11/03/10 01:03:25.50 PHxxer3gO
>>1乙です。
半生注意。映画「緑蜂」より、社長と助手。やっぱり恋人未満。
二回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
退社後の自宅で、深夜のパトロールの前に腹ごしらえをしようと相棒に持ち掛けると、今夜は約束があると断られた。
「約束ってなんだ。俺は聞いてないぞ」
「ブリシト、一昨日会社で言った筈だぞ。水曜の夜は予定があるから、パトロールは無しにしようって」
「そうだったっけか?覚えてないな」
「真面目に聞いてなかったんだろ。君はあの時、レ/アのお尻に気を取られていたからな。とにかく今夜はダメだ」
秘書の名を口にした相棒に、俺は疑惑を抱いた。以前にも友達に会うとか言って一人で出かけたが、この野郎実は俺の美人秘書と、こっそりデートを楽しんでいたんだ。
「力ト-、誰と会うんだ。またトニーって奴か?」
「……いや、トニーじゃないよ。昔の仕事仲間」
「仕事って、ああ、車の」
「そう、修理工場の。久しぶりに一緒に飯を食おうって誘われてね」
秘書とのデートの時に使った架空の友達の名前を出すと、相棒はほんのちょっと動揺したようだった。表情は変わらないが、長時間一緒にいるせいか何となくわかる。
仕事仲間と会うという言葉には嘘はなさそうだが、それでもやっぱり疑ってしまう。
「とか言って女に会うんじゃないのか、力ト-」
「いや、男ばっかり。四人で来るって言ってた」
「……お前、けっこう友達いるんだな」
そりゃいるよ、と相棒は呆れたように言ったが、こいつが友達といるとこなんて見たことがなかったから、俺には意外だった。
公私問わず俺とくっついて行動してるんだから、まあ当然と言えば当然なんだが。
「ふうん。そいつらとどこで飯を食うんだ?」
「言ってもきっとわからないよ、君が行くような店じゃないから」
決めつけられたのがおもしろくなく、なおも問い質すと相棒は店の名前を口にしたが、確かに聞いたことのない店だった。
「な、わからないだろ。もう行くよ、時間に遅れそうだ。じゃあな、また明日」
「ああ、また明日」
ヘルメットを被った相棒は愛車に跨がり、エンジン音を唸らせて颯爽と屋敷を後にした。
32:俺達に明日はある・前編 2/7
11/03/10 01:08:54.18 PHxxer3gO
取り残された俺は、自分の部屋に入った。食事の支度が出来てるとメイドが知らせに来たが、何故か食欲が湧かず、後で食べると断った。
暇を持て余し、書斎に移動してパソコンを開いてみたが、ホーネシトメールは届いていなかった。
何となく相棒が向かった店の名前を思い出し、綴りを打ち込んで検索してみると簡単にヒットした。ここからはわりと離れた下町にある、ダイナーの名前だった。
その店の写真画像を眺めていると、急にあることが気になった。
あいつ、本当にここに向かったのか?また上手く俺を出し抜いて、別の場所で秘書と落ち合ってるんじゃないのか?
異様にむしゃくしゃした気分になり、俺はパソコンを乱暴に閉じて椅子から立ち上がった。
数分後、俺は街に出て車を走らせていた。自分で運転するなんて、いつ以来だろう。あまりにも久しぶりで、出発してから何回かエンストを起こした。
うちにあるやつで一番目立たなさそうな車を選んだが、マニュアル車だったのが失敗だった。だが運転しているうちに、なんとかカンは戻った。
ナビを頼りに、俺は目的の店に向かった。もしも相棒がそこにいなければ……明日はまた、喧嘩になるかもしれない。
店近くの路上に駐車し、中の様子を伺った。何組か男ばかりの客はいるが、顔がよく見えない。俺は車を降りた。
なるべく地味にと心がけて、ダサめのトレーナーにジーンズ、これまたダサいパーカーを羽織り、キャップを目深に被って眼鏡まで掛けた。完璧な変装だ。
しかし尾行の緊張感は止まらず、顔が見えないように俯き加減で、恐る恐る店のドアを開いた。
途端にわっというような喧騒と煙草やコーヒーの匂いが、一気に俺に向かって押し寄せて来た。
相棒を見つけた。一番奥のボックス席に、壁を背中にして座っていた。
入り口からすぐの席に腰を落ち着けると、太った中年の女店員がやって来たのでコーヒーを注文した。
こんな店のコーヒーなんてろくでもない味に決まってるが、座った以上何も頼まない訳にはいかなかった。
33:俺達に明日はある・前編 3/7
11/03/10 01:13:23.56 PHxxer3gO
車から持って来た新聞を読むフリをして顔を隠し、俺は相棒の様子を観察した。
相棒の両隣に二人、テーブルを挟んで向かいにも二人、合計五人の男達が肩を寄せ合って料理を摘みながら談笑していた。
相棒の他にアジア系の男が一人いて、ひょっとしたらあれがストリート時代からの仲間なんだろうかと想像した。
運ばれてきたコーヒーを一応啜ったが、やっぱりとても飲めた物じゃなかった。ソファは固くて、長く座ってたらケツがおかしくなりそうだ。
よく考えたら、ここに相棒がいるのを確かめたんだから、長居する必要なんてない。でも俺は、相棒からしばらく目が離せなかった。
よっぽど気のおけない友人達なのか、相棒は常にない明るい表情をしてよく喋り、よく笑った。遠くから眺める俺は、俺といる時にはあまり見せない、奴の別の顔に驚いていた。
あいつあんな風に声を上げて笑うんだな、俺のジョークには大して反応しない癖に。昔からの仲間とのお喋りはそんなに楽しいかよ、どうせくだらない話で盛り上がってるんだろ。
マズそうなハンバーガーなんか食いやがって、あんなのより俺んちの夕食がよっぽど……
次第にイライラした気分になり、いたたまれなくなった俺は席を立った。
その拍子に手にしていた新聞が引っ掛かり、床に灰皿を落としてしまった。ガラガランと大きな音が響き、客の何人かがこちらに顔を向けた。
相棒も目線を寄越して来たのでひやりとしたが、それは一瞬のことですぐ仲間に向き直ったので、俺はほっとした。
レジにいた女店員に、釣りはいらないと大目に金を渡して店を出た。
大股に歩き車に戻ると、判別がついた相棒を店の外から眺めた。
相変わらず話に花が咲いているようで、まだまだ帰る気配はなかった。それを苦々しく思い顔を逸らすと、ちょっと距離を置いて路上に停めてある相棒の愛車に気付いた。来た時は、他の車の陰になっていて見えなかったんだ。
あいつ無用心だな、大事なバイクをこんなとこに置いといて、盗まれたらどうするんだ。仕方ない、店から出るまで俺が見張っといてやるか。全く世話の焼ける奴だ……
何となく帰る気になれないでいた俺は、居座る正当な理由を見つけたことに満足して、一人頷いた。
34:俺達に明日はある・前編 4/7
11/03/10 01:16:28.69 PHxxer3gO
店内と路上を交互に見張って一時間ちょっとが過ぎ、彼らはようやく席を立った。
出て来た相棒に見つからないように、運転席にいる俺は頭を低くした。
バイクの側にたむろして、男達はまだ語らっていた。仲間の一人が肩を叩いて後方を親指で指し示すのに、相棒は首を横に振って何か答えた。
どうやらこれから別の店に行くらしいが、奴は断ったらしい。
男達は手を振って歩き去り、相棒はそれを見送ってから、手にしていたヘルメットをおもむろに被った。顎のベルトをかけながらこちらにちょっと目をやったように見えて、俺はますます頭を下げた。
相棒は何も反応を示さず、バイクに跨がるとエンジンをかけた。赤いテールライトは、あっという間に道の向こうに消えてしまった。
俺はキャップと眼鏡を外し、車のドアを開けて外に出た。相棒が走り去った闇の彼方を見つめて、俺は何をやってるんだとため息をついた。
あいつどうして次の店に行かなかったんだ。きっと酒でも飲んで、またバカ話で盛り上がるんだろうに。
バイクがあるからか?いや、明日また仕事だからか。でも俺の経営パートナーって立場だから、例え遅れて出社したって誰も文句は言わない筈だ。
きっと明日も朝から俺の屋敷に来て、車を運転して会社に向かい、定刻に二人で出勤するつもりなんだな。あいつはそういうとこ、きちんとしてて律儀な奴なんだ。
待てよ、ってことは飲みに行けなかったのは、俺のせいになるのか?……
思考がマイナスの方向に行きかけるのを感じて、俺は考えるのをやめた。
「……帰るか」
一人呟いてドアを開けようとしたが、不穏な空気を感じて後ろを振り返った。
いつの間に近付いたのか小汚い身なりをした若い男が三人、俺の車を眺めてニヤニヤと笑っている。
「よう兄さん、なかなかいい車に乗ってんな。服はダッセエけど、その腕時計も高そうだ」
「けっこう金持ってんだろ?俺達に貸してくんねえかな」
案の定タカって来たチンピラ達がウザくて、元々悪かった気分はいっそうひどくなった。
「うるせえ、とっとと失せろ!お前らみたいなゴミ野郎に、貸してやる金なんかない!」
威勢よく叫んでから、しまったと後悔した。今の俺はロスの夜に暗躍する仮面のヒーローじゃない、ただのブリシト・リ-ドだ。ブラシク・ビューティーもガス銃もない、頼れる相棒もここにはいない。
35:俺達に明日はある・前編 5/7
11/03/10 01:20:19.29 PHxxer3gO
素直に数百ドルも渡してやれば、こいつらは満足して引き下がっただろうに、余計なことを言っちまった。
道路には車が行き交い、往来にも通行人はぽつぽつといたが、こんな状態の俺をわざわざ助けてくれる人間がいる筈はない。ああヤバい、これは多分、かなりヤバい……と焦っていると、チンピラの一人がおもしろそうにぐっと顔を寄せて来た。
「へええ、ずいぶんデカい口叩くじゃねえか。ゴミ野郎で悪かったなあ」
「いや、その……」
「気が変わったぜ。金もだが、その車も貸してくれよ」
「……悪かった!つい口が滑って。ほら、金ならやるから勘弁してくれないか」
財布から何枚か札を掴み差し出すと、チンピラはむしり取るように奪ってなおも笑った。
「遅ぇんだよバーカ。その財布ごと寄越して、さっさと車から離れな」
「こいつ、俺らをなめやがって気にくわねえ。痛め付けてやろうぜ」
「それで金も車もいただくと。なあ、最高に楽しいじゃねえか」
チンピラ達は汚い声でがなり立てて笑った。冷静になれ、と俺は自分に言い聞かせた。だがチンピラの一人が取り出したナイフを見て鼓動はさらに早まり、体中を脂汗がタラタラと流れた。
絶体絶命のピンチだ、どうするブリシト!
「彼から離れろ」
ふいに響いた静かな声の方向に、俺もチンピラ達も目をやった。
ヘルメットを抱え黒い革ジャンを纏った、紛れもない俺の相棒がそこに立っていた。
「なんだよ黄色いの!こいつ、お前の彼氏かよ?」
「引っ込んでな、お嬢ちゃん。俺らこの生意気な野郎に話があるんだ」
相棒のおとなしそうな容貌に油断して、チンピラ達は奴をからかった。気分を害した風でもなく、シニカルに笑った相棒はさらに警告した。
「いいのか?後悔するぞ」
「うるせえぞ、何を後悔するってんだ!」
「目障りだ、こいつからやっちまえ!」
矛先を変えたチンピラ達は、相棒に向かって躍りかかった。
一瞬だった。
ナイフを振りかざした男の横っ面にヘルメットを叩き付け、懐から銃を取り出そうとした男の右手ごとその腹に回し蹴りを喰らわせた。
返す体で最後の一人の鼻柱に強烈な裏拳を見舞うと、そいつが握っていた百ドル札がひらひらと空中に散った。
それがほんの数秒の出来事で、地面に倒れ伏しひざまずいて呻き声を上げる男達を俺はポカンと見つめた。
36:俺達に明日はある・前編 6/7
11/03/10 01:25:06.68 PHxxer3gO
再びヘルメットを抱えた相棒は、チンピラが取り落とした銃を拾って男達に突き付けた。
「まだやるか?」
「い、いや!もういい、悪かった!」
あたふたと走り去るチンピラ達を見送ると、相棒は近くのゴミ箱の中に銃を放り込んだ。それから腰をかがめ、道に散らばった札を拾い集めてから俺の側に戻った。
「ほら、君の金だろ」
「……あ、ああ、すまん」
手渡された札と、向き直った相棒の顔を交互に見つめていると、奴は小さくため息をついた。
「一体何をやってるんだ、ブリシト」
「何って……」
「君みたいなお坊ちゃんが一人で来るには、この辺りはけして安全とは言えない土地柄だ。なんでわざわざ来た、自分で車を運転してまで」
「そりゃあ……俺だってたまには、ドライブくらいするさ。うっかり遠出し過ぎたが、まさかお前に偶然会うとはな。いやあびっくりだ」
「白々しいぞ、ブリシト。店の中にいただろ」
「……気付いてたのか!」
気付かない訳ないだろ、と鼻で笑われて俺はうろたえた。バツの悪さと恥ずかしさが脳と体を全速力で駆け巡り、言うべき言葉がしばらく見つからなかった。
「君が入って来た時から気付いてたよ。外には見覚えのある車まで停まってるしね」
「……俺がいるのをわかってて、知らないふりをしてたのか」
「だって、声をかけたりしちゃ気まずいだろ?こっちも友達といて、君を紹介したり説明するのが面倒だったし」
面倒、という言葉にカチンと来た俺の口調は、段々荒くなっていった。
「面倒なのに、帰ったと見せかけてわざわざ戻り、俺のピンチを救って下さったのか。お優しいな力ト-」
「そりゃ、何事もなく君が帰れば僕も本当に帰ったけど、変な奴らに絡まれてたから。放っとく訳にいかないじゃないか」
「そうかそうか。俺が一人じゃ何も出来ないアホのボンボンだから、お前はご親切に見守っててくれたんだよな」
「よせよ、そんな言い方」
ムッとした相棒の表情に、これ以上はやめとけと俺の中の天使が囁いたが、動き出した口はもう止まらなかった。
37:俺達に明日はある・前編 7/7
11/03/10 01:29:17.67 PHxxer3gO
「うるさい!大体あんなクズ共に絡まれたのも、元をたどれば力ト-、お前のせいだ。こんなろくでもない場所に来たのは、お前に前科があるからだぞ」
「……そんなことだろうと思った。僕が嘘をついてレ/アと会ってやしないか、気が気じゃなかったんだろ。おあいにくだったね」
「確かにな。でも店を出てから彼女と会うかもしれないだろ。だから俺は、ずっと見張ってたんだ」
「ブリシト、いい加減にしろよ。疑いや嫉妬が過ぎるとみっともないぞ。今夜は本当に、友達と会ってただけだ」
俺の言い訳を真に受けた相棒は、眉をひそめてたしなめた。俺は奴の嫉妬という言葉がまたカンに障った。
「友達、ね。よかったな、ごたいそうなお友達と、楽しくお食事が出来て。俺との夕食を断って、あんな、サイテーの店で」
「ブリシト……」
「コーヒーは泥水みたいでクソまずいし、お前らもあんなまずそうなもんよく食えたな。どうせならもっと、マシな店に行けよ。お前の友達が選んだのか?まったくいい趣味だよな」
「おい、ブリシト。僕のことはともかく、友達を悪く言うな」
「怒ったか?本当のことじゃないか」
相棒は肩を怒らせて何かを言いかけたが、ふいに目を閉じ深く息をついた。そして開いた目で俺を見据え、感情を抑えた声で呟いた。
「君には最低かもしれないけど、同じ仕事をしていた頃に、僕は彼らとああいう店でよく飯を食ってたんだ。君がごひいきにしてるような店の味とは比べ物にならないだろうが、それでも僕らには慣れ親しんだ、悪くない味だ」
「……」
「自分達なりの楽しみ方をしてる人間に、一方的な価値観を押し付けて罵るなんて……正直、君をちょっと見損なった」
「おい、力ト-……」
「今度こそ僕は帰るから、君もさっさと帰れ。安心しろ、会社にはちゃんと顔を出すから」
無表情でバイクの方へ歩いて行く相棒を眺めながら、俺は猛烈に後悔した。
違うんだ、そんなつもりはなかった。傷付けるつもりじゃ……ただ俺は、不愉快だったんだ。仲間と騒いでるお前の笑顔を見て、なんだかおもしろくなかっただけなんだ。
このまま帰してはいけないと焦った俺は、足早に立ち去ろうとする奴の背中に駆け寄った。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
38:風と木の名無しさん
11/03/10 01:58:42.85 UTaHe/ll0
支援
39:風と木の名無しさん
11/03/10 02:46:56.79 VlWQK6zmO
半生きめえ
役者さん冒涜されて可哀想
40:風と木の名無しさん
11/03/10 05:58:59.90 NIKox4mqO
前スレまだ残ってるんだけど
41:風と木の名無しさん
11/03/10 13:43:31.33 GsRMUgcu0
641 :風と木の名無しさん[sage]:2011/03/10(木) 03:24:46.69 ID:VlWQK6zmO
地震だ地震だヒャッホイ
ドカンとでかい地震来てくれないかな
楽しみ~
確か原発から放射能漏れると、宮城県民が県外に出られなくなるんだよね
ざまあw
42:風と木の名無しさん
11/03/10 18:19:16.63 TTMEnrpx0
今日は8台の人じゃなくかな?かな?の携帯のいつもの人が来たのか
43:風と木の名無しさん
11/03/12 11:08:23.96 94gWxMO50
>>31
緑蜂よかった!続きwktkしながら待ってます^^
44:風と木の名無しさん
11/03/12 17:10:04.53 YYex+A8h0
>>31
これ、好き!
