11/04/11 23:43:12.26 zdb5xohkO
半生注意。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>101の後日の話。エロありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
久々にスリリングな夜だった。
目を付けていた新興の犯罪組織が、麻薬取引を行うという情報を仕入れた。そいつをブッ潰すために俺と相棒は、ブラシク・ビューティーを駆って真夜中の街へ繰り出した。
麻薬と金を横取りする振りをして取引の邪魔をし、居合わせたヤクザな連中を二人してことごとくぶちのめした。
秘書が通報していたおかげで、いい頃合いに警察が駆け付けた。倒れていた組織の奴らは逮捕され、麻薬も押収された。
だが案の定俺達も警察に追われ、ちょっとばかり派手なカーチェイスになっちまった。
何発か車に銃弾を喰らったが、相棒の巧みなハンドル捌きと、ベン・ハ_を始めとする搭載武器を駆使したことで、なんとか逃げおおせた。
俺達に怪我はなく、警察にも車の被害しか無かった筈だ。
屋敷に無事帰りついた俺達は、高ぶった気を落ち着けるため相棒のラボでビールを空け乾杯し、計画の成功をささやかに祝った。
しばらく飲んでから、相棒はブラシク・ビューティーの故障箇所の点検を始めた。俺は体に付いた埃とベタつく汗を落とすために、自室に連なる浴室へ向かった。
シャワーでさっぱりした俺は、パジャマの下だけを履いてガウンを羽織り、部屋のベッドに腰を落ち着けた。
興奮は治まったが、気分はまだ高揚していた。いつかの赤い服のマフィア達とのバトルに比べたらかわいいものだが、久しぶりの命のやり取りはやっぱり刺激的だった。
抑え切れず小さな雄叫びを上げて、ベッドに寝転がった。まだとても眠れそうにはないので、相棒を誘ってもう一杯やろうと考えた。
そしたら、何となく思い出しちまった。このベッドで、あいつと過ごした夜のことを。
何度もキスして抱き合い、お互いの体温をかつてないほど近くに感じた。
ちょっとしたハプニングのせいで深い情事には至らず、その夜は二人並んで床に着き穏やかに眠った。
その後、相棒の態度はいつも通りで何も変わらなかった。俺もあの夜のことには触れず、相変わらず軽口を叩いてはたまに奴にツッコまれたりして、ごく普通の日々を送っていた。
191:Our world would continue eternally. 2/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:48:31.18 zdb5xohkO
そして今夜だ。
俺は急に、相棒に触れたくてたまらなくなった。あいつのしっとりと濡れた唇や、みずみずしい弾力を持った肌の手触りを思い返すと、居ても立ってもいられなかった。
俺はまた酔ってるのか?いや構うもんか、いつだって俺は、自分がしたいようにするだけだ。
決心してベッドから起き上がり、相棒がいるラボに戻るために足を踏み出した。
ツナギに着替えて油まみれで修理に励んでいた相棒を、飲み直そうと掻き口説いて部屋に連れ込んだ。汗と油が臭うからと、俺は奴を浴室に追い立てた。
素直に従いシャワーを使ってるだろう相棒に、ソファで酒を飲みながら少しうしろめたさを感じた。
こんなのは卑怯だ、そりゃよくわかってる。だが小ズルい手を使ってでも、俺は相棒を逃がしたくなかった。果たしてあいつは怒るだろうか。これは言わば、一つの賭けだ。
腹を決めた俺は立ち上がり、浴室のドアに向かった。
「力ト-、いいか?話があるんだ」
「……ブリシト、ちょっと待って、もう出るから」
ノックをして風呂場のドアを薄めに開け、相棒に声を掛けた。返事の後に、シャワーの音が止まった。
待てと言われたが、俺は構わず中に踏み込んだ。湯気で煙る空間の中に、裸の相棒が立っていた。ずかずかと無遠慮に入って来た俺に、奴はちょっと慌てる様子を見せた。
「おいブリシト!今出るって言ったろ。そんなに急ぐ用事、なのか……」
諌める口調と共に振り返った相棒の濡れた体を、手に持っていたバスタオルを広げて包んだ。体の正面から背中に回したバスタオルごと、俺は相棒を抱きしめた。
抱いた瞬間にぴくりと震えたが、相棒は手向かいもせずおとなしかった。巻き付いたタオルに、腕を戒められてるからかもしれない。だが相棒が本気になればそのくらいものともせずに、俺の腕から逃げ出せる筈だ。
今こいつはどういう気持ちでいるんだろうか、と考えながら抱きしめたままでいると、相棒は静かに口を開いた。
「……ブリシト、何してる」
「何って力ト-、お前を抱いてる」
「それはわかってる。なんで僕を、抱いたりするのかって訊いてるんだ」
「嫌か?嫌なら殴れよ」
「殴る前に理由を聞きたい。もしあるなら、だけど」
192:Our world would continue eternally. 3/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:51:18.69 zdb5xohkO
肩に乗せていた顔を上げて、嫌だとは言わない相棒を見つめた。湿って貼り付いた前髪の間から覗く黒い目は、怒りも嫌悪も宿さずに俺をただ見返していた。
俺は少し腕の力を緩めて、黒い髪を指で梳いた。
「力ト-、今夜あらためて思ったんだが……俺達って、ボニーとクライドみたいだよな」
「その映画、見てない」
「そうか。まあ要するに、いつ蜂の巣にされてもおかしくないってことだ」
「うん。なるべく避けたいけどね」
「そうだな……だからつまり、そうなっちまう前に俺は、自分に正直になることにしたんだ。わかるか?」
相棒はよくわからない、という目をした。
「力ト-、お前は覚えてないと言うだろうけど……この前お前が酔い潰れた夜に、俺は」
「ブリシト、それは」
「まあ聞け。あの夜お前に触れてわかったんだが、どうやら俺は、お前にションディー以上の気持ちを持ってる。それで思った。
俺達に明日なんてもんは、あって無きが如しだろ。俺は死ぬ時に絶対後悔なんかしたくないから、自分のしたいことは、絶対……」
「ちょっと待て、ブリシト。君の話は回りくどくて、たまに訳がわからなくなる」
さらに説明しかけた俺の言葉を遮って、相棒は冷静に指摘した。
「……今俺、回りくどかった?」
奴は頷き、もっと簡単に、と告げた。深呼吸をした俺は、相棒を抱き直して真剣にその目を見つめた。
「よし、じゃあ簡単に。力ト-、俺はお前が欲しい」
「ブリシト、欲しいっていうのは……」
答える代わりに、顔を寄せてそっと口づけた。相棒はまた体を震わせ、手は俺のガウンの裾を握った。お互い目をつぶり、しばらく唇を合わせてから離した。俺は相棒の顎に手を添え、赤い唇を親指でなぞった。
「俺を殴らないんだな、力ト-」
「……そんなことしないよ。だって、僕も」
君が欲しいから、と消え入りそうな声で答えうつむいた相棒を、俺は笑って強く抱きしめた。
盛り上がった勢いで、タオルに包んだ相棒を横抱きに抱え上げた。恥ずかしいからやめろと抗議されたが、暴れると落としちまうぞ、と軽く脅かしたらおとなしくなった。
それでなくとも奴を運ぶ俺の足取りは、ヨタヨタと頼りないものだったから、しぶしぶ承知したんだろう。
193:Our world would continue eternally. 4/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:55:19.20 zdb5xohkO
浴室を出て短い距離をなんとか歩き、なるべくそっと相棒の体をベッドに下ろした。ベッドを横切るようにして、奴は仰向けに寝そべった。
「ブリシト、腕と足が震えてたぞ。たったあれだけの距離なのに、情けないな」
「そりゃ力ト-、お前の体が意外に重かったからだ」
「僕は普通だよ。それに僕なら、君くらい楽に抱えて歩ける。君は筋力が足りないんだ、鍛えてやろうか」
「ああ、またの機会にな。今はけっこうだ」
体から剥がしたタオルで髪を拭いてやりながら、相棒のからかいをいなした。今やこいつは、一糸纏わぬ素っ裸だ。布団に膝をついた俺は、眼下に晒された相棒の引き締まった体をチラッと見た。
にわかにバクついてきた心臓の音を感じ、ごまかすように相棒に覆い被さってキスをした。
頬を両手で覆ってついばみ、それから段々と濃厚なキスに変えた。唇を舐めていた舌を中に差し入れ絡めると、相棒はおずおずとそれに応えた。
甘く深く口づけながら、俺は手を奴の肌に這わせた。この間は触れなかった小ぶりな乳首を撫で上げると、横たわった体がちょっとだけ跳ねた。
舌を離して、俺は首筋に顔を埋めた。同じ物を使った筈なのに、相棒の体からは俺よりも強いボディソープの香りがした。こいつ自身の体臭が薄いせいだと納得し、首筋から顎下を唇と舌でなぞりくすぐった。
「力ト-、お前胸が感じるんだな」
「バカ、そんなこといちいち言うな……あっ」
指で強く摘んでやると、憎まれ口を叩いていた相棒は小さな高い声を出した。赤くなり押し黙った奴に俺はまたキスして、両手を使い胸をいじっては撫でた。
相棒は体をわななかせ、上げた腕を俺の背中に回して縋り付いた。
口づけの箇所を唇から喉、胸元へと移して行き、乳首に吸い付いて口に含むと、相棒はより力を込めて俺を抱きしめた。
キスしては甘く噛んでを両方に繰り返し、左手は開かせた脚を膝から撫で上げた。じわじわと内股をなぞり、そこには何もしていないのに半ば立ち上っている中心に触れようとした。
自分以外の男特有のモノに触るなんて初めてだが、それに関しての嫌悪感はなかった。むしろ優しく丁寧に扱ってやらなければ、とちょっと緊張していた。ふいに相棒が、俺のガウンを引っ張り待ったをかけた。
「……ブリシト、待って!ちょっと、待ってくれ」
「なんだよもう!今日は吐くほど酔ってないだろ、力ト-」
194:Our world would continue eternally. 5/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:59:11.05 zdb5xohkO
いいところまで来て水を差され、俺は苛々として叫び顔を上げた。相棒は乱した息を整えながら、また口を開いた。
「吐かないよ……でも、聞いてくれブリシト、君はズルい」
「何がズルいんだ。お前をひん剥く手間を省くために、シャワーを浴びさせたことがか?」
「……それもだけど、今は違う。ズルいのは、君が服を脱いでないことだ!僕だけ裸で、まるでバカみたいじゃないか」
真っ赤な顔で必死に訴える相棒は、眉を下げてちょっと涙目になっていた。嫌がらせじゃなく単に脱ぐのを忘れてただけの俺は、納得して一旦相棒から手を放した。
「わかったよ力ト-、そんなことでスネるな。今脱いでやるから」
「別にスネてない。なんでそう、上から目線なんだ……うわっ」
肩からガウンを滑り落とした俺の胸を見て、奴は小さく声を上げた。
「なんだよ、失礼だな。俺の裸なんて何度も見てるだろ」
「……ゴメン、間近で見ると凄かったから、つい」
「お前らがツルツル過ぎなんだ。欧米人なら、このくらい普通だぞ」
「わかってる、怒るなよ。君の髪の毛と同じで、クルクルしてるな」
「こら、くすぐったいだろ力ト-」
相棒は笑って手を伸ばし、とぐろを巻く俺の胸毛を指でなぞった。
俺は手を掴んで悪戯を止め、上から重なって相棒を抱きすくめた。裸の胸を合わせて擦り付けると、今度は奴の方がくすぐったがり悲鳴を上げた。
「毛がくすぐったいよ、ブリシト!」
「じきに慣れるさ。あったかいし、なかなかいいもんだろ」
「今は熱苦しいよ、風呂上がりだし……っ!」
際限のない軽口を遮るために、俺は相棒の中心をやんわりと握った。奴は刺激に少しのけ反り、息を飲んで目を閉じた。
手の中で優しくこね回してやると、緩やかに首を振って感じ入っているようだった。
俺は耳の裏側にキスして、耳元に唇を寄せ低い声で囁いた。
「力ト-、気持ちいいか?もっと良くしてやるからな」
「だから、訊くなって、バカ……」
乱れる呼吸の合間に小声で悪態をつく相棒が、やけにかわいらしく見えた。
もっと快楽を与えたいと心から思った俺は、相棒から体を離して起こし、サイドボードの引き出しを開けた。いつも使っている潤滑用のジェルを取り出すと、利き手の左手に素早く塗りたくった。
195:Our world would continue eternally. 6/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:02:29.15 zdb5xohkO
「……ブリシト、どうしたんだ?」
「中断してすまん、力ト-。可愛がってやるから、力を抜いてろよ」
