11/01/11 09:21:15 LVWPYh5IO
「は、離せ、殿様っ」
「真之介、頼む。このままでいてくれ」
「殿様……な、泣いてんのか?」
身じろいだ真之介は、触れ合う兵四郎の頬が濡れているのに気付いた。
「ああ、そうだ」
「なんでだ。何を泣いてんだ」
「何故だろうな。まだお絹の気持ちが、俺の中にあるのかもしれん……いや、違うな。俺は嬉しいんだ。ただただ、嬉しいんだ」
静かに優しく囁くと、兵四郎は真之介を抱いたまま、身体をそっと横たえさせた。
流れ滴る涙を頬に受けた真之介は、覆い被さる背中に腕を回して抱きしめ目を閉じた。
淡い闇と静寂が、抱き合うふたりをひそやかに包み込んだ。
女は川を見ていた。
滔々と流れる水に切なる想いを託し、いつかはきっと海にたどり着くと信じて、ひたすらに川を眺め、祈り続けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
蛇足・お絹さんのイメージは在りし日のタイチキワコさんだったり。
最後までお読み下さり誠にありがとうございました。
あと処々にてお言葉を下さった姐様方、身にあまる喜びでした。ありがとうございました。