてる。
この気持ちの種類はとっくに知ってる気がするけど、今は知らん顔していたいんだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングミスってしまった
申し訳ありません!
420:風と木の名無しさん
11/06/03 09:01:48.80 g6qJWPjl0
>>413
GJ!
体ら君の強情だけどドエロな感じがたまらんかったよ
やっぱりこのカプが好きだなー
久しぶりにhshsしました、ありがとう
421:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 1/5
11/06/03 23:43:02.92 d79woqV70
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )前回はLv1で辛かったけど今回は少し長めに!
それを聞いてひとしきり皆に笑われたが、ヴァンパイアはあまり笑わなかった。
というより、困惑して笑えるどころではなかった。
「うん、男に可愛いは褒め言葉じゃないよ、バルド」
「そういう問題ではない…」
おかしいのはバルドだけではなく、類は友を呼ぶという日倭のことわざにある通り、
この二人もヴァンパイアを前に、怖がるということはしなかった。
全く殺気など見せず、常に困った顔をするヴァンパイアを見ているうちに、警戒も薄れたらしい。
話を聞けば、バルドがここ、悪属性の日倭の首都に家を構えているのは、日倭が好きという理由だけ。
ガルズヘイムはベッドやレンガのうちが多いが、日倭はその逆で、
木造に畳や落ち着いた部屋が多く、寝るときは布団を使う。
日差しが入りやすい作りをしているので、
ヴァンパイアにとってはつらいが、少し眠くなる程度で大して害はなかった。
「あ、お前また眠ってる」
422:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 2/5
11/06/03 23:45:05.56 d79woqV70
バルドが、しっかりしろ、と彼の肩を揺さぶるが、彼はすっかり睡魔に支配されていて、うんうんと何度か頷いてから、ゆっくり立ち上がる。
「…眠い…。あの部屋で寝てていいか?」
あの部屋、というのは例の物置に使われていた部屋である。
バルドはそこを彼の部屋にと与えた。
しかしこの豪華な部屋に、バルド一人しか住んでいないかったらしい。
仲間もそれぞれ家を持っていて、さすがに三日たって、バルドが殺されていないか心配して見に来た程度。
そこにたまたま座って話していたのがヴァンパイアとバルドだった。
「んじゃ寝てれば?」
「…そうする…」
ごしごしと瞼をこする。
半分眠りそうな彼を支えて、バルドが部屋まで連れて行ってやる。
こういうところは意外に世話焼き。
さすが特徴が几帳面なだけある。
その割には物置兼ヴァンパイア部屋は汚いが。
目を覚ましたのは夜中だった。
423:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 3/5
11/06/03 23:47:19.89 d79woqV70
なんとなく寂しくなって、隣にあるバルドの寝室まで足を運んだ。
もう仲間は去ったあとで、バルドは寝ているかと思ったが、彼は夜更かしが好きだった。
そのおかげでここ三日は夜に話し相手になってくれている。
くれている、という思い方に、モンスターとしての自覚はないのだろう。
「バルド」
「お、起きたか」
バルドはごろりと布団の上に転がって、のんきに煎餅を食っていた。
手元には日倭の文字で書かれた書物である。灯籠の明かりだけをつけて、今まで煎餅を食いながら書物を読んでいたようだった。
「…寂しい、何か話してくれ」
その枕元に彼が座ると、バルドは本を閉じる。
何の本かはわからない、なぜならガルズヘイムヴァンパイアである彼には、ガルズヘイム国以外の文字の読み書きができないからである。
「面白い話してやろうか」
うんうん、と小さくうなずく彼に、バルドは昔語りをしだした。
「あのな、お前知ってる?異世界の噂話。有名なんだけど」
「?」
「この本に書かれてあるんだよ。これは吟遊詩人が記したものでな、異世界から買ってきたんだ」
424:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 4/5
11/06/03 23:49:52.09 d79woqV70
「?」
「この本に書かれてあるんだよ。これは吟遊詩人が記したものでな、異世界から買ってきたんだ」
その本をのぞくが、いまいちよくわからない彼に、バルドは続ける。
「異世界カルアディアの悪の英雄、ロウッドとその仲間のレインの話。
あくまで噂話程度なんだけど、お前をつれてきた理由がこの本を読んだからってのもある。長くなるぞ、よく聞け」
その言葉に、すっかり頭のさえた彼は、何度も頷いた。
「昔々、まあ、もう二百年も前の話さ。とはいってもこの世界と時間の進み方が違うから、どれくらい違うのかわからない。
ロウッドはいつも一人だったんだと、ロマールの戦士だったそうだ。退治も討伐も暗殺も誘拐もすべて一人だった。
