モララーのビデオ棚in801板64at 801
モララーのビデオ棚in801板64 - 暇つぶし2ch129:1
11/03/31 23:34:04.24 wL5PqepAO
弟が今日引退した、某ナマモノツインズの話。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

俺たちは同じ日に生まれ、同じ容姿で、同じ道を歩いてきた。


「辞めんのか」
「うん。体がボロボロだしね」

勉強以外、いつも俺の後をくっついて回っていた彼は、今日新たな道を歩み始める。
生まれて初めて、俺たちは別々の道を歩く。

「ごめんな」

別な生き方もあったはずだった。
それを同じ道に連れてきたのは、間違いなく俺だ。

「何で謝るんだよ。俺、お前と一緒にここに来たこと、全然後悔してないし」
「でも」
「俺は、この仕事に就けたことを誇りに思ってるよ。大したことはできなかったけど、貴重な体験はたくさんできたから」

思えば、この仕事に就いてからの彼は、常にケガと戦っていた。
それでも諦めることなく、いつも全力を尽くしていた。


「1つ頼みたいことがある」
「なんだ?」
「まだまだ先の話になるとは思うけど、いずれは先生になるつもりでいる」

彼の口からは、とてつもない夢が飛び出した。
同期に、ずっと試験を受け続けているにも関わらず、未だに受からないヤツがいるから難しさは当然分かっているはずだ。

130:2
11/03/31 23:35:16.26 wL5PqepAO
「どんだけ先の話だよ」
「まあね。でさ、そんときはメインで乗ってもらいたいんだよね。だから、お前それまで現役でいろよ?」

笑ってごまかそうと思ったが、真剣な目つきに気付いてちゃかすのは止めた。
その目には、はっきりとした意志が見える。

「…50とか60とかまでは待てないからな」

励ましの言葉のひとつでも言えたらいいのに、自分に言っているような気がして、うまいことが言えない。
それでも気持ちはきっと通じているはずだ。

「頑張れよ、ミサキ」
「ダイチもな」

進む道が分かれても、俺たちの絆は変わらない。
新たな夢に向かって歩き出した弟が、少しだけいつもより頼もしく見えた気がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
内容は勿論フィクションですが、同じくツインズのミズノ先生の例もあるので、ちょっと期待してます。
お疲れ様でした。

131:風と木の名無しさん
11/04/01 11:34:26.52 yN/ZaWyeO
>>129
この兄弟の話が読めるとは…GJです!
まだまだ厳しい状況は続きそうですが、それぞれの道で頑張ってほしいです

132:風と木の名無しさん
11/04/01 23:25:20.38 FoK1pThw0
>>118
もっとあのCM続編が出てほしいと思いつつGJ!

133:風と木の名無しさん
11/04/02 09:25:04.09 w75lK09yO
>>124
ノス可愛いノス
ロボと人間は永遠の切な萌えだな…

134:風と木の名無しさん
11/04/03 02:10:21.73 ciAz/BNqO
>>118
GJ! このCM気になってたんだ。次はカフェオレ展開超希望!

135:風と木の名無しさん
11/04/03 12:36:44.37 9KVW3oo5O
>>124
ノス可愛いよトガシ君切ないよー!
切な萌えたGJ。久しぶりにDVD見直すわ

136:ヒロ阪 1/7
11/04/03 21:50:40.23 UmpwlOcq0
クローズ(原作)よりヒロミ×阪東。原作終了後、ヒロミが上京した後の話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース 



 ライブが終わるといつも同じ気分になる。
祭は終わり、みんな家路についたのに自分だけが喧騒の後の散らかった通りに取り残されているような、そんな気分だ。
家に帰らなければいけないのはわかる。だが帰り方がわからない。
阪東を頼って故郷の街を出てからもうずっと、桐島には帰り方がわからない。
一人でそこに取り残され、灯も消えた暗い道端で桐島はただ立ち尽くす。阪東はどこだろう。いつもそう思いながら。

 奈良岡が運転する機材車の後部座席で桐島は窓を細く開け、煙草に火をつけた。
深呼吸のように深く吸い込み、尾を引く光の群れのような夜景に向かって紫煙を吐き出す。煙は窓の上の隙間から外に流れた。
なんとなくその様子をしばらく眺め、桐島は窓とは逆の隣の座席をちらりと盗み見る。
阪東は斜めに倒したシートに深くもたれ、腕を組んで目を閉じていた。眠っているのだろうか、よくわからない。
眉間には起きている時と同様の深い皺が刻まれている。眠っているのならよくない夢を見ているのかも知れない。
ならば起こすことはない。ざまを見ろ、そんな気分だ。だが桐島は心とは裏腹に手を伸ばして窓をもう少し広く開ける。
起きているのならきっと文句を言うだろう。さみぃんだよ、閉めろバカ。
そんなことを目を閉じたまま、桐島を見ないままで呟き、そして再び桐島を無視して眠ったふりをするだろう。
起きていればいいのに。起きて、自分をそう罵ってくれたらいいのに。
そんな思いで窓を大きく開く桐島に、運転席から奈良岡が声をかけた。

「オイ、閉めろよヒロミ。さむいじゃん」

 その声に桐島は我に返る。奈良岡に一部始終をバックミラーごしに見られていたのかもしれない。
照れ隠しに桐島は窓を閉めながらミラーに写る奈良岡の二つの目に向かって舌打ちして見せた。

「えええ!?舌打ち!?なんで!?」
「前見て運転しろよ、いいから」

137:ヒロ阪 2/7
11/04/03 21:51:20.61 UmpwlOcq0
 わざとらしく冷たい口調を作って言ってやると奈良岡はそれに抗議して大袈裟に騒ぎ立てた。
口で適当にあしらいながら桐島の目はもう再び阪東に向けられている。
頭が悪いくせにこうやって眉宇を寄せて目を閉じているとまるで憂える哲学者のような顔に見える、と少しだけ笑う。
生きるべきか死ぬべきか、どうでもいいことを苦悩するデンマークの王子様みたいだ。
実際そんなどうでもいいことを悩むのはむしろ桐島の方で、阪東はその種のことに一切心を煩わせないにも関わらず。
なんとなくおかしくなって桐島は笑う。煙草を挟んでいるせいでほんのり隙間が開いた唇から笑みは吐息のように空中に洩れた。
途端に、獣の唸り声のような声が阪東の唇から押し出された。

「……なにがおかしいんだ」

 桐島の笑いはますます大きくなりいっそ聞こえよがしなほどに桐島自身にも感じる。
あんな小さな音に反応して目覚めるとは、相変わらず獣のように敏感なことだ。それともやはり寝たふりだったのだろうか。
機嫌はあまりよくない。ライブの出来があまり良くなかった。と、本人はそう言っていた。
正直言って桐島にはわからない。阪東は、あまりにも高みを求めすぎる。
到達しようもない雲の上の頂点を目指し、至らない自分に塞ぎ込むのだ。寝たふりを決め込んでいる時はたいていそうだ。
阪東は生きるべきか死ぬべきかでは迷わない。生きるためになにを為すべきかで迷う。桐島にはそれがたまに不思議な気すらする。
自分とこの男は、根本的なところで決して分かり合えないのかもしれない。

「……別に。思い出し笑い」

 桐島の言葉に阪東は小さく舌打ちして再び口を噤んだ。
目は一度も開かない。いつものことなのに、今夜はやけにそれが気に障る。

「起きろよ、阪東」

 阪東はそれに再び舌打ちで答え寝返りを打って桐島に背を向けた。
苛立ちと、それ以上に寂寥感を覚えて桐島は阪東の背中に掌を当てる。軽く揺さぶり、阪東を呼ぶ。

「なあ、起きろよ、なあって」
「うるせえ、死ね」

138:ヒロ阪 3/7
11/04/03 21:51:52.15 UmpwlOcq0
 阪東がますます背を丸めて桐島を拒絶するのに構わず桐島はその背を揺さぶり続ける。
怒鳴られたり殴られたりした方がましだった。こんなふうに無視されるくらいなら。
なんでそんなに不機嫌なの。ライブの出来が悪かったから?なら俺やツネにも責任があるんじゃないのか?どうして俺を責めないんだ。
俺たちはバンドじゃねぇのか。一人でやってるつもりかよ。
言いたいことはたくさんあったがなぜか口から出てこなかった。そのどれもが、本当に言いたいこととは違った。本当に言いたいのはこうだ。

行かないでくれ。
置いてけぼりにしないでくれ。

「阪東……」

 阪東の手が桐島の手を振り払い、次に億劫そうに体の向きを変えて阪東が振り返った。
その目に浮かぶ怒りは桐島と目が合った途端に消え失せる。代わりに阪東の表情には戸惑いの気配があった。

「……なんてツラしてんだよ」

 呆れたように阪東はそう呟いた。自分は一体どんな顔をしているというのだろう、と桐島は訝しむ。
あまり情けない顔でなければよいが、と思いながら桐島は笑うかたちに顔を作る。
それが成功したかどうかは自信がない。なぜならそれを見た阪東の顔に浮かぶ戸惑いの色はますます濃くなったから。

「なんでテメェが落ち込んでんだ」
「さあ……」

 自分はそんなに情けない顔をしているのだろうか。気恥ずかしくなって桐島はそっぽを向く。
再び窓の外の尾を引いて流れる光の群れを眺めた。

「阪東が落ち込んでるから?」
「……落ち込んでねえよ」
「……うん、悪い」

139:ヒロ阪 4/7
11/04/03 21:52:27.50 UmpwlOcq0
 会話はそこで途切れた。話すことは特にない。いつものことだ。阪東と自分はちがう。
阪東は特別な人間で、自分はそうではない、犬と人間くらいちがう。阪東がいる高い場所に、桐島は届かない。窓の外の光と同じだ。
堅いガラスで隔てられた夜景はすごいスピードで流れていく。絶対に、触れることはできない。

「……お前がどうして欲しいのかわからねえ」

 ふいに阪東が小さく呟いた。弾かれたように桐島が振り返る。驚きに見開かれた目に阪東の戸惑った顔が映った。

「そんなこと気にしてたんだ」

 犬の機嫌など気にも止めないかと思っていた。桐島の唇が皮肉に歪む。
その笑みの意味するところがわかったのか、阪東は気まずそうに目を逸らした。再び寝返りを打って桐島から顔を隠す。
阪東は傲慢なのではない、ただ不器用なだけだ。
それは桐島にもよくわかっているし、それこそが彼の個性だというのも理解できる。だけど。

「……じゃあ、キスしてよ」

 阪東の背中がびくりと震え、ややあってゆっくりと桐島を振り返る。バカが、と吐き捨てられた。

「なに言ってんだ、ヒロミ」
「いいじゃん。たまには構えよ」

 桐島の言葉に阪東は舌打ちする。

「クソして寝ろ」
「いいからキスしろって。そんくらいいーだろ?」
「死ね」
「キスしてくれたらね」

 引き下がらない桐島に業を煮やして阪東は声を落とした。

「……ツネに見られんだろうが」

140:ヒロ阪 5/7
11/04/03 21:53:09.11 UmpwlOcq0
それは決定的な拒絶だった。
誰に見られても構わない、と強く思う桐島と、見られたくないと思う阪東とでは、やはり、住む世界が違うのだ。
桐島は肩をすくめて笑って見せた。阪東を安心させようと明るく答える。

「そうだな、悪かった」

 話はそれでお終いだった。諦めは吐息のような笑いとなって桐島の唇からむなしくこぼれた。
阪東が一瞬だけ、どこか痛みを堪えるような顔をした。桐島はそれを無視し、煙草を唇に挟んだ。
窓を細く開けると風の音が車内に満ちた。号泣する巨人のような音。
桐島はライターの炎を掌で覆い、くわえた煙草に火をつけ、そしてそれを捨てた。
フィルターの方に火をつけてしまったからだ。
新しい煙草を取り出し、今度は間違えないように火をつけ、そして桐島は再びそれを捨てるはめになる。
煙草を持つ指に力がこもり、途中で折れてしまったのだ。
桐島は驚愕に思わず折ってしまった煙草を唇に挟んだまま、呆然と自らの足下を見下ろす。
そこには阪東の頭があった。
上体を折って桐島の下半身に屈み込み、歯で桐島の革製のパンツのファスナーをじりじりと下ろしている。息が止まった。

「ば、なにやって……!」

 ひそめた声で咎めながら阪東の髪を掴むとその手を払って顔を上げた阪東にきつく睨まれた。
黙ってろ、そう呟かれ、再び顔をそこに埋められる。
ファスナーは下まで下ろされた。萎えた性器を阪東は取り出そうと四苦八苦している。
ファスナーが性器の根元に当たって桐島は思わずイテッ、と呻いた。途端に阪東にピシャリと腿を叩かれる。
静かにしてろ、そう囁かれた。桐島は息を呑む。再び阪東が桐島の脚を叩いた。
その意図に気付き、桐島は恐る恐る腰をそっと浮かせた。タイミングをあわせて阪東がずるりと桐島のパンツを下ろす。
暗闇に桐島の下半身が剥き出しになる。性器が、ぬるりと温かい濡れたものに包まれた。
桐島は前を窺う。バックミラーごしに奈良岡と目が合った、気がした。
思わず阪東の髪を掴んだ手に力を込めると、奈良岡がカーステレオの音量を上げた。偶然だろうか、それとも。


141:ヒロ阪 6/7
11/04/03 22:00:39.27 UmpwlOcq0
 思考は快楽に霧散した。阪東のたどたどしい動きはそれでも確実に桐島を追い詰めた。
なぜ阪東がこんなニンフォマニアのような真似をするのか桐島にはわからなかった。
わかるような気がしたが、やはりそれは、どう考えてもちがう、と思った。
まさか、これがキスの代わり、だとか。まさかそんなこと。
ちゅぷっ、と小さな音がカーステレオのジョニー・ロットンの声にかき消された。
阪東の小さな頭が激しく上下し、桐島の性器は濡れた口腔にみるみる堅く育ってゆく。
窓の外を眺めるふりをして桐島は震える指で煙草を取り出し、幾度か失敗しながら火をつけた。
深く深く吸い込むと、肺が痺れた。知らん顔をするのは至難のわざだった。
阪東のうすい舌が桐島の括れに巻き付き、先端の穴をつつき、唇が棹の部分を扱き上げた。
頬をすぼめる横顔が卑猥すぎて桐島はそれを直視できない。窓の外を見るふりでやりすごす。
腹筋に力を込めて堪えるが、あまり保ちそうになかった。

 阪東、阪東、阪東。声に出さずに呼び掛ける。
こんなことさせてごめん。おまえにこんな売女みたいな真似させてごめん。ただ少しわがままを言ってみたかっただけなんだ。
おまえが聞いてくれるなんて思ってなかった。聞いてくれなくてよかった。おまえはこんなことしていい人間じゃない。
おまえはもっと、雲の上のきれいな場所を目指していればいい。こんなことしちゃいけない。こんなこと。
心とは裏腹に体は昂ぶってゆく。阪東が、阪東が、俺に、こんなこと。

