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「違う、違う。後ろ見てよ」
百合の声がやけにリアルに聞こえてきて、俺は言われるまま後ろを振り返った。
そこにいたのは悪戯っぽい表情を浮かべた百合だった。
「じゃーん。迎えに来たよ、お兄ちゃん」
家にいるとばかり思っていた百合が、目の前にいる。しかもよく見れば、そでや、ジーンズの裾や、肩に流れた髪の毛が、かなり水を含んで重そうに濡れていた。
「お、まえ…。どうしてここに……?」
呆気に取られて俺は百合を凝視していた。
百合が可笑しそうに笑いだす。
「やあだ、お兄ちゃん。今すごい間抜けな表情してたよ。もちろん雨が降ってたからお兄ちゃんを迎えに来たんじゃない」
感謝してよね、と付け加えて百合がにっこりと笑った。