11/04/17 11:35:32.69 rcduXAwTO
>>246
萌えすぎて禿げました
ありがとうございます!
次はキス以上まで進むといいなw
また投下よろしくお願いします
251:熊が泣く日和 1/4
11/04/17 21:58:20.06 Pk96CNZrP
半生 邦画「落.語.物.語」より師匠←コハル
・超絶ネタバレ注意 ・エロ無し、ぬるい、暗いです
パチン (>⊂(・∀・ )マイドバカバカシイヤオイヲヒトツ
252:熊が泣く日和 0/4
11/04/17 22:10:07.34 Pk96CNZrP
すみません、引っ掛かりまくっているので後ほど…
(・∀・;)ベンキョウシナオシテ マイリマス!
253:熊が泣く日和 1/6
11/04/18 00:09:10.06 4Z42Ye7V0
投稿再挑戦、半生 邦画「落.語.物.語」より師匠←コハル
・超絶ネタバレ注意 ・エロ無し、ぬるい、暗いです
パチン(>⊂(・∀・)マイドバカバカシイ(
今日も日差しは温かい。洗濯機は師匠と、僕のぶん、二回楽々回せるだろう。
それが済んだら掃除をやって、ご指名のライスカレーに取りかかる。
家事がまるまる僕の仕事になって、最近ようやく慣れてきた。
師匠は相変わらず家事にうるさく、稽古にいい加減だ。
師匠はよく僕をからかってのほほんと笑う。
254:熊が泣く日和 2/6
11/04/18 00:11:39.54 4Z42Ye7V0
「小.春、お茶くれーい」家のどこかで声がした。僕は洗濯機の蓋をばたんと閉めて返事をする。
「はい!緑茶ですか?」「うん、濃いやつねー」
僕は慌てて手を拭いてから台所に駆け込み茶筒を手に取る。そうだ貰い物のカステラが残ってる。
厚めに切って盆を持ち、こぼさないよう慎重に、師匠の部屋に運びこむ。
「師匠、緑茶です」
「うん、そこに。そうそう」師匠は本から顔をあげるとニヤッと笑った。
「カステラかあ、気が利くな。手づかみってのもたまにはオツだよな」
「あっ」僕は正座のままで小さく跳ねる。皿にフォークが載ってない。「すみません!すぐ、すぐ持ってきます」
「いい、いい、それより、今日は肉じゃががいいな」
「え、昨日は…ライスカレーって」
「そうだっけ?忘れた。似たようなもんだろう、芋と、肉と、玉ねぎと」
一応の抵抗を試みる。「ジャガイモも、もう切ってますし、豚の薄切りは買ってこないと…」
「いや、今日は絶対に肉じゃがだな」
もちろんその抵抗は無駄だ。わかりました、と答えて立ち上がる。
「ああ、葵」部屋を出ようとする僕に師匠が声をかけた。
ああ、葵、それを聞くと心臓が砂粒を噛んだみたいになる。
世界じゅうの音がほんの一瞬なくなってしまったみたいになる。
師匠は気づかずにこにこと、小さな皿を僕に差し出す。
「カステラ、食っていいぞ。だから今日は肉じゃがでな。なんだそんな顔して。上物なんだぞ、これは」
手の中のカステラはすごく黄色い。
255:熊が泣く日和 3/6
11/04/18 00:14:08.72 4Z42Ye7V0
おかみさんが亡くなったすぐあとも、葬儀の間も、師匠は大きな声でわあわあ泣いた。時には呻くように泣いた。
人類が誕生してからやった泣き方の全部を試すように師匠は泣いた。葵、葵、ばか、葵と言って泣いた。
僕は家から取ってきた防虫剤臭い喪服を着て、できる雑用をこなしていた。
噺家には悲しいことがあった時、平気なふりで周りを笑わせる人と嘆き悲しむ人がいるらしい。
師匠は嘆き悲しむ人で、大きな体を揺すぶって涙を流した。葬儀に来た噺家たちの中に、小六は噺家らしくないと
厳しいことを言う人があった。僕は楽屋でいつもやるみたいにじっと顔を伏せていた。
本当は、おかみさんがどんなに師匠を好きで、師匠がどれだけおかみさんを支えにしていたか、言いたくて言えなかった。
そうして大泣きに泣いたあと、師匠はぱったり泣かなくなった。
仏壇に手を合わせてから高座に出掛け、上機嫌で帰ってくる。
僕の家事にあれやこれやと文句をつけて、理不尽ないたずらをして、毎日稽古をしてくれる。
けれど夜中にふと目が覚めると、隔たった部屋の向こうからきっと声が聞こえてくるのだ。
熊がしゃっくりするような、くぐもった声。
熊がしゃっくりをするのかどうか、僕は知らない。
256:熊が泣く日和 4/6
11/04/18 00:16:00.95 4Z42Ye7V0
台所は静かで妙に蒸し蒸しする。窓を細く開けてカステラを食べた。
こんなに温かいけれどあの人はずっと冬の中にいるのだと思う。
稽古中、台所に向かって師匠が「コーヒー」と叫んだあと、あるいは僕がつけている家計簿の食費の欄を覗き込んで
「なんだあ、やけに少ないな」と呟いたあと、師匠は変なくしゃくしゃ顔になり、僕はその度におかしな気持ちになった。
内弟子がこんなことを思うのは間違っている。でも僕が師匠を守っていかなければと思う。
おかみさんもそんな気持ちだったのかもしれない。おかみさんがくれた大学ノートを取り出して、僕は肉じゃがのレシピを
探し始めた。『六ちゃんは』と肉じゃがのページに書かれたメモを読む。
『六ちゃんは、ジャガイモのサイズにうるさいので、大きめのひと口大に切ること(六ちゃんのひと口は春ちゃんの2倍)』
その途端、自分でもよくわからないままに僕は狼狽してノートを勢いよく閉じた。
なにか後ろめたくて、誰かに何かを謝りたくてたまらなかった。初めてノートを見ずにご飯を作って、
僕は見事に鍋を吹きこぼした。
257:熊が泣く日和 5/6
11/04/18 00:18:21.92 4Z42Ye7V0
「ジャガイモが小さいよ、肉は牛だし。ライスカレーの材料、そのまま使ったろ」
「すみません」
「小.春には家のこと全部任せてるからなあ。父子家庭は大変だな」
そう言って師匠はわはは、と笑ったが、僕はどう応えたものかわからなかった。
「どうした、高座で何かあったか。…弟子入りしに来た時のフニャフニャに戻ってる」
僕は喋らなくてもいいようにご飯を箸でかき集めて頬張る。師匠もお茶をゆっくりと飲む。
おかみさんだったら「しみったれた顔するんじゃないの」とか、あの下町口調で言うんだろうか。
ご飯ばかり食べていたら、肉じゃががずいぶん余ってしまった。居候の身でおかわりは滅多にしないけれど、
今日だけは炊飯器を開ける。それをからかいもせずどこかぼうっとした師匠は、茶碗を突き出した。
「葵、おかわり」
自分のをよそってから師匠の大きな茶碗を受け取る。ご飯は温かい湯気をたてている。
師匠に茶碗を返す時、「小.春です」と僕は言った。
「ん?」
「僕は。今戸.家小.春、です」師匠はきょとんとしていたが、やがて「間違えてたか」と呟いた。
「今までも間違えてたか?」
「いえ!」すぐさま答えたが、顔で伝わってしまったらしかった。
平気になったつもりでも、こんな時にコミュニケーショ下手が出る。
「そうか。…悪かったな。小.春」謝られたのが意外で、僕はただ座るしかない。
「小.春」師匠が僕の目を真正面から見た。「はい」
「小.春。うん、お前は、小.春だ。な」「はい!」
「ほんとにいい名前だなあ。ぴったりだよな。まあ俺がつけたんだけどな」師匠はそう笑った。
「はい、師匠と、おかみさんに、つけてもらいました!」
258:熊が泣く日和 6/6
11/04/18 00:20:26.87 4Z42Ye7V0
途端に師匠はあのくしゃくしゃ顔になって、箸をぱたんと置いた。椅子が大きな音を立て師匠の大きな影が
食卓に落ちた。離れていこうとする袂をぎゅっと掴むと、あっけないほどの軽さで師匠はまた腰を下ろした。
広い手のひらでもっと広い顔を覆って、師匠は泣いた。手のひらの下で口が誰かを呼んだけど僕には聞こえなかった。
師匠はしゃっくりをする熊にそっくりで、僕は熊がしゃっくりをするかどうか知らないけど、袂を離すことができなくて、
机を回って師匠のそばに立った。一際大きな嗚咽が漏れ、それはすぐ僕のTシャツのお腹のあたりに押し当てられて
かき消され、僕は誰かに謝りたい気持ちのまま、師匠と一緒にフニャフニャと泣いた。
m(・∀・)mイジヨウ、オアトガヨロシイヨウデ
長々と失礼しました
259:風と木の名無しさん
11/04/18 07:24:35.38 WJYuYz6C0
>>258
ピ工一ノレの映画ですよね?あの巨体で想像して泣けた
映画見に行ってくる!
260:1
11/04/21 23:55:36.89 NrnXTQW6O
先輩×後輩。
生注意。当たり前ですがフィクションです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ぼんやりと、同僚たちのバカ騒ぎを眺めていた。
いつもなら一緒になってはしゃぐのに、今日はそんな気になれない。
かといって誘いを断ることもできず、片隅でひとり濃いめの酒を煽っている。
あれは、一瞬の判断ミスだった。
期待していたパートナーが故障してクラシックをフイにしてしまって以来、何となく不運なことが続く。
「ほんまに…もう…」
グチを言おうが溜息を吐こうが状況は変わらないのだが、沈んだ気持ちはなかなか元に戻らない。
「ユウジ!」
いつの間にか隣に先輩が座っていて、俺に抱きついてきた。
「あれはユウジらしくなかったねぇ。来週もユウジに会えると思ってたのに…残念だなぁ」
「はぁ」
擦り寄ってきた先輩は、既に相当飲んでいるらしく、顔は真っ赤だし、呂律も回っていない。
「……同情なら結構ですが」
「あれ、ユウジくん怒った?俺、そんなつもりで言ったんじゃないんだけど…」
「そんな風にしか聞こえません」
261:2
11/04/21 23:57:02.20 NrnXTQW6O
いつもなら、先輩のこの軽さも何とも思わないのだが、どうしても今日はイライラする。
俺を励まそうとしてくれているのは痛いほど分かる。
分かるけれども、今はそっとしておいてほしかった。
「ごめんごめん。やっぱ俺、うまいこと言えないや。何か励ますようなことが言いたかったんだけど」
きっと俺はものすごい表情をしているのだろう。
おちゃらけた顔が、一瞬にして悲しそうな顔になった。
「ごめんなユウジ。俺、ユウジ大好きだからさ……そんな辛そうな顔してほしくなくてさ…」
目がみるみるうちに潤み、すーっと一筋流れ落ちた。
「ちょ、ちょっと、コヤマさん?」
「……」
俺の服の裾を握り締めたまま、顔を肩口の辺りに押し付けて、先輩は本気で泣き始めてしまった。
これではどう考えても俺の方が慰めているというか、俺の方が悪者じゃないか。
「な、泣かないでくださいよ…俺もちょっと大人げなかったですか……ら!?」
俺の言葉が終わる前に。
本気で泣いていたはずの先輩は、にやりと笑ったかと思うと、俺の頭を抱え込んで口付けてきた。
262:3
11/04/21 23:58:38.61 NrnXTQW6O
「ユウジくんが元気になるおまじない」
「え、あの…」
「でもタバコはダメだよ。俺、嫌煙家だから」
確かにさっき同僚のを1本くすねて吸ったのだが、それを指摘されたことより、何が何やらすぐに理解ができなかった。
しかし、カメラの前で号泣してみせる先輩のことだから、あれは迫真の演技だったのだという考えが浮かぶと、急に顔に熱が集まる。
「あんた、アホやろ!」
「うん、アホ。ユウジが好きすぎて」
へらっと笑って、先輩はまたバカ騒ぎの中に戻っていった。
「ほんまにもう…」
新たな悩みが増えてしまった俺は、深い溜息を吐くしかなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
AFの件といい、隠居後の計画といい、彼らはネタが満載で困る。
あんたら本当に30代後半なのかと小一時間。
263:風と木の名無しさん
11/04/22 00:13:04.13 dYumraV8O
>>260
姐さんGJです!