45:風と木の名無しさん
11/03/13 05:16:13.35 E7CoG0ELO
>>31 後半待ってます
46:俺達に明日はある・後編 1/5
11/03/14 09:58:45.53 zYRJYLS2O
連投すみません。
半生注意。>>31の続きで、映画「緑蜂」より社長と助手、+秘書。
ケンカップルと世話焼きオカン的関係。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「……力ト-、待てよ!俺が悪かった」
「いいよもう、しょせん君にはわからないだろうから」
「違う、さっきのあれは、本気じゃなかったんだ。お前の友達の好みをサイテーなんて言っちまって……その、ホントすまなかった」
よっぽど腹に据えかねたのか、相棒は纏わり付く俺をほとんど無視してバイクに跨がり、ヘルメットを頭に乗せた。
焦りと後悔で動揺した俺は、つい声を荒げて怒鳴りつけた。
「だってお前が、俺が嫉妬してるなんて言うから!売り言葉に買い言葉ってやつだったんだよ」
「また、僕のせいか」
横目で冷笑されて俺はますますカッとなり、なりふり構わず叫んでしまった。
「そうだよ、お前のせいだ!お前が俺の知らない店で、俺の知らない奴らと飯なんか食ってるからだ。なんだよ、バカみたいに大笑いしやがって。あんな顔、俺の前じゃ滅多にしないくせに!」
一息にまくし立ててからはっと我に返ると、相棒は黒目勝ちな目を精一杯開いて俺を見つめ、呆気に取られているようだった。きっと今の俺はフラミンゴみたいに、全身が真っ赤になっているに違いない。
相棒はやがて、深いシワを眉間に刻んだ。この表情には見覚えがある。バカをやった俺を叱る前に、親父がよくこんな顔をしていた。
しかしこいつは、俺を叱り飛ばしたり、嘲笑ったりはしなかった。
「ブリシト、君……そんなことで怒ってたのか」
相棒はシートに横向きに座り直して、俺をまっすぐに見た。その声は穏やかで、意外な反応にちょっと驚いた後俺は、自嘲気味に呟いた。
「ああ、そうだ。小さい男だと笑ってくれよ」
「バカだな、君は。つくづくバカだ」
笑えとは言ったがバカにしろとは言ってないぞ、と小声で文句を付けた俺に構わず、奴はさらに言葉を続けた。
「僕が君の前で笑わないって?そりゃ、君のジョークはその、何て言うか……」
「イマイチ、か?」
「そう。でも全然笑ってないって訳じゃないだろ。それに今日は久しぶりに昔馴染みに会えて、いろんな話が出来て嬉しかったから、顔も自然と緩んだのさ」
47:俺達に明日はある・後編 2/5
11/03/14 10:02:19.63 zYRJYLS2O
「毎日会ってる俺が相手じゃ、簡単に顔は緩まないってか」
「そういう風に言うなよ。君だって、例えば女の子と会ってる時には、僕といる時とは違う顔や態度になるだろ」
「そりゃ、まあ……」
「悪い意味じゃなく、相手によって態度が変わるなんてよくあることさ。それに笑わないからって、楽しくないとは限らないよ」
バイクに腰掛け、下に伸ばした両手を組んで相棒は笑った。和やかなムードに流された俺は、思わずバカみたいな質問をしてしまった。
「力ト-、俺といてお前、楽しいか?」
「楽しくなけりゃパートナーにはならないし、ましてや『兄弟』なんて呼ばないよ。まあいろいろ問題はあるけど、僕は君と一緒にいるのが……好きだ」
茶化しもせず真剣に答えた自分に照れたのか、相棒は視線を地面に落とした。俺は急に俺の心臓の音が、ドラムロールのように激しく耳に轟くのを感じた。
相棒は照れ臭さを打ち消すようにパン、と手を叩いて鳴らすと、シートから立ち上がって俺を再び見つめた。
「ブリシト、そろそろ帰ろう。また危ない目に合わないうちに、君も早いとこ車に乗って……」
言い終える前に、体が動いた。感極まった俺は相棒の顔を両手で挟み、やや熱烈なキスをその両頬に一回ずつと、額にも一回、つまり合計三回もしてしまった。
さらに、驚く奴の肩と背中に腕を回して強く抱き寄せた。勢いよく抱きしめたせいで、相棒の頭からヘルメットが落ちた。
相棒はうろたえまくり、なおもハグをやめない俺の腕から逃げようともがいた。
「……○□×☆、△☆×!ブリシト、ブリシト!」
焦るあまり中国語で喚く相棒と、その体を捕まえたままの俺の側を、ほろ酔い気味の黒人の老夫婦が通りかかった。
「いよう、お熱いねえお二人さん!」
「あなた、若い子をからかっちゃ悪いわよ。かわいいカップルじゃないの」
ごめんなさいね、と言い残して亭主の背中を押す夫人を見送った後、俺達は拍子抜けした顔を見合わせた。
「お熱いね、だってさ」
「……!」
亭主のからかいを繰り返した俺を、顔を真っ赤に染めた相棒が睨んだ。
48:風と木の名無しさん
11/03/14 10:03:19.64 IEY+DiMZO
支援なの?
49:俺達に明日はある・後編 3/5
11/03/14 10:07:14.62 zYRJYLS2O
次の瞬間、左足に強烈な痛みを感じ、続いて左頬をすさまじい衝撃に襲われた。相棒の右足が俺の足を踏み付け、驚きのけ反った俺の顔面を、奴の平手が思いっきり張り飛ばしやがったんだ。
「いてえー!力ト-、お前本気で踏んで、殴ったな!」
「……君って奴は、どこまで人をからかったら気が済むんだ!真面目に取り合った僕がバカだった!」
「力ト-、何言ってる。からかってなんかいないぞ」
「嘘つけ、もう君の言うことなんか信じない!」
「待てよ、からかったって、キスしたことがか?」
「そうだよ!おかげで、通行人にバカにされた」
「あの夫婦はバカになんてしてないぞ。ただ、その、カップルと間違われただけで」
「よけい悪いよ!」
「まあ落ち着け。お前にキスしたのには自分でもびっくりしてるが、嬉しくてついしちゃったんだよ。でも別にいいだろ、この国じゃ普通に親愛の情の証だ」
物心ついてから男にキスしたのはお前が初めてだけどな、と痛む頬をさすりつつ付け加えると、相棒はちっとも嬉しくないと言いたげな仏頂面を作った。
「力ト-、怒るなよ。俺達パートナーで、ションディーだろ。それとも、照れてる?」
「……もういい!」
道に転がったヘルメットを拾い上げて被った相棒は、勢いよくバイクに跨がりエンジンをかけて、大きくアクセルをふかした。爆音の合間に、俺は声を張り上げて相棒に尋ねた。
「力ト-!お前一人で、先に帰っちまうつもりか?せっかく俺を助けたのに、また変な奴らに狙われたら、どうする気だ!」
俺の言葉を聞き取ったらしい相棒は空ぶかしをやめ、不機嫌な低い声で一言告げた。
「……車を出せ」
自宅に向かって走る俺の車の後ろに、少し距離を開けて一ツ目のライトがついて来ていた。
屋敷の門が見える場所に着いたところで、ライトはUターンした。俺は車を停め、段々と小さくなっていく赤い点をルームミラー越しに眺めた。
あいつ、朝はうちに迎えに来てくれるのかな。怒っててもきっと来るだろう。何しろ負けず嫌いで、律儀な奴だから。
視線を前に戻すと再びアクセルを踏み、相棒の怒りを解く懐柔策を思案しながら、俺は門の中に車を滑り込ませた。
50:俺達に明日はある・後編 4/5
11/03/14 10:11:33.62 zYRJYLS2O
翌朝相棒はやっぱり、きっちり屋敷にやって来た。まだ怒っているらしく、車の中や会社に着いてからもずっと無言だった。
無言なのは俺に対してだけで、秘書や他の社員とは普通に言葉を交わしていた。しかし聡い美人秘書は異変を感じ取ったらしく、社長室にいる俺に話しかけて来た。
「ブリシト、彼とどうかした?喧嘩でもしたの」
「彼って、あいつのこと?」
ガラス向こうの応接スペースのソファに陣取り、ボーッとテレビを眺めている相棒を指して訊くと、秘書は他に誰がいるのよという目をして頷いた。
「別にどうもしやしないさ」
「嘘ね。だってあなた達、今日はまともに口も聞いてないじゃない」
とぼける俺を、彼女は鋭く追及し続けた。もはや二人目の相棒とも言える有能な年上の秘書に根負けし、俺は夕べ起きた出来事を話してしまった。ただし、キスの件は伏せて。
「それで力ト-に殴られて、頬っぺたを腫らして、話もしてもらえないって訳ね」
「そうなんだ。俺、かわいそうだろ」
言い忘れたが左頬がまだヒリヒリ痛むので、俺は湿布を貼り付けて出社している。
「ブリシト、あなたってバカね」
「レ/ア……君もか。あの野郎も俺をバカと言ったぞ」
「そりゃ言うわよ。なんなのあなた、彼のことが好きなの?」
「違う!……いや、好きは好きだが、そっちの好きじゃない。と、思う」
微妙に語尾を濁した俺の言葉に、秘書は細くて綺麗な眉をしかめた。
「思う?まあいいわ。ともかく、友達と会ってたくらいで嫉妬されちゃたまらないわね。しかも悪口言うなんて、力ト-が怒るのは当然だし、気の毒よ」
相棒がブチキレたのは嫉妬や悪口のせいじゃなく、俺にキスされたからだとは知らない秘書は、やや的外れな諌言をした。
だが詳しく説明すると話がややこしくなるので、俺は神妙なフリで彼女の言葉に耳を傾けていた。
51:俺達に明日はある・後編 5/5
11/03/14 10:16:02.56 zYRJYLS2O
「ブリシト、そんな風じゃあなた、いつか彼に恋人が出来たら、その子を殺しかねないわね」
「まさか、そんな訳ないだろ!」
「さあどうかしら、あなただもの。力ト-はあなたに本命の恋人が出来たとしても、つまらない嫉妬なんかしないと思うわよ」
「どうかな。その恋人がもしレ/ア、君だったら……というか、君であって欲しいんだけど」
手を取ろうとして伸ばした俺の手の甲を彼女は軽くはたき、姿勢を正して業務用スマイルを浮かべた。
「社長、もうすぐ会議のお時間ですわ。お忘れなく」
「……了解」
ドアの方に歩いて行く揺れるヒップに目をやると、察知したかのようにこちらを振り返ったので、慌てて視線を逸らした。
「ねえブリシト、力ト-と仲直りするのよ。なるべく、早めにね」
「そっちも了解、ありがと」
どういたしまして、と返してドアを閉めた秘書は、テレビから目を離さない相棒をチラッと眺めて自分の席に戻った。
彼女に言われるまでもなく、俺は仲直りを持ち掛けるつもりだった。
完全無視されてもやもやした気分のままじゃ、とても会議になんか集中出来そうにない。
作戦はすでに練った。朝イチに電話で個室を予約した、超高級中華料理店のゴージャスなディナーだ。あいつの好物ばかりを出すよう、手回しもしてある。
金持ちらしい懐柔策だな、とか嫌味を言われるかもしれないが構うもんか、これが俺なりの誠意の表現だ。
お膳立ては出来た、後は相棒を口説くだけ。前にあいつは、『なんで僕を口説かないんだ』とか言ってたっけな。まさに、その日がやって来たって訳だ。
中華料理店のパンフレットを手にした俺は、社長室から出て相棒に近付いた。気付いてる筈なのに、奴は一向にテレビから目を逸らさないでいる。
敵は手ごわい、だが今が勝負の時だ。
「ようションディー、ちょっといいか?話があるんだ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
やっぱりギャグ入れられなかったorz
デブイデが待ち遠しいです。
52:風と木の名無しさん
11/03/14 10:27:54.15 IEY+DiMZO
>>51
待ってましたー!