ところがある日突然仲間を連れて旅に出だした。その仲間とは、この世界の人間にあり得ない髪の色と眼をしていたってさ。
ローブを着こんで、精霊の槍をもった、男。それが、ヴァンパイア。と、いう噂。
その二人によって三段階目のあのくそ強いムシュフシュが倒されたのはすげぇ有名な話なんだ!」
興奮気味に話すバルドは子供にでも帰ったかのようだった。
ムシュフシュといえば地方最強モンスターで、三段階の強さがあることは知っている。
最初の段階はあまり強くないが、三段階目は鬼のように強い。
425:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼3 5/5
11/06/03 23:52:05.30 d79woqV70
たった二人の人間が、いくらいい装備とはいえ、戦いに挑むのは無謀に近い。
それを倒したというのだから、名前が世界を超えて異世界にまでに知れ渡るのは当たり前だ。
「ヴァンパイアと旅だぜ?で、ムシュフシュとの戦いによって、ロウッドという悪の英雄は大怪我をして、
助からないといわれていた。ところが、たった六日で完治、傷跡さえなかった。
しかも、目の色が青だったはずなのに、赤に変わっていた。
赤の目の色といえばヴァンパイアの特徴だ。それ以降、その二人は二十年は旅をしていたのに、
年齢が全く変わらない。だけどある日突然いなくなった」
「ヴァンパイアと…旅」
彼にとっても信じられない話だった。
確かに周りのヴァンパイアはプライドがとても高く、人間とともに暮らすことや旅をするなんてありえない。
それゆえに、話に深く聞き入った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )続きます。懐かしいキャラの名前を出しました。インデックスにあるやつです。
426:風と木の名無しさん
11/06/04 02:01:44.13 jJTgdynpO
ヴァンパイア可愛すぎる
シリーズものに入ってるキャラが出てきて懐かしい!
427:風と木の名無しさん
11/06/04 17:48:49.54 YeCH5zZm0
>>421
ヴァンパイアかわいいよちくしょー!
毎回萌えさせていただいてます
428:D30とド荒 1/3 ◆CUcB0p/PMY
11/06/04 18:13:15.46 shMIMn2x0
里予王求 D30とド荒です
同ジャンル投下は数名の方がいらっしゃいますので
テンプレに基づきサブタイトルをつけようと思ったのですが
どうにも思いつかなかったのでトリップをつけました。
シリーズ物ではありませんが同ジャンル過去作品一覧 31-415 37-60 44-401 50-501
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
しゃちほこドームでのバイトは、時にドラマを見てしまう。
滅多にない事だけれど。
あ…盛野さんだ。ラッキー…
正直こういう所でバイトするのって、選手目当てだったりする。
働いてみれば試合も見れないし思っていたのとは全然違うけど、
たま~にこういう、裏ですれ違ったりするのが嬉しい。
まぁ、何食わぬ顔で通り過ぎるだけなんだけど…仕事中だし、相手は試合前のピリピリした時だ。
握手だサインだなんてのはもちろん禁止。
角を曲がった所で、つい隠れて盛野さんを目で追ってしまった。
トイレか。
ん?向こうから来る青いのは…
盛野さんとド荒がトイレ前ではち合わせた。珍しい光景に笑ってしまう。
盛野さんに「俺が先」と言われたド荒が「漏れちゃう」のポーズをする。そうだ、確かこの二人仲良いんだ。
微笑ましいやりとりについ、目が離せなくなった。
そういえば最近不調続きの盛野さん…よかった、笑顔だ。
結局盛野さんが先に入って、出てきたとたんにド荒が慌てて入って行った。
…あれ?
盛野さんが帰らない…。
ド荒を待ってる…?
429:D30とド荒 2/3 ◆CUcB0p/PMY
11/06/04 18:14:06.42 shMIMn2x0
ドアを開けてまだ居る盛野さんに大げさにびっくりするド荒。二度見、三度見、四度見あ叩かれた。
真顔で何も言わない盛野さん。……おいド荒……お前、出番だぞ。
僕は仕事を忘れ一人壁に隠れながらグッと拳を握り、二人を見ていた。
知ってるんだ。
見ちゃったもん。
泣いてなかったけど、泣いてた。
毎日毎日、終わりには沈んだ顔。次の日の朝には笑顔になって頑張っていたけど。
知ってるんだ。
「お前昨日バク転成功したな」
昨日を切り捨てて笑顔になる事がどれだけ大変か。
切り替え?日々は続いているのに。
「ずっと失敗ばっかりだったのに」
応援の声、罵声、野次。色々聞こえる。きっとお客様が思っているよりはるかにここにはよく響く。
期待に応えられない日々は、どんどん積み重なって盛野さんにのしかかっていた。
ド荒は一生懸命ジェスチャーで応えている。
「練習?ふーん。お前が?」
差し伸べられる手も握れなくなっているのかもしれない。
それでも、できる、できると暗示をかけて。
「練習したんだ。あっそ。……俺も練習したいな」
練習してるじゃないですか。あんなに。
…それは、二軍で、ってこと?
