モララーのビデオ棚in801板64at 801
モララーのビデオ棚in801板64 - 暇つぶし2ch200:風と木の名無しさん
11/04/12 00:32:37.61 J04nD2140
>>190
2人の後日談があればなあと思ってたらキタ―!!
ベッドだと社長がいつもより格好良く見えるw
社長も助手もお互いが死ぬほど大事なんだと凄く伝わってきました。
ありがとうございました。

201:風と木の名無しさん
11/04/12 08:14:05.92 P38WnhT6O
>>190
ヤッターーー
すごく萌えながら読ませてんだけど途中泣いてしまった

すごくいい!
ありがとうございました!

202:初めての夜 1/9
11/04/12 17:37:21.85 twAWcuNj0
ヒカアキです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

北斗杯授賞式のあと、ヒカルたち三人は荷物をまとめ、ロビーに集合した。
「もうすぐ新幹線の時間やから、ほなな」
社がさばさばした様子で手を上げた。
「ああ」
アキラが頷いて答えた。
ヒカルは無言で社の背中を見送った。
「進藤、キミはどうする?」
質問を理解するのにだいぶ時間がかかった。
「……あんま、うち帰りたくねえな」
もしかしたら、母が自分の対局を見に来ていたかもしれない。
そう考えると、余計に母と顔を合わせるのが億劫に感じられた。
「碁会所で検討するか?」
「北島さんがいるし」
「なら、ボクのうちで検討しよう」
「え、塔矢先生いるんだろ。会場にも来てたって。さっき中国の団長が言ってた」
「だったら、父にも検討に加わってもらえばいいじゃないか」
「そりゃ、嬉しいけどさ。勝ってたらな」
永夏には半目差で負けた。
半目、あと半目が足りなかった。
「じゃあ、決まりだな」
アキラはさっさと歩き出し、すぐに足を止めた。
「行こう、進藤」
「わかったよ」
ヒカルはアキラのあとに続いて自動ドアを潜った。

塔矢邸は無人だった。
ヒカルとアキラはスーツの上着を脱ぎ、自分達だけで検討を始めることにした。
だが、なかなか誰も帰ってこない。

203:初めての夜 2/9
11/04/12 17:38:50.44 twAWcuNj0
ヒカルは時計を見た。午後七時を過ぎていた。
夕食の時間だと意識したとたん、腹が鳴った。
「店屋物でも取るか?」
アキラが盤面に目を落としたまま尋ねた。
「いいよ、おごってもらってばっかっていうのも悪いし。オレ、ラーメンぐらいなら作れるしさ」
「小麦粉あったかな」
「麺から作れるわけねーだろ!」
「ちょうどいいから休憩にしよう。ボクもお腹が空いた」
ヒカルは台所の戸棚や引き出しを片っ端から開けてみた。
高そうな佃煮や海苔はあったが、インスタント食品の類はなかった。
「お前っていつも何食ってんだよ」
「あ、そばがあった。これじゃだめか?」
アキラがのしのついた木箱を開けた。
「えー、そば? じじくせえ」
そう答えた直後、また腹が鳴った。
「ま、いっか。どうせ、おんなじ材料だし」
「いや、これは十割そばだから材料はまったく違う」
「あーもう、いちいち細けーな。茹でるからちょっとどいてろよ」
「それぐらいボクがやるよ」
「やだよ、なんか時間かかりそうだもん。オレは今すぐ食いたいの」
ヒカルは鍋に水を張り、火にかけた。
そばは十束あった。ヒカルはすべて沸騰した湯にぶち込んだ。
「わかっているのか、一束が一人前だぞ」
「わーってるよ、うっさいな」
アキラは信じられないといった顔でそばつゆを用意した。
ヒカルは茹で上がったそばをざるに盛り、居間のテーブルにどんと置いた。
アキラは遠慮がちに箸でそばを取り、音も立てずにすすった。
ヒカルは限界までつゆにそばを沈め、あまり噛まずに飲み込んだ。
その時、玄関で電話が鳴った。
アキラは箸を置き、慌てて廊下に出て行った。
ヒカルがつゆに七味を振りかけていると、アキラが戻ってきた。
「母からだった。今、台湾にいるらしい」

204:初めての夜 3/9
11/04/12 17:40:22.06 twAWcuNj0
「台湾? なんでまた?」
「気になる棋士がいるそうだ。しばらくは帰って来られないと言っていた」
アキラは淡々とした様子で座布団に座り、箸を取った。
「帰って来たばっかなんじゃねえのかよ。お前もいろいろ大変なんだな」
「まあ、いつものことだしね」
ヒカルは一人分だけ残し、ざるのそばをきれいに平らげた。
行洋が帰って来ないとわかると、なんだか気もゆるむ。
ヒカルは行儀悪くその場に寝転んだ。
「あー、食った食った」
「牛になるぞ、進藤」
「馬鹿じゃねえの、人間は牛になんかなりません」
「驚いたな。キミも常識を知っていたんだね」
ヒカルはがばと起き上がった。
「くっそ、むかついた。こうなったら碁で勝負だ」
「望むところだが、食器を流しに置いてくれ。できれば洗ってくれると助かる」
「洗えばいいんだろ、洗えば」
ヒカルは袖をまくり、台所でわしわしと食器を洗った。
アキラはまだそばをすすっている。
ヒカルは「先、行ってるな」と言い、客間に向かった。
正座して待っていると、ようやくアキラが現れた。
ヒカルは黙ってニギった。ヒカルの先番だ。
結果は半目差でヒカルの勝ちだった。
「よっしゃ」
ヒカルはガッツポーズした。
アキラはじっと盤面を見つめている。
「検討していた時にも感じたが、やはりキミは成長した。倉田さんの言った通りだな」
「え、倉田さん、なんて言ってたの?」
「高永夏との一戦はキミの成長に必要な一戦だと言っていた。キミの成長はわくわくするとも」
「そっか、倉田さんそんなにオレのこと……」
ヒカルの脳裏に永夏との一局がよぎった。
「それなのにオレ、勝てなかった……」
胃に鉛がたまり、地の底まで沈んでいきそうだった。

205:初めての夜 4/9
11/04/12 17:41:39.37 twAWcuNj0
「ボクもだよ、進藤」
「え?」
ヒカルは顔を上げた。
アキラの真摯な瞳とぶつかった。
「ボクもキミの成長にはわくわくさせられる」
ヒカルは何も答えなかった。
「今日の副将戦、ボクは勝った。なぜかわかるか? キミが勝つと信じていたからだ。
ライバルのキミが勝つんだからボクも負けるわけにはいかない。そう思ったんだ」
「なんか、わりいな。ほんとごめん。お前にも倉田さんにもいろいろ期待させたのに、肝心のオレがこんなんで……」
ヒカルはさらに胃が重くなったような気がした。
「だから言っただろう、進藤。わくわくさせられるって。実際、キミは成長した。ボクはとても嬉しい。キミがライバルでよかった」
「塔矢……」
ヒカルの目から勝手に涙が溢れた。
「ごめん、塔矢。ほんとごめん」
ヒカルは大粒の涙をぼろぼろとこぼした。
「来年の北斗杯、日本は一敗も喫しないぞ」
「ああ、そうだな」
ヒカルは涙を拭い、頬を両手で叩いた。
「オレはもっともっと成長するんだ」
「もうこんな時間か」
アキラが時計を見て呟いた。
見れば、針は十時十二分を指している。
「やべ、帰んなきゃ」
「泊まっていったらどうだ?」
立ち上がりかけたヒカルを引き止めるように、アキラが提案した。
「いいのか?」
「道具はあるだろ?」
「ああ。じゃ、ちょっと電話してくる」
ヒカルは母に今日も塔矢家に泊まることを告げた。
受話器の向こうの母はなんだかひどく寂しそうだった。
客間に戻ると、アキラはいなかった。
しばらくして、パジャマ姿のアキラが戻ってきた。

206:初めての夜 5/9
11/04/12 17:42:41.17 twAWcuNj0
「キミもお風呂に入ってくるといい」
「そうだな」
ヒカルはジャージを抱えて風呂場に向かった。
広い浴槽につかっていると、ここ数日昂ぶるばかりだった神経が自然と静まっていった。
ヒカルはため息をついた。
あのまま帰宅していたら、今ごろ負けた悔しさをずるずる引きずっていただろう。
アキラのおかげだ。友達の存在がこんなにありがたいと思ったことはない。
友達……。
アキラは友達なのだろうか。
ライバルだと認め合ってはいる。
では、アキラはライバルであり友達ということか。
いや、違う。
そもそも、アキラは自分のことを友達とは思っていないかもしれない。
それなのにこちらばかりが友達だと慕うのも癪だ。
ヒカルはアキラという存在について、浴槽の中で延々と考え続けた。
おかげですっかりのぼせてしまった。
ヒカルはTシャツの裾をばたばたさせながら客間に戻った。
アキラは碁盤の前できちんと正座していた。だが、その頭が前後に揺れている。
ヒカルは足音を忍ばせてそっと近づいた。
アキラはうたた寝していた。
普段の鬼軍曹のような態度からは想像もできないほど無防備な表情だ。
ヒカルは唾を飲み込んだ。
心臓の音が耳元で聞こえた。
ヒカルは膝をつき、顔を近づけ、キスをした。
その瞬間、アキラがぱちりと目を覚ました。
「うわっ!」
ヒカルは思わずあとずさりした。
「な、なんだよ、狸寝入りかよ」
「そんなことするものか。本当に寝ていたんだ」
アキラがむきになったように言い返した。
「そうしたらキミが……」
アキラは何か言いたそうに口を開け、すぐに閉じた。

207:初めての夜 6/9
11/04/12 17:43:57.28 twAWcuNj0
「オレ……」
ヒカルは迷った。このままうやむやにしてしまおうか。
アキラは寝ていた。思い違いだったと信じ込ませればいい。
ヒカルは「なんか変な夢でも見てたんじゃねえの」と言おうとした。
「オレ、お前にキスした」
「な……」
アキラは絶句してしまった。
「お前が寝てたから、つい」
アキラは何も答えない。
「オレ、お前のこと、好きだ」
ヒカルは恥ずかしさのあまり、膝に目を落とした。
長い沈黙が続いた。
「あのさ、やっぱ忘れてくんねえ?」
ヒカルは耐え切れずに口を開いた。
「聞かなかったことにして、頼む」
ちらと見ると、アキラはまだ固まったままだ。
「なあ、なんか言えよ。それとも怒ってるのか?」
答える代わりに、アキラがにじり寄ってきた。
アキラの顔が間近に迫り、キスされた。歯がかちと当たった。
「やっぱりそうだ」
「何が?」
アキラはヒカルを押し倒した。
蛍光灯を背にしたアキラの顔は暗かったが、息が熱いことはよくわかった。
「ボクもキミのことが好きだ」
ヒカルはアキラの襟をつかみ、激しくキスをした。
歯が当たったが気にしなかった。
アキラもヒカルに負けないくらい唇を貪った。
舌を入れたら、アキラもすぐに応じた。
二人は音を立てて舌を絡ませた。
「どうしよう」
アキラが口を離して大きく息を吸った。つーと糸が引いた。
「キミをめちゃくちゃにしたい」

208:初めての夜 7/9
11/04/12 17:45:29.04 twAWcuNj0
「しろよ」
ヒカルはもどかしい思いでパジャマのボタンを外した。
アキラもジャージの上着に手をかけた。
二人は忙しなく裸になった。
ヒカルは仰向けのまま、キスを続けた。
舌は境が曖昧なほど溶け合っていた。
口の端からよだれがこぼれた。乳首に触ると、すでに尖っていた。
ヒカルはらせんを描くように指の腹で乳首を愛撫した。
アキラの喉から小さな声が漏れた。
ヒカルは我慢できなくなり、肘をついて起き上がった。
「進藤、どうし―」
ヒカルはアキラを押し倒し、尻を向けて馬乗りになった。
半勃ちになったそれをくわえ、自分も腰を落とした。
アキラはすぐに目的を理解したようで、ためらうことなくヒカル自身を口に含んだ。
ヒカルが口を上下させると、アキラのそれはたちまち怒張した。
自分のそれもアキラの口の中で痛いくらいに硬い。
アキラにすべてをさらけ出している羞恥心と、アキラのすべてを受け入れている狂喜がない混ぜになり、めまいを覚えた。
アキラは一心にヒカルをしゃぶっている。
ヒカルは喉元までアキラをくわえ込んだ。
むせそうになったが我慢した。
アキラの先端からは苦い汁がとめどなく溢れている。アキラのものなら何でも深く味わいたかった。
アキラがヒカルを強く吸った。
太ももの内側が痺れ、腰に熱が溜まった。
絶頂はすぐそこだ。
だが、先に果てるのは嫌だった。
ヒカルは鈴口に舌をねじ込んだ。
アキラの腰がびくんと跳ね、熱い液体が口内にほとばしった。
ヒカルは最後の一滴まで丁寧に飲み干した。
アキラも鈴口に舌を入れた。ヒカルはアキラの口に精液を放った。アキラもすべて飲み干した。
ヒカルはアキラの上からどき、ぐったりしているアキラの足を割った。
ピンク色の秘所に舌を挿し込むと、アキラが「あぁっ!」と叫んだ。
「や……めろ」

209:初めての夜 8/9
11/04/12 17:46:26.85 twAWcuNj0
ヒカルは何度も舌の出し入れを繰り返した。
「や、やめろ……お願いだ……やめ……てくれ」
根気強くほぐしたおかげで、舌は三分の二まで入るようになった。
ヒカルは舌を抜き、指を二本入れた。
いきなり二本も入れられ、秘所はきゅっとすぼまった。
唾液まみれのそこはぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。
「……くっ……んんっ……ぁっ」
ヒカルは三本目を強引に入れた。
指を折り曲げ、内壁をえぐるようにすると、アキラの反応が一段とよくなった。
「……あっ……はあっ……ぁんっ」
アキラの頬は紅潮し、目は焦点が定まっていなかった。
ヒカルと同様、それはもう屹立していた。ヒカルは太ももを舐め、指を抜いた。
アキラが安堵したように目を閉じた。ヒカルはアキラの腕を取って起き上がらせると、碁盤に両手をつかせた。
「待て、進藤。何をするつ―」
ヒカルはアキラの秘所に自身を突き入れた。アキラの背が弓なりにそった。
「っ……あぁぁぁっ!」
ヒカルは腰を動かすたびに理性がはがれていくのを感じた。アキラの締めつけはとても強かった。
「……いい、すげえいい、とーや」
「進藤、い、たい」
ヒカルはアキラの下腹部に手を伸ばした。
それは萎えかけていた。ヒカルは手でしごき、快楽を促した。
ヒカルの手の中でアキラは徐々に硬さを取り戻していった。
「し……んど……し……んど」
アキラが切なげに自分の名前を繰り返した。その声は背骨に沁み込み、ぞくぞくと脳まで這い上がった。
「とーや、とーやっ」
ヒカルは泣きたくなった。あまりの気持ちよさに、今自分が何をしているのかわからなくなった。
その直後、果てた。ヒカルは何度も痙攣し、アキラに精液を注ぎ込んだ。
アキラもヒカルの手の中で絶頂を迎えた。二人はしばらく動かなかった。
だが、すぐにまた体を求め合った。
寝入ったのは朝方になってからだった。