ニヤニヤしながら読んでしまいました。
いい歳したおっさん達が、公の場で仲良くし過ぎで困りますねw
いいぞもっとやry
264:M/G/S/P/W 和蛇1/5
11/04/23 01:29:39.91 G72+IBsNO
金属の歯車 平和歩行者
初投下&携帯からです。改行おかしかったらごめんなさい
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
唐突に意識が浮上し、スネークは瞼を開いた。
目の前には金色の柔毛。
状況が掴めず、ぱちぱちと瞬きを繰り返し、思考を巡らせる。
…確か、任務を終えてマザーベースに帰還し、デブリーフィング後に食事や入浴を済ませ、自室で一服していたところにミラーが酒瓶を携えてやって来たのだ。
265:M/G/S/P/W 和蛇2/5
11/04/23 01:32:01.61 G72+IBsNO
安物の蒸留酒を嘗めながら、他愛もない話をしていたはずだが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
自分はベッドに座り、ミラーはそのベッドを背もたれ代わりに床に座り込んでいたと記憶している。
MSFの副司令官として、激務を日夜こなしているミラーもまた、自分と同じようにそのまま眠り込んでしまったのだろう。
…つまり、今目の前にあるのはカズの頭か…
寝起きのぼんやりとした思考で、やっとそこまで辿り着いた。
俯せに寝たまま、呼吸に合わせて僅かに前後するミラーの後頭部を眺めるともなく眺めているうち、いつぞやのミラーのぼやきを―これまた寝起きの思考の突飛さで―思い出す。
…俺はねこっ毛でなぁ、ああ、英語では何て言うんだ?cat coatでいいのか?髪が細くて、セットするのが一苦労なんだ。こう、ボリュームを出すのがな、毎朝苦労してるんだぜ…
その時は「色男も人知れず苦労してるんだな」などと茶化しつつ、猫の毛という言い回しがいまいちピンと来なかったのだが。
266:M/G/S/P/W 和蛇3/5
11/04/23 01:34:12.14 G72+IBsNO
成程、何時ものようにかっちりと固められていないミラーの髪は、確かに柔らかそうだ。
殆ど無意識のうちに、スネークは俯せたままミラーの頭へと手を伸ばしていた。
襟足から上へ向かって指先を差し込み、さらさらと指の間を擦り抜けて行く感触を確かめる。
先日、MSFの兵士たちが思いがけなく拾ってしまった子猫―ニュークと名付けられた―を思い出させる手触りに、我知らず口角が上がる。
…なるほど、確かに猫の毛だな…
頭頂部から下へ向けて手櫛の要領で梳いてみる。オールバックにする必然からか、やや長めに調えられたサイドの髪を下から持ち上げ、ぱらぱらと少しずつ手放してみる。
マザーベース内の自室であること、深夜であることも手伝って―酔いもまだ覚めてはいないのだろうという自覚もある―未だに完全には覚醒し切らない脳が命ずるままに、幾度もミラーの髪を梳く。
と、不意に手首を掴まれた。
267:M/G/S/P/W 和蛇4/5
11/04/23 01:37:04.07 G72+IBsNO
「…何だ、起きたのか」
「これだけ触られりゃ、いくら俺だって起きるさ」
小さく欠伸をしながら、ミラーがこちらに身体を向ける。膝立ちの状態で、掴んだ手首を一旦離し、スネークの左肩の下に手を差し入れ、仰向けにさせた。
荒っぽくひっくり返されたにも関わらず、常になくぼんやりとした顔つきのスネークに、ミラーは困ったような呆れたような微笑みを浮かべた。常でも少し下がり気味の目尻を一層下げて、スネークの顔を覗き込む。
「…気に入ったか?俺の髪?」
「…ああ」
「…もっと触りたい?」
「…ああ」
ベッドに乗り上がり、スネークの肩口に頭を載せ、目を閉じる。口許にはまだ微妙な笑みを浮かべて。
暫くはスネークが無心に髪を梳くにまかせていたミラーが、再び手首を捉え、目を開けて言った。
268:M/G/S/P/W 和蛇5/5
11/04/23 01:42:10.91 G72+IBsNO
「…俺も、触っていい、か?」
「…ああ」
今度はミラーの指先がスネークの髪を弄ぶ。耳の後ろから、頭皮をマッサージするように何度も梳かれると、知らず満足げな溜息が漏れる。
こちらがまるで猫か犬になった様だ、などと、目を閉じて考えていると、
「スネーク…?」
左耳にひどく近くから囁かれ、ひくり、と身体が跳ねた。
目を開くと、ミラーの顔がすぐ近くに迫っている。
いつの間にかスネークに覆い被さるように跨がり、仕方ない、といった風情だった微笑みは、僅かに危険な物を孕んでいる。
「もっと触ってもいい、か?」
先刻のスネークの反応に気をよくしたらしい。低く、掠れた声で、スネークの耳に直接吹き込む。
「…なあ、スネーク。違うところも、触っていい…?」
「っ、……ああ」
頬が熱くなっているのを自覚しつつ、スネークは許可を与えた。
正直、嵌った、と思わなくもないが、未だに覚醒仕切らない頭で何か考えても仕方ない、と早々に諦めて、もう一度ミラーの頭へと手を伸ばした。今度は引き寄せるために。
これから与えられるはずの、指先とは違う感触に備えるべく、スネークは薄く唇を開いた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
269:風と木の名無しさん
11/04/23 01:49:03.79 G72+IBsNO
分割失敗気味ですねorz
わりと流されやすいおっさんと、チャンスは逃さないよ!って若造を書いてみたかったんです…
おそまつさまでした
270:風と木の名無しさん
11/04/23 01:59:44.62 VijlUou80
オリジナル 平凡部下×エリート上司のリーマン物みたいな…?
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
271:風と木の名無しさん
11/04/23 02:08:07.16 VijlUou80
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
>>270です
スミマセン、エラーが出るので中止します
ご迷惑をお掛けしました
次の方、投下されて下さい
272:風と木の名無しさん
11/04/26 22:01:25.41 Gf8uSojA0
>>270が戻って来るまで小休憩投下
半生 木目棒の小右っぽい右さん独り言話
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
273:愛人論1/6
11/04/26 22:04:41.36 Gf8uSojA0
不眠をわずらっているのは、カフェインの摂りすぎが原因なのでは―。
昔、元妻に半分本気で指摘されたことだが、右.京の紅茶好きは確かに一種の中毒めいたものがあった。
日中はもちろん、就寝前にも必ず喉を温めてからでないとベッドへ向かう気になれない。
どんなに疲弊している日でも、いや、疲弊している日こそ、紅茶をいれる時間帯だけは無心になれるのだった。
つるの細い薬缶でお湯を沸かしながら、ブランデーのボトルを用意する。
カモミールやラベンダーの絵柄の箱の上で手を彷徨わせてから、右.京は一瞬考え込んで、冷蔵庫をあけた。
陳列しているパックやボトルの中から、低温殺菌の牛乳パックを持ち上げて軽く振ると、右.京は納得した様子で一人頷いた。
それから、ハーブティーの類をしまって、ダージリンの缶を取り出す。
薬缶を見れば、すでに細い首からは女の溜息のような蒸気が立ち上り始めていた。
274:風と木の名無しさん
11/04/26 22:08:46.28 Gf8uSojA0
「さて……」
呟いて、右.京は隣のガラス棚へと目を転じた。ずらりと並ぶのは、白や青、時には濃翠の色合いをした、ティーセットの数々だった。
薫に言わせるところの「緊張して飲んだ気にならない」高級品である。
右.京は毎夜、こうして好きなカップを選ぶ時のわずかなときめきを、ことのほか愛していた。
「どれにしましょうかねぇ」
独り言が自然と弾んでしまうのも、一人暮らしの気楽さがあるからだ。
右.京は絵柄の濃い物から無地に近い一品までをぐるりと流め、しばしの思案を楽しんだ後に、右手前に澄ました顔で陳列されているスミレ柄のティーカップを持ち上げた。
カチャリと陶器の触れ合う繊細な音がする。その瞬間、ふいに奥にしまいこんでいた一つのカップに、目が留まった。
275:愛人論2/6
11/04/26 22:09:35.67 Gf8uSojA0
目の醒めるような蒼の縁取りに、細やかな金のアラベスク模様をあしらった、ひときわ豪奢なカップだった。
黄と赤のバラが絡み合った絵柄の持ち手には、内側に、ご丁寧に右.京の名前が彫ってある。
『物には罪がないでしょ、これでも苦労して選んできたんだから』
すとんと耳に蘇ってきた声に、右.京は眉をしかめた。
もう何年も前の話だ。
イギリス旅行の土産に奥方へ贈るというので、しぶしぶ知っている店をいくつか紹介した。
その結果、送られてきた小包の中身がこのティーカップとソーサーだった。
すぐさま送り返そうとした右.京のもとに、見計らったようにかけてきた電話口で小.野田はしれっと言い放った。
276:愛人論3/6
11/04/26 22:15:13.13 EALfo+e6O
『まぁいいじゃないですか。そのうち使いに行くから、ゆめゆめ捨てたりなんかしないよ
うにね』
いけしゃあしゃあと勝手なことを言う小.野田の声を聴いたのは、それが最後だった。
それからしばらくは電話もかかってきていたようだが、取り合わないまま、そのうちに日
が過ぎ、年が過ぎていった。
色々な物を捨てて生きてきた。
伴侶も、部下も、出世も、男の残した短い悪夢のような蜜月も。
ただ、こればかりは結局、捨てるに捨てられないまま、今に至っている。
正直、最近は存在さえ忘れかけていた。
このまま、変わらぬ年月が埃のように重なっていくものだとばかり―。
277:愛人論4/6
11/04/26 22:16:34.45 EALfo+e6O
右.京は少し考え込んだ後、手にしていた方を元に戻して、奥から冷え切ったそのティーカップを取り出した。
久しぶりに目にするが、やはり悔しいほどに惚れ惚れする出来栄えだった。
細い絵筆で繊細に描かれた金彩の美しい模様が、淹れたての紅茶の湯気にぼんやりと浮かび上がって、芳醇な香りと共に心まで癒してくれる一品だった。
小.野田が苦心したというのは多分本当だろう。
この食器を手掛けた職人は右.京の知る限りでは、えらく気難しい老人で、彼の魂の芸術品であるカップに名前を彫るなどという蛮行を許すわけがないのだった。
それを、わざわざ。
278:愛人論5/6
11/04/26 22:17:34.24 EALfo+e6O
『うちにも同じのがあるからね……』
あれだって、しらじらしい話である。
職人が二つとして同じものを作らないことを、紹介した右.京が知らない筈がない。
小.野田の台詞は、たんに妻と同じものを愛人に贈るという俗っぽい話を、右.京に連想させたいがための嘘に違いなかった。
事実あの時問題になりえるとしたら、同じティーカップであるかどうかより、そこに彫られたネームの方が遥かに火種になりえた。
それを見越しての小.野田の手回しだったのだろう。実際、右.京はカップを送り返せなかった。
どこまでも強引な男なのだ。
279:愛人論6/6
11/04/26 22:18:16.48 EALfo+e6O
右.京は薄っすらと笑って、カップをくるりと回した。
ためつすがめつ、悪戯に手の中で温める。
「物には罪がない、ですか……」
つくづく嫌な言い方をする。
それではまるで、どこかには「罪」があるようではないか―。
右.京は溜息をつくと、キッチンへと身をひるがえした。
冷えた薬缶に手を伸ばし、もう一度沸かすためにコンロをひねる。
ぼうっと青い火が立ち上って、物憂げに更けていく宵をうす暗く照らしあげていった。
280:風と木の名無しさん
11/04/26 22:20:21.90 EALfo+e6O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すみません、分割に失敗したりPC投稿失敗したりハチャメチャでした
ありがとうございました
281:風と木の名無しさん
11/04/27 05:44:17.00 aTlqFVIlO
>>264
積極的な副司令官と流されちゃうボスにニヤニヤしました…!
この二人のお話が読めて幸せです。
もし宜しければ続きも是非…!
282:風と木の名無しさん
11/04/27 10:06:14.47 t/p3EwzT0
>>272
うおおおありがとうありがとう!すごく萌えた!!
ずっとこういう右京と官房長が読みたかったんです、本当にありがとう!
283:週間 朝 連載のあの二人 1/2
11/04/27 17:48:43.78 UC6TuRLNO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
うん、そりゃあさ、俺だって昭和生れの男の子だからさ、小さい時から父親とかから
言われるわけよ。
「男たるもの、妻子を持ってこそ一人前だ」なんてさ。
ふーんそんなもんなのかなー、じゃあ大人になったらお嫁さん貰ってー、子供も
たくさん作ってー、でっかい家建ててー、犬もでっかいの飼ってー、なんてさ。
奥さんは、かーちゃんみたいに、忙しく晩ご飯作ってても「おかえりー!」って笑顔で
迎えてくれてさ、子供らが「お土産はー?」なんてまとわりついてきたりしてさ、
まあそんな妄想?いやちょっと言い方悪いか、理想?…そういうのがさ、普通の
男子の在るべき姿ってか、往くべき道ってかさ。
ん?いやいや、昭和って皆そんな感じよ?
特にウチなんか親はモロ団塊だし、田舎だしさ。
284:2/2
11/04/27 17:54:59.39 UC6TuRLNO
まあ思春期には叶わぬ夢になっちゃったんですけどねーあははは。
そうそうだからさ、お二人さんには俺の分も頑張って貰ってー、あ、今のオヤジ臭い?
まいっか、もう立派にオジサンな年だもんね、ってひでー!そこはフォローして
くんないと!笑うとこじゃないよ!?
で何の話だっけ?あそーだ、幸せな家庭を築いて下さいなってことよ。
まあ二人なら俺がどうこう言わなくてもラブラブなんだろうけどさ。仲良いもんね。
…うん、ほんと、お幸せに。
お招きありがとうね。二次会出られないけどごめんね。新幹線の切符取れなくてさ。
ううん気にしないで。新幹線乗っちゃえば寝れるし。そっちこそ体に気をつけてよ。
明日から新婚旅行でしょ?結構ハードなスケジュールだよねぇ。ま、一生に一度だしね。
うん、東京来た時は連絡してよ。土日でも夜だったら大丈夫だからさ。
うん、じゃあね。お招きありがと。あ、さっきも言ったねははは。
じゃあねー、お幸せにねー!
「はぁ~到着~」
自宅のドアの鍵を開ける前、思わず声に出てしまった。
引出物の紙袋はやたらと重いし、普段着慣れない礼服もとっとと脱いでしまいたい。
それに。
このドアを開ければ。
「ただいまぁ~」
「おう、おかえりー」
リビングに入れば、部屋中を満たすいい香り。
この匂いはきっと、自分の大好きな炊き込みご飯だ。
285:3/2
11/04/27 17:57:22.56 UC6TuRLNO
新聞を畳みながら、恋人が立ち上がる。
「早かったな。先に風呂入っちゃえよ」
そう言って、椅子の背に掛けてあったエプロンを身に着ける。
「えー、手伝うよ。着替えて顔洗ったら」
荷物や紙袋をガサガサ言わせながら言うと、
「いいから行って来いって」
長旅で疲れただろ?と背中を押され、
「30分で上がってこいよ。メシにするから」
もう適温の湯が張られ、後は入るばかりの風呂場に押し込まれた。
可愛い奥さんはいないけど。
子供なんて望むべくもないけれど。
大きな家も大きな犬も手に入れてないけれど。
そんなのなくったって、俺は。
「俺…充分幸せじゃん」
いくら抑えても自然に緩んできてしまう口元をしゃんとさせるため、湯船の中に
顔の半分まで潜ってみた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
にぶんのさんって何だよ…orz
分割ミス失礼しました
286:ケンシロウが虎化する話1/10
11/05/02 22:31:30.18 0yIox2aS0
|>PLAY ピッ ◇⊂(*´ω`*)一応長兄×末弟(と三兄×次兄っぽい感じ)
ケンシロウが目を覚ますと、自分が虎になっていることに気がついた。
昨日の夜は飲みだったので、自分の容量も弁えずガンガン飲んでいると、気分が悪くなった。
それで部屋の隅で臥せっていると、アミバがやってきて、
「ふぉ~飲みすぎで気分が悪くなったのか、それはいかんなぁ~。俺の発見したこの新たな秘孔を突けば、お前は忽ち気分が良くなる」と言ってきた。
俺は丁重にお断りしたのだが、強引に突かれてしまった。そして別に気分は良くならなかった。大体そんな秘孔があったらとっくに北斗神拳に備わっているだろう。
その後トキに介抱してもらって、なんとか気分が収まったので家に帰ってきて寝た次第だった。
それで目を覚ますと、何故か体が変なのである。
手も足もなんだか短いし、それに尾があるような気がするのである。
どうにも体がうまく動かせないので、これが二日酔いというやつか、とケンシロウが思ってなんとか体を起こして自分の手を見ると、手ではなくて前足になっていた次第である。
(…いい肉球だ…)
思わずケンシロウは指で触りたくなったが、指が無い(一応あると言えばあるのだが)ので、できないことに気づいて悔しがった。
さて、どうしようかと思った。
今の自分を見て、ケンシロウだと気づかれることはないだろう。下手をするとラオウ辺りに殺されかねない。
しかしお腹は減ったしトイレに行きたい気もする。
兄弟と顔を合わせなければいいのだ、そう思ってまずは寝台から降りようとした。
この体に慣れてないので寝台から転げ落ちる形になった。
以前テレビで見たときには、ネコ科の動物は高い所から落ちてもひらりと身を躱し着地していたのに、何故今の自分はできないのか、理不尽である。それでもなんとか部屋の扉の所まで行って、恐る恐る開けた。
どうやら誰も居ないようだった。それで部屋から出て、扉を閉め、先ずは朝食でも摂ろうかと思った。
「ぬ…?」
廊下の先にラオウが見えた。
俺の人生終わった、とケンシロウは思った。
(いや、いくらラオウでも、家の中に虎が居るからといって直ちに殺そうとしたりしないだろう)
ケンシロウは少し前向きに考えた。
ケンシロウが其の場で立ち止まっていると、
287:ケンシロウが虎化する話2/10
11/05/02 22:32:42.32 0yIox2aS0
ラオウは歩み寄ってきて、
「ほう…虎か…二日酔いを覚ますのに、丁度よい」と呟いた。
やはり俺の人生は終わった。
とりあえずラオウに対抗するためにオーラを纏ってみた。
「ほう…貴様もオーラを…だがこの拳王の敵ではないわ!」
やはり慣れない虎の身では限界がある。オーラを纏うことはできても、ラオウの剛拳を躱すことができずに、死ぬだろう。
「死ぬがいい!」
「…何やってるんだ、兄さん」
トキだった。
何といい所に現れてくれたのだろう。
「ぬ…トキ…」
「何をしているんだ…」
「うむ、虎が居たのでな」
「そんなホイホイ殺すのは止めてほしい。ひょっとしたら師父が私たちに黙って通販で買ったのかもしれない」
「ぬう…」
通販で虎は買えないだろう、とケンシロウは内心突っ込みつつ、とりあえず助かった、と思った。
「ほら、来なさい、朝御飯あげるから」
ケンシロウはトキについて台所へ行った。
「上手く歩けないようだが…怪我でもしているのか?どれ、少し見てあげよう」
それよりやはく朝食を。
「ふむ…特に異常は無いようだ…さて…」
ようやく朝食か!そういえば一昨日のカレーがまだ残っていたよな…確か…。
昨日は飲みで誰も家で夕食を食べてないわけだし、カレーだ…二晩じっくり寝かせて美味しくなったカレーだ!