「…。」
お前なんか落ちちまえ、この役立たず。足引っ張るんじゃねぇ
そんな声は毎日聞こえる。
それでも監督は盛野さんを落とさない。
落とさない理由は、わかる。だけど、もどかしい気持ちにもなる。
落ちない事の有難さと、いっそ落ちてしまえたら…そんな挟間に盛野さんは居た。
黙ってしまった盛野さんを、ド荒はジッと見ていた。
そしておもむろに手を伸ばし、盛野さんの頭に触れる。
いいこ、いいこと、撫でた。
430:D30とド荒 3/3 ◆CUcB0p/PMY
11/06/04 18:14:54.13 shMIMn2x0
その手はすぐに払われた。
「ずうずうしく触ってんなよ人の頭を。」
めげないド荒は盛野さんを指差すとその手を拳にして自分の胸に当て、トントンと叩いた。
そして、親指をたててgoodのポーズをした。
(おまえの きもちは おれが わかってる だいじょうぶ)
「……あっそ。お前にわかられてもね。」
なにいってんだよ おれがいるだろ~??
とでも言うように、ド荒がずうずうしく盛野さんの肩を組んでもたれかかりお腹を叩いている。
あ、叩かれた。
あ、蹴られた。
大げさに痛がり、指を刺して抗議するド荒。
蹴られた足を引きずり、骨が折れたとアピールする。
相手にされないとわかると、盛野さんを指差して、泣くポーズをして、プーと馬鹿にして笑う。
当然また蹴られた。
盛野さんを指差し、自分を指差し、腕をパンパンと叩く。
(おれは おまえより うでがある)
盛野さんと自分を交互に何度も指差し、バッティングのポーズ。
(かわりに うってやろうか?)
「やっぱ天狗だわ」
よかった…盛野さん、めっちゃ笑顔だ…。
二人はもつれながら、叩き合いながら、グラウンドへと出て行った。
その日の三打席目、盛野さんは数試合ぶりにライトスタンドへ奇麗なアーチを描き、
その打点が決定打となりチームを勝利へと導いた。
ヒーローインタビューに答える彼に、スタンドからは拍手と割れんばかりの声援が降り注いだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
打てますように。
431:風と木の名無しさん
11/06/04 21:36:36.43 Heooele20
>>428
(・∀・)イイ!
432:風と木の名無しさん
11/06/04 22:14:02.01 yvHNSSeI0
>>428
おつ!泣ける…!
433:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 1/5
11/06/05 07:02:27.12 OMZgMJ2F0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )感想嬉しいです!マイカプですがよろしくです
「が、それから百年たって、名前も外見も、吟遊詩人が語るそのムシュフシュを倒した英雄そっくりの人物と、銀の髪と赤い眼をローブで隠した男二人がまた旅に出た。
それからまた何十年か単位でいなくなっては現れるを繰り返した。人間は百年たてば大抵死んでるさ。だが吟遊詩人は人間ではない、
一説では神と関係があるとまでもいわれている。まあそこはいい。その吟遊詩人が見る限り、何度も現れるその男二人は、いつまでも老いない。意味わかる?」
「ヴァンパイアが、人間を助けるためにヴァンパイアにした…生命力は桁違いだから」
頭に浮かんだのはその答えしかなかった。
助からないとされた大怪我が、たった六日で治ることはまずあり得ない。…ヴァンパイアでない限り。
「当たり。だけど本人たちは今でも旅を続けていて、素性は不明、しかも仲はすごくいいときた。
けど同性結婚もできる世界なのに、結婚しない。さてなんでだ」
ズビシと人差し指を、ヴァンパイアの目の前に持っていく。
ヴァンパイアは少し身を引いて考える。
「本人たちにその気があるのであれば、ヴァンパイアに戸籍はなく、人間のほうは時間が過ぎされば死亡とみなされて、戸籍抹消されるから、できないだけ?」
人間の世界に詳しいわけではない。
ただ、人間が持ってきたガルズヘイム製の書物を持ち去って静かに読んできたので、ある程度のことは知っている。
彼は読書が趣味だった。
434:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 2/5
11/06/05 07:05:01.69 OMZgMJ2F0
大抵のヴァンパイアは、人を殺し、血を啜ることを快楽とするが、彼は全くそういうところがなかった。
だから、いま目の前に獲物であるはずの人間がいるのに、素直に話を聞いているのだ。
「それも当たり。すごいよな、人間とヴァンパイアがそこまで心をかよわせる。