「やっべ、秀英と対局の約束してるんだった」

210:初めての夜 9/9
11/04/12 17:47:35.72 twAWcuNj0
ヒカルは外がやけに明るいことに気づき、急いで起き上がった。
畳の上で寝たせいで体が痛い。約束の時間まであと一時間もなかった。ヒカルはとりあえずジャージのズボンをはき、スーツを探した。
「秀英とは洪秀英のことか?」
アキラがもそもそとパジャマに袖を通した。
「そう。オレと勝負するためにわざわざ日本語覚えた奴。やべえ、どうしよう、メシ食う時間ねえじゃん」
「進藤、落ち着け。向かう途中でチョコレートでも食べればいいだろう。
それよりなぜ洪秀英と対局を約束していることをボクに話さなかった?」
「それは、だって、忙しかったし」
ヒカルはしどろもどろに答えた。
「もちろんボクも行くからな」
「わかってるよ」
二人は急いで身支度し、家を飛び出した。着替えを用意する時間がなかったため、どちらもきのうと同じスーツにネクタイだ。
碁会所には伊角と和谷、永夏と秀英が待っていた。
「三十分も遅刻だぞ、進藤!」
秀英がつり目で睨んだ。
「わりいわりい。寝坊しちゃってさ」
「おい、進藤。もしかしてそれ、きのうのスーツか?」
和谷がヒカルを指さした。
「って、げっ! 塔矢も同じ服じゃん」
和谷の顔から見る間に血の気が引いていった。伊角はそんな和谷に「どうしたんだ?」と聞いている。
永夏は氷のように冷たい眼差しを向け、秀英はぽかんと口を開けていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

211:風と木の名無しさん
11/04/13 07:40:03.53 XCVM9QGsO
ヒカアキヒカアキ!
初々しさゆえにとまらないかんじでカワイイなあ

212:1/2
11/04/14 02:03:28.82 CE0hi+QzI
会話文・似非関西弁注意。人は特に決めてません。
ゲ仁ソさんだと思います。楽屋での一コマということで一つ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!?

「なあなあ」
「なに?」
「…ほんとお前ゲームすっきゃなー」
「お前も人の事言えんやろ」
「まあな」
「んで何?」
「あ、何言おうとしてたか忘れた」
「ふーん」
「ふーんてなんやねんふーんて」
「忘れたなら俺どうすることもできんやろ」
「それもそうやけどー」
「暇なら差し入れ食うたら?」
「うん。…何やこれ!?」
「美味い?」
「おう!めっちゃ美味いで!お前も食うてみ食うてみ!」

213:2/2
11/04/14 02:05:51.24 CE0hi+QzI

「ええよ、俺んちにいっぱいあるから」
「え?これお前からの差し入れ?」
「差し入れっちゅーか、美味しいから持ってきただけ」
「何やねんーじゃあ言えよー」
「俺の持ってきた食べ物を気付かずお前が食べて喜んでる様子を見たかったやもん」
「それやったらバラしたらあかんちゃうの?」
「気付かれないの嫌やん」
「なら普通に渡せばええやんか」
「それはつまらんしー」
「ホンマめんっどくさいなーお前ー」
「せやろ?」
「ははは。でもそういうとこすっきゃで」
「…」
「どした?」
「…恥ずかしい奴」
「せやろ?」
「…俺もお前のそういうとこ好きやわ」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!?

失礼しました。

214:風と木の名無しさん
11/04/14 17:41:06.40 wSUlaRBe0
>>213
ほのぼのイイネーGJ!
自分は勝手によ○この二人で想像してニヨニヨしたよw

215:すべてが欲しい 1/7
11/04/14 19:08:36.88 1sz9AqBH0
ヒカアキ? ヒカアキです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

囲碁ゼミナール初日の夜、ヒカルが大ホールで指導碁をしていると、いきなり背後からアキラの声がした。
「進藤、ボクと打て」
ヒカルは振り向いて仰天した。スーツ姿のアキラが椅子に腰かけていた。
酒の臭いがぷんと鼻をついた。目も完全に据わっている。
「お前、未成年のくせに酒飲んだのかよ」
「悪いか」
アキラが睨んだ。
「まあまあ、固いことは言わないでくださいよ、進藤先生」
浴衣姿の客がなだめるように両手を上下させた。
「名人になったお祝いにぱあっとおごったんです。十九歳なんて成人みたいなものですしね」
「何杯飲んだらそうなんだよ」
「ビールを二杯だ」
アキラが即答した。
「お前って酒よえーんだ」
ヒカルは和谷のアパートでリーグ戦を行う時、よく缶ビールを飲んでいる。
一、二本なら勝負に影響することもない。酒に対する強さは自分のほうが上らしい。
「大ジョッキで」
「大ジョッキかよ!」
「進藤、なぜボクと打たない」
アキラが身を乗り出して詰め寄った。
「打つも打たないもお前、忙しいじゃん。テレビとかにも出てんだろ。史上最速でタイトル獲った名人様だもんな」
「進藤、グーを出せ」
ヒカルは反射的に拳を握り、握ったとたん「しまった!」と思った。
だが、遅かった。アキラはすでにパーを出していた。
「ボクの勝ちだ。今からボクと打て」
「何これ。塔矢門下の伝統芸?」
その時、ホテルの従業員が会場を閉める旨を告げた。アキラは上着をつかんで腰を上げた。
「ボクの部屋へ行こう」

216:すべてが欲しい 2/7
11/04/14 19:09:59.83 1sz9AqBH0
ヒカルは仕方なくあとに従った。

514号室は布団が二組敷かれているだけで、誰もいなかった。
アキラはハンガーに向かって手を上げ、そのまま空を握った。挙句、バランスを崩して横ざまに倒れてしまった。
「大丈夫か?」
ヒカルは立ち上がろうとしているアキラを支えた。
「ボクは平気だ、何ともない」
アキラは自力で立ち上がり、覚束ない手つきで上着をハンガーにかけた。
「なあ、お前もう寝たほうがいいんじゃねえの?」
「ボクはキミと打ちたいんだ」
アキラは窓辺の椅子に座り、碁笥の蓋を開けた。
ヒカルも向かいに腰かけたその時、ドアが開いた。
「あ、進藤君、来てたんだ」
浴衣姿の芦原が入ってきて、いそいそと自分の鞄を開けた。
「女子大生の団体が下に泊まってるんだ。よかった、おつまみ持ち込んどいて。アキラと進藤君もどう? 一緒に来ない?」
「いや、オレたちこれから打つんで」
「そっか」
芦原はビニール袋を抱えると、戸口でスリッパを履いた。
「アキラ、先に寝てていいからね。オレ、今日は帰らないかもしれないから」
そう言い残して芦原は出て行った。アキラはもう白石を盤上に置いていた。
ヒカルは黒石を一つだけ置いた。アキラの先番だ。
しばらく、打つ音だけが響いた。
「確かにボクは忙しい」
独り言かと思うような小さな声だった。
アキラは視線を盤上に落としたまま続けた。
「だが、何も二十四時間忙しいわけじゃない。碁会所にだって顔を出している。それなのに、どうしてキミと打つことができないんだ」
「だから、予定がうまく噛み合わないんだろ」
ヒカルは勝負に集中しようとした。
いつもの食ってかかるような喧嘩腰のアキラではない。
胸の内を切々と訴えるような口調だ。それがなんだか落ち着かなかった。
「キミの家に電話ばかりしているおかげで、キミの家の番号をそらで言えるようになってしまった」
「オレはオレで忙しいんだよ」

217:すべてが欲しい 3/7
11/04/14 19:11:14.69 1sz9AqBH0
「いや、キミはボクを避けている」
「そんなことするかよ」
ヒカルはアキラを見ずに答えた。
「本当か?」
アキラが顔を上げた。
「ボクの目を見て答えろ」
アキラの目は酔いのせいで赤く潤んでいた。ヒカルは横を向いた。
「わかったよ、お前を避けてたよ。これでいいか」
「なぜだ? なぜ避ける?」
ヒカルは白石をつまみ、また碁笥に戻した。
「なんか昔を思い出して」
「昔?」
「お前を追ってたころ。お前はもうプロなのにオレはまだ院生で、必死になって追いつこうとしてたころ。
お前はずっと先を歩いてたころ」
「キミはすぐに追いついたじゃないか。ボクがタイトルを獲ったくらいで先へ行ってしまったと思っているのか? 
その程度でへこたれているのか?」
「へこたれてるとかそんなんじゃねえけど、でも、気分が塞ぐっていうか。ああ、一人なんだなって考えてさ。
この時期は苦手なんだよ。ゴールデンウィークって」
「では、今の状態は一時的なものなんだな?」
アキラが念を押すように尋ねた。
「また以前のように打てるんだな?」
「ああ、そのうちな」
ヒカルはバチッと音を立てて打った。
「よかった」
アキラは安堵したように椅子の背に身を預けた。
「なぜだかわからないが、キミと打てないとひどく不安なんだ」
アキラはネクタイをゆるめ、ボタンを外した。
「心細くてたまらない」
突然、アキラの体がぐらりと前に傾いた。
ヒカルは慌てて抱きとめた。体の線が薄いシャツ越しに生々しく伝わった。
「塔矢、お前もう寝ろ。な? 飲み過ぎだって」
「いやだ。今夜打てなければ、次はいつ打てるかわからないじゃないか」

218:すべてが欲しい 4/7
11/04/14 19:12:49.06 1sz9AqBH0
「暇な時はできるだけお前と打つようにするよ」
ヒカルはアキラを引きずって布団まで運んだ。
「本当だな? 信じていいんだな?」
「ああ、信じろよ。オレはお前と一生一緒に打つ」
ヒカルはアキラのために掛け布団をめくってやった。
アキラは寝そべったまま、目を見開いている。
まるで目の前でマジックの種明かしをされた子供のような顔だ。
「今わかった」
「何が?」
「ボクはキミのすべてが欲しい」
アキラは体を起こし、ヒカルのジャージの襟をつかんだ。
「キスをしてもいいか?」
答える前にアキラはキスをした。熱っぽい息が混ざり合った。
初めてキスをするのに、ああ、これはアキラの味だと思った。
Tシャツの裾からアキラの手が忍び込み、乳首を触った。
何度も撫でられるうちにヒカルの乳首は硬くなった。
アキラはTシャツをめくり、乳首を舐めた。
「……ん」
もう片方の乳首はアキラが親指でこねくり回している。
ヒカルはアキラの後頭部を抱き締めた。
「……塔矢……こんな、こと……どこで覚えたんだよ」
「中学の時、同級生に見せられたんだ」
アキラが口を離して答えた。
「男同士の性行為を収めたビデオを」
「それ、イジメじゃん」
「その当時は男同士でも性行為ができるとは知らなくてね、勉強になったと礼を言ったら変な顔をされた」
「そりゃそうだ」
「でも実際、こうして役に立っている。やはり彼らには感謝しないと」
「ほんとお前、打たれ強いっていうかなんていうか」
アキラはヒカルを仰向けに寝かせ、下着ごとズボンを引き下ろした。
怒張したそれが夜の冷えた空気に晒され、ヒカルは痺れるような快感を覚えた。
ヒカルはぼうっとした頭でアキラに含まれる自身を想像した。

219:すべてが欲しい 5/7
11/04/14 19:13:57.56 1sz9AqBH0
だが、アキラの舌はヒカルのそれには向かわず、蟻の門渡りを刺激した。
次にアキラは陰嚢をしゃぶり、カリ首の裏を吸った。
「……ひっ……いっ……あぁっ」
ヒカルの口から喘ぎ声が漏れた。
アキラは側面に唇を這わせながら根元を揉んでいる。
ヒカルは自身から先走りが溢れるのを感じた。
アキラは丁寧に先走りを舐め取るが、決して先端には触れない。
それがもどかしくて、放尿を我慢する時のように腰が甘くうずいた。
「とうや……も、だめ」
アキラがヒカルをくわえ込んだ。
「……んんっ!」
ヒカルは踵でシーツを何度もかいた。
気づいたら射精していた。アキラがごほごほと咳き込んだ。
「……お前、上手すぎ」
「ビデオで見たからな」
アキラは手の甲で口の端を拭った。少し涙目になっている。
自分も同じような顔をしているのかなと思ったが、きっともっとだらしない表情だろう。
「もしかして洋モノ?」
「出演していたのは白人男性と黒人男性だった」
「またマニアックだな」
アキラはネクタイをほどき、シャツを脱いだ。スラックスも靴下も脱ぎ、全裸になった。
ヒカルは何もする気が起きず、横たわっていた。
何せ、生まれて初めてキスをして、生まれて初めてフェラされたのだ。
アキラは精を放ったばかりのそれを手でしごき始めた。
「なあ、オレって下なの?」
若いそれはすぐに猛った。アキラはぎこちない仕草でヒカルにまたがった。
「言っただろう、キミのすべてが欲しい」
ヒカルの先端を自分の秘所に当てると、アキラは腰を沈めた。
だが、なかなか入らない。
「あのビデオだと簡単そうだったんだが」
「なあ、位置変わろうか?」
ヒカルは肘をついて半身を起こした。