社長もゆる……
53:風と木の名無しさん
11/03/14 19:14:38.05 J1EXzb1f0
>>51
社長不器用だな~w
これでケイローも意識してくれればいいのにw
両片思いGJ!!
54:風と木の名無しさん
11/03/15 00:03:05.57 JMRQZvJ90
半生
映画「A国王の演説」より、言語聴覚士×国王×言語聴覚士。
はっきりとリバ描写ありです、ご注意を。
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55:L and B 1/6
11/03/15 00:05:19.33 JMRQZvJ90
一人きりのソファは寒い。
その上で誰かと二人で過ごす時間を知った者にとっては特に。
古びた家具の上に身を起こしたバ一ティは、
最初にライオネノレ・口一グのオフィスを訪ねたあの日を思い出していた。
思えば不可能じみた事柄は全て、このソファから始まったのだ。
口一グとの出会いや彼とやりおおせたスピーチ、そして数分前までの出来事。
バ一ティは口一グの腕の中に倒れこんで少しだけ甘やかして貰っていた。
いつでも飄然として掴み所のない親友はしかし、
今宵に限っては右にも左にもかわさずに抱きしめてくれた。
国王が彼の胸や肩に頬を擦りつけられるように、
その手の平に接吻することができるように、飽くまでも優しく。
確かにお互いに平静な筈だった。バ一ティはそう考えた。
しかし再びソファから身を起こした時、
二人はもはや“親友”ではなくなっていたのだった。
裸の足に夜気が忍び寄る。
バ一ティは身震いしながら足元に落ちて皺になっている服を拾い集めた。
彼以外の分は既に見当たらない。
その主がバ一ティの体の上から離れて、既に数分が経っている。
「……口一グ、い、一体どこに行ってるんだ?」
入口付近でバ一ティの問いかけに応じる声があった。
再び姿を現した時、口一グは既に衣服を整え、
ティーポットと二つのカップを携えていた。
56:L and B 2/6
11/03/15 00:07:21.05 JMRQZvJ90
バ一ティは脱いだ時とは正反対の乱暴な仕草で服を身に付けていった。
照れくさく、苦しかった。
紅茶などすすりながら他人のように向かいあって座っている口一グが憎らしかった。
―彼はどんな思いで私を見つめているのだろう。
今さっき同性に抱かれることを知った男を。
「よければ、わ、私の隣に座ると良い。今夜は、……なかなか冷えるから」
「いや私はここで結構」
口一グはカップを持っていない方の手で頬杖をついた。
そのまま相手の様子を伺うさまは、診療の時のそれとまるで同じである。
バ一ティは怒鳴りつけたいのを堪え、
腹いせのように乱れ髪を整え、ネクタイを強く結び直した。
今宵だけは、かんしゃくと無縁な夜にしたかった。
バ一ティがソファから立ち上がった瞬間、口一グは僅かに身をすくませた。
何を考えたのかは分からない。
その仕草は苛立ちの他にもあらゆる感情を煽るものだったが
全てを抑え、彼は口一グの元へと歩いた。
そのまま足元に座り込み、頬を太腿の上に乗せる。
「では、私が君の所へ行こう」
愛する男は声を立てず息だけで笑った。
初冬の床の上はひどく底冷えがしたが、
口一グに正面から眺められるのを避けることはできた。
紅茶の中をゆっくりと上下する葉を見つめながら、
バ一ティは先程の出来事を一場面ずつ可能な限り細かく回想していた。
事を始めてから二人が完全に一つになるのにはたっぷり小一時間かかった。
それが全ての同性愛に通じるものなのかどうかは分からないが、
時間をかけてじわじわと押し入られ所有される感覚は
生涯体に焼き付けられることだろう、とバ一ティは思う。
57:L and B 3/6
11/03/15 00:08:42.26 JMRQZvJ90
痛かった。そして優しく甘美だった。
同時にそれは恐ろしい罪でもあるのだった。
「口一グ」
彼は口を開いた。
「さっき、私は何かとんでもないことを口走ったかな?」
紅茶で温まった右手が伸び、頭を優しく叩く。
「ああ。何回もね」
「言わないでくれよ。せっかく、忘れているんだから」
「いや、言う。君はついに私をライオネノレと呼んだんだよ」
王は弾かれたように顔を上げ、自身を見下ろす瞳を見つめかえした。
「い、い、いつだ?」
「いつって、最後のほうだ。君は無我夢中だったから覚えていないかもしれないが」
ライオネノレ―
その名の主とはあらゆる言葉を共有した。
睦言や罵倒のみならず、時には淫らな単語も。
しかしこのたったの六文字よりも背徳的な響きの言葉があっただろうか。
彼を特別な目で見始めて以来幾度も胸の中で叫んだ名を、
ついに口にしてしまったのだ。
「信じてないな。次からは録音しておこう」
冗談めかして呟いた口一グを他所に、バ一ティは大きく溜め息をついた。
58:L and B 4/6
11/03/15 00:09:41.46 JMRQZvJ90
夕暮れのハーレー街には濃い霧がかかっている。
細く開いたカーテンの隙間から覗ける街は冬の海にも似て、
古ぼけたオフィスが恋人同士を乗せたまま当てもなく船出するような
奇妙な感覚がバ一ティを襲った。
口一グの足は温かく血の流れが感じられたが、それでも身震いしたい思いだった。
「後悔しているかい?」
口一グの問いにバ一ティは再び顔を上げ、その顔を見つめ返す。
「まさか」
「しかし今、溜め息をついたろう」
夕闇の忍び寄る中だが、口一グの顔に憂いの影は無いように見えた。
全ていつも通りだ。
心の中ににどんな考えを隠しているか、伺い知ることができないのだ。
「男同士、しかも英国王と平民、英国王とオーストラリア人。
こんな愛は芝居にだってそうそう出てこない。
後悔しない王様なんていないと思ったのさ」
「誤解だ。わ、私が前に言ったことを気にしているのなら……」
頭に上った血がその英国王の舌をもつれさせた。
「既に謝罪したつもりだった。き、君の、身分や故郷を侮辱したことを」
夢中の内に立ち上がり、口一グの肩を強く掴む。
それでも不十分だという思いに駆られ、
その顔を両の掌で挟み鼻同士が触れ合いそうな距離で覗きこむ。
「た、ただ……私は……」吐息ばかりが嵐のように熱く溢れ出てバ一ティの言葉を駆逐して行った。
小指に填めた指環だけが冷たかった。
「“私は”……?」
吃音に捕われてしまったバ一ティに対して彼は多くを問わず、
ただ双眸に微笑を含んだまま、唇の形だけで小さく何かを呟く。
不審げなバ一ティを他所に、幾度も幾度も。
その語が何を意味するか解った時、吐息に混じって温かな笑いが沸き出した。
かつてその下品な言葉が、焦りに縛られた舌と唇を解き放った時のように。
59:L and B 5/6
11/03/15 00:11:17.63 JMRQZvJ90
「わ、私が溜め息をついたのは……」
彼は頬を紅潮させ所々つっかえつつも、やっとのことで囁いた。
「煙草嫌いの君と、これから何千回となく接吻することになるのが辛いからさ」
ジョークのタイミングが掴めないのは相変わらずだったが、
ライオネノレ・口一グは小さく声を上げて笑った。
「確かに酷い味だった。また吸ったな」
その酷い味とやらを確認するかのように、
冷たく赤い舌が伸びてきて火照った唇に先端だけ触れた。
やがてどちらからともなく唇を深々と重ね、苦しい程の接吻で互いの味を確かめ合う。
一度目の時よりも強く、優しく。
バ一ティは口一グの腕を引っ張って立たせると録音機のもとへ強引に誘った。
今度は口一グが怪訝な顔をする番だった。
「録音するんだろう?」
まさか本気にするとは思わなかった、などという口一グの呟きも意に介さず
王はたどたどしい手付きでレコードをセットし、そして再び上着を脱ぎ捨てた。
機器の発する僅かなノイズを聞きつつ、その手が口一グの肩にかかる。
「じゃあ……始めようか」
その言葉に続く名前は、心の中だけで囁いた。
真実を口に出せる訳がなかった。
ライオネノレの名を呼ぶのに相応しい者になれたか、あるいはなれるかどうか自信がないのだ、などと。
彼の前では王冠は無意味だ。
バ一ティは、不器用で癇癪持ちの一人の男に戻らなくてはならなかった。
それが恐ろしいのだ。
丸裸になった自分が、このたった一人の平民の前では
あまりに幼稚で頼りなげに思われるのだ。
60:L and B 6/6
11/03/15 00:12:18.72 JMRQZvJ90
バ一ティは不安を追うように頭を左右に振り、口一グの体を強く床に押し付けた。
先刻彼に捧げたのと同じものを、今度は自らが奪い去ろうとしているのだ。
こんな局面で恐れを悟られたくなかった。
「やはり痛いかい?」
口一グは既に自らの顔の両脇に肘をついて体を支えているバ一ティに飄然と尋ねる。
その様は相変わらず憎らしく、そして愛しかった。
「最初は拷問のように痛い」
冷ややかに嘘をついてみせたあとで、バ一ティは彼の両頬を柔らかく撫ぜた。
「で、でも一瞬だけだ」
わざとらしく、覚悟を決めたかのように目を瞑った
口一グを見下ろしながら、胸の中で静かに祈る。
―せめて今夜だけは、彼に相応しい男でいられますように。
互いにとって最高の夕べとなりますように。
霧煙るロンドンに、今宵も闇が訪れる。
不安定な恋人たちを包み隠す夜は、まだ始まったばかりだった。
61:L and B 6/6
11/03/15 00:12:37.58 JMRQZvJ90
バ一ティは不安を追うように頭を左右に振り、口一グの体を強く床に押し付けた。
先刻彼に捧げたのと同じものを、今度は自らが奪い去ろうとしているのだ。
こんな局面で恐れを悟られたくなかった。
「やはり痛いかい?」
口一グは既に自らの顔の両脇に肘をついて体を支えているバ一ティに飄然と尋ねる。
その様は相変わらず憎らしく、そして愛しかった。
「最初は拷問のように痛い」
冷ややかに嘘をついてみせたあとで、バ一ティは彼の両頬を柔らかく撫ぜた。
「で、でも一瞬だけだ」
わざとらしく、覚悟を決めたかのように目を瞑った
口一グを見下ろしながら、胸の中で静かに祈る。
―せめて今夜だけは、彼に相応しい男でいられますように。
互いにとって最高の夕べとなりますように。
霧煙るロンドンに、今宵も闇が訪れる。
不安定な恋人たちを包み隠す夜は、まだ始まったばかりだった。
62:風と木の名無しさん
11/03/15 00:14:20.68 JMRQZvJ90
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最後の投稿失敗、失礼いたしました。
63:風と木の名無しさん
11/03/15 01:19:41.11 1SPdvEWmO
前スレまだまだ余裕あるよー
64:風と木の名無しさん
11/03/15 01:33:44.23 kmWMZYqUO
>>63
>>2
65:少女マンガ専門店1
11/03/17 20:52:47.01 ZbJxR8Ty0
夜中にハッと目が覚めて、私はトイレに向かった…。
その時、いように目に入って来たのが、かいだんのすみやタンスのうらから少し見える、
お母さんが買って来た、「ゴキブリホイホイ」である。
「ゴキブリホイホイ」と言えば、昔からおなじみの、アイテムであり、家の形をしたはこの
中にゴキブリをさそう匂いがする、ふくろがある。
が、その匂いにさそわれてやって来たゴキブリは、その周りにある、超強力な
ねんちゃくシートに足をとられ、無ざんに死んでいく…。
と、言う、5こ入りで、スーパーに売っている398円のお得パックである。
――そして、そのゴキブリホイホイが妙に気になった私は、箱の中を、
そっと覗きこんで見た…。
「うわっ。ほんまにゴキブリとれとうしー。うげっまだ動っきょう。キモ~。
こんな罠に引っかかるなんて、アホちゃーん。」
そう言って私は、トイレをすませてベッドへもぐると、
「あっそうじゃ。ちょっとだけマンガ読もーっと。」
そう言うと、マンガでぎっしりの本棚から、一冊取りだして読み始めた。
もう私はゴキブリの事などすっかり忘れていた。
次の日の学校の帰り道、見なれない、かわいい立て物があった。
(んん?こんなお店いつの間にできたん?ぜんぜん気付かんかったな~。)
かんばんをさがしてもないのでよく見ると入り口のドアにはり紙を見つけた。
「少女マンガ専門店近日オープン!!
今ならおためし期間マンガ何でも読みほうだい!
お気軽にお入りください。」
店内をガラスごしに覗いてみると、うす暗くてよく見えなかった。
66:少女マンガ専門店2
11/03/17 20:54:01.28 ZbJxR8Ty0
「ごめんくださーーい。」
返事がないので店の中へ2.3歩入り、もういちど、
「ごめんくださーーい。誰かいませんかー?。」
目をこらして店内をよォーく見てみると、奥の本棚に、私が以前からさがしていた、
チョーレア物のコミック本をみつけた。私はおもわず本棚へかけよった。
その時何かにつまづいてころんでしまった。
「ドタッ。」
(いったーーーー。)
立ち上がろうとすると、手足がゆかからはなれない。
(何っ!?)
と思ってゆかを見てみると、床材(タイルなど)をはるための強力な接着剤が
べったりと床にぬられていた。
(!!何これ!接着剤!?まだ工事中だったんだ!
どうしよう…。体が全ぜん床からはなれない!。)
「誰かぁーーー。たすけてーーっ。」
いくらさけんでも周りはしーーんとしている。
私は、」ありったけの力をふりしぼって体を引きはがそうともがいた。
しかし、もがけばもがくほど、接着剤が体に、からみついて来て、ますます
身動きができなくなった。
(年で私がこんなめに…。)
67:少女マンガ専門店3
11/03/17 20:54:30.64 ZbJxR8Ty0
まどの向こうは、すっかり暗くなってしまい、ますます心細くなって来た。
その時、まどの外に人の気配を感じた。
(!!誰か来た!)