「え、何を……あ、バカ!何する、ブリシト」
ジェルにまみれた中指を相棒の後ろに宛てがった。驚きもがく体に体を重ねて押さえ、ゆっくりと指を差し入れた。
「……やだ!やだよブリシト、いきなりこんな……」
「力ト-、大丈夫だ。すぐ気持ち良くなるから、ちょっと我慢してくれ」
「嘘だ、こんなのおかしいよ、ブリシト……!」
「シーッ、静かに。俺を信じて任せろ、力ト-」
焦りうろたえる相棒にキスをしてなだめ、俺は指をうごめかせた。慎重に抜き差しを繰り返すと、強張っていた体から段々力が抜けて行き、俺の肩を掴んでいた両手は所在なげに背中を這い回った。
「ブリシト、ブリシト……」
「力ト-、そうだ。俺の指に集中しろ。何も怖くないぞ、お前に触ってるのは俺なんだからな」
「う、うん……ブリシト……はあっ」
切ない吐息の合間に慎ましやかに漏れる声はひたすら甘く、名前を呼ばれて俺は俄然興奮した。今まで伊達に色事を重ねて来た訳じゃない、ここで本領発揮しないでどうする、と妙に張り切った気分になった。
指を一本増やすと、相棒はまたのけ反ってかすかに悲鳴を上げた。震える中心に再び触れてやりつつ、そろそろと指を動かした。指はすっかり埋め込まれ、熱く狭い中を俺は念入りに擦った。
気付くと相棒の手は俺から離れ、側にあったタオルを掴んで顔に押し当てていた。顔が見えず、喘ぐ声もくぐもってよく聞こえないので、俺は手を伸ばしてタオルを奪おうとした。
「力ト-、しがみ付くならそんな物じゃなく俺にしろ。なんで隠れるんだ、恥ずかしがるな」
「ダメ、やめてくれブリシト!頼むからほっといて……」
「バカ言え、顔が見えなきゃお前が気持ちいいかどうか、わかんないだろ。ほら、タオル放せ」
「ダメだったら!見ないでくれよ……ブリシト!」
無理矢理タオルを引っぺがすと、現れた赤い顔は涙で濡れていた。俺はびっくりしてちょっと固まったが、すぐに気を取り直して相棒に確認した。
「力ト-、泣いてるのは俺が嫌だからか?それとも……」
「……じゃ、ない」
「うん?聞こえないぞ力ト-」
「嫌じゃない、ブリシト。その逆だから、余計に恥ずかしいんだ……察しろ」
196:Our world would continue eternally. 7/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:05:17.72 LhcLpYOSO
素直に告げた後、いたたまれない様子で目を閉じ顔を背けた相棒に、俺はたまらない愛しさを覚えた。そして、ちょっと突っ走り過ぎたなと反省した。
俺は相棒からそっと指を抜き、ティッシュで拭った。相棒の涙も拭いてから、ぐったりした上半身を支えて起こした。頭を俺の肩にもたれかけさせて、火照る体を撫でてやった。
「力ト-、お前あんまり、こういうことに慣れてないんだな」
「……そんなことない、君よりは淡泊なだけだ」
意地を張る相棒の額にキスを何度か落とすと、奴はお返しとばかりに俺の首筋に口づけた。
二人でくっついたまま座り、しばらく沈黙していた。さすがに落ち着いて涙も引いた相棒が、ふいに口を開いた。
「ブリシト、訊くけど……今夜はその、最後まで……するのか?」
「最後までって、つまりこれか?そりゃまあ、出来れば……いってえな、バカ!何するんだ」
下品なジェスチャーをして見せると、眉をしかめて俺の胸毛を一本むしり取った。
痛む胸を摩りながら、俺はふと思いついた質問を相棒に向けた。
「そういや確かめてなかったけど、お前そっちでいいのか」
「何、そっちって」
「だからつまり、俺に愛されるというか、突っ込まれる側……だから痛いって!それやめろ力ト-、ぶっ殺すぞ!」
あまりの痛さにややキレて叫ぶと、相棒は抜いた毛を息で吹き飛ばし、上目使いに俺を睨んだ。
「今さらそれを訊くのか、君は。ここまでしといて」
「うっかり訊くのを忘れてたからな、一応確認だ」
「じゃあ僕が嫌だって言ったら、君は僕に抱かれてくれるのか?」
「うーん、あんまりぞっとしないが、お前がそうしたいならそれでもいい……いや、やっぱダメだな!お前を抱く方がいい!」
ちょっとカッコつけてはみたものの、あっという間に前言を撤回した。相棒の滑らかな肌に触れるのは心地良いし、与えられる限りの快楽を惜しみ無く与えてやりたいと思うからだ。
俺から施される愛撫に身悶えて、涙まで流したこいつの姿を見た後じゃ、ますますそう思っちまうのは仕方のないことだ。
相棒は黙って顔を見ていたが、体ごと俺の正面に向き直り、伏せた顔を肩に押し付けた。
「で、お前はどうなんだ?力ト-」
「……君が好きなようにすればいい。君なら僕は、なんでもいい」
ごく小さく漏らされた囁きを耳にして、俺の心臓はたちまちときめいて高鳴った。
197:Our world would continue eternally. 8/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:08:06.68 LhcLpYOSO
なんていう殺し文句を吐きやがる。一体こいつは、どんな表情でそれを言ったんだ。
肩を掴んで顔を上げさせようとしたが相棒は抵抗し、けっこうな強さで俺の肩に噛み付いて来た。ぶっ殺すぞこの野郎!とまた叫んだ俺の声を聞いて、やっと顔を上げた相棒は実に楽しそうに笑っていた。
好きにしろと言ったものの、ことを成し遂げる覚悟が相棒にまだ出来てないようなので、今夜は無理をせず最後まで行かないことに決めた。
その代わりにお互いのモノを触って一緒に気持ち良くなろうと提案すると、やや固い顔付きで頷いた。緊張を解してやるために、俺は肩を抱いてキスをした。
執拗に舌を絡めて唾液を交わすと、相棒はぼうっとなって顔を上気させた。
腰を撫でていた左手を前に回して、相棒の中心に触れた。口づけながら、俺はそこを優しく擦り上げた。その度に相棒は、喉の奥から甘い呻き声を零した。
「なあ力ト-、俺のも……してくれ」
唇を解いて相棒の右手を握り、股間に導いた。誘われるままにパジャマのズボンの上から、はち切れんばかりに猛った俺の中心に触れると、奴は驚いたような声を出した。
「ロ矣呀!稍等、大……」
「……今『大きい』って言ったんだろ、力ト-」
「……知らない」
相棒はそらとぼけたが、叫び声のニュアンスから俺は間違いないと感じた。自慢じゃないが、俺のは相当デカいんだ。
「そうか、まあいい。力ト-、触ってくれよ。お前の手で感じたいんだ」
微笑んでねだると相棒は俺の頬にキスして、同時にズボンを引き下ろし、飛び出した中心にためらいなく直接触れた。
俺より細い指が俺のモノに絡まり刺激を与えてくれることに、大いに興奮し悦びを感じた。
空いた右手を相棒の後頭部に回して引き寄せ、噛み付くように唇を奪った。俺達は舌を吸い合いむさぼって、手はそそり立つお互いのモノをしっかりと握り扱いていじった。
「ブリシト……ブリシト、もう……」
「力ト-、いいぞ。俺も限界だ……」
近付いて来た絶頂を感じ、手の動きはさらに激しくなった。
小さな高い声で俺の名前を呼び、まず相棒がイッた。すぐ後に俺も唸り声を上げて果てた。息を整えながら、お互いの手の中に放った物をティッシュで拭き取り、俺達は抱き合った。
198:Our world would continue eternally. 9/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:11:57.64 LhcLpYOSO
なんだかやたら照れ臭くて、何を言っていいのかわからないので、とりあえず俺は相棒の顔にキスの雨を降らせまくった。相棒は静かに笑って、俺の背中を撫でていた。
……誰かが俺の頭を優しく撫でている。ああ、これはあいつの手だ。
シャワーを浴びに行った相棒をベッドで待つ間に、俺はうたた寝しちまったようだ。
ぼんやりと意識はあるものの体が動かないので、目を開けず触られるままにしていると、相棒の穏やかな声が聞こえて来た。
「ブリシト……眠った?」
起きてるよ、と心の中で返事すると、髪を梳いていた手を俺の頬に当てて、相棒はまた囁いた。
「なあ、ブリシト。僕達はいつ殺されても不思議じゃないって、君は言ったね」
そんなこと言ったか?……ああ、お前を風呂場で抱きしめた時か。ボニーとクライドの話だ。
「確かに、僕達の夜の世界は危険に満ちてる。何があってもおかしくない……でも、僕は」
相棒は言葉を止め、ちょっと考えてからまた口を開いた。
「僕が、そうはさせない。居場所が無かった僕の手を引いて、新しい世界に連れ出してくれたのは君だ、ブリシト。万一の時二人一緒に死ぬなら、それはそれで構わない。でももし、もしも君だけが消えたら……」
いつになく真剣な口調に驚いたが、俺は心を落ち着けて相棒の言葉を待った。
「君を失えば、同時に僕の世界も終わる。だから、絶対にそうはさせない」
僕が君を守るよ、ブリシト。
口には出さないが、そう言っているのだと俺にはわかった。
なんてこった。お前の世界は、俺が死んだらそれで終わるって言うのか。これまたなんて殺し文句だ。
俺はかつて、誰かにここまで必要とされたことがあっただろうか。いつも俺を気にかけてくれていた親父とは、分かり合えないままで終わってしまった。
相棒と出会ったことで、新世界へ歩き出せたのは俺だって同じだ。
そうだ、俺もだ。もしもこいつを失えば、俺の足はきっともう動かない。
相棒は俺の髪にそっと口づけると、ベッドに入って俺の後ろに横たわった。背中に額を付けて眠りに入ろうとする相棒を、抱きしめてやりたい衝動に駆られた。だがひそやかに告白をした奴の気持ちを思うと、それは出来なかった。
相棒の寝息を背中に感じ、溢れ出す様々な感情に心を乱されて、ちょっと泣きたくなっていた。それから俺は、なかなか寝付けなかった。
199:Our world would continue eternally. 10/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:17:26.03 LhcLpYOSO
コーヒーの香り。ぼんやりと覚醒した意識の中で、まずそれを感じた。寝ぼけまなこで匂いの方向に目をやると、サイドボードの上に置かれたカプチーノと、花瓶に活けた一輪の赤いバラが視界に入った。
上体を起こしてカップを手に取り、香りを楽しんでから一口啜った。あいつの入れたコーヒーは、やっぱり格別だ。
顔を上げて姿を探すと、すでに身なりを整えた相棒はカップを片手に窓辺に立ち、カーテンの隙間から外を眺めていた。
俺はカップを置いて立ち上がり、相棒が佇む窓辺に近付いた。
「おはよう、ブリシト」
「ああ、おはよう力ト-」
振り返らず挨拶をした奴の後ろに俺は体を寄せ、襟足が綺麗に揃えられたうなじに軽くキスをした。相棒は少し肩をすくめ、肩越しに俺を見て苦笑した。
「もう朝だよ、ブリシト」
「ああ、わかってる。だが朝が始まる前に、言っときたいことがあるんだ」
首を傾げた相棒の肩と腰に背後から腕を回し、力を込めて抱きしめた。髪に顔を埋めて、俺は相棒に語りかけた。
「力ト-……もしお前だけが死んだとしたら、俺の世界はそこで終わり、ジ・エンドだ」
「……ブリシト、君、夕べ」
聞いていたのか、と続くだろう相棒の言葉を遮って俺はさらに言った。
「だから、お前を俺が守ってやる。いつでも誰からも必ず守る。だから安心しろ力ト-、俺達の世界は終わらない。絶対、永遠に」
耳元に口を寄せて小さく、だが力強く囁いた。腕の中の体が、少し奮えているのがわかった。相棒は空いた方の手で、肩を包んだ俺の腕に触れた。
「……そりゃどうも。君の気持ちだけは、受け取っておくよ」
「おい、それどういう意味だ、力ト-」
さあね、とクスクス笑う相棒の首を、羽交い締めにして俺も笑った。
何かが変わったようで、実は何も変わらない。俺達の夜の秘密が一つ増えた、それだけのことだ。
朝が来て、そして夜がまたやって来る。俺達の二つの世界は、これからも続いて行く。
きっとずっと、続いて行くんだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
あの映画見てないので、ぼんやりしたイメージで引用してます。世界よ続け、いつまでも。
200:風と木の名無しさん
11/04/12 00:32:37.61 J04nD2140
>>190
2人の後日談があればなあと思ってたらキタ―!!
ベッドだと社長がいつもより格好良く見えるw
社長も助手もお互いが死ぬほど大事なんだと凄く伝わってきました。
ありがとうございました。
201:風と木の名無しさん
11/04/12 08:14:05.92 P38WnhT6O
>>190
ヤッターーー
すごく萌えながら読ませてんだけど途中泣いてしまった
すごくいい!
ありがとうございました!