「はい、朝御飯」
何故生肉の塊なんだ…トキ…。
確かに虎の食事と言えば生肉が当然なのかもしれない。
しかし自分は虎であって虎でなく、実際にはケンシロウなので、生肉でなくてカレーを所望するのが当然である、というのをトキが分からないのは当然である。しかし…。
「どうした、食べないのか?」
当然これ、味付いてないよな…せめて塩胡椒を…。
288:ケンシロウが虎化する話3/10
11/05/02 22:33:37.65 0yIox2aS0
ケンシロウはトキに催促しようと思ったが、その時、誰か食堂にやってきた気配がした。
「やあおはよう、ジャギ」
「ああ~…おはよう兄者…ってうおっ!なんで虎が居るんだよ!?」
ジャギは咄嗟に懐からショットガンを取り出してケンシロウに向けた。
「動物に無闇に銃を向けるものではない…」
「いや、動物って、猛獣じゃねえか!暴れたらどうするんだ!」
「その時は私が確実に仕留めるから心配いらない」
それを聞いてジャギは、「いや、あんたは確実に仕留められても、俺にはできねえよ…」と内心思ったが、
そう抗議したところでトキが虎を何処かへやってくれるとも思えなかったので、それ以上文句を言うのは止めた。
「…で、なんで虎が居るんだ」
「多分師父が買ったんじゃないかな。…お前も昔猫を飼いたいと言ってたから、丁度いいだろう」
ジャギが中学生の頃である。
ジャギは川の橋の下に捨てられている子猫を拾い、家に連れて帰った。当然飼いたかったからだ。
師父は特に何も言わなかったが、意外にもトキの反対を食らった。
「なんでダメなんだよ」
「わからないか…最近兄さんは反抗期なのか何なのか、所構わず不意に暴れたりすることがあるだろう。
そういった時に偶々この猫が居合わせてみろ、悲しい思いをするのはお前だ」
「いくらラオウでも、猫が居る時に暴れたりしないだろ」
トキは溜息をついた。
「ジャギ…お前は今までラオウと一緒に暮らしていてそんな事も分からないのか?
この前だってケンシロウを一ヶ月生死の境をさ迷わせたんだぞ、あの人は」
「そんなのいつもの事じゃねえか」
「それがいつもの事になってる事自体おかしい」
結局ジャギは猫を諦めて、友人にあげた。猫はまだ友人宅で健在なので、友人の家に行く度に可愛がっている。
「何年前の話だよ…それに虎と猫じゃ大分違うだろ…」
「いや、虎も猫も親戚みたいなものだろう。同じネコ科だし」
「違ぇよ!」
「じゃあラオウとリンみたいなものだろう」
それはなんとなくわからないでもない。
…しかし、猫は認められなかったのに虎は認められるというのも少し理不尽な気がする。
289:ケンシロウが虎化する話4/10
11/05/02 22:34:24.44 0yIox2aS0
「…猫はダメなのに、虎はいいのかよ」
「いや、実際さっき兄さんに殺されそうになっていたが…別にお前は虎がラオウに殺されても悲しくないだろう」
虎がラオウに殺されるより、自分が虎に殺されないかの方が心配である。
「…まあ…」
「とにかく、お前も朝御飯だろう。カレーでいいか?」
「いいよ」
ケンシロウにとって、自分がカレーを食べられないのに、ジャギがカレーにありつけるとは理不尽である。
トキの傍へ行って「俺もカレーが食べたい」と催促してみたが、どうにも伝わる筈がない。
「はい」
トキがジャギの前に温めたカレーを置いた。
ケンシロウはもうこうなったら力尽くで奪い取るしかないと思った。
ケンシロウは普段はジャギに兄としての顔を立てているが、
体が普段とは違うので気の持ちようが普段とは違うためなのか、
それともやはり対象がカレーであるせいなのかわからないが、
とりあえず椅子に座っているジャギに飛び掛かってジャギを床に転がせた後、食卓の上に乗った。
そしてカレーを食べようとしたが、カレーが熱いので、今虎になっている自分は大丈夫なのだろうかと一瞬躊躇した。
虎が猫と同じなら猫舌である筈である。
「…ッ…このクソ虎ッ!」
体勢を立て直したジャギがケンシロウに向けてショットガンを撃ったが、
咄嗟にトキがケンシロウを抱えて移動して助けた。
「兄者!なんでそんなやつを庇うんだよ!」
「まあ待て…彼はおそらくカレーが食べたかっただけだ…撃つことは無い…」
そしてトキはケンシロウに向き直って言った。
「お前には冷ましたカレーをやろう」
「…ったく、カレーを食う虎なんて変わっていやがる、なあ兄者?」
「…人に飼われていたのかもしれないな、人に慣れているようだし」
デザートは林檎だったのでそれも食べた。食器を片づけようかと思ったが手ではなくて前足なのでできない。
歯を磨こうと思ったが、それもできないと気付いた。
ケンシロウはそういえばまだトイレに行ってなかったことを思い出し、トイレに行った。
ケンシロウがトイレから出てきたのを見て、ジャギとトキは、益々変わった虎だ、と思った。
それにしても、何故かこの虎はトキに贔屓にされているようで理不尽だとジャギは思った。
290:ケンシロウが虎化する話5/10
11/05/02 22:35:11.87 0yIox2aS0
そういえば昔から自分は蔑にされている気がする。
あのラオウの馬だって、ラオウとケンシロウに懐き、トキとはまあまあで、ジャギと師父は完全に蔑である。
たまに訪ねてくるケンシロウやラオウの友人の方を優遇するぐらいだ。
「そういやケンシロウはまだ寝てんのか」
「昨日は大分酔ってたからな…今更起きてきてももうカレー無いし、もうすぐお昼だけど」
「ハッ、自分のカレー食われたって知ったら怒るんじゃぁねえか!昼飯があろうとなんだろうとカレーだけは食うからな、あの野郎」
「そうだな…少し様子を見てくるか」
ケンシロウはトキについて部屋から出た。
トキはケンシロウの部屋をノックして呼びかけてみた。しかし返事が無いので、「ケンシロウ?」とこっそり扉を開けた。
ケンシロウは居なかった。
昼食。
「…ケンはどうした」
昼食は在宅中ならば全員揃って摂るのが常であるから、ラオウがこのような疑問を呈したのも当然である。
「いないみたいだ」
「何?」
「いなかった」
「出かけたのか?」
「いや、誰も見ていない…それに」
トキはケンシロウの携帯とiPod(初代)を取り出した。
「枕元に置いたままだったが…携帯とiPodを忘れていくとは考えにくい」
携帯は中学時代から「欲しい欲しい」と言い続けて大学進学祝いに漸く買ってもらったものであるし、
iPodは何度強請っても買ってもらえなかったのを正月の町内会の福引でようやく入手したものである。
勿論できれば最新型がよかったのであるが、贅沢は言えないので仕方がない。
という経緯があるので、ケンシロウはこの二つを常に携帯している筈なのである。
「ほう…家出か?」
「兄さん、心当たりは無いか?」
「何故俺に心当たりがあるのだ」
そりゃラオウが一番ケンシロウに被害を与えているからだ…とトキは思ったが、その事は言わないでおいた。
もしこの先トキやジャギが家出しても、それはラオウのせいだと思うが、
きっとラオウはそれで悩んだりなど絶対しないだろうから、
291:ケンシロウが虎化する話6/10
11/05/02 22:35:58.33 0yIox2aS0
ラオウに反省してもらいたいと思って家出をしても得策ではないな、と思った。
「それに、何故虎が食卓に座っているのだ」
「座りたそうだったから」
食後ケンシロウは考えた。何か自分がケンシロウだと訴える方法は無いだろうかと。
(家にiPadとかあればあれで文字が書けるかもしれないのに…)
この家にそんなものは無い。どうやってもこの前足で文字を書ける気がしない。
「…」
ケンシロウは器用に食事ができないので、口の周りに料理がついてないか気になって、舌で舐めた。
まだ残っていないか気になって、前足の甲で顔を拭ったが、猫は前足の平で顔を洗っていたような気がしたので、平で顔を拭ってみた。
(気持ちがいい…)
なんと肉球とは滑々して気持ちがいいのだろう。
面白いので暫く顔を撫でてみた。
午後、ケンシロウは馬小屋へ歩いた。
馬小屋は母屋とは大分離れているのでまだ慣れない身では歩くのが大変なのであるが、
やはり動物の事は動物というか、こういう状況になるとペットと話が通じるようになるというのは漫画の定番であるし、
話が通じなくても黒王ならなんとか自分を認識してくれないだろうかとケンシロウは考えたのだ。
やはり自分が自分と認識されないのは辛い。
しかし、何故俺が虎などになっているのだろう。
酔っ払って泥酔することを大虎というが、正にその通りになっているわけだ。
ケンシロウは、高校の国語の授業に出てきた『山月記』を思い出した。
李リョウとかいう奴が「峻険な性が原因で」「虎になる」話だった。しかし自分は別に峻険な性の持ち主ではない。
性格が原因で虎になるならジャギやラオウの方が相応しいだろう、と思った。
そんな事を考えている内に小屋に着いた。
小屋の扉を開けると、黒王と目が合った。
一瞬黒王は不思議そうな目をしたが、すぐに普段ケンシロウを見ているような目つきになった。
どうやらケンシロウをケンシロウと認識したらしかった。
そこでケンシロウは会話を試みてみたが、やはり会話は通じなかった。
やはり漫画のようにはいかないか、と少し落胆したが、認識されたのは嬉しかったので、暫く其処に留まっていた。
夕方頃ラオウがやってきた。
「む…?何故貴様がこんな所にいる」
292:ケンシロウが虎化する話7/10
11/05/02 22:36:45.47 0yIox2aS0
ラオウのケンシロウへの態度を見て、黒王は訝しげな様子だった。
自分は虎をケンシロウだと認識しているのに、当の主人が認識してないのだからそれは訝しがるだろう。
「…トキがうぬを探しておった。早く帰れ」
確かに帰るべき時かもしれない。自分を認識しないラオウと一緒に居るのは辛い。
自分をケンシロウと認識しないラオウはただの横暴な男にすぎないからだ。
いや、自分をケンシロウと認識してもそれはそれでラオウが横暴な兄であることには違いない。
しかし認識されているのとされていないのとでは大違いだ。
「…」
またあの距離を歩くのか、とケンシロウは思う。慣れない体であの距離をまた歩くのは辛い。
しかし嘆いても仕方が無いので、扉を開けて小屋を出た。すると、
「ぬ…どうした…黒王」
黒王が後からついてきた。
黒王はケンシロウの脇に立つと、踞んだ。乗れ、という事なのだろうか。
普段黒王は人を乗せるために踞むことなどありえない。いつも人が飛び乗る形になる。
それを自分の為と誤解したラオウが黒王に跨ろうとしたのでそれを黒王は蹴り飛ばした。
とりあえずケンシロウは黒王の上に乗った。馬の背中に虎が乗るとは随分変な状態である。そのまま黒王は母屋まで乗せて行ってくれた。
面白くないのはラオウである。自分とケンシロウにしか背を許さない筈の黒王が何故トキの飼い虎なぞを乗せるのか、理不尽である。
一週間が過ぎた。
ケンシロウは未だ虎のままである。
ラオウが部屋でゲームをしていると、誰かが部屋を開ける気配がした。ケンシロウか、と思う。
ジャギはまずラオウの部屋を開けないし、トキは必ずノックをする。ケンシロウも大抵はノックをするのだが、しない事もある。
だからケンシロウかと思った。
虎だった。
「…」
最近ずっとこうである。ケンシロウか、と期待して、虎であったということの繰り返しである。
虎を無視していると、寝台の上に勝手に飛び乗ってきた。
ケンシロウも時々同じような事をしていたが、虎にされると腹立たしい。ゲームを中断して虎に向き合った。
以前虎を殺そうとしたらトキに止められた事があるので、殺す事はしない。
虎が何か物言いたそうではあるが、生憎ラオウには虎の心情などわかりはしない。
「ケンシロウ…」
293:ケンシロウが虎化する話8/10
11/05/02 22:37:33.85 0yIox2aS0
ラオウはふとケンシロウの事を思い出して少し寂しくなった。ケンシロウの行方は杳として知れない。
ケンシロウの知人が家を訪ねてきたりしたが、誰一人ケンシロウの行方を知る者はいなかった。
とりあえずケンシロウの友人のレイに八つ当たりしてみた。
更にジャギに八つ当たりしてみたが、それで気が晴れる訳でもない。ケンシロウが出てくる訳でもない。ラオウは孤独を感じていた。
勿論ラオウにとって友と呼べるものは黒王とトキだけだが、やはりケンシロウの有無というのはラオウの日常を大きく左右する。
ラオウにとってケンシロウは友ではないが、やはり弟であり、言うなれば天である。
寂しさ故にラオウは虎を思わず抱き締め、「ケン…」と呟き、力を込めた。
虎が暴れだしたので、ラオウは虎を解放した。この程度で不満を訴えるとは、軟弱な虎である。
ケンシロウならもっと強く抱き締めても大丈夫であるのに。
それにしてもこの虎の振る舞いは腹立たしい。ケンシロウの椅子に座って食事をし、ケンシロウの寝床で寝る。
まるで自分がケンシロウそのものであるかのように振る舞う。実に腹立たしい。
ケンシロウはラオウが何度か自分の名を呟く時、自分に気づいてくれたか?と期待するが、その度に失望する。
「蘭姉ちゃんじゃないんだから…早く気付けよ…」と苛立つ。
確かにラオウは人(動物)の心情については鈍感な所もあるし、無理ないか、と半ば諦めもしている。
それにしても、普段自分を抱き締めるのと同じ強さで今の自分を抱き締めるのはそれはちょっと無いのではないか。
今の自分は普段の自分と比べればそれ程丈夫では無い。やはりラオウは配慮が無いな、と思う。
配慮が無いと言えば、昨日ケンシロウが寝床の上で猫のように丸くなっていた時、ラオウが部屋に勝手に入ってきたかと思うと、
机の上の携帯を勝手に取り上げた。ケンシロウは抵抗したが、メールを見られてしまった。あれは酷い。
大体未読メールを勝手に見てしまえば、メールが既読になってしまうので、
誰かが勝手に見た事がばれてしまうではないか。ラオウはそんな事も知らないのか、気にしないのか。
弟の物は自分の物だと思っているのか。ラオウはいつも横暴だ。
ケンシロウは、自分がこうなった事について、心当たりが無い訳ではないが、
294:ケンシロウが虎化する話9/10
11/05/02 22:39:56.04 0yIox2aS0
「いくらなんでも…無いよな…」とその考えが浮かぶ度に否定した。まさか人間を虎に変える秘孔などある訳がないではないか。
師父から久しぶりに電話があった。ジャギが先ず電話を取った。
「…親父?」
師父は今週の「まどか☆マギカ」を録画し損ねたので、代わりに一日遅れの地域である我が家で録画してほしいという。この親父は久しぶりに電話をしてきたら、それか、とジャギは思った。呆れていたらトキが電話を代わって欲しいと頼んできた。
「あーもしもし、師父?通販で虎とか買いませんでした?…あーそうですか、わかりました、それじゃ」
「…なんだって?」
「買ってないらしい」
「じゃあこの虎は何なんだよ!」
「私に考えがある」
トキは電話を掛けた。
「もしもし…アミバ?」
「お前が俺を家に呼ぶとは珍しいなあ、何の用だ」
「お前、この前ケンシロウに変な秘孔を突いていただろう」