「たすけて!」
そちらを見てみると、まどいっぱいのとても巨大な目がギョロリとこちらを見た。
「!!」
私は自分の目をうたがった。
そしてまどの向こうから大きな声で、
「うわっほんまにゴキブリとれとうしー。」
私はもがいた。
「うげっまだ動っきょう。キモ~。こんな罠に引っかかるなんて、アホちゃーん。」
(えっ。この光景、どこかで見たような気が…。
そうだ!これは昨夜の私だ!!!)
68:風と木の名無しさん
11/03/17 22:07:28.67 DiELLJyq0
>ID:ZbJxR8Ty0
せめて前スレでやって…
69:風と木の名無しさん
11/03/17 22:18:52.43 JERs9NWD0
>>68
荒らしだからさわっちゃだめ
70:ヘタレくんとツンデレくん1/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:23:57.43 etzSJQNh0
闇金ウシジマくんで高田×社長。エロなし。取り立てくんをベースに社長の座敷犬状態のヘタレイケメン×ツンデレ女王様な話です。社長がらしくない程優しいですが、
甘く穏やかな話しが書きたいと思いまして・・・。
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高田は大手レコードーショップで買い物を終え、自分が借りているアパートに戻ってきた。外から自分の部屋を見ると、部屋には灯りがついている。一人暮らしの高田
だが、美麗な見かけの為に相手には苦労したためしがないので、誰かが部屋で高田を待っている状況は別に珍しくはない。
けれど、今日部屋に居るのはそんじょそこらの女ではない。早くあそこに帰りたいと急く反面、嬉しくてここで眺めていたいと思う。
「好いもんだな」
部屋の灯りを見ながら呟くと、冬の冷たい風が急に気紛れをおこして強く吹き始めた。
「寒いっ」
買ったばかりのインナーを見せつける為に恰好をつけてコートの前を開けていたが、堪らず両手で前を合わせながらアパートの中に飛び込んで行った。
ー---------------------------------------------------------------------------
「ただいま」
部屋の出入り口のドアを開け、靴を脱ぐ。
「ん?美味しそうな匂い」
ふわりといい匂いがした。唾液が一気に湧き、胃が空腹で切なくなる。小さな玄関に靴を置き、部屋の一番奥にある台所の方に歩いて行く。近づけば近づくほど匂いも
近くなる。1DKの小さな我が家だが、何だかいつもより居心地がよく感じるのは匂いのお陰だろうか。
71:ヘタレくんとツンデレくん2/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:25:05.84 etzSJQNh0
数歩歩くだけで台所との間のドアの前に行きつき、ノブに手をかけて開けた。
「社長、戻りました」
「おう」
台所には丑嶋が立っていて、鍋を掻き混ぜながら返事をした。高田は丑嶋の大きな背中にそれとなく手を這わし、鍋の中を覗いた。中には茶色のスープと大きく切られ
た肉と野菜の塊がグツグツと煮込まれている。
「カレーですか?」
「あ?ビーフシチューだ。匂いで分かるだろうが。もう少しで出来るから」
言われてみれば匂いがカレーとビーフシチューでは全く違うのだが、料理が出来ない高田にとっては、見かけにおいてはカレーとビーフシチューの見分けはつかない。
会社の前で別れ、レコードショップに向かった高田と、高田の部屋に向かった丑嶋。高田が留守にした時間は2時間近くだが、料理をしないので2時間足らずでビーフ
シチューを作れるのが手早いのかも分からない。
美味しそうな匂いがした時点で何かが台所で行われているのは分かっていたが、まさか鍋まで持ち出して本格的に料理してくれているとは思わなかった。
何しろ、高田としては我が家の台所なのに、丑嶋が今使っている鍋などの調理器具があったことさえも知らなかったのだ。恐らく調理器具自体は以前に部屋に来た何人
かの女性達が買いそろえてくれて、丑嶋が来る前からあったのだろう。それでも知らなかったのは、来てくれた女性達が料理する姿なんて一切興味がなく、出来る料理に
も興味が左程なくて、今のように台所に乗り込んで来たのは初めてとも言えるからだ。
焦げないように鍋を掻き混ぜる丑嶋を見ていると、後ろから腰に腕を回して広い背中に顔を埋めてしまいたくなってしまう。そんなことしたら丑嶋はどういう反応をす
るだろうか。いつも通り冷静さを崩さずいるだろうか。それとも、照れ隠しに怒りだすだろうか。
72:ヘタレくんとツンデレくん3/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:25:58.10 etzSJQNh0
けれど、怒られても少し、いや、かなり困ってしまう。何しろここには刃物があるので、人の頭を金属バットで砕いてしまうような男相手では虎穴に虎の子を取りに行
くようなものだ。
高田は腰に近づきはじめていた腕を急遽進路変更し、鍋を掻き回すお玉を握る手に向けて行く。
そっと近づけ、後少し、後少しと近づけ、指先があと少しで触れる、とまでなった時、丑嶋の手が動いた。
「ほら」
「は?!」
丑嶋の手は握っていたお玉を鍋の上にあげ、高田の手に握らせた。お玉に入っていたビーフシチューはお鍋の中に落ち、少しだけ跳ねて鍋の表面に付いた。
「は?!これをどうしたら・・・」
持たされたお玉に戸惑う高田に目も合わせず、丑嶋は忙しげにコンロから離れ、机の上に乗せてあったボールの方に向かった。
「いいって言うまで掻き混ぜてろ。俺はその間にこっちをやるから」
戸惑ったままで手を動かさない高田と違い、丑嶋はボールの中に入っている野菜に調味料を掛け、手早くサラダを作っていく。
「混ぜるって、えー・・・」
やれと言われたものの、ただ単純に混ぜるだけの作業でも、やったことがない高田にはそれさえも上手に出来ない。
モジモジと手を蠢かしていると、丑嶋が大股で歩いてコンロの方に来た。
「こうだ、こう」
言うが早いか、丑嶋はお玉を握る高田の手の上に手を重ね、ゆっくりと鍋の底から掻き混ぜさせた。
73:ヘタレくんとツンデレくん4/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:26:44.14 etzSJQNh0
「焦げないように、こうやってやるんだ」
自分から触れようとしていたのに、先に触れられてしまった。かえって高田の方が緊張して赤くなってしまう始末だった。
高田がぎこちなく手を動かし始めると、丑嶋の手が離れた。
「サラダもすぐ出来るから、そうしたらもう掻き混ぜなくていいぞ。終わったら、そこに置いてある皿に盛れ」
丑嶋は高田の顔の赤さには全く気付かず、再び机の方に戻って行く。
高田は丑嶋の方を振り返るが、手は言われたままにお玉を動かしている。折角の共同作業だったというのに、触れられたのは本当に一瞬だ。相手が女だったら自分はこ
んなにヘタレではないのに、と気落ちしてしまう。
もし高田に犬の尻尾がついていたら、さぞかし情けなさげに下に向かって垂れさがってしまっていることだろう。本当ならご主人さまに飛びついて喜びを態度に表して
興奮していまいたいのに、こう、あまりにつれないご主人さまだと、高田の方のテンションだって下降してしまう。
丑嶋は、高田のテンションを知らず内に上げ、次の瞬間に急降下させたことなど知らないし、考えもしない。味を調えたサラダの味見をするべくボールの中にスプーン
を入れ、それをペロリと舐め上げる。赤に近い桃色の舌、銀のスプーン、薄クリームのドレッシングがそこに絡む。舌の先がスプーンにめり込んだかと思うと、こそぐ様
に付着していたドレッシングを舐めとる。赤に近い桃色の舌に移動した薄クリーム色のドレッシングは舌ごと口内に招き入れられ、ほんの少しの間を置いて嚥下によって
丑嶋の体内に入って行った。ボコリと上下運動した喉仏は綺麗な肌色で、ドレッシングが進んでいく体内は舌と同様に赤に近い桃色なのだろうか。
ただ単なる味見をしている光景なのに、何故か妖しさを漂わせる。高田は少し鼓動が五月蠅くなったのを感じ、慌てて視線を鍋に移して一心不乱に手を動かす。
本当に情けない。中学生ではあるまいし、興奮する沸点が我ながら丑嶋相手では引きすぎると思う。
「うん。これぐらいだな。高田、もう出来たぞ」
74:ヘタレくんとツンデレくん5/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:27:40.79 etzSJQNh0
高田は、本来なら卑猥でも何でもない光景に僅かばかり興奮していたが、我に帰ってコンロの火を止め、用意されていた二つの皿にシチューを盛りつけてる。まずは液
状部分のシチューを入れ、続いて大きな具材を見栄え良く入れる。皿の淵についたシチューは綺麗な手拭いで拭きとる。
机に置いて見ると、素人ながら綺麗に盛りつけられたのではないかと思う。
丑嶋もシチューの皿より小さい皿を出し、サラダを盛りつけていく。数種類の野菜の彩りよく、高田の盛ったシチューよりもだいぶ綺麗だ。感心していると、丑嶋の視
線がビーフシチューを盛った皿に注がれた。
「綺麗に出来たじゃねェか」
丑嶋はニヤリ、と笑いながら高田を褒めてくれる。テンションの下がっていた高田だが、一気に嬉しくなってしまった。もし高田に犬の尻尾がついていたら、空へ舞い
上がれる速度で尻尾を振っていただろう。
「それじゃ、食うか」
それぞれ各自、出来た料理の皿を持ち、台所から部屋に移る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
広い部屋ではないが、綺麗に片づけてはある。いつも使っている机を拭き、食卓へと変化させる。皿を置き、丑嶋が座る。高田は腕に掛けていたレコードショップの袋
から買ってきたばかりのDVDを出し、デッキにセットした。
再生が始まると、食事も始める。
「うまいっ」
ビーフシチューを一口食べて、食事中だと言うのに思わず大きな声を出してしまった。丑嶋は何も言わない。だが、テレビに映るのは面白くない他の映画の予告篇なの
に、口角が僅かばかりに上がり、高田には笑顔のように見えた。
75:ヘタレくんとツンデレくん6/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:28:30.26 etzSJQNh0
「社長、うまいです」
わざわざ二回も言う必要ではないのに、高田はわざわざ丑嶋の顔を見ながら言った。
「いいから、DVD見てろよ」
「はい・・・」
失敗したかなぁ、と思った高田だが、それとなくだが、丑嶋の横顔は先程よりも嬉しそうに見えた。めったに見せてくれない笑顔に、高田も嬉しくなった。
嬉しいやら、美味しいやらで思わず含み笑いを堪えていると、DVDは本編に突入した。
今日買ってきたのは、大手会社制作のCGアニメーションだ。ついこの前、丑嶋とマサルと加納と小百合、それに高田の4人で映画館に観に行った作品のシリーズの一
番最初の作品だ。
この前観にいったのは3作目だった。丑嶋はこの作品のシリーズを見るのは初めてらしかった。だが、映画館の帰りに珍しく沢山喋っていたので、おそらく気に入った
のだろうと感じ、高田がわざわざこうしてDVDを買って来たのだ。
最初はただ単に丑嶋との共通の話題となればいいと思い、1作目と2作目のDVDをプレゼントするつもりだった。
だから、今朝、高田がプレゼントすると申し入れたところ、丑嶋は高田にそんなことをされる覚えはないと断ってきた。
別に下心があったわけではないので、せっかく気に入ったなら、1作目から見た方が先日観た3作目の面白さが分かると言い、半ば自分勝手に高田が会社帰りに買って
しまうと宣言したのだった。
そしたら何と、丑嶋が一人で見るより二人で見る方が楽しいから、と一緒に観ようと申し出て来たのだ。しかも、高田がオーディオショップに買いに行っている間、高
田の家で食事を作って待っていてくれると言ってくれたのだ。
76:ヘタレくんとツンデレくん7/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:29:31.92 etzSJQNh0
正直、高田は飛び上りそうなほど驚いた。驚くと格好悪いのではないのだろうか、と思ったので、表面上はいつも通りの長い髪を指で弄りながら笑顔で応じたのだが。
まさか、丑嶋がそんなことを言ってくれるとは想像も出来なかった。そんなこと言われては、下心なんてなかったのに、下心が生まれてきても仕方がないではないか。
何故丑嶋は、今の状態のような素敵な提案をしてくれたのだろうか。もしかしたら、下心をもっても良いということなのだろうか。
こういうことをグルグル考えること自体が下心の始まりと言えなくもない。テレビの画面には沢山の動くおもちゃ達が出てきて楽しげのようだが、高田は映画どころで
はなかった。ただ、冷めてしまう前に食事を美味しいそうに平らげることで精一杯だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事を終え、DVD一本を見終わった後、丑嶋はきっちり片付けをしてくれていた。高田も微力ながら手伝っているが、ほとんど何も出来ないも同じだったと自覚して
いる。ありがたいことに、丑嶋が洗って拭いた皿を、自宅だと言うのに収納場所さえもおぼつかなく、言われるがままにしまっただけで「うん」、と機嫌のよさげな声を
頂いた。
ろくに台所に入ったことがないし、片付けなんてしたことがなかった高田だが、何となく、何となくだが、こういうのもいいと感じてしまうのだった。
丑嶋が残った食材を入れようと冷蔵庫を開けると、先ほどの機嫌のよさげな声とはかなり響きの異なる声を上げた。
「おい、何で水と調味料ぐらいしか入ってねェんだよ」
「あー・・・、いや・・・」
別にとやかく言われても構わないのだが、丑嶋の低い声には適度な緊張感を自然と生む作用があるようだ。高田は恐縮しながら丑嶋の後ろから冷蔵庫を覗きこんだ。
「あ、でも、確か他にも入ってたような気がします」
77:ヘタレくんとツンデレくん8/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:30:10.82 etzSJQNh0
言い訳をするように冷蔵庫の中を探すと、申し訳程度の食材があった。ただ、入っているのは豚肉のスライスパックやら、もとは数枚入りだったはずなのに、半分干か
らびかけた物が一枚のみ残っている油揚げの袋やら、高田には最早何なのか思い出す気にもなれない茶色のキノコらしき真空パックが入っている位だ。これでは、「ほら、
水と調味料だけではないでしょ」、と偉そうに言えないだろうと言う事は、料理をしない高田でも分かった。
「この、キノコ・・・?何でしょうか?」
「ナメコ。汁物にすると美味いんだ。お前なぁ、名前も知らないで買ってくるんじゃねェぞ」
「あー、そうそうナメコですね」
適当に相槌を打ってみる。心許ない食材はでさえ、数日前に使いやすいという理由で手を出している女の奴隷くんが泊まって行った時に、料理を作ってくれたので残っ
ていた物だ。せっかく二人でそれなりにいい雰囲気になっている時に、そんなことを言うべきではないので言葉を濁す。
高田が髪の毛を弄りながら苦笑いをすると、丑嶋は冷蔵庫を閉めながら上目づかいで何かを考えて始めたようだ。
「豚肉に、油揚げ、ナメコに、今日の残りの物と・・・。うん、味噌と生姜とくらいあれば、味噌汁と、煮物と、豚の生姜焼きは作れるか」
今ある物と、足りない食材をすぐ掛け合わせ、すぐにバランスのよさそうな献立を思いつく。高田には出来ない芸当なので、素直に感心してしまう。
しかし、そんな献立を思いつかれても、高田には作る事は出来ない。
「よし、明日にでも作りに来てやるか。外食ばかりじゃ栄養偏るしな」
「はい?!作りに来るって、社長がですか?!明日もですか?!」
「何だ、嫌なのか?」
「いえいえいえ、凄く嬉しいですけど」
78:ヘタレくんとツンデレくん9/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:31:00.59 etzSJQNh0
突然ありがたい申し出を受け、高田は驚く。嫌な訳ないではないか。むしろ、今日のような美味しい料理だったら飽きることなく食べたいし、及ばずながらでも、丑嶋
の手伝いだったら料理も片付けも苦にならないし、楽しいくらいだ。だが、別に強請ったのではないのに、何故丑嶋がそんな気を使ってくれる必要があるのか。ただ単に
社員である高田の食生活を気遣っているにしても、それでは通い妻のごとく丑嶋が連日来てくれる理由としては弱すぎる。
「何でそんな・・・」
食欲が満たされ、すっかり忘れていた性欲というには小さい下心が再び芽生え始めてしまいそうだ。もしかして、と高田が身を乗り出し、丑嶋の頬に手を伸ばす。丑嶋
は明後日の方向を見つめ、小さく呟く。
「さっきのアニメ、まだ2作目があるんだろ?明日観ようぜ」
「ア?!アニメ、ですか。そうですね・・・」
よっぽどあのカウボーイと宇宙レンジャーの出るアニメ映画が気に入ったのか、と悲しくも納得するしかない理由に頷く。だが、果たしてその理由は丑嶋の本心なのだ
ろうか、とも思う。高田がプレゼントすると言っているのだから、わざわざ高田の家に来て料理をしなくても、ただ今日、持って帰れば済むことではないか。
高田は躊躇したが、丑嶋の頬に伸ばした手を前に少しずつ突き出していく。
もう少し、となった時、丑嶋が後ろに一歩下がって笑った。
「明日、な。今日はもう帰る」
そう言うと、丑嶋は高田の脇をすり抜けて玄関の方に歩いて行き、すぐさま外に出て行ってしまった。
高田は声をかける事も、追いかける事もしなかった。
それよりも、先ほどの丑嶋の「明日」という言葉が、果たして何を示しているのかが気になって仕方が無かった。
79:ヘタレくんとツンデレくん10/10 ◆CPu0lwnplk
11/03/18 22:32:06.32 etzSJQNh0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!お目汚し失礼致しました。高田×社長、竹本×社長等、社長受大好き派ですので、やっぱり高田×社長です。
80:風と木の名無しさん
11/03/19 16:20:34.21 gzZsZEJWO
>>79
お料理上手な社長可愛いぃいいい
続き楽しみにしてます!