220:すべてが欲しい 6/7
11/04/14 19:14:59.38 1sz9AqBH0
「いい、これくらいどうってことない」
アキラは眉間に皺を寄せながらヒカルを飲み込もうと必死だ。
ヒカルは大人しく仰向けになった。
その時、先端がずぶりと突き抜けた。
アキラが大きく息をつく。ヒカルのそれは徐々に温かい肉壁に包まれていった。
ヒカルの悦びに比例するように、アキラの呻き声も大きくなっていった。
「あんま無理すんなよ」
ヒカルはもう一度半身を起こした。
「大丈夫だ」
アキラは今やヒカルをすっぽりと収めている。
俯き加減の顔から涙が一粒ぽたりと落ちた。
「大丈夫って泣いてんじゃねえかよ」
「嬉し泣きだ」
アキラがヒカルを見た。
その拍子にまた涙がこぼれた。
「キミはボクのものだ」
体が丸ごと心臓になったようにドクンと脈打った。
アキラはヒカルの腹に手をつき、腰を動かし始めた。
「……ん、塔矢」
ヒカルは背を布団に預けた。
甘美な気だるさに支配され、半身を起こしていることができなかった。
「……しんどう……はっ……あぁっ」
アキラはしばらく上下の単調な動きを続けていた。
そのうちコツをつかんだらしく、腰を回転させてより深い快楽を得るようになった。
「……しんどう……しんどう……ぁあっ……ああっ……ぁんっ」
「……とーや……とーや」
アキラの動作がどんどん大きくなっていった。
ずちっずちっと粘膜が立てる音の他に、二人の荒い息遣いが部屋に満ちた。
「……とーや……イく」
ヒカルはアキラと指を絡め、体を引き寄せた。
「キスして、とうや」
アキラがキスをした。

221:すべてが欲しい 7/7
11/04/14 19:15:59.71 1sz9AqBH0
先程のフェラのせいでほんのりと生臭かった。
アキラは無理な姿勢で抜けそうだと思ったのか、力を入れた。
ヒカルの体が震えた。ヒカルはアキラの髪をくしゃくしゃにして頭を抱え込み、強引にキスを続けた。
腰が跳ね、果てた。
アキラが口を離し、白い首をのけ反らせた。
ヒカルの腹に熱い精液が放たれた。
アキラはそのまま、ハアハアと息を切らしながらヒカルにまたがっている。
「塔矢、来いよ」
ヒカルはアキラの腕を引き、ぎゅっと抱き締めた。
「キミ、べたべただ」
「あとで一緒に風呂入ろうぜ」
「ここの大浴場、二十四時間入れるって」
「そこでもう一回って言ったら怒るか?」
「怒るわけないだろ」
その時、ドアの開閉する音が聞こえた。
「あれ、酔ってるせいで変な幻覚が見えるよ?」
芦原の声だった。
「芦原さん!」
二人は急いで起き上がった。
「そうだよな、これは幻覚だよな。さっきそこで煙草吸ってた緒方さんもきっとスナフキンだよな。
スナフキン、オレをムーミン谷へ連れてって」
芦原はふらふらと廊下に出て行った。
ヒカルはジャージを元に戻すと、全裸のアキラの代わりに芦原を追いかけた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

222:風と木の名無しさん
11/04/14 20:12:50.28 6PayTgOJ0
>>221
トリップ付けたほうがいいと思う

223:風と木の名無しさん
11/04/14 20:47:15.94 vXWU4Nzl0
>>215
連投するなら間を置きなよ

224:215
11/04/15 10:23:30.93 ee4/hlIC0
すみません、連投は二度としません
うpはやめようやめようと思っていたので
これを機にやめます

225:風と木の名無しさん
11/04/15 11:14:12.96 dJtHJJKz0
>>215
お疲れ様です。
リバもの苦手みたいなので、流し読みしかしてないので感想言えなくてごめんね。
でも、ふたりのことが好きで一所懸命書いているんだね、と思っていました。
元々やめたい気持ちがあったのなら、しょうがないとは思いますが、残念ですね。

>>223
これで満足ですか?
二日空けてるのにダメなんですか?
どのくらい空ければいいのか、ちゃんとご自分の意見を言ってくださいよ。

URLリンク(bbs.kazeki.net)

226:風と木の名無しさん
11/04/15 14:18:28.81 xgUz81pH0
>>225
たった2日で「空けてるのに」?
どのくらい空ければいいのか、スレを半年ROMったら解ると思うけどw
心象が悪くなるのはトンチンカンな擁護するアンタじゃなく
ジャンル(カプ)そのものだって事を忘れないで

227:風と木の名無しさん
11/04/15 14:42:48.12 NCw2YH1+0
2日空いて他の人の投下もあるのに
連投なのか?普通にこれで良いと思うが

228:風と木の名無しさん
11/04/15 15:27:33.80 +SB8LktQ0
続けてならまだしも、別投下挟んでるし
まぁ目を剥くほどの事はないんじゃないかと思う。
ジャンルが悪く思われるんだぞ!って脅しみたいな言い方は違うと思うがなぁ

229:風と木の名無しさん
11/04/15 15:47:31.65 Rynx2nobO
避難所行こうぜ!
>>225がせっかく誘導してくれてるんだし

230: ◆k/mlQdBDxE
11/04/15 17:30:45.63 2dfdIw18O
碁のアキラ×ヒカル×アキラでリバで続きものを書いてる者です
>>215さんとは別人です
実は、棚に投下されていたあなたのヒカアキSSがきっかけでヒカ碁にはまったんです
「スタバにて」というタイトルだったかな
今回も、酒に酔った襲い受けアキラに大変禿げました、もうつるっつるに
ヒカ碁にはまったきっかけをくれてありがとう
棚にSSを投下した数日後に何気なく携帯で棚を見て、あのSSを見ることがなかったら、今ヒカ碁にはまってなかったと思います
二人の間にあるあたたかくてやわらかい雰囲気が本当に好きです。
このジャンルで初めて同人誌というものを買って、実はリバに目覚めたのもこのジャンルでした
うpをやめると聞いて残念です。
印象的な一文がところどころに散りばめられていて、ときどき頭の中でその文を再生してはニヤけてました
萌えをくれてありがとう
どうぞお元気で


次の投下どうぞ

231:風と木の名無しさん
11/04/15 19:23:36.34 Ww9c2Wxf0
もしかして別人かな?とは思ってたけど、
だからこそ>>221にはトリップつけて欲しかった

232:215
11/04/15 21:24:34.14 ee4/hlIC0
私のせいで波風が立ってしまって申し訳ありません
萌えを受け止めてくれる棚にはとても感謝しています
管理人様もいつもありがとうございます

>>230さんの仰る通り
去年から今年にかけて投下されたヒカアキ計7作は私の作品です
毎回これが最後と自分に言い聞かせて投下するのですが
萌えが爆発しそうになるたびに衝動的に書き上げてはうpしていました
結果的に自分本位な行動になってしまいました
トリップを付けることも考えましたが
だったら次はサイトをオープン、何なら同人活動も、とエスカレートするのは目に見えていました
本来、のん気にSSを書いていられるような状況ではないため
自分に区切りをつけるいいきっかけを与えていただいたと思っています
長々と失礼しました

>>230さん、正直、涙が出るほど嬉しいです

233:風と木の名無しさん
11/04/15 21:31:42.28 xVX0cZ1B0
馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。

234:風と木の名無しさん
11/04/15 21:52:59.08 vWhm5NRr0
腐女子ってめんどくさい生き物だな

235:風と木の名無しさん
11/04/15 21:58:41.35 7HIQYyFz0
厨ジャンルって事がよくわかった

236:風と木の名無しさん
11/04/15 23:15:37.78 MYL1fE000
だから避難所行けって
URLリンク(bbs.kazeki.net)


237:女体化っぽく見えて実はそうではない1/9
11/04/16 01:00:13.19 9HvS9kNp0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | |  |> PLAY.     | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (*´ω`*)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
青空のこぶしの宗×拳。
女体化っぽくて実はそうではない。
やはり最後にちょっとだけ女絡み。

238:女体化っぽく見えて実はそうではない2/9
11/04/16 01:01:20.73 9HvS9kNp0
宗武は特に何とは無しにただブラブラと上海を歩いていた。
一応仕事が終わったので、これから帰る所なのであるが、
家に帰っても誰一人待つ人間が居る訳でもないからただこうやってブラブラしているのである。
そうして歩いているうちに、赤線地帯まで来ていた事に気がついた。
ここに用は無い、そう思って踵を返そうとした時、声を掛けられた。
「ねえそこの少尉さん…」
振り向くと女が立っていた。こんな所に立っているなら、当然売春婦であろう。
「よく俺が少尉だと分かったな」
「階級章見れば分かるじゃない。前にもドイツ軍人なら見た事あるわ。…ねえ、どう、これから?」
宗武は普段は売春婦などに興味は無い。が、何故かこの時は女を買ってみる気になった。

女を連れて連れ込み宿に行った。
「良い部屋ねえ、やっぱりお金あるのね」
「まあな」
女の言う事を右から左へと聞き流しつつ、改めて女の顔を見た。悪くない。
いや、かなりいい方だと思う。しかしさっきから、どこかで見たような気がしてならない。
が、宗武は瞬間記憶能力では無いにしても、記憶力はかなりいい方だ。
その自分が一度会ったことのある人間の顔を覚えていない筈が無い。
(気のせいか…)
宗武は考えを打ち消した。
一足先に寝台に上がった女はさっさと服を脱ぎ始めた。せっかちな女だ、と思った。
まあいいか、と思って宗武も服を脱いだ。相手がその気なら、さっさと済ませてしまうまでだ。
寝台に上がって女の上に被さる様にすると女が口づけを強請ってきたが、それを宗武は制した。
「俺は買った女とはせん」
「…本命とじゃないとキスしない主義?」
「…まあな」
「ふーん、結構一途なんだな」
いきなり女の口調が変わって何、と警戒する間もなく、相手の動きを封じる秘孔、新胆中を突かれた。
動けなくなった宗武の下から女はさっさと抜けだした。
「気がついて無いとは思ったが…やっぱり劉家拳には伝わって無えんだな」
さっぱり事態が飲み込めない。
「…どういう事だ…!」

239:女体化っぽく見えて実はそうではない3/9
11/04/16 01:02:09.03 9HvS9kNp0
「あーまだ分からない?」
そう言って女が自分の秘孔を突く、すると見る見るうちに女が、男に、よく見慣れた人物に変わった。
「拳志郎…!」
「あーこれは北斗神拳に伝わる木場っていう秘孔で、これを突くと男は女に、女は男に化けれるんだぜ」
「…何故、俺に…」
「ああー?いや、この秘孔ってさ、便利だけど今一使い勝手が悪くって、いや、体格変わるだろ?
だから『実は男だったんだぜ!』って女から男に戻ると、どう考えても全身の服が破けて素っ裸になるだろ?
だから上手い事披露できるシチュエーションをだな…」
「そんな事はどうでもいい…!」
「ああん?」
「何故俺だった…!」
「いやー、だって、ねえ、玉玲が女買う訳無いし、飛燕を騙すのも悪いし、ねえ。
まあ、お前なら上手い事騙されてくれるかなーっていう…、じゃ、そういう事で」
拳志郎は再び自身の秘孔をついて女の姿に戻ると、床の服を手に取った。恐らくこれから帰る気なのだろう。
「ふ…」
「?」
「ふざけんじゃねえこのクソガキッッ!!」
宗武は、自身の怒りによって新胆中を解いた。
「うわっ!」
拳志郎が避ける間もなく、宗武は拳志郎を寝台の中に引きずり込んだ。
「そう怒るなよ、そんなに溜まってたの?」
その拳志郎の口調がより一層宗武を腹立たせる。もう何が何でも絶対このクソガキを許さない、と思った。
拳志郎は売春婦としてここにやって来たのだから、売春婦として対価を払わせるべきだ、と宗武は考えた。
宗武は女になっている拳志郎の然るべき所に然るべき物を突っ込もうとした。
しかし、先端が触れた、と思った瞬間拳志郎は男に戻っていた。
「…どういう事だ」
「これは女になるんじゃなくて女に化ける秘孔だからな。だから実際にはヤったりとかできねえよ」
だから諦めろ、と拳志郎が言おうとすると、宗武は如何にも悪人らしい悪い笑みを浮かべた。
「穴ならあるだろうが」

240:女体化っぽく見えて実はそうではない4/9
11/04/16 01:03:01.85 9HvS9kNp0
それを聞いて拳志郎が悪い予感をさせる間もなく、いきなり宗武は突っ込んできた。
「痛い…痛い…痛ぇ!!」
「いい歳した…男が…ごちゃごちゃ…騒ぐん…じゃねえ!」
「っ…さっきは…ガキ扱い…した癖に……一度…抜いて…慣らすとか…しろよ…お前だって…キツい…だ…ろ…」
実際拳志郎の拒否反応が強すぎて宗武もただ痛いだけで全然進めない状態だった。
「断る…テメエ絶対逃げる…だろ」
「逃げ…ねえ…から…なあ…頼む…から…」
拳志郎が懇願する。普段なら拳志郎に懇願されたらいい気分だっただろう。しかしこの状況では到底楽しめない。
そして拳志郎の言う事は信用できない。ここは一度抜くより、入れたままで済む方法を取るべきである。
「ぬんっ!」
痛みを快楽に変える秘孔を突いた。
今まで拳志郎の全身を支配していた(痛みを与える箇所は身体のごく一部分と言えど、それは全身の痛みに感じられていた)
痛みが一気に快感に変わって、全身の緊張が一気に解けた。
それで今までどうにも進めなかった宗武は勢い余って一気に一番奥まで突っ込む事になり、
それによって途轍もない快感を味わった拳志郎は文字通りあっと言う間に達してしまい、
それによって陽物を締め付けられた宗武も達して拳志郎の中に大量に射精した。ここまでの経緯は実に一瞬であった。
「ああっ!」
「ぐふっ!」
何故宗武がぐふっと言ったかと言えば、
それは拳志郎が射精した時に角度の問題で拳志郎の液体をもろに顔に浴びる事になったからである。
大量に射精された拳志郎は排泄感に似た物を感じて、少し不快な気分になったが、
秘孔を突かれている今はその不快感すら快感といった様子で、再び軽く射精した。
軽くと言ってもそれはかなりの量だったので、また宗武は顔に大量に浴びた。
「……」
顔からぼたぼたと粘度の高い大粒の雫を滴らせ、宗武は拳志郎を睨んだ。
拳志郎はと言えば射精の余韻なのか何処か夢見心地な目付きで焦点が合っていない。
暫くして漸く宗武が睨んでいるのに気付いたようだった。
「…あ…何?…汚い面近づけんじゃねえよ…」
「!…誰の所為で汚れたと思ってる!!誰の!」
「そりゃお前が無理矢理…」
「うるせえ!ごちゃごちゃ抜かすんじゃねえ!」

241:女体化っぽく見えて実はそうではない5/9
11/04/16 01:04:08.62 9HvS9kNp0
「うわっ…」
また乱暴に動かれて、その度に拳志郎は達してしまう。
それにつられて宗武も達してしまうので、二人とも殆ど絶え間なく射精しているかのような状態になった。
達する度に顔が汚れるのが嫌なので、宗武は拳志郎の液体が拳志郎本人の顔にかかるようにしてやった。
しかし顔にかかっているのに気付いているのかどうか、寧ろ顔にかかっているのを喜んでいるようにも見える。
この変態め、と自分が拳志郎の秘孔が突いたからそうなった事を全く棚に上げて、宗武は内心悪態を突いた。