「変な秘孔では無い、悪酔いを覚まし、気分を良くする秘孔だ」
「ならその逆の秘孔も知っているだろう」
「酔いを悪化させる秘孔か?勿論この天才は既に究明している」
「この虎にその秘孔を突いてくれないか」
「ふぉ~う、この虎は酔っているのか?」
「…そういう訳ではないが…突いてくれないか?」
「よかろう。虎と言えど秘孔は人間と同じ…ふんっ!!」
アミバが秘孔を突くと同時に虎はぬた打ち回って苦しみ出した。
「ん~?間違ったかな~?」
「…間違っていたら私がお前に償いをさせてやる」
そんな事を言っている間に虎は見る見る変化して、見慣れた人物になった。
「…懐かしいなあ、ケンシロウ」
ケンシロウは指を鳴らして、秘孔を突いた。
「残悔積歩拳!!」
「うわらば!!」
「…まああの虎がケンシロウではないかとは思っていたのだが」
295:ケンシロウが虎化する話10/10
11/05/02 22:44:15.90 0yIox2aS0
「…兄さん、いや、トキ、ならどうしてもっと早くアミバを呼んでくれなかったのだ」
「私もまさか人間が虎になるとは思わなかったし…虎がバターになるのは知っていたが」
「それは絵本の話だろ」
「いや、兄さん…ラオウがいつ気付くかなと思っていたが、全く気付く気配が無く…それでな…」トキとケンシロウは傍に居たラオウを見やった。
「…ふん、とうに見抜いておったわ」嘘つけ、と二人は内心同時に思ったが、それを指摘してもラオウは自分の非を認めないと思うので止めておいた。
「それよりケンシロウ、早く服をきたらどうだ」今のケンシロウはメロスよろしく素裸であったからだ。
部屋に戻って服を着たケンシロウは暫くメールのチェックなどして、友人たちにメールの返信などして自由な身分を満喫した。
その後、ジャギの部屋に行って先週と今週のジャンプを読ませてもらった後、馬小屋に行って黒王に挨拶した。黒王は一瞬驚いたような目付きをしたが、またいつもの黒王に戻った。
虎だった間よくしてくれた事の礼に黒王の世話をして家に戻ると、夕食の時間だったので、久しぶりに箸とスプーンで食事をした。感動的だった。その後久々に自由に風呂に入り、寝ようかと思ったが、その前にラオウの部屋に行った。
ノックをした後返事も聞かず部屋に入った。やはりゲームをしていた。
「ラオウ…」
「ふ…見抜いておったわ…」
いやそれはいいから、と思う間もなくいきなり壁に叩きつけられ、痛い、と思う間もなく口づけされた。
「んぐ…」
暫くそうされていた後、解放されて一息つく。
「…部屋ではできん」
「どうでもよかろう」
「よくない」
確かに一週間以上できなかったのだから、ラオウは今すぐにでもしたい心持なのだろうが、ジャギもトキもいるこの母屋ではしたくない。それは譲れない。
「黒王の所で…」
一々情事の度に小屋を出て行かされる黒王は迷惑だろうとは思うが、仕方が無い。
「どうだってよかろう」
「よくはない。…大体、虎になっている間、ラオウより黒王の方が余程俺に優しかったぞ」
「黒王の方がうぬに優しいのはいつもの事ではないか。俺はうぬに優しくする必要性が無い」
「開き直るな」
結局その後は喧嘩になって部屋の壁が崩壊し、隣の部屋に居たジャギに甚大な被害が出た。
□ STOP ピッ ◇⊂(*´ω`*)
296:風と木の名無しさん
11/05/02 23:23:00.78 gG7Ou6f4O
>>295
おもしろかったー!
四兄弟+師父のアットホームさに萌えましたw
あと黒王が素敵w
297:風と木の名無しさん
11/05/04 17:00:26.89 bi7Lc1nG0
>>295
ほのぼのした。なんかこうゆるーい感じとネタが好き
間抜け可愛い兄弟w
298:風と木の名無しさん
11/05/04 22:41:34.21 bmIr9IcS0
>>295
またお前かwいろんな意味でGJすぎるwww
299:風と木の名無しさん
11/05/05 01:16:12.70 CF9CmpE5O
>>295
こんなにムチャクチャなのにちゃんとあの絵と声が浮かんで来てしまう
それが余計可笑しい
楽しませていただきました
300:風と木の名無しさん
11/05/07 23:55:55.68 MsUCrKiD0
某CMの上司と部下
部下視点です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
301:某CMの上司と部下(1/3)
11/05/08 00:00:39.95 MsUCrKiD0
ここ数日、毎日昼時になると俺はとある机に向かう。
一昨日
「おう、暑いからな」
そう言って豪快に冷やし中華にがっついて
タレをシャツにはねさせてしまい、
女子社員に世話を焼かれていた。
…女子社員A、顔近いよもう少し離れなさいって。
302:某CMの上司と部下(2/3)
11/05/08 00:02:59.91 3te0Zvgc0
昨日
「時間ないからな、」
そう言って幾分残念そうな表情でおにぎりのビニールをひっぱる。
…残念だからって唇を尖らせるのは反則。ダメ。ゼッタイ。
そのおにぎりになりたいとか素で思った自分がいた。
303:某CMの上司と部下(3/3)
11/05/08 00:05:39.03 3te0Zvgc0
そして今日。
「だいすきだよ…!!」
俺の発言にかぶせ気味になるくらいの勢いで主張された。
その渾身の情熱をコロッケに注がれてしまったのが非常に残念ではあるが
視線はこっちだったのだから良いとしよう。
…ICレコーダーで撮っておけばよかった。
本当は「一緒に食べましょうよ」と誘いたいが
なかなかきっかけが掴めない。
明日こそは頑張ってみよう。
304:風と木の名無しさん
11/05/08 00:07:43.56 MsUCrKiD0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
何故か長すぎエラーが出たのでこれでもかという位短くして
投下してしまいました、すみません。
あの上司役の方の口調がめたらやったら可愛くて萌えました。
ひとりよがりでお目汚しでした。
305:風と木の名無しさん
11/05/08 00:31:54.60 3Ca718o60
オリジナル投下させてください。新米兵士と先輩兵士で
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
306:風と木の名無しさん
11/05/08 00:38:05.84 3Ca718o60
ごめんなさい
何かエラーでまくったのでやめます。。
307:風と木の名無しさん
11/05/08 01:18:19.72 oABkoxfdO
>304
あのCM見て以来のモヤモヤが解消されたーw
ありがとう!
308:風と木の名無しさん
11/05/08 06:13:45.40 oE1R/5m0O
>>304
GJ。
貴方と一緒にランチ食べたい・正直貴方も食べたい部下、ガンバレ。
短くした結果のその簡潔さが、かえって良い味にもなっとる感じがした
309:風と木の名無しさん
11/05/08 12:31:19.21 HV6xq+tl0
>>304
あの上司と部下は何かあると思ってたんだよ!
CMのようなスピーディーな展開でGJでした!
310:風と木の名無しさん
11/05/08 14:39:29.33 c4UL/3210
>>304
say-you!!!
部下可愛いし上司も可愛いよ!
いつかまるっと食べられる日がくるといいねえ部下
311:風と木の名無しさん
11/05/09 01:22:51.21 SorWnE8sO
>>304
うおおおお、貴女のおかげで新しい萌えが見出だせた…!!
今度からあのCM見る度にニヤついてしまいそうだww
GJでした!
312:風と木の名無しさん
11/05/10 16:44:44.70 arL/DY/Q0
番ガードからモブにナンパされてるところに櫂と三和が通りかかるイメージ
ベタだけど漫画1巻の対ミサキ戦での正義の味方参上!的二人の登場シーンが忘れられなくて
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
313:ナンパ1/3
11/05/10 16:45:30.23 arL/DY/Q0
小さい頃から妹のエミと並ぶたびに「よく似た可愛い兄妹ね」と言われることが度々あった。
時には姉妹と間違えられることもあってその度お母さんが苦笑しながら訂正していたのを覚えている。
小学生の時にいじめらた時も「女みてー」と言われた事があって何となく自分の顔が男らしくないのかなとは自覚していた。
でもさすがにスカートを履いているわけでもないのに女の子に間違えられたのは初めての経験だった。
「君暇してるの?一緒にどっかいかない」
「ここらへんに住んでるの?可愛いね」
公園の噴水の横にぼんやり座っていたところにいきなり知らない二人の男に話しかけられて、
アイチは唐突にイメージの世界から引き戻されびっくりして目を瞬かせた。
「あの、えっと…?」
「あ、びっくりさせてごめんね。俺たち怪しい奴じゃないから」
「そーそー、暇でぶらぶらしてたところに可愛い子がいたから一緒に遊ぼうと思って」
いや十分怪しいんですけど…ひょっとしてこの人達、僕を女の子だと勘違いしてるのかな…
鈍いアイチにもさすがに今の状況が何となく飲み込めた。
今日は多少暖かかったのでいつもの上着を着ずに、タートルネックのシャツとズボンだけだったので
確かに見ようによっては女の子の服装に見えないこともないかもしれない。
それにしても服装だけでそんなに女の子に見えるのかな…
内心密かに落ち込みながらアイチは立ち上がった。
「ご、ごめんなさい、今から行くところがあって。それに僕男なので…」
自分で性別を名乗らなければいけない情け無さと相手の勘違いを指摘する気まずさで
俯いたままぼそぼそとそう言いその場から去ろうとしたアイチの足は、しかし前に立ちはだかった男のせいで再び止まった。
「またまたー冗談ばっかり」
「そんなこと言わないで、ちょっとカラオケに付き合ってくれるだけでいいからさー」
二人の男に囲まれると中3にしては小柄なアイチの体では二人を見上げる格好になってしまい覚えずアイチの足がすくむ。
足を止めたアイチに気をよくしたのか、男の一人がアイチの肩に手を回した。
314:ナンパ2/3
11/05/10 16:46:28.24 arL/DY/Q0
「おごるから一緒にいこ…「おい、ちょっとまて」「ちょーっとまった!」
聞き慣れた声とともにアイチの肩の上の手が消え、強い力で後ろに引っ張られる。
たたらを踏んで新たに現れた人物の後ろに回されたアイチは振り返ってぱっと顔を輝かせた。
「櫂くん!三和くん!」
アイチの声に三和がちょっと振り返って「正義の味方参上、なんてね」とささやいてウインクし
櫂は振り向くわりに引っ張ったアイチの手に少し力を込める。
「こいつは俺たちの連れなんだがどこに連れていくつもりだ」
眼光鋭い櫂の視線に男達は一瞬ひるんだが、櫂達の明らかに高校生と思われる制服を見て
与し易しと思ったのか多少引きつった笑みを浮かべた。
「おいおい、俺たちはちょっとその子と遊ぼうと思っただけじゃねーか」
「ちょっとカラオケ行って食事おごってやろうという大人の親切心だぜ」
再びアイチに手を伸ばそうとした男に、櫂は更に険しい顔になって一歩前に踏み出す。
その時一触即発の空気に割り込むかのように、三和が大きな声で男達に声をかけた。
「あーお兄さん達に言っとくけど、もうさっき警察に電話したから、『公園で小さな女の子を男の人達が
無理やり連れ去ろうとしてます』ってね。
もうそろそろおまわりさんが来るんじゃないかな、あ、来たかも、おまわりさーん!こっちこっち!!」
大声で公園の入口に向かって叫んだ三和に二人はぎょっとした顔になった。
さすがに警察が来てこの状況を見れば男達が不利になるのは明らかである。
覚えてろとかクソガキがとか小さく呟いて足早に去っていく二人の後ろ姿を睨みつけた櫂と、
誰が覚えてやるかと舌を出した三和は、男達の姿が視界の向こうに消え去ったのを確認してアイチを振り返った。
「ごめんねっ!櫂くん三和くん」
「別に」「悪いのはあいつらなんだからアイチは気にするなって」
三和がアイチの頭を抱え込んでわしゃわしゃと多少乱暴に頭を撫でられて
二人を巻き込んでしまったと青くなってこわばっていたアイチの顔にもやっと少し色が戻る。
「あ、警察の人は…」
「そんなのくるわけないだろ、はったりだよはったり。ああ言えば一番穏便に退散してくれると思ってさ。」
アイチの頭を撫でながらいたずらっぽい笑みを浮かべた三和に思わずアイチもつられて顔がほころぶ。
315:ナンパ3/3
11/05/10 16:47:29.93 arL/DY/Q0
いつもカードキャピタルに集まる面子の中でも、三和は一番頼りにされているムードメーカーのような存在だ。
それは一歳年上だからとか言うことではなく、いつも陽気で笑っていて、そのくせカードキャピタルで
誰が悩んでいたり落ち込んでいたりしていると「なーに考え事してんだ?」とさりげなく声をかけたりするところが
皆から好かれているのだと思う。
そんな彼に「もう大丈夫だぞ」と頭をなでられると、いじめられていた昔のように冷たく
氷を飲んだように萎縮していた気持ちが軽くなっていくのを感じた。
アイチの顔色が戻ったのを確認した三和の腕からやっと開放されると、櫂がポケットに手を突っ込んだままアイチに声をかけた。
「あいつらに何もされなかったか」
まだ若干険しさが残った視線で上から下まで見られ、アイチは慌てて首を縦に振る。
「う、うん何もされてないよ。」
「…ならいい」
視線から鋭さが消え、一瞬櫂にしては珍しく優しいと言っていい視線に見つめられアイチは思わず赤面した。
アイチが小さい頃、どんなにいじめられても、学校に行くのが苦しくても手を差し伸べてくれる者など周囲に誰もいなかった。
そんな時唯一ブラスターブレードという手を差し伸べてくれた人もすぐにアイチの前から去ってしまい
それからは彼の残したカードだけを支えにして、苦しく色のない学校生活に耐えてきた。
帰ってきた櫂は4年前とは一見ずいぶん変わっていて、あまりにそっけない態度に
時々不安に思うこともなくはないけれど、でもこんな時は昔と変わらない優しさを感じる。
「ありがとう…櫂くん、三和くん、なんか」
なんか二人とも表に出る形は違うけれどもどちらもとても優しくて、まるで
「うん?」「…?」
「なんか櫂くんと三和くんってまるでお兄ちゃんみたいだなって」
赤面してそう言ったアイチは、眉をしかめて何とも言えない微妙な表情になった櫂と
その横で爆笑する三和にきょとんとする羽目になった。
316:風と木の名無しさん
11/05/10 16:47:51.57 arL/DY/Q0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ベッタベタネタでサーセン
317:風と木の名無しさん
11/05/10 22:31:19.58 cDIOgOqY0
>>316
いいイメージだ!