確かにヴァンパイアという種族はかなり美形が多いな。それだから傲慢でうざったい性格してるんだけど、
お前は、見目も綺麗なんだけど、性格おかしい。気が弱すぎる。普通人間に謝罪だのお礼だのしないぜ?仲間も不思議がってたけど、よくそんなんでボスクラスモンスターしてたな」
「バルドは、寂しくならないのか?」
一つ間をおいて、バルドは返事をした。実に間抜けな声だった。
「あ?何が」
ヴァンパイアが人間と心をかよわせることはとても珍しいが、その話が本当なら…。そう思い、ヴァンパイアはバルドの手を握った。
「だって、そのヴァンパイアも寂しかったんじゃないか。だから人間を助けて不老不死にしてまで一緒にいたかったんだと思う。バルドは、
こんな広い屋敷に一人でいて、いままで寂しくなかったのか」
頭を垂れて、ヴァンパイアは続けた。か細い声で。
「私は、あのダンジョンにいてもどこにいても、寂しくて仕方なかった。先ほど目が覚めた時も、近くに誰もいなくて寂しかった」
孤独なヴァンパイア。
どこにいても、たとえ取り巻きがいても、人間が恋しい。
人間になりたい。
その話の内容に出てくる二人はきっと楽しい人生を送っているはずだ。
死ねないというつらさも、二人でなら乗り越えられるかもしれない。
435:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 3/5
11/06/05 07:07:49.46 OMZgMJ2F0
それすら羨ましい。寂しがりやで甘えん坊。
まさにその言葉がしっくりくるような性格をしていた。
しゅんとして目を伏せる彼に、バルドは手を伸ばして頭を軽くなでた。
それはまるで、眠れない子供をあやすかのようだった。
「俺は平気。でもお前が寂しいなら、一緒に寝る?」
軽い冗談のつもりだった。
すぐに否定されていると思っていたが、ヴァンパイアの出した答えは違っていた。
「うん」
目を若干輝かせて、頷いた。
すぐに握った手を離して、ヴァンパイアは隣の部屋から布団を持ってきた。
ちゃっちゃと広い部屋の、バルドの隣に布団を敷く。
「面白いやつ、普通なら人間と一緒に寝られるかなんて思わない?」
そう切り返してきたが、ヴァンパイアは十秒くらい考え込んだ後、すぐに答えた。
「むしろ嬉しい」
「変なの。そうだ、お前って名前あんの?」
突然の言葉に、ヴァンパイアは記憶を探るが、生まれて気がついて現在まで、名前を決められたことはなかった。
そういえば先程の書物に載っていたとされるヴァンパイアには名前が付いていた。
ということは、自分で決めたか、人間につけられたかのどちらかだ。
436:ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×弱気吸血鬼4 5/5
11/06/05 07:10:22.39 OMZgMJ2F0
名前がほしい。仲間がほしい。一緒に話ができる相手がほしい。
「ない、だから」
「?」
「バルドがつけてくれないか」
「ん~。本によるとさ、ヴァンパイアの名前、ロウッドってやつがつけたらしいんだ。まあこれもあくまで噂。最初から名前あったのかもしれないけど、
雨の日に仲良くなって、それでレインって名付けたんだと。レインは、その名前をえらく気に入っていたそうだ」
ヴァンパイアは思わず外を見た。
開けられた窓からは、雨が入る兆しもなく、桜が顔をのぞかせていた。
満開の桜を見たのは、初めてだ。
拾った本に、日倭にある桜は美しいと、挿絵入りでかかれていた。その絵とほとんど一緒、だから桜だと思った。
雨は降っていないし、快晴とまでも行かない。
「俺、日倭の血が入ってんだよね。祖父が日倭人で、祖母がガルズヘイム人>
小さいころから祖父が刀の手入れしてるの見て育ってさ。もうその頃すでに家族はガルズヘイムにいたんだけど、
日倭のよさとか語るんだ。悪人の多い街なのに、雰囲気はほかの国をしのぐものがあるって。だから俺、日倭の名前つけるけどそれでいい?
ガルズヘイム人なのに、日倭の名前だけど本当にいいの?」
更に頷いて、ヴァンパイアはまっすぐ相手の目を見た。
日倭の名前というと、漢字が多い。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
437:全て彼のせい 1/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:50:28.45 Eu0ntPXB0
新359むそー6の早熟→叩き上げ。801要素低めのBADEND。人が死にます。
一応叩き上げの列伝ベースですが99%デタラメです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トウガイ、ドコマデモワタシノジャマヲスル...