202:初めての夜 1/9
11/04/12 17:37:21.85 twAWcuNj0
ヒカアキです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
北斗杯授賞式のあと、ヒカルたち三人は荷物をまとめ、ロビーに集合した。
「もうすぐ新幹線の時間やから、ほなな」
社がさばさばした様子で手を上げた。
「ああ」
アキラが頷いて答えた。
ヒカルは無言で社の背中を見送った。
「進藤、キミはどうする?」
質問を理解するのにだいぶ時間がかかった。
「……あんま、うち帰りたくねえな」
もしかしたら、母が自分の対局を見に来ていたかもしれない。
そう考えると、余計に母と顔を合わせるのが億劫に感じられた。
「碁会所で検討するか?」
「北島さんがいるし」
「なら、ボクのうちで検討しよう」
「え、塔矢先生いるんだろ。会場にも来てたって。さっき中国の団長が言ってた」
「だったら、父にも検討に加わってもらえばいいじゃないか」
「そりゃ、嬉しいけどさ。勝ってたらな」
永夏には半目差で負けた。
半目、あと半目が足りなかった。
「じゃあ、決まりだな」
アキラはさっさと歩き出し、すぐに足を止めた。
「行こう、進藤」
「わかったよ」
ヒカルはアキラのあとに続いて自動ドアを潜った。
塔矢邸は無人だった。
ヒカルとアキラはスーツの上着を脱ぎ、自分達だけで検討を始めることにした。
だが、なかなか誰も帰ってこない。
203:初めての夜 2/9
11/04/12 17:38:50.44 twAWcuNj0
ヒカルは時計を見た。午後七時を過ぎていた。
夕食の時間だと意識したとたん、腹が鳴った。
「店屋物でも取るか?」
アキラが盤面に目を落としたまま尋ねた。
「いいよ、おごってもらってばっかっていうのも悪いし。オレ、ラーメンぐらいなら作れるしさ」
「小麦粉あったかな」
「麺から作れるわけねーだろ!」
「ちょうどいいから休憩にしよう。ボクもお腹が空いた」
ヒカルは台所の戸棚や引き出しを片っ端から開けてみた。
高そうな佃煮や海苔はあったが、インスタント食品の類はなかった。
「お前っていつも何食ってんだよ」
「あ、そばがあった。これじゃだめか?」
アキラがのしのついた木箱を開けた。
「えー、そば? じじくせえ」
そう答えた直後、また腹が鳴った。
「ま、いっか。どうせ、おんなじ材料だし」
「いや、これは十割そばだから材料はまったく違う」
「あーもう、いちいち細けーな。茹でるからちょっとどいてろよ」
「それぐらいボクがやるよ」
「やだよ、なんか時間かかりそうだもん。オレは今すぐ食いたいの」
ヒカルは鍋に水を張り、火にかけた。
そばは十束あった。ヒカルはすべて沸騰した湯にぶち込んだ。
「わかっているのか、一束が一人前だぞ」
「わーってるよ、うっさいな」
アキラは信じられないといった顔でそばつゆを用意した。
ヒカルは茹で上がったそばをざるに盛り、居間のテーブルにどんと置いた。
アキラは遠慮がちに箸でそばを取り、音も立てずにすすった。
ヒカルは限界までつゆにそばを沈め、あまり噛まずに飲み込んだ。
その時、玄関で電話が鳴った。
アキラは箸を置き、慌てて廊下に出て行った。
ヒカルがつゆに七味を振りかけていると、アキラが戻ってきた。
「母からだった。今、台湾にいるらしい」
204:初めての夜 3/9
11/04/12 17:40:22.06 twAWcuNj0
「台湾? なんでまた?」
「気になる棋士がいるそうだ。しばらくは帰って来られないと言っていた」
アキラは淡々とした様子で座布団に座り、箸を取った。
「帰って来たばっかなんじゃねえのかよ。お前もいろいろ大変なんだな」
「まあ、いつものことだしね」
ヒカルは一人分だけ残し、ざるのそばをきれいに平らげた。
行洋が帰って来ないとわかると、なんだか気もゆるむ。
ヒカルは行儀悪くその場に寝転んだ。
「あー、食った食った」
「牛になるぞ、進藤」
「馬鹿じゃねえの、人間は牛になんかなりません」
「驚いたな。キミも常識を知っていたんだね」
ヒカルはがばと起き上がった。
「くっそ、むかついた。こうなったら碁で勝負だ」
「望むところだが、食器を流しに置いてくれ。できれば洗ってくれると助かる」
「洗えばいいんだろ、洗えば」
ヒカルは袖をまくり、台所でわしわしと食器を洗った。
アキラはまだそばをすすっている。
ヒカルは「先、行ってるな」と言い、客間に向かった。
正座して待っていると、ようやくアキラが現れた。
ヒカルは黙ってニギった。ヒカルの先番だ。
結果は半目差でヒカルの勝ちだった。
「よっしゃ」
ヒカルはガッツポーズした。
アキラはじっと盤面を見つめている。
「検討していた時にも感じたが、やはりキミは成長した。倉田さんの言った通りだな」
「え、倉田さん、なんて言ってたの?」
「高永夏との一戦はキミの成長に必要な一戦だと言っていた。キミの成長はわくわくするとも」
「そっか、倉田さんそんなにオレのこと……」
ヒカルの脳裏に永夏との一局がよぎった。
「それなのにオレ、勝てなかった……」
胃に鉛がたまり、地の底まで沈んでいきそうだった。
205:初めての夜 4/9
11/04/12 17:41:39.37 twAWcuNj0
「ボクもだよ、進藤」
「え?」
ヒカルは顔を上げた。
アキラの真摯な瞳とぶつかった。
「ボクもキミの成長にはわくわくさせられる」
ヒカルは何も答えなかった。
「今日の副将戦、ボクは勝った。なぜかわかるか? キミが勝つと信じていたからだ。
ライバルのキミが勝つんだからボクも負けるわけにはいかない。そう思ったんだ」
「なんか、わりいな。ほんとごめん。お前にも倉田さんにもいろいろ期待させたのに、肝心のオレがこんなんで……」
ヒカルはさらに胃が重くなったような気がした。
「だから言っただろう、進藤。わくわくさせられるって。実際、キミは成長した。ボクはとても嬉しい。キミがライバルでよかった」
「塔矢……」
ヒカルの目から勝手に涙が溢れた。
「ごめん、塔矢。ほんとごめん」
ヒカルは大粒の涙をぼろぼろとこぼした。
「来年の北斗杯、日本は一敗も喫しないぞ」
「ああ、そうだな」
ヒカルは涙を拭い、頬を両手で叩いた。
「オレはもっともっと成長するんだ」
「もうこんな時間か」
アキラが時計を見て呟いた。
見れば、針は十時十二分を指している。
「やべ、帰んなきゃ」
「泊まっていったらどうだ?」
立ち上がりかけたヒカルを引き止めるように、アキラが提案した。
「いいのか?」
「道具はあるだろ?」
「ああ。じゃ、ちょっと電話してくる」
ヒカルは母に今日も塔矢家に泊まることを告げた。
受話器の向こうの母はなんだかひどく寂しそうだった。
客間に戻ると、アキラはいなかった。
しばらくして、パジャマ姿のアキラが戻ってきた。
206:初めての夜 5/9
11/04/12 17:42:41.17 twAWcuNj0
「キミもお風呂に入ってくるといい」
「そうだな」
ヒカルはジャージを抱えて風呂場に向かった。
広い浴槽につかっていると、ここ数日昂ぶるばかりだった神経が自然と静まっていった。
ヒカルはため息をついた。
あのまま帰宅していたら、今ごろ負けた悔しさをずるずる引きずっていただろう。
アキラのおかげだ。友達の存在がこんなにありがたいと思ったことはない。
友達……。
アキラは友達なのだろうか。
ライバルだと認め合ってはいる。
では、アキラはライバルであり友達ということか。
いや、違う。
そもそも、アキラは自分のことを友達とは思っていないかもしれない。
それなのにこちらばかりが友達だと慕うのも癪だ。
ヒカルはアキラという存在について、浴槽の中で延々と考え続けた。
おかげですっかりのぼせてしまった。
ヒカルはTシャツの裾をばたばたさせながら客間に戻った。
アキラは碁盤の前できちんと正座していた。だが、その頭が前後に揺れている。
ヒカルは足音を忍ばせてそっと近づいた。
アキラはうたた寝していた。
普段の鬼軍曹のような態度からは想像もできないほど無防備な表情だ。
ヒカルは唾を飲み込んだ。
心臓の音が耳元で聞こえた。
ヒカルは膝をつき、顔を近づけ、キスをした。
その瞬間、アキラがぱちりと目を覚ました。
「うわっ!」
ヒカルは思わずあとずさりした。
「な、なんだよ、狸寝入りかよ」
「そんなことするものか。本当に寝ていたんだ」
アキラがむきになったように言い返した。
「そうしたらキミが……」
アキラは何か言いたそうに口を開け、すぐに閉じた。
207:初めての夜 6/9
11/04/12 17:43:57.28 twAWcuNj0
「オレ……」
ヒカルは迷った。このままうやむやにしてしまおうか。
アキラは寝ていた。思い違いだったと信じ込ませればいい。
ヒカルは「なんか変な夢でも見てたんじゃねえの」と言おうとした。
「オレ、お前にキスした」
「な……」
アキラは絶句してしまった。
「お前が寝てたから、つい」
アキラは何も答えない。
「オレ、お前のこと、好きだ」
ヒカルは恥ずかしさのあまり、膝に目を落とした。
長い沈黙が続いた。
「あのさ、やっぱ忘れてくんねえ?」
ヒカルは耐え切れずに口を開いた。
「聞かなかったことにして、頼む」
ちらと見ると、アキラはまだ固まったままだ。
「なあ、なんか言えよ。それとも怒ってるのか?」
答える代わりに、アキラがにじり寄ってきた。
アキラの顔が間近に迫り、キスされた。歯がかちと当たった。
「やっぱりそうだ」
「何が?」
アキラはヒカルを押し倒した。
蛍光灯を背にしたアキラの顔は暗かったが、息が熱いことはよくわかった。
「ボクもキミのことが好きだ」
ヒカルはアキラの襟をつかみ、激しくキスをした。
歯が当たったが気にしなかった。
アキラもヒカルに負けないくらい唇を貪った。
舌を入れたら、アキラもすぐに応じた。
二人は音を立てて舌を絡ませた。
「どうしよう」
アキラが口を離して大きく息を吸った。つーと糸が引いた。
「キミをめちゃくちゃにしたい」
208:初めての夜 7/9
11/04/12 17:45:29.04 twAWcuNj0
「しろよ」
ヒカルはもどかしい思いでパジャマのボタンを外した。
アキラもジャージの上着に手をかけた。
二人は忙しなく裸になった。
ヒカルは仰向けのまま、キスを続けた。
舌は境が曖昧なほど溶け合っていた。
口の端からよだれがこぼれた。乳首に触ると、すでに尖っていた。
ヒカルはらせんを描くように指の腹で乳首を愛撫した。
アキラの喉から小さな声が漏れた。
ヒカルは我慢できなくなり、肘をついて起き上がった。
「進藤、どうし―」
ヒカルはアキラを押し倒し、尻を向けて馬乗りになった。
半勃ちになったそれをくわえ、自分も腰を落とした。
アキラはすぐに目的を理解したようで、ためらうことなくヒカル自身を口に含んだ。
ヒカルが口を上下させると、アキラのそれはたちまち怒張した。
自分のそれもアキラの口の中で痛いくらいに硬い。
アキラにすべてをさらけ出している羞恥心と、アキラのすべてを受け入れている狂喜がない混ぜになり、めまいを覚えた。
アキラは一心にヒカルをしゃぶっている。
ヒカルは喉元までアキラをくわえ込んだ。
むせそうになったが我慢した。
アキラの先端からは苦い汁がとめどなく溢れている。アキラのものなら何でも深く味わいたかった。
アキラがヒカルを強く吸った。
太ももの内側が痺れ、腰に熱が溜まった。
絶頂はすぐそこだ。
だが、先に果てるのは嫌だった。
ヒカルは鈴口に舌をねじ込んだ。
アキラの腰がびくんと跳ね、熱い液体が口内にほとばしった。
ヒカルは最後の一滴まで丁寧に飲み干した。
アキラも鈴口に舌を入れた。ヒカルはアキラの口に精液を放った。アキラもすべて飲み干した。
ヒカルはアキラの上からどき、ぐったりしているアキラの足を割った。
ピンク色の秘所に舌を挿し込むと、アキラが「あぁっ!」と叫んだ。
「や……めろ」
209:初めての夜 8/9
11/04/12 17:46:26.85 twAWcuNj0
ヒカルは何度も舌の出し入れを繰り返した。
「や、やめろ……お願いだ……やめ……てくれ」
根気強くほぐしたおかげで、舌は三分の二まで入るようになった。
ヒカルは舌を抜き、指を二本入れた。
いきなり二本も入れられ、秘所はきゅっとすぼまった。
唾液まみれのそこはぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。
「……くっ……んんっ……ぁっ」
ヒカルは三本目を強引に入れた。
指を折り曲げ、内壁をえぐるようにすると、アキラの反応が一段とよくなった。
「……あっ……はあっ……ぁんっ」
アキラの頬は紅潮し、目は焦点が定まっていなかった。
ヒカルと同様、それはもう屹立していた。ヒカルは太ももを舐め、指を抜いた。
アキラが安堵したように目を閉じた。ヒカルはアキラの腕を取って起き上がらせると、碁盤に両手をつかせた。
「待て、進藤。何をするつ―」
ヒカルはアキラの秘所に自身を突き入れた。アキラの背が弓なりにそった。
「っ……あぁぁぁっ!」
ヒカルは腰を動かすたびに理性がはがれていくのを感じた。アキラの締めつけはとても強かった。
「……いい、すげえいい、とーや」
「進藤、い、たい」
ヒカルはアキラの下腹部に手を伸ばした。
それは萎えかけていた。ヒカルは手でしごき、快楽を促した。
ヒカルの手の中でアキラは徐々に硬さを取り戻していった。
「し……んど……し……んど」
アキラが切なげに自分の名前を繰り返した。その声は背骨に沁み込み、ぞくぞくと脳まで這い上がった。
「とーや、とーやっ」
ヒカルは泣きたくなった。あまりの気持ちよさに、今自分が何をしているのかわからなくなった。
その直後、果てた。ヒカルは何度も痙攣し、アキラに精液を注ぎ込んだ。
アキラもヒカルの手の中で絶頂を迎えた。二人はしばらく動かなかった。
だが、すぐにまた体を求め合った。
寝入ったのは朝方になってからだった。
「やっべ、秀英と対局の約束してるんだった」
210:初めての夜 9/9
11/04/12 17:47:35.72 twAWcuNj0
ヒカルは外がやけに明るいことに気づき、急いで起き上がった。
畳の上で寝たせいで体が痛い。約束の時間まであと一時間もなかった。ヒカルはとりあえずジャージのズボンをはき、スーツを探した。
「秀英とは洪秀英のことか?」
アキラがもそもそとパジャマに袖を通した。
「そう。オレと勝負するためにわざわざ日本語覚えた奴。やべえ、どうしよう、メシ食う時間ねえじゃん」
「進藤、落ち着け。向かう途中でチョコレートでも食べればいいだろう。
それよりなぜ洪秀英と対局を約束していることをボクに話さなかった?」
「それは、だって、忙しかったし」
ヒカルはしどろもどろに答えた。
「もちろんボクも行くからな」
「わかってるよ」
二人は急いで身支度し、家を飛び出した。着替えを用意する時間がなかったため、どちらもきのうと同じスーツにネクタイだ。
碁会所には伊角と和谷、永夏と秀英が待っていた。
「三十分も遅刻だぞ、進藤!」
秀英がつり目で睨んだ。
「わりいわりい。寝坊しちゃってさ」
「おい、進藤。もしかしてそれ、きのうのスーツか?」
和谷がヒカルを指さした。
「って、げっ! 塔矢も同じ服じゃん」
和谷の顔から見る間に血の気が引いていった。伊角はそんな和谷に「どうしたんだ?」と聞いている。
永夏は氷のように冷たい眼差しを向け、秀英はぽかんと口を開けていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
211:風と木の名無しさん
11/04/13 07:40:03.53 XCVM9QGsO
ヒカアキヒカアキ!
初々しさゆえにとまらないかんじでカワイイなあ
212:1/2
11/04/14 02:03:28.82 CE0hi+QzI
会話文・似非関西弁注意。人は特に決めてません。
ゲ仁ソさんだと思います。楽屋での一コマということで一つ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!?
「なあなあ」
「なに?」
「…ほんとお前ゲームすっきゃなー」
「お前も人の事言えんやろ」
「まあな」
「んで何?」
「あ、何言おうとしてたか忘れた」
「ふーん」
「ふーんてなんやねんふーんて」
「忘れたなら俺どうすることもできんやろ」
「それもそうやけどー」
「暇なら差し入れ食うたら?」
「うん。…何やこれ!?」
「美味い?」
「おう!めっちゃ美味いで!お前も食うてみ食うてみ!」
213:2/2
11/04/14 02:05:51.24 CE0hi+QzI
「ええよ、俺んちにいっぱいあるから」
「え?これお前からの差し入れ?」
「差し入れっちゅーか、美味しいから持ってきただけ」
「何やねんーじゃあ言えよー」
「俺の持ってきた食べ物を気付かずお前が食べて喜んでる様子を見たかったやもん」
「それやったらバラしたらあかんちゃうの?」
「気付かれないの嫌やん」
「なら普通に渡せばええやんか」
「それはつまらんしー」
「ホンマめんっどくさいなーお前ー」
「せやろ?」
「ははは。でもそういうとこすっきゃで」
「…」
「どした?」
「…恥ずかしい奴」
「せやろ?」
「…俺もお前のそういうとこ好きやわ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!?
失礼しました。
214:風と木の名無しさん
11/04/14 17:41:06.40 wSUlaRBe0
>>213
ほのぼのイイネーGJ!