81:風と木の名無しさん
11/03/19 17:17:45.04 KOp+3/0oO
>>70,75
>美麗な見かけ
>それとなくだが
違和感を覚える
他の言葉に置き換えろ
>>71,74
一行目書き直し
>>72
二行目(ry
>>73
>もし高田に~
イミフな例え方
犬の尻尾とかきめえ
添削飽きた
山田悠介とお似合いな文章力
小学校からやり直したら?
82:風と木の名無しさん
11/03/19 19:07:23.40 B9wf6aIE0
また出たよ
83:風と木の名無しさん
11/03/20 00:31:35.70 E+qok6i80
透明あぼーん余裕っす
84:風と木の名無しさん
11/03/20 08:40:25.98 Jlb5sT2VO
>>79
高田×社長キター(゚∀゚*)ー!
ヘタレワンコ攻めとツンデレニャンコ受けの組み合わせが最高です!つれないニャンコが不意に寄ってきてくれるとすごく嬉しいですよねw
優しいモード入ってる社長の「うん」に禿萌えました
本当にいつもありがとうございます!
暗い話題のご時世ですが、とても元気でました。
85:風と木の名無しさん
11/03/20 11:12:56.26 hsTqWXQ30
もういいかげん自サイト作ってそっちでやってほしいわ
86:風と木の名無しさん
11/03/20 22:14:36.74 E+qok6i80
>>85
絡みへいこう、な?
87:風と木の名無しさん
11/03/22 14:20:17.41 M/jw6ufH0
>>81
添削もいいけど、そんならお手本よろしゅう~。
しかし、IDが顔みたいでおもろい。
88:風と木の名無しさん
11/03/23 15:03:02.56 EYZ2xvw0O
>>78の人
だんだん質が劣化していって残念
89:風と木の名無しさん
11/03/23 21:04:17.48 oh2qDsF00
赤ペン先生多数出没中だな
そろそろ春休みなのかな?
90:地調課のかわいこちゃんたち 1/3
11/03/23 21:45:32.64 d1Ld/+2A0
シルバー事件25区で地調課の月と太陽コンビ。エロなしです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「せんぱぁい、僕ね、先輩の事、本気で尊敬してるんですからねぇえ」
「あーハイハイ分かったよ…」
「ちゃんと、好きですからね」
「そういうのは彼女に言えよ…」
「あれ?言いませんでしたっけ?ちょっと前に、別れちゃいましたあ!」
狭いアパートの一室で、オレとオオサトはだらだらと酒を飲み交わしている。
オオサトのヤツが酒飲みましょう、と唐突な誘いを掛けてきて、それに対して給料日前だから家飲みなら付き合ってやると答えたら、
じゃあビール買って先輩の家ですね!なんて勝手に決めた挙げ句俺の腕を引っ張って買い物カゴに大量に酒缶を突っ込み始め、今に至る。
というかオオサトよ、こんなむさくるしいアパートよりお前の新築間もないお綺麗なマンションへ案内しやがれってんだ。
そんな風に頭の片隅で愚痴りつつも、酒でぐでんぐでんになって背中にしなだれ掛かってくるこいつの体温に人恋しさを刺激されるのが我ながら情けなくてたまらない。
そして彼女と別れたと聞いて嬉しく感じてしまったのはオレの独り身故の僻みからだ、と自分に言い聞かせながら呷るビールはすでに気が抜けて温く、思考の転換にまるで役立たない。
「ね、先輩」
「何だよ…!?」
振り向いた瞬間口のすぐ横にキスをされた。
いや、頬だ。頬に決まっている。当たってない、当たってない!オレの混乱をよそにオオサトはけらけら笑いながら
「びっくりしましたあ?」
なんて言ってやがる。振り向きざまにするイタズラってのは頬を指で突付く程度が普通だろうが!
「だってそれじゃあただ不機嫌にしちゃうだけでしょ?先輩の驚く顔、僕好きだな」
「このバカ!悪趣味!」
91:地調課のかわいこちゃんたち 2/3
11/03/23 21:45:44.33 d1Ld/+2A0
コンビニの袋から新しいビールの缶を出し、プルタブを開けてかっ込むようにぐっと呷る。
オオサトはそんなオレをにやにやと眺めていたかと思うと、とんでもない事を言いだした。
「女の子の基準だと、キス出来たらその人とはセックス出来るって言うんですよぉ」
ビールが気管に入って盛大にむせた。咳き込んで苦しい。涙も出て来た。
お前はなぜこのタイミングでそんな事を言うんだ。オレはどうしてこんな目に遭わなければならないんだ。
「まあそんなワケなんで先輩、僕と寝てみます?」
「バカッ!お前なんか床で雑魚寝してろ!」
「もー、あんまりバカバカ言わないでくださいよー。からかい過ぎたのは謝りますけど、僕だって傷付きますよぅ…」
オオサトが体育座りでしゅんとし始めたのでハイハイ悪かったよーなどと言いながら肩を軽く叩いてやったらオオサトはぼそりと呟いた。
「…吐きそう」
「うわっ!トイレ貸してやるからここでは吐くな!吐くなよ!」
肩を貸す必要もない距離なのにオレはオオサトに肩を貸してトイレまで連れて行った。
気が付けば時計の針もすでに2時を指し、明日が休みとは言ってもオオサトの体調を考えればそろそろお開きだ。
「いやあ…先輩、すみませんでした」
「あのさオオサト、なんでこんな痛飲ってくらい飲んじゃったの?」
オレが何気なく放ったこの質問にオオサトはあー、だのうー、だの意味のない唸り声をあげながら柄にもなく逡巡している。
黒靴下の右足先がぶらぶらと揺れながら床を軽く叩き、俯けた視線も右に左に落ち着きなく床を滑っている。
92:地調課のかわいこちゃんたち 3/3
11/03/23 21:45:59.23 d1Ld/+2A0
まあ座れよ、何か愚痴でもあるなら聞いてやるから…と言い掛けた時にようやくオオサトは意味のある言葉を発した。
「いやあ…酔ってしまえば思い切れちゃうかなー…なんて、思ったり、した…んですけど、ね…?」
「え?何を?」
「っ、ははは!忘れてくださいよ!じゃあ僕、これで失礼しますね!今日はありがとうございました!」
まくし立てるように一息で言いながらオオサトは玄関から出て行こうとする。
オレは何故だか知らないがこのまま帰してはいけないような気がしてその腕を掴んだ。
でも、有り得ない。だって俺は普通に女の子が好きなのに。仕事であっても女の子の部屋とか入ると無性にはしゃいでしまうし、
街で女子高生とか華やかなOLの群れなんか見るとウキウキしてしまうし。
なんでだ。割り切れない感情なんてたくさん味わってきたと言うのにこんなの、本当に理不尽だ。
オオサトはオレに正面から抱き締められていた。
腕の中の身体は抵抗を見せないどころか、自らの腕もオレの背中に回してどこかうっとりした声で「ツキさん…」なんて呟いている。
思わず腕に力がこもってしまう。
「い、痛っ」
悲鳴が上がった。
「わ、悪い」
冷水を浴びせられたような心地で腕を解くとオオサトがなおもオレの背に手を回したまま問い掛けてきた。
「せんぱい、僕、喜んでしまっていいんでしょうか?」
大きめの、猫を思わせる鋭くも快活な瞳が潤み、いじらしく揺れている。
くそ、これも冗談だったらオレは失踪してやるぞ。そんな自棄っぱちな思いで、オレはオオサトに自分から唇付けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
93:風と木の名無しさん
11/03/23 22:16:01.57 pehJsHfb0
>>90
ふっふぁー!ももももえた萌えたー!
ありがとうありがとう!
携帯から削除してないハズだからちょっと再プレイしてくる!
94:風と木の名無しさん
11/03/23 23:21:59.71 oVM9JF1i0
>92
GJ!…だけど、この位の長さなら前スレに投下して欲しかった
95:風と木の名無しさん
11/03/24 01:32:19.22 OHsPeL7tO
今、作品(とも言えない)書いてるんだけど、サイトを持ってなくて作る知識もなくてどこにもうpできない
たった二回のやっそんの話なんだけど、ストーリー性とかないのにすんごく長くなっちゃって一回じゃあとてもうpしきれない
おまけに下手。おまけにリバ…(一回目AB→二回目BA)
顔射編、事後編とかに分けて、トリップ付けて、連載(シリーズ物?)みたいな感じにして棚に投稿してっても大丈夫かな…
シリーズ物ってストーリー性がないとだめかなあ…とか思って
すごい下手なんだけど、でも自分で萌えて書いたものだから誰かに見てもらいたい、批判でもいいから何か言ってもらいたいんだ…
96:風と木の名無しさん
11/03/24 02:12:36.18 RD36Nkyu0
別にストーリー性が無くても構わん。っていうか、ここはどんな物を投下しても自由。
あんまり短期間に何回も投下すると文句付ける奴はいるだろうが、
そういうのは気にする必要はないし、
気になるんだったら一カ月に一回とかのスローペースにすれば文句はつかない(はず)
そしてここに投下したからと言って必ずしもレスがつくとは限らない。
(同人ノウハウ板の「評価スレ」なら絶対にレスはつくが、作品の欠点も指摘されるので、オススメしない)
それでもいいなら好きにするがいい。
(ブログを作ってそこにうpするって手もあるし、それが簡単で楽だとは思うんだが、嫌なら別にかまわない)
97:アキラ×ヒカル×アキラ 1/2 ◆k/mlQdBDxE
11/03/24 03:29:32.39 OHsPeL7tO
リバ注意!ヒカルの碁
アキラ×ヒカル、の後、ヒカル×アキラにかわります
ガチリバな二人でエロ。しかもその日の勝負で上下が決まるというベタなアレで…
顔射、事後、みたいなかんじで小分けにして続き物でちょこちょこやってくつもりです。
ヒカルの一人称(ヒカル視点)で進みます
とりあえず始めのほうの少しだけ。次はいつになるかわかりません…
アキラの部屋からはじまります
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
敷き布団だけを敷き終わった塔矢のスーツの袖から見える、淡い黄色のワイシャツを見て、ふつーの色のワイシャツだったら合うのになあ、
なんて思いながら、そのワイシャツから伸びる手がシーツを整えるのを眺めていると、あることに気がついた。
「あれっ、おまえ、碁盤と布団、場所変えんの?」
部屋の隅にあった碁盤が部屋の真ん中に、いつもは部屋の真ん中に敷く布団が部屋の隅の壁際に移動している。
「ああ、前々から思っていたことだけど……」
「うん」
「畳が傷むんだ」
「…あ、」
爪先を部屋の真ん中の畳に滑らせると、靴下越しに、確かに畳が微かに毛羽立っているのを感じる。
敷き布団を敷き終わって、スーツの袖を軽く払った塔矢は、身体に腕を回して、あちこちに唇をすりよせて邪魔をするオレをものともせず、
背広を脱いで、オレの首のうしろで器用にブラシをかけて、ハンガーに掛けている。
「そっか」
塔矢の腕がオレの腰に回って、もう片方の手がオレの背にブラシをかけた。
「壁際に寄せて、角に固定しておいたら、少しはマシだろう」
「だな」
肩と前見頃にも窮屈そうにブラシをかけている。
「腕出して」
右腕をほどくと、軽く塔矢が腕を持ち上げてブラシをかける。
次に左腕をほどいて、自由になった右腕を、塔矢のセーターの下に潜り込ませた。
「…あ、毛糸、…付くよ」
98:アキラ×ヒカル×アキラ 2/2 ◆k/mlQdBDxE
11/03/24 03:36:21.66 OHsPeL7tO
微かに身をよじる塔矢に構わず、人差し指でワイシャツの上から塔矢の背骨をなぞって、ぼんやり呟く。
「……先に敷くんだ、布団」
塔矢は、ふ、と洩らすと、進藤、上着脱いで、と言ってオレの背を撫でた。
「ん」
ゆるく回された腕の中で、身をよじりながら上着を脱いで、後ろ手に塔矢に渡す。
「この一週間ずっと忙しかった」
スーツの上着をハンガーに掛けてから、塔矢は、オレの額に額を擦りあわせて、前髪をじりじりさせながらそう言った。
「打とうか、進藤」
「……おう」
言いながら、碁盤の前に座る。塔矢も碁盤に座ると、まっすぐこっちを見据える。碁盤を挟んだ距離からでも、塔矢の両目にオレが映っているのが見える。
この目も、この瞬間も、失いたくない、かけがえのないものだと思う。
「…お願いします」
「お願いします」
塔矢の髪の、光を反射してできた輪が、頭の上下に合わせてつるりと揺れた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
とりあえずこれでいったん終わり
99:風と木の名無しさん
11/03/24 06:50:19.86 OHsPeL7tO
>>96
アドバイスありがとうございました
100:風と木の名無しさん
11/03/24 17:44:50.33 tunmJYEO0
>>97
スレでちょっとしたリバ祭りになってから三ヶ月…
長かった…
GJ!