爆発にも似た轟音と共に門扉が吹き飛んだ。
俄かに速まる鼓動を感じながら、すい、と手を上げる。浮き上がった剣が己を守るように音もなく整列した。
木っ端だの鉄屑だのが混じった砂煙を風が払った後には、予想した通りの姿があった。
九尺にも届かんばかりの巨躯。その身すら超えるほどに巨大な螺旋形の槍を、片手で軽々と振り回す強靭な筋肉。額に巻いた布の下から覗く鋭い眼光もあいまって、その姿は歴戦の勇士さえ圧倒する。
もっとも、今さら恐れなど抱きはしない。そう言い切れるだけの時間を共にしてきた。
何度も肩を並べて戦った。厳つい相貌とは裏腹に、無用の争いを好まぬ、心根の優しい男であることも知っていた。どれほど近くにあろうとも、その槍が己に向けられる心配など必要なかった。
……昨日までは、の、話だ。
軽く息を吸うと、喉がひくりと音を立てた。何か言おうかと思ったが、やめた。普段通りの声を出せる自信がなかった。
彼の喉元を見つめながら、悟られぬよう息を整える。顔を直視することはできなかった。彼はきっと、己が予測した通りの表情をしている。
「なにゆえ魏を裏切った、鍾l会殿?
いや……鍾l会」
ああ、やはりだ。表情を窺う必要さえない、思った通りの声音。また、喉が塞がる感覚がした。
彼には理解できるはずもない話だ。多分、一生。
幼少の頃から、およそ思い通りにならぬものはなかった。人の心を除いては。
天賦の才と、その才を磨くに申し分ない環境の双方に恵まれ、何より人一倍に努力した。
いかなる賞賛を受けようとも飽き足らず、ただ貪欲に高みを求めた。己は選ばれた人間だと信じて疑わなかった。いつかこの手で、全てを手に入れるのだと。
必然的に強烈な反感を買ったが、相手にしなかった。努力もせず他人を貶めるばかりの人間による中傷は、いっそ優越感を煽りさえした。
仕える主すら、のし上がるための踏み台と考えていた。己の自尊心を満足させる程度には優秀だったから、今の主に不満はなかった。
そんな主の下で、彼と出会った。
438:全て彼のせい 2/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:53:32.49 Eu0ntPXB0
最初から気に食わなかった。ちゃちな実績を重ねてようやく出世した、時代遅れの泥臭い人間。そのくせ、皆から一目置かれている。歴戦の将、彼がいれば安心……位の上下を問わず、時には敵将までもが彼を高く評価する。
無性に腹が立った。あんなつまらない男より、己の方がずっと優れている。すぐにでも蹴落としてやると、そう思った。
何かにつけて敵愾心をあらわに噛みついた。何気ない言動に難癖をつけ、少しの失敗にも嫌味を浴びせ、機会があれば出し抜こうと企んだ。顔を歪めて罵倒してきたら、存分に嘲笑ってやるつもりだった。
だが、事態は思いも寄らぬ方向へと進んだ。
彼は、そんな己を全面的に受け入れた。
言いがかりでしかない要求もすんなりと呑み、自らの非を認めれば率直に詫びる。危地に陥った己を我が身も顧みず救出に来ておいて、礼の一つも言わぬことを咎める風もない。早すぎる出世を妬むどころか、勉強熱心だと手放しで褒め称えさえした。
予想もしなかった反応に戸惑い、次いで妙な苛立ちを覚えた。己の敵対的な姿勢にも誠意で応える彼が理解できなかった。
時を重ねるにつれ、彼と組むことが増えた。何度も行動を共にするうちに、いつしか彼の態度にも慣れた。
実際、彼はまったく理想的な同僚だった。確かな実力を持ちながら決して出しゃばらず、雑用から汚れ仕事まで、他人が厭う役割も率先してこなす。不遜極まる己の物言いからも的確に真意を酌み取り、心得た配慮を見せる。
知らず知らず、彼と共に在ることを快くさえ思い始めていた。
ずっとそのままでいられたならば、ある意味では幸せだったのかもしれない。
だが。
ある時、不意に気づいてしまった。
いつの間にか彼にすっかり心を許し、それどころか頼り切ってさえいる己に。
「旧式」だの「私の方が優れている」だのといったお決まりの悪態が、己の本心から遠く乖離してしまっていたことに。
大袈裟でもなんでもなく、その事実は己の存在そのものを揺るがすほどの衝撃だった。
己は誰よりも優れている。他人は全て、野心を叶えるための踏み台に過ぎない。そう信じる強烈な自尊心こそが、今日の己を成立せしめたのだ。他人を認めるなど、信じるなど、頼るなど、断じて許されることではない。
439:全て彼のせい 3/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:56:11.98 Eu0ntPXB0
躍起になって彼を否定しようとした。だが無駄だった。彼はどこまでも誠実で、勤勉で、謙虚で、どれほど不当に罵られようと己を思いやった。周囲が彼に与える高評価にも、何一つ否定できるものはなかった。他ならぬ己自身が、それを否定できなかった。
嫌いたいのに、見下したいのに、どうしても理由が見つからない。いっそ無視したくても、それすら叶わない。彼を意識するたびにたまらなく苦しくて、身体が二つに裂かれてしまいそうだった。
まったく、彼は理想的な同僚だった。……あまりにも、理想的にすぎたのだ。
このままでは壊れてしまう、と思った。そうならないために、もはや思いつく手段は一つしかなかった。
彼という存在を、現実から消してしまえばいい。そうすれば、もう二度と、こんなに苦しい思いをしなくて済む。
「と、う、がい……」
絞り出すように、彼の名を口にする。途端に膨れ上がった激情が喉を押し上げた。何かわめき散らしたい思いに駆られ、すんでのところで意味のある言葉にすり替える。
「あんたばかりが、魏で評価される。
あんたが、私の栄達を閉ざした! だから!」
他に言いようはなかったのか、と、頭のどこかで冷静な己が囁いた。これでは、ごねて暴れる子供そのものではないか。
理由なら用意してあった。己の才を天下に示す。全てを手に入れる。昨日までの主や同胞に問われたならば、鼻で笑ってそう答えるつもりでいた。
決して間違ってはいないはずだ。そのためにこそ、己は兵を挙げたのだから。だというのに、今はその理由が白々しく思え、かといって全てを告げるにも虚栄心が邪魔をした。
「それが、理由か……?