142:ヒロ阪 7/7
11/04/03 22:01:22.22 UmpwlOcq0
桐島が見る窓の外で尾を引く車のライトが滲んだ。丸く、花火みたいに重なる色とりどりの光たち。
喉を突く桐島の切っ先に阪東がえずいて唸り声を上げる。運転席の奈良岡が再びカーステレオの音量を上げた。
繰り返し繰り返し泣き叫ぶようにロットンがうたう。
未来なんかない、未来なんかない、俺たちには、未来なんかこれっぽっちもないのさ。

 桐島の、阪東の髪を掴む手に力がこもった。内腿の筋肉が強張り、性器が一気に膨らんだのがわかった。
引き剥がそうとする桐島の手の力に逆らうように阪東の頭はそこから離れない。
先端の括れを含んだまま、巻き付いた指が根元を激しく扱き立てる。桐島は機材車の天井を仰ぐ。煙草の煙で視界が曇る。
どうにでもなれ、と桐島は腹筋に込めた力を抜く。快感の突き上げるままに任せ、阪東の唇を、口腔を、喉を欲望で汚す。
桐島は目を閉じる。阪東の喉が大きく上下するのを感じる。
こんなことが長く続くわけがない。こんなことは、きっと今だけだ。阪東が俺のものでいてくれるのは、きっと今だけ。
近い将来自分たちのあいだにある齟齬は取り返しのつかないレベルに膨らみ関係は破綻する。
阪東がこんな真似をしてまで桐島を慰めてくれるのは、今だけなんだ。桐島は繰り返し繰り返し自分に言い聞かせる。
そうなった時にけして阪東を引き留めるような真似をしなくてすむよう、桐島はただ自分にそう繰り返す。
未来なんかない。未来なんかない。

俺たちに、未来なんかない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

143:Curry of Prime, and Spice. 1/2
11/04/04 16:53:30.61 jjCGjcBx0
半生。邦ドラ淑女より、監理官×係長。エロなし。#10以降のお話。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

藤/堂は少し浮かれていた。
彼はキッチンに立っていて、対面式のカウンターには先輩である柘/植がもたれかかっている。
彼は料理を作っていて、それを眺める柘/植は静かに頬笑みながらワインを飲んでいる。
こんな時間は何年振りだろう。

長い、長い間、藤/堂と柘/植は離れていた。
同じ庁内に勤めているし、同じ帳場に入ることもある。しばしば顔を合わせていたし、少なからず言葉を交わしてはいたが、心が近づくことは決してなかった。
柘/植が藤/堂を意図的に遠ざけていたし、藤/堂もそんな柘/植にどう接して良いか分からなかった。あの事件以来、藤/堂と柘/植は先輩と後輩・上司と部下という距離感に加え、その間を絡まった糸で線引きされていた。
深く忌々しく、越えられないとさえ感じていた溝が、今では浅い堀になったようだ。
柘/植がキャリアルートを外れる原因となった誘拐監禁殺人事件は、C/P/Sの協力により5年の時を経て真の解決に至った。
C/P/Sをあまり良く思わない藤/堂だったが、この活躍により柘/植の心の闇が取り去られたことと、数例ではあるが難事件を解決に導いたことにより、その存在を認め始めていた。

C/P/Sメンバーの1人、香/月/翔/子が関係する"レ/ディーキ/ラー"事件が解決した後、藤/堂は柘/植を食事に誘った。誘ったと言うよりも「要求した」といった方が正しいだろうが。
「奢って下さいよ」「わかったよ」というその会話どおり、先日、美味いと噂のインド料理店に2人で赴いたのだが…

「たしかに、うまい。スパイスの香りが違いますね。」
「………」
「柘/植さん?どうしました、口に合わなかったんですか」
「……お前が昔作ってたのの方が、うまい」
「……じゃあ、今度は俺がご馳走しましょうか」

そういうわけで、藤/堂はせっせとカレーを作り、柘/植はそれを待っているのだ。

144:Curry of Prime, and Spice. 2/2
11/04/04 16:54:37.65 jjCGjcBx0
鍋はぐつぐつと煮えている。具材には十分火がとおっている。
藤/堂は一旦火を止め、パウチの中身を鍋に注いだ。どろりとした液体が、スープに色をつけていく。おたまで軽くかき混ぜると、それだけで食欲をそそる香りが広がった。
我ながら上出来だ。次のひと手間で、このカレーは完成する。

「よし。仕上げは…」
パックの封を開けようとした藤/堂の言葉に
「ルー。…だろ?」
柘/植が割って入った。
驚いて顔を上げると、頬杖をついてにっこりと笑いながらことらを見る柘/植と目があった。
藤/堂は、ペーストと固形ルーを併せる自分のレシピを覚えられていたこと、浮かれた自分を見られていたことを今更ながらに自覚して
「………です。」
としか、答えられなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お粗末さまでした。
監理官の中の人ネタです。最終回は凄まじかった

145:風と木の名無しさん
11/04/04 18:02:47.34 F2R3CtC40

半生  某自動車メーカーのCMより第2弾
宣伝部長→所長×研究員

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース

基本的にWEB限定ムービーを踏襲してますが、多少オリジナル設定が入ってます




146:某自動車メーカーのCM 1/3
11/04/04 18:05:30.97 F2R3CtC40

「T/N/Pを低燃費って、まんまCMやったら笑われるよ!」
「なに!?」
「なに!?」
憤りを抑え切れず、気が付けば椅子から立ち上がっていた。
隣を見ると、同じく新任の研究員も立ち上がっている。
広い会議室の空間は、途端に一触即発の不穏な空気を孕み始めた。
構わず、大きなテーブルを挟んで向かい側に座っている面々を睨み付ける。
一時の感情に任せた態度を表に出すのは余りスマートとは言えない。私の主義に反するが、どうにも我慢ならなかった。
利己主義で低俗な感覚に塗れ切った向かいの面々――宣伝部の連中に、スマートかつクールな我々研究者のアイディアを一蹴されるとは。
完全にあってはならないことだ。
ところが、諸悪の根源である宣伝部長は、さっきから我々を小馬鹿にした態度で呆れたように鼻で笑っている。
「おたくら本気?」
「いつだって本気ですよ!」
私が口を開く前に隣の丘田が喰らい付いた。…相変わらず可愛い。
うん、そうだ。私もそれが言いたかった。
にもかかわらず、だ。向かいの敵の口から発せられた言葉は、
「なんで」
なんで、だって?
馬鹿な。どうしたらそんな間抜けな言葉が出てくるんだ。お前にはこのJ/C/2なエスプリが、
「――分からないのか?」
「ちょっと格好良いからですよ!」
素早く私の言葉の後を継いで、再び隣の丘田が言い放つ。
そう、そうだ、丘田。そういうことだ。良く分かってるじゃないか。
何という以心伝心。
もう私と君は一心同体と言っても過言じゃない。まさにT/N/Pとエコア/イドルの関係の如しだ。
君という裏付けがあってこその私なんだ。いや、私のようなH/R/I心を持った上司に恵まれたからこそ今の君の成長があると言うべきか。いやいや、むしろ私のI/K/T/Rセンスが…。
……待て、今は我々二人の関係性を分析している場合じゃない。


147:某自動車メーカーのCM 2/3
11/04/04 18:07:34.74 F2R3CtC40

度重なる援護射撃に気を良くした私は、再び目の前の敵を見据えると、これが最後通牒とばかりに腕を振り上げて断じた。
「T/N/Pでバーン!といかないか!」
「…勘弁して下さいよぉ先輩」
それまでの木で鼻を括ったようなイケ好かない態度はどこへ行ったのか、急に眼前の敵が情けなく顔を顰めて項垂れる。
相手の様子が一変したことに驚いたらしく、丘田が私の方を向いて声を上擦らせた。
「せ、先輩!?」
「部活の後輩だ……バドミントン部だ」
こんな無粋な人間に成長してしまった後輩を持ったのは我ながら何とも不本意だが、やむを得ない。
中学の頃はあんなに小さくて可愛かったお前が。
今じゃチャラチャラした業界気取りのむさ苦しい男に成り下がってしまった。
あぁ、何という悲劇。時間とはかくも残酷なものなのだ。
しかし、それはそれ。過去は過去。私としては、この場を一歩も引く気はない。
「杉元!」
「参ったなぁ……」
もはや反撃することもなく、杉元は困り切ったようにただ呟いている。
敵の心理に綻びが生じたことを感じ取った丘田が、間を置かずして鮮やかな決定打を放った。
「それを格好良く作るのが宣伝部の仕事でしょう!」
よし、巧いぞ丘田。
案の定、丘田の言葉に変にプライドを刺激されたのか、敵はようやく我々のアイディアを盛り込むことを承諾した。
早速、T/N/Pをバーン!と掲げ、エコア/イドル搭載を角に慎ましく表示したフリップを準備した杉元が、我々に向かって同意を求めるように首を傾げる。
「どう?」
「…良い、と思います」
私の方をチラリと見ながら、丘田が少し自信無さげに答えた。
…可愛い。
ただ、もっと自分の感性に自信を持て、丘田。君はもう私と一心同体なんだから。
そこでようやく会議も終わり、会議室からスタッフ達が続々と退室していく。
最後に残った我々と杉元は、出入り口のドア付近でちょうど向き合う格好になった。


148:某自動車メーカーのCM 3/3
11/04/04 18:09:38.38 F2R3CtC40

杉元もようやくホッと安心したのか、目線で私を指し示しながら、丘田に向かって溜め息交じりに吐き出した。
「言い出したら聞かないんだよ、昔から」
なに!?
お前にそんな風に言われる筋合いはない!だいたいお前こそ昔から、――。
舌鋒鋭く反証を始めようとした私の耳に、突然、杉元らしからぬ気弱な言葉が飛び込んでくる。
「…こんな極端なやり方で、売れると思うか?」
一体どうしたんだ、杉元。こと宣伝にかけては自信過剰ともいえるお前が。
そうか、そうだったのか。
本当のお前は、日々不安を抱えながら、それを表に出すまいと尊大ぶった態度で自分自身に鎧を纏っていたんだな。
だが、杉元、もう安心して構わない。
我々が求めているのは結果だ。結果だけが全てなんだ。そして今回に限っては、必ず結果が出る!
何故ならこの私が考えたアイディアなのだから!!
そう言って元気付けてやろうと思ったのも束の間、杉元は勝手に自己完結したようだった。
「でも嫌いじゃないよ。…俺、実は結構、イケると思ってるゼ!」
いや、お前のその感性は全くイケてないだろう。I/K/T/Rのは私だ。
そう思わないか、と同意を求めるべく隣の丘田に顔を向けると、丘田は何故か優しそうな笑みを浮かべて杉元と見つめあっていた。
「時にはそうやって、恥ずかしがらずにまんま素直に表に出すってことも必要なんじゃないですか。僕も最初は戸惑いましたけど、今はそう思います」
「確かに、そうかも、な…」
杉元の方も、ひどく感慨深げに何度も頷いている。



149:某自動車メーカーのCM 4/3
11/04/04 18:12:02.90 F2R3CtC40

どういうことだ、この二人の間に漂う空気は。
「おたく、良い感性持ってるよ。技術畑には勿体ないなぁ」
照れ隠しのように丘田に陽気な笑顔を向けた後、杉元がふいに表情を改めた。
「先輩――」
なんだ急に。それに何だその目は。……まさか!?
駄目だ!絶対に駄目だ!
丘田は私の研究所の研究員なんだ!お前なんかにやるわけにいかん!!
それに丘田、お前もお前だ!奴にそんな可愛い笑顔を向けるんじゃない!杉元が誤解するだろう!
二人の間に割って入ろうとした私の両肩を、杉元がガッシリとした手で掴んだ。
「――実は俺、ずっと、…ずっと先輩のことが好きでした!俺の嫁さんになって下さい!!」
「ッえぇ~??」
「ッえぇ~??」



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

またしても改行ミスりました…すみません


150:風と木の名無しさん
11/04/04 22:11:54.72 PIZmygnG0
>>149なんとJC2な!
ラストのプロポーズでフイタw
展開だけ追うとハラハラ三角関係!?という感じだけど
どこかほのぼのしてて可愛いなあ
ごちでした!

151:風と木の名無しさん
11/04/04 23:05:33.37 MgvFv2sp0
>>149
第二弾ktkr!
ラストの展開に自分もニラ茶ふいたよw
第三弾も全力正座でお待ちしてます

152:風と木の名無しさん
11/04/05 00:23:39.10 wst59ch/O
遅レス失礼致します
>>101ー109等の姐さん
全ての作品素晴らしいです!読む毎に萌え力で元気になりました
緑蜂以前にも投下なさってらしたのでしょうか、文章の心地良さにすっかりファンです
予告編からワクテカだった作品を棚で拝見出来て感激し萌え再燃してます
更なる続きをお願いしたいですし続編撮って頂きたい位ですwありがとうございました


153:風と木の名無しさん
11/04/05 01:18:06.62 6XaeCukZ0
>>136
おおおおおヒロミと阪東のバンド物がここで読めるなんて!!
二人とも男っぽくて切なくてすごく良いです

154:風と木の名無しさん
11/04/05 19:29:43.38 LCr6pqfUO
売る振るず/しゃっきんだいおうの歌詞に萌えてインスパイアされた二次?BL未満妄想

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

155:どうしようもない奴 1/5
11/04/05 19:30:26.71 LCr6pqfUO
あいつとの付き合いは長い。
初めて会ったのは幼稚園、桃組のとき。
父は仕事に忙殺され、母は生まれたばかりの妹にかかりきり。
ふて腐れ気味だった俺の手を引いて遊びに誘ってくれたのがあいつだ。
頭がよく運動神経は抜群。
顔立ちも悪くなく、だけど決して鼻にかけず誰に対しても分け隔てなく接する親分肌。
あいつは俺のヒーローだった。
―そう、「だった」だ。過去形。
十年以上前に、その一種憧れめいた感情は掻き消えた。
できるものなら俺は昔に戻ってあの頃の俺に言ってやりたい。
そいつはやめとけ、今に泣きを見るぞ、と。

「だからさ、ちょこーっとでいいんだって」
現在の時刻、午前5時30分。
寝不足で痛む頭を押さえる。ゆうべ会社から帰ったとき既に日付が変わっていた。
馬車馬のように働いたのは今日が貴重な休みだったからだ。
「おおい聞いてるか?」
「うるさい話を聞く気はない」
俺は眠い目を必死で開けて前方を睨みつけた。
相手はほんの10分前、チャイム連打で俺を叩き起こし、今も我が物顔で寛いでいる男だ。
中途半端に長い髪と無精髭はこいつのだらしなさをよく表している。
へらへらと笑うこいつの目的はいつだってはっきりしている。金の無心だ。
「何だよーケチケチすんなよー」
「お前は金の有り難みってもんをわかってない」
高校生が友人にアイス奢れと言うのとは訳が違う。
俺達はもう遊び歩くのを許されるようなガキじゃない。
社会人になって数年、友人は皆大なり小なり苦労して汗水垂らして金を稼いでいる。
無論、食うためだ。断じて目の前の阿呆に恵んでやるためじゃない。
それを、働きもしないこいつはしれっとした顔で言うのだ。