気長に全裸で待機してます!!
101:The reason that you kissed me 1/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:42:13.00 JyDak/JGO
半生注意。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>46の続きでその夜の出来事。エチー未遂、ちょっと汚い描写あり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タクシーから降りた俺は、べろべろに酔った相棒に肩を貸して屋敷に入った。
今夜は二人仲良く、高級中華料理店でディナーとしゃれ込んだその帰りだ。
ほんの行き違いから相棒の怒りを買った俺は、ご機嫌を取るために最高の店を予約した。
ごねる相棒を、ほとんど無理やり店に連れ込み丸いテーブルに着かせて、次々に料理を運ばせた。
美味さで頬が緩んだところに極上の老酒を進めつつ、いかに自分が相棒を頼りにして、その才能に敬意を抱いているかを並べ立てた。
俺の口車を聞きながら、相棒はまんざらでもなさそうな様子で料理と酒を口に運んだ。俺はここぞとばかりに誉めておだてては、奴のグラスに強い酒を何度も注いだ。
時が経ち、料理を平らげてそろそろ帰ろうという頃には、相棒はすっかり出来上がっていた。
「力ト-、しっかりしろよ。うちに着いたぞ」
「……已経不行、已経酒不能喝」
「何言ってるかわかんないぞ、力ト-」
「ブリシト……もうダメ、もう飲めないよ」
「言われなくても、もう酒はやらないさ。ったく、こんなに飲ませるんじゃなかったな」
注げば注ぐだけ飲み干すのが楽しくて、ついつい飲ませ過ぎてしまったのを後悔した。俺だって酔っちゃいるが、足腰が立たないこいつほどじゃない。
「力ト-、もう今夜は泊まってけ。ほら、ベッドに着いたぞ」
「うー……是床、發困……」
「だからわかんないって。力ト-、眠いのか?」
自室のベッドの上に降ろすと、相棒はだるそうにゴロリと転がりうつぶせになった。着たままの革ジャンが窮屈そうに見えたので、俺は手を伸ばして脱がせてやった。履いたままの靴も脱がせると、相棒は顔をこっちに向けた。
「……ブリシト、なんで脱がしてるんだ。僕は女の子じゃないぞ」
「バカ、何言ってる。お前が苦しそうだから、上着を取ってやったんじゃないか」
赤い顔をした相棒は、俺をからかってクスクスと笑った。いつもの少し斜に構えたような感じはなく、えらく楽しそうな奴を見て俺は思わず苦笑した。
「ありがとう。ちょっと、楽になった」
相棒は呟くと、仰向けになって手足を伸ばした。
102:The reason that you kissed me 2/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:45:16.18 JyDak/JGO
俺は部屋の隅のポールハンガーに、奴の革ジャンと、ついでに自分のジャケットも脱いで掛けた。それからベッドの側に戻り、寝そべる相棒の横に腰を降ろした。
「力ト-、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。でもおかしいな、こんなに酔うなんて滅多にないのに」
「そりゃまあ、あれだけアホみたいに飲めばな」
「ひどいな。飲ませたのは君じゃないか、ブリシト」
「悪い悪い。お前がニコニコ笑ってグイグイ飲むのが、なんだかおもしろくってさ」
「君が上手いこと言って調子に乗せるからだ。全くひどい野郎だな!サイテーだよ、君は」
罵りながらも、相棒の表情は相変わらず陽気だった。こいつは、酒が過ぎるとやたら明るくなるタイプのようだ。まあ暗くなってウダウダ愚痴られたりするよりは、はるかに健全な酔っ払いだ。
「力ト-、もう俺のことを怒ってないんだな」
「怒る……僕が何を、怒ってたって?」
「忘れたのか?口も聞いてくれないくらい、怒ってたくせに」
呆れて頭を軽く小突くと、相棒は首を傾げてちょっと目を閉じた。
「口も?くち……ああそうか、昨日君が僕にキスしたことだ」
「そうあらためて言われるとなんだか照れるが、まあそうだ」
キスしたと言っても頬と額に、あくまで友情のしるしとしてだ。だが相棒はそうとは受け取らず、俺にからかわれたと激怒した。
最高の環境でこいつをなだめて誤解を解くために、俺は今夜のディナーを用意したって訳だ。
「ブリシト、今だから言うけど……僕はあの時、怒ったっていうよりは、びっくりしたんだ」
「そうなのか?まあ俺だって、自分にびっくりしたけど」
「うん……君に悪気がないのはわかってるけど、僕はあんな風に……その、キスされたり、抱きしめられたことが、あんまりなかったから」
「おい、力ト-……お前まさかと思うが、童貞なのか?」
「……違うよ!そうじゃなくって、女の子以外でってこと」
「ああ、なるほどね。でもお前……」
家族とかには、と言いかけて口を閉じた。
こいつは幼い頃に両親を亡くしてるってのに、何を言おうとしたんだ俺は。いくら酔ってるからって、忘れる奴があるか、バカ野郎!
焦る俺の様子なんか気にも留めず、奴は夢見るような口調で言葉を続けた。
103:The reason that you kissed me 3/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:48:15.17 JyDak/JGO
「もし本当に兄弟がいたら、あんな感じでキスしたり、抱き合ったりしてたのかなって今は思う。
でも慣れてないからびっくりして、あの時はつい君を殴って、怒鳴ってしまったんだ。そしたらもう、どうにも引っ込みがつかなくって……」
「なんだ、やっぱり照れてたんじゃないか!力ト-」
意地悪く叫んで睨むと、相棒は首をすくめてゴメンと小さく囁き、ますます顔を赤らめた。
いつもは対等の兄弟分で、時には兄貴のように頼もしく振る舞う相棒が、今はまるで弟みたいにやけに愛らしく見えた。
俺は声を上げて笑い、相棒の黒い髪をぐしゃぐしゃと両手で掻き回した。奴も笑って、俺の手を避けようとしながら叫び声を上げた。
「……ブリシト、やめろよ!」
「この野郎、俺を振り回しやがって。もっと素直になれってんだ」
「いつも僕は君に振り回されてるんだ、たまに振り回すくらい、いいだろ!」
「……ああ、構わないさ。それがションディーってもんだ」
俺は手を止めると、左手で相棒の乱れた髪を梳いてやり、ポンポンと頭を優しく叩いた。
相棒は何も言わず、ぼんやりとした目で俺を眩しそうに見つめた。
「ションディーなら、キスなんてますます普通のことさ。たいしたことじゃない、だろ?」
「そうか……そうだね」
そうさ、と返して頭から放した俺の手を、相棒の手が掴んだ。
急に掴まれたことと、その手の熱さに驚いていると、奴はもっと俺を驚かせる行動に出た。
俺の頭の後ろにもう一方の手を回して引き寄せ、 近づいた俺の唇に自分のそれを重ね……つまり俺に、キスをしやがったんだ!
軽く触れた唇をすぐに離すと、相棒は間近にある俺の顔に笑いかけた。
「……本当、たいしたことないね」
楽しそうに笑い声を上げる相棒から、俺は勢いよく体を離した。
なんだ、何をしやがったんだこいつは!あんなにびっくりしたとか、照れてたとか言っといて……口にするか、普通!?
もちろん酔っ払いの悪ふざけに決まってるんだが、大いにうろたえた俺は、自分の頭に血が上っているのを感じた。
「ブリシト、顔赤いぞ。熱いのか?」
「あ、ああ、まあな」
「僕も熱い。実はさっきから、ずっと熱いんだ」
熱い熱いと言いながら、相棒は緩めていたネクタイを首から取り去り、白シャツのボタンに手をやった。だが酔いのせいで、上手く外せないようだった。
104:The reason that you kissed me 4/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:51:38.08 JyDak/JGO
「あれえ……指が動かないなあ」
「何やってんだ。脱ぎたいのか?」
「うん……ブリシト、手伝ってくれないかな」
器用な相棒らしくもなくモタつくのを見かねて、俺はボタンに指をかけた。しょうがないなとぼやきながら、俺の胸はなぜかドキドキしていた。
なんでだ、こいつは男だぞこのアホ!と自分にツッコミを入れつつ全部のボタンを外してやった。相棒はシャツの前をはだけて、ほうっと息を吐いた。
「ちょっとはマシになったか?力ト-」
「うん、涼しい。ブリシト、ついでにベルトも緩めて欲しいんだけど」
「……お前スッポンポンになるつもりか?俺は俺のベッドに、裸の男を寝かせる趣味はないぞ」
「違うよ、食べ過ぎたせいで苦しいんだ」
「ああ、そういうことか」
言われるままにベルトを緩めてやる俺の目の前に、相棒の裸の胸があった。
十代の少年のように、相棒の肌は滑らかだと思った。東洋人は男でも肌が綺麗だと聞いていたが、あれは本当なんだなと妙に感心した。
体毛は薄く、しなやかな筋肉を包む肌は象牙色をしていて、柔らかそうに見えた。酒と食い物のせいで、ちょっぴり腹がふくらんでるのがご愛嬌だ。
「趣味じゃないくせに、男の裸なんか眺めてて楽しいのか?ブリシト」
視線に気付いた相棒のからかう声に、俺は自分でも意外な言葉を返していた。
「力ト-、ちょっと触ってもいいか?」
「……いいけど」
普通に考えたら相当気色が悪い筈の俺の申し出を、事もなげに受け入れた。お互い酒のせいで、思考がまともに働かなくなってるみたいだ。
酔っ払いの俺は、超酔っ払いの胸にそっと手を這わせた。くすぐったがって身じろぐのがおもしろくて、俺は相棒の体をむやみに撫でた。
「バカ、やめろよ!くすぐったいだろ」
「お前って、えらくスベスベしてるな。手触りが良くて気持ちいい」
「僕は気持ち良くない!」
「なんだと、俺様のテクを甘く見るなよ!」
相棒は体をよじり、触り続ける俺から逃げようとした。じゃれ合う犬か子供みたいに、俺達はベッドの上でふざけていた。
逃げる体を捕まえようとムキになった俺は、奴の左肩と右手首を掴んで上からのしかかった。
かっちりと目が合った。つぶらな黒い目は少し潤んでいて、まっすぐに俺を見ていた。
半開きの唇はいつもより赤く、さっきこの唇にキスされたんだなとあらためて思った。
105:The reason that you kissed me 5/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:54:16.07 JyDak/JGO
吸い寄せられるように俺はキスをした。頬でも額でもない、赤い唇にだ。
相棒は嫌がらず受け入れた。しばらく押し当ててから離すと、今度は相棒の方からキスを仕掛けて来た。気が付くと、互いに口を開いて舌を絡めていた。
両手首を掴んで口内をむさぼると、苦しそうに呻いたので唇を解放した。荒い息の下から奴は、至極もっともな質問をした。
「……なんで、キスした?」
「さっきお前がキスしたからだ、お返しさ」
「僕のは、ションディーのキスだ」
「俺だってそうだ」
「夕べのは、だろ。今のはションディーのキスじゃない」
「じゃあなんのキスだって言うんだ、力ト-」
「ブリシト、僕が君に訊いてるんだよ」
相棒は困ったように笑ったが、構わず俺はまた口づけた。下にした体を掻き抱くと、相棒は自由になった腕を俺の肩に回した。段々とキスは激しさを増し、水音が響くほどになった。
俺は離した唇を首筋に埋め、音を立ててそこにもキスを落とした。両手はつややかな肌の上をするすると這い回り、熱を帯びた相棒の上半身を飽きずになぞった。
呼吸を乱して、相棒は切なそうに俺の名前を小さく呼んだ。俺も荒く息をつき、唇や顔と首のあらゆる箇所に繰り返し口づけた。
俺達はどこへ向かってるんだろうと思ったが、俺のキスに応える相棒がいじらしくかわいくてたまらず、もう勢いは止まらなかった。
震える喉元を噛むようにキスして、鎖骨の真ん中の窪みに唇を滑り落とすと、相棒が悲鳴のような声で俺を呼んだ。
「……ブリシト、ブリシト!待って、待ってくれないか」
「ダメだ力ト-、もう止められない。なんだかわからないが、火が点いちまったんだ」
「ダメ、ダメなんだブリシト、お願いだから」
「力ト-、今さらどうした?俺が嫌なのか」
「い、嫌じゃない……ないんだ、けど」
気付くと、捕らえた相棒の体はブルブルと震えていた。驚いて見直すと赤かった顔はやや青ざめて、何かを耐えるように唇を噛み締め、眉を険しく寄せていた。
「力ト-……やっぱり、嫌なんだな」
「違うよ、そうじゃなくて……ううっ!」
ふいに体を翻して背中を向けると、相棒は拳を握りしめてベッドに顔を伏せた。
「力ト-!?なんだよ、一体どうしたって……」
訳がわからず肩を掴んで軽く揺さぶると、相棒は苦しそうに、心底苦しそうに呟いた。
106:The reason that you kissed me 6/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 10:57:16.07 JyDak/JGO
「……不舒服快要、吐出了……!」
「英語で言えって!」
「……きもち、わるい」
「なんだって?」
次の瞬間相棒はぐうっ、というような声を喉から搾り出し、大きく体を揺らした。俺はようやくヤバい事態だと気付いたが、すでに後の祭りだった。
相棒は盛大に、俺のベッドの上に……をぶちまけやがった。おお、神よ!