自分は勝手によ○この二人で想像してニヨニヨしたよw
215:すべてが欲しい 1/7
11/04/14 19:08:36.88 1sz9AqBH0
ヒカアキ? ヒカアキです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
囲碁ゼミナール初日の夜、ヒカルが大ホールで指導碁をしていると、いきなり背後からアキラの声がした。
「進藤、ボクと打て」
ヒカルは振り向いて仰天した。スーツ姿のアキラが椅子に腰かけていた。
酒の臭いがぷんと鼻をついた。目も完全に据わっている。
「お前、未成年のくせに酒飲んだのかよ」
「悪いか」
アキラが睨んだ。
「まあまあ、固いことは言わないでくださいよ、進藤先生」
浴衣姿の客がなだめるように両手を上下させた。
「名人になったお祝いにぱあっとおごったんです。十九歳なんて成人みたいなものですしね」
「何杯飲んだらそうなんだよ」
「ビールを二杯だ」
アキラが即答した。
「お前って酒よえーんだ」
ヒカルは和谷のアパートでリーグ戦を行う時、よく缶ビールを飲んでいる。
一、二本なら勝負に影響することもない。酒に対する強さは自分のほうが上らしい。
「大ジョッキで」
「大ジョッキかよ!」
「進藤、なぜボクと打たない」
アキラが身を乗り出して詰め寄った。
「打つも打たないもお前、忙しいじゃん。テレビとかにも出てんだろ。史上最速でタイトル獲った名人様だもんな」
「進藤、グーを出せ」
ヒカルは反射的に拳を握り、握ったとたん「しまった!」と思った。
だが、遅かった。アキラはすでにパーを出していた。
「ボクの勝ちだ。今からボクと打て」
「何これ。塔矢門下の伝統芸?」
その時、ホテルの従業員が会場を閉める旨を告げた。アキラは上着をつかんで腰を上げた。
「ボクの部屋へ行こう」
216:すべてが欲しい 2/7
11/04/14 19:09:59.83 1sz9AqBH0
ヒカルは仕方なくあとに従った。
514号室は布団が二組敷かれているだけで、誰もいなかった。
アキラはハンガーに向かって手を上げ、そのまま空を握った。挙句、バランスを崩して横ざまに倒れてしまった。
「大丈夫か?」
ヒカルは立ち上がろうとしているアキラを支えた。
「ボクは平気だ、何ともない」
アキラは自力で立ち上がり、覚束ない手つきで上着をハンガーにかけた。
「なあ、お前もう寝たほうがいいんじゃねえの?」
「ボクはキミと打ちたいんだ」
アキラは窓辺の椅子に座り、碁笥の蓋を開けた。
ヒカルも向かいに腰かけたその時、ドアが開いた。
「あ、進藤君、来てたんだ」
浴衣姿の芦原が入ってきて、いそいそと自分の鞄を開けた。
「女子大生の団体が下に泊まってるんだ。よかった、おつまみ持ち込んどいて。アキラと進藤君もどう? 一緒に来ない?」
「いや、オレたちこれから打つんで」
「そっか」
芦原はビニール袋を抱えると、戸口でスリッパを履いた。
「アキラ、先に寝てていいからね。オレ、今日は帰らないかもしれないから」
そう言い残して芦原は出て行った。アキラはもう白石を盤上に置いていた。
ヒカルは黒石を一つだけ置いた。アキラの先番だ。
しばらく、打つ音だけが響いた。
「確かにボクは忙しい」
独り言かと思うような小さな声だった。
アキラは視線を盤上に落としたまま続けた。
「だが、何も二十四時間忙しいわけじゃない。碁会所にだって顔を出している。それなのに、どうしてキミと打つことができないんだ」
「だから、予定がうまく噛み合わないんだろ」
ヒカルは勝負に集中しようとした。
いつもの食ってかかるような喧嘩腰のアキラではない。
胸の内を切々と訴えるような口調だ。それがなんだか落ち着かなかった。
「キミの家に電話ばかりしているおかげで、キミの家の番号をそらで言えるようになってしまった」
「オレはオレで忙しいんだよ」
217:すべてが欲しい 3/7
11/04/14 19:11:14.69 1sz9AqBH0
「いや、キミはボクを避けている」
「そんなことするかよ」
ヒカルはアキラを見ずに答えた。
「本当か?」
アキラが顔を上げた。
「ボクの目を見て答えろ」
アキラの目は酔いのせいで赤く潤んでいた。ヒカルは横を向いた。
「わかったよ、お前を避けてたよ。これでいいか」
「なぜだ? なぜ避ける?」
ヒカルは白石をつまみ、また碁笥に戻した。
「なんか昔を思い出して」
「昔?」
「お前を追ってたころ。お前はもうプロなのにオレはまだ院生で、必死になって追いつこうとしてたころ。
お前はずっと先を歩いてたころ」
「キミはすぐに追いついたじゃないか。ボクがタイトルを獲ったくらいで先へ行ってしまったと思っているのか?
その程度でへこたれているのか?」
「へこたれてるとかそんなんじゃねえけど、でも、気分が塞ぐっていうか。ああ、一人なんだなって考えてさ。
この時期は苦手なんだよ。ゴールデンウィークって」
「では、今の状態は一時的なものなんだな?」
アキラが念を押すように尋ねた。
「また以前のように打てるんだな?」
「ああ、そのうちな」
ヒカルはバチッと音を立てて打った。
「よかった」
アキラは安堵したように椅子の背に身を預けた。
「なぜだかわからないが、キミと打てないとひどく不安なんだ」
アキラはネクタイをゆるめ、ボタンを外した。
「心細くてたまらない」
突然、アキラの体がぐらりと前に傾いた。
ヒカルは慌てて抱きとめた。体の線が薄いシャツ越しに生々しく伝わった。
「塔矢、お前もう寝ろ。な? 飲み過ぎだって」
「いやだ。今夜打てなければ、次はいつ打てるかわからないじゃないか」
218:すべてが欲しい 4/7
11/04/14 19:12:49.06 1sz9AqBH0
「暇な時はできるだけお前と打つようにするよ」
ヒカルはアキラを引きずって布団まで運んだ。
「本当だな? 信じていいんだな?」
「ああ、信じろよ。オレはお前と一生一緒に打つ」
ヒカルはアキラのために掛け布団をめくってやった。
アキラは寝そべったまま、目を見開いている。
まるで目の前でマジックの種明かしをされた子供のような顔だ。
「今わかった」
「何が?」
「ボクはキミのすべてが欲しい」
アキラは体を起こし、ヒカルのジャージの襟をつかんだ。
「キスをしてもいいか?」
答える前にアキラはキスをした。熱っぽい息が混ざり合った。
初めてキスをするのに、ああ、これはアキラの味だと思った。
Tシャツの裾からアキラの手が忍び込み、乳首を触った。
何度も撫でられるうちにヒカルの乳首は硬くなった。
アキラはTシャツをめくり、乳首を舐めた。
「……ん」
もう片方の乳首はアキラが親指でこねくり回している。
ヒカルはアキラの後頭部を抱き締めた。
「……塔矢……こんな、こと……どこで覚えたんだよ」
「中学の時、同級生に見せられたんだ」
アキラが口を離して答えた。
「男同士の性行為を収めたビデオを」
「それ、イジメじゃん」
「その当時は男同士でも性行為ができるとは知らなくてね、勉強になったと礼を言ったら変な顔をされた」
「そりゃそうだ」
「でも実際、こうして役に立っている。やはり彼らには感謝しないと」
「ほんとお前、打たれ強いっていうかなんていうか」
アキラはヒカルを仰向けに寝かせ、下着ごとズボンを引き下ろした。
怒張したそれが夜の冷えた空気に晒され、ヒカルは痺れるような快感を覚えた。
ヒカルはぼうっとした頭でアキラに含まれる自身を想像した。
219:すべてが欲しい 5/7
11/04/14 19:13:57.56 1sz9AqBH0
だが、アキラの舌はヒカルのそれには向かわず、蟻の門渡りを刺激した。
次にアキラは陰嚢をしゃぶり、カリ首の裏を吸った。
「……ひっ……いっ……あぁっ」
ヒカルの口から喘ぎ声が漏れた。
アキラは側面に唇を這わせながら根元を揉んでいる。
ヒカルは自身から先走りが溢れるのを感じた。
アキラは丁寧に先走りを舐め取るが、決して先端には触れない。
それがもどかしくて、放尿を我慢する時のように腰が甘くうずいた。
「とうや……も、だめ」
アキラがヒカルをくわえ込んだ。
「……んんっ!」
ヒカルは踵でシーツを何度もかいた。
気づいたら射精していた。アキラがごほごほと咳き込んだ。
「……お前、上手すぎ」
「ビデオで見たからな」
アキラは手の甲で口の端を拭った。少し涙目になっている。
自分も同じような顔をしているのかなと思ったが、きっともっとだらしない表情だろう。
「もしかして洋モノ?」
「出演していたのは白人男性と黒人男性だった」
「またマニアックだな」
アキラはネクタイをほどき、シャツを脱いだ。スラックスも靴下も脱ぎ、全裸になった。
ヒカルは何もする気が起きず、横たわっていた。
何せ、生まれて初めてキスをして、生まれて初めてフェラされたのだ。
アキラは精を放ったばかりのそれを手でしごき始めた。
「なあ、オレって下なの?」
若いそれはすぐに猛った。アキラはぎこちない仕草でヒカルにまたがった。
「言っただろう、キミのすべてが欲しい」
ヒカルの先端を自分の秘所に当てると、アキラは腰を沈めた。
だが、なかなか入らない。
「あのビデオだと簡単そうだったんだが」
「なあ、位置変わろうか?」
ヒカルは肘をついて半身を起こした。
220:すべてが欲しい 6/7
11/04/14 19:14:59.38 1sz9AqBH0
「いい、これくらいどうってことない」
アキラは眉間に皺を寄せながらヒカルを飲み込もうと必死だ。
ヒカルは大人しく仰向けになった。
その時、先端がずぶりと突き抜けた。
アキラが大きく息をつく。ヒカルのそれは徐々に温かい肉壁に包まれていった。
ヒカルの悦びに比例するように、アキラの呻き声も大きくなっていった。
「あんま無理すんなよ」
ヒカルはもう一度半身を起こした。
「大丈夫だ」
アキラは今やヒカルをすっぽりと収めている。
俯き加減の顔から涙が一粒ぽたりと落ちた。
「大丈夫って泣いてんじゃねえかよ」
「嬉し泣きだ」
アキラがヒカルを見た。
その拍子にまた涙がこぼれた。
「キミはボクのものだ」
体が丸ごと心臓になったようにドクンと脈打った。
アキラはヒカルの腹に手をつき、腰を動かし始めた。
「……ん、塔矢」
ヒカルは背を布団に預けた。
甘美な気だるさに支配され、半身を起こしていることができなかった。
「……しんどう……はっ……あぁっ」
アキラはしばらく上下の単調な動きを続けていた。
そのうちコツをつかんだらしく、腰を回転させてより深い快楽を得るようになった。
「……しんどう……しんどう……ぁあっ……ああっ……ぁんっ」
「……とーや……とーや」
アキラの動作がどんどん大きくなっていった。
ずちっずちっと粘膜が立てる音の他に、二人の荒い息遣いが部屋に満ちた。
「……とーや……イく」
ヒカルはアキラと指を絡め、体を引き寄せた。
「キスして、とうや」
アキラがキスをした。
221:すべてが欲しい 7/7
11/04/14 19:15:59.71 1sz9AqBH0
先程のフェラのせいでほんのりと生臭かった。
アキラは無理な姿勢で抜けそうだと思ったのか、力を入れた。
ヒカルの体が震えた。ヒカルはアキラの髪をくしゃくしゃにして頭を抱え込み、強引にキスを続けた。
腰が跳ね、果てた。
アキラが口を離し、白い首をのけ反らせた。
ヒカルの腹に熱い精液が放たれた。
アキラはそのまま、ハアハアと息を切らしながらヒカルにまたがっている。
「塔矢、来いよ」
ヒカルはアキラの腕を引き、ぎゅっと抱き締めた。
「キミ、べたべただ」
「あとで一緒に風呂入ろうぜ」
「ここの大浴場、二十四時間入れるって」
「そこでもう一回って言ったら怒るか?」
「怒るわけないだろ」
その時、ドアの開閉する音が聞こえた。
「あれ、酔ってるせいで変な幻覚が見えるよ?」
芦原の声だった。
「芦原さん!」
二人は急いで起き上がった。
「そうだよな、これは幻覚だよな。さっきそこで煙草吸ってた緒方さんもきっとスナフキンだよな。
スナフキン、オレをムーミン谷へ連れてって」
芦原はふらふらと廊下に出て行った。
ヒカルはジャージを元に戻すと、全裸のアキラの代わりに芦原を追いかけた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
222:風と木の名無しさん
11/04/14 20:12:50.28 6PayTgOJ0
>>221
トリップ付けたほうがいいと思う
223:風と木の名無しさん
11/04/14 20:47:15.94 vXWU4Nzl0
>>215
連投するなら間を置きなよ
224:215
11/04/15 10:23:30.93 ee4/hlIC0
すみません、連投は二度としません
うpはやめようやめようと思っていたので
これを機にやめます
225:風と木の名無しさん
11/04/15 11:14:12.96 dJtHJJKz0
>>215
お疲れ様です。
リバもの苦手みたいなので、流し読みしかしてないので感想言えなくてごめんね。
でも、ふたりのことが好きで一所懸命書いているんだね、と思っていました。
元々やめたい気持ちがあったのなら、しょうがないとは思いますが、残念ですね。
>>223
これで満足ですか?
二日空けてるのにダメなんですか?
どのくらい空ければいいのか、ちゃんとご自分の意見を言ってくださいよ。
URLリンク(bbs.kazeki.net)
226:風と木の名無しさん
11/04/15 14:18:28.81 xgUz81pH0
>>225
たった2日で「空けてるのに」?
どのくらい空ければいいのか、スレを半年ROMったら解ると思うけどw
心象が悪くなるのはトンチンカンな擁護するアンタじゃなく
ジャンル(カプ)そのものだって事を忘れないで
227:風と木の名無しさん
11/04/15 14:42:48.12 NCw2YH1+0
2日空いて他の人の投下もあるのに
連投なのか?普通にこれで良いと思うが
228:風と木の名無しさん
11/04/15 15:27:33.80 +SB8LktQ0
続けてならまだしも、別投下挟んでるし
まぁ目を剥くほどの事はないんじゃないかと思う。
ジャンルが悪く思われるんだぞ!って脅しみたいな言い方は違うと思うがなぁ
229:風と木の名無しさん
11/04/15 15:47:31.65 Rynx2nobO
避難所行こうぜ!