そのために、魏を……司l馬l昭殿を裏切ったというのか」
彼の声は揺れていた。怒りの色はない。ただ困惑しているようだった。
くっ、と、喉を鳴らす。歪みきった声音をもはや取り繕う気にもならなかった。端から無理な話だったのだ。彼を前にして平静を装おうなど。
「……そうだ。
ずっと、あんたが邪魔だった。あんたがいる限り、私は上へ行けない!」
言葉と共に、勢い良く腕を突き出す。放たれた剣が一直線に彼へ飛んだ。迫る数本の剣を、彼は手にした槍を操り叩き落す。一本が彼の右上腕を浅く掠めた。
440:全て彼のせい 4/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 00:59:15.16 Eu0ntPXB0
「なんと……」
ひどく苦い呟きが耳を掠めた。奥歯を強く噛み締める。聞きたくなかった。また、胸が軋む。
振り切るように、鋭く剣を操った。薙ぎ払われた槍が剣をまとめて弾き飛ばす。そのまま彼が踏み込んできた。腕を引き、剣を身に引き寄せながら大きく後退する。
あの巨大な槍の破壊力は凄まじい。一撃でもまともに喰らったが最後、命があったとて満足に立つことも叶うまい。防御は突き破られる。致命傷を負わぬためには、ひたすら逃げ回るしかない。
空を切った横薙ぎの攻撃に続けて、切っ先がこちらへ向く。思いきり地を蹴って横へ跳んだ直後、すぐ脇を巨大な塊が風を纏って過ぎた。
着地と同時に腕を振り、がら空きの背に向けて剣を放つ。彼は身をひねり、手甲で刃を強引に跳ね返した。さらにもう一撃。振り下ろした腕に従って上から剣が襲う。一本が髪を掠め、もう一本が肩当てを傷つけた。
もう一度。手を横に払い、横合いから切りつける。構え直された槍に阻まれ、金属同士のぶつかる嫌な音が響いた。一瞬拮抗した後、槍が剣を振り払う。
一旦手を止め、再び後退。追って距離を詰める彼の顔面めがけて剣を一本叩きつけ、受け止めた槍が視界を遮った瞬間に指を鳴らした。残りの剣が一斉に彼へと突き刺さる。腕や脚が切り裂かれて血がしぶき、くぐもった呻きが漏れた。
確かな手応え。今さら、背筋が震えた。噴き出した血が、彼の血が、赤い。
槍を握る手に力がこもる。構えが変わった。防御から攻撃。わずかに反応が遅れた。我に返り、咄嗟に後ろへ跳んだ己を追うように、槍が大きく振り抜かれる。
躱した。そう思った瞬間、腹に重い衝撃がきた。平衡を欠いた体が宙を飛ぶ。しばしの浮遊感の後、何か凸凹のある物に叩きつけられた。ず、と崩れ落ちる。背に擦れるざらついた感触は、木の幹か。
「は……っ」
頭がくらりと揺れた。ぶつけた背は鈍い痛みを訴えているが、腹はそれほど痛くない。風圧で飛ばされたらしい。
彼の気配が迫る。体勢を立て直す時間はない。地に伏したまま、ただ、顔を上げた。
目の前に、槍の先が突きつけられた。彼そのもののように、武骨で重く、鋭い金属の塊。こんなもので刺されたら痛いどころではないな、と、改めて思った。
441:全て彼のせい 5/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:02:19.97 Eu0ntPXB0
「降伏を勧告する。これ以上愚行を重ねるな」
静かな声が告げた。
喉が震えた。吸い込んだ息が鋭い音を立てる。
「愚行、だと……?」
「よもや、分からぬほどに分別を失ってはいるまいな?