318:兎→虎 1/5 ◆dU4hlANcIg
11/05/11 01:24:20.82 LGvdFgyG0
虎&兎の兎→虎です。
うちの虎さんは枕とは無縁の純粋なおじさんです。
まだ何もはじまっていない二人です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
あのおじさんは無意識に無自覚に、ちょっと普通じゃない。
なのに、まったくわかっていない。
自分がどう思われてるかなんて一切気にしないみたいだ。
今までどうやって生きてきたんだろう。
僕が居なかったらこの人、どうなっちゃうんだろう。
「ばーか!相棒残して一人で逃げるほど落ちぶれちゃいねぇよ」
足手まといになるくらいなら居ない方がマシだと思ったのに。
人を勝手に相棒呼ばわりして、あの人は爆弾を持った僕の傍を離れなかった。
僕たちはヒーロー初のコンビという事で話題になるよう仕向けられたビジネス上の関係だ。
だけど会社からはなるべく一緒に居るように言われている。
だからか、彼はトレーニングもしないのにトレーニングルームに来て、
僕が走っているランニングマシーンの隣で寝転がりながらどうでもいい話をしてくる。
一応相手にするけど、くだらなすぎて適当にあしらっている。
するとほどなくしてスースー寝息が聞こえてくる。
見れば、今敵が来たら完全に終わりだと断言できるくらい無防備にだらしなく寝ている。
邪魔されるくらいなら寝ていてくれてた方がいいから放っておくけれど、お腹くらいは隠してほしい。
319:兎→虎 2/5 ◆dU4hlANcIg
11/05/11 01:25:15.05 LGvdFgyG0
僕たちは友達でもなんでもない。
「バニーちゃん、飯食ったのか?」
なんてプライベートな心配までされても困る。おまけに変なあだ名までつけて。
必要以上の干渉はやめてほしい。お節介なんですよ。
能力は僕とまったく同じなのに、性格は正反対と言っていい。
彼は要領が悪くて計算もしない。
その上発言がおかしいし、考え無しに動くし、出会った時なんかあと少しで死んでいた。
「俺たちこう見えて似た者同士なんですよ」
用意されたセリフを大げさに読み上げる彼を、トレーニングに没頭するフリをして見ていた。
一緒にしないでほしい。僕はあんなに無防備じゃない。
僕が彼のような人間と組んでなんのメリットがあるんだろう。
逆効果にしか思えない。僕は彼と居るとどうもペースが狂ってしまう。
自分の事だけ考えていたいのに、彼があまりにも勝手過ぎてつい目で追ってしまう。
デメリットな部分ばかり見えるからついイライラする。
イライラさせられる事にもイライラして、
つまらない言いあいに乗ってしまって時間を無駄にしたりする。
僕らしくない。
本当はすぐにでも切り捨てたい所だけど、会社の言う事には従うつもりだ。仕事ですから。
僕にはこの仕事を続ける目的がある。なるべく多くの人に名前や顔を見せる必要がある。
そのためにはもっと上に行かなければならない。
彼が勝手に堕ちていくだけならいいけど、このままでは組まされた僕まで共倒れだ。
余計な心配事は増える一方だし、携帯を開けばおじさんの変な顔の待ち受けになってるし。
なんだこれ。なんだこれ。
320:兎→虎 3/5 ◆dU4hlANcIg
11/05/11 01:26:20.01 LGvdFgyG0
ずっとどうしようか考えてたけど、やっぱり電話するしかない。
別に明日でもいけど、何度か見ているうちに無性に腹が立ってきた。
こんなくだらない事で僕の時間を奪ったこと、一生忘れません、と言うつもりでかけたのに。
「変な奴に襲われてるんだ!」
ああほらまた。
だからおじさんは、なんでいつもそうなんですか。
なんだろう、胸がモヤモヤする。
どうせ嘘だろう。この間も結局くだらないバースデーサプライズとかだったし…
後からブルーローズに聞いたけど、「プレゼントは俺」とか言ってたそうじゃないですか。
考えられない。どこのおじさんがそんな事を言うんですか。
どういうつもりで言ってるんですか。
僕が喜ぶとでも思ったんですか?思ったなら、何故そう思ったのか聞きたい。
まぁどうせ、あなたの事だから何も考えてないんでしょうけど。
やってられない。
で?まさか本当に襲われてるんじゃないだろうな…。
「お前、そういうの疲れない?」
出会って二週間の時にそんな風に言われた。
「べつに。全て仕事ですから。」
呆れたような顔をしていた。
呆れているのはこっちだ。
何も考えずに済むおじさんは疲れも無くていいでしょうね。
彼は思った事が口にも顔にも出る。
よく言えば、裏表の無い人間。
悪く言えば、ただの脳の無い人間。
そんな事だから敵を逃がすし、チャンスも掴まない。要するに甘い。
疲れる?僕が何年こうして生きてきたと思っているんですか?
あなたが僕の一体何を知っているんですか?
何も知らないはずだ。
321:兎→虎 4/5 ◆dU4hlANcIg
11/05/11 01:27:15.66 LGvdFgyG0
僕は大概の事は笑って済ませられる。
楽だし、だいいち他人に興味が無い。
他人の言動で心を動かす事など、有り得ない。
それなのに。
彼の前では何故かそれができない。
結局本当に襲われてたし、何故かファイヤーエンブレムと一緒に居るし、
「さっきは添い寝してあげるって言ってたじゃないか」
ほら。笑って済ませるなんて、全然できない。
おじさん。その人は「そういう」人だと思うんですけど。
「そういう」人が添い寝って言ったら、あなたどうなっちゃうかわかってるんですか?
なんで僕がおじさんの心配までしなくちゃいけないんですか。
勝手に人の時間を潰しておいて、何もわかってない。
そんなに危なっかしいなら、ずっと僕の傍にでもいればいいじゃないですか。
…いられても困るけど。
なんで一人でデビューさせてくれなかったんだろう。
僕は今までずっと一人で生きてきたのに。
今だって一人だ。
そして、これからも、一人なんだ。
なんで僕の前に現れたのがおじさんだったんだろう。
この人じゃなければこんな余計な事考えなくて済んだのに。
放っておいたらどこへ行って何を壊すかわからない、
勝手に飛び出して、すぐに僕の傍から離れていく。
こんな人とはもうやっていけない。
322:兎→虎 5/5 ◆dU4hlANcIg
11/05/11 01:28:10.72 LGvdFgyG0
「…ああもう、面倒臭い。」
「どうしたバニー?」
「別に!あなたに言ったってどうにもなりません。」
「ほんっとにお前かわいくないなぁ!…うさぎのくせに」
「…は?」
言わせておけばいい、こんな他愛もない事。
なのに、なんでだろう。こんなにも心がざわつく。
腹が立って腹が立ってしょうがない。
「だいたいあなたは詰めが甘いんですよ全てにおいて!」
「な、なんでそんなに怒ってんだぁ?いきなり。」
驚いたような、悔しいような顔をするおじさんに真顔で近付くと、途端に弱々しい態度になる。
これがいけない。
こうやってすぐ顔に出る所が、おじさんの悪い所だ。
座ってヘラヘラしていたおじさんを上から見下ろせば、泣きそうな顔をする。
ワイルドタイガー?これじゃ、耳を伏せて怯える猫だ。
「…失礼します!ここに居ても時間の無駄みたいなので。」
「あ、おいバニー!バニーちゃ~ん?」
何もわかってない。
最近、バニーって言われたら普通に振り向いてる自分に気づく。
僕はバニーじゃない。バーナビーだ!
本当に腹が立つ。
携帯を開けばまたあのおじさんの変な顔が現れた。
ああ、腹が立つ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
323:風と木の名無しさん
11/05/11 05:57:37.52 1+1YjS5V0
ツンデレ可愛いなぁ。GJ!!
324:風と木の名無しさん
11/05/11 13:41:58.32 prLGuGra0
読めて嬉しいなあ
ありがとう!
325:風と木の名無しさん
11/05/11 14:07:19.63 VmN8x1l90
兎さんかわいいなあGJ
実はこれが虎と兎で二次初読みなんだけど
兎さん一人称視点の場合は「俺」だと思ってたw
326:蛙軍曹 緑黄緑 1/2
11/05/11 14:51:30.07 ndOWdVdxO
蛙軍曹の黄緑前提の緑黄です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
日向家、ケロロの自室。ベッドの上に、黄色と緑。
何をするでもなくだらだらと時間を過ごしていた。
不意に、緑―ケロロが、眺めていた雑誌をベッドの下に放り出した。ちらりと横を見やると、黄色、ことクルルも何がしかの作業を終えたのか、端末を閉じ、転送したところだった。
お互いに手が空き、ふと視線がかち合う。
先に行動を起こしたのはケロロだった。徐にクルルの肩に触れ、柔く押し倒していく。
布団に倒され組み敷かれる形になっても、クルルは動かない。
「……随分余裕でありますな」
「積極的なのは、まあ嫌いじゃあねぇからな」
「あのね、そりゃ普段受け身なのはこっちだけどさ、我が輩これでもオトコノコだしぃ、それにクルルよりもオトナでありますよ? 危機感とか無いわけ?」
くつくつと、常よりの不適な笑みを崩さないまま、クルルはケロロの首に腕を回し、引き寄せる。
「構わねえよ、隊長。……あんたの好きにしろ、全部」
耳元で囁かれた、確かな熱を持った言葉に舌打ちで返したケロロは、乱暴にクルルの眼鏡を剥ぎ取った。
327:蛙軍曹 緑黄緑 2/2
11/05/11 14:54:26.51 ndOWdVdxO
・・・
その後、乱れたベッドの上、眠りこけるケロロに背を向けたクルルは頭を抱えていた。
正直、甘く見ていたのだ。ケロロがそこそこに場慣れしているのは分かっている。しかし、自分もそれなりだという自負もあり、ある程度高を括っていたのである。
結果、玉砕。
最初のうちの余裕など早々に取り払われ散々に翻弄されつくし、挙げ句の果てに軽く記憶と意識を飛ばした。
目が覚めたばかりの頭、それでもおぼろげに浮かぶ己の醜態に、人知れず悶絶する事となった。
―このオッサン、どこまで読めねえんだ……!
クルルは能天気に眠るケロロを忌々しげに睨みつけ、布団にもぐり込む。
ベッドのぎりぎりまでケロロを押しやり、もう一度眠りについた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
とにかく黄色と緑が好き。
どっちが上でもいいからワンセットで!
328:風と木の名無しさん
11/05/11 20:46:33.83 /mXCTt2B0
>>327
黄緑リバktkr!
普段は攻めの黄色が気まぐれで受けに回ってみたら予想外に凄かったでござるの巻きw
面白かったーGJ!
329:風と木の名無しさん
11/05/12 05:59:53.17 5jdZbo1M0
>>326
萌えた!!!緑黄リバ凄くいい…!
緑に翻弄されちゃう黄に萌えました!
姐さん有難う御座いました!
330:風と木の名無しさん
11/05/12 11:49:04.56 urNMOA/aO
>>304
うわあああ萌えてたのわたしだけじゃなかったあああ
若干遅レスだけど姐さんありがとうまじありがとう
ぜひ長いver.も読みたい!