>>225がせっかく誘導してくれてるんだし
230: ◆k/mlQdBDxE
11/04/15 17:30:45.63 2dfdIw18O
碁のアキラ×ヒカル×アキラでリバで続きものを書いてる者です
>>215さんとは別人です
実は、棚に投下されていたあなたのヒカアキSSがきっかけでヒカ碁にはまったんです
「スタバにて」というタイトルだったかな
今回も、酒に酔った襲い受けアキラに大変禿げました、もうつるっつるに
ヒカ碁にはまったきっかけをくれてありがとう
棚にSSを投下した数日後に何気なく携帯で棚を見て、あのSSを見ることがなかったら、今ヒカ碁にはまってなかったと思います
二人の間にあるあたたかくてやわらかい雰囲気が本当に好きです。
このジャンルで初めて同人誌というものを買って、実はリバに目覚めたのもこのジャンルでした
うpをやめると聞いて残念です。
印象的な一文がところどころに散りばめられていて、ときどき頭の中でその文を再生してはニヤけてました
萌えをくれてありがとう
どうぞお元気で
次の投下どうぞ
231:風と木の名無しさん
11/04/15 19:23:36.34 Ww9c2Wxf0
もしかして別人かな?とは思ってたけど、
だからこそ>>221にはトリップつけて欲しかった
232:215
11/04/15 21:24:34.14 ee4/hlIC0
私のせいで波風が立ってしまって申し訳ありません
萌えを受け止めてくれる棚にはとても感謝しています
管理人様もいつもありがとうございます
>>230さんの仰る通り
去年から今年にかけて投下されたヒカアキ計7作は私の作品です
毎回これが最後と自分に言い聞かせて投下するのですが
萌えが爆発しそうになるたびに衝動的に書き上げてはうpしていました
結果的に自分本位な行動になってしまいました
トリップを付けることも考えましたが
だったら次はサイトをオープン、何なら同人活動も、とエスカレートするのは目に見えていました
本来、のん気にSSを書いていられるような状況ではないため
自分に区切りをつけるいいきっかけを与えていただいたと思っています
長々と失礼しました
>>230さん、正直、涙が出るほど嬉しいです
233:風と木の名無しさん
11/04/15 21:31:42.28 xVX0cZ1B0
馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
234:風と木の名無しさん
11/04/15 21:52:59.08 vWhm5NRr0
腐女子ってめんどくさい生き物だな
235:風と木の名無しさん
11/04/15 21:58:41.35 7HIQYyFz0
厨ジャンルって事がよくわかった
236:風と木の名無しさん
11/04/15 23:15:37.78 MYL1fE000
だから避難所行けって
URLリンク(bbs.kazeki.net)
237:女体化っぽく見えて実はそうではない1/9
11/04/16 01:00:13.19 9HvS9kNp0
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
青空のこぶしの宗×拳。
女体化っぽくて実はそうではない。
やはり最後にちょっとだけ女絡み。
238:女体化っぽく見えて実はそうではない2/9
11/04/16 01:01:20.73 9HvS9kNp0
宗武は特に何とは無しにただブラブラと上海を歩いていた。
一応仕事が終わったので、これから帰る所なのであるが、
家に帰っても誰一人待つ人間が居る訳でもないからただこうやってブラブラしているのである。
そうして歩いているうちに、赤線地帯まで来ていた事に気がついた。
ここに用は無い、そう思って踵を返そうとした時、声を掛けられた。
「ねえそこの少尉さん…」
振り向くと女が立っていた。こんな所に立っているなら、当然売春婦であろう。
「よく俺が少尉だと分かったな」
「階級章見れば分かるじゃない。前にもドイツ軍人なら見た事あるわ。…ねえ、どう、これから?」
宗武は普段は売春婦などに興味は無い。が、何故かこの時は女を買ってみる気になった。
女を連れて連れ込み宿に行った。
「良い部屋ねえ、やっぱりお金あるのね」
「まあな」
女の言う事を右から左へと聞き流しつつ、改めて女の顔を見た。悪くない。
いや、かなりいい方だと思う。しかしさっきから、どこかで見たような気がしてならない。
が、宗武は瞬間記憶能力では無いにしても、記憶力はかなりいい方だ。
その自分が一度会ったことのある人間の顔を覚えていない筈が無い。
(気のせいか…)
宗武は考えを打ち消した。
一足先に寝台に上がった女はさっさと服を脱ぎ始めた。せっかちな女だ、と思った。
まあいいか、と思って宗武も服を脱いだ。相手がその気なら、さっさと済ませてしまうまでだ。
寝台に上がって女の上に被さる様にすると女が口づけを強請ってきたが、それを宗武は制した。
「俺は買った女とはせん」
「…本命とじゃないとキスしない主義?」
「…まあな」
「ふーん、結構一途なんだな」
いきなり女の口調が変わって何、と警戒する間もなく、相手の動きを封じる秘孔、新胆中を突かれた。
動けなくなった宗武の下から女はさっさと抜けだした。
「気がついて無いとは思ったが…やっぱり劉家拳には伝わって無えんだな」
さっぱり事態が飲み込めない。
「…どういう事だ…!」
239:女体化っぽく見えて実はそうではない3/9
11/04/16 01:02:09.03 9HvS9kNp0
「あーまだ分からない?」
そう言って女が自分の秘孔を突く、すると見る見るうちに女が、男に、よく見慣れた人物に変わった。
「拳志郎…!」
「あーこれは北斗神拳に伝わる木場っていう秘孔で、これを突くと男は女に、女は男に化けれるんだぜ」
「…何故、俺に…」
「ああー?いや、この秘孔ってさ、便利だけど今一使い勝手が悪くって、いや、体格変わるだろ?
だから『実は男だったんだぜ!』って女から男に戻ると、どう考えても全身の服が破けて素っ裸になるだろ?
だから上手い事披露できるシチュエーションをだな…」
「そんな事はどうでもいい…!」
「ああん?」
「何故俺だった…!」
「いやー、だって、ねえ、玉玲が女買う訳無いし、飛燕を騙すのも悪いし、ねえ。
まあ、お前なら上手い事騙されてくれるかなーっていう…、じゃ、そういう事で」
拳志郎は再び自身の秘孔をついて女の姿に戻ると、床の服を手に取った。恐らくこれから帰る気なのだろう。
「ふ…」
「?」
「ふざけんじゃねえこのクソガキッッ!!」
宗武は、自身の怒りによって新胆中を解いた。
「うわっ!」
拳志郎が避ける間もなく、宗武は拳志郎を寝台の中に引きずり込んだ。
「そう怒るなよ、そんなに溜まってたの?」
その拳志郎の口調がより一層宗武を腹立たせる。もう何が何でも絶対このクソガキを許さない、と思った。
拳志郎は売春婦としてここにやって来たのだから、売春婦として対価を払わせるべきだ、と宗武は考えた。
宗武は女になっている拳志郎の然るべき所に然るべき物を突っ込もうとした。
しかし、先端が触れた、と思った瞬間拳志郎は男に戻っていた。
「…どういう事だ」
「これは女になるんじゃなくて女に化ける秘孔だからな。だから実際にはヤったりとかできねえよ」
だから諦めろ、と拳志郎が言おうとすると、宗武は如何にも悪人らしい悪い笑みを浮かべた。
「穴ならあるだろうが」
240:女体化っぽく見えて実はそうではない4/9
11/04/16 01:03:01.85 9HvS9kNp0
それを聞いて拳志郎が悪い予感をさせる間もなく、いきなり宗武は突っ込んできた。
「痛い…痛い…痛ぇ!!」
「いい歳した…男が…ごちゃごちゃ…騒ぐん…じゃねえ!」
「っ…さっきは…ガキ扱い…した癖に……一度…抜いて…慣らすとか…しろよ…お前だって…キツい…だ…ろ…」
実際拳志郎の拒否反応が強すぎて宗武もただ痛いだけで全然進めない状態だった。
「断る…テメエ絶対逃げる…だろ」
「逃げ…ねえ…から…なあ…頼む…から…」
拳志郎が懇願する。普段なら拳志郎に懇願されたらいい気分だっただろう。しかしこの状況では到底楽しめない。
そして拳志郎の言う事は信用できない。ここは一度抜くより、入れたままで済む方法を取るべきである。
「ぬんっ!」
痛みを快楽に変える秘孔を突いた。
今まで拳志郎の全身を支配していた(痛みを与える箇所は身体のごく一部分と言えど、それは全身の痛みに感じられていた)
痛みが一気に快感に変わって、全身の緊張が一気に解けた。
それで今までどうにも進めなかった宗武は勢い余って一気に一番奥まで突っ込む事になり、
それによって途轍もない快感を味わった拳志郎は文字通りあっと言う間に達してしまい、
それによって陽物を締め付けられた宗武も達して拳志郎の中に大量に射精した。ここまでの経緯は実に一瞬であった。
「ああっ!」
「ぐふっ!」
何故宗武がぐふっと言ったかと言えば、
それは拳志郎が射精した時に角度の問題で拳志郎の液体をもろに顔に浴びる事になったからである。
大量に射精された拳志郎は排泄感に似た物を感じて、少し不快な気分になったが、
秘孔を突かれている今はその不快感すら快感といった様子で、再び軽く射精した。
軽くと言ってもそれはかなりの量だったので、また宗武は顔に大量に浴びた。
「……」
顔からぼたぼたと粘度の高い大粒の雫を滴らせ、宗武は拳志郎を睨んだ。
拳志郎はと言えば射精の余韻なのか何処か夢見心地な目付きで焦点が合っていない。
暫くして漸く宗武が睨んでいるのに気付いたようだった。
「…あ…何?…汚い面近づけんじゃねえよ…」
「!…誰の所為で汚れたと思ってる!!誰の!」
「そりゃお前が無理矢理…」
「うるせえ!ごちゃごちゃ抜かすんじゃねえ!」
241:女体化っぽく見えて実はそうではない5/9
11/04/16 01:04:08.62 9HvS9kNp0
「うわっ…」
また乱暴に動かれて、その度に拳志郎は達してしまう。
それにつられて宗武も達してしまうので、二人とも殆ど絶え間なく射精しているかのような状態になった。
達する度に顔が汚れるのが嫌なので、宗武は拳志郎の液体が拳志郎本人の顔にかかるようにしてやった。
しかし顔にかかっているのに気付いているのかどうか、寧ろ顔にかかっているのを喜んでいるようにも見える。
この変態め、と自分が拳志郎の秘孔が突いたからそうなった事を全く棚に上げて、宗武は内心悪態を突いた。
それからそういう状態で時は過ぎ、宗武も流石にそろそろ限界かと思って引き抜こうとした。
「ん…」
拳志郎が制止するように宗武の髪を掴んだ。
「次…最後…な」
まあ最後だと言っているのだからいいだろう。
一旦大きく引いた後、突き入れてやった。
「っ!」
一際大量に射精した後、一気に疲れが出た。
拳志郎を見やると、物憂げな様子をしているように見えたので、なんとなく口づけした。
口を離すと、拳志郎が驚いている様子だったので、なんだろうと考えると、
『…本命とじゃないとキスしない主義?』
『…まあな』
という会話を思い出した。拙い事をした、と思っていると、「早く…抜けよ…」と拳志郎に言われたので、我に返って、抜いた。
抜くと同時に拳志郎は眠りに落ちたようだった。宗武にも一気に睡魔が襲ってきたので、寝た。
242:女体化っぽく見えて実はそうではない6/9
11/04/16 01:04:58.90 9HvS9kNp0
「…」
拳志郎は目を覚ました。体が痛い。隣を見やる。宗武が居ない。
「…」
「早く風呂に入れ」
声がした方を見ると、風呂から出たらしい宗武が立っていた。
「もうちょっと寝てたっていいだろ」
「料金が嵩む」
「どうせ金持ちなんだしいいだろ」
「お前のせいで余分な金は払いたくない」
風呂に入って、出た後、辺り一面情事のせいで汚れまくっていたが、奇跡的に服は無事だったので、
再び秘孔を突いて女に変身した後、服を着て化粧直しをした。
「…化粧ってのは、必要なもんなのか?」
「そりゃ女だったらするだろ」
売春婦の恰好ですっぴんだったら、変である。
「しかし随分部屋汚れたよねー、少尉さん、お前が弁償してね」
「なんで俺が」
「お前のせいだろ」
「お前のせいでもあるだろ」
「お前の方が沢山出しただろ」
「お前も出しただろ」
「でも、対外的には男女二人組って事になるから、宿の従業員は全部お前のせいだと思うだろうね」
「男女…にしては女の臭いがしないのが変に思われるだろうがな」
243:女体化っぽく見えて実はそうではない7/9
11/04/16 01:06:05.33 9HvS9kNp0
「あ、そうだ」
部屋を出た後、拳志郎は懐から香水を取り出して自分と宗武に思いっきりかけた。
「臭っ!何すんだてめえ!」
「あ?だって散々やったから臭いじゃん」
「…気で浄化すれば済む話だろうが!」
「ああ、そうだね」
なんだかんだ言って、宗武が結構金を払って宿を引き払った。
「じゃ」
「…ああ」
「ただいまー」
ただいまー、と言ってもここは拳志郎の家では無く、飛燕が住んでいる教会である。
拳志郎の家(というか玉玲の家)は別に売春婦が出入りしてもおかしくないといえばおかしくないのだが、
これからする悪戯の内容を考えると自宅から出るのはなんとなく気が退けたので教会で女に化けたのだった。
…教会に売春婦が出入りする方がよっぽどまずいんじゃないか、と飛燕は思ったのだが、
拳志郎に住まわせてもらっている身なのであまり文句は言えないし、
拳志郎は文句を言っても聞き入れる人間では無い。
一応拳志郎にこの話を持ちかけられた時「エリカの情操教育に悪い」と反論はしたが、当然の如く聞き入れられなかった。
さて、その拳志郎が帰って来て奥の部屋へ入って行ったのを見て、飛燕は
「なんだか疲れてる様子だなあ~」と文麗に話しかけた。
「やっぱり怒られたんじゃないのかしら。宗武はそういう冗談の類は嫌いだし」
「でもあの二人が本気で戦ったらもっと重傷を負う筈だあ~。疲れてるだけで、怪我をしてないみたいだあ~」
「そうね…」
部屋から出てきた拳志郎はやっぱり疲れている様子で、飛燕と文麗の話しかけにも適当な返事しかせず、帰って行った。
飛燕としては拳志郎が心配でない訳では無かったが、まあ自業自得だし、
それよりも昨日も今日も売春婦姿をエリカの目に入れる事無くこの事案が終わってよかったと思った。
244:女体化っぽく見えて実はそうではない8/9
11/04/16 01:06:54.07 9HvS9kNp0
拳志郎は家に帰った後、できるだけ屋敷の人間と顔を合わさないようにして風呂に直行した。
その後も同様に気をつけて自室に戻った。
まずい事をした、と拳志郎は思った。
どう考えたってあの時の宗武の態度は、自分に惚れたという雰囲気だった。しかもそれで自分が嫌じゃない。
満更嫌でも無い。むしろちょっと嬉しいかもしれない位の勢いだ。その自分の心の動きが更に拙い。
だって自分は玉玲を愛している。玉玲を一番愛している。それは今も昔もこれからも決して揺るがない。
しかし自分は宗武に惚れたっぽい。それが拙い。
愛している女がいるのに、愛する妻が居るのに他の男と諸思いになる?いやそれはない。どうしてそんな真似ができる。
自分はどうしてあんな冗談をしようと思ったのか。どうして相手に宗武を選んだのか。
ひょっとしたら自分で気づかなかっただけで最初から宗武の事を好きだったんじゃないか。奴の方ももしかしたら…。
その日はずっと部屋から出ないでゴロゴロしていた。
宗武も宗武で家に帰った後、気分が優れない。
あんなことをせずに、とっとと拳志郎を叩きだせばよかった。どうして自分はあんな振る舞いに及んだのだろう。
多分今まで気付かなかっただけで、自分は拳志郎に前から惚れていたに違いない。
拳志郎は本当に冗談であんな事をしてきたのか、それとも自分の心持を見抜いてしてきたのか、わからない。
さっきかけられた香水が臭いのだが、宗武は風呂に入ったり気で臭いを消したりすることなく、
その日は一日中寝台でゴロゴロしていた、
245:女体化っぽく見えて実はそうではない9/9
11/04/16 01:07:43.35 9HvS9kNp0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
なぜこの二人では真っ当なシチュエーションが思い浮かばないのだろう
246:キム×空 ◆l5uYUz79nM
11/04/17 01:10:51.64 VDWD4LUQ0
キム/タクと唐/沢さんがドラマで共演したらという妄想の産物
キム×空です。
棚15よりダラダラと続けております。
保管庫のシリーズ物に収録して頂いております。ありがとうございます。
超超SSですが、読んで頂けたら幸いです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
春だ。
いい天気だ。
色とりどりの花がいっぱい咲いて、
なんだか全てが祝福しているような、そんなうららかな日曜日。
の、もう昼過ぎ。
やっとなんかゴトゴト音がする。
リビングのドアがゆっくり開き、のそっと音でもしそうな登場で空沢さんが起きてきた。
「おはようございます。…すごいですね、寝グセ」
「あんまりすごいからお前に見せようと思って」
会社の女の子が見たらイメージ違いすぎて卒倒しそうだ。
空色のパジャマは俺と会う前から持ってて、今もよく着ている。
きっと前の奥さんが買ったものだろう。
どうせ俺が同じもの買って来たってこの人は絶対着ない。
でも嫉妬なんかもう無い。
だって今この姿を見れるのは俺だけなんだから。
247:キム×空 ◆l5uYUz79nM
11/04/17 01:11:47.75 VDWD4LUQ0
「コーヒーでも飲みますか」
「…だからー、コーヒーくらい自分で淹れるって言ってるだろうが。お前は俺を甘やかしすぎなんだよ。」
「甘やかしたっていいでしょ。好きなんだから。」
「お前みたいな奴と居たら俺はますます駄目な男になる。」
「空沢さんは今も昔もいい男ですよ。」
「お前が言うと嫌味なんだよ。」
「ちっちっち。わかってないな~」
ブツブツ言いながら俺の座っているソファの隣りに座ってくるもんだから
思わず近づいてみたりして。
「あぁ??…おい木村、コーヒー入れて来い」
「駄目。空沢さんが駄目な男になっちゃう」
首に腕を回せば一瞬逃げるけどすぐに抵抗を無くす。
あ、なんかこういうの久々でちょっとドキドキするんですけど。
「…お前が俺を駄目にするんだよ」
「じゃあ、いっそ…」
ただただ抱きしめる。
じゃあ、いっそ、俺無しじゃ生きていられなくなるまで駄目になってください。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
世の中色々ありますが、春を感じて頂けたら嬉しいです。
ありがとうございました。
248:キム×空 ◆l5uYUz79nM
11/04/17 01:13:23.78 VDWD4LUQ0
お恥ずかしい
トリップに番号を巻き込んでしまいました。
申し訳ありません…
249:風と木の名無しさん
11/04/17 02:15:22.14 aVrz50iHO
キム空待ってましたーー!