156:どうしようもない奴 2/5
11/04/05 19:31:23.51 LCr6pqfUO
「別に全財産寄越せってんじゃないんだからさ、ほんのちょびっと貸してくれたっていいじゃねーか」
阿呆かと。馬鹿かと。
目を開けたまま寝言言うんじゃねえよと。
貸すというのはいつか返ってくるからそう言うんじゃないのかね。
学生時代から今に至るまで、何年経っても一向に返さない相手に金を渡すのは貸すんじゃねえ、ドブに捨てるって言うんだよ。
俺が睨みつけるのを気にも留めないで、阿呆はへらへら笑った。
「だーいじょうぶ大丈夫。今回はマジだって。馬でも自転車でも船でもねーよ。ビジネス、いわゆる投資ってやつだ」
投資。いかにも胡散臭いな、おい。
「大当り間違いなしだ」
どんな根拠があるものか、奴は手のひら大の箱を投げて寄越した。
蛍光ピンクのパッケージにボンキュッボンの際どい服着た金髪ねえちゃんのイラスト。
大人の玩具かと疑う下品な箱の上にはでかでかと赤い文字が踊っている。
「……一粒飲めばアナタも魅惑のプロポーション! って……」
どう考えても騙されてるだろ!
叫びそうになったがぐっと飲み込む。
いかんいかん。もうこいつに振り回されるのはやめるんだ。
投げ返そうとしたとき、中身がこぼれた。
吐き出されたのは丸く平べったい白の錠剤。って待てよ。
「おいこれラムネに見えるぞ」
「ラムネじゃねえよ、流行りのダイエット商品だよ。ほら一粒飲めば魅惑のプロポーション!」
両手を使ってナイスバディを表現している阿呆は無視して粒を口に含む。
しゅわっと口溶けよく弾ける。やはり懐かしのあの駄菓子だ。
パッケージをもう一度見る。
心なしか、撫でると金髪ねえちゃんの辺りがざらざらするような。
―まるで絵の具か何かで描かれたように。

157:どうしようもない奴 3/5
11/04/05 19:32:22.50 LCr6pqfUO
そこまで考えて俺は、今度こそ奴の頭めがけて箱を投げつけた。
「投資なんて嘘だろこれお前が作ったんじゃねーか!」
「ばれたか」
「ばれるに決まってんだろ!」
そうだった、こいつは昔から異常なほど手先が器用だった。
その器用さをもっとマシなことに使えよ!
まともに働いて金稼げよ!
「いいか、俺のお前に対する心証は元からマイナスだったが今ので臨界点突破したからな」
「えー俺お前にだけはひどいことした覚えねえぞ。金せびったけど」
それだけでも十分ひどいことだよ、と言いたいのをぐっと堪えて俺は声を低めた。
「俺はお前がマリコに手え出したの忘れちゃいないんだよ」
「なあに人聞きの悪いこと言っちゃってんの。
マリちゃんとは紳士的にお付き合いして話し合いの下円満にお別れしたよ」
そうともお前と妹とは今も仲がいいだろう。
だがそれが今までで珍しいってのはよく知っている。
こいつが女と揉めるたびにとりなしてきたのは他ならぬ俺だからだ。
今だってこいつはあちこち女の家を渡り歩いて暮らしている。
金がなけりゃ家もない。働く気概も情けに報いる誠意もない。
何というダメ男!
これはだめだ、もうだめだ。
今日までずるずると付き合いを続けてきたが、俺の愛想もストックが尽きた。
今まで何遍も思ったが今日こそ終わりだ。
「貸してやってもいいぞ」
そう言った途端、奴は目を輝かせた。
「マジで!」
「その前に今までの借金返すならな」
奴の動きが止まった。ほら見ろ、どうせ返せるはずがないんだ。

158:どうしようもない奴 4/5
11/04/05 19:33:50.32 LCr6pqfUO
「返せ、さあ返せ。全額耳を揃えて返せ」
「いやあの本当に俺今金ないのよ。今あんのって言や……あ、そうだ」
がしっと肩を掴まれ、上から覗き込まれる。
な、何だよ。何で目に力込めてんだよ。
無精髭が生えて、でもよく見ると鼻筋の通った男前がふっと微笑んだ。
奴の顔が近づき、俺の耳元で囁く。
「身体でご奉仕しちゃおうか……?」
ふうっと耳に息をかけられた瞬間、俺は奴を蹴り飛ばしていた。
「帰れ! もうお前二度と来るな!」
「えー! ちょっ金は!?」
「貸すわけねえだろこのタコ!」
暴れる奴を無理やり蹴りだし、扉を閉めた。
しばらくの間、お願いだのごめんだのとわめく声が聞こえたが、諦めたのかやがて足音が遠ざかっていった。
それを確認したら足から力が抜けた。
へたり込み、がつんと扉に頭を打ち付ける。

159:どうしようもない奴 5/5
11/04/05 19:35:20.60 LCr6pqfUO
昔、同じようにごく近く顔を寄せ合ったことがあった。
ガキの頃、近所の林に作った段ボールハウスは、高校に上がるまで俺達だけの秘密基地だった。
基地最後の日はよく覚えている。
中学の卒業式の後、今日のようにあいつがふざけて顔を寄せてきた。
冗談で返せばよかった。でも俺は逃げた。
次の日行ってみると基地は壊されていた。
そしてあいつは変わった。
俺の心臓は今、あのときと同じように扉を蹴破って走り出そうとしている。
きっと顔も耳も首も、どこもかしこも真っ赤だろう。
手が震えて、あいつが置いていった詐欺商品を握り潰した。
「ちくしょ、あいつ……くそっ」
マリコにツバつけたのがわかったときキレたのも未だにあいつを切れないのも。
原因は全部わかってるんだよ。
嗚呼、昔の俺よ、何だってあんな奴に惚れちまったんだ!

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見捨てられないのは恋だよ!って突っ込みたい気持ちが堪えられなくなったので吐き出し。
捏造失礼しました。

160:風と木の名無しさん
11/04/05 19:39:29.61 hHmsZKwK0
>>136
まさか2でこの二人の話を読めるとは…
ありがとうございました!


161:アキラ×ヒカル×アキラ ◆k/mlQdBDxE
11/04/06 04:44:28.56 Tzg6JULmO
リバ注意!ヒカルの碁
>>97-98の続きです
アキラ×ヒカル、の後、ヒカル×アキラにかわります
ガチリバな二人でエロ。しかもその日の勝負で上下が決まるというベタなアレで…
続き物でちょこちょこやってくつもりです。
リバ苦手な方は専ブラでトリップをNGワードに設定推奨です。
ヒカルの一人称(ヒカル視点)で進みます
今回は押し倒し編。しかもビミョーにまだ押し倒してない
押し倒すだけなのになんでこんなに書くのに時間がかかるんだろう…
今はアキラ×ヒカルです
ややヒカアキっぽいかも知れないもしかしたら、自分ではわからない
ちょっと血を舐める描写が出てくるので苦手な方は気をつけて下さい
あと私が気づいてないだけでこの二人結構変態なのかもしれないどうしよう

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162:アキラ×ヒカル×アキラ1/2 ◆k/mlQdBDxE
11/04/06 04:52:10.88 Tzg6JULmO
負けた。オレの二目半の負けだ。
塔矢の家で、いや塔矢の部屋で塔矢が勝ったときはいつも、検討を終えて、碁石を片付けると塔矢がじりじり寄ってきて、
そのまま、布団側にいるオレを、敷布団の上に転がして………
そこまで想像を巡らせて思った。今日はどうすんだろ。
塔矢が碁盤と布団の配置を逆にしたから、いつもと逆で布団側に塔矢がいて、碁盤を挟んで反対側にオレがいる。
じりじり寄って、オレを力技で布団に引きずり込むつもりか。
それとも、オレが自分からにじり寄ってくるのを待ってるのか。
そんなことを考えているうちに、二目半の差で負けた碁の悔しさが込み上げてきて、はあ、とため息をついて碁盤に頭を垂れる。
かちゃ、という音を立てて、額の下で石の配列が崩れた。
「…あ、だめだよ」
顔を上げると、塔矢が碁盤に手を伸ばして元に戻そうとしている。
やっぱり忙しかったのか、唇がかさついている。手とか唇にばっかり目が行ってしまう。
かさついた唇を見てなぜか、いつだったか、掠れた、でも熱っぽい声で、碁に負けたキミの顔が好きだ、とぽつりと呟いていたのを思い出した。
そんな顔を見せたままでいるのもなんだか癪で、石の形を戻していた白い手を、手のひらで押し返す。
ばちばちと音を立てて盤面が崩れて、畳の上にいくつか碁石がこぼれ落ちた。
あっけにとられている塔矢の胸に手のひらを押し付けて、じりじり迫ってから体重をかけて力任せに布団に倒す。
スーツの布地が、毛羽立った畳に擦れてざらついた音を立てた。
「盤面、頭に入ってるから。あとで並べようぜ」
ダークグレーのセーターの下におさまっているネクタイの、結び目近くをぐいと掴んで、乱暴に引き寄せる。
「……今日はボクが上のはずだが」
そう、そうだよこの目。この目だ。ぎらぎらしたおまえの目、好きだ。身体中がきゅっと締め上げられる感じがする。
「んなことわかってるよ」
塔矢は左の手のひらを突いて腰を安定させると、下からそろりと右手を延ばしてきて、オレの頬から顎にかけてを、つっと撫でた。


163:アキラ×ヒカル×アキラ1/2 ◇k/mlQdBDxE
11/04/06 05:04:08.89 Tzg6JULmO
硬い指先が頬をたどる感触にぞくぞくする。やっぱり溜まってる。オレ。
「なあ……オレさあ、」
なに、と言いかけて開いた薄い唇を、最初はゆるく、だんだんきつく、きりきりと噛んだ。
微かな、生温かい感触と一緒に歯の間から鉄の味が広がって、塔矢の口から、あ、という微かな声が洩れる。血だ、と思った。
「ごめん、切れた?…」
かさかさしてひび割れそうだった唇を噛まれて、切れたか割れたかして血が出たらしかった。
自分の下唇に付いた血を舐め取る。口の中で、鉄っぽい味が唾液と混ざった。
塔矢と大差ないくらいかさついている自分の唇の感触を認めて、改めて、自分と同じようにかさついている、薄い唇に欲情する。
「ああ、……切れたみたいだ」
手の甲で口を拭って、その手の甲をちらっと確認しながら言う。
その仕草が妙に色っぽい、なんて思って、だめだこんな調子じゃ、こんなんじゃあんまりもたない、と思った。
左手で顎を持ち上げて、かさついた唇をすり合わせて、まるで噛みつくみたいに強く唇を吸う。
唇を少し舐めてから離すと、塔矢を布団の上に押し付けて、腰の上に馬乗りになって両手を塔矢の顔の横に突く。
塔矢のワイシャツの襟の上に、水色のネクタイの先がぱさりと垂れる。
「オレさ、いま、」
こうやって、塔矢を上から見おろすのは、なんだか好きだ。
塔矢がオレが作る影の中にいると、それだけで、ああ、こいつ今、オレ次第でどうにでもなっちゃうんだな、みたいな気分になる。
まあ、気分の上だけなんだけど。実際は、そうすんなり上手くは行かない。

164:アキラ×ヒカル×アキラ2/2 ◆k/mlQdBDxE
11/04/06 05:08:50.65 Tzg6JULmO
少し腕を曲げて体を近づけると、ごくんと白い喉が上下して、ネクタイの先が黒髪の上に滑り落ちた。
「すっげえ、したい」
たぶん塔矢の口の中にも、少しだけど血が残っている。今キスしたら、きっと血の味がする。
オレの口の中も塔矢の血の匂いがする。なんだか変な感じだった。口の中の唾液を飲み込む。やけに鮮明に喉を通った。
顔の横でシーツに食い込んでいる右手の、親指以外の四本の指に体重をかけて、無造作に広がった髪の上にある親指で、すりすりと髪の流れをなぞる。
「……こっから、やってみろよ」
今まで、塔矢が力ずくでオレを、っていうのはなかった。
大体、軽く布団に転がしたり、もつれるように倒れこんだり、みたいな感じだった。
力ずくでオレを押し倒すおまえを、ただ見てみたいと、そう思った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
読んでくれた方ありがとうありがとう
続きます


165:風と木の名無しさん
11/04/06 05:11:09.59 Tzg6JULmO
あああ、名前欄の分数おかしい、途中トリップできてない
ご迷惑かけました

166:風と木の名無しさん
11/04/06 09:09:14.94 2RpYltUk0
>155
つ、続きマダー? っていうかここで終わりとは殺生な…w
どうしようもない奴に振り回される主人公乙。


167:山鉄 1/3
11/04/07 22:18:43.75 EuD+DtZC0
一応ナマモノ。ymd×t兄(俳優)のつもりです。
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 眠らなくても動く脳味噌とか食わなくても平気な腹とか、そういうのが欲しい。
眠る時間がもったいなくて、けれど特にする事もなくてただぼんやりと夜を明かしてドロドロに溶ける脳味噌は厄介だ。
何食べようとか考えるのが面倒で何も食わないでいたら、立ちくらみで世界が真っ暗に滲んだ。
カプセル一つで腹が膨れたりとか眠らなくても済む機械の体とかが欲しい。そろそろ未来、来ねぇかな。遅れてるよ、21世紀。

 ぐったりとソファーに倒れこんで、このまま死にたい、と思ってもない事を口に出してみる。
……いや、まぁ死にたくはねぇなぁ。何か辛い事でもあったっけ俺?と思いを巡らせてみても、特に何も思い出せなかった。
生きていると辛い事ばかりが降りかかるような気がするけれど、よくよく考えてみるとそのどれもこれもが大した事ではないように思える。
本当に辛い事なんて数える程しかなくて、俺はまだそれが思いつかない。
真実、俺を殺す悲惨な出来事。大抵の事なら、何があっても生きていける。随分と丈夫に育ってしまったので、大体は生きていけた。
けれど、いつか俺を殺すのはこの倦怠感なのかもしれない。心がね、ちょっとナイーブなのよ。
でもまぁ、今のところ死にたくなんてないから死なない。死にそうもないから死なない。さて、本当に俺は何か辛い事でもあったのだろうか。