331:神メモ(四代目×ナルミ) 1/4
11/05/17 10:03:16.24 VGOiKB+JO
神様のメモ帳 四代目×ナルミです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
以前、雇い主である幼い少女は
ナルミは四代目の眼を直視できる数少ない人間だと称した。
特に意図的にそうしていたわけではないのだけれど
四代目の眼を見ること自体に抵抗はなかった。
……別に、眼を逸らしたら野犬よろしく
襲いかかられそうだと思っているわけではない。
今日も今日とて、平坂組事務所に呼び出されナルミは、そんなことをぼんやりと考えながら
組員曰く「急に画面が青くなったっス!」状態なパソコンの復帰に努めていた。
「直るか」
「直りますよ。ついでに、またアップデートしときますね」
「ああ」
どうしてこんな単純なことが、これだけ人数のいる
平坂組の誰もが出来ないのだろうと、思いはしたが口には出さなかった。
それくらいの分別はある。
「園芸部。全部口に出てるからな」
「は!」
呆れ果てたような四代目の言葉に慌てて振り返れば、
いつもの狼の眼が眇められている。
怒っていると言うよりは、やはりその声色通り呆れているのだろう。
すみません、と謝るのも憚られるし
とりあえず、誤魔化すようにへらりと笑ってみると、四代目が片眉を器用に上げる。
そういう仕草が様になると、何とはなしに眺めていると
四代目も負けじと食い入るように見つめてくる。
元より互いに口数が多い方ではないが、こうして無言の中
ただ互いに見つめ合うのもおかしな話だ。
まさか四代目こそ、眼を先に逸らした方が負けなどと
野生の狼のようなことを考えているわけでもないだろうに。
「……どうしたんですか?」
332:神メモ(四代目×ナルミ) 2/4
11/05/17 10:07:26.51 VGOiKB+JO
流石に訝しく思い、そう訊ねるも返事はない。
その視線だけは逸らさずに、四代目が立ち上がりゆっくりと歩み寄ってくる。
その眼を見つめ続けている以上
自然、仰向けてしまう首が疲れるな、などと思っていると
ちょうど目の前で立ち止まった四代目が身を屈める。
やはり視線は、逸らさない。
徐々に近くなる狼の双眸に焦点が合わなくなる。途端。
「……」
何か柔らかくて、少しかさついたものが、自分の口に押しつけられた感触。
それを計りかねて、ただ目を瞬かせていると、僅かばかり距離を取られたおかげで
ほんの少しだけ見えるようになった四代目が、覿面に顔を顰めているのが分かった。
「……目くらい瞑れねえのか」
不機嫌そうな表情で、不機嫌そうにそう呟かれ、反射的にぎゅっと目を瞑る。
「…………」
思わずそうしてしまってから気づく。
おかしくないか。
その前に、今、自分は、何をされた?
「いや、ちょ……!」
再び目を開き、抗議のために口まで開けたのが悪かった。
「……っ!」
間抜けにも開きっぱなしだった口唇は、同じように開いた四代目の口唇に
発しようとしたその言葉ごと食らわれる。
狼に噛まれた。
口づけなんて、そんなロマンチックなものじゃない。
これは捕食だ。
がぶり、がぶりと角度を変えて、
食い散らかすそれは、まさに狼そのもの。
あまりのことに、抵抗すら忘れた。
333:神メモ(四代目×ナルミ) 3/4
11/05/17 10:10:35.38 VGOiKB+JO
それが、どれほど長い時間だったのか
或いは一瞬のことだったのか、判然としない。
気づけば狼は食事を止め、いつもの通りの泰然とした様子で、こちらを眺めている。
「―おい、園芸部」
声をかけられ、不自然なほどに体が跳ねた。
そうして一瞬後、一気に体が熱くなる。
絶対にあり得ないと脳が理解を拒否しようとするが
口唇に残る感触と、口腔に残る自分以外の唾液の味がそれを許さない。
熱い。頭も、顔も。
きっと今、自分の顔は、幼くも聡明な探偵が愛する
あの毒々しい飲み物の容器のような色をしているに違いない。
「し……しつれい、します!」
椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がり、部屋を飛び出る。
「あれ?兄貴、もうお帰りで?」
「お疲れっした!」
後ろも見ずに事務所を飛び出す途中、電柱たちに
暢気な声をかけられたような気もするが
それに応える余裕などあるはずもない。
ただただ、その場から逃げて
そして、慣れ親しんだあの場所に帰ることだけで頭がいっぱいだった。
「アリス!」
「な、なんだ!」
だから、そこに到着するなり
ノックなどという人としての礼儀などかなぐり捨てて扉を開け、部屋に飛び込んだのだ。
突然、飛び込んできた人物に
その部屋の主は長い黒髪を跳ねさせて弾かれたように振り返った。
主の驚愕に呼応するように、ベッドの上の
彼女の半身達が、数匹ころころと転がり落ちる。
「四代目が……っ」
「お、落ち着け、ナルミ!四代目がどうしたというんだい?」
334:神メモ(四代目×ナルミ) 4/4
11/05/17 10:12:15.63 VGOiKB+JO
「四代目が、僕にキ……」
「……き?」
そこまで口にして、はたと気づく。
たった今起こった、衝撃的且つ非現実的な事象を
この年端もいかない少女に話してどうするのか。
いくら混乱しているからとはいえ
そして、四代目の不可解な行為の謎を、一人では抱えきれないからとはいえ
流石にそれは、どうなんだ。
そう考えるだけの冷静さを取り戻した途端、
アリスに縋ろうとした自分の行動が、急に恥ずかしくなる。
「……いや、何でもない。何でもなかった」
「待て、ナルミ!どう考えても今のは何でもなくはないだろう!」
「いや、本当に何でもないんだ!」
「今のきみはさながら、餓狼の牙より這々の体で逃げ出した
哀れなヘラジカの如き有様だぞ!」
「な、なんでそれを?!」
「そうなのか?!」
しまったと思うが、それでもやはり言えない。
言えば或いは、アリスのその明晰な頭脳によって
何らかの回答を得られるかもしれないと分かっていても。
どうして言えるだろうか。
まさしく狼の牙の餌食になったなんて。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナルミ視点の為、四代目が物凄く手慣れて冷静なように見えますが
ナルミが帰った後の四代目は、きっとジタバタしてるはず。
お目汚し失礼しました。
335:風と木の名無しさん
11/05/22 01:45:24.05 Ar29F4TfO
初投下失礼します。
半生注意。洋画「印背ぷしょん」古部?×亜ー差ー
夢の中でエロあり。改行おかしかったらすみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
336:良い夢か、悪夢か。1/7
11/05/22 01:47:23.80 Ar29F4TfO
古部は彼女に囚われている。その想いで俺達を危険に晒してしまうほどに。
夜中に何度か機械に繋がって眠っているのを目にしたが、きっと彼女に会いに行っているんだろう。
今でも彼女を深く愛しているのは、誰が見ても明らかだ。
そのせいで任務中に彼女の”影”が俺達の邪魔をする。彼女に傷付けられたこともある。
正直、古部は彼女を失って以来完璧に任務をこなせる状態にまで戻れていないのだ。
だが俺は、古部を咎めることができない。
もう二度と会えない人に会いたいと望むことを止める権利なんて誰にもない。
それに、どうやったら彼を立ち直らせられるかもわからない。
彼女の代わりなんているはずもない。
俺達のためにも、何より古部自身のためにも、なんとかこの状況を
変えなければならないのはわかっている。彼もそう感じていると思う。
だが結局誰も解決策など見つけられないまま、時間だけが過ぎていく。
そして俺が選んだのは、おそらく彼と同じ―いや、彼よりも利己的にすぎる答え。
「……情けないな、俺も」
そう自嘲し、俺は自分が使っているスペースに戻った。
身体を横たえられるサイズの長椅子に腰掛け、機械から伸びる
チューブを手首に繋ぐと間もなく鎮静剤が回ってくる。
やがて瞼が重くなり、深く長い夢の世界へと落ちていく。
そう、俺がどれだけ古部のせいで危険な目に遭っても何も言えずにいるのは。
「良い夢を……」
俺が彼に許されない感情を抱いているからだ。
337:良い夢か、悪夢か。2/7
11/05/22 01:48:46.76 Ar29F4TfO
■■■
俺の夢、俺の潜在意識。登場人物は、皆俺の意識の投影だ。
「亜ー差ー」
古部は柔らかな笑顔で俺を迎え入れる。こんなに穏やかな表情は、現実ではもう久しく見ていない。
常に何かに追われ、追い詰められ、出口の見えない迷路の中で苦しんでいる。
その苦しみから彼を解放してやれるのは俺じゃない。
「亜ー差ー、どうしたんだ?」
「あぁ…何でもない」
立ち尽くしていた俺は小さく笑顔を返し、古部に歩み寄った。
舞台は以前ミッションに使ったホテルの一室。
どこにでもあるような、だが現実には存在しない空間だ。
少し大きめのベッドが二つ並んでいて、その一方に古部が座っていた。
「おいで」
彼は立ち上がり俺を抱き寄せる。夢だとはいえ、姿形はもちろん声も仕種も
いつもつけている香水の匂いまで現実の古部と何ら変わらない。
寸分違わず再現できるほど、俺が彼に執着しているからだ。
その肩に顔を埋めて彼の匂いを感じながら腕を回す。
「……あぁ、古部…」
体温も感触もこんなにリアルなのに、これは現実じゃない。
それは空しいことだが、心のどこかで安心もしていた。
夢の中の出来事の証拠など何も残らない。例え何をしても、何をされても。
俺の呼び掛けに応じるように古部がゆっくりと俺をベッドに押し倒す。
お互いに相手の服を脱がせながら気持ちを昂らせていく。
そして彼は、いつも熱の籠った視線と共にこう囁く。
「愛してるよ……亜ー差ー」
それは俺が一番聞きたくて、絶対に聞きたくない言葉。
嬉しさと惨めさが入り混じって泣きそうになりながら俺は彼の身体に手を伸ばした。
338:良い夢か、悪夢か。3/7
11/05/22 01:52:22.51 Ar29F4TfO
古部の指や唇がゆっくりと俺の身体を這う。その動きや帯びた熱に翻弄される。
この世界の形を保てなくなりそうなほど古部の存在だけが心を占めていく。
「ぁ…っ!」
不意に古部が口に銜えた俺のモノを吸い上げ、上擦った声と共に身体が揺れた。
声を出してしまったことを恥じた俺は手の甲で口を押さえ、少し落ち着こうと大きく息を吐く。
だがそんな様子に気付き、古部はもっと強い刺激を与えるように動きを速めた。
深く銜え込まれたかと思うと、舌で先端の方ばかりを責め立てる。
その間も彼の手は俺の内腿を触れるか触れないかくらいの絶妙な加減で撫で回す。
くすぐったいような感覚に、ますます体温は上がっていく。
「ふ……!ぁ、う…っっ!」
「っは………亜ー差ー、どうして声を堪えるんだ?」
俺のモノを一旦解放し、顔を上げた古部が訊いてくる。口を塞いだ手を退けられ頬に彼の手が重ねられた。
「あ、まり…聞かれたくない…」
「どうして。いい声をしてるのに」
そう言って頬を撫でながら身を乗り出す。
俺は恥ずかしくて顔を背けたように装って彼からのキスを頬で受け止めた。
普通なら当たり前に行われるであろうことを拒むことでこれは現実じゃないと自分に言い聞かせるためだ。
それにキスなんて欲しくない。古部が俺にキスするはずがないからだ。
古部には愛する人がいる。いなくなってしまっても忘れられずに苦しんでいるくらい愛した人が。
そんな男が俺に愛を囁いたりなんてするはずがない。
だが、ここは夢だ。俺の夢。俺が作った世界。
共有していない限りここで何をしてるかは誰にもわからないんだから好きにすればいいのに、と井ー蒸なら言うだろう。
確かにその通りだ。だけど俺にはそれができない。
俺を好きになる古部なんて古部じゃない。俺が好きになったのはそんな人間じゃない。
古部が俺を好きになるなんてあり得ない。絶対にだ。
そう頭ではわかっている。だけど心はそうはいかなかった。
彼に触れてほしい。
彼に抱き締めてほしい。
彼と一緒にいたい。
彼を感じていたい。
彼が、欲しくて欲しくて堪らない。
339:良い夢か、悪夢か。4/7
11/05/22 01:55:04.00 Ar29F4TfO
だから俺はこうして夢の世界に逃げる。
あり得ない古部の虚像を作り上げて、どうにもならない劣情をそんな彼に抱かれることで消化しようとする。
バカみたいに手間をかけた自慰行為。嬉しくて、切なくて、空しくて、惨めな自己満足。
目が覚めた時に感じるのは押し潰されそうなほどの罪悪感と結局何も起こらなかったのだという落胆、そして少しの安堵。
感情が昂ったまま、時に泣きながら目を覚ます度に考える。俺がこんな行為から抜け出せる日は来るのだろうか、と。
あまりハマりすぎるとミッションに支障をきたしかねない。
それこそ古部のように―…
「ぅあっ…!!」
突然の刺激に思考が引き戻される。いつの間にか彼の指が俺の中に入ってきていた。
内側を探られる感覚に耐えられず、かろうじて身体に纏わりついていたシャツを噛んで声を殺そうとする。だがそれも無駄な抵抗だ。
「ん、う……っはぁ、あ…っ!」
彼の指は的確に弱い所を探り当てる。俺の意識の投影なんだから当然だ。俺がしてほしいと思うように彼は行動するのだ。
「っく……ぁ、あっ!?」
だが、さっきから俺が期待するのとは違うリズムでの刺激が続いている。
いつもなら時間をかけて徐々に身体を慣らしていくのだが、今日は少し急いているような気がする。
確かに、今日はあまり余裕がない中で潜っているから心のどこかで焦っているのかもしれない。
―ここにずっといられればいいのに。何も考えず、ただこうしていられたら―…
ふと考えて、自分の女々しさに嫌気がさした。こんな無意味なことに溺れてどうする。
だがこうしているとついそう考えてしまう。快楽に浸っているとそれ以外考えられなくなる。
「あ……んっ、はあ…っ」
掻き回される快感に滲んできた涙が目尻に溜まる。それを拭うように伸びてきた指に少し驚いて目を開けた。
「……?」
「亜ー差ー」
そこにはいつもと違って真剣な顔をした古部がいた。いつもなら穏やかに微笑んでいるだけなのに。
「俺を見ろ」
「え…」
「俺のことを考えろ」
こんなことを言われたことはない。言われるまでもなく彼のことしか考えていない。
「なに、を」
「俺はお前しか見てないのに」
「っ!?」
340:良い夢か、悪夢か。5/7
11/05/22 01:58:58.89 Ar29F4TfO
古部の顔をした彼は言う。古部が、俺のことを?
