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黒岩神奈川県知事：外国人介護士を先行受け入れ－特区制度を活用
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６月７日（ブルームバーグ）：政府の国家戦略特別区域に指定された神奈川県は
外国人介護福祉士を実験的に先行して受け入れる方針を固めた。
安倍政権は特区での家事や介護分野の外国人労働者の先行導入について
月内に策定する成長戦略の改訂版に盛り込む見通し。
黒岩祐治知事は５日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、
「外国人家政婦という選択肢もあるが、まずは外国人の介護者から切り込んでいく。
人が足りない介護の現場で外国人を活用することを考えてみたい」と述べ、
県内で外国人介護福祉士を受け入れる方向で検討を進めていることを明らかにした。
政府は全国６地域の特区のうち神奈川県を含む東京圏を念頭に
外国人労働者の受け入れ先を検討していた。東京都の舛添要一知事は
日本人労働者の賃金低下につながるなどとして受け入れに難色を示していた。
同県は介護の現場で深刻化している人材不足を背景に、母国で介護の資格を取得した外国人労働者を活用する。
外国人介護福祉士については経済連携協定（ＥＰＡ）に基づき、2008年度以降、
インドネシアやフィリピンのほか今年度からベトナムから人材を受け入れている。
しかし、日本の介護福祉士国家資格の取得が必要なことから、
13年度までに受け入れたのはインドネシア人608人、フィリピン人520人の計1128人にとどまっている。
黒岩氏は「現行制度はハードルが非常に高い。ＥＰＡとは違った枠組みで、母国で
資格を持った人たちを別途受け入れる仕組みができないか考えている。神奈川県が突破口になりたい」と述べた。
在留資格の見直しなども含め、政府と調整を進めていく考えだ。
経済財政諮問会議の民間議員は育児や介護で就業できない女性が220万人強に上るとして
「外国人によるサポートも検討すべきだ」と提言。政府の産業競争力会議も育児・介護の負担を軽減し、
働く機会を得られる環境整備のため、特区で外国人人材の活用を先行実施し、需要を見極めた上で拡大の検討を行うべきだとの方針を示していた。
超高齢化社会の到来
神奈川県が外国人介護福祉士を受け入れる背景には同県が直面している超高齢化社会到来への危機感がある。
特区では再生医療や生活支援ロボットなど最先端の医療技術と、発病前の「未病」の段階に
着目した生活改善を融合させて高齢化社会に対応する「神奈川モデル」を構築し、同様の問題を抱える国内外への発信を目指す。
特区の核となるのは川崎市臨海部の殿町地区。多摩川を挟んで羽田空港の対岸にある
約40ヘクタールの自動車工場跡地に医療関係の企業や研究所が次々と進出している。
16年度には再生医療分野の研究開発や製品・商品化まで事業展開できる中核施設を開設する。
黒岩氏は「同地区を出島に医療の開国を目指す」と意気込んでいる。
「一番重視しているのはスピード感」と語る黒岩氏のリーダーシップのもとで、
海外との研究開発やビジネス交流も着々と進めている。昨年11月にはシンガポール政府と覚書をいち早く取り交わし、
今年５月にもライフサイエンス分野の先進地域の米国のメリーランド、マサチューセッツ両州や大学、研究機関と覚書を締結した。
羽田国際化の追い風
黒岩氏は「日本の技術をどんどん海外に出していけば、向こうからも入ってくる。資金の流れも国内での
投資調達や税金投入というレベルではないダイナミズムの中で考えられる」と強調。
日本と海外の大学が共同で運営する「メディカル・スクール」や外国人医師の診療を受けることができる病院など、アイデアは尽きない。
海外展開を視野に置く神奈川県にとって国際化が進む羽田空港は重要な要素だ。
菅義偉官房長官は20年の東京五輪までに殿町地区と羽田空港（東京都大田区）をつなぐ連絡橋を
多摩川に建設する構想を表明したばかり。黒岩氏は「橋は大きな追い風となる」と述べ、橋の建設に合わせて同地区の整備を一気に進める考えを示した。