 携帯の震える鈍い音が聞こえて、さっき床に落とした携帯を手探りで掴んだ。
ディスプレイをに表示された名前を見て、数秒迷ってから電話に出る。

『なにしてんの?』

 死にかけてるよ。

168:山鉄 2/3
11/04/07 22:19:14.87 EuD+DtZC0
 しばらく会っていない兄貴は、そういう探るような言葉でもって俺を誘い出す算段らしかった。
何と返したって、次に続く言葉はどうせ、「来いよ」とか、「来てよ」とか、なんとか。
 外に出るのはメンドイな。かといって家に来られてもメンドイな。
これは愛してるとか愛してないとかの問題じゃなくて、俺の生死に関わるアレコレなので勘弁して欲しい。
それとこれとは別問題で、ここの所を深く考えてしまうと俺のアレコレがより深いところまで落ちていってしまうので考えるのをやめた。

(人に気を使わせてまで死にたいフリを続けるのか。結局、外に行ったら行ったで楽しいのに。
それを突っぱねてまでも俺は死にたいフリを続けるのか。あー死にたい。ウソ、死にたくない。)

(あーだから考えるのやめろって。)

 結局いつもどおりの返事をして、俺は、とりあえず死にたいフリを一時中断して財布と鍵を掴む。
つうか、俺寝るとこだったんだけど。ブツブツ文句を言いながら家を出た。そんなに近くで飲んでるって事は確信犯だろう。
タクシーを捕まえて、タクシー乗ったよすぐつくよって言ってんのに電話の向こうの人は一向にぐだぐだと意味のわからない事を言って切ってくれない。
ほらもうついちゃうよ。ほら、もう、ついちゃった。通りに突っ立っている男を見つけて慌ててタクシーを止めた。
ちょっと待っててください、って言ったら嫌な顔をされたので財布を人質に置いて車を降りる。
なにしてんの、って声をかけたら、よっぱらいのどんよりとした目が俺を見つけて嬉しそうにほころんだ。

「なんだよ、その格好」

 笑いながら俺のジャージを引っ張って、あ、と動きを止めた。

「俺のじゃん」

 そうだっけ。道理で裾を引きずるはずだ。まぁいいじゃない。男の手を掴んでタクシーに乗り込もうとしたら、ぐいと引っ張られた。
振り返るとぼんやりとした顔がもごもご意味の分からない事を言うので、とりあえず金を払ってタクシーを見送る。
どうすんの、って見上げると、ぼんやりとした顔がぼんやりと照れた。おぉ、面倒くせぇな。

169:山鉄 3/3
11/04/07 22:19:59.56 EuD+DtZC0
 
  眠らない体が欲しい、腹の減らない体が欲しい。
  欠ける部分のない、完璧な心が欲しい。
  そのどれかで俺はきっと、何かしらはマシになるのに。

(ま、無理だけど。)

 仕方がないので手を繋いだまま歩き出す。薄暗い夜道にぼんやりとした月明かりが落ちてくる。
少し後ろを歩く酔っ払いの手を引いて、ちらりと振り返れば、なんだかとても嬉しそうな顔をしていた。
手を繋いで人気のない道を二人で歩いて帰る。
 そのうち本当に死にたくなっちゃったら、この人の体を触って、俺の体を触ってもらって、なんとかかんとか誤魔化してみよう。
頭を撫でてもらって、笑うとくしゃくしゃになるこの人の顔をいやらしい意味で歪ませてみたりしてみよう。
それらを全部手に入れて、それでようやく俺はきっと。

(……ま、わかんないけど。)

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


170:風と木の名無しさん
11/04/08 14:17:06.62 6mk088+aO
棚のまとめって携帯からでも編集出来る?

171:風と木の名無しさん
11/04/08 14:19:55.67 6mk088+aO
わ、上げてしまった
ごめん

172:嫉妬 1/2
11/04/08 15:34:27.41 ICB5y1Av0
生 彫りの深い変人刑事とか実に面白いな物理学者の作者×人を殺せる厚さの本を書く和服の人
互いの呼び方は創作
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始まりなんて覚えていない。気付いたらこういう関係だった、としか思えない。
今日は新しい映画おめでとうございますと祝いに来たという名目だったが、
迎え入れた夫人の隣に立つ彼も俺の視線で意図を理解していたのは明白だった。

「うっ…く…」
お互い何度目かの絶頂と射精を迎えたところで自然と休憩を取る。
愛の言葉を紡ぐでもない。互いの体を愛撫しあうでもない。
視線も合わせず、体から引き抜くこともなくそのままの体勢で。
これは何のための行為なのか、考えることも面倒だった。
彼は肌蹴たシャツを閉じる事はせず、呼吸をゆっくりと整えている。汗をかかない体質なのは知っているが、
見ていると若干プライドのようなものに引掻き傷をつけられている気に障る。
「ねえ、ヒガツノさん」
「ん」
「僕疲れました」
「俺も」
「じゃあもういいんじゃないですか」
「やだ」
即答すると芝居がかったようにえええーと言ってくる。眼は笑っていない。
「もう萎えてるでしょ、それぐらい分かるんですからね」
「そこはほら、キョウくんが頑張れば」
「その呼び方気持ち悪いんでやめてください」
そう言い放つ辟易とした顔が勘に触ったので腰をわざと揺らす。
途端に羞恥と快楽の入り交じった表情に変わる。ざまあ見ろ。
そのまま腰を動かしだすと、彼はソファの生地に爪を立てて小さい声で言う。
「後輩苛めだー…」

173:嫉妬 2/2
11/04/08 15:36:26.15 ICB5y1Av0
そう、これはただの苛め。
後輩の癖にとても目立つ。デビューの経緯だけで一本小説を書けるぐらい。
敬愛する師匠の教えに従った結果かどうかは分からないが、以前の抱かれたい男No.1の容姿が崩れたとしても
相変わらず人目をひく容姿なのは変わりない。
賞だって獲った。実写化もした。アニメ化もした。映画化もした。漫画化もした。
どれも全部俺より先に。
本業以外もこなす多彩な彼が妬ましい。何度自著で皮肉ったことか。
そう思っていたのに、気付けば自分も同じ高さに立っていた。
やっと認められた。嬉しかった。猫と二人で妙なダンスも踊ったぐらいだ。
なのに脳裏には、全てを先じていった男の顔が染み付いて離れなかった。
体を合わせているからか、余計に焼きつく。
壊してやろうとしたってそうそうエロ小説のように人格破壊なんて出来やしない。
ただただ、俺の嫉妬心を癒すために。

病なんて気さえ持てば何でも跳ね除けますよ、とソファの上で言われた数カ月後に生まれて初めて彼が倒れたと
噂で耳にしたときに、胸の奥で何か音がしたことはまだ彼に言っていない。
でもきっと、彼は気付いているだろう。


そうだとしても、これはただの嫉妬。
別の言葉でなど表すものか。絶対に。


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174:風と木の名無しさん
11/04/08 18:16:31.57 ICB5y1Av0
ぎゃー誤字だと思って直したところがそうじゃなかった!
1/2の「~つけられている気に障る」は「~つけられている気になる」です
恥ずかしい(;´∀`)

175:嗚呼、小市民  1/6
11/04/08 20:50:19.41 QHlwNr5s0
クローズ(原作)よりヒロミ×阪東。
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「あー、今百万あったら何すっかなー」

 大容量の安焼酎とホッピーをかき混ぜて行儀悪く割り箸をしゃぶる。
酔いで腫れぼったくなった目で奈良岡が呟いたのは去年の大晦日のことだ。

「とりあえず、家賃と携帯代だろ?」

 いつになく真剣な顔で指を折りながら、奈良岡はしばらく所帯じみた取らぬ狸を披露した。
どうするのこうするの、とありもしない百万を使って見せた奈良岡は、「おまえらはどうよ?」と、
同じこたつに背中を丸めて酒をすすっていた桐島と阪東に顎をしゃくった。
阪東はあたりめをかじりながらいつもの調子で鼻先に小馬鹿にした笑いを滲ませる。
それでもしつこく聞くので桐島は仕方なく「でかい犬を飼う」とかいい加減なことを言った。
その「ロックと犬」というのが奈良岡の哲学によるところどうも食い合わせが良かったようで、
ひとしきり「犬はいいぜ」と頷かれた後で、二人の視線は残りの一人に注がれた。
阪東は「何見てんだよ」と、鼻の頭に皺を寄せたが二人が構わず視線を外さずにいると、
落ち着かなげにライターを擦ってから、観念したように「ギターのローン」と煙を吐いた。
それから煙草をパーラメントに変えるだのリムジンで里帰りをするだのと、三人であれこれとくだらない夢の金額を見積もった。
最後に奈良岡が「死ぬほど肉食いてー!」と、叫んで床を転げたところで、
近所の寺からまさに煩悩を振るい落とすような除夜の鐘がいやに厳かな響きを上げて、酒臭くこもった四畳半の空気に余韻を引いた。
何となく顔を見合わせてから背筋を伸ばし、それぞれの湯飲みやマグカップに酒をつぐ。
改まって咳払いして「今年もよろしく」と、乾杯してそのまま昼まで飲み続けた。

176:嗚呼、小市民  2/6
11/04/08 20:50:59.11 QHlwNr5s0
 そんな生活が一変したのは正月気分がようやく抜けた頃で、年明け一発目のライブの後で打ち上げの居酒屋に遅れて現れた阪東は、
食い散らかした皿の間に一枚の名刺を置いて目で笑った。
あれよという間にレコード屋にCDが並んで、畳の毛羽立った四畳半からオートロックの小綺麗なマンションに引っ越した。
もう財布の中身を掻き集めて予約を入れなくても、倍以上も広さのあるスタジオで存分に楽器をならすことが出来る。
相変わらずセブンスターを吸ってはいるが、阪東のギターにはローンを返して釣りがきた。
今年の大晦日には死ぬほど肉を食いながら稀少ものの銘酒で乾杯が出来るだろうし、地元に帰れば知らない親戚や友人も増えているだろう。
あの夜からもう一年だ。

 たとえばこんな金の使い方が自分の選択肢に加えられることなど一年前には思いもつかなかった。
電車は人目につきすぎるからタクシーを拾い「これもロックか?」と口の端を持ち上げる。
サングラスをかけ直しながら一緒に車内へ滑り込む奈良岡は「これは別だろ」と、肩をすくめてシートに体を投げ出した。
桐島ははは、と笑って運転手に行き先を告げた。
ゆるゆると走り出す車に合わせて、買ったばかりのラム皮のコートの上をガラス越しの街の電飾が鈍く光って流れ出す。
スプリングのゆるいシートに沈み込むように背中を預けると、さっきまでの昂揚はとたんにうんざりするような疲労に変わった。
腰や背中が重力にまとわりつかれたように重い。

 奈良岡を誘って、たった今新宿の「風呂屋」で女を抱いてきた。
ただで足を開く女ならいくらでもつかまるものを、わざわざ商売擦れした女の懐に六万円を落としてきたことに大した意味はない。
どうせ財布の中に金があるなら使いたくなるのが人間だ。酒乱に酒、ガイキチに刃物、ガキに大枚か。
桐島は鼻から長い息を吐きながら、女の体の上で果てた瞬間を反芻した。

「なあ、ヒロミ」
「んー?」
「おまえさ、女でもイケんの……?」
「は?」

 思わず顔を向けると奈良岡は前を向いたまま決まり悪そうに小さく咳払いして、桐島に控えめな横目をよこした。

177:嗚呼、小市民  3/6
11/04/08 20:51:32.12 QHlwNr5s0
「いや、ほら……。おまえ阪東とさ……付き合ってんじゃねーの……?」
「ああ、そーゆーことな」

 桐島はかちかちと点滅する緑の矢印を眺めながら「イケるけど?」と、なげやりにあくびする。
返す言葉に詰まっている奈良岡に苦笑まじりに口元を歪めて「むしろ女の方が全然いい」と、付け足した。

「……ケンカしたとか?」
「してねー日がねーよ」
「だよな」
「大体阪東相手にソープがあてつけになるかよ」
「だよな」
「っつーか、おまえが言ったんだろ?」
「何を」
「百万あったら何するか」
「……?」
「覚えてねーだろ」

 怪訝そうに眉根を寄せて顔を向ける奈良岡に「バーカ」と、目を細め窓の外へ首を巡らせた。
窓外の景色はいつの間にかけばけばしい看板の群れから閑静な住宅地に変わっている。
奈良岡が不服そうに身を起こし口を開こうとしたところで、タクシーは止まった。

「おまえ自分とこまで乗ってけよ」

「釣いらねーから」と運転手に一万円札を押し付ける。
一緒に降りようとする奈良岡を残してドアを閉め、ガラスの向こうの何か言いたげな顔に手を振った。
車が生ぬるい排ガスの尾を引いて角の向こうに消えると、桐島は深々と溜息をもらした。
吐いた息が白く濁って渦を巻く。

178:嗚呼、小市民  4/6
11/04/08 20:52:21.06 QHlwNr5s0
『新宿で一番イケてる女を買う』
『タクシーで釣を受け取らない』

 煙草に火を点け二、三度吹かして首を振る。
一年も前に酒に酔って交わした他愛もない馬鹿話だ。引きずる方がどうかしている。
噛みしめたフィルターを犬歯が突き破る。桐島はひしゃげた吸殻を足元に吐き捨ててポケットに両手を押し込んだ。
立ち止まって見上げる目の前のマンションがいつもの倍もそびえて見える。
去年の今頃こたつ布団をかぶっていたのは二階建ての木造アパートだ。
打ちっぱなしのコンクリートをなぞるように五階の一部屋に視線を這わせた。
分厚いカーテンの赤が室内の照明で鈍く浮き上がっている。
桐島は小さく鼻をすすり上げると、エントランスに続くオートロックのガラスドアを蹴った。ポケットの中で手探りで携帯電話をなぞる。
ボタンひとつで繋がるように登録してある番号だ。

「阪東ーーっっ!!!」

呼び出しを押して相手が出る前に窓に向かって大声で叫んだ。

『馬鹿か、テメェは。インターホンあんだろ』
「使い方わかんねー」
『次やりやがったら前歯折んぞ』
「じゃあ鍵くれよ」
『……』

 電話が繋がるのと同時に施錠を解かれたドアの奥に滑り込む。
エレベーターの壁にもたれてへへ、と笑ってやるとぶっつりと電波が切れた。
通話終了の画面表示にひとりで肩をすくめる間に五階のランプが点灯して音もなくドアが開く。
角部屋のノブを引くと玄関の鍵は開いていた。
もうもうと煙のこもったリビングに控えめな音量で気だるそうなピンクフロイドが流れている。
ソファの端で雑誌をめくっていた阪東は黙ったままくわえ煙草の顔を上げると
眉間にひときわ深い縦皴を刻んで目を細め、尻ポケットから出した鍵を桐島に投げつけた。

179:嗚呼、小市民  5/6
11/04/08 20:52:55.21 QHlwNr5s0
「叫んでんじゃねーよ。キメてんのか、テメー」

 桐島は「さあな」と首をすくめて鍵を拾うと、乱雑にコートを脱ぎ捨てた。阪東の隣に腰を下ろして煙草をくわえる。
サイドテーブルのライターに手を伸ばしながら横目に一瞥する飲みさしのバーボンは量販の大衆銘柄だ。

