11/01/12 23:11:12 PVn3Vbzr0
>>54
ナイスリカバーとチューンナップ、いつも本当にありがとうございます。
勢いで投下させていただきます。
半生、要義社Xの検診(映画版)の物理×数学です。
事件がきっかけじゃなく二人が再会してたら…という設定です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「君は…」
「なんだい?」
「いや、なんでもない」
「言いかけてやめるなんて君らしくないな」
くすりと目を細めて笑った石上に、油川は返す言葉がなかった。
日頃から非論理的なことは受け付けないというのが口癖なのに、さっき出かかった言葉ときたらこうだ。
(君はまるで数学の花園にいる妖精のようだ)
どうだ。この非論理的な空想、いや妄想の情けないことといったら。
(ありえない)
さすがの油川でも、常であればこんな類の発言をする人間―例えば度々大学を尋ねてきては空想や妄想を論じる女刑事など―にはっきりとそう答えるだろう。
17年ぶりに再会しても、石上は石上のままだった。
数学を愛し、時には数式の波に溺れ、時にはそれを操り、それと対話する。
油川は物理に常に一歩も二歩も引いた目で対峙しているつもりであり、それが正しい学者としてのあり方だと思っている。
それに対し、石上は数学に己の全身全霊を預けてしまう。だが石上に限ってはそれを愚かなこととは思えない。
何故なら数式と戯れている彼の姿は完璧なまでに無垢であり、
(それゆえにとても、美しい)
そう思う。
油川の口から花園だの妖精だのという妄言が飛び出そうになるくらいに、だ。
恋は人を詩人にさせる、とは誰が言った言葉だろう。
(恥ずかしくて蕁麻疹が出そうだ)
油川は薩摩切子の猪口の中身を勢いよくあおった。