まっすぐな木村と、ちょい押しに弱いからさーが相変わらずかわええええ
リアタイで出会えたので告白しますが、木村の出張帰りをカレー作って待っちゃうからさーと
「俺のことちょっと好きになっちゃった?」とか言っちゃう木村が大好きです。
そして口調があまりにも中の人っぽいので、脳内再現率がぱねえっす。
あーもう二人とも可愛い!おっさんたちがイチャコラしよってからに…また書いてください、お待ちしてます。
250:風と木の名無しさん
11/04/17 11:35:32.69 rcduXAwTO
>>246
萌えすぎて禿げました
ありがとうございます!
次はキス以上まで進むといいなw
また投下よろしくお願いします
251:熊が泣く日和 1/4
11/04/17 21:58:20.06 Pk96CNZrP
半生 邦画「落.語.物.語」より師匠←コハル
・超絶ネタバレ注意 ・エロ無し、ぬるい、暗いです
パチン (>⊂(・∀・ )マイドバカバカシイヤオイヲヒトツ
252:熊が泣く日和 0/4
11/04/17 22:10:07.34 Pk96CNZrP
すみません、引っ掛かりまくっているので後ほど…
(・∀・;)ベンキョウシナオシテ マイリマス!
253:熊が泣く日和 1/6
11/04/18 00:09:10.06 4Z42Ye7V0
投稿再挑戦、半生 邦画「落.語.物.語」より師匠←コハル
・超絶ネタバレ注意 ・エロ無し、ぬるい、暗いです
パチン(>⊂(・∀・)マイドバカバカシイ(
今日も日差しは温かい。洗濯機は師匠と、僕のぶん、二回楽々回せるだろう。
それが済んだら掃除をやって、ご指名のライスカレーに取りかかる。
家事がまるまる僕の仕事になって、最近ようやく慣れてきた。
師匠は相変わらず家事にうるさく、稽古にいい加減だ。
師匠はよく僕をからかってのほほんと笑う。
254:熊が泣く日和 2/6
11/04/18 00:11:39.54 4Z42Ye7V0
「小.春、お茶くれーい」家のどこかで声がした。僕は洗濯機の蓋をばたんと閉めて返事をする。
「はい!緑茶ですか?」「うん、濃いやつねー」
僕は慌てて手を拭いてから台所に駆け込み茶筒を手に取る。そうだ貰い物のカステラが残ってる。
厚めに切って盆を持ち、こぼさないよう慎重に、師匠の部屋に運びこむ。
「師匠、緑茶です」
「うん、そこに。そうそう」師匠は本から顔をあげるとニヤッと笑った。
「カステラかあ、気が利くな。手づかみってのもたまにはオツだよな」
「あっ」僕は正座のままで小さく跳ねる。皿にフォークが載ってない。「すみません!すぐ、すぐ持ってきます」
「いい、いい、それより、今日は肉じゃががいいな」
「え、昨日は…ライスカレーって」
「そうだっけ?忘れた。似たようなもんだろう、芋と、肉と、玉ねぎと」
一応の抵抗を試みる。「ジャガイモも、もう切ってますし、豚の薄切りは買ってこないと…」
「いや、今日は絶対に肉じゃがだな」
もちろんその抵抗は無駄だ。わかりました、と答えて立ち上がる。
「ああ、葵」部屋を出ようとする僕に師匠が声をかけた。
ああ、葵、それを聞くと心臓が砂粒を噛んだみたいになる。
世界じゅうの音がほんの一瞬なくなってしまったみたいになる。
師匠は気づかずにこにこと、小さな皿を僕に差し出す。
「カステラ、食っていいぞ。だから今日は肉じゃがでな。なんだそんな顔して。上物なんだぞ、これは」
手の中のカステラはすごく黄色い。
255:熊が泣く日和 3/6
11/04/18 00:14:08.72 4Z42Ye7V0
おかみさんが亡くなったすぐあとも、葬儀の間も、師匠は大きな声でわあわあ泣いた。時には呻くように泣いた。
人類が誕生してからやった泣き方の全部を試すように師匠は泣いた。葵、葵、ばか、葵と言って泣いた。
僕は家から取ってきた防虫剤臭い喪服を着て、できる雑用をこなしていた。
噺家には悲しいことがあった時、平気なふりで周りを笑わせる人と嘆き悲しむ人がいるらしい。
師匠は嘆き悲しむ人で、大きな体を揺すぶって涙を流した。葬儀に来た噺家たちの中に、小六は噺家らしくないと
厳しいことを言う人があった。僕は楽屋でいつもやるみたいにじっと顔を伏せていた。
本当は、おかみさんがどんなに師匠を好きで、師匠がどれだけおかみさんを支えにしていたか、言いたくて言えなかった。
そうして大泣きに泣いたあと、師匠はぱったり泣かなくなった。
仏壇に手を合わせてから高座に出掛け、上機嫌で帰ってくる。
僕の家事にあれやこれやと文句をつけて、理不尽ないたずらをして、毎日稽古をしてくれる。
けれど夜中にふと目が覚めると、隔たった部屋の向こうからきっと声が聞こえてくるのだ。
熊がしゃっくりするような、くぐもった声。
熊がしゃっくりをするのかどうか、僕は知らない。
256:熊が泣く日和 4/6
11/04/18 00:16:00.95 4Z42Ye7V0
台所は静かで妙に蒸し蒸しする。窓を細く開けてカステラを食べた。
こんなに温かいけれどあの人はずっと冬の中にいるのだと思う。
稽古中、台所に向かって師匠が「コーヒー」と叫んだあと、あるいは僕がつけている家計簿の食費の欄を覗き込んで
「なんだあ、やけに少ないな」と呟いたあと、師匠は変なくしゃくしゃ顔になり、僕はその度におかしな気持ちになった。
内弟子がこんなことを思うのは間違っている。でも僕が師匠を守っていかなければと思う。
おかみさんもそんな気持ちだったのかもしれない。おかみさんがくれた大学ノートを取り出して、僕は肉じゃがのレシピを
探し始めた。『六ちゃんは』と肉じゃがのページに書かれたメモを読む。
『六ちゃんは、ジャガイモのサイズにうるさいので、大きめのひと口大に切ること(六ちゃんのひと口は春ちゃんの2倍)』
その途端、自分でもよくわからないままに僕は狼狽してノートを勢いよく閉じた。
なにか後ろめたくて、誰かに何かを謝りたくてたまらなかった。初めてノートを見ずにご飯を作って、
僕は見事に鍋を吹きこぼした。
257:熊が泣く日和 5/6
11/04/18 00:18:21.92 4Z42Ye7V0
「ジャガイモが小さいよ、肉は牛だし。ライスカレーの材料、そのまま使ったろ」
「すみません」
「小.春には家のこと全部任せてるからなあ。父子家庭は大変だな」
そう言って師匠はわはは、と笑ったが、僕はどう応えたものかわからなかった。
「どうした、高座で何かあったか。…弟子入りしに来た時のフニャフニャに戻ってる」
僕は喋らなくてもいいようにご飯を箸でかき集めて頬張る。師匠もお茶をゆっくりと飲む。
おかみさんだったら「しみったれた顔するんじゃないの」とか、あの下町口調で言うんだろうか。
ご飯ばかり食べていたら、肉じゃががずいぶん余ってしまった。居候の身でおかわりは滅多にしないけれど、
今日だけは炊飯器を開ける。それをからかいもせずどこかぼうっとした師匠は、茶碗を突き出した。
「葵、おかわり」
自分のをよそってから師匠の大きな茶碗を受け取る。ご飯は温かい湯気をたてている。
師匠に茶碗を返す時、「小.春です」と僕は言った。
「ん?」
「僕は。今戸.家小.春、です」師匠はきょとんとしていたが、やがて「間違えてたか」と呟いた。
「今までも間違えてたか?」
「いえ!」すぐさま答えたが、顔で伝わってしまったらしかった。
平気になったつもりでも、こんな時にコミュニケーショ下手が出る。
「そうか。…悪かったな。小.春」謝られたのが意外で、僕はただ座るしかない。
「小.春」師匠が僕の目を真正面から見た。「はい」
「小.春。うん、お前は、小.春だ。な」「はい!」
「ほんとにいい名前だなあ。ぴったりだよな。まあ俺がつけたんだけどな」師匠はそう笑った。
「はい、師匠と、おかみさんに、つけてもらいました!」
258:熊が泣く日和 6/6
11/04/18 00:20:26.87 4Z42Ye7V0
途端に師匠はあのくしゃくしゃ顔になって、箸をぱたんと置いた。椅子が大きな音を立て師匠の大きな影が
食卓に落ちた。離れていこうとする袂をぎゅっと掴むと、あっけないほどの軽さで師匠はまた腰を下ろした。
広い手のひらでもっと広い顔を覆って、師匠は泣いた。手のひらの下で口が誰かを呼んだけど僕には聞こえなかった。
師匠はしゃっくりをする熊にそっくりで、僕は熊がしゃっくりをするかどうか知らないけど、袂を離すことができなくて、
机を回って師匠のそばに立った。一際大きな嗚咽が漏れ、それはすぐ僕のTシャツのお腹のあたりに押し当てられて
かき消され、僕は誰かに謝りたい気持ちのまま、師匠と一緒にフニャフニャと泣いた。
m(・∀・)mイジヨウ、オアトガヨロシイヨウデ
長々と失礼しました
259:風と木の名無しさん
11/04/18 07:24:35.38 WJYuYz6C0
>>258
ピ工一ノレの映画ですよね?あの巨体で想像して泣けた
映画見に行ってくる!