「安い酒飲んでんなよ」
「うるせぇ。たまには自分とこ帰れ」
「っつーか、何でおまえだけ別のマンションなんだよ」
「知るかよ」

桐島は大袈裟にソファにもたれて天井を仰ぎ煙を吐いた。

「飯は?」
「食ってねー」
「おまえまた痩せただろ」
「知るかよ。つーか、どこ行ってたんだよ」
「ツネと新宿。なあ、鍵マジでもらうぜ?」
「好きにしろよ」

 顔も上げずページをめくる阪東を意外そうに眺めてから、桐島は「じゃあ遠慮なく」と、二本の鍵をキーチェーンに通した。

「明日も仕事か……」

 新しい鍵を目の前で二、三度揺らし溜息のように呟いた。
体も頭もひどく重たい。ずるずると崩れるように阪東の薄い体に身をもたれる。しみついた煙草の匂いがきつく鼻の奥を突く。

「帰って寝ろよ」
「動きたくねー……」

180:嗚呼、小市民  6/6
11/04/08 20:55:49.55 QHlwNr5s0
 何かに吸い込まれていく感覚に任せて目を閉じ、女の体の中で爆ぜた瞬間を反芻する。
肉体を確実に満たすだけの快感をともなって走る悪寒に似た小さな痙攣。
財布の中の使うあてもない札と頂上を知らないロックンロールミュージック。
転石苔生さず、か。一体どこに向かって転げ落ちているのだろう。

「悪ィ、阪東……。おれ全然ロックじゃねーよ」
「あ?何言ってんだ」
「前のアパート戻りてー……」

 阪東の溜息が額にかかる。

「だせーツラしてんじゃねーよ」

 阪東はぐしゃぐしゃとぞんざいに桐島の頭を掻き回して、灰皿に煙草を押し付けた。
頭の下に阪東の肋骨がこすれるかすかな感触が心地いい。

「阪東」
「あ?」
「やらせろ」
「好きにしろよ」

「じゃあ遠慮なく」と、腰に手を回すと阪東は面倒臭そうに雑誌を床に放った。
一段と筋っぽくなった細い首に顔を埋めて「殴んなよ?」と念を押してから阪東の顔を見下ろす。

「おれさっきソープでやってきた」

 怪訝そうに細めていた阪東の目が危なっかしい色に据わっていく。
変わらないのはこの男のキレやすさだけだ。
「やっぱ無理か」と、観念して奥歯を噛みしめながら、桐島はひどく満ち足りた顔で笑った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

181:風と木の名無しさん
11/04/09 02:44:48.24 +u6lwRRa0
>>175
……もう閉鎖されたサイト様に掲載されていたSSで同じものを読んだ覚えがあるのですが、
管理人様ですか?

182:風と木の名無しさん
11/04/09 03:50:27.27 mI+HUNZF0
>>149
久々に来てT/N/Pに出会えるとは! 遅レス失礼
第二弾ということは…と前スレも漁ってUKUK
やっぱり萌えって元気をくれるねありがとん

183:気の迷い
11/04/10 10:51:51.42 895qLjlrO
62巻19の続きみたいなもの
年下と年上

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ヒサビサノ ジサクジエンガ オオクリシマース!

184:気の迷い1/3
11/04/10 10:54:43.31 895qLjlrO
テレビ画面には女性アイドルが可愛い笑顔を振りまき、リズムよくダンスを踊りながら歌っている。
ソファで隣に座る小柄なチ一ムメイトは、にっこりと頬を緩ませながら彼女たちを眺めていた。
少し温くなったビールを飲み干し、缶に爪を立てて音を鳴らすと、彼は「ん?」と振り向いた。
「誰が好きなん」
「さっきも言ったじゃん」
「覚えられへんわ」
ため息をついて、背もたれに体重をかけた。彼は空いた缶を取って立ち上がる。
「つまんないんだったら帰ったら?」
テーブルに残されたビール缶を見て気が付いた。まだ彼は一本も空けていない。自分ばかり飲んでいる。
「ねえ、飲まないの」
「俺は明日もあるから」
事も無げに言う。だが内心は悔しいに違いない。
彼は不振の為に、降格を受けた。明日からは別行動になる。
わかって、自宅に押し掛けたのだった。
「あー、そうだったね。寂しくなるねえ」
「ウソ。寂しくないだろ」
「あはは。そんなことないですよー」
「どーだか。まだビールあるけど飲むか?」
「あのさ、飲まないのはそれだけじゃないでしょ」
返事がない。振り向くと、彼は冷蔵庫を開けながらこちらを見て固まっていた。
「え」
「前のこと、思い出すからじゃないですか」
彼は頬をひきつらせながら、目を逸らせた。
「・・・何のこと、覚えてないよ」
ぱたん、と冷蔵庫の扉を閉める。
「ふーん」
画面を見ると、アイドルは衣装を替えて、色とりどりの照明を浴びながら踊っている。
彼は再び隣に座るが、先ほどよりも僅かに間を開けていた。

185:気の迷い2/3
11/04/10 10:59:34.94 895qLjlrO
「ねえ」
顔を近付けると、彼は「わあっ」と声を上げて背を逸らして後ろに倒れ込む。
そのまま覆いかぶさって、彼を見下ろした。
「ホントに忘れた?これから思い出す?」
「ダメだって!俺明日あるんだし、それに、こういうことは良くないって!」
逃れようとして胸を押す手を捕まえた。指先を舐めてみる。
「うっ・・・わ」
彼の怯える表情を見て、つい笑ってしまった。
「誰にも言ってませんし、言いませんよ」
聞きなれたメロディが聞こえた。アイドルの一番のヒットチャートだ。
「テレビ消して・・・」
「見られてるわけじゃないのに?」
「次、見るたびに、今日の事を思いだす・・・」
彼の手首からは力が抜けていた。どうやら抵抗は諦めたようだった。
癖のある髪を撫でると、潤んだ視線と合った。
普段見ることのできない表情。自分だけが見ることのできる表情だ。
そっと唇をついばんだ。音を立てて何度も啄んで、舌を絡める。
息をついて離すと、彼は頬を紅潮させながら、今にも泣きそうな表情で見つめた。
「何で俺なんだよ・・・」
「・・・」
返答に困った。
他の人となら、同じことをしただろうか。たまたま彼だったのだろうか。
いや、そうじゃない。
じゃあ、何故。
「他の子だったら、可哀そうじゃないですか。本気じゃないんだし」
あれ、何か違う。正しい言葉だと思って言っているのに、何かが噛み合っていない。
「・・・もう良いじゃないですか、そんなこと」
誤魔化すように、服に手を差し入れて肌に指先を滑らせた。彼は目を閉じて声を上げないように唇を噛む。
その上から、そっと唇を重ねた。

186:気の迷い3/3
11/04/10 11:01:43.10 895qLjlrO


*****

目が覚めるとベットの上だった。
カチカチと時計の音が耳につく。頭を動かして窓を見るとまだ夜は明けていなかった。

傍らには彼が眠っている。
あの後、長い時間触れ合ったが、結局最後まではしなかった。
次の日があることに、気遣ってくれたのだろうか。
する前には「他の子だったら、可哀そう」なんて言葉を吐いておいて、酷いんだか優しいんだかわからない。
近付いて顔を覗き込むと、彼の腕が伸びて引き寄せられる。
ぎゅっと抱きしめられて、一瞬身体に緊張が走るも、それ以上は何もしない様子だったのでホッとした。
規則的で、安らかな吐息に包まれる。

気の迷い、なのだろう。とはいえ。
彼の腕の中は、居心地が良かった。

187:気の迷い(終)
11/04/10 11:03:14.25 895qLjlrO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!力イマクwktk!

188:風と木の名無しさん
11/04/10 18:49:39.94 8eow4cLF0
>>183
多分あの人とあの人かと勝手に妄想して萌えました
紆余曲折あったけどいよいよ始まりますね

189:風と木の名無しさん
11/04/11 16:34:25.20 YS/muSai0
>>161
亀だけどGJ!
こんなワイルドなヒカル好きだめちゃくちゃ好みだ(*´Д`)

190:Our world would continue eternally. 1/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:43:12.26 zdb5xohkO
半生注意。映画「緑蜂」より社長×助手。
>>101の後日の話。エロありです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


久々にスリリングな夜だった。
目を付けていた新興の犯罪組織が、麻薬取引を行うという情報を仕入れた。そいつをブッ潰すために俺と相棒は、ブラシク・ビューティーを駆って真夜中の街へ繰り出した。
麻薬と金を横取りする振りをして取引の邪魔をし、居合わせたヤクザな連中を二人してことごとくぶちのめした。
秘書が通報していたおかげで、いい頃合いに警察が駆け付けた。倒れていた組織の奴らは逮捕され、麻薬も押収された。
だが案の定俺達も警察に追われ、ちょっとばかり派手なカーチェイスになっちまった。
何発か車に銃弾を喰らったが、相棒の巧みなハンドル捌きと、ベン・ハ_を始めとする搭載武器を駆使したことで、なんとか逃げおおせた。
俺達に怪我はなく、警察にも車の被害しか無かった筈だ。
屋敷に無事帰りついた俺達は、高ぶった気を落ち着けるため相棒のラボでビールを空け乾杯し、計画の成功をささやかに祝った。
しばらく飲んでから、相棒はブラシク・ビューティーの故障箇所の点検を始めた。俺は体に付いた埃とベタつく汗を落とすために、自室に連なる浴室へ向かった。

シャワーでさっぱりした俺は、パジャマの下だけを履いてガウンを羽織り、部屋のベッドに腰を落ち着けた。
興奮は治まったが、気分はまだ高揚していた。いつかの赤い服のマフィア達とのバトルに比べたらかわいいものだが、久しぶりの命のやり取りはやっぱり刺激的だった。
抑え切れず小さな雄叫びを上げて、ベッドに寝転がった。まだとても眠れそうにはないので、相棒を誘ってもう一杯やろうと考えた。

そしたら、何となく思い出しちまった。このベッドで、あいつと過ごした夜のことを。
何度もキスして抱き合い、お互いの体温をかつてないほど近くに感じた。
ちょっとしたハプニングのせいで深い情事には至らず、その夜は二人並んで床に着き穏やかに眠った。
その後、相棒の態度はいつも通りで何も変わらなかった。俺もあの夜のことには触れず、相変わらず軽口を叩いてはたまに奴にツッコまれたりして、ごく普通の日々を送っていた。

191:Our world would continue eternally. 2/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:48:31.18 zdb5xohkO
そして今夜だ。
俺は急に、相棒に触れたくてたまらなくなった。あいつのしっとりと濡れた唇や、みずみずしい弾力を持った肌の手触りを思い返すと、居ても立ってもいられなかった。
俺はまた酔ってるのか?いや構うもんか、いつだって俺は、自分がしたいようにするだけだ。
決心してベッドから起き上がり、相棒がいるラボに戻るために足を踏み出した。

ツナギに着替えて油まみれで修理に励んでいた相棒を、飲み直そうと掻き口説いて部屋に連れ込んだ。汗と油が臭うからと、俺は奴を浴室に追い立てた。
素直に従いシャワーを使ってるだろう相棒に、ソファで酒を飲みながら少しうしろめたさを感じた。
こんなのは卑怯だ、そりゃよくわかってる。だが小ズルい手を使ってでも、俺は相棒を逃がしたくなかった。果たしてあいつは怒るだろうか。これは言わば、一つの賭けだ。
腹を決めた俺は立ち上がり、浴室のドアに向かった。

「力ト-、いいか?話があるんだ」
「……ブリシト、ちょっと待って、もう出るから」
ノックをして風呂場のドアを薄めに開け、相棒に声を掛けた。返事の後に、シャワーの音が止まった。
待てと言われたが、俺は構わず中に踏み込んだ。湯気で煙る空間の中に、裸の相棒が立っていた。ずかずかと無遠慮に入って来た俺に、奴はちょっと慌てる様子を見せた。
「おいブリシト!今出るって言ったろ。そんなに急ぐ用事、なのか……」
諌める口調と共に振り返った相棒の濡れた体を、手に持っていたバスタオルを広げて包んだ。体の正面から背中に回したバスタオルごと、俺は相棒を抱きしめた。
抱いた瞬間にぴくりと震えたが、相棒は手向かいもせずおとなしかった。巻き付いたタオルに、腕を戒められてるからかもしれない。だが相棒が本気になればそのくらいものともせずに、俺の腕から逃げ出せる筈だ。
今こいつはどういう気持ちでいるんだろうか、と考えながら抱きしめたままでいると、相棒は静かに口を開いた。
「……ブリシト、何してる」
「何って力ト-、お前を抱いてる」
「それはわかってる。なんで僕を、抱いたりするのかって訊いてるんだ」
「嫌か?嫌なら殴れよ」
「殴る前に理由を聞きたい。もしあるなら、だけど」

192:Our world would continue eternally. 3/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:51:18.69 zdb5xohkO
肩に乗せていた顔を上げて、嫌だとは言わない相棒を見つめた。湿って貼り付いた前髪の間から覗く黒い目は、怒りも嫌悪も宿さずに俺をただ見返していた。
俺は少し腕の力を緩めて、黒い髪を指で梳いた。
「力ト-、今夜あらためて思ったんだが……俺達って、ボニーとクライドみたいだよな」
「その映画、見てない」
「そうか。まあ要するに、いつ蜂の巣にされてもおかしくないってことだ」
「うん。なるべく避けたいけどね」
「そうだな……だからつまり、そうなっちまう前に俺は、自分に正直になることにしたんだ。わかるか?」
相棒はよくわからない、という目をした。
「力ト-、お前は覚えてないと言うだろうけど……この前お前が酔い潰れた夜に、俺は」
「ブリシト、それは」
「まあ聞け。あの夜お前に触れてわかったんだが、どうやら俺は、お前にションディー以上の気持ちを持ってる。それで思った。
俺達に明日なんてもんは、あって無きが如しだろ。俺は死ぬ時に絶対後悔なんかしたくないから、自分のしたいことは、絶対……」
「ちょっと待て、ブリシト。君の話は回りくどくて、たまに訳がわからなくなる」
さらに説明しかけた俺の言葉を遮って、相棒は冷静に指摘した。
「……今俺、回りくどかった?」
奴は頷き、もっと簡単に、と告げた。深呼吸をした俺は、相棒を抱き直して真剣にその目を見つめた。

「よし、じゃあ簡単に。力ト-、俺はお前が欲しい」
「ブリシト、欲しいっていうのは……」
答える代わりに、顔を寄せてそっと口づけた。相棒はまた体を震わせ、手は俺のガウンの裾を握った。お互い目をつぶり、しばらく唇を合わせてから離した。俺は相棒の顎に手を添え、赤い唇を親指でなぞった。
「俺を殴らないんだな、力ト-」
「……そんなことしないよ。だって、僕も」
君が欲しいから、と消え入りそうな声で答えうつむいた相棒を、俺は笑って強く抱きしめた。