それからそういう状態で時は過ぎ、宗武も流石にそろそろ限界かと思って引き抜こうとした。
「ん…」
拳志郎が制止するように宗武の髪を掴んだ。
「次…最後…な」
まあ最後だと言っているのだからいいだろう。
一旦大きく引いた後、突き入れてやった。
「っ!」
一際大量に射精した後、一気に疲れが出た。
拳志郎を見やると、物憂げな様子をしているように見えたので、なんとなく口づけした。
口を離すと、拳志郎が驚いている様子だったので、なんだろうと考えると、

『…本命とじゃないとキスしない主義?』
『…まあな』

という会話を思い出した。拙い事をした、と思っていると、「早く…抜けよ…」と拳志郎に言われたので、我に返って、抜いた。
抜くと同時に拳志郎は眠りに落ちたようだった。宗武にも一気に睡魔が襲ってきたので、寝た。

242:女体化っぽく見えて実はそうではない6/9
11/04/16 01:04:58.90 9HvS9kNp0
「…」
拳志郎は目を覚ました。体が痛い。隣を見やる。宗武が居ない。
「…」
「早く風呂に入れ」
声がした方を見ると、風呂から出たらしい宗武が立っていた。
「もうちょっと寝てたっていいだろ」
「料金が嵩む」
「どうせ金持ちなんだしいいだろ」
「お前のせいで余分な金は払いたくない」

風呂に入って、出た後、辺り一面情事のせいで汚れまくっていたが、奇跡的に服は無事だったので、
再び秘孔を突いて女に変身した後、服を着て化粧直しをした。
「…化粧ってのは、必要なもんなのか?」
「そりゃ女だったらするだろ」
売春婦の恰好ですっぴんだったら、変である。
「しかし随分部屋汚れたよねー、少尉さん、お前が弁償してね」
「なんで俺が」
「お前のせいだろ」
「お前のせいでもあるだろ」
「お前の方が沢山出しただろ」
「お前も出しただろ」
「でも、対外的には男女二人組って事になるから、宿の従業員は全部お前のせいだと思うだろうね」
「男女…にしては女の臭いがしないのが変に思われるだろうがな」

243:女体化っぽく見えて実はそうではない7/9
11/04/16 01:06:05.33 9HvS9kNp0
「あ、そうだ」
部屋を出た後、拳志郎は懐から香水を取り出して自分と宗武に思いっきりかけた。
「臭っ!何すんだてめえ!」
「あ?だって散々やったから臭いじゃん」
「…気で浄化すれば済む話だろうが!」
「ああ、そうだね」

なんだかんだ言って、宗武が結構金を払って宿を引き払った。
「じゃ」
「…ああ」

「ただいまー」
ただいまー、と言ってもここは拳志郎の家では無く、飛燕が住んでいる教会である。
拳志郎の家(というか玉玲の家)は別に売春婦が出入りしてもおかしくないといえばおかしくないのだが、
これからする悪戯の内容を考えると自宅から出るのはなんとなく気が退けたので教会で女に化けたのだった。
…教会に売春婦が出入りする方がよっぽどまずいんじゃないか、と飛燕は思ったのだが、
拳志郎に住まわせてもらっている身なのであまり文句は言えないし、
拳志郎は文句を言っても聞き入れる人間では無い。
一応拳志郎にこの話を持ちかけられた時「エリカの情操教育に悪い」と反論はしたが、当然の如く聞き入れられなかった。
さて、その拳志郎が帰って来て奥の部屋へ入って行ったのを見て、飛燕は
「なんだか疲れてる様子だなあ~」と文麗に話しかけた。
「やっぱり怒られたんじゃないのかしら。宗武はそういう冗談の類は嫌いだし」
「でもあの二人が本気で戦ったらもっと重傷を負う筈だあ~。疲れてるだけで、怪我をしてないみたいだあ~」
「そうね…」
部屋から出てきた拳志郎はやっぱり疲れている様子で、飛燕と文麗の話しかけにも適当な返事しかせず、帰って行った。
飛燕としては拳志郎が心配でない訳では無かったが、まあ自業自得だし、
それよりも昨日も今日も売春婦姿をエリカの目に入れる事無くこの事案が終わってよかったと思った。

244:女体化っぽく見えて実はそうではない8/9
11/04/16 01:06:54.07 9HvS9kNp0
拳志郎は家に帰った後、できるだけ屋敷の人間と顔を合わさないようにして風呂に直行した。
その後も同様に気をつけて自室に戻った。
まずい事をした、と拳志郎は思った。
どう考えたってあの時の宗武の態度は、自分に惚れたという雰囲気だった。しかもそれで自分が嫌じゃない。
満更嫌でも無い。むしろちょっと嬉しいかもしれない位の勢いだ。その自分の心の動きが更に拙い。
だって自分は玉玲を愛している。玉玲を一番愛している。それは今も昔もこれからも決して揺るがない。
しかし自分は宗武に惚れたっぽい。それが拙い。
愛している女がいるのに、愛する妻が居るのに他の男と諸思いになる?いやそれはない。どうしてそんな真似ができる。
自分はどうしてあんな冗談をしようと思ったのか。どうして相手に宗武を選んだのか。
ひょっとしたら自分で気づかなかっただけで最初から宗武の事を好きだったんじゃないか。奴の方ももしかしたら…。
その日はずっと部屋から出ないでゴロゴロしていた。

宗武も宗武で家に帰った後、気分が優れない。
あんなことをせずに、とっとと拳志郎を叩きだせばよかった。どうして自分はあんな振る舞いに及んだのだろう。
多分今まで気付かなかっただけで、自分は拳志郎に前から惚れていたに違いない。
拳志郎は本当に冗談であんな事をしてきたのか、それとも自分の心持を見抜いてしてきたのか、わからない。
さっきかけられた香水が臭いのだが、宗武は風呂に入ったり気で臭いを消したりすることなく、
その日は一日中寝台でゴロゴロしていた、


245:女体化っぽく見えて実はそうではない9/9
11/04/16 01:07:43.35 9HvS9kNp0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | |  □ STOP.      | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (*´ω`*)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

なぜこの二人では真っ当なシチュエーションが思い浮かばないのだろう

246:キム×空 ◆l5uYUz79nM
11/04/17 01:10:51.64 VDWD4LUQ0
キム/タクと唐/沢さんがドラマで共演したらという妄想の産物
キム×空です。
棚15よりダラダラと続けております。
保管庫のシリーズ物に収録して頂いております。ありがとうございます。
超超SSですが、読んで頂けたら幸いです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

春だ。
いい天気だ。
色とりどりの花がいっぱい咲いて、
なんだか全てが祝福しているような、そんなうららかな日曜日。
の、もう昼過ぎ。
やっとなんかゴトゴト音がする。
リビングのドアがゆっくり開き、のそっと音でもしそうな登場で空沢さんが起きてきた。
「おはようございます。…すごいですね、寝グセ」
「あんまりすごいからお前に見せようと思って」
会社の女の子が見たらイメージ違いすぎて卒倒しそうだ。
空色のパジャマは俺と会う前から持ってて、今もよく着ている。
きっと前の奥さんが買ったものだろう。
どうせ俺が同じもの買って来たってこの人は絶対着ない。
でも嫉妬なんかもう無い。
だって今この姿を見れるのは俺だけなんだから。

247:キム×空 ◆l5uYUz79nM
11/04/17 01:11:47.75 VDWD4LUQ0
「コーヒーでも飲みますか」
「…だからー、コーヒーくらい自分で淹れるって言ってるだろうが。お前は俺を甘やかしすぎなんだよ。」
「甘やかしたっていいでしょ。好きなんだから。」
「お前みたいな奴と居たら俺はますます駄目な男になる。」
「空沢さんは今も昔もいい男ですよ。」
「お前が言うと嫌味なんだよ。」
「ちっちっち。わかってないな~」
ブツブツ言いながら俺の座っているソファの隣りに座ってくるもんだから
思わず近づいてみたりして。
「あぁ??…おい木村、コーヒー入れて来い」
「駄目。空沢さんが駄目な男になっちゃう」
首に腕を回せば一瞬逃げるけどすぐに抵抗を無くす。
あ、なんかこういうの久々でちょっとドキドキするんですけど。
「…お前が俺を駄目にするんだよ」
「じゃあ、いっそ…」
ただただ抱きしめる。

じゃあ、いっそ、俺無しじゃ生きていられなくなるまで駄目になってください。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
世の中色々ありますが、春を感じて頂けたら嬉しいです。
ありがとうございました。

248:キム×空 ◆l5uYUz79nM
11/04/17 01:13:23.78 VDWD4LUQ0
お恥ずかしい
トリップに番号を巻き込んでしまいました。
申し訳ありません…

249:風と木の名無しさん
11/04/17 02:15:22.14 aVrz50iHO
キム空待ってましたーー!

まっすぐな木村と、ちょい押しに弱いからさーが相変わらずかわええええ

リアタイで出会えたので告白しますが、木村の出張帰りをカレー作って待っちゃうからさーと
「俺のことちょっと好きになっちゃった?」とか言っちゃう木村が大好きです。
そして口調があまりにも中の人っぽいので、脳内再現率がぱねえっす。


あーもう二人とも可愛い!おっさんたちがイチャコラしよってからに…また書いてください、お待ちしてます。

250:風と木の名無しさん
11/04/17 11:35:32.69 rcduXAwTO
>>246
萌えすぎて禿げました
ありがとうございます!
次はキス以上まで進むといいなw
また投下よろしくお願いします

251:熊が泣く日和 1/4
11/04/17 21:58:20.06 Pk96CNZrP
半生 邦画「落.語.物.語」より師匠←コハル
・超絶ネタバレ注意  ・エロ無し、ぬるい、暗いです
パチン (>⊂(・∀・ )マイドバカバカシイヤオイヲヒトツ

252:熊が泣く日和 0/4
11/04/17 22:10:07.34 Pk96CNZrP
すみません、引っ掛かりまくっているので後ほど…
(・∀・;)ベンキョウシナオシテ マイリマス!


253:熊が泣く日和 1/6
11/04/18 00:09:10.06 4Z42Ye7V0
投稿再挑戦、半生 邦画「落.語.物.語」より師匠←コハル
・超絶ネタバレ注意 ・エロ無し、ぬるい、暗いです
パチン(>⊂(・∀・)マイドバカバカシイ(

今日も日差しは温かい。洗濯機は師匠と、僕のぶん、二回楽々回せるだろう。
それが済んだら掃除をやって、ご指名のライスカレーに取りかかる。
家事がまるまる僕の仕事になって、最近ようやく慣れてきた。
師匠は相変わらず家事にうるさく、稽古にいい加減だ。
師匠はよく僕をからかってのほほんと笑う。

254:熊が泣く日和 2/6
11/04/18 00:11:39.54 4Z42Ye7V0
「小.春、お茶くれーい」家のどこかで声がした。僕は洗濯機の蓋をばたんと閉めて返事をする。
「はい!緑茶ですか?」「うん、濃いやつねー」
僕は慌てて手を拭いてから台所に駆け込み茶筒を手に取る。そうだ貰い物のカステラが残ってる。
厚めに切って盆を持ち、こぼさないよう慎重に、師匠の部屋に運びこむ。
「師匠、緑茶です」
「うん、そこに。そうそう」師匠は本から顔をあげるとニヤッと笑った。
「カステラかあ、気が利くな。手づかみってのもたまにはオツだよな」
「あっ」僕は正座のままで小さく跳ねる。皿にフォークが載ってない。「すみません!すぐ、すぐ持ってきます」
「いい、いい、それより、今日は肉じゃががいいな」
「え、昨日は…ライスカレーって」
「そうだっけ?忘れた。似たようなもんだろう、芋と、肉と、玉ねぎと」
一応の抵抗を試みる。「ジャガイモも、もう切ってますし、豚の薄切りは買ってこないと…」
「いや、今日は絶対に肉じゃがだな」
もちろんその抵抗は無駄だ。わかりました、と答えて立ち上がる。
「ああ、葵」部屋を出ようとする僕に師匠が声をかけた。
ああ、葵、それを聞くと心臓が砂粒を噛んだみたいになる。
世界じゅうの音がほんの一瞬なくなってしまったみたいになる。
師匠は気づかずにこにこと、小さな皿を僕に差し出す。
「カステラ、食っていいぞ。だから今日は肉じゃがでな。なんだそんな顔して。上物なんだぞ、これは」
手の中のカステラはすごく黄色い。

255:熊が泣く日和 3/6
11/04/18 00:14:08.72 4Z42Ye7V0
おかみさんが亡くなったすぐあとも、葬儀の間も、師匠は大きな声でわあわあ泣いた。時には呻くように泣いた。
人類が誕生してからやった泣き方の全部を試すように師匠は泣いた。葵、葵、ばか、葵と言って泣いた。
僕は家から取ってきた防虫剤臭い喪服を着て、できる雑用をこなしていた。
噺家には悲しいことがあった時、平気なふりで周りを笑わせる人と嘆き悲しむ人がいるらしい。
師匠は嘆き悲しむ人で、大きな体を揺すぶって涙を流した。葬儀に来た噺家たちの中に、小六は噺家らしくないと
厳しいことを言う人があった。僕は楽屋でいつもやるみたいにじっと顔を伏せていた。
本当は、おかみさんがどんなに師匠を好きで、師匠がどれだけおかみさんを支えにしていたか、言いたくて言えなかった。
そうして大泣きに泣いたあと、師匠はぱったり泣かなくなった。
仏壇に手を合わせてから高座に出掛け、上機嫌で帰ってくる。
僕の家事にあれやこれやと文句をつけて、理不尽ないたずらをして、毎日稽古をしてくれる。
けれど夜中にふと目が覚めると、隔たった部屋の向こうからきっと声が聞こえてくるのだ。
熊がしゃっくりするような、くぐもった声。
熊がしゃっくりをするのかどうか、僕は知らない。

