11/04/03 21:50:40.23 UmpwlOcq0
クローズ(原作)よりヒロミ×阪東。原作終了後、ヒロミが上京した後の話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
ライブが終わるといつも同じ気分になる。
祭は終わり、みんな家路についたのに自分だけが喧騒の後の散らかった通りに取り残されているような、そんな気分だ。
家に帰らなければいけないのはわかる。だが帰り方がわからない。
阪東を頼って故郷の街を出てからもうずっと、桐島には帰り方がわからない。
一人でそこに取り残され、灯も消えた暗い道端で桐島はただ立ち尽くす。阪東はどこだろう。いつもそう思いながら。
奈良岡が運転する機材車の後部座席で桐島は窓を細く開け、煙草に火をつけた。
深呼吸のように深く吸い込み、尾を引く光の群れのような夜景に向かって紫煙を吐き出す。煙は窓の上の隙間から外に流れた。
なんとなくその様子をしばらく眺め、桐島は窓とは逆の隣の座席をちらりと盗み見る。
阪東は斜めに倒したシートに深くもたれ、腕を組んで目を閉じていた。眠っているのだろうか、よくわからない。
眉間には起きている時と同様の深い皺が刻まれている。眠っているのならよくない夢を見ているのかも知れない。
ならば起こすことはない。ざまを見ろ、そんな気分だ。だが桐島は心とは裏腹に手を伸ばして窓をもう少し広く開ける。
起きているのならきっと文句を言うだろう。さみぃんだよ、閉めろバカ。
そんなことを目を閉じたまま、桐島を見ないままで呟き、そして再び桐島を無視して眠ったふりをするだろう。
起きていればいいのに。起きて、自分をそう罵ってくれたらいいのに。
そんな思いで窓を大きく開く桐島に、運転席から奈良岡が声をかけた。
「オイ、閉めろよヒロミ。さむいじゃん」
その声に桐島は我に返る。奈良岡に一部始終をバックミラーごしに見られていたのかもしれない。
照れ隠しに桐島は窓を閉めながらミラーに写る奈良岡の二つの目に向かって舌打ちして見せた。
「えええ!?舌打ち!?なんで!?」
「前見て運転しろよ、いいから」