盛り上がった勢いで、タオルに包んだ相棒を横抱きに抱え上げた。恥ずかしいからやめろと抗議されたが、暴れると落としちまうぞ、と軽く脅かしたらおとなしくなった。
それでなくとも奴を運ぶ俺の足取りは、ヨタヨタと頼りないものだったから、しぶしぶ承知したんだろう。

193:Our world would continue eternally. 4/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:55:19.20 zdb5xohkO
浴室を出て短い距離をなんとか歩き、なるべくそっと相棒の体をベッドに下ろした。ベッドを横切るようにして、奴は仰向けに寝そべった。
「ブリシト、腕と足が震えてたぞ。たったあれだけの距離なのに、情けないな」
「そりゃ力ト-、お前の体が意外に重かったからだ」
「僕は普通だよ。それに僕なら、君くらい楽に抱えて歩ける。君は筋力が足りないんだ、鍛えてやろうか」
「ああ、またの機会にな。今はけっこうだ」
体から剥がしたタオルで髪を拭いてやりながら、相棒のからかいをいなした。今やこいつは、一糸纏わぬ素っ裸だ。布団に膝をついた俺は、眼下に晒された相棒の引き締まった体をチラッと見た。
にわかにバクついてきた心臓の音を感じ、ごまかすように相棒に覆い被さってキスをした。
頬を両手で覆ってついばみ、それから段々と濃厚なキスに変えた。唇を舐めていた舌を中に差し入れ絡めると、相棒はおずおずとそれに応えた。

甘く深く口づけながら、俺は手を奴の肌に這わせた。この間は触れなかった小ぶりな乳首を撫で上げると、横たわった体がちょっとだけ跳ねた。
舌を離して、俺は首筋に顔を埋めた。同じ物を使った筈なのに、相棒の体からは俺よりも強いボディソープの香りがした。こいつ自身の体臭が薄いせいだと納得し、首筋から顎下を唇と舌でなぞりくすぐった。
「力ト-、お前胸が感じるんだな」
「バカ、そんなこといちいち言うな……あっ」
指で強く摘んでやると、憎まれ口を叩いていた相棒は小さな高い声を出した。赤くなり押し黙った奴に俺はまたキスして、両手を使い胸をいじっては撫でた。
相棒は体をわななかせ、上げた腕を俺の背中に回して縋り付いた。

口づけの箇所を唇から喉、胸元へと移して行き、乳首に吸い付いて口に含むと、相棒はより力を込めて俺を抱きしめた。
キスしては甘く噛んでを両方に繰り返し、左手は開かせた脚を膝から撫で上げた。じわじわと内股をなぞり、そこには何もしていないのに半ば立ち上っている中心に触れようとした。
自分以外の男特有のモノに触るなんて初めてだが、それに関しての嫌悪感はなかった。むしろ優しく丁寧に扱ってやらなければ、とちょっと緊張していた。ふいに相棒が、俺のガウンを引っ張り待ったをかけた。
「……ブリシト、待って!ちょっと、待ってくれ」
「なんだよもう!今日は吐くほど酔ってないだろ、力ト-」

194:Our world would continue eternally. 5/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/11 23:59:11.05 zdb5xohkO
いいところまで来て水を差され、俺は苛々として叫び顔を上げた。相棒は乱した息を整えながら、また口を開いた。
「吐かないよ……でも、聞いてくれブリシト、君はズルい」
「何がズルいんだ。お前をひん剥く手間を省くために、シャワーを浴びさせたことがか?」
「……それもだけど、今は違う。ズルいのは、君が服を脱いでないことだ!僕だけ裸で、まるでバカみたいじゃないか」
真っ赤な顔で必死に訴える相棒は、眉を下げてちょっと涙目になっていた。嫌がらせじゃなく単に脱ぐのを忘れてただけの俺は、納得して一旦相棒から手を放した。

「わかったよ力ト-、そんなことでスネるな。今脱いでやるから」
「別にスネてない。なんでそう、上から目線なんだ……うわっ」
肩からガウンを滑り落とした俺の胸を見て、奴は小さく声を上げた。
「なんだよ、失礼だな。俺の裸なんて何度も見てるだろ」
「……ゴメン、間近で見ると凄かったから、つい」
「お前らがツルツル過ぎなんだ。欧米人なら、このくらい普通だぞ」
「わかってる、怒るなよ。君の髪の毛と同じで、クルクルしてるな」
「こら、くすぐったいだろ力ト-」
相棒は笑って手を伸ばし、とぐろを巻く俺の胸毛を指でなぞった。
俺は手を掴んで悪戯を止め、上から重なって相棒を抱きすくめた。裸の胸を合わせて擦り付けると、今度は奴の方がくすぐったがり悲鳴を上げた。
「毛がくすぐったいよ、ブリシト!」
「じきに慣れるさ。あったかいし、なかなかいいもんだろ」
「今は熱苦しいよ、風呂上がりだし……っ!」
際限のない軽口を遮るために、俺は相棒の中心をやんわりと握った。奴は刺激に少しのけ反り、息を飲んで目を閉じた。
手の中で優しくこね回してやると、緩やかに首を振って感じ入っているようだった。
俺は耳の裏側にキスして、耳元に唇を寄せ低い声で囁いた。
「力ト-、気持ちいいか?もっと良くしてやるからな」
「だから、訊くなって、バカ……」
乱れる呼吸の合間に小声で悪態をつく相棒が、やけにかわいらしく見えた。
もっと快楽を与えたいと心から思った俺は、相棒から体を離して起こし、サイドボードの引き出しを開けた。いつも使っている潤滑用のジェルを取り出すと、利き手の左手に素早く塗りたくった。

195:Our world would continue eternally. 6/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:02:29.15 zdb5xohkO
「……ブリシト、どうしたんだ?」
「中断してすまん、力ト-。可愛がってやるから、力を抜いてろよ」
「え、何を……あ、バカ!何する、ブリシト」
ジェルにまみれた中指を相棒の後ろに宛てがった。驚きもがく体に体を重ねて押さえ、ゆっくりと指を差し入れた。
「……やだ!やだよブリシト、いきなりこんな……」
「力ト-、大丈夫だ。すぐ気持ち良くなるから、ちょっと我慢してくれ」
「嘘だ、こんなのおかしいよ、ブリシト……!」
「シーッ、静かに。俺を信じて任せろ、力ト-」
焦りうろたえる相棒にキスをしてなだめ、俺は指をうごめかせた。慎重に抜き差しを繰り返すと、強張っていた体から段々力が抜けて行き、俺の肩を掴んでいた両手は所在なげに背中を這い回った。

「ブリシト、ブリシト……」
「力ト-、そうだ。俺の指に集中しろ。何も怖くないぞ、お前に触ってるのは俺なんだからな」
「う、うん……ブリシト……はあっ」
切ない吐息の合間に慎ましやかに漏れる声はひたすら甘く、名前を呼ばれて俺は俄然興奮した。今まで伊達に色事を重ねて来た訳じゃない、ここで本領発揮しないでどうする、と妙に張り切った気分になった。
指を一本増やすと、相棒はまたのけ反ってかすかに悲鳴を上げた。震える中心に再び触れてやりつつ、そろそろと指を動かした。指はすっかり埋め込まれ、熱く狭い中を俺は念入りに擦った。

気付くと相棒の手は俺から離れ、側にあったタオルを掴んで顔に押し当てていた。顔が見えず、喘ぐ声もくぐもってよく聞こえないので、俺は手を伸ばしてタオルを奪おうとした。
「力ト-、しがみ付くならそんな物じゃなく俺にしろ。なんで隠れるんだ、恥ずかしがるな」
「ダメ、やめてくれブリシト!頼むからほっといて……」
「バカ言え、顔が見えなきゃお前が気持ちいいかどうか、わかんないだろ。ほら、タオル放せ」
「ダメだったら!見ないでくれよ……ブリシト!」
無理矢理タオルを引っぺがすと、現れた赤い顔は涙で濡れていた。俺はびっくりしてちょっと固まったが、すぐに気を取り直して相棒に確認した。

「力ト-、泣いてるのは俺が嫌だからか?それとも……」
「……じゃ、ない」
「うん?聞こえないぞ力ト-」
「嫌じゃない、ブリシト。その逆だから、余計に恥ずかしいんだ……察しろ」

196:Our world would continue eternally. 7/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:05:17.72 LhcLpYOSO
素直に告げた後、いたたまれない様子で目を閉じ顔を背けた相棒に、俺はたまらない愛しさを覚えた。そして、ちょっと突っ走り過ぎたなと反省した。
俺は相棒からそっと指を抜き、ティッシュで拭った。相棒の涙も拭いてから、ぐったりした上半身を支えて起こした。頭を俺の肩にもたれかけさせて、火照る体を撫でてやった。
「力ト-、お前あんまり、こういうことに慣れてないんだな」
「……そんなことない、君よりは淡泊なだけだ」
意地を張る相棒の額にキスを何度か落とすと、奴はお返しとばかりに俺の首筋に口づけた。
二人でくっついたまま座り、しばらく沈黙していた。さすがに落ち着いて涙も引いた相棒が、ふいに口を開いた。

「ブリシト、訊くけど……今夜はその、最後まで……するのか?」
「最後までって、つまりこれか?そりゃまあ、出来れば……いってえな、バカ!何するんだ」
下品なジェスチャーをして見せると、眉をしかめて俺の胸毛を一本むしり取った。
痛む胸を摩りながら、俺はふと思いついた質問を相棒に向けた。
「そういや確かめてなかったけど、お前そっちでいいのか」
「何、そっちって」
「だからつまり、俺に愛されるというか、突っ込まれる側……だから痛いって!それやめろ力ト-、ぶっ殺すぞ!」
あまりの痛さにややキレて叫ぶと、相棒は抜いた毛を息で吹き飛ばし、上目使いに俺を睨んだ。
「今さらそれを訊くのか、君は。ここまでしといて」
「うっかり訊くのを忘れてたからな、一応確認だ」
「じゃあ僕が嫌だって言ったら、君は僕に抱かれてくれるのか?」
「うーん、あんまりぞっとしないが、お前がそうしたいならそれでもいい……いや、やっぱダメだな!お前を抱く方がいい!」
ちょっとカッコつけてはみたものの、あっという間に前言を撤回した。相棒の滑らかな肌に触れるのは心地良いし、与えられる限りの快楽を惜しみ無く与えてやりたいと思うからだ。
俺から施される愛撫に身悶えて、涙まで流したこいつの姿を見た後じゃ、ますますそう思っちまうのは仕方のないことだ。
相棒は黙って顔を見ていたが、体ごと俺の正面に向き直り、伏せた顔を肩に押し付けた。

「で、お前はどうなんだ?力ト-」
「……君が好きなようにすればいい。君なら僕は、なんでもいい」
ごく小さく漏らされた囁きを耳にして、俺の心臓はたちまちときめいて高鳴った。

197:Our world would continue eternally. 8/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:08:06.68 LhcLpYOSO
なんていう殺し文句を吐きやがる。一体こいつは、どんな表情でそれを言ったんだ。
肩を掴んで顔を上げさせようとしたが相棒は抵抗し、けっこうな強さで俺の肩に噛み付いて来た。ぶっ殺すぞこの野郎!とまた叫んだ俺の声を聞いて、やっと顔を上げた相棒は実に楽しそうに笑っていた。

好きにしろと言ったものの、ことを成し遂げる覚悟が相棒にまだ出来てないようなので、今夜は無理をせず最後まで行かないことに決めた。
その代わりにお互いのモノを触って一緒に気持ち良くなろうと提案すると、やや固い顔付きで頷いた。緊張を解してやるために、俺は肩を抱いてキスをした。
執拗に舌を絡めて唾液を交わすと、相棒はぼうっとなって顔を上気させた。
腰を撫でていた左手を前に回して、相棒の中心に触れた。口づけながら、俺はそこを優しく擦り上げた。その度に相棒は、喉の奥から甘い呻き声を零した。

「なあ力ト-、俺のも……してくれ」
唇を解いて相棒の右手を握り、股間に導いた。誘われるままにパジャマのズボンの上から、はち切れんばかりに猛った俺の中心に触れると、奴は驚いたような声を出した。
「ロ矣呀!稍等、大……」
「……今『大きい』って言ったんだろ、力ト-」
「……知らない」
相棒はそらとぼけたが、叫び声のニュアンスから俺は間違いないと感じた。自慢じゃないが、俺のは相当デカいんだ。

「そうか、まあいい。力ト-、触ってくれよ。お前の手で感じたいんだ」
微笑んでねだると相棒は俺の頬にキスして、同時にズボンを引き下ろし、飛び出した中心にためらいなく直接触れた。
俺より細い指が俺のモノに絡まり刺激を与えてくれることに、大いに興奮し悦びを感じた。
空いた右手を相棒の後頭部に回して引き寄せ、噛み付くように唇を奪った。俺達は舌を吸い合いむさぼって、手はそそり立つお互いのモノをしっかりと握り扱いていじった。

「ブリシト……ブリシト、もう……」
「力ト-、いいぞ。俺も限界だ……」
近付いて来た絶頂を感じ、手の動きはさらに激しくなった。
小さな高い声で俺の名前を呼び、まず相棒がイッた。すぐ後に俺も唸り声を上げて果てた。息を整えながら、お互いの手の中に放った物をティッシュで拭き取り、俺達は抱き合った。

198:Our world would continue eternally. 9/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:11:57.64 LhcLpYOSO
なんだかやたら照れ臭くて、何を言っていいのかわからないので、とりあえず俺は相棒の顔にキスの雨を降らせまくった。相棒は静かに笑って、俺の背中を撫でていた。


……誰かが俺の頭を優しく撫でている。ああ、これはあいつの手だ。
シャワーを浴びに行った相棒をベッドで待つ間に、俺はうたた寝しちまったようだ。
ぼんやりと意識はあるものの体が動かないので、目を開けず触られるままにしていると、相棒の穏やかな声が聞こえて来た。
「ブリシト……眠った?」
起きてるよ、と心の中で返事すると、髪を梳いていた手を俺の頬に当てて、相棒はまた囁いた。

「なあ、ブリシト。僕達はいつ殺されても不思議じゃないって、君は言ったね」
そんなこと言ったか?……ああ、お前を風呂場で抱きしめた時か。ボニーとクライドの話だ。
「確かに、僕達の夜の世界は危険に満ちてる。何があってもおかしくない……でも、僕は」
相棒は言葉を止め、ちょっと考えてからまた口を開いた。
「僕が、そうはさせない。居場所が無かった僕の手を引いて、新しい世界に連れ出してくれたのは君だ、ブリシト。万一の時二人一緒に死ぬなら、それはそれで構わない。でももし、もしも君だけが消えたら……」
いつになく真剣な口調に驚いたが、俺は心を落ち着けて相棒の言葉を待った。