256:熊が泣く日和 4/6
11/04/18 00:16:00.95 4Z42Ye7V0
台所は静かで妙に蒸し蒸しする。窓を細く開けてカステラを食べた。
こんなに温かいけれどあの人はずっと冬の中にいるのだと思う。
稽古中、台所に向かって師匠が「コーヒー」と叫んだあと、あるいは僕がつけている家計簿の食費の欄を覗き込んで
「なんだあ、やけに少ないな」と呟いたあと、師匠は変なくしゃくしゃ顔になり、僕はその度におかしな気持ちになった。
内弟子がこんなことを思うのは間違っている。でも僕が師匠を守っていかなければと思う。
おかみさんもそんな気持ちだったのかもしれない。おかみさんがくれた大学ノートを取り出して、僕は肉じゃがのレシピを
探し始めた。『六ちゃんは』と肉じゃがのページに書かれたメモを読む。
『六ちゃんは、ジャガイモのサイズにうるさいので、大きめのひと口大に切ること(六ちゃんのひと口は春ちゃんの2倍)』
その途端、自分でもよくわからないままに僕は狼狽してノートを勢いよく閉じた。
なにか後ろめたくて、誰かに何かを謝りたくてたまらなかった。初めてノートを見ずにご飯を作って、
僕は見事に鍋を吹きこぼした。

257:熊が泣く日和 5/6
11/04/18 00:18:21.92 4Z42Ye7V0
「ジャガイモが小さいよ、肉は牛だし。ライスカレーの材料、そのまま使ったろ」
「すみません」
「小.春には家のこと全部任せてるからなあ。父子家庭は大変だな」
そう言って師匠はわはは、と笑ったが、僕はどう応えたものかわからなかった。
「どうした、高座で何かあったか。…弟子入りしに来た時のフニャフニャに戻ってる」
僕は喋らなくてもいいようにご飯を箸でかき集めて頬張る。師匠もお茶をゆっくりと飲む。
おかみさんだったら「しみったれた顔するんじゃないの」とか、あの下町口調で言うんだろうか。
ご飯ばかり食べていたら、肉じゃががずいぶん余ってしまった。居候の身でおかわりは滅多にしないけれど、
今日だけは炊飯器を開ける。それをからかいもせずどこかぼうっとした師匠は、茶碗を突き出した。
「葵、おかわり」
自分のをよそってから師匠の大きな茶碗を受け取る。ご飯は温かい湯気をたてている。
師匠に茶碗を返す時、「小.春です」と僕は言った。
「ん?」
「僕は。今戸.家小.春、です」師匠はきょとんとしていたが、やがて「間違えてたか」と呟いた。
「今までも間違えてたか?」
「いえ!」すぐさま答えたが、顔で伝わってしまったらしかった。
平気になったつもりでも、こんな時にコミュニケーショ下手が出る。
「そうか。…悪かったな。小.春」謝られたのが意外で、僕はただ座るしかない。
「小.春」師匠が僕の目を真正面から見た。「はい」
「小.春。うん、お前は、小.春だ。な」「はい!」
「ほんとにいい名前だなあ。ぴったりだよな。まあ俺がつけたんだけどな」師匠はそう笑った。
「はい、師匠と、おかみさんに、つけてもらいました!」

258:熊が泣く日和 6/6
11/04/18 00:20:26.87 4Z42Ye7V0
途端に師匠はあのくしゃくしゃ顔になって、箸をぱたんと置いた。椅子が大きな音を立て師匠の大きな影が
食卓に落ちた。離れていこうとする袂をぎゅっと掴むと、あっけないほどの軽さで師匠はまた腰を下ろした。
広い手のひらでもっと広い顔を覆って、師匠は泣いた。手のひらの下で口が誰かを呼んだけど僕には聞こえなかった。
師匠はしゃっくりをする熊にそっくりで、僕は熊がしゃっくりをするかどうか知らないけど、袂を離すことができなくて、
机を回って師匠のそばに立った。一際大きな嗚咽が漏れ、それはすぐ僕のTシャツのお腹のあたりに押し当てられて
かき消され、僕は誰かに謝りたい気持ちのまま、師匠と一緒にフニャフニャと泣いた。

m(・∀・)mイジヨウ、オアトガヨロシイヨウデ
長々と失礼しました

259:風と木の名無しさん
11/04/18 07:24:35.38 WJYuYz6C0
>>258
ピ工一ノレの映画ですよね?あの巨体で想像して泣けた
映画見に行ってくる!

260:1
11/04/21 23:55:36.89 NrnXTQW6O
先輩×後輩。
生注意。当たり前ですがフィクションです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ぼんやりと、同僚たちのバカ騒ぎを眺めていた。
いつもなら一緒になってはしゃぐのに、今日はそんな気になれない。
かといって誘いを断ることもできず、片隅でひとり濃いめの酒を煽っている。


あれは、一瞬の判断ミスだった。
期待していたパートナーが故障してクラシックをフイにしてしまって以来、何となく不運なことが続く。

「ほんまに…もう…」

グチを言おうが溜息を吐こうが状況は変わらないのだが、沈んだ気持ちはなかなか元に戻らない。

「ユウジ!」

いつの間にか隣に先輩が座っていて、俺に抱きついてきた。

「あれはユウジらしくなかったねぇ。来週もユウジに会えると思ってたのに…残念だなぁ」
「はぁ」

擦り寄ってきた先輩は、既に相当飲んでいるらしく、顔は真っ赤だし、呂律も回っていない。

「……同情なら結構ですが」
「あれ、ユウジくん怒った?俺、そんなつもりで言ったんじゃないんだけど…」
「そんな風にしか聞こえません」



261:2
11/04/21 23:57:02.20 NrnXTQW6O
いつもなら、先輩のこの軽さも何とも思わないのだが、どうしても今日はイライラする。
俺を励まそうとしてくれているのは痛いほど分かる。
分かるけれども、今はそっとしておいてほしかった。

「ごめんごめん。やっぱ俺、うまいこと言えないや。何か励ますようなことが言いたかったんだけど」

きっと俺はものすごい表情をしているのだろう。
おちゃらけた顔が、一瞬にして悲しそうな顔になった。

「ごめんなユウジ。俺、ユウジ大好きだからさ……そんな辛そうな顔してほしくなくてさ…」

目がみるみるうちに潤み、すーっと一筋流れ落ちた。

「ちょ、ちょっと、コヤマさん?」
「……」

俺の服の裾を握り締めたまま、顔を肩口の辺りに押し付けて、先輩は本気で泣き始めてしまった。
これではどう考えても俺の方が慰めているというか、俺の方が悪者じゃないか。

「な、泣かないでくださいよ…俺もちょっと大人げなかったですか……ら!?」

俺の言葉が終わる前に。
本気で泣いていたはずの先輩は、にやりと笑ったかと思うと、俺の頭を抱え込んで口付けてきた。


262:3
11/04/21 23:58:38.61 NrnXTQW6O
「ユウジくんが元気になるおまじない」
「え、あの…」
「でもタバコはダメだよ。俺、嫌煙家だから」

確かにさっき同僚のを1本くすねて吸ったのだが、それを指摘されたことより、何が何やらすぐに理解ができなかった。
しかし、カメラの前で号泣してみせる先輩のことだから、あれは迫真の演技だったのだという考えが浮かぶと、急に顔に熱が集まる。

「あんた、アホやろ!」
「うん、アホ。ユウジが好きすぎて」

へらっと笑って、先輩はまたバカ騒ぎの中に戻っていった。

「ほんまにもう…」

新たな悩みが増えてしまった俺は、深い溜息を吐くしかなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
AFの件といい、隠居後の計画といい、彼らはネタが満載で困る。
あんたら本当に30代後半なのかと小一時間。

263:風と木の名無しさん
11/04/22 00:13:04.13 dYumraV8O
>>260
姐さんGJです!
ニヤニヤしながら読んでしまいました。
いい歳したおっさん達が、公の場で仲良くし過ぎで困りますねw
いいぞもっとやry

264:M/G/S/P/W 和蛇1/5
11/04/23 01:29:39.91 G72+IBsNO
金属の歯車 平和歩行者

初投下&携帯からです。改行おかしかったらごめんなさい

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

唐突に意識が浮上し、スネークは瞼を開いた。
目の前には金色の柔毛。
状況が掴めず、ぱちぱちと瞬きを繰り返し、思考を巡らせる。
…確か、任務を終えてマザーベースに帰還し、デブリーフィング後に食事や入浴を済ませ、自室で一服していたところにミラーが酒瓶を携えてやって来たのだ。


265:M/G/S/P/W 和蛇2/5
11/04/23 01:32:01.61 G72+IBsNO
安物の蒸留酒を嘗めながら、他愛もない話をしていたはずだが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
自分はベッドに座り、ミラーはそのベッドを背もたれ代わりに床に座り込んでいたと記憶している。
MSFの副司令官として、激務を日夜こなしているミラーもまた、自分と同じようにそのまま眠り込んでしまったのだろう。
…つまり、今目の前にあるのはカズの頭か…
寝起きのぼんやりとした思考で、やっとそこまで辿り着いた。
俯せに寝たまま、呼吸に合わせて僅かに前後するミラーの後頭部を眺めるともなく眺めているうち、いつぞやのミラーのぼやきを―これまた寝起きの思考の突飛さで―思い出す。
…俺はねこっ毛でなぁ、ああ、英語では何て言うんだ?cat coatでいいのか?髪が細くて、セットするのが一苦労なんだ。こう、ボリュームを出すのがな、毎朝苦労してるんだぜ…
その時は「色男も人知れず苦労してるんだな」などと茶化しつつ、猫の毛という言い回しがいまいちピンと来なかったのだが。


266:M/G/S/P/W 和蛇3/5
11/04/23 01:34:12.14 G72+IBsNO
成程、何時ものようにかっちりと固められていないミラーの髪は、確かに柔らかそうだ。
殆ど無意識のうちに、スネークは俯せたままミラーの頭へと手を伸ばしていた。
襟足から上へ向かって指先を差し込み、さらさらと指の間を擦り抜けて行く感触を確かめる。
先日、MSFの兵士たちが思いがけなく拾ってしまった子猫―ニュークと名付けられた―を思い出させる手触りに、我知らず口角が上がる。
…なるほど、確かに猫の毛だな…
頭頂部から下へ向けて手櫛の要領で梳いてみる。オールバックにする必然からか、やや長めに調えられたサイドの髪を下から持ち上げ、ぱらぱらと少しずつ手放してみる。
マザーベース内の自室であること、深夜であることも手伝って―酔いもまだ覚めてはいないのだろうという自覚もある―未だに完全には覚醒し切らない脳が命ずるままに、幾度もミラーの髪を梳く。
と、不意に手首を掴まれた。


267:M/G/S/P/W 和蛇4/5
11/04/23 01:37:04.07 G72+IBsNO
「…何だ、起きたのか」
「これだけ触られりゃ、いくら俺だって起きるさ」
小さく欠伸をしながら、ミラーがこちらに身体を向ける。膝立ちの状態で、掴んだ手首を一旦離し、スネークの左肩の下に手を差し入れ、仰向けにさせた。
荒っぽくひっくり返されたにも関わらず、常になくぼんやりとした顔つきのスネークに、ミラーは困ったような呆れたような微笑みを浮かべた。常でも少し下がり気味の目尻を一層下げて、スネークの顔を覗き込む。
「…気に入ったか?俺の髪?」
「…ああ」
「…もっと触りたい?」
「…ああ」
ベッドに乗り上がり、スネークの肩口に頭を載せ、目を閉じる。口許にはまだ微妙な笑みを浮かべて。
暫くはスネークが無心に髪を梳くにまかせていたミラーが、再び手首を捉え、目を開けて言った。


268:M/G/S/P/W 和蛇5/5
11/04/23 01:42:10.91 G72+IBsNO
「…俺も、触っていい、か?」
「…ああ」
今度はミラーの指先がスネークの髪を弄ぶ。耳の後ろから、頭皮をマッサージするように何度も梳かれると、知らず満足げな溜息が漏れる。
こちらがまるで猫か犬になった様だ、などと、目を閉じて考えていると、
「スネーク…?」
左耳にひどく近くから囁かれ、ひくり、と身体が跳ねた。
目を開くと、ミラーの顔がすぐ近くに迫っている。
いつの間にかスネークに覆い被さるように跨がり、仕方ない、といった風情だった微笑みは、僅かに危険な物を孕んでいる。
「もっと触ってもいい、か?」
先刻のスネークの反応に気をよくしたらしい。低く、掠れた声で、スネークの耳に直接吹き込む。
「…なあ、スネーク。違うところも、触っていい…?」
「っ、……ああ」
頬が熱くなっているのを自覚しつつ、スネークは許可を与えた。
正直、嵌った、と思わなくもないが、未だに覚醒仕切らない頭で何か考えても仕方ない、と早々に諦めて、もう一度ミラーの頭へと手を伸ばした。今度は引き寄せるために。
これから与えられるはずの、指先とは違う感触に備えるべく、スネークは薄く唇を開いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


269:風と木の名無しさん
11/04/23 01:49:03.79 G72+IBsNO
分割失敗気味ですねorz
わりと流されやすいおっさんと、チャンスは逃さないよ!って若造を書いてみたかったんです…
おそまつさまでした

270:風と木の名無しさん
11/04/23 01:59:44.62 VijlUou80
オリジナル  平凡部下×エリート上司のリーマン物みたいな…? 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース



271:風と木の名無しさん
11/04/23 02:08:07.16 VijlUou80
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

>>270です
スミマセン、エラーが出るので中止します
ご迷惑をお掛けしました
次の方、投下されて下さい

272:風と木の名無しさん
11/04/26 22:01:25.41 Gf8uSojA0
>>270が戻って来るまで小休憩投下

半生 木目棒の小右っぽい右さん独り言話


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース


273:愛人論1/6
11/04/26 22:04:41.36 Gf8uSojA0
不眠をわずらっているのは、カフェインの摂りすぎが原因なのでは―。

昔、元妻に半分本気で指摘されたことだが、右.京の紅茶好きは確かに一種の中毒めいたものがあった。
日中はもちろん、就寝前にも必ず喉を温めてからでないとベッドへ向かう気になれない。
どんなに疲弊している日でも、いや、疲弊している日こそ、紅茶をいれる時間帯だけは無心になれるのだった。

つるの細い薬缶でお湯を沸かしながら、ブランデーのボトルを用意する。
カモミールやラベンダーの絵柄の箱の上で手を彷徨わせてから、右.京は一瞬考え込んで、冷蔵庫をあけた。
陳列しているパックやボトルの中から、低温殺菌の牛乳パックを持ち上げて軽く振ると、右.京は納得した様子で一人頷いた。
それから、ハーブティーの類をしまって、ダージリンの缶を取り出す。
薬缶を見れば、すでに細い首からは女の溜息のような蒸気が立ち上り始めていた。