第二波をもよおした相棒を我慢しろと励まし、慌てて洗面所まで引きずって行った。一人で大丈夫だからと言い張るので、俺は部屋に戻った。
空気を入れ換えるために窓を開けた後、凄惨な状態になった掛け布団を慎重に丸めて部屋の外に出した。
別の部屋から新しい布団を持ってきて、ベッドの上に広げた。布団以外には被害がなかったのが幸いだ。
後始末をしながら、以前酔いどれた俺が部屋で吐いたブツを、うちのメイドはこんな気持ちで片付けてくれたのかなと考えたりした。そして、もう二度と悪酔いはしないと心に決めた。
だいぶ気分はヘコんだが、粗相をやらかした相棒を責める気にはなれなかった。適量を越えるほど飲ませたのは俺だし、あいつの必死の訴えに早く気付いてやれば、こんなことにはならなかったからだ。
それにおかげで、危うい一線を越えずにすんだ。冷静になってみればあれは、あまりにも勢いに任せ過ぎていた。
酔っ払ってふざけ合った延長で、何となくキスしてサカって……なんて。男と女ならともかく、俺達にそんなことがあったら、後々関係が微妙になっちまう。
「……でもなあ、嫌だったわけじゃないんだよな」
思わず呟いて、自分でびっくりした。
そうなんだ、嫌じゃなかった。むしろ……ああダメだ、思い出しちまった。さっきまでの相棒の顔が頭に浮かんで、一人で赤くなった。俺は窓辺に立ち、火照った顔を夜気に晒して冷やした。
しばらくして窓を閉めると、奴が部屋を出て行ってから、けっこうな時間が経っていることに気付いた。どうしているのか心配になり、様子を見に再び洗面所に向かった。
ドアを開けると、洗面所の片隅でうずくまっている姿があった。タオルを頭にかけうなだれて、膝を抱えて体を小さくしているので表情は見えない。
俺は近づいて側にしゃがみ込み、優しく声をかけてみた。
「力ト-……落ち着いたか?」
「……ブリシト、ゴメンよ、本当にゴメン」
107:The reason that you kissed me 7/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 11:00:17.14 JyDak/JGO
か細い声は、啜り泣くような響きをしていた。もしかしたら、本当に泣いてるのかもしれない。
「いいんだ、元は俺がひどく飲ませたせいだからな。気にするな」
「……僕は最低だ。せっかく君がご馳走してくれたのを台なしにしちゃったし、君のベッドもあんなことに……怒っていいよ、ブリシト」
「怒るもんか。飯はまた食えばいいし、ベッドは布団を取り替えりゃいい。それだけのことさ」
もう取り替えたから安心しろ、と頭を撫でてやると、うつむいていた顔をようやく上げた。
鼻の頭と目を真っ赤にして、相棒はやっぱり泣いていた。流れる涙を被ったタオルの端で拭いてやり、俺は顔を寄せて笑いかけた。
「バカだな、そんな顔すんな」
「ブリシト……僕を嫌いにならない?」
「嫌いになんかなるもんか。俺達ションディーだぞ、忘れたのかよ」
おどけて肩を叩くと、相棒は笑顔を見せた。酔ったこいつは甘え上戸でもあるんだなと俺は悟り、頭からタオルを取ってやった。
「さあションディー、立つんだ。うがいはしたか?……よし、なら部屋に戻ろう。帰ったら水飲むか」
頷く相棒の肩と腰を支えて部屋に戻りベッドに座らせると、冷蔵庫から出したミネラルウォーターのボトルを開けて手渡した。
一気に飲み干した相棒は、眠気に襲われてあくびを連発した。俺は奴のシャツのボタンを何個か留めてやり、腰からぶら下がっていたベルトを引き抜いた。
明かりを弱めてもう寝ろと告げると、素直に従い横たわった。
俺も同じベッドで寝るのだと配慮したらしく、相棒は体を左側に寄せた。
「ブリシト、寝ないのか?」
「ああ、もうちょっと起きてる。お前は寝ろ、具合が悪いんだから」
「うん、今日はありがとう。それから……ゴメン、本当に」
気にするなって言ったろ、と頬を軽く叩くように撫でると、相棒はまた頷いて笑った。
やがて安らかに寝息を立て始めた奴の額に、俺はそっとキスをした。
「……これは、ションディーのキスだ」
涙の跡が残る寝顔を眺めて、俺は独り言を呟いた。
108:The reason that you kissed me 8/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 11:03:18.17 JyDak/JGO
カーテンを閉め忘れた窓から差し込む光の明るさに目が覚めた。
あくびをして体を伸ばそうとすると、肩にぶつかるものに気付いた。横を見やって、相棒が隣に寝ていることを思い出した。
体を横向きに、俺の肩に顔を寄せるようにして、相棒はまだ眠っていた。よく見ると苦しそうな表情でうなされているので、俺は奴の肩に手を置いて囁くように声をかけた。
「力ト-、力ト-どうした?気分悪いのか、起きろ」
「ううん……ああ、ブリシト、よかった」
「よかった?何がだ」
「君さっき、凶暴なパンダに襲われてたろ。助けようと思ったんだけど、足が動かなくって」
「そうか。この通り俺は大丈夫だ、安心しろ力ト-」
夢の中でもこいつは俺を助けてくれるんだな、とちょっと感動した。寝ぼけた相棒はよかった、とまた呟き俺の肩に額を押し付けたが、やや冷静な声になって質問をしてきた。
「ブリシト……なんで隣に君が寝てる?」
「力ト-、そりゃ違うな。お前の隣に俺が寝てるんじゃなく、俺の隣にお前が寝てるんだ。なぜならこれは、俺のベッドだからだ」
「……」
「お前、酔っ払って俺のベッドで吐いたんだぞ。覚えてないのか」
「……覚えてない。けど、悪かった。迷惑をかけたんだね」
「いや、いいけど……本当に覚えてないか?」
「うん……店を出た辺りからの記憶がない」
そうか、と返事をしたが、相棒のその言葉は嘘だと思った。ポーカーフェイスを装っているが、わずかに目が泳いでいたから俺にはわかった。
吐いた記憶を認めれば、俺達が夕べションディー以上のキスをしたことを覚えている、と認めることになる。相棒は気まずさか恥ずかしさから、酔いを理由にしらばっくれやがったんだ。
嘘をつかれてちょっとムカついたが、気持ちは理解出来た。正直に覚えているなんて言われたら、俺もきっと困っただろう。だからここは、おとなしく騙されてやることにした。
「そうか、残念だな。酔っ払ったお前は、えらく素直でかわいらしかったのに」
「何言って……っ!」
相棒は頭だけを起こして急に大声を張り上げたが、それが響いたらしい。低く唸って両手で頭を抱えると、またシーツに沈み込んだ。
「力ト-、二日酔いだ。静かにしてろ」
俺はベッドから抜け出ると、パジャマを脱ぎながら喋り続けた。
109:The reason that you kissed me 9/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/03/26 11:06:20.17 JyDak/JGO
「社長命令だ。今日は休んで、ここでゆっくり寝ろ」
「でも、ブリシト……」
「俺なら心配するな、仕事が終わったらまっすぐ帰る。食欲ないかもしれないが、メイドにお前の食事を運ぶよう頼んでおくからな」
「でも、悪いよ。それなら僕はうちに帰って……」
「ダメだ。お前の深酒は俺に責任があるんだから、言う通りにしろ。もし帰ったら絶交するぞ、いいな力ト-」
着替え終わった俺は、ベッドに戻って布団をかけ直しながら、断固とした口調で告げてやった。あくまで譲らない俺に根負けしたらしく、相棒はため息をついて頷いた。
「よし、それでいい。頭が痛むか?薬も持って来させよう」
「それほどじゃないよ。ありがとう、ブリシト」
「どういたしまして。さあ、おとなしく寝てろ力ト-」
笑って額を撫でると、相棒は素直に目を閉じた。手を放した俺は、ふいにその頬に音を立ててキスをした。
「……ブリシト!」
「ほらほら力ト-、大声出すな。覚えてないだろうが、ションディーならキスしてもおかしくないって、お前が言ったんだからな」
「バカ野郎っ!……ううぅ……!」
頭痛に呻いて布団を被った奴の耳が赤くなっていたのを、俺は見逃さなかった。布団の上からポンポンと相棒の体を叩き、俺は自室を後にした。
車の運転席に着くと俺はエンジンをかけ、ポケットから携帯電話を取り出して画面を開いた。
キーを操作して、ある画像を表示させた。
それは、夕べの相棒の寝顔を撮った写真だった。赤らんだ頬に涙の跡を残して、その表情はちょっと笑ってるようにも見えた。
これをネタにして相棒をからかおうとか、脅そうとかいうつもりは全くない。
ただ俺は、初めて知った相棒の顔を残しておきたかったんだ。俺しか知らないかもしれない、あいつの顔を。
携帯電話を閉じてポケットに戻し、俺は車を発進させた。いつもよりだいぶ早い出勤に社員達は目を丸くするだろうが、屋敷に俺がいちゃあいつは落ち着かないだろうからな、しかたない。
土産にテイクアウトの中華でも買って帰ってやるか。食べられるようになってるといいけど。
浮かれているような、でも切ないような不思議な気分で、俺は会社へ向かい車を転がした。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
助手をちょっと泣かせてみたかった。そしたら社長がわりとしっかり者になってしまいました。
110:風と木の名無しさん
11/03/26 21:07:52.04 jUIH63Aa0
>>101
おおお……萌えた、萌え滾ったよ……!
しっかりしてる社長もイイヨー、もどかしいふたりの距離感イイヨー!GJ!
111:風と木の名無しさん
11/03/26 23:13:40.31 qCw9gHjH0
前スレに投下してた者ですが、容量使い切ってしまい、
〆のAA部分だけ置けませんでした。
みっともないことしでかしてすみません。
保管庫で直しておきます。
112:大/航/海/時/代/4 ユキヒサ×イアン7 1 /1 ◆ycFqJ94wsyN8
11/03/26 23:40:49.16 Mty4yVjt0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )これで最後です!
「え、この子、名前イアンって言うの?兄って事は、もしかしてあの…?」
大人になって落ち着いたサムウェルが、ひそ、と、ユキヒサに耳打ちする。
「兄上と同じ名前なんです。それでですね、船に乗せてください」
混乱したユキヒサは、ふと、少年の腰にさしてあるものを見た。
それはいつしかにイアンの父親に渡した、護身刀であった。
「その護身刀は…」
「あ、これですか?兄上の形見なんだそうです。ユキヒサさんの所有物だったらしいですね、今では僕が貰っているんです」
水葬の際、父親はイアンの死体と一緒に入れなかったらしい。
いつか、息子が出来たときに持たせてやるのだと。
それを知ると、ユキヒサは優しく笑った。
「良いだろう、乗るがいい。兄のことを、よく聞かせてやる」
少年であるイアンは、凄く嬉しそうに、うなずいた。
「はい!」
その顔は、昔見た、笑顔のイアンにそっくりだった。
『十年後に会いに行くよ』
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )終わりです。長いことかかってすみません。
113:風と木の名無しさん
11/03/27 01:01:44.28 L8ce/UKx0
>>101
萌えすぎてニヤけたw
GJです!
114:風と木の名無しさん
11/03/27 01:59:26.13 2XPqSLwr0
>>111
ドンマイ!
なにより前スレを使い切ろうという姐さんの心意気に惚れたよ
SSも素敵でした。GJ!
115:風と木の名無しさん
11/03/27 09:44:16.24 8vTeX1MrO
>101
すごく萌え転がった
ありがとうございます
116:春よ来い1/2
11/03/31 00:47:37.10 tACKM/dT0
半生注意。ドラマ「刑事犬」シゲコマです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
帰り支度を整えロッカールームから出てきたコマが、ふと手元の絆創膏に気付き小首をかしげた。
「その手、どうした?」
「ああ、今朝な。猫を撫でようと思ったらやられた」
「お前、そんなに猫が好きだったか?」
「そうでもないが、ちょっと可愛かったんだよ」
「とうとう見境なく猫にまで手を出したか、色男」
「お前に似てた」
やにさがった表情が一転、眉間に皺を寄せてこちらを睨みあげる。
(ああ、やっぱり似てるな)
触れることを許してくれそうな振りをして、一歩近付けば途端に警戒する。
見えない引っ掻き傷を散々俺に残してるくせに、肝心なところでは逃げ出してしまう。
ずるいなあ、お前は。
なかなかこの手に落ちてこない猫は捕まえてしまうに限る。
不穏な空気を感じたのか、珍しく何も言い返さずに背を向けて部屋を出ようとするのを
後ろから抱きすくめた。
そのまま、襟足にかかる柔らかい髪をかきあげコマの首筋に歯を立てる。
「っ・・・・・・!」
117:春よ来い2/2
11/03/31 00:50:41.92 tACKM/dT0
「バッッカ何しやがるっっ!」
「交尾のお誘い」
「この変態」
「恋の季節だからな」
「万年発情してる奴が言うな」
「相手がつれないからなあ」
「うるせー、けだもの」
文句を言いつつも大して抵抗してこないのは承諾と取っていいのだろうか。
気まぐれな猫の機嫌が変わらぬうちに、急いでコートを取って来なければ。
コマに気付かれぬようにんまりと笑みを浮かべながら、
もう一度、今度は柔らかいキスを首筋に落とした。
すこし肌寒い、春待ちの宵。
-------------------------
その後の13係フロア
「・・・行ったか?」
「行きました。シゲさんすっっげ笑顔でした」
「Spring has comeデスネー」
「あの二人はもう万年桜だろ」
「つーか、もう季節関係ないッスよね」
「あー・・・俺らは飲みに行くかー」
「「「「ウィーース」」」」
-------------------------
in 拘置所
「交通課から頼まれてシゲさんとコマさんのラブを隠し撮りしてるんですけど、
これってけーさつ不祥事になるんでしょうか???」
「総監、いや元総監に伝えておくよ・・・」
-------------------------
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
心にポエム、行動はエロ男爵なシゲさんが好きです。
118:半&半のCM 1/4
11/03/31 10:10:21.09 qb4TnRXU0
ちんたら書いてたら前スレにも同じネタorz で、でも吐き出させてくれ!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
side:coffee
その日は遅番だった俺がエントランスに向かうと、すでに彼はいつものようにてきぱきと仕事をこなしていた。
彼。ミノレクくん。ポーターの白い制服が誰よりも似合う――というのは俺の欲目ではあるまい。
ホテルの仕事というのは忙しいが退屈である。矛盾しているようであるが実際そうなのだ。
例えばドアマンである俺の場合。お客様のお顔やお車を覚えるというのは、慣れてしまえば酷く機械的な作業である。
お出迎えには細心の注意を払うがようこそ誰某様と微笑みかけ、お帰りの際は黙ってお辞儀をすればそれで終わりなのだ。
俺は。ポーターに至ってはもっと単純で退屈な仕事だと思っていた。
お部屋に到着される前にお荷物を届けるというのが唯一の注意点で、それも余程のことがなければ遅れるような事態にはならない。
お客様のお荷物をお部屋まで運ぶ。それだけだと。
実際、このホテルではそうだったのだ。彼が来るまでは。
お客様が彼に笑いかける。彼もにこにこと愛想を返す。
笑顔なのはお客様だけではない。俺を含めその場に居るホテルマンが、そんなミノレクくんをいつも微笑ましく見守っているのだ。
…と、危ない!