現状も展望も見えぬまま武器を取り、安定しつつある国をいたずらに掻き乱す。それを愚行と呼ばず何と呼ぶ。
……姜l維は討った。将兵の大半は既に投降している。反乱は、もう終わりだ」
言われて初めて、周囲の静けさに気がついた。剣戟が聞こえない。足音さえしない。もう、残っているのは己一人なのかもしれない。
槍がすい、と引かれた。代わりに彼が一歩距離を詰め、膝をつく。つられて視線を上げ、今日初めて彼の顔をまともに見た。
酷い有様だった。鍛え上げられた体のあちこちに生々しい裂傷が開き、流れる血が肌も服も赤黒く染めている。全て、己が負わせた傷だ。
けれども、見下ろしてくる瞳には一片の敵意も、憐憫すら浮かんではいなかった。ただ、深い哀しみと……おそらくは、己を止められなかったことへの自責。
ああ、やはり彼は今も、己を敵だとは思っていないのだ。刃向かわれ身を裂かれようとも。名を呼び捨て地に叩き伏せようとも。
歯を食いしばっても、顔が歪むのを止められなかった。熱い塊が胸から喉元までせり上がって呼吸を塞ぐ。
「そ、んな……そんな目で、私を見るな……!
私は、有能だ……選ばれた人間なのだ……」
震えて上擦った声は、己のものとは思えないほど弱々しかった。
見なければよかった。辛辣な言葉よりも、彼の眼差しが深く心を抉る。
「確かに、お前の才は飛び抜けている。ただ、焦るばかりでは得られぬものもある。
小さくとも堅実な成功が、道を開く……お前は、それに気づけなかった」
目の高さを合わすためか体勢を低くし、己の目を真っ直ぐに見据えながら、彼は諄々と語りかける。
「だが、まだやり直せる。ここで降れば、再びの仕官も許されよう。お前は若い。時間は十分にある」
縫い止められたように動けない。せめて目を逸らしたいのに、視線すら動かない。
「だ、れが」
頭がくらくらと揺れる。熱い塊は今にも喉から溢れ出しそうだ。堪えて、必死に睨みつける。
「誰が、あんたの言いなりになど……! 言ったはずだ、あんたがいる限り、私は」
442:全て彼のせい 6/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:05:17.13 Eu0ntPXB0
「ならば自分は去ろう」
「…………は?」
すっと、頭から熱が引いた。
今、彼は何を言った? 言葉の意味を把握し損ね、ただ呆然と彼の顔を見る。
「お前の復帰を待ち、暇を願い出る。自分との接点が消えれば、比較に縛られ目が曇ることもあるまい。今後は己の器を正しく見定め、着実に上を目指せばよい」
彼は呆気ないほど淡々と告げた。部下に任務の内容を伝える時と同じ、少しも揺らぐことのない声。
空白になった意識に、彼の言葉が徐々に染みて形を成してくる。それにつれて、急速に体から体温が失せていった。
己が再び国に仕えるならば、代わりに今の立場を捨ててもいいというのか。
彼が今まで歩いてきた道。何十年もの時を費やし、心身に負った無数の傷に耐えながら、誠実に、愚直に、地道に、一歩ずつ足元を踏み固めて、必死の思いでここまで築き上げてきた、功績を、名声を、地位を、信頼を、
つまらぬ意地を張る反逆者一人のために、全て棒に振っても構わない、と?
がくり、と体が平衡を崩した。視線を落とすと、地面についた手が震えていた。
違う。そんなつもりで言ったんじゃない。こんなことを望んでいたわけじゃない。全てを捨てろなんて言っていない。
―なら、何を望んでいた? 彼がどうすれば満足できた? そもそも、彼から命さえ奪おうとしていたのに?