274:風と木の名無しさん
11/04/26 22:08:46.28 Gf8uSojA0
「さて……」
呟いて、右.京は隣のガラス棚へと目を転じた。ずらりと並ぶのは、白や青、時には濃翠の色合いをした、ティーセットの数々だった。
薫に言わせるところの「緊張して飲んだ気にならない」高級品である。
右.京は毎夜、こうして好きなカップを選ぶ時のわずかなときめきを、ことのほか愛していた。
「どれにしましょうかねぇ」
独り言が自然と弾んでしまうのも、一人暮らしの気楽さがあるからだ。
右.京は絵柄の濃い物から無地に近い一品までをぐるりと流め、しばしの思案を楽しんだ後に、右手前に澄ました顔で陳列されているスミレ柄のティーカップを持ち上げた。
カチャリと陶器の触れ合う繊細な音がする。その瞬間、ふいに奥にしまいこんでいた一つのカップに、目が留まった。

275:愛人論2/6
11/04/26 22:09:35.67 Gf8uSojA0
目の醒めるような蒼の縁取りに、細やかな金のアラベスク模様をあしらった、ひときわ豪奢なカップだった。
黄と赤のバラが絡み合った絵柄の持ち手には、内側に、ご丁寧に右.京の名前が彫ってある。
『物には罪がないでしょ、これでも苦労して選んできたんだから』
すとんと耳に蘇ってきた声に、右.京は眉をしかめた。

もう何年も前の話だ。
イギリス旅行の土産に奥方へ贈るというので、しぶしぶ知っている店をいくつか紹介した。
その結果、送られてきた小包の中身がこのティーカップとソーサーだった。
すぐさま送り返そうとした右.京のもとに、見計らったようにかけてきた電話口で小.野田はしれっと言い放った。

276:愛人論3/6
11/04/26 22:15:13.13 EALfo+e6O
『まぁいいじゃないですか。そのうち使いに行くから、ゆめゆめ捨てたりなんかしないよ
うにね』

いけしゃあしゃあと勝手なことを言う小.野田の声を聴いたのは、それが最後だった。
それからしばらくは電話もかかってきていたようだが、取り合わないまま、そのうちに日
が過ぎ、年が過ぎていった。

色々な物を捨てて生きてきた。
伴侶も、部下も、出世も、男の残した短い悪夢のような蜜月も。
ただ、こればかりは結局、捨てるに捨てられないまま、今に至っている。
正直、最近は存在さえ忘れかけていた。
このまま、変わらぬ年月が埃のように重なっていくものだとばかり―。

277:愛人論4/6
11/04/26 22:16:34.45 EALfo+e6O
右.京は少し考え込んだ後、手にしていた方を元に戻して、奥から冷え切ったそのティーカップを取り出した。
久しぶりに目にするが、やはり悔しいほどに惚れ惚れする出来栄えだった。
細い絵筆で繊細に描かれた金彩の美しい模様が、淹れたての紅茶の湯気にぼんやりと浮かび上がって、芳醇な香りと共に心まで癒してくれる一品だった。
小.野田が苦心したというのは多分本当だろう。
この食器を手掛けた職人は右.京の知る限りでは、えらく気難しい老人で、彼の魂の芸術品であるカップに名前を彫るなどという蛮行を許すわけがないのだった。
それを、わざわざ。


278:愛人論5/6
11/04/26 22:17:34.24 EALfo+e6O
『うちにも同じのがあるからね……』

あれだって、しらじらしい話である。
職人が二つとして同じものを作らないことを、紹介した右.京が知らない筈がない。
小.野田の台詞は、たんに妻と同じものを愛人に贈るという俗っぽい話を、右.京に連想させたいがための嘘に違いなかった。
事実あの時問題になりえるとしたら、同じティーカップであるかどうかより、そこに彫られたネームの方が遥かに火種になりえた。
それを見越しての小.野田の手回しだったのだろう。実際、右.京はカップを送り返せなかった。
どこまでも強引な男なのだ。



279:愛人論6/6
11/04/26 22:18:16.48 EALfo+e6O
右.京は薄っすらと笑って、カップをくるりと回した。
ためつすがめつ、悪戯に手の中で温める。

「物には罪がない、ですか……」

つくづく嫌な言い方をする。
それではまるで、どこかには「罪」があるようではないか―。

右.京は溜息をつくと、キッチンへと身をひるがえした。
冷えた薬缶に手を伸ばし、もう一度沸かすためにコンロをひねる。
ぼうっと青い火が立ち上って、物憂げに更けていく宵をうす暗く照らしあげていった。


280:風と木の名無しさん
11/04/26 22:20:21.90 EALfo+e6O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すみません、分割に失敗したりPC投稿失敗したりハチャメチャでした
ありがとうございました

281:風と木の名無しさん
11/04/27 05:44:17.00 aTlqFVIlO
>>264
積極的な副司令官と流されちゃうボスにニヤニヤしました…!
この二人のお話が読めて幸せです。
もし宜しければ続きも是非…!

282:風と木の名無しさん
11/04/27 10:06:14.47 t/p3EwzT0
>>272
うおおおありがとうありがとう!すごく萌えた!!
ずっとこういう右京と官房長が読みたかったんです、本当にありがとう!

283:週間 朝 連載のあの二人 1/2
11/04/27 17:48:43.78 UC6TuRLNO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

うん、そりゃあさ、俺だって昭和生れの男の子だからさ、小さい時から父親とかから
言われるわけよ。
「男たるもの、妻子を持ってこそ一人前だ」なんてさ。
ふーんそんなもんなのかなー、じゃあ大人になったらお嫁さん貰ってー、子供も
たくさん作ってー、でっかい家建ててー、犬もでっかいの飼ってー、なんてさ。
奥さんは、かーちゃんみたいに、忙しく晩ご飯作ってても「おかえりー!」って笑顔で
迎えてくれてさ、子供らが「お土産はー?」なんてまとわりついてきたりしてさ、
まあそんな妄想?いやちょっと言い方悪いか、理想?…そういうのがさ、普通の
男子の在るべき姿ってか、往くべき道ってかさ。
ん?いやいや、昭和って皆そんな感じよ?
特にウチなんか親はモロ団塊だし、田舎だしさ。


284:2/2
11/04/27 17:54:59.39 UC6TuRLNO
まあ思春期には叶わぬ夢になっちゃったんですけどねーあははは。
そうそうだからさ、お二人さんには俺の分も頑張って貰ってー、あ、今のオヤジ臭い?
まいっか、もう立派にオジサンな年だもんね、ってひでー!そこはフォローして
くんないと!笑うとこじゃないよ!?
で何の話だっけ?あそーだ、幸せな家庭を築いて下さいなってことよ。
まあ二人なら俺がどうこう言わなくてもラブラブなんだろうけどさ。仲良いもんね。
…うん、ほんと、お幸せに。
お招きありがとうね。二次会出られないけどごめんね。新幹線の切符取れなくてさ。
ううん気にしないで。新幹線乗っちゃえば寝れるし。そっちこそ体に気をつけてよ。
明日から新婚旅行でしょ?結構ハードなスケジュールだよねぇ。ま、一生に一度だしね。
うん、東京来た時は連絡してよ。土日でも夜だったら大丈夫だからさ。
うん、じゃあね。お招きありがと。あ、さっきも言ったねははは。
じゃあねー、お幸せにねー!


「はぁ~到着~」
自宅のドアの鍵を開ける前、思わず声に出てしまった。
引出物の紙袋はやたらと重いし、普段着慣れない礼服もとっとと脱いでしまいたい。
それに。
このドアを開ければ。
「ただいまぁ~」
「おう、おかえりー」
リビングに入れば、部屋中を満たすいい香り。
この匂いはきっと、自分の大好きな炊き込みご飯だ。


285:3/2
11/04/27 17:57:22.56 UC6TuRLNO
新聞を畳みながら、恋人が立ち上がる。
「早かったな。先に風呂入っちゃえよ」
そう言って、椅子の背に掛けてあったエプロンを身に着ける。
「えー、手伝うよ。着替えて顔洗ったら」
荷物や紙袋をガサガサ言わせながら言うと、
「いいから行って来いって」
長旅で疲れただろ?と背中を押され、
「30分で上がってこいよ。メシにするから」
もう適温の湯が張られ、後は入るばかりの風呂場に押し込まれた。


可愛い奥さんはいないけど。
子供なんて望むべくもないけれど。
大きな家も大きな犬も手に入れてないけれど。
そんなのなくったって、俺は。

「俺…充分幸せじゃん」
いくら抑えても自然に緩んできてしまう口元をしゃんとさせるため、湯船の中に
顔の半分まで潜ってみた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

にぶんのさんって何だよ…orz
分割ミス失礼しました


286:ケンシロウが虎化する話1/10
11/05/02 22:31:30.18 0yIox2aS0
|>PLAY ピッ ◇⊂(*´ω`*)一応長兄×末弟(と三兄×次兄っぽい感じ)

ケンシロウが目を覚ますと、自分が虎になっていることに気がついた。

昨日の夜は飲みだったので、自分の容量も弁えずガンガン飲んでいると、気分が悪くなった。
それで部屋の隅で臥せっていると、アミバがやってきて、
「ふぉ~飲みすぎで気分が悪くなったのか、それはいかんなぁ~。俺の発見したこの新たな秘孔を突けば、お前は忽ち気分が良くなる」と言ってきた。
俺は丁重にお断りしたのだが、強引に突かれてしまった。そして別に気分は良くならなかった。大体そんな秘孔があったらとっくに北斗神拳に備わっているだろう。
その後トキに介抱してもらって、なんとか気分が収まったので家に帰ってきて寝た次第だった。

それで目を覚ますと、何故か体が変なのである。
手も足もなんだか短いし、それに尾があるような気がするのである。
どうにも体がうまく動かせないので、これが二日酔いというやつか、とケンシロウが思ってなんとか体を起こして自分の手を見ると、手ではなくて前足になっていた次第である。
(…いい肉球だ…)
思わずケンシロウは指で触りたくなったが、指が無い(一応あると言えばあるのだが)ので、できないことに気づいて悔しがった。

さて、どうしようかと思った。
今の自分を見て、ケンシロウだと気づかれることはないだろう。下手をするとラオウ辺りに殺されかねない。
しかしお腹は減ったしトイレに行きたい気もする。
兄弟と顔を合わせなければいいのだ、そう思ってまずは寝台から降りようとした。
この体に慣れてないので寝台から転げ落ちる形になった。
以前テレビで見たときには、ネコ科の動物は高い所から落ちてもひらりと身を躱し着地していたのに、何故今の自分はできないのか、理不尽である。それでもなんとか部屋の扉の所まで行って、恐る恐る開けた。
どうやら誰も居ないようだった。それで部屋から出て、扉を閉め、先ずは朝食でも摂ろうかと思った。
「ぬ…?」
廊下の先にラオウが見えた。
俺の人生終わった、とケンシロウは思った。

(いや、いくらラオウでも、家の中に虎が居るからといって直ちに殺そうとしたりしないだろう)
ケンシロウは少し前向きに考えた。
ケンシロウが其の場で立ち止まっていると、

287:ケンシロウが虎化する話2/10
11/05/02 22:32:42.32 0yIox2aS0
ラオウは歩み寄ってきて、
「ほう…虎か…二日酔いを覚ますのに、丁度よい」と呟いた。
やはり俺の人生は終わった。

とりあえずラオウに対抗するためにオーラを纏ってみた。
「ほう…貴様もオーラを…だがこの拳王の敵ではないわ!」
やはり慣れない虎の身では限界がある。オーラを纏うことはできても、ラオウの剛拳を躱すことができずに、死ぬだろう。
「死ぬがいい!」
「…何やってるんだ、兄さん」
トキだった。
何といい所に現れてくれたのだろう。
「ぬ…トキ…」
「何をしているんだ…」
「うむ、虎が居たのでな」
「そんなホイホイ殺すのは止めてほしい。ひょっとしたら師父が私たちに黙って通販で買ったのかもしれない」
「ぬう…」
通販で虎は買えないだろう、とケンシロウは内心突っ込みつつ、とりあえず助かった、と思った。
「ほら、来なさい、朝御飯あげるから」

ケンシロウはトキについて台所へ行った。
「上手く歩けないようだが…怪我でもしているのか?どれ、少し見てあげよう」
それよりやはく朝食を。

「ふむ…特に異常は無いようだ…さて…」
ようやく朝食か!そういえば一昨日のカレーがまだ残っていたよな…確か…。
昨日は飲みで誰も家で夕食を食べてないわけだし、カレーだ…二晩じっくり寝かせて美味しくなったカレーだ!
「はい、朝御飯」
何故生肉の塊なんだ…トキ…。
確かに虎の食事と言えば生肉が当然なのかもしれない。
しかし自分は虎であって虎でなく、実際にはケンシロウなので、生肉でなくてカレーを所望するのが当然である、というのをトキが分からないのは当然である。しかし…。
「どうした、食べないのか?」
当然これ、味付いてないよな…せめて塩胡椒を…。

288:ケンシロウが虎化する話3/10
11/05/02 22:33:37.65 0yIox2aS0
ケンシロウはトキに催促しようと思ったが、その時、誰か食堂にやってきた気配がした。
「やあおはよう、ジャギ」
「ああ~…おはよう兄者…ってうおっ!なんで虎が居るんだよ!?」
ジャギは咄嗟に懐からショットガンを取り出してケンシロウに向けた。
「動物に無闇に銃を向けるものではない…」
「いや、動物って、猛獣じゃねえか!暴れたらどうするんだ!」
「その時は私が確実に仕留めるから心配いらない」
それを聞いてジャギは、「いや、あんたは確実に仕留められても、俺にはできねえよ…」と内心思ったが、
そう抗議したところでトキが虎を何処かへやってくれるとも思えなかったので、それ以上文句を言うのは止めた。
「…で、なんで虎が居るんだ」
「多分師父が買ったんじゃないかな。…お前も昔猫を飼いたいと言ってたから、丁度いいだろう」

ジャギが中学生の頃である。
ジャギは川の橋の下に捨てられている子猫を拾い、家に連れて帰った。当然飼いたかったからだ。
師父は特に何も言わなかったが、意外にもトキの反対を食らった。
「なんでダメなんだよ」
「わからないか…最近兄さんは反抗期なのか何なのか、所構わず不意に暴れたりすることがあるだろう。
そういった時に偶々この猫が居合わせてみろ、悲しい思いをするのはお前だ」
「いくらラオウでも、猫が居る時に暴れたりしないだろ」
トキは溜息をついた。
「ジャギ…お前は今までラオウと一緒に暮らしていてそんな事も分からないのか?
この前だってケンシロウを一ヶ月生死の境をさ迷わせたんだぞ、あの人は」
「そんなのいつもの事じゃねえか」
「それがいつもの事になってる事自体おかしい」
結局ジャギは猫を諦めて、友人にあげた。猫はまだ友人宅で健在なので、友人の家に行く度に可愛がっている。