お客様に気を取られていたミノレクくんは足元にあったバケツに躓いてしまった。彼が抱えていたスーツケース群が宙を舞う。
よし、任せておけ。なぜこんなものに乗って移動していたのか自分でも謎だったが、この彼の危機を救うためだったのだ。
119:半&半のCM 2/4
11/03/31 10:15:27.16 qb4TnRXU0
バスン!バスン!
狙いを定めてカートを停めると綺麗な弧を描きながらスーツケースが飛び乗ってくる。
おお、我ながらバッチリなコース読みだ。体勢を立て直したミノレクくんも最後のひとつを見事にキャッチした。
お客様の前での私語は厳禁である。仕方なく親指を立てて見せるとミノレクくんが荷物を支えている腕の下からニコリ、と密かな笑顔を覗かせた。
「……………!」
か、かかかかか可愛い――!!!
オホン!
マネージャーの咳払いで我に返る。
カートをそのままミノレクくんに託し、次のお客様をお迎えするべく俺はエントランスに向かった。と思う。
正直、舞い上がっていたのでよく覚えていない。
120:半&半のCM 3/4
11/03/31 10:21:51.85 qb4TnRXU0
side:milk
「……………!」
お、重い。どうしよう……。
その日は遅番だった僕がエントランスに向かうと、すでに彼はいつものようにきりりと仕事をこなしていた。
彼。珈琲さん。ドアマンの黒い制服が誰より似合う――というのは僕の欲目だけではないと思う。
僕はこのホテルのポーターである。故に僕の仕事はお客様のお荷物をお部屋まで運ぶことである。
運ぶことである、のだが……。
たった今到着された……サーカス団、だろうか?のお客様のお荷物である、何が入っているのかわからないがその木箱は相当な重さで、日々それなりに重い荷物を持っている僕でも到底運べそうにない重さだった。
ヘルプに入れそうなポーターは居ない。どうしたものかとパニックになりかけたところでポンポンと肩を叩かれる。
「………………!」
振り向くと珈琲さんが横に立っていて、僕は思わず声を上げそうになった。
こちらの動揺をよそに彼はさっさと木箱に手を掛ける。あれほど持ち上がらなかった箱がふわりと宙に浮き、僕はついうっとりと珈琲さんを見つめてしまった。
「フフフ………」
そんな珈琲さんを面白そうにご覧になったお客様が、パチリと指を鳴らす。
すると、目の前の木箱が一瞬にしてライオンの入った檻に変わったのだ!
「……………!」
これにはさすがの珈琲さんも驚いたようで、声こそ上げなかったものの、檻を支え直した拍子に……。
バリリ!
珈琲さんの。制服のズボンが裂けて……下着が見えた。
珈琲さんの、下着が。
「あっ………!」
考えるより先に自分の帽子を脱いでそれを隠すことに努めたが。
(ハ……ハート、だった?)
檻を落とさないように珈琲さんと息を合わせつつ運ぶ作業の裏で、ついつい瞼に映る残像を確認してしまう。
それは、他ならぬ珈琲さんだからで。
(意外に、可愛いパンツ穿いてるんだなあ……)
121:半&半のCM 4/4
11/03/31 10:26:35.79 qb4TnRXU0
half & half
「お疲れ」
「あ、お、お疲れ様です」
休憩室でもないこの部屋は狭い。簡易的なテーブルと、揃いでもない椅子が2脚あるのみなのだ。こんなところに来るのは自分だけだと思っていて、
実際今まで誰と顔を合わせることもなかったが、きょうは先客である珈琲が寛いでいる。
さてどこに腰を落ち着けるか――逡巡するのも束の間、珈琲が傍らの椅子を丁寧な仕草で示したのでおずおずとミノレクはそこに座った。
「フォロー……ありがとうございました」
「……ああ。いや、こちらこそ」
昼食のサンドウィッチを広げるミノレクにちらりと視線を寄越したものの、何を言うでもなく珈琲は手にしていた雑誌をまた読みはじめた。
沈黙の中、自分の咀嚼する音がやけに響く気がするのを気まずく感じながらも、ミノレクはそんな珈琲をしげしげと見つめる。
(ああ……やっぱり、カッコいいなあ……)
そんな彼の視線の先を追い、手にしているページがまったく進んでいないことに気付いて首を傾げた。
「なにか、面白いことが書いてあるんですか?」
「え!?……あ、いや……」
ぱたりと雑誌を閉じ、身体はミノレクの方へと向き直ったのだが、視線はうろうろと彷徨っている。
ちらり、また寄越された視線がばちりと合い、今度はミノレクのほうが目を逸らせた。
「なんだか落ち着かないな、君にそんなふうに見られると」
「……え?……あ、す、すみません、他に見るところがなくて……」
思ったままを口走ってから、それがかなり失礼な物言いであることに気付いて慌てる。
他に見るところがない、というのは少々語弊がある。他に何があっても彼を見つめてしまう、というのが正しい。正しいのだが。
「いや、別に見るなというわけじゃ……それより、」
しかし珈琲は特に気にした様子もなくさらりとそれを流してくれた。
(確かに、僕も珈琲さんにじっと見つめられたらご飯どころじゃないな)
122:半&半のCM 4/4α
11/03/31 10:31:25.57 qb4TnRXU0
「それより?」
「……あのパンツは、別に俺の趣味じゃない」
真正面から急にそんなことを言われ、口にしていた牛乳を吹きそうになる。
「あ……ああ。え、えと、か、カノジョとかの趣味ですか?」
「俺に恋人はいない。君はいるのか」
「ぼ、僕ですか?いや、いませんけど……」
「そうか……」
珈琲が立ち上がる。交代の時間が来たらしい。
「意外だなあ、珈琲さんにカノジョがいないなんて。そういえば、どういうタイプの人が好きなんですか?」
そういえば、どういえばだと心の中で突っ込みながら努めて明るく訊ねた。
「好きなタイプ……」
上着のボタンをきっちりと留めながら、珈琲が見下ろしてくる。
軽い世間話程度のつもりだったのに何故か視線が逸らせなくて、そのままミノレクはドキドキと彼の次の言葉を待った。
「そうだな……。基本綺麗だけど、笑うと可愛くて……なんか色々一生懸命なコかな」
「……綺麗で可愛い……いるんですか、そんな人」
「いると思う」
123:半&半のCM 4/4β
11/03/31 10:35:32.85 qb4TnRXU0
つい、と伸ばされた珈琲の指が、ミノレクの頬から唇の端辺りを舐め取る。
「………!?」
「ついてる」
そのまま彼がぺろりとその指を舐めたのを見て、羞恥とほんの少しの欲情に顔が赤らむのを感じた。
「……す、すみません……ありがとうございます……」
「ああ。じゃ、俺あがるから」
「はい、お疲れ様です」
悠然と歩いていく背中をポーッと見送ったミノレクは。
(……さ、触ってしまった、ほっぺとくちびる……。ぷにぷにだった……)
静かに閉まったドアの向こうで、そんなふうに珈琲が崩れ落ちていたことを知らない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
分割超足りなかった すみませんorz
124:星に願いを 1/3
11/03/31 19:59:04.08 GqJTSvxP0
半生超注意。
某中華麺図のコント「ア/ト/ム/よ/り」
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
昔読んだおとぎ話
馬鹿げた話だと思いながら、俺は今日も星を眺める
--------------------------
「・・・なんだこれ。」
昼寝から目覚めて鏡をみて気付いた異変。
なぜ俺の顔にでっかく"のす"って書かれているんだ。
「ノス~・・・おまえなあ・・・。」
「ノス!!俺が書いたノスよ!!」
なんにでも名前書きやがって。しかも油性で。
「あーもー、とれねーじゃねーか、なんてことしてくれてんだ・・・。」
「トガシ君が悪いんだわいよー!!せっかく休みなのになんでずっと寝てる
のす!!一緒に大マンモス展に行くんだわいよ!!」
「だったら普通に起こしゃいいじゃねえか。なんだって名前なんか書いてくれてんだ。」
「自分のものには名前を書くノス。お前のものは俺のものノス。トガシ君も俺のものノス。
俺はトガシ君が大好きノス。だから、今日は一緒に大マンモス展に行くんだわいよ!!」
子供のような顔してそんなことをいう。うれしそうに。
俺はおまえのものか。意味分かって言ってんのか。
分かってないだろうことは分かってるけど。
125:星に願いを 2/3
11/03/31 20:03:07.12 GqJTSvxP0
「言っとくけど俺は行かないからな。あと名前書くならせめて水性にしてよ。」
「それじゃ消えちゃうノスよ。だから油性で書くノス。」
「消えてくれないと俺が困るんです。」
「俺はトガシ君とずっと一緒にいたいノス。消えたらいなくなっちゃうかもしれないノス。
名前は、失くしたくないものに書くんだわいよー。消したら意味ないノス!!」
・・・なに言ってんのこいつ。
「あのな、名前が消えたって俺はいなくなんかならないよ。」
「ほんとノスか?」
「ほんとほんと。なに、そんなに怖いの。俺がいなくなっちゃうかもしれないことが。」
「俺はお前が大好きノスからねー。」
「そっか。」
いなくなんかならないよ。俺だってお前とずっと一緒にいたいよ。大好きだよ。
でも俺はそんなこと言ってやらない。言っちゃいけない。
だってお前と俺は違うんだから。
好きの意味も、それ以外も。
だから俺は思うんだ。おとぎ話みたいに星に願ったら来てくれないかなって。
126:星に願いを 3/3
11/03/31 20:06:09.23 GqJTSvxP0
「トガシ君大マンモス展がだめなら大ねずみ展に行くノス。でっかいノスよー、ねずみ!!」
「行きたくねえなー。」
「なんでだわいよー!!せっかくの休日ノスよー!!」
「たまにはいいじゃん、家でごろごろするのもさ。」
「あ!じゃあキャッチボールするノス!!」
「えー、お前なんでそんな元気なの。」
「えーっとグローブはどこにやったノスかねー、さっき・・・」
「グローブなら俺が昼寝する前お前さわってたじゃん。」
「・・・・・・・」
「ノス?・・・・ああー・・・」
ほらきた、現実に引き戻される。
「バッテリー・・・あったかなあ・・・。」
充電しなきゃ動かないんだもんお前。機械なんだ、人形なんだよ。
好きで好きでたまらないんだ。
キスして抱きしめて離したくないんだ。
ずっと一緒にいたいんだよ。
それなのに、なんでお前は人間じゃないんだ。
だからさ、俺のとこにも来てよ、ブルーフェアリー。
あの木の人形を人間にしたみたいにさ、こいつも人間にしてくれよ。
それか俺を機械にしてさ、このどうしようもない感情を消してくれよ。
苦しくてたまらないんだ、ロボットに恋をするのは。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ゲ仁ンネタって書いていいのかしらと思いつつ。お粗末さまでしたー。
127:風と木の名無しさん
11/03/31 20:45:52.61 To1a6tZHO
>>116
ありがとうありがとう!
「シゲさんすっげ笑顔でした」はヤナちゃんでばっちり脳内再生されてニマニマしたよ。
128:風と木の名無しさん
11/03/31 21:58:34.39 e1LxN6g30
>>124
GJ!本人達の声で再生されて、泣けた
久々にDVD見るノス
129:1
11/03/31 23:34:04.24 wL5PqepAO
弟が今日引退した、某ナマモノツインズの話。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
俺たちは同じ日に生まれ、同じ容姿で、同じ道を歩いてきた。
「辞めんのか」
「うん。体がボロボロだしね」
勉強以外、いつも俺の後をくっついて回っていた彼は、今日新たな道を歩み始める。
生まれて初めて、俺たちは別々の道を歩く。
「ごめんな」
別な生き方もあったはずだった。
それを同じ道に連れてきたのは、間違いなく俺だ。
「何で謝るんだよ。俺、お前と一緒にここに来たこと、全然後悔してないし」
「でも」
「俺は、この仕事に就けたことを誇りに思ってるよ。大したことはできなかったけど、貴重な体験はたくさんできたから」
思えば、この仕事に就いてからの彼は、常にケガと戦っていた。
それでも諦めることなく、いつも全力を尽くしていた。
「1つ頼みたいことがある」
「なんだ?」
「まだまだ先の話になるとは思うけど、いずれは先生になるつもりでいる」
彼の口からは、とてつもない夢が飛び出した。
同期に、ずっと試験を受け続けているにも関わらず、未だに受からないヤツがいるから難しさは当然分かっているはずだ。
130:2
11/03/31 23:35:16.26 wL5PqepAO
「どんだけ先の話だよ」
「まあね。でさ、そんときはメインで乗ってもらいたいんだよね。だから、お前それまで現役でいろよ?」
笑ってごまかそうと思ったが、真剣な目つきに気付いてちゃかすのは止めた。
その目には、はっきりとした意志が見える。
「…50とか60とかまでは待てないからな」
励ましの言葉のひとつでも言えたらいいのに、自分に言っているような気がして、うまいことが言えない。
それでも気持ちはきっと通じているはずだ。
「頑張れよ、ミサキ」
「ダイチもな」
進む道が分かれても、俺たちの絆は変わらない。
新たな夢に向かって歩き出した弟が、少しだけいつもより頼もしく見えた気がした。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
内容は勿論フィクションですが、同じくツインズのミズノ先生の例もあるので、ちょっと期待してます。
お疲れ様でした。
131:風と木の名無しさん
11/04/01 11:34:26.52 yN/ZaWyeO
>>129
この兄弟の話が読めるとは…GJです!
まだまだ厳しい状況は続きそうですが、それぞれの道で頑張ってほしいです
132:風と木の名無しさん
11/04/01 23:25:20.38 FoK1pThw0
>>118
もっとあのCM続編が出てほしいと思いつつGJ!