260:1
11/04/21 23:55:36.89 NrnXTQW6O
先輩×後輩。
生注意。当たり前ですがフィクションです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ぼんやりと、同僚たちのバカ騒ぎを眺めていた。
いつもなら一緒になってはしゃぐのに、今日はそんな気になれない。
かといって誘いを断ることもできず、片隅でひとり濃いめの酒を煽っている。
あれは、一瞬の判断ミスだった。
期待していたパートナーが故障してクラシックをフイにしてしまって以来、何となく不運なことが続く。
「ほんまに…もう…」
グチを言おうが溜息を吐こうが状況は変わらないのだが、沈んだ気持ちはなかなか元に戻らない。
「ユウジ!」
いつの間にか隣に先輩が座っていて、俺に抱きついてきた。
「あれはユウジらしくなかったねぇ。来週もユウジに会えると思ってたのに…残念だなぁ」
「はぁ」
擦り寄ってきた先輩は、既に相当飲んでいるらしく、顔は真っ赤だし、呂律も回っていない。
「……同情なら結構ですが」
「あれ、ユウジくん怒った?俺、そんなつもりで言ったんじゃないんだけど…」
「そんな風にしか聞こえません」
261:2
11/04/21 23:57:02.20 NrnXTQW6O
いつもなら、先輩のこの軽さも何とも思わないのだが、どうしても今日はイライラする。
俺を励まそうとしてくれているのは痛いほど分かる。
分かるけれども、今はそっとしておいてほしかった。
「ごめんごめん。やっぱ俺、うまいこと言えないや。何か励ますようなことが言いたかったんだけど」
きっと俺はものすごい表情をしているのだろう。
おちゃらけた顔が、一瞬にして悲しそうな顔になった。
「ごめんなユウジ。俺、ユウジ大好きだからさ……そんな辛そうな顔してほしくなくてさ…」
目がみるみるうちに潤み、すーっと一筋流れ落ちた。
「ちょ、ちょっと、コヤマさん?」
「……」
俺の服の裾を握り締めたまま、顔を肩口の辺りに押し付けて、先輩は本気で泣き始めてしまった。
これではどう考えても俺の方が慰めているというか、俺の方が悪者じゃないか。
「な、泣かないでくださいよ…俺もちょっと大人げなかったですか……ら!?」
俺の言葉が終わる前に。
本気で泣いていたはずの先輩は、にやりと笑ったかと思うと、俺の頭を抱え込んで口付けてきた。
262:3
11/04/21 23:58:38.61 NrnXTQW6O
「ユウジくんが元気になるおまじない」
「え、あの…」
「でもタバコはダメだよ。俺、嫌煙家だから」
確かにさっき同僚のを1本くすねて吸ったのだが、それを指摘されたことより、何が何やらすぐに理解ができなかった。
しかし、カメラの前で号泣してみせる先輩のことだから、あれは迫真の演技だったのだという考えが浮かぶと、急に顔に熱が集まる。
「あんた、アホやろ!」
「うん、アホ。ユウジが好きすぎて」
へらっと笑って、先輩はまたバカ騒ぎの中に戻っていった。
「ほんまにもう…」
新たな悩みが増えてしまった俺は、深い溜息を吐くしかなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
AFの件といい、隠居後の計画といい、彼らはネタが満載で困る。
あんたら本当に30代後半なのかと小一時間。
263:風と木の名無しさん
11/04/22 00:13:04.13 dYumraV8O
>>260
姐さんGJです!
ニヤニヤしながら読んでしまいました。
いい歳したおっさん達が、公の場で仲良くし過ぎで困りますねw
いいぞもっとやry
264:M/G/S/P/W 和蛇1/5
11/04/23 01:29:39.91 G72+IBsNO
金属の歯車 平和歩行者
初投下&携帯からです。改行おかしかったらごめんなさい
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
唐突に意識が浮上し、スネークは瞼を開いた。
目の前には金色の柔毛。
状況が掴めず、ぱちぱちと瞬きを繰り返し、思考を巡らせる。
…確か、任務を終えてマザーベースに帰還し、デブリーフィング後に食事や入浴を済ませ、自室で一服していたところにミラーが酒瓶を携えてやって来たのだ。
265:M/G/S/P/W 和蛇2/5
11/04/23 01:32:01.61 G72+IBsNO
安物の蒸留酒を嘗めながら、他愛もない話をしていたはずだが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
自分はベッドに座り、ミラーはそのベッドを背もたれ代わりに床に座り込んでいたと記憶している。
MSFの副司令官として、激務を日夜こなしているミラーもまた、自分と同じようにそのまま眠り込んでしまったのだろう。
…つまり、今目の前にあるのはカズの頭か…
寝起きのぼんやりとした思考で、やっとそこまで辿り着いた。
俯せに寝たまま、呼吸に合わせて僅かに前後するミラーの後頭部を眺めるともなく眺めているうち、いつぞやのミラーのぼやきを―これまた寝起きの思考の突飛さで―思い出す。
…俺はねこっ毛でなぁ、ああ、英語では何て言うんだ?cat coatでいいのか?髪が細くて、セットするのが一苦労なんだ。こう、ボリュームを出すのがな、毎朝苦労してるんだぜ…
その時は「色男も人知れず苦労してるんだな」などと茶化しつつ、猫の毛という言い回しがいまいちピンと来なかったのだが。
266:M/G/S/P/W 和蛇3/5
11/04/23 01:34:12.14 G72+IBsNO
成程、何時ものようにかっちりと固められていないミラーの髪は、確かに柔らかそうだ。
殆ど無意識のうちに、スネークは俯せたままミラーの頭へと手を伸ばしていた。
襟足から上へ向かって指先を差し込み、さらさらと指の間を擦り抜けて行く感触を確かめる。
先日、MSFの兵士たちが思いがけなく拾ってしまった子猫―ニュークと名付けられた―を思い出させる手触りに、我知らず口角が上がる。
…なるほど、確かに猫の毛だな…
頭頂部から下へ向けて手櫛の要領で梳いてみる。オールバックにする必然からか、やや長めに調えられたサイドの髪を下から持ち上げ、ぱらぱらと少しずつ手放してみる。
マザーベース内の自室であること、深夜であることも手伝って―酔いもまだ覚めてはいないのだろうという自覚もある―未だに完全には覚醒し切らない脳が命ずるままに、幾度もミラーの髪を梳く。
と、不意に手首を掴まれた。
267:M/G/S/P/W 和蛇4/5
11/04/23 01:37:04.07 G72+IBsNO
「…何だ、起きたのか」
「これだけ触られりゃ、いくら俺だって起きるさ」
小さく欠伸をしながら、ミラーがこちらに身体を向ける。膝立ちの状態で、掴んだ手首を一旦離し、スネークの左肩の下に手を差し入れ、仰向けにさせた。
荒っぽくひっくり返されたにも関わらず、常になくぼんやりとした顔つきのスネークに、ミラーは困ったような呆れたような微笑みを浮かべた。常でも少し下がり気味の目尻を一層下げて、スネークの顔を覗き込む。
「…気に入ったか?俺の髪?」
「…ああ」
「…もっと触りたい?」
「…ああ」
ベッドに乗り上がり、スネークの肩口に頭を載せ、目を閉じる。口許にはまだ微妙な笑みを浮かべて。
暫くはスネークが無心に髪を梳くにまかせていたミラーが、再び手首を捉え、目を開けて言った。
268:M/G/S/P/W 和蛇5/5
11/04/23 01:42:10.91 G72+IBsNO
「…俺も、触っていい、か?」
「…ああ」
今度はミラーの指先がスネークの髪を弄ぶ。耳の後ろから、頭皮をマッサージするように何度も梳かれると、知らず満足げな溜息が漏れる。
こちらがまるで猫か犬になった様だ、などと、目を閉じて考えていると、
「スネーク…?」
左耳にひどく近くから囁かれ、ひくり、と身体が跳ねた。
目を開くと、ミラーの顔がすぐ近くに迫っている。
いつの間にかスネークに覆い被さるように跨がり、仕方ない、といった風情だった微笑みは、僅かに危険な物を孕んでいる。
「もっと触ってもいい、か?」
先刻のスネークの反応に気をよくしたらしい。低く、掠れた声で、スネークの耳に直接吹き込む。
「…なあ、スネーク。違うところも、触っていい…?」
「っ、……ああ」
頬が熱くなっているのを自覚しつつ、スネークは許可を与えた。
正直、嵌った、と思わなくもないが、未だに覚醒仕切らない頭で何か考えても仕方ない、と早々に諦めて、もう一度ミラーの頭へと手を伸ばした。今度は引き寄せるために。
これから与えられるはずの、指先とは違う感触に備えるべく、スネークは薄く唇を開いた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
269:風と木の名無しさん
11/04/23 01:49:03.79 G72+IBsNO
分割失敗気味ですねorz
わりと流されやすいおっさんと、チャンスは逃さないよ!って若造を書いてみたかったんです…
おそまつさまでした
270:風と木の名無しさん
11/04/23 01:59:44.62 VijlUou80
オリジナル 平凡部下×エリート上司のリーマン物みたいな…?
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
271:風と木の名無しさん
11/04/23 02:08:07.16 VijlUou80
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
>>270です
スミマセン、エラーが出るので中止します
ご迷惑をお掛けしました
次の方、投下されて下さい
272:風と木の名無しさん
11/04/26 22:01:25.41 Gf8uSojA0
>>270が戻って来るまで小休憩投下
半生 木目棒の小右っぽい右さん独り言話
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
273:愛人論1/6
11/04/26 22:04:41.36 Gf8uSojA0
不眠をわずらっているのは、カフェインの摂りすぎが原因なのでは―。
昔、元妻に半分本気で指摘されたことだが、右.京の紅茶好きは確かに一種の中毒めいたものがあった。
日中はもちろん、就寝前にも必ず喉を温めてからでないとベッドへ向かう気になれない。
どんなに疲弊している日でも、いや、疲弊している日こそ、紅茶をいれる時間帯だけは無心になれるのだった。
つるの細い薬缶でお湯を沸かしながら、ブランデーのボトルを用意する。
カモミールやラベンダーの絵柄の箱の上で手を彷徨わせてから、右.京は一瞬考え込んで、冷蔵庫をあけた。
陳列しているパックやボトルの中から、低温殺菌の牛乳パックを持ち上げて軽く振ると、右.京は納得した様子で一人頷いた。
それから、ハーブティーの類をしまって、ダージリンの缶を取り出す。
薬缶を見れば、すでに細い首からは女の溜息のような蒸気が立ち上り始めていた。
274:風と木の名無しさん
11/04/26 22:08:46.28 Gf8uSojA0
「さて……」
呟いて、右.京は隣のガラス棚へと目を転じた。ずらりと並ぶのは、白や青、時には濃翠の色合いをした、ティーセットの数々だった。
薫に言わせるところの「緊張して飲んだ気にならない」高級品である。
右.京は毎夜、こうして好きなカップを選ぶ時のわずかなときめきを、ことのほか愛していた。
「どれにしましょうかねぇ」
独り言が自然と弾んでしまうのも、一人暮らしの気楽さがあるからだ。
右.京は絵柄の濃い物から無地に近い一品までをぐるりと流め、しばしの思案を楽しんだ後に、右手前に澄ました顔で陳列されているスミレ柄のティーカップを持ち上げた。
カチャリと陶器の触れ合う繊細な音がする。その瞬間、ふいに奥にしまいこんでいた一つのカップに、目が留まった。
275:愛人論2/6
11/04/26 22:09:35.67 Gf8uSojA0
目の醒めるような蒼の縁取りに、細やかな金のアラベスク模様をあしらった、ひときわ豪奢なカップだった。
黄と赤のバラが絡み合った絵柄の持ち手には、内側に、ご丁寧に右.京の名前が彫ってある。
『物には罪がないでしょ、これでも苦労して選んできたんだから』
すとんと耳に蘇ってきた声に、右.京は眉をしかめた。
もう何年も前の話だ。
イギリス旅行の土産に奥方へ贈るというので、しぶしぶ知っている店をいくつか紹介した。
その結果、送られてきた小包の中身がこのティーカップとソーサーだった。
すぐさま送り返そうとした右.京のもとに、見計らったようにかけてきた電話口で小.野田はしれっと言い放った。
276:愛人論3/6
11/04/26 22:15:13.13 EALfo+e6O
『まぁいいじゃないですか。そのうち使いに行くから、ゆめゆめ捨てたりなんかしないよ
うにね』
いけしゃあしゃあと勝手なことを言う小.野田の声を聴いたのは、それが最後だった。
それからしばらくは電話もかかってきていたようだが、取り合わないまま、そのうちに日
が過ぎ、年が過ぎていった。
色々な物を捨てて生きてきた。
伴侶も、部下も、出世も、男の残した短い悪夢のような蜜月も。
ただ、こればかりは結局、捨てるに捨てられないまま、今に至っている。
正直、最近は存在さえ忘れかけていた。
このまま、変わらぬ年月が埃のように重なっていくものだとばかり―。
277:愛人論4/6
11/04/26 22:16:34.45 EALfo+e6O
右.京は少し考え込んだ後、手にしていた方を元に戻して、奥から冷え切ったそのティーカップを取り出した。
久しぶりに目にするが、やはり悔しいほどに惚れ惚れする出来栄えだった。
細い絵筆で繊細に描かれた金彩の美しい模様が、淹れたての紅茶の湯気にぼんやりと浮かび上がって、芳醇な香りと共に心まで癒してくれる一品だった。
小.野田が苦心したというのは多分本当だろう。
この食器を手掛けた職人は右.京の知る限りでは、えらく気難しい老人で、彼の魂の芸術品であるカップに名前を彫るなどという蛮行を許すわけがないのだった。
それを、わざわざ。
278:愛人論5/6
11/04/26 22:17:34.24 EALfo+e6O
『うちにも同じのがあるからね……』
あれだって、しらじらしい話である。
職人が二つとして同じものを作らないことを、紹介した右.京が知らない筈がない。
小.野田の台詞は、たんに妻と同じものを愛人に贈るという俗っぽい話を、右.京に連想させたいがための嘘に違いなかった。
事実あの時問題になりえるとしたら、同じティーカップであるかどうかより、そこに彫られたネームの方が遥かに火種になりえた。
それを見越しての小.野田の手回しだったのだろう。実際、右.京はカップを送り返せなかった。
どこまでも強引な男なのだ。
279:愛人論6/6
11/04/26 22:18:16.48 EALfo+e6O
右.京は薄っすらと笑って、カップをくるりと回した。
ためつすがめつ、悪戯に手の中で温める。
「物には罪がない、ですか……」
つくづく嫌な言い方をする。
それではまるで、どこかには「罪」があるようではないか―。
右.京は溜息をつくと、キッチンへと身をひるがえした。
冷えた薬缶に手を伸ばし、もう一度沸かすためにコンロをひねる。
ぼうっと青い火が立ち上って、物憂げに更けていく宵をうす暗く照らしあげていった。
280:風と木の名無しさん
11/04/26 22:20:21.90 EALfo+e6O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すみません、分割に失敗したりPC投稿失敗したりハチャメチャでした
ありがとうございました
281:風と木の名無しさん
11/04/27 05:44:17.00 aTlqFVIlO
>>264
積極的な副司令官と流されちゃうボスにニヤニヤしました…!
この二人のお話が読めて幸せです。
もし宜しければ続きも是非…!
282:風と木の名無しさん
11/04/27 10:06:14.47 t/p3EwzT0
>>272
うおおおありがとうありがとう!すごく萌えた!!
ずっとこういう右京と官房長が読みたかったんです、本当にありがとう!