「何年前の話だよ…それに虎と猫じゃ大分違うだろ…」
「いや、虎も猫も親戚みたいなものだろう。同じネコ科だし」
「違ぇよ!」
「じゃあラオウとリンみたいなものだろう」
それはなんとなくわからないでもない。
…しかし、猫は認められなかったのに虎は認められるというのも少し理不尽な気がする。

289:ケンシロウが虎化する話4/10
11/05/02 22:34:24.44 0yIox2aS0
「…猫はダメなのに、虎はいいのかよ」
「いや、実際さっき兄さんに殺されそうになっていたが…別にお前は虎がラオウに殺されても悲しくないだろう」
虎がラオウに殺されるより、自分が虎に殺されないかの方が心配である。
「…まあ…」
「とにかく、お前も朝御飯だろう。カレーでいいか?」
「いいよ」
ケンシロウにとって、自分がカレーを食べられないのに、ジャギがカレーにありつけるとは理不尽である。
トキの傍へ行って「俺もカレーが食べたい」と催促してみたが、どうにも伝わる筈がない。
「はい」
トキがジャギの前に温めたカレーを置いた。
ケンシロウはもうこうなったら力尽くで奪い取るしかないと思った。
ケンシロウは普段はジャギに兄としての顔を立てているが、
体が普段とは違うので気の持ちようが普段とは違うためなのか、
それともやはり対象がカレーであるせいなのかわからないが、
とりあえず椅子に座っているジャギに飛び掛かってジャギを床に転がせた後、食卓の上に乗った。
そしてカレーを食べようとしたが、カレーが熱いので、今虎になっている自分は大丈夫なのだろうかと一瞬躊躇した。
虎が猫と同じなら猫舌である筈である。
「…ッ…このクソ虎ッ!」
体勢を立て直したジャギがケンシロウに向けてショットガンを撃ったが、
咄嗟にトキがケンシロウを抱えて移動して助けた。
「兄者!なんでそんなやつを庇うんだよ!」
「まあ待て…彼はおそらくカレーが食べたかっただけだ…撃つことは無い…」
そしてトキはケンシロウに向き直って言った。
「お前には冷ましたカレーをやろう」

「…ったく、カレーを食う虎なんて変わっていやがる、なあ兄者?」
「…人に飼われていたのかもしれないな、人に慣れているようだし」
デザートは林檎だったのでそれも食べた。食器を片づけようかと思ったが手ではなくて前足なのでできない。
歯を磨こうと思ったが、それもできないと気付いた。
ケンシロウはそういえばまだトイレに行ってなかったことを思い出し、トイレに行った。
ケンシロウがトイレから出てきたのを見て、ジャギとトキは、益々変わった虎だ、と思った。
それにしても、何故かこの虎はトキに贔屓にされているようで理不尽だとジャギは思った。

290:ケンシロウが虎化する話5/10
11/05/02 22:35:11.87 0yIox2aS0
そういえば昔から自分は蔑にされている気がする。
あのラオウの馬だって、ラオウとケンシロウに懐き、トキとはまあまあで、ジャギと師父は完全に蔑である。
たまに訪ねてくるケンシロウやラオウの友人の方を優遇するぐらいだ。
「そういやケンシロウはまだ寝てんのか」
「昨日は大分酔ってたからな…今更起きてきてももうカレー無いし、もうすぐお昼だけど」
「ハッ、自分のカレー食われたって知ったら怒るんじゃぁねえか!昼飯があろうとなんだろうとカレーだけは食うからな、あの野郎」
「そうだな…少し様子を見てくるか」
ケンシロウはトキについて部屋から出た。

トキはケンシロウの部屋をノックして呼びかけてみた。しかし返事が無いので、「ケンシロウ?」とこっそり扉を開けた。
ケンシロウは居なかった。

昼食。
「…ケンはどうした」
昼食は在宅中ならば全員揃って摂るのが常であるから、ラオウがこのような疑問を呈したのも当然である。
「いないみたいだ」
「何?」
「いなかった」
「出かけたのか?」
「いや、誰も見ていない…それに」
トキはケンシロウの携帯とiPod(初代)を取り出した。
「枕元に置いたままだったが…携帯とiPodを忘れていくとは考えにくい」
携帯は中学時代から「欲しい欲しい」と言い続けて大学進学祝いに漸く買ってもらったものであるし、
iPodは何度強請っても買ってもらえなかったのを正月の町内会の福引でようやく入手したものである。
勿論できれば最新型がよかったのであるが、贅沢は言えないので仕方がない。
という経緯があるので、ケンシロウはこの二つを常に携帯している筈なのである。
「ほう…家出か?」
「兄さん、心当たりは無いか?」
「何故俺に心当たりがあるのだ」
そりゃラオウが一番ケンシロウに被害を与えているからだ…とトキは思ったが、その事は言わないでおいた。
もしこの先トキやジャギが家出しても、それはラオウのせいだと思うが、
きっとラオウはそれで悩んだりなど絶対しないだろうから、

291:ケンシロウが虎化する話6/10
11/05/02 22:35:58.33 0yIox2aS0
ラオウに反省してもらいたいと思って家出をしても得策ではないな、と思った。
「それに、何故虎が食卓に座っているのだ」
「座りたそうだったから」

食後ケンシロウは考えた。何か自分がケンシロウだと訴える方法は無いだろうかと。
(家にiPadとかあればあれで文字が書けるかもしれないのに…)
この家にそんなものは無い。どうやってもこの前足で文字を書ける気がしない。
「…」
ケンシロウは器用に食事ができないので、口の周りに料理がついてないか気になって、舌で舐めた。
まだ残っていないか気になって、前足の甲で顔を拭ったが、猫は前足の平で顔を洗っていたような気がしたので、平で顔を拭ってみた。
(気持ちがいい…)
なんと肉球とは滑々して気持ちがいいのだろう。
面白いので暫く顔を撫でてみた。

午後、ケンシロウは馬小屋へ歩いた。
馬小屋は母屋とは大分離れているのでまだ慣れない身では歩くのが大変なのであるが、
やはり動物の事は動物というか、こういう状況になるとペットと話が通じるようになるというのは漫画の定番であるし、
話が通じなくても黒王ならなんとか自分を認識してくれないだろうかとケンシロウは考えたのだ。
やはり自分が自分と認識されないのは辛い。
しかし、何故俺が虎などになっているのだろう。
酔っ払って泥酔することを大虎というが、正にその通りになっているわけだ。
ケンシロウは、高校の国語の授業に出てきた『山月記』を思い出した。
李リョウとかいう奴が「峻険な性が原因で」「虎になる」話だった。しかし自分は別に峻険な性の持ち主ではない。
性格が原因で虎になるならジャギやラオウの方が相応しいだろう、と思った。
そんな事を考えている内に小屋に着いた。
小屋の扉を開けると、黒王と目が合った。
一瞬黒王は不思議そうな目をしたが、すぐに普段ケンシロウを見ているような目つきになった。
どうやらケンシロウをケンシロウと認識したらしかった。
そこでケンシロウは会話を試みてみたが、やはり会話は通じなかった。
やはり漫画のようにはいかないか、と少し落胆したが、認識されたのは嬉しかったので、暫く其処に留まっていた。
夕方頃ラオウがやってきた。
「む…?何故貴様がこんな所にいる」

292:ケンシロウが虎化する話7/10
11/05/02 22:36:45.47 0yIox2aS0
ラオウのケンシロウへの態度を見て、黒王は訝しげな様子だった。
自分は虎をケンシロウだと認識しているのに、当の主人が認識してないのだからそれは訝しがるだろう。
「…トキがうぬを探しておった。早く帰れ」
確かに帰るべき時かもしれない。自分を認識しないラオウと一緒に居るのは辛い。
自分をケンシロウと認識しないラオウはただの横暴な男にすぎないからだ。
いや、自分をケンシロウと認識してもそれはそれでラオウが横暴な兄であることには違いない。
しかし認識されているのとされていないのとでは大違いだ。
「…」
またあの距離を歩くのか、とケンシロウは思う。慣れない体であの距離をまた歩くのは辛い。
しかし嘆いても仕方が無いので、扉を開けて小屋を出た。すると、
「ぬ…どうした…黒王」
黒王が後からついてきた。
黒王はケンシロウの脇に立つと、踞んだ。乗れ、という事なのだろうか。
普段黒王は人を乗せるために踞むことなどありえない。いつも人が飛び乗る形になる。
それを自分の為と誤解したラオウが黒王に跨ろうとしたのでそれを黒王は蹴り飛ばした。
とりあえずケンシロウは黒王の上に乗った。馬の背中に虎が乗るとは随分変な状態である。そのまま黒王は母屋まで乗せて行ってくれた。
面白くないのはラオウである。自分とケンシロウにしか背を許さない筈の黒王が何故トキの飼い虎なぞを乗せるのか、理不尽である。

一週間が過ぎた。
ケンシロウは未だ虎のままである。

ラオウが部屋でゲームをしていると、誰かが部屋を開ける気配がした。ケンシロウか、と思う。
ジャギはまずラオウの部屋を開けないし、トキは必ずノックをする。ケンシロウも大抵はノックをするのだが、しない事もある。
だからケンシロウかと思った。
虎だった。
「…」
最近ずっとこうである。ケンシロウか、と期待して、虎であったということの繰り返しである。
虎を無視していると、寝台の上に勝手に飛び乗ってきた。
ケンシロウも時々同じような事をしていたが、虎にされると腹立たしい。ゲームを中断して虎に向き合った。
以前虎を殺そうとしたらトキに止められた事があるので、殺す事はしない。
虎が何か物言いたそうではあるが、生憎ラオウには虎の心情などわかりはしない。
「ケンシロウ…」

293:ケンシロウが虎化する話8/10
11/05/02 22:37:33.85 0yIox2aS0
ラオウはふとケンシロウの事を思い出して少し寂しくなった。ケンシロウの行方は杳として知れない。
ケンシロウの知人が家を訪ねてきたりしたが、誰一人ケンシロウの行方を知る者はいなかった。
とりあえずケンシロウの友人のレイに八つ当たりしてみた。
更にジャギに八つ当たりしてみたが、それで気が晴れる訳でもない。ケンシロウが出てくる訳でもない。ラオウは孤独を感じていた。
勿論ラオウにとって友と呼べるものは黒王とトキだけだが、やはりケンシロウの有無というのはラオウの日常を大きく左右する。
ラオウにとってケンシロウは友ではないが、やはり弟であり、言うなれば天である。
寂しさ故にラオウは虎を思わず抱き締め、「ケン…」と呟き、力を込めた。
虎が暴れだしたので、ラオウは虎を解放した。この程度で不満を訴えるとは、軟弱な虎である。
ケンシロウならもっと強く抱き締めても大丈夫であるのに。
それにしてもこの虎の振る舞いは腹立たしい。ケンシロウの椅子に座って食事をし、ケンシロウの寝床で寝る。
まるで自分がケンシロウそのものであるかのように振る舞う。実に腹立たしい。

ケンシロウはラオウが何度か自分の名を呟く時、自分に気づいてくれたか?と期待するが、その度に失望する。
「蘭姉ちゃんじゃないんだから…早く気付けよ…」と苛立つ。
確かにラオウは人(動物)の心情については鈍感な所もあるし、無理ないか、と半ば諦めもしている。
それにしても、普段自分を抱き締めるのと同じ強さで今の自分を抱き締めるのはそれはちょっと無いのではないか。
今の自分は普段の自分と比べればそれ程丈夫では無い。やはりラオウは配慮が無いな、と思う。
配慮が無いと言えば、昨日ケンシロウが寝床の上で猫のように丸くなっていた時、ラオウが部屋に勝手に入ってきたかと思うと、
机の上の携帯を勝手に取り上げた。ケンシロウは抵抗したが、メールを見られてしまった。あれは酷い。
大体未読メールを勝手に見てしまえば、メールが既読になってしまうので、
誰かが勝手に見た事がばれてしまうではないか。ラオウはそんな事も知らないのか、気にしないのか。
弟の物は自分の物だと思っているのか。ラオウはいつも横暴だ。

ケンシロウは、自分がこうなった事について、心当たりが無い訳ではないが、

294:ケンシロウが虎化する話9/10
11/05/02 22:39:56.04 0yIox2aS0
「いくらなんでも…無いよな…」とその考えが浮かぶ度に否定した。まさか人間を虎に変える秘孔などある訳がないではないか。

師父から久しぶりに電話があった。ジャギが先ず電話を取った。
「…親父?」
師父は今週の「まどか☆マギカ」を録画し損ねたので、代わりに一日遅れの地域である我が家で録画してほしいという。この親父は久しぶりに電話をしてきたら、それか、とジャギは思った。呆れていたらトキが電話を代わって欲しいと頼んできた。
「あーもしもし、師父?通販で虎とか買いませんでした?…あーそうですか、わかりました、それじゃ」
「…なんだって?」
「買ってないらしい」
「じゃあこの虎は何なんだよ!」
「私に考えがある」
トキは電話を掛けた。
「もしもし…アミバ?」

「お前が俺を家に呼ぶとは珍しいなあ、何の用だ」
「お前、この前ケンシロウに変な秘孔を突いていただろう」
「変な秘孔では無い、悪酔いを覚まし、気分を良くする秘孔だ」
「ならその逆の秘孔も知っているだろう」
「酔いを悪化させる秘孔か?勿論この天才は既に究明している」
「この虎にその秘孔を突いてくれないか」
「ふぉ~う、この虎は酔っているのか?」
「…そういう訳ではないが…突いてくれないか?」
「よかろう。虎と言えど秘孔は人間と同じ…ふんっ!!」
アミバが秘孔を突くと同時に虎はぬた打ち回って苦しみ出した。
「ん~?間違ったかな~?」
「…間違っていたら私がお前に償いをさせてやる」
そんな事を言っている間に虎は見る見る変化して、見慣れた人物になった。
「…懐かしいなあ、ケンシロウ」
ケンシロウは指を鳴らして、秘孔を突いた。
「残悔積歩拳!!」
「うわらば!!」

「…まああの虎がケンシロウではないかとは思っていたのだが」

295:ケンシロウが虎化する話10/10
11/05/02 22:44:15.90 0yIox2aS0
「…兄さん、いや、トキ、ならどうしてもっと早くアミバを呼んでくれなかったのだ」
「私もまさか人間が虎になるとは思わなかったし…虎がバターになるのは知っていたが」
「それは絵本の話だろ」
「いや、兄さん…ラオウがいつ気付くかなと思っていたが、全く気付く気配が無く…それでな…」トキとケンシロウは傍に居たラオウを見やった。
「…ふん、とうに見抜いておったわ」嘘つけ、と二人は内心同時に思ったが、それを指摘してもラオウは自分の非を認めないと思うので止めておいた。
「それよりケンシロウ、早く服をきたらどうだ」今のケンシロウはメロスよろしく素裸であったからだ。