体の震えが止まらない。一度下がった熱が、再びふつふつと湧き上がってくる。熱くて、苦しくて、痛くて、どうすればいいのかわからない。
「ふっ……」
「戦乱が終息しつつある今ならば、自分が役目を退こうとさほどの問題は……」
「……ざけるなァ!」
腕を素早く振り上げる。同時に、全身のばねを使って跳ね起きた。
「ぐっ!」
押し殺した悲鳴が漏れた。剣は過たず彼を斬りつけたらしい。それを確認する余裕もなく、もつれる足で転がるように距離を取る。
「お、お得意の、自己、犠牲の、つもりか? ぎ、偽善者が、わ、私を、あ、哀れむ、な!」
泣いているわけでもないのに、しゃくりあげるように喉が詰まった。
彼はゆっくりと立ち上がった。かすかに顔がしかめられ、足元がぐらつく。脇腹の辺りが赤く染まっていた。緩慢な動作で槍を拾い上げ、こちらを向く。その瞳は、変わらず真摯に己を見据えていた。
443:全て彼のせい 7/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:08:16.30 Eu0ntPXB0
「侮辱に聞こえたならば詫びよう。だが、決して哀れんでなどいない。犠牲のつもりもない。
お前は才気に溢れ、未来への大望を持ち、常に研鑽を惜しまぬ努力家でもある。大成の暁には、いかばかりの人物となるか……自分は、その末を見たい。他ならぬ自分が前途を妨げるのであれば」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!」
狙いも何もない。爆発した感情のまま剣を叩きつけた。これ以上、彼の言葉を聞きたくなかった。
なぜ、どうして、そんなことを言える? 身勝手な動機で殺意を抱き、反乱まで起こした相手に。
嘘なら、口先だけの世辞なら、それでよかった。彼の言葉に嘘などないと、本気だと知っているから、辛い。
「その薄汚い口を閉じろ、忌々しい旧式が! あんたが、あんたさえいなければ全てうまくいったんだ! あんたの存在自体が邪魔なんだよ! 消えるというなら、この世界から消えてしまえ!」
声の限りにわめき散らしながら、無茶苦茶に腕を動かす。攻撃とも呼べない攻撃を、彼は最小限の動きで防ぎながら声を張り上げた。
「冷静になれ! 分かった、もう何も言わん。個人的な憎悪は後で受ける。だが、今は降れ。これ以上抵抗を続けるならば、反逆者として討つ!」
耳鳴りがうるさい。目の前が赤い。体が軋んで、ばらばらになりそうだ。ああ、やはり、一刻も早く彼を消してしまわなければ。早く早く早く早く!
「だ、まれ……黙れぇっ! 旧式ごときが、その体で私を討てると思うな! 目障りだ、今日こそ処分してやる!」
力の限り腕を払う。受け止めた槍と剣との間に火花が散った。彼の表情がわずかに歪む。
「やむを、得んか……!」
槍が剣を払いのける。剣が己から離れた隙に、彼が踏み込んできた。後ろへ身を投げ出すと同時に、掬い上げるように槍が振りかぶられる。足元ぎりぎりを穂先が薙いだ。風圧に押されるまま転がって間合いを稼ぐ。
起き上がりざま、バン、と地面を叩き、剣を潜らせる。察知した彼は己に向けて振り下ろしかけた槍を地面に突き刺し、真上に跳んだ。一拍遅れて、無数の刃が噴き出し、彼の足を掠める。だが、傷を負わせるには至らない。
ふらつく頭を押さえて立ち上がったのとほぼ同時に、彼も着地して槍を引き抜いた。
444:全て彼のせい 8/9 ◆QMVs4/uI8w
11/06/08 01:11:23.12 Eu0ntPXB0
攻め手を緩めてはならない。彼の重く小回りの利かない攻撃とは逆に、己は軽く素早い攻撃を得手としている。彼の体力を考えれば、二発当てた程度で致命傷には至るまい。
攻撃を続けようと腕を引いた時、彼の左手が動いた。黒い塊が放られる。まずい。即座に剣を引き戻し、己を庇うように展開する。直後、目の前で爆発が起きた。
爆風と共に、熱が、煙が、無数の破片が全身を襲う。それらをできる限り剣の腹で遮りながら、吹き飛ばされまいと足を踏ん張る。
まともに喰らいさえしなければ、爆破の衝撃自体は大したものではない。雑兵はともかく、名のある武将ならば……
ひやり。そこまで考えた時、背筋に戦慄が走った。
そうだ。確かに、爆弾自体の威力は強くない。それを彼はどう使っていた? 己は知っていたはずだ。
「あ……」
理解した時には、既に遅かった。
身を引く暇さえなかった。眼前に迫る気配。黒煙を割って現れた槍の切っ先を、現実感もなく、ただ、見つめて、そして。
大きな衝撃が襲った、はずだ。音もひどいものだっただろう。だが、何一つ感じ取れなかった。全ての感覚が灼きついたようにただ、白くて。
気がつくと、目の前に彼が立っていた。景色は動いていない。どこかに叩きつけられて止まったらしい。視線を落とすと己の腹に槍が埋まっていたが、麻痺したのか痛みは感じなかった。ただ、少し寒いような気がした。
「自分の技量では、ここまで……恨むな、とは、言わぬ」
重く、感情を押し殺した呟きが聞こえた。落ちかかる瞼をこじ開けて映した瞳は、やはり痛ましげに沈んでいた。自身の傷よりも、相手の痛みを思う色。
唇がわなないた。笑いたいのか泣きたいのか、己自身にも判らなかった。
どうして、彼がそこまで気に病むのだろう。彼は何も、悪いことなどしていないのに。
出会ってから今まで、何一つ善いものなど返さなかった。生意気な口ばかりきいて、何かにつけて反発して、差しのべられた手にも不満ばかりぶつけて、ついには彼の存在自体を否定して。
それなのに彼は、全てを許して、受け入れて、譲り渡して、今もなお、己の理不尽な言い分に怒りもせず、自らの無力を責めている。任務のためには殺すべき私情を入れてまで、己を生き残らせようと心を砕いて。