「君を失えば、同時に僕の世界も終わる。だから、絶対にそうはさせない」
僕が君を守るよ、ブリシト。
口には出さないが、そう言っているのだと俺にはわかった。
なんてこった。お前の世界は、俺が死んだらそれで終わるって言うのか。これまたなんて殺し文句だ。
俺はかつて、誰かにここまで必要とされたことがあっただろうか。いつも俺を気にかけてくれていた親父とは、分かり合えないままで終わってしまった。
相棒と出会ったことで、新世界へ歩き出せたのは俺だって同じだ。
そうだ、俺もだ。もしもこいつを失えば、俺の足はきっともう動かない。

相棒は俺の髪にそっと口づけると、ベッドに入って俺の後ろに横たわった。背中に額を付けて眠りに入ろうとする相棒を、抱きしめてやりたい衝動に駆られた。だがひそやかに告白をした奴の気持ちを思うと、それは出来なかった。
相棒の寝息を背中に感じ、溢れ出す様々な感情に心を乱されて、ちょっと泣きたくなっていた。それから俺は、なかなか寝付けなかった。

199:Our world would continue eternally. 10/10 ◆Rv.F4X8MbU
11/04/12 00:17:26.03 LhcLpYOSO
コーヒーの香り。ぼんやりと覚醒した意識の中で、まずそれを感じた。寝ぼけまなこで匂いの方向に目をやると、サイドボードの上に置かれたカプチーノと、花瓶に活けた一輪の赤いバラが視界に入った。
上体を起こしてカップを手に取り、香りを楽しんでから一口啜った。あいつの入れたコーヒーは、やっぱり格別だ。
顔を上げて姿を探すと、すでに身なりを整えた相棒はカップを片手に窓辺に立ち、カーテンの隙間から外を眺めていた。
俺はカップを置いて立ち上がり、相棒が佇む窓辺に近付いた。
「おはよう、ブリシト」
「ああ、おはよう力ト-」
振り返らず挨拶をした奴の後ろに俺は体を寄せ、襟足が綺麗に揃えられたうなじに軽くキスをした。相棒は少し肩をすくめ、肩越しに俺を見て苦笑した。
「もう朝だよ、ブリシト」
「ああ、わかってる。だが朝が始まる前に、言っときたいことがあるんだ」
首を傾げた相棒の肩と腰に背後から腕を回し、力を込めて抱きしめた。髪に顔を埋めて、俺は相棒に語りかけた。

「力ト-……もしお前だけが死んだとしたら、俺の世界はそこで終わり、ジ・エンドだ」
「……ブリシト、君、夕べ」
聞いていたのか、と続くだろう相棒の言葉を遮って俺はさらに言った。
「だから、お前を俺が守ってやる。いつでも誰からも必ず守る。だから安心しろ力ト-、俺達の世界は終わらない。絶対、永遠に」
耳元に口を寄せて小さく、だが力強く囁いた。腕の中の体が、少し奮えているのがわかった。相棒は空いた方の手で、肩を包んだ俺の腕に触れた。

「……そりゃどうも。君の気持ちだけは、受け取っておくよ」
「おい、それどういう意味だ、力ト-」
さあね、とクスクス笑う相棒の首を、羽交い締めにして俺も笑った。


何かが変わったようで、実は何も変わらない。俺達の夜の秘密が一つ増えた、それだけのことだ。

朝が来て、そして夜がまたやって来る。俺達の二つの世界は、これからも続いて行く。
きっとずっと、続いて行くんだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
あの映画見てないので、ぼんやりしたイメージで引用してます。世界よ続け、いつまでも。

200:風と木の名無しさん
11/04/12 00:32:37.61 J04nD2140
>>190
2人の後日談があればなあと思ってたらキタ―!!
ベッドだと社長がいつもより格好良く見えるw
社長も助手もお互いが死ぬほど大事なんだと凄く伝わってきました。
ありがとうございました。

201:風と木の名無しさん
11/04/12 08:14:05.92 P38WnhT6O
>>190
ヤッターーー
すごく萌えながら読ませてんだけど途中泣いてしまった

すごくいい!
ありがとうございました!

202:初めての夜 1/9
11/04/12 17:37:21.85 twAWcuNj0
ヒカアキです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

北斗杯授賞式のあと、ヒカルたち三人は荷物をまとめ、ロビーに集合した。
「もうすぐ新幹線の時間やから、ほなな」
社がさばさばした様子で手を上げた。
「ああ」
アキラが頷いて答えた。
ヒカルは無言で社の背中を見送った。
「進藤、キミはどうする?」
質問を理解するのにだいぶ時間がかかった。
「……あんま、うち帰りたくねえな」
もしかしたら、母が自分の対局を見に来ていたかもしれない。
そう考えると、余計に母と顔を合わせるのが億劫に感じられた。
「碁会所で検討するか?」
「北島さんがいるし」
「なら、ボクのうちで検討しよう」
「え、塔矢先生いるんだろ。会場にも来てたって。さっき中国の団長が言ってた」
「だったら、父にも検討に加わってもらえばいいじゃないか」
「そりゃ、嬉しいけどさ。勝ってたらな」
永夏には半目差で負けた。
半目、あと半目が足りなかった。
「じゃあ、決まりだな」
アキラはさっさと歩き出し、すぐに足を止めた。
「行こう、進藤」
「わかったよ」
ヒカルはアキラのあとに続いて自動ドアを潜った。

塔矢邸は無人だった。
ヒカルとアキラはスーツの上着を脱ぎ、自分達だけで検討を始めることにした。
だが、なかなか誰も帰ってこない。

203:初めての夜 2/9
11/04/12 17:38:50.44 twAWcuNj0
ヒカルは時計を見た。午後七時を過ぎていた。
夕食の時間だと意識したとたん、腹が鳴った。
「店屋物でも取るか?」
アキラが盤面に目を落としたまま尋ねた。
「いいよ、おごってもらってばっかっていうのも悪いし。オレ、ラーメンぐらいなら作れるしさ」
「小麦粉あったかな」
「麺から作れるわけねーだろ!」
「ちょうどいいから休憩にしよう。ボクもお腹が空いた」
ヒカルは台所の戸棚や引き出しを片っ端から開けてみた。
高そうな佃煮や海苔はあったが、インスタント食品の類はなかった。
「お前っていつも何食ってんだよ」
「あ、そばがあった。これじゃだめか?」
アキラがのしのついた木箱を開けた。
「えー、そば? じじくせえ」
そう答えた直後、また腹が鳴った。
「ま、いっか。どうせ、おんなじ材料だし」
「いや、これは十割そばだから材料はまったく違う」
「あーもう、いちいち細けーな。茹でるからちょっとどいてろよ」
「それぐらいボクがやるよ」
「やだよ、なんか時間かかりそうだもん。オレは今すぐ食いたいの」
ヒカルは鍋に水を張り、火にかけた。
そばは十束あった。ヒカルはすべて沸騰した湯にぶち込んだ。
「わかっているのか、一束が一人前だぞ」
「わーってるよ、うっさいな」
アキラは信じられないといった顔でそばつゆを用意した。
ヒカルは茹で上がったそばをざるに盛り、居間のテーブルにどんと置いた。
アキラは遠慮がちに箸でそばを取り、音も立てずにすすった。
ヒカルは限界までつゆにそばを沈め、あまり噛まずに飲み込んだ。
その時、玄関で電話が鳴った。
アキラは箸を置き、慌てて廊下に出て行った。
ヒカルがつゆに七味を振りかけていると、アキラが戻ってきた。
「母からだった。今、台湾にいるらしい」

204:初めての夜 3/9
11/04/12 17:40:22.06 twAWcuNj0
「台湾? なんでまた?」
「気になる棋士がいるそうだ。しばらくは帰って来られないと言っていた」
アキラは淡々とした様子で座布団に座り、箸を取った。
「帰って来たばっかなんじゃねえのかよ。お前もいろいろ大変なんだな」
「まあ、いつものことだしね」
ヒカルは一人分だけ残し、ざるのそばをきれいに平らげた。
行洋が帰って来ないとわかると、なんだか気もゆるむ。
ヒカルは行儀悪くその場に寝転んだ。
「あー、食った食った」
「牛になるぞ、進藤」
「馬鹿じゃねえの、人間は牛になんかなりません」
「驚いたな。キミも常識を知っていたんだね」
ヒカルはがばと起き上がった。
「くっそ、むかついた。こうなったら碁で勝負だ」
「望むところだが、食器を流しに置いてくれ。できれば洗ってくれると助かる」
「洗えばいいんだろ、洗えば」
ヒカルは袖をまくり、台所でわしわしと食器を洗った。
アキラはまだそばをすすっている。
ヒカルは「先、行ってるな」と言い、客間に向かった。
正座して待っていると、ようやくアキラが現れた。
ヒカルは黙ってニギった。ヒカルの先番だ。
結果は半目差でヒカルの勝ちだった。
「よっしゃ」
ヒカルはガッツポーズした。
アキラはじっと盤面を見つめている。
「検討していた時にも感じたが、やはりキミは成長した。倉田さんの言った通りだな」
「え、倉田さん、なんて言ってたの?」
「高永夏との一戦はキミの成長に必要な一戦だと言っていた。キミの成長はわくわくするとも」
「そっか、倉田さんそんなにオレのこと……」
ヒカルの脳裏に永夏との一局がよぎった。
「それなのにオレ、勝てなかった……」
胃に鉛がたまり、地の底まで沈んでいきそうだった。

205:初めての夜 4/9
11/04/12 17:41:39.37 twAWcuNj0
「ボクもだよ、進藤」
「え?」
ヒカルは顔を上げた。
アキラの真摯な瞳とぶつかった。
「ボクもキミの成長にはわくわくさせられる」
ヒカルは何も答えなかった。
「今日の副将戦、ボクは勝った。なぜかわかるか? キミが勝つと信じていたからだ。
ライバルのキミが勝つんだからボクも負けるわけにはいかない。そう思ったんだ」
「なんか、わりいな。ほんとごめん。お前にも倉田さんにもいろいろ期待させたのに、肝心のオレがこんなんで……」
ヒカルはさらに胃が重くなったような気がした。
「だから言っただろう、進藤。わくわくさせられるって。実際、キミは成長した。ボクはとても嬉しい。キミがライバルでよかった」
「塔矢……」
ヒカルの目から勝手に涙が溢れた。
「ごめん、塔矢。ほんとごめん」
ヒカルは大粒の涙をぼろぼろとこぼした。
「来年の北斗杯、日本は一敗も喫しないぞ」
「ああ、そうだな」
ヒカルは涙を拭い、頬を両手で叩いた。
「オレはもっともっと成長するんだ」
「もうこんな時間か」
アキラが時計を見て呟いた。
見れば、針は十時十二分を指している。
「やべ、帰んなきゃ」
「泊まっていったらどうだ?」
立ち上がりかけたヒカルを引き止めるように、アキラが提案した。
「いいのか?」
「道具はあるだろ?」
「ああ。じゃ、ちょっと電話してくる」
ヒカルは母に今日も塔矢家に泊まることを告げた。
受話器の向こうの母はなんだかひどく寂しそうだった。
客間に戻ると、アキラはいなかった。
しばらくして、パジャマ姿のアキラが戻ってきた。

206:初めての夜 5/9
11/04/12 17:42:41.17 twAWcuNj0
「キミもお風呂に入ってくるといい」
「そうだな」
ヒカルはジャージを抱えて風呂場に向かった。
広い浴槽につかっていると、ここ数日昂ぶるばかりだった神経が自然と静まっていった。
ヒカルはため息をついた。
あのまま帰宅していたら、今ごろ負けた悔しさをずるずる引きずっていただろう。
アキラのおかげだ。友達の存在がこんなにありがたいと思ったことはない。
友達……。
アキラは友達なのだろうか。
ライバルだと認め合ってはいる。
では、アキラはライバルであり友達ということか。
いや、違う。
そもそも、アキラは自分のことを友達とは思っていないかもしれない。
それなのにこちらばかりが友達だと慕うのも癪だ。
ヒカルはアキラという存在について、浴槽の中で延々と考え続けた。
おかげですっかりのぼせてしまった。
ヒカルはTシャツの裾をばたばたさせながら客間に戻った。
アキラは碁盤の前できちんと正座していた。だが、その頭が前後に揺れている。
ヒカルは足音を忍ばせてそっと近づいた。
アキラはうたた寝していた。
普段の鬼軍曹のような態度からは想像もできないほど無防備な表情だ。
ヒカルは唾を飲み込んだ。
心臓の音が耳元で聞こえた。
ヒカルは膝をつき、顔を近づけ、キスをした。
その瞬間、アキラがぱちりと目を覚ました。
「うわっ!」
ヒカルは思わずあとずさりした。
「な、なんだよ、狸寝入りかよ」
「そんなことするものか。本当に寝ていたんだ」
アキラがむきになったように言い返した。
「そうしたらキミが……」
アキラは何か言いたそうに口を開け、すぐに閉じた。

207:初めての夜 6/9
11/04/12 17:43:57.28 twAWcuNj0
「オレ……」
ヒカルは迷った。このままうやむやにしてしまおうか。
アキラは寝ていた。思い違いだったと信じ込ませればいい。
ヒカルは「なんか変な夢でも見てたんじゃねえの」と言おうとした。
「オレ、お前にキスした」
「な……」
アキラは絶句してしまった。
「お前が寝てたから、つい」
アキラは何も答えない。
「オレ、お前のこと、好きだ」
ヒカルは恥ずかしさのあまり、膝に目を落とした。
長い沈黙が続いた。
「あのさ、やっぱ忘れてくんねえ?」
ヒカルは耐え切れずに口を開いた。
「聞かなかったことにして、頼む」
ちらと見ると、アキラはまだ固まったままだ。
「なあ、なんか言えよ。それとも怒ってるのか?」
答える代わりに、アキラがにじり寄ってきた。
アキラの顔が間近に迫り、キスされた。歯がかちと当たった。
「やっぱりそうだ」
「何が?」
アキラはヒカルを押し倒した。
蛍光灯を背にしたアキラの顔は暗かったが、息が熱いことはよくわかった。
「ボクもキミのことが好きだ」
ヒカルはアキラの襟をつかみ、激しくキスをした。
歯が当たったが気にしなかった。
アキラもヒカルに負けないくらい唇を貪った。
舌を入れたら、アキラもすぐに応じた。
二人は音を立てて舌を絡ませた。
「どうしよう」
アキラが口を離して大きく息を吸った。つーと糸が引いた。
「キミをめちゃくちゃにしたい」