部屋に戻って服を着たケンシロウは暫くメールのチェックなどして、友人たちにメールの返信などして自由な身分を満喫した。
その後、ジャギの部屋に行って先週と今週のジャンプを読ませてもらった後、馬小屋に行って黒王に挨拶した。黒王は一瞬驚いたような目付きをしたが、またいつもの黒王に戻った。
虎だった間よくしてくれた事の礼に黒王の世話をして家に戻ると、夕食の時間だったので、久しぶりに箸とスプーンで食事をした。感動的だった。その後久々に自由に風呂に入り、寝ようかと思ったが、その前にラオウの部屋に行った。
ノックをした後返事も聞かず部屋に入った。やはりゲームをしていた。
「ラオウ…」
「ふ…見抜いておったわ…」
いやそれはいいから、と思う間もなくいきなり壁に叩きつけられ、痛い、と思う間もなく口づけされた。
「んぐ…」
暫くそうされていた後、解放されて一息つく。
「…部屋ではできん」
「どうでもよかろう」
「よくない」
確かに一週間以上できなかったのだから、ラオウは今すぐにでもしたい心持なのだろうが、ジャギもトキもいるこの母屋ではしたくない。それは譲れない。
「黒王の所で…」
一々情事の度に小屋を出て行かされる黒王は迷惑だろうとは思うが、仕方が無い。
「どうだってよかろう」
「よくはない。…大体、虎になっている間、ラオウより黒王の方が余程俺に優しかったぞ」
「黒王の方がうぬに優しいのはいつもの事ではないか。俺はうぬに優しくする必要性が無い」
「開き直るな」
結局その後は喧嘩になって部屋の壁が崩壊し、隣の部屋に居たジャギに甚大な被害が出た。

□ STOP ピッ ◇⊂(*´ω`*)

296:風と木の名無しさん
11/05/02 23:23:00.78 gG7Ou6f4O
>>295
おもしろかったー!
四兄弟+師父のアットホームさに萌えましたw
あと黒王が素敵w

297:風と木の名無しさん
11/05/04 17:00:26.89 bi7Lc1nG0
>>295
ほのぼのした。なんかこうゆるーい感じとネタが好き
間抜け可愛い兄弟w

298:風と木の名無しさん
11/05/04 22:41:34.21 bmIr9IcS0
>>295
またお前かwいろんな意味でGJすぎるwww

299:風と木の名無しさん
11/05/05 01:16:12.70 CF9CmpE5O
>>295
こんなにムチャクチャなのにちゃんとあの絵と声が浮かんで来てしまう
それが余計可笑しい
楽しませていただきました

300:風と木の名無しさん
11/05/07 23:55:55.68 MsUCrKiD0
某CMの上司と部下
部下視点です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース

301:某CMの上司と部下(1/3)
11/05/08 00:00:39.95 MsUCrKiD0
ここ数日、毎日昼時になると俺はとある机に向かう。

一昨日
「おう、暑いからな」
そう言って豪快に冷やし中華にがっついて
タレをシャツにはねさせてしまい、
女子社員に世話を焼かれていた。
…女子社員A、顔近いよもう少し離れなさいって。

302:某CMの上司と部下(2/3)
11/05/08 00:02:59.91 3te0Zvgc0
昨日

「時間ないからな、」
そう言って幾分残念そうな表情でおにぎりのビニールをひっぱる。
…残念だからって唇を尖らせるのは反則。ダメ。ゼッタイ。
そのおにぎりになりたいとか素で思った自分がいた。

303:某CMの上司と部下(3/3)
11/05/08 00:05:39.03 3te0Zvgc0
そして今日。

「だいすきだよ…!!」

俺の発言にかぶせ気味になるくらいの勢いで主張された。
その渾身の情熱をコロッケに注がれてしまったのが非常に残念ではあるが
視線はこっちだったのだから良いとしよう。
…ICレコーダーで撮っておけばよかった。

本当は「一緒に食べましょうよ」と誘いたいが
なかなかきっかけが掴めない。

明日こそは頑張ってみよう。

304:風と木の名無しさん
11/05/08 00:07:43.56 MsUCrKiD0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

何故か長すぎエラーが出たのでこれでもかという位短くして
投下してしまいました、すみません。

あの上司役の方の口調がめたらやったら可愛くて萌えました。
ひとりよがりでお目汚しでした。

305:風と木の名無しさん
11/05/08 00:31:54.60 3Ca718o60
オリジナル投下させてください。新米兵士と先輩兵士で

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

306:風と木の名無しさん
11/05/08 00:38:05.84 3Ca718o60
ごめんなさい
何かエラーでまくったのでやめます。。

307:風と木の名無しさん
11/05/08 01:18:19.72 oABkoxfdO
>304
あのCM見て以来のモヤモヤが解消されたーw
ありがとう!


308:風と木の名無しさん
11/05/08 06:13:45.40 oE1R/5m0O
>>304
GJ。
貴方と一緒にランチ食べたい・正直貴方も食べたい部下、ガンバレ。



短くした結果のその簡潔さが、かえって良い味にもなっとる感じがした


309:風と木の名無しさん
11/05/08 12:31:19.21 HV6xq+tl0
>>304
あの上司と部下は何かあると思ってたんだよ!
CMのようなスピーディーな展開でGJでした!

310:風と木の名無しさん
11/05/08 14:39:29.33 c4UL/3210
>>304
say-you!!!
部下可愛いし上司も可愛いよ!
いつかまるっと食べられる日がくるといいねえ部下

311:風と木の名無しさん
11/05/09 01:22:51.21 SorWnE8sO
>>304
うおおおお、貴女のおかげで新しい萌えが見出だせた…!!
今度からあのCM見る度にニヤついてしまいそうだww
GJでした!

312:風と木の名無しさん
11/05/10 16:44:44.70 arL/DY/Q0
番ガードからモブにナンパされてるところに櫂と三和が通りかかるイメージ
ベタだけど漫画1巻の対ミサキ戦での正義の味方参上!的二人の登場シーンが忘れられなくて

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

313:ナンパ1/3
11/05/10 16:45:30.23 arL/DY/Q0
小さい頃から妹のエミと並ぶたびに「よく似た可愛い兄妹ね」と言われることが度々あった。
時には姉妹と間違えられることもあってその度お母さんが苦笑しながら訂正していたのを覚えている。
小学生の時にいじめらた時も「女みてー」と言われた事があって何となく自分の顔が男らしくないのかなとは自覚していた。
でもさすがにスカートを履いているわけでもないのに女の子に間違えられたのは初めての経験だった。

「君暇してるの?一緒にどっかいかない」
「ここらへんに住んでるの?可愛いね」
公園の噴水の横にぼんやり座っていたところにいきなり知らない二人の男に話しかけられて、
アイチは唐突にイメージの世界から引き戻されびっくりして目を瞬かせた。
「あの、えっと…?」
「あ、びっくりさせてごめんね。俺たち怪しい奴じゃないから」
「そーそー、暇でぶらぶらしてたところに可愛い子がいたから一緒に遊ぼうと思って」

いや十分怪しいんですけど…ひょっとしてこの人達、僕を女の子だと勘違いしてるのかな…

鈍いアイチにもさすがに今の状況が何となく飲み込めた。
今日は多少暖かかったのでいつもの上着を着ずに、タートルネックのシャツとズボンだけだったので
確かに見ようによっては女の子の服装に見えないこともないかもしれない。

それにしても服装だけでそんなに女の子に見えるのかな…

内心密かに落ち込みながらアイチは立ち上がった。
「ご、ごめんなさい、今から行くところがあって。それに僕男なので…」
自分で性別を名乗らなければいけない情け無さと相手の勘違いを指摘する気まずさで
俯いたままぼそぼそとそう言いその場から去ろうとしたアイチの足は、しかし前に立ちはだかった男のせいで再び止まった。
「またまたー冗談ばっかり」
「そんなこと言わないで、ちょっとカラオケに付き合ってくれるだけでいいからさー」
二人の男に囲まれると中3にしては小柄なアイチの体では二人を見上げる格好になってしまい覚えずアイチの足がすくむ。
足を止めたアイチに気をよくしたのか、男の一人がアイチの肩に手を回した。

314:ナンパ2/3
11/05/10 16:46:28.24 arL/DY/Q0
「おごるから一緒にいこ…「おい、ちょっとまて」「ちょーっとまった!」
聞き慣れた声とともにアイチの肩の上の手が消え、強い力で後ろに引っ張られる。
たたらを踏んで新たに現れた人物の後ろに回されたアイチは振り返ってぱっと顔を輝かせた。
「櫂くん!三和くん!」
アイチの声に三和がちょっと振り返って「正義の味方参上、なんてね」とささやいてウインクし
櫂は振り向くわりに引っ張ったアイチの手に少し力を込める。
「こいつは俺たちの連れなんだがどこに連れていくつもりだ」
眼光鋭い櫂の視線に男達は一瞬ひるんだが、櫂達の明らかに高校生と思われる制服を見て
与し易しと思ったのか多少引きつった笑みを浮かべた。
「おいおい、俺たちはちょっとその子と遊ぼうと思っただけじゃねーか」
「ちょっとカラオケ行って食事おごってやろうという大人の親切心だぜ」
再びアイチに手を伸ばそうとした男に、櫂は更に険しい顔になって一歩前に踏み出す。
その時一触即発の空気に割り込むかのように、三和が大きな声で男達に声をかけた。

「あーお兄さん達に言っとくけど、もうさっき警察に電話したから、『公園で小さな女の子を男の人達が
無理やり連れ去ろうとしてます』ってね。
もうそろそろおまわりさんが来るんじゃないかな、あ、来たかも、おまわりさーん!こっちこっち!!」
大声で公園の入口に向かって叫んだ三和に二人はぎょっとした顔になった。
さすがに警察が来てこの状況を見れば男達が不利になるのは明らかである。
覚えてろとかクソガキがとか小さく呟いて足早に去っていく二人の後ろ姿を睨みつけた櫂と、
誰が覚えてやるかと舌を出した三和は、男達の姿が視界の向こうに消え去ったのを確認してアイチを振り返った。
「ごめんねっ!櫂くん三和くん」
「別に」「悪いのはあいつらなんだからアイチは気にするなって」
三和がアイチの頭を抱え込んでわしゃわしゃと多少乱暴に頭を撫でられて
二人を巻き込んでしまったと青くなってこわばっていたアイチの顔にもやっと少し色が戻る。
「あ、警察の人は…」
「そんなのくるわけないだろ、はったりだよはったり。ああ言えば一番穏便に退散してくれると思ってさ。」
アイチの頭を撫でながらいたずらっぽい笑みを浮かべた三和に思わずアイチもつられて顔がほころぶ。


315:ナンパ3/3
11/05/10 16:47:29.93 arL/DY/Q0
いつもカードキャピタルに集まる面子の中でも、三和は一番頼りにされているムードメーカーのような存在だ。
それは一歳年上だからとか言うことではなく、いつも陽気で笑っていて、そのくせカードキャピタルで
誰が悩んでいたり落ち込んでいたりしていると「なーに考え事してんだ?」とさりげなく声をかけたりするところが
皆から好かれているのだと思う。
そんな彼に「もう大丈夫だぞ」と頭をなでられると、いじめられていた昔のように冷たく
氷を飲んだように萎縮していた気持ちが軽くなっていくのを感じた。

アイチの顔色が戻ったのを確認した三和の腕からやっと開放されると、櫂がポケットに手を突っ込んだままアイチに声をかけた。
「あいつらに何もされなかったか」
まだ若干険しさが残った視線で上から下まで見られ、アイチは慌てて首を縦に振る。
「う、うん何もされてないよ。」
「…ならいい」
視線から鋭さが消え、一瞬櫂にしては珍しく優しいと言っていい視線に見つめられアイチは思わず赤面した。
アイチが小さい頃、どんなにいじめられても、学校に行くのが苦しくても手を差し伸べてくれる者など周囲に誰もいなかった。
そんな時唯一ブラスターブレードという手を差し伸べてくれた人もすぐにアイチの前から去ってしまい
それからは彼の残したカードだけを支えにして、苦しく色のない学校生活に耐えてきた。
帰ってきた櫂は4年前とは一見ずいぶん変わっていて、あまりにそっけない態度に
時々不安に思うこともなくはないけれど、でもこんな時は昔と変わらない優しさを感じる。

「ありがとう…櫂くん、三和くん、なんか」
なんか二人とも表に出る形は違うけれどもどちらもとても優しくて、まるで
「うん?」「…?」
「なんか櫂くんと三和くんってまるでお兄ちゃんみたいだなって」
赤面してそう言ったアイチは、眉をしかめて何とも言えない微妙な表情になった櫂と
その横で爆笑する三和にきょとんとする羽目になった。

316:風と木の名無しさん
11/05/10 16:47:51.57 arL/DY/Q0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ベッタベタネタでサーセン

317:風と木の名無しさん
11/05/10 22:31:19.58 cDIOgOqY0
>>316
いいイメージだ!

318:兎→虎 1/5 ◆dU4hlANcIg
11/05/11 01:24:20.82 LGvdFgyG0
虎&兎の兎→虎です。
うちの虎さんは枕とは無縁の純粋なおじさんです。
まだ何もはじまっていない二人です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

あのおじさんは無意識に無自覚に、ちょっと普通じゃない。
なのに、まったくわかっていない。
自分がどう思われてるかなんて一切気にしないみたいだ。
今までどうやって生きてきたんだろう。
僕が居なかったらこの人、どうなっちゃうんだろう。
「ばーか!相棒残して一人で逃げるほど落ちぶれちゃいねぇよ」
足手まといになるくらいなら居ない方がマシだと思ったのに。
人を勝手に相棒呼ばわりして、あの人は爆弾を持った僕の傍を離れなかった。

僕たちはヒーロー初のコンビという事で話題になるよう仕向けられたビジネス上の関係だ。
だけど会社からはなるべく一緒に居るように言われている。
だからか、彼はトレーニングもしないのにトレーニングルームに来て、
僕が走っているランニングマシーンの隣で寝転がりながらどうでもいい話をしてくる。
一応相手にするけど、くだらなすぎて適当にあしらっている。
するとほどなくしてスースー寝息が聞こえてくる。
見れば、今敵が来たら完全に終わりだと断言できるくらい無防備にだらしなく寝ている。
邪魔されるくらいなら寝ていてくれてた方がいいから放っておくけれど、お腹くらいは隠してほしい。


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