違う。彼は投影だ。俺がそうしてほしいと望んでいるから、その通りに話しているだけだ。
彼は違う。
「なぁ亜ー差ー」
これは彼じゃない。
「俺を見ろよ」
やめてくれ。もう何も言うな。
「亜ー差ー」
「…止めろ…」
「どうして」
これ以上俺を惑わすな。自惚れさせるな。これは夢だ。そうわかっていても、心が期待してしまう。だから。
「止めてくれ。頼むから…」
「それはできない」
そう言って彼が顔を近づけてくる。さっきと同じように顔を背けようとしたが、今度は彼の手がそれを許さなかった。
ゆっくりと唇が重なる。お互いの体温が触れる。その瞬間、心の奥に秘めていた感情が一気に溢れ出した。
「あぁ……!!」
俺は堪え切れず彼を強く抱き締めた。口を少し開けると彼の舌が滑り込んでくる。
自分の舌を絡め取られ、唇を啄まれ、唾液が溢れそうなほどのキスを交わす。息もできなくなりそうなくらい俺は夢中で彼を貪った。
本当はずっとこうしたかった。膨らみ続けた想いは、とうとうこんな夢を見せるまでに成長していたのだ。
「はぁ…は……っ古部…!古部…っ」
「…亜ー差ー…!」
「抱いてくれ……もっと強くっ…!」
さっきとは違う感情の涙が溢れ出す。心臓が痛いくらい脈打っている。
俺は泣きながら彼にしがみ付いた。その懇願に応えるように彼の腕が俺の背中を優しく撫でる。
「抱いてやるよ…お前が望むだけ、何度でも抱いてやる」
「古部っ…!」
再びキスが落とされ、俺はベッドに縫い付けられる。
両手を頭上で固定され、彼の身体がほんの少し離れるだけで俺は行かないでくれと泣いた。
彼はどこにも行かないと俺を宥め、ゆっくりと俺の中に自身を飲み込ませていった。
341:良い夢か、悪夢か。6/7
11/05/22 02:04:40.68 Ar29F4TfO
「あ、ぁあう…っ!!」
押し入ってくる質量に仰け反ると身体がよりベッドに沈んだ。いつもこうしてたはずなのにいつもより熱く感じられて、過度の興奮と少しの恐怖に呼吸が速まる。
胸が痛い。苦しい。怖い。
「はっ、はぁっ……嫌だ、いや…っ」
「亜ー差ー…大丈夫だ。俺を見ろ」
「いやだ…もういやだ……!」
一気に色んな感情に襲われパニックを起こしかける俺に彼は何度も言い聞かせる。
「大丈夫だ。何も怖いことなんてない」
「助けて……助けてくれ…っ、もう……!」
もう耐えられない。感情の大きさに、強さに、重さに。
「ふっ、俺…は、お前の…こと、が……っ!」
「……言わなくていい」
「っぅあっ!!」
まるで俺の言葉を遮るように突然突き上げが始まった。衝撃に身体を跳ねさせながら俺は声を上げる。
「知ってるよ…お前の気持ちは」
「あっ!や、やめっ…!!」
初めて感じるような満たされる感覚。同時にまだ足りない、もっと欲しいと渇望する心。
俺は泣きじゃくりながら彼の激しい律動を受け止める。自分でも信じられないような姿を晒していた。
「…っ古部、んんっ、は……古部…っ!!」
「………っ」
「も……だめ、だ…っ!イく、っあ!イっ……!!」
きちんとセットされていたはずの髪を振り乱し、がくがくと身体を震わせる。彼は拘束していた手を離して俺を抱き抱え、最奥まで届くように深く腰を打ち付けた。
「ぁあっ!!っや、あっ!――っっ!!!」
「亜ー差ーっ…!!」
思わずしがみ付いた彼の背中に爪を立て、大きく身体を反らせながら俺は達した。受け入れているソコが強く収縮を繰り返し、やがて彼も息を詰まらせ熱を放った。
タガが外れてしまっていた俺はそれだけでは満足できず、何度も彼に止めないでくれとせがんだ。もっと抱いて。もっと満たして。もっと壊して、と。
いくら絶頂を迎えても足りない。むしろその度に彼をより強く求めてしまう。涙も声も枯れ果てて、身体に力が入らなくなっても彼を離さなかった。
世界の形が歪んでいたのは涙のせいか、それとも形を保てなくなるほど彼しか見ていなかったからか。まるで二人の身体が一つになったような錯覚を覚えながら俺は意識を手放した。
■■■
342:風と木の名無しさん
11/05/22 02:05:29.15 YA+Gaphl0
支援
343:良い夢か、悪夢か。7/7
11/05/22 02:08:04.27 Ar29F4TfO
プシュー…と機械が排気する音に目を覚ます。時計を見ると、潜ってから3時間は過ぎていた。
何て夢だ。あんな夢を見るなんて。いつもより罪悪感が重い。底なしの自己嫌悪に涙すら滲んでくる。
俺は古部になんてことを…夢とはいえあんなことをさせてしまった。惨めな自己満足のためだけに。
しばらく彼の顔をまともに見られないかもしれない。大事なミッションが控えているのに。
あまりの情けなさに手で顔を覆った時、ふと身体の異常に気が付いた。俺のモノが明らかに熱を持っている。
いつもよりかなり強い快楽にずっと脳を晒していたせいか、現実の身体にまで影響を及ぼしてしまったらしい。
……いいザマだ。つくづく自分の愚かさに嘲笑しながら機械を片付けようと身体を起こした瞬間、全身が一気に凍り付いた。
機械からチューブがもう一本伸びている。そのチューブの行き先を目で辿り、そして答えを知った俺は愕然とした。
その先に繋がっていたのは井ー蒸だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
これって最初のカプ説明詐欺になりますか?
あくまでも致してる二人の見た目はカプ説明通りなんですが…悩んだ結果あのような書き方をしてしまいました。
改行大杉と怒られたのでかなり読みにくいかとも思います。
不快になった方がいらしたら申し訳ありません。
344:夕暮れ時 1/4
11/05/23 01:43:21.98 4dExoOm00
向光性レス虎ン
岸乃×邑木←酒本風味。鯖ブチョーもちょっとだけ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
部長の仲村はいい奴だと思う。
真面目で、優しくて、責任感も強くて。
だけどたまに読めない。異常なくらい空気が読めない。行動も読めない。だから、
「あれ?あそこにいるの岸乃さんとちゃうか?」
レストランからの帰り道、少し遠目の海辺の堤防にその人影を見つけた時、自分はマズイと思った。
直感だった。確かにあの影の輪郭は岸乃さんだ。そしてここからでは微妙に死角になる隣りにいるのはきっと…
わかったから下手に声をかけるのはよそうと言いたかった。
しかしそんな自分の思惑よりも仲村の行動は一瞬早かった。
「岸乃さーん!何しとるんですかー?」
「…………」
呼びかけた声にその人が振り返ったのが見えた。それに仲村は言う。
「あぁ、やっぱり岸乃さんや。ちょっと行ってみよ、酒本。」
「…………」
こうなってはUターンすることも出来ない。
だから「あぁ」と小さくつぶやいて、自分は前を行く仲村の後について行くしかなかった。
345:夕暮れ時 2/4
11/05/23 01:44:31.65 4dExoOm00
「あれ?邑木先生やん。」
そばまで近づいて、仲村の口からその名前を聞いた時、自分はやっぱりと内心小さくため息をつく。
こんな時間、こんな場所にこの人といるとしたら先生しかおらんやろ。
しかしそんな自分の声にならないツッコミをよそに、仲村はあっけらかんと先を続ける。
「隣りに誰かいるように見えた時は彼女かと思ったのになぁ。」
ある意味とても思春期らしい男子校生の言葉に、言われた岸乃は「なんやそれ」と明るく返してくる。
子供相手にも居丈高な態度は取らない。
役場の人間で、町興しのレストランの担当になっているその人は、いつも自分達と役場との橋渡しをし、
時に板挟みにもなっている。そして、
「あれ?邑木先生寝とるんですか?」
何よりこの先生を連れて来てくれた張本人。
幼馴染なのだと言う。
今、岸乃の体にもたれる様にして目を閉じているその人は、高校卒業後上京し、銀座の料亭で板前を
勤めていたらしい。
それが何らかの事情でこの町に戻り、自分達に料理を教えてくれている。
細面で一見神経質そうな。言葉が多くない分、最初は近寄り難ささえ覚えたその人だったが、その態度の
裏に隠されたものが料理に対する真摯な想い、そして自分達と誠実に向き合おうとするがゆえの戸惑いだと
なんとなくわかりだしてからは、部員達は皆この人について行く事に迷いを持たなくなった。
それは当然自分も。もっとも自分はそんな迷い自体、当初からあまり無かったのだが。
それくらいこの人の腕は確かで、本物だった。
「疲れた顔してますね、先生。」
夕暮れ時でだんだん暗くなってきているせいか、その頬に差す影から疲労感が伝わり、思わずボソッとつぶやく。
するとそれに岸乃は「あぁ」となるべく体を動かさないようにしながら、その視線を隣りへと落とした。
「今日は役場との折衝に付き合わせちしまったから悪いと思ってあんぱんおごったんだが、食べてる途中でこれや。」
「あんぱん?」
「ちなみに俺はメロンパン。味の好みってのは学生時代とそう変わらんのやな。」
自由な方の手に持ったメロンパンを軽くかかげて見せながら、くったくのない笑顔の中にサラリと付き合いの
長さをのぞかせる。
そんな相手の印象を、自分は何と言うか、大型犬の子供みたいな人だなと今更ながらに思った。
346:夕暮れ時 3/4
11/05/23 01:45:51.86 4dExoOm00
自分と違いガタイが良くて、なんかモシャモシャしていて、何事も加減の無い力で真正面からドーンと
ぶつかってくる。
そしてその力には何のてらいも無いから、ついつい受け止めてしまう。
それは先生もそうなんだろうか?
きっと気を許していなければこんな寝顔は見せていないだろうその人の気質を思い、知らない内に眉の根が寄る。
するとそんな自分の微かな表情に、その時岸乃は気がついたようだった。
「あのな、こいつ料理の事に関しては馬鹿みたいに真剣やから厳しく思うかもしれんけど、こいつはこいつなりに
一生懸命頑張っとるんやで。」
突然そんな擁護するような事を言われ、えっ?と視線を返す。
その先で岸乃はこの時、どこか困ったような、でも必死な口調で続けてきた。
「ただ料理を教えるだけなら多分そこまで難しくはないんやろうけど、俺の依頼でやった事の無い教師職まで
させてしもてるからな。でも、初めこそ戸惑ってたようやけど最近はこいつも真剣に君らの為になる事を考えてる。
あの高校生ゴゼンかて、出来上がるまでに何日も徹夜しとったようやし。」
「あの高校生ゴゼンをですか?」
不意に横合いから仲村の声が飛ぶ。それに岸乃はコクリと頷いた。
「俺が聞いたのは完成間近な時やったけど、その前に毎晩毎晩悩んどったようや。」
「岸乃さんは……完成した時に立ち会っとったんですか?」
「あぁ、最後の一晩だけやけど。コキ使われたで。」
自分の問いかけに答えながら、岸乃がじんわりと何かを思い出したかのような笑みを見せる。
それにはこの時なぜか自分の胸にジリッと感じる疼きがあった。
しかし今度はそれを悟られたくなくて、スッと視線を眼前の海へと向ける。
このところ大分長くなってきていた日も、そろそろ完全に落ちようとしている。
それに合わせるように、この時岸乃から再び声が上がった。
「さて、暗くなるとまださすがに冷えるからぼちぼち帰るか。おい、いい加減起きろ、おまえ!」
いっそ乱暴な手つきで自分にもたれかかっている相手の肩を揺さぶろうとする。
そんな岸乃に自分は瞬間、慌ててその人が目を覚ます前に声を発した。
347:夕暮れ時 4/4
11/05/23 01:47:32.36 4dExoOm00
「あの、それじゃあ俺らこれで。」
「ん?そうか。気をつけてな。週末はまた頼むで。」
「はい。行こう、仲村。」
「おっ、おう。」
突然呼ばれて驚く仲村が自転車の向きを変えるのを待たず、すばやく踵を返す。
なぜだろう。目を覚ました先生と顔を合わせたくは無かった。
いや、違う。目を覚まし、自分達に対するものとはまったく違う口調で岸乃さんと言葉を交わす先生の様子を
見たくなかったのだ。
「おーい、ちょっと待てよ、酒本。」
後ろから自転車を引きながら仲村が追いかけてくる。
横に並び、口が開かれる。
「しっかし、岸乃さんと先生ってほんまに仲ええんやな。」
「……そうやな。」
「俺らもいつかあんな風になれたらカッコエエなぁ。」
「…………」
「ちょっ、なんでそこで黙るんや、酒本!」
強くツッコまれ、「あぁいや」と言葉を濁す。
時が経てば追いつけるのだろうか。時さえ重ねればあんな風になれるのだろうか。
思い出す二人の姿に、何かが違うと酒本は思う。
相手が大人だからかなわないんじゃない。きっと岸乃さんだから……それでも、
「それでも…俺には料理がある。」
あの人が立てない、先生と同じ土俵。だから、
「絶対、軌道に乗せような。俺らのレストラン。」
いきなり脈絡も無く言い放った自分の強い一言に、仲村は一瞬キョトンとした顔を見せた。が、それでもまた
詰まり気味ながらに「おう」と返事を返してくれた。
それに自分はキュッと口の端を引き上げる。
自分は始まったばかりなのだと思う。
何もかもがまだまだこれからだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
勢いで書いた。方言はわからないのでニュアンスで。大型犬はイイ。
348:風と木の名無しさん
11/05/23 03:20:39.12 ZoMpsi4M0
>>347
姐さん超グッジョブ!!!
こういうのが読みたかった。ホントありがとう。
4人とも完全にイメージ通りで、脳内再生されました!
349:風と木の名無しさん
11/05/23 10:31:22.05 qWfkX0RY0
>>335
淫背プしょん観ていてよかった。
素晴らしすぎる萌えでした。夢の中な出来事って所がもうね。
姐さんの一字一句が切な萌えでGJです!ごちそうさまでした。
350:風と木の名無しさん
11/05/23 11:24:02.45 aKNB4j2U0
>>335
うおお理想の鼓舞←朝←いー蒸す!!!
ごちそうさまでしたごちそうさまでした!
姐さんの書いた現実味で致すE/A読みたいっす!
