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移民チームでW杯に優勝したフランス
スポーツに託して、自らの帰属する国家やアイデンティティを確認する―
ナショナリズムがストレートにあらわれる典型がサッカーのW杯だ。
それほどのサッカーファンでもないわたしも含め、W杯になると多くのにわかファンを誕生させるのは、
この大会のもつ特別な魅力のなせるわざだろう。
トヨタカップのようなクラブチーム同士の戦いとは違って、各チームは、その国の代表として出場しているからだ。
さらに、国を代表するチームであっても、彼らはひとつの民族、同じ人種というわけではない。
わたしは、親善試合を見に行ったとき、会場の盛り上がりに感化されてサッカーの面白さを知った。
日本がW杯本戦の出場を逃した93年の“ドーハの悲劇”のときは、ブラジル出身のラモスが、日本人といっしょに
涙を流して悔しがった。いまも三都主の活躍にみんなが心から拍手をおくる。日の丸の旗のもとに戦った者は、
出身国がどこであろうと仲間であるという意識、それは共同体にたいする帰属意識、というよりほかにいいようがない。
フランスは、第二次世界大戦のあと、労働力が不足して大量の移民を受け入れた。だがその後ナショナリズムの
高まりとともに、移民排斥の嵐が吹き荒れた。
98年、強豪フランスは、開催国としてW杯に出場するが、このときメンバーの多くが、アルジェリア系のジダンを
はじめとする移民と移民二世の選手たちで占められたため、「レインボー(いろいろな人種からなる)チーム」と呼ばれた。
しかし、そのチームが優勝を勝ち取ったとき、かれらはもはや移民ではなく、フランス国家の英雄であった。
優勝の夜、人びとは国家「ラ・マルセイエーズ」を歌って熱狂し、百万人以上がつどった凱旋門には「メルシー・レ・ブリュ」
(「ブリュ」はフランスチームのシンボルカラーの青)の電光文字が浮かび上がった。
サッカーのもたらしたナショナリズムが、移民にたいする反感を乗り越えた瞬間であった。
安倍晋三 著書「美しい国へ」より
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