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【争点(本件示威活動不法行為該当性)について】
1 原告の人格権(民族教育実施権)を侵害していること
(1) 原告は,民族教育事業を実施することを目的とする学校法人であり,以下
に述べるとおり,児童らの民族教育を受ける権利(自らの属する民族の言葉
によってその文化及び歴史を学ぶことにより,一個の人間として成長及び発
達し,自己の人格を完成及び実現する教育を受ける権利)を実質的に保障す
るために極めて重要な意義を持つ「民族教育を実施する権利」(以下「民族
教育実施権」という。)を有している。
(2) 憲法上の保障
憲法第三章による基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみを対象
としていると解されるものを除き,我が国に在留する外国人に対しても等し
く及び,内国法人の権利についても,性質上可能な限り,憲法上の保障が及
び得るところ,教育を実施する自由は,後記のとおりの民族教育権に対する
国際人権法上の保障とあいまって,人格的生存に不可欠な権利として憲法1
3条により保障される。その中でも社会の中の民族的な少数集団(以下,単
に「少数集団」という。)の民族教育に関しては,後記のとおり,民族的自我
の確立に不可欠であることから,厚い保護が与えられなければならない。
また,この権利は,教育を受ける権利の自由的側面として,憲法26条に
よっても同様に保障される。
(3) 国際人権法上の保障
「教育に対する権利」(right to education)は,世界人権宣言26条1
項,「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」(いわゆるB規約
である。以下「社会権規約」という。)13条1項,「児童の権利に関する条
約」(以下「子どもの権利条約」という。)28条1項で明文規定されている
普遍的人権の一つである。
この権利は,人権行使の前提条件であると同時に,他の人権を強化し,実
質化する機能を備えており,その意味で,種々の人権の中でも最も基礎的か
つ重要な権利の一つと位置づけられている。教育は人格の全面的発達及び人
間の尊厳の確立に不可欠であり,教育に対する権利の承認と保障なしには自
らの人権を認識することも十分に行使することもできないからである。
また,社会権規約13条3項及び4項,子どもの権利条約29条2項の各
規定をも踏まえれば,少数集団が私立学校を設立及び維持して,母語教育及
び民族教育を行う権利を有することは明らかである。
したがって,外国人学校及び民族学校の民族教育実施権は,普遍的人権と
しての「教育に対する権利」の一部として,国際人権法上も保障されている
というべきである。
(4) 少数集団の権利としての民族教育
外国人学校及び民族学校が実施する母語教育及び民族教育は,普遍的人権
としての「教育に対する権利」の一部であると同時に,民族的,宗教的,言
語的少数集団に属する人々の持つ権利であるといえる。つまり,全ての人に
平等に保障されるべき人権としてだけではなく,少数集団に特有な権利とし
て二重に保護されるべき権利なのである。