351:The green knight runs through night前編 1/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:36:07.01 N+xvEwZZO
半生。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>190のまた後日の話、エロありです。女性絡み+当て馬注意。
二回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「……あっ、はあ、ブリシト……ダ、ダメだ……」
「何がダメなんだ力ト-。ここ、気持ちいいんだろ?ほら、こんなに締め付けてるぞ」
「うあっ!バカ、や、やめ……ブリシト!」
「やめるもんか。やめたら困るのはお前なんだぞ、力ト-」
俺は意地悪な口調と共にぐりぐりと指を動かし、シーツの上でのたうつ体に被さって甘く責め立てた。
熱く狭い中は塗り込めたジェルで潤い、突き入れた俺の指をくわえ込んで、ひくひくとうごめいている。
相棒の方も俺の中心を握って刺激を与えてくれていたが、下肢に施される愛撫の強さにその手は震え、動きが段々とそぞろになった。
ベッドの上、素っ裸で重なり合った俺達の体は、どちらも熱くなっていた。
俺は緩急を付けて擦ってやりつつ、俺の肩に縋って悶える奴の耳元に欲望を囁いた。
「なあ力ト-……もうそろそろ、いいだろ?」
「……いいって、な、何……?」
「おいおい、とぼけるなよ。お前の中に入りたいって、ずっと言ってるじゃないか。いい加減イエスと言えよ……力ト-」
ねだる言葉に合わせてぐっと突き上げると、相棒は高い声を上げてのけ反った。
あれから何回か肌を合わせたが、俺達はまだ本当の意味で結ばれてはいなかった。
男同士で繋がる行為を相棒が怖がり、指しか入れさせてくれないからだ。
まあ無理はない。自分の後ろに男のドデカいモノが入り込むなんて、俺だって想像しただけで怖い。
だから怯えてる奴の気持ちを汲んで、固いそこを時間をかけて丁寧にほぐし続けた。
相棒は初めての時と、それから何回かは、触れられる度にうろたえて戸惑った。だが優しく根気よく撫でて擦ってやるうちに、俺の指をすんなりと受け入れ、動きに合わせて締め付けるほどになった。
今夜は俺の三本の指を感じて、甘く切ない喘ぎを絶えず漏らしている。俺のモノは指なんかよりはるかにデカいんだが、この様子なら上手くいきそうな気がする。
荒く息をつく唇を吸って、俺はさらに問いかけた。
352:The green knight runs through night前編 2/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:40:00.37 N+xvEwZZO
「力ト-……入れていいよな?俺はお前の全部が欲しい」
「や……やだ、ブリシト……まだ、嫌だよ」
「そう言うなよ。大丈夫だ、痛くないから。うんと優しくしてやるからさ」
「あ、うっ……で、でもブリシト……やっぱり、んんっ」
「まだ不安なのか。しょうがないな……じゃあ、あれでも使ってみるか」
ため息をついた俺は動きを止めて、指を一旦引き抜いた。体を捻って、サイドボードの方に手を伸ばし、一番下の引き出しの中にある物を取り出した。
相棒は蕩けたような顔つきで俺の動きを眺めていたが、手にした物を見つめた途端に目を見開いた。
「……ブリシト!そ、それ」
「力ト-、こいつが入りゃ俺のだって余裕だろ。試してみようぜ」
「ダメ、やめろ!絶対に嫌だ!」
「なんでだよ!お前の為に、やってみようって言ってるんじゃないか」
「そんな思いやりいらない!どうせ、どっかの女の子に使ったんだろ。そんな物を入れられるのはゴメンだ!」
「そりゃ誤解だ力ト-。こいつは前に若気の至りで買ったんだが、女にはみんな使うのを断られた。だからまだ真っさらで、お前が初めてなんだ」
「……ちっとも嬉しくない!」
憤慨した相棒は俺に蹴りを入れようとしたが、重そうな脚の動きにいつもの切れはなかった。
たやすく脚を掴んだ俺は持っていたディルドをかたわらに置き、相棒の肩も掴んで一気に体をひっくり返させた。
「ブリシト……おい、ちょっと!」
「じっとしてろよ、力ト-」
あまりの嫌がり様が俺の悪戯心に逆に火を点け、少し奴を虐めてやりたくなった。
俯せた体にのしかかって押さえ、脚を開かせると、なだらかな曲線を描く尻の間に、再び握ったディルドをぐいっと押し当てた。
異物の先端がほんの少し潜り込み、同時に相棒が息を飲んで、体を固くするのがわかった。
「あ、あっ……!やだ、やめて……やめてくれ、ブリシト!」
「力ト-、力を抜けよ。そう力むと痛いかもしれないぞ」
「こ、このバカっ……最低野郎!やめろったら、そんな物まっぴらだ……うわ、あ!あーっ」
腰を抱え込み、うなじや背中にキスを落としながら、俺はディルドをじわじわと挿し入れた。
三分の一ほど埋め込んだところで相棒の切れ切れの罵倒は止まり、俯いた顔をシーツに押し付けて、唸るような声を絞り出していた。
353:The green knight runs through night前編 3/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:43:17.41 N+xvEwZZO
奴がびくびくと震えているのに気付き、ちょっと心配になって呼びかけた。
「力ト-大丈夫か、痛くないよな?俺、ちゃんと優しくしてるだろ」
「……バカ、バカ野郎、君なんか、嫌いだ……うぐっ」
悪態をついた声は弱く掠れていて、ひょっとしてまた泣かしちまったかもと焦った俺は、顎の下に手を差し込んで顔をこちらに向けさせた。
「ああ、やっぱり……泣くなよ力ト-」
「……君が悪いんだ、君が、ひどいことするから」
「わかったよ、俺が悪かった。今、抜いてやるから」
苦笑した俺は、流れる涙を吸い取るように頬にキスして、そうっとディルドを引き抜いた。
去った異物に安堵して力を抜いた相棒の体をまた返し、腕を回して正面から抱きしめた。
「力ト-、なんだかお前を抱く度に泣かせてる気がするな。あんなに嫌がるなんて思わなかったんだ、もうしないから泣くな」
「……あれは嫌だ。固くて冷たくて、気持ち悪かった」
「なら俺の指は、熱くて気持ちいいってことだな。だったらこっちはもっと気持ちいいぞ、そう思わないか?」
高ぶったモノを太股に擦り付けてやると、相棒は顔を赤く染めて口をつぐんだ。
俺は何も言わない唇を吸って、ねっとりと舌を絡めた。相棒は深くむさぼる舌に素直に応え、その手は俺の中心を包み込んだ。
俺も奴のモノを握り、口づけながら互いに甘く激しく快感を与え合った。
長く塞いでいた唇をやっと離すと、相棒は息を乱しながら囁いた。
「ブリシト……君を拒んで、すまないと思ってる……でも、僕は怖くて」
「うん、まあしかたない。誰だって、未知の体験は怖いさ。踏み出すには度胸がいるからな」
「……そうなんだけど、僕が怖いのは、ちょっとまた違うような……いや、違わない、のかな」
「何訳わからんこと言ってるんだ、力ト-」
「ゴメン、気にしないで」
「バカ、そんなだとますます気になるだろ。正直に言えよ力ト-、何が怖いってんだ」
手を休めた俺に真剣に見つめられて、相棒は困った表情で目を泳がせた。
もう一度名前を呼んで促すと、観念したように目を閉じた。
「僕が怖いのは……君に触られて、指を入れられるだけでもあんなに感じるのに……その、君自身を受け入れたら、一体どうなるのかが、こ、怖いんだ……」
354:The green knight runs through night前編 4/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:46:13.71 N+xvEwZZO
一息に告白した相棒は、俺の視線から逃げるように、体を翻してまた俯せになろうとした。俺は肩を掴んでそれを止め、弱くもがく相棒を上から見下ろした。
押し黙ってしげしげと見られているのがいかにも居心地悪そうに、相棒は目を逸らして忙しく瞬きを繰り返した。
「……何か言えよ、ブリシト。おしゃべりな君が黙ってると、やたらと気まずい」
「そうか。なんて言おうか、ちょっと迷ってたんだ。お前があんまりにも、かわいらしいことを言ってくれるもんだから」
「……やっぱり、しゃべらなくていい」
「そうはいかない。言葉は大切だぞ、力ト-。お前がただ痛みや、俺に入れられることを怖がってるんじゃないってことがわかって、俺は嬉しいんだ」
もういいから、と悲鳴のように叫ぶのを無視して、俺はさらに告げた。
「はっきり聞かせてもらった以上、お前を無理に抱いたりはしない。力ト-、気持ちが決まったら教えてくれ。俺は根気よく待つから」
「ブリシト、君……それでいいのか?」
「いいとも。実は俺は、楽しみは後にとっとくタイプなんだぞ、力ト-」
黒い目を覗き込んでおどけてやると、相棒はつられて頬を緩めた。
「ありがとう、ブリシト……それまでは、こっちで」
「……うお!そうだな、こっちで一緒にイこう、力ト-」
相棒の手にきゅっと握られて体を跳ねさせた俺は、笑って奴のモノを握り返し、扱き上げながらキスを交わした。
こうして互いの手で果てるのが、俺達のいつもの流れだ。結局今夜も最後までたどり着けなかったが、相棒の本心を知った俺に寂しさはあまりなかった。
俺が欲するように、こいつが俺を求めてくれる時が来る。それまでは惜しみない愛撫を与え続けて、ひたすら待とうと思った。
それほどまでに愛しく、大切な奴なんだと自覚した。
たった一人の俺の相棒、俺の兄弟。今はもうそれ以上の、けして失いたくはない唯一の存在。
大切だ、と心の中で何度も繰り返し、俺は俺だけの相棒に深く深く口づけた。
ただならぬ仲になったとは言え、俺達は常にイチャついたりはしていない。
ベッドにいる時以外は屋敷でも会社でも、ごく普通に日常を過ごしている。
ふざけた俺が相棒の頬にキスして、軽く肩を殴られるなんてことはあるが、そんなのは俺達にとっては、もはやありふれたスキンシップだ。
355:The green knight runs through night前編 5/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:50:17.80 N+xvEwZZO
前より頻度は減ったが、俺はたまに女の子達と遊ぶし、二人とも脈無しと知りつつ、いまだに俺の美人秘書を意識している。
全くのゲイでもなければ、愛してると誓い合った単純な恋人同士でもないから、お互いに激しく嫉妬するなんてこともない。他人が知ればちょっとおかしな感じかもしれないが、俺達に問題はなく、ごく円満な関係だ。
その美女は、我が社の新聞の広告主になる予定の、下着会社の社長だった。
濃いブラウンの長い髪は緩めの巻き毛で、大きな目は黒く情熱的に輝き、ラテンの血が入っているらしいエキゾチックな容貌をしていた。秘書とはまた違った魅力の彼女を見て、俺と相棒は『イケてる女だ』と視線で会話した。
背の高い男前の部下を二人従えた彼女は、秘書も交えて社長室で俺と話をした。
相棒は壁にもたれて立ち、何やら手帳に熱心にメモを取っている……と見せかけて、得意のスケッチで彼女の姿を描き留めているに違いない。
話が纏まり、社長室を出た彼女は部下を先に行かせた。
俺と秘書と握手を交わし、最後に相棒の手を握った。その時顔を近くに寄せて、相棒の耳に何かを囁いたようだった。
手を離した相棒は、立ち去る彼女の官能的な後ろ姿を見送ると、ちょっとニヤつきながら応接スペースのソファに腰を下ろした。
秘書も自分の席に戻ったが、俺は美女の囁きがなんだったのか気になり、座って手帳をめくっている相棒に後ろから近付いた。
「おい力ト-、彼女お前に何て言ってたんだ?」
「ん?別に、なんでもないよ」
俺はとぼける奴の肩越しに、その手から手帳を奪い取った。案の定紙の上には、彼女のナイスバディがバッチリ描き写されていた。
「嘘つけ!彼女、お前の手だけ両手で握ってたぞ。正直に吐け、何言われたんだよ」
「ブリシト、そうムキになるなよ。たいしたことは言ってない。『あなた、私の前彼に似てるの。またぜひ会いたいわ』って言われただけさ」
「……そりゃ、たいしたことだろ!」
「でもそれだけで、連絡先を訊いた訳じゃないし。まあまた会社には来るだろうから、その時訊かれるかもしれないけどね」
まんざらでもなく鼻の下を伸ばす相棒を眺めて、俺はちょっとおもしろくない気分だった。俺は妬いてるのか。だとしたら相棒に?彼女にか?……多分その両方だ。
相棒の淡い期待が外れることを俺は何となく祈り、奴の手帳を放り投げて返した。
356:The green knight runs through night前編 6/9 ◆Rv.F4X8MbU
11/05/24 01:53:15.49 N+xvEwZZO
その翌々日、ちょっとした異変が起きた。昼食がてら外出した相棒が会社に戻らず、俺に何の連絡もして来なかった。
夕刻、相棒の不在に気付いた秘書に、力ト-はどうしたの?と尋ねられたが、俺は肩をすくめるしかなかった。
しかたなく自分で車を転がし、自宅に帰った。夕食の席に着いたものの、相棒のことが気になってどうにも食が進まない。
俺は今日の昼のことを思い返してみた。来客で出られなかった俺は、相棒に買い物を頼もうと会社から電話をかけた。
街中にいた相棒は電話に出たが、途中で誰かに声をかけられたようだった。
焦った様子の奴は、後でかけ直すと電話を切った。しばらく待ったが一向にかかって来ないので、俺から再びかけた。
すると、電源が切れているというメッセージが流れた。なんだよあいつ!と鼻白んだが、さほど重要な用事でもなかったので、繋がらない携帯電話を置いて仕事に戻った。
それから何回か電話をかけたが、やはり電源は切られたままだった。
俺は不安に取り憑かれた。こんなことは、今までなかった。常に会社に行くのも帰るのも一緒だったし、何か用事があって出かける時は、必ず連絡をして来た。
無断で俺の側を長らく離れるなんて、奴が絶対にする筈がないんだ。
きっと相棒の身に何かあったに違いないと確信した俺は、食卓を離れてガレージに向かった。
万一の時の為に、俺達はそれぞれ発信機を身につけていた。俺はブラシク・ビューティーに乗り込んでナビを操作し、相棒の信号の位置を確認した。
そして緑のマスクと衣装に着替え、ガス銃と念のために相棒の銃も持った。
ガレージに寂しげに置かれたままの相棒のバイクを眺めてから、麗しの愛車と共に夜の街に飛び出した。
「全く、お前と来たら……美女にデレデレして油断するから、こんなことになるんだ」
「うるさいな、美人に弱いのは君だって同じだろ」
部屋に連れ戻した相棒に苦言を呈すると、俺のベッドに横たわった奴は、負けじと言い返して来た。
街外れまでやって来た俺は、古びたビルの下で車を停めた。相棒の信号は、ここの最上階から発せられていた。
今は使われていない様子のビル内に侵入すると、明らかに怪しい黒服の男が、エレベーターの前で見張りをしていた。
問答が面倒臭いのでガス銃を一発お見舞いし、上へと上がった。