208:初めての夜 7/9
11/04/12 17:45:29.04 twAWcuNj0
「しろよ」
ヒカルはもどかしい思いでパジャマのボタンを外した。
アキラもジャージの上着に手をかけた。
二人は忙しなく裸になった。
ヒカルは仰向けのまま、キスを続けた。
舌は境が曖昧なほど溶け合っていた。
口の端からよだれがこぼれた。乳首に触ると、すでに尖っていた。
ヒカルはらせんを描くように指の腹で乳首を愛撫した。
アキラの喉から小さな声が漏れた。
ヒカルは我慢できなくなり、肘をついて起き上がった。
「進藤、どうし―」
ヒカルはアキラを押し倒し、尻を向けて馬乗りになった。
半勃ちになったそれをくわえ、自分も腰を落とした。
アキラはすぐに目的を理解したようで、ためらうことなくヒカル自身を口に含んだ。
ヒカルが口を上下させると、アキラのそれはたちまち怒張した。
自分のそれもアキラの口の中で痛いくらいに硬い。
アキラにすべてをさらけ出している羞恥心と、アキラのすべてを受け入れている狂喜がない混ぜになり、めまいを覚えた。
アキラは一心にヒカルをしゃぶっている。
ヒカルは喉元までアキラをくわえ込んだ。
むせそうになったが我慢した。
アキラの先端からは苦い汁がとめどなく溢れている。アキラのものなら何でも深く味わいたかった。
アキラがヒカルを強く吸った。
太ももの内側が痺れ、腰に熱が溜まった。
絶頂はすぐそこだ。
だが、先に果てるのは嫌だった。
ヒカルは鈴口に舌をねじ込んだ。
アキラの腰がびくんと跳ね、熱い液体が口内にほとばしった。
ヒカルは最後の一滴まで丁寧に飲み干した。
アキラも鈴口に舌を入れた。ヒカルはアキラの口に精液を放った。アキラもすべて飲み干した。
ヒカルはアキラの上からどき、ぐったりしているアキラの足を割った。
ピンク色の秘所に舌を挿し込むと、アキラが「あぁっ!」と叫んだ。
「や……めろ」

209:初めての夜 8/9
11/04/12 17:46:26.85 twAWcuNj0
ヒカルは何度も舌の出し入れを繰り返した。
「や、やめろ……お願いだ……やめ……てくれ」
根気強くほぐしたおかげで、舌は三分の二まで入るようになった。
ヒカルは舌を抜き、指を二本入れた。
いきなり二本も入れられ、秘所はきゅっとすぼまった。
唾液まみれのそこはぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。
「……くっ……んんっ……ぁっ」
ヒカルは三本目を強引に入れた。
指を折り曲げ、内壁をえぐるようにすると、アキラの反応が一段とよくなった。
「……あっ……はあっ……ぁんっ」
アキラの頬は紅潮し、目は焦点が定まっていなかった。
ヒカルと同様、それはもう屹立していた。ヒカルは太ももを舐め、指を抜いた。
アキラが安堵したように目を閉じた。ヒカルはアキラの腕を取って起き上がらせると、碁盤に両手をつかせた。
「待て、進藤。何をするつ―」
ヒカルはアキラの秘所に自身を突き入れた。アキラの背が弓なりにそった。
「っ……あぁぁぁっ!」
ヒカルは腰を動かすたびに理性がはがれていくのを感じた。アキラの締めつけはとても強かった。
「……いい、すげえいい、とーや」
「進藤、い、たい」
ヒカルはアキラの下腹部に手を伸ばした。
それは萎えかけていた。ヒカルは手でしごき、快楽を促した。
ヒカルの手の中でアキラは徐々に硬さを取り戻していった。
「し……んど……し……んど」
アキラが切なげに自分の名前を繰り返した。その声は背骨に沁み込み、ぞくぞくと脳まで這い上がった。
「とーや、とーやっ」
ヒカルは泣きたくなった。あまりの気持ちよさに、今自分が何をしているのかわからなくなった。
その直後、果てた。ヒカルは何度も痙攣し、アキラに精液を注ぎ込んだ。
アキラもヒカルの手の中で絶頂を迎えた。二人はしばらく動かなかった。
だが、すぐにまた体を求め合った。
寝入ったのは朝方になってからだった。

「やっべ、秀英と対局の約束してるんだった」

210:初めての夜 9/9
11/04/12 17:47:35.72 twAWcuNj0
ヒカルは外がやけに明るいことに気づき、急いで起き上がった。
畳の上で寝たせいで体が痛い。約束の時間まであと一時間もなかった。ヒカルはとりあえずジャージのズボンをはき、スーツを探した。
「秀英とは洪秀英のことか?」
アキラがもそもそとパジャマに袖を通した。
「そう。オレと勝負するためにわざわざ日本語覚えた奴。やべえ、どうしよう、メシ食う時間ねえじゃん」
「進藤、落ち着け。向かう途中でチョコレートでも食べればいいだろう。
それよりなぜ洪秀英と対局を約束していることをボクに話さなかった?」
「それは、だって、忙しかったし」
ヒカルはしどろもどろに答えた。
「もちろんボクも行くからな」
「わかってるよ」
二人は急いで身支度し、家を飛び出した。着替えを用意する時間がなかったため、どちらもきのうと同じスーツにネクタイだ。
碁会所には伊角と和谷、永夏と秀英が待っていた。
「三十分も遅刻だぞ、進藤!」
秀英がつり目で睨んだ。
「わりいわりい。寝坊しちゃってさ」
「おい、進藤。もしかしてそれ、きのうのスーツか?」
和谷がヒカルを指さした。
「って、げっ! 塔矢も同じ服じゃん」
和谷の顔から見る間に血の気が引いていった。伊角はそんな和谷に「どうしたんだ?」と聞いている。
永夏は氷のように冷たい眼差しを向け、秀英はぽかんと口を開けていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

211:風と木の名無しさん
11/04/13 07:40:03.53 XCVM9QGsO
ヒカアキヒカアキ!
初々しさゆえにとまらないかんじでカワイイなあ

212:1/2
11/04/14 02:03:28.82 CE0hi+QzI
会話文・似非関西弁注意。人は特に決めてません。
ゲ仁ソさんだと思います。楽屋での一コマということで一つ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!?

「なあなあ」
「なに?」
「…ほんとお前ゲームすっきゃなー」
「お前も人の事言えんやろ」
「まあな」
「んで何?」
「あ、何言おうとしてたか忘れた」
「ふーん」
「ふーんてなんやねんふーんて」
「忘れたなら俺どうすることもできんやろ」
「それもそうやけどー」
「暇なら差し入れ食うたら?」
「うん。…何やこれ!?」
「美味い?」
「おう!めっちゃ美味いで!お前も食うてみ食うてみ!」

213:2/2
11/04/14 02:05:51.24 CE0hi+QzI

「ええよ、俺んちにいっぱいあるから」
「え?これお前からの差し入れ?」
「差し入れっちゅーか、美味しいから持ってきただけ」
「何やねんーじゃあ言えよー」
「俺の持ってきた食べ物を気付かずお前が食べて喜んでる様子を見たかったやもん」
「それやったらバラしたらあかんちゃうの?」
「気付かれないの嫌やん」
「なら普通に渡せばええやんか」
「それはつまらんしー」
「ホンマめんっどくさいなーお前ー」
「せやろ?」
「ははは。でもそういうとこすっきゃで」
「…」
「どした?」
「…恥ずかしい奴」
「せやろ?」
「…俺もお前のそういうとこ好きやわ」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!?

失礼しました。

214:風と木の名無しさん
11/04/14 17:41:06.40 wSUlaRBe0
>>213
ほのぼのイイネーGJ!
自分は勝手によ○この二人で想像してニヨニヨしたよw

215:すべてが欲しい 1/7
11/04/14 19:08:36.88 1sz9AqBH0
ヒカアキ? ヒカアキです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

囲碁ゼミナール初日の夜、ヒカルが大ホールで指導碁をしていると、いきなり背後からアキラの声がした。
「進藤、ボクと打て」
ヒカルは振り向いて仰天した。スーツ姿のアキラが椅子に腰かけていた。
酒の臭いがぷんと鼻をついた。目も完全に据わっている。
「お前、未成年のくせに酒飲んだのかよ」
「悪いか」
アキラが睨んだ。
「まあまあ、固いことは言わないでくださいよ、進藤先生」
浴衣姿の客がなだめるように両手を上下させた。
「名人になったお祝いにぱあっとおごったんです。十九歳なんて成人みたいなものですしね」
「何杯飲んだらそうなんだよ」
「ビールを二杯だ」
アキラが即答した。
「お前って酒よえーんだ」
ヒカルは和谷のアパートでリーグ戦を行う時、よく缶ビールを飲んでいる。
一、二本なら勝負に影響することもない。酒に対する強さは自分のほうが上らしい。
「大ジョッキで」
「大ジョッキかよ!」
「進藤、なぜボクと打たない」
アキラが身を乗り出して詰め寄った。
「打つも打たないもお前、忙しいじゃん。テレビとかにも出てんだろ。史上最速でタイトル獲った名人様だもんな」
「進藤、グーを出せ」
ヒカルは反射的に拳を握り、握ったとたん「しまった!」と思った。
だが、遅かった。アキラはすでにパーを出していた。
「ボクの勝ちだ。今からボクと打て」
「何これ。塔矢門下の伝統芸?」
その時、ホテルの従業員が会場を閉める旨を告げた。アキラは上着をつかんで腰を上げた。
「ボクの部屋へ行こう」

216:すべてが欲しい 2/7
11/04/14 19:09:59.83 1sz9AqBH0
ヒカルは仕方なくあとに従った。

514号室は布団が二組敷かれているだけで、誰もいなかった。
アキラはハンガーに向かって手を上げ、そのまま空を握った。挙句、バランスを崩して横ざまに倒れてしまった。
「大丈夫か?」
ヒカルは立ち上がろうとしているアキラを支えた。
「ボクは平気だ、何ともない」
アキラは自力で立ち上がり、覚束ない手つきで上着をハンガーにかけた。
「なあ、お前もう寝たほうがいいんじゃねえの?」
「ボクはキミと打ちたいんだ」
アキラは窓辺の椅子に座り、碁笥の蓋を開けた。
ヒカルも向かいに腰かけたその時、ドアが開いた。
「あ、進藤君、来てたんだ」
浴衣姿の芦原が入ってきて、いそいそと自分の鞄を開けた。
「女子大生の団体が下に泊まってるんだ。よかった、おつまみ持ち込んどいて。アキラと進藤君もどう? 一緒に来ない?」
「いや、オレたちこれから打つんで」
「そっか」
芦原はビニール袋を抱えると、戸口でスリッパを履いた。
「アキラ、先に寝てていいからね。オレ、今日は帰らないかもしれないから」
そう言い残して芦原は出て行った。アキラはもう白石を盤上に置いていた。
ヒカルは黒石を一つだけ置いた。アキラの先番だ。
しばらく、打つ音だけが響いた。
「確かにボクは忙しい」
独り言かと思うような小さな声だった。
アキラは視線を盤上に落としたまま続けた。
「だが、何も二十四時間忙しいわけじゃない。碁会所にだって顔を出している。それなのに、どうしてキミと打つことができないんだ」
「だから、予定がうまく噛み合わないんだろ」
ヒカルは勝負に集中しようとした。
いつもの食ってかかるような喧嘩腰のアキラではない。
胸の内を切々と訴えるような口調だ。それがなんだか落ち着かなかった。
「キミの家に電話ばかりしているおかげで、キミの家の番号をそらで言えるようになってしまった」
「オレはオレで忙しいんだよ」

217:すべてが欲しい 3/7
11/04/14 19:11:14.69 1sz9AqBH0
「いや、キミはボクを避けている」
「そんなことするかよ」
ヒカルはアキラを見ずに答えた。
「本当か?」
アキラが顔を上げた。
「ボクの目を見て答えろ」
アキラの目は酔いのせいで赤く潤んでいた。ヒカルは横を向いた。
「わかったよ、お前を避けてたよ。これでいいか」
「なぜだ? なぜ避ける?」
ヒカルは白石をつまみ、また碁笥に戻した。
「なんか昔を思い出して」
「昔?」
「お前を追ってたころ。お前はもうプロなのにオレはまだ院生で、必死になって追いつこうとしてたころ。
お前はずっと先を歩いてたころ」
「キミはすぐに追いついたじゃないか。ボクがタイトルを獲ったくらいで先へ行ってしまったと思っているのか? 
その程度でへこたれているのか?」
「へこたれてるとかそんなんじゃねえけど、でも、気分が塞ぐっていうか。ああ、一人なんだなって考えてさ。
この時期は苦手なんだよ。ゴールデンウィークって」
「では、今の状態は一時的なものなんだな?」
アキラが念を押すように尋ねた。
「また以前のように打てるんだな?」
「ああ、そのうちな」
ヒカルはバチッと音を立てて打った。
「よかった」
アキラは安堵したように椅子の背に身を預けた。
「なぜだかわからないが、キミと打てないとひどく不安なんだ」
アキラはネクタイをゆるめ、ボタンを外した。
「心細くてたまらない」
突然、アキラの体がぐらりと前に傾いた。
ヒカルは慌てて抱きとめた。体の線が薄いシャツ越しに生々しく伝わった。
「塔矢、お前もう寝ろ。な? 飲み過ぎだって」
「いやだ。今夜打てなければ、次はいつ打てるかわからないじゃないか」

218:すべてが欲しい 4/7
11/04/14 19:12:49.06 1sz9AqBH0
「暇な時はできるだけお前と打つようにするよ」
ヒカルはアキラを引きずって布団まで運んだ。
「本当だな? 信じていいんだな?」
「ああ、信じろよ。オレはお前と一生一緒に打つ」
ヒカルはアキラのために掛け布団をめくってやった。
アキラは寝そべったまま、目を見開いている。
まるで目の前でマジックの種明かしをされた子供のような顔だ。
「今わかった」
「何が?」
「ボクはキミのすべてが欲しい」
アキラは体を起こし、ヒカルのジャージの襟をつかんだ。
「キスをしてもいいか?」
答える前にアキラはキスをした。熱っぽい息が混ざり合った。
初めてキスをするのに、ああ、これはアキラの味だと思った。
Tシャツの裾からアキラの手が忍び込み、乳首を触った。
何度も撫でられるうちにヒカルの乳首は硬くなった。
アキラはTシャツをめくり、乳首を舐めた。
「……ん」
もう片方の乳首はアキラが親指でこねくり回している。
ヒカルはアキラの後頭部を抱き締めた。
「……塔矢……こんな、こと……どこで覚えたんだよ」
「中学の時、同級生に見せられたんだ」
アキラが口を離して答えた。
「男同士の性行為を収めたビデオを」
「それ、イジメじゃん」
「その当時は男同士でも性行為ができるとは知らなくてね、勉強になったと礼を言ったら変な顔をされた」
「そりゃそうだ」
「でも実際、こうして役に立っている。やはり彼らには感謝しないと」
「ほんとお前、打たれ強いっていうかなんていうか」
アキラはヒカルを仰向けに寝かせ、下着ごとズボンを引き下ろした。
怒張したそれが夜の冷えた空気に晒され、ヒカルは痺れるような快感を覚えた。
ヒカルはぼうっとした頭でアキラに含まれる自身を想像した。


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