283:週間 朝 連載のあの二人 1/2
11/04/27 17:48:43.78 UC6TuRLNO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
うん、そりゃあさ、俺だって昭和生れの男の子だからさ、小さい時から父親とかから
言われるわけよ。
「男たるもの、妻子を持ってこそ一人前だ」なんてさ。
ふーんそんなもんなのかなー、じゃあ大人になったらお嫁さん貰ってー、子供も
たくさん作ってー、でっかい家建ててー、犬もでっかいの飼ってー、なんてさ。
奥さんは、かーちゃんみたいに、忙しく晩ご飯作ってても「おかえりー!」って笑顔で
迎えてくれてさ、子供らが「お土産はー?」なんてまとわりついてきたりしてさ、
まあそんな妄想?いやちょっと言い方悪いか、理想?…そういうのがさ、普通の
男子の在るべき姿ってか、往くべき道ってかさ。
ん?いやいや、昭和って皆そんな感じよ?
特にウチなんか親はモロ団塊だし、田舎だしさ。
284:2/2
11/04/27 17:54:59.39 UC6TuRLNO
まあ思春期には叶わぬ夢になっちゃったんですけどねーあははは。
そうそうだからさ、お二人さんには俺の分も頑張って貰ってー、あ、今のオヤジ臭い?
まいっか、もう立派にオジサンな年だもんね、ってひでー!そこはフォローして
くんないと!笑うとこじゃないよ!?
で何の話だっけ?あそーだ、幸せな家庭を築いて下さいなってことよ。
まあ二人なら俺がどうこう言わなくてもラブラブなんだろうけどさ。仲良いもんね。
…うん、ほんと、お幸せに。
お招きありがとうね。二次会出られないけどごめんね。新幹線の切符取れなくてさ。
ううん気にしないで。新幹線乗っちゃえば寝れるし。そっちこそ体に気をつけてよ。
明日から新婚旅行でしょ?結構ハードなスケジュールだよねぇ。ま、一生に一度だしね。
うん、東京来た時は連絡してよ。土日でも夜だったら大丈夫だからさ。
うん、じゃあね。お招きありがと。あ、さっきも言ったねははは。
じゃあねー、お幸せにねー!
「はぁ~到着~」
自宅のドアの鍵を開ける前、思わず声に出てしまった。
引出物の紙袋はやたらと重いし、普段着慣れない礼服もとっとと脱いでしまいたい。
それに。
このドアを開ければ。
「ただいまぁ~」
「おう、おかえりー」
リビングに入れば、部屋中を満たすいい香り。
この匂いはきっと、自分の大好きな炊き込みご飯だ。
285:3/2
11/04/27 17:57:22.56 UC6TuRLNO
新聞を畳みながら、恋人が立ち上がる。
「早かったな。先に風呂入っちゃえよ」
そう言って、椅子の背に掛けてあったエプロンを身に着ける。
「えー、手伝うよ。着替えて顔洗ったら」
荷物や紙袋をガサガサ言わせながら言うと、
「いいから行って来いって」
長旅で疲れただろ?と背中を押され、
「30分で上がってこいよ。メシにするから」
もう適温の湯が張られ、後は入るばかりの風呂場に押し込まれた。
可愛い奥さんはいないけど。
子供なんて望むべくもないけれど。
大きな家も大きな犬も手に入れてないけれど。
そんなのなくったって、俺は。
「俺…充分幸せじゃん」
いくら抑えても自然に緩んできてしまう口元をしゃんとさせるため、湯船の中に
顔の半分まで潜ってみた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
にぶんのさんって何だよ…orz
分割ミス失礼しました
286:ケンシロウが虎化する話1/10
11/05/02 22:31:30.18 0yIox2aS0
|>PLAY ピッ ◇⊂(*´ω`*)一応長兄×末弟(と三兄×次兄っぽい感じ)
ケンシロウが目を覚ますと、自分が虎になっていることに気がついた。
昨日の夜は飲みだったので、自分の容量も弁えずガンガン飲んでいると、気分が悪くなった。
それで部屋の隅で臥せっていると、アミバがやってきて、
「ふぉ~飲みすぎで気分が悪くなったのか、それはいかんなぁ~。俺の発見したこの新たな秘孔を突けば、お前は忽ち気分が良くなる」と言ってきた。
俺は丁重にお断りしたのだが、強引に突かれてしまった。そして別に気分は良くならなかった。大体そんな秘孔があったらとっくに北斗神拳に備わっているだろう。
その後トキに介抱してもらって、なんとか気分が収まったので家に帰ってきて寝た次第だった。
それで目を覚ますと、何故か体が変なのである。
手も足もなんだか短いし、それに尾があるような気がするのである。
どうにも体がうまく動かせないので、これが二日酔いというやつか、とケンシロウが思ってなんとか体を起こして自分の手を見ると、手ではなくて前足になっていた次第である。
(…いい肉球だ…)
思わずケンシロウは指で触りたくなったが、指が無い(一応あると言えばあるのだが)ので、できないことに気づいて悔しがった。
さて、どうしようかと思った。
今の自分を見て、ケンシロウだと気づかれることはないだろう。下手をするとラオウ辺りに殺されかねない。
しかしお腹は減ったしトイレに行きたい気もする。
兄弟と顔を合わせなければいいのだ、そう思ってまずは寝台から降りようとした。
この体に慣れてないので寝台から転げ落ちる形になった。
以前テレビで見たときには、ネコ科の動物は高い所から落ちてもひらりと身を躱し着地していたのに、何故今の自分はできないのか、理不尽である。それでもなんとか部屋の扉の所まで行って、恐る恐る開けた。
どうやら誰も居ないようだった。それで部屋から出て、扉を閉め、先ずは朝食でも摂ろうかと思った。
「ぬ…?」
廊下の先にラオウが見えた。
俺の人生終わった、とケンシロウは思った。
(いや、いくらラオウでも、家の中に虎が居るからといって直ちに殺そうとしたりしないだろう)
ケンシロウは少し前向きに考えた。
ケンシロウが其の場で立ち止まっていると、
287:ケンシロウが虎化する話2/10
11/05/02 22:32:42.32 0yIox2aS0
ラオウは歩み寄ってきて、
「ほう…虎か…二日酔いを覚ますのに、丁度よい」と呟いた。
やはり俺の人生は終わった。
とりあえずラオウに対抗するためにオーラを纏ってみた。
「ほう…貴様もオーラを…だがこの拳王の敵ではないわ!」
やはり慣れない虎の身では限界がある。オーラを纏うことはできても、ラオウの剛拳を躱すことができずに、死ぬだろう。
「死ぬがいい!」
「…何やってるんだ、兄さん」
トキだった。
何といい所に現れてくれたのだろう。
「ぬ…トキ…」
「何をしているんだ…」
「うむ、虎が居たのでな」
「そんなホイホイ殺すのは止めてほしい。ひょっとしたら師父が私たちに黙って通販で買ったのかもしれない」
「ぬう…」
通販で虎は買えないだろう、とケンシロウは内心突っ込みつつ、とりあえず助かった、と思った。
「ほら、来なさい、朝御飯あげるから」
ケンシロウはトキについて台所へ行った。
「上手く歩けないようだが…怪我でもしているのか?どれ、少し見てあげよう」
それよりやはく朝食を。
「ふむ…特に異常は無いようだ…さて…」
ようやく朝食か!そういえば一昨日のカレーがまだ残っていたよな…確か…。
昨日は飲みで誰も家で夕食を食べてないわけだし、カレーだ…二晩じっくり寝かせて美味しくなったカレーだ!
「はい、朝御飯」
何故生肉の塊なんだ…トキ…。
確かに虎の食事と言えば生肉が当然なのかもしれない。
しかし自分は虎であって虎でなく、実際にはケンシロウなので、生肉でなくてカレーを所望するのが当然である、というのをトキが分からないのは当然である。しかし…。
「どうした、食べないのか?」
当然これ、味付いてないよな…せめて塩胡椒を…。
288:ケンシロウが虎化する話3/10
11/05/02 22:33:37.65 0yIox2aS0
ケンシロウはトキに催促しようと思ったが、その時、誰か食堂にやってきた気配がした。
「やあおはよう、ジャギ」
「ああ~…おはよう兄者…ってうおっ!なんで虎が居るんだよ!?」
ジャギは咄嗟に懐からショットガンを取り出してケンシロウに向けた。
「動物に無闇に銃を向けるものではない…」
「いや、動物って、猛獣じゃねえか!暴れたらどうするんだ!」
「その時は私が確実に仕留めるから心配いらない」
それを聞いてジャギは、「いや、あんたは確実に仕留められても、俺にはできねえよ…」と内心思ったが、
そう抗議したところでトキが虎を何処かへやってくれるとも思えなかったので、それ以上文句を言うのは止めた。
「…で、なんで虎が居るんだ」
「多分師父が買ったんじゃないかな。…お前も昔猫を飼いたいと言ってたから、丁度いいだろう」
ジャギが中学生の頃である。
ジャギは川の橋の下に捨てられている子猫を拾い、家に連れて帰った。当然飼いたかったからだ。
師父は特に何も言わなかったが、意外にもトキの反対を食らった。
「なんでダメなんだよ」
「わからないか…最近兄さんは反抗期なのか何なのか、所構わず不意に暴れたりすることがあるだろう。
そういった時に偶々この猫が居合わせてみろ、悲しい思いをするのはお前だ」
「いくらラオウでも、猫が居る時に暴れたりしないだろ」
トキは溜息をついた。
「ジャギ…お前は今までラオウと一緒に暮らしていてそんな事も分からないのか?
この前だってケンシロウを一ヶ月生死の境をさ迷わせたんだぞ、あの人は」
「そんなのいつもの事じゃねえか」
「それがいつもの事になってる事自体おかしい」
結局ジャギは猫を諦めて、友人にあげた。猫はまだ友人宅で健在なので、友人の家に行く度に可愛がっている。
「何年前の話だよ…それに虎と猫じゃ大分違うだろ…」
「いや、虎も猫も親戚みたいなものだろう。同じネコ科だし」
「違ぇよ!」
「じゃあラオウとリンみたいなものだろう」
それはなんとなくわからないでもない。
…しかし、猫は認められなかったのに虎は認められるというのも少し理不尽な気がする。
289:ケンシロウが虎化する話4/10
11/05/02 22:34:24.44 0yIox2aS0
「…猫はダメなのに、虎はいいのかよ」
「いや、実際さっき兄さんに殺されそうになっていたが…別にお前は虎がラオウに殺されても悲しくないだろう」
虎がラオウに殺されるより、自分が虎に殺されないかの方が心配である。
「…まあ…」
「とにかく、お前も朝御飯だろう。カレーでいいか?」
「いいよ」
ケンシロウにとって、自分がカレーを食べられないのに、ジャギがカレーにありつけるとは理不尽である。
トキの傍へ行って「俺もカレーが食べたい」と催促してみたが、どうにも伝わる筈がない。
「はい」
トキがジャギの前に温めたカレーを置いた。
ケンシロウはもうこうなったら力尽くで奪い取るしかないと思った。
ケンシロウは普段はジャギに兄としての顔を立てているが、
体が普段とは違うので気の持ちようが普段とは違うためなのか、
それともやはり対象がカレーであるせいなのかわからないが、
とりあえず椅子に座っているジャギに飛び掛かってジャギを床に転がせた後、食卓の上に乗った。
そしてカレーを食べようとしたが、カレーが熱いので、今虎になっている自分は大丈夫なのだろうかと一瞬躊躇した。
虎が猫と同じなら猫舌である筈である。
「…ッ…このクソ虎ッ!」
体勢を立て直したジャギがケンシロウに向けてショットガンを撃ったが、
咄嗟にトキがケンシロウを抱えて移動して助けた。
「兄者!なんでそんなやつを庇うんだよ!」
「まあ待て…彼はおそらくカレーが食べたかっただけだ…撃つことは無い…」
そしてトキはケンシロウに向き直って言った。
「お前には冷ましたカレーをやろう」
「…ったく、カレーを食う虎なんて変わっていやがる、なあ兄者?」
「…人に飼われていたのかもしれないな、人に慣れているようだし」
デザートは林檎だったのでそれも食べた。食器を片づけようかと思ったが手ではなくて前足なのでできない。
歯を磨こうと思ったが、それもできないと気付いた。
ケンシロウはそういえばまだトイレに行ってなかったことを思い出し、トイレに行った。
ケンシロウがトイレから出てきたのを見て、ジャギとトキは、益々変わった虎だ、と思った。
それにしても、何故かこの虎はトキに贔屓にされているようで理不尽だとジャギは思った。
290:ケンシロウが虎化する話5/10
11/05/02 22:35:11.87 0yIox2aS0
そういえば昔から自分は蔑にされている気がする。
あのラオウの馬だって、ラオウとケンシロウに懐き、トキとはまあまあで、ジャギと師父は完全に蔑である。
たまに訪ねてくるケンシロウやラオウの友人の方を優遇するぐらいだ。
「そういやケンシロウはまだ寝てんのか」
「昨日は大分酔ってたからな…今更起きてきてももうカレー無いし、もうすぐお昼だけど」
「ハッ、自分のカレー食われたって知ったら怒るんじゃぁねえか!昼飯があろうとなんだろうとカレーだけは食うからな、あの野郎」
「そうだな…少し様子を見てくるか」
ケンシロウはトキについて部屋から出た。
トキはケンシロウの部屋をノックして呼びかけてみた。しかし返事が無いので、「ケンシロウ?」とこっそり扉を開けた。
ケンシロウは居なかった。
昼食。
「…ケンはどうした」
昼食は在宅中ならば全員揃って摂るのが常であるから、ラオウがこのような疑問を呈したのも当然である。
「いないみたいだ」
「何?」
「いなかった」
「出かけたのか?」
「いや、誰も見ていない…それに」
トキはケンシロウの携帯とiPod(初代)を取り出した。
「枕元に置いたままだったが…携帯とiPodを忘れていくとは考えにくい」
携帯は中学時代から「欲しい欲しい」と言い続けて大学進学祝いに漸く買ってもらったものであるし、
iPodは何度強請っても買ってもらえなかったのを正月の町内会の福引でようやく入手したものである。
勿論できれば最新型がよかったのであるが、贅沢は言えないので仕方がない。
という経緯があるので、ケンシロウはこの二つを常に携帯している筈なのである。
「ほう…家出か?」
「兄さん、心当たりは無いか?」
「何故俺に心当たりがあるのだ」
そりゃラオウが一番ケンシロウに被害を与えているからだ…とトキは思ったが、その事は言わないでおいた。
もしこの先トキやジャギが家出しても、それはラオウのせいだと思うが、
きっとラオウはそれで悩んだりなど絶対しないだろうから、