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40代は9割がピンチ! 定年までにいくら貯めればよいか
2014年6月2日(月)
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金融広報中央委員会が運営するサイト「知るぽると」には、退職までにいくら貯めたらいいかの一例として次のような記述がある。
「退職後の生活費を350万円とし、年金の不足分を60万円とすると、20年分で1200万円。
これに生活費以外に、予想される出費(自宅のリフォームなど)や
予備費(病気や介護、事故に備えるお金)を加えたものが、退職までに準備したい金額になります。
予想される出費を生活費の2年分、予備費を生活費の1年分とすると、合計で1050万円。生活費の不足分とあわせて2250万円になります」
この数字が妥当かどうか、フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長に聞いてみた。
「年間の生活費が350万円で足りるかどうかというのは当然、人それぞれで異なります。
また、ここでは20年分の生活費しか算出していませんが、60歳で退職した人は80歳以降の生活費がなくなってしまう。
90歳まで生きた場合、どうなるのでしょうか」
実際、退職後にかかる生活費は退職前の生活レベルに比例する。仕事を辞めても簡単には
生活レベルを下げることができないからだ。そのため、米国では「退職前の何%の水準で生活できるか」が、
退職後の生活費を考えるうえでのベンチマークとなる。これを同研究所は「目標代替率」と呼ぶ。
野尻氏の説明では、総務省家計調査を基に、55~59歳の世帯データと、
65歳以上で無職・年金などで年収350万円以上の世帯データを、できるだけ同じ条件になるように
調整を加えて計算したところ、退職直前の月収は49万1320円(a)、
退職後の必要月収は33万3640円(b)で、目標代替率は68%(b÷a)となった。
平成21年民間給与実態統計調査によれば50代後半の平均年収は595万円なので、
退職直前の年収をほぼ600万円と仮定すると、その68%の408万円が、平均的な人のケースで退職後に必要な生活費という計算になる。
「高齢になると外出や食事量が減るので、目標代替率68%が退職後ずっと続くのは変だという意見もありますが、
逆に年齢が上がれば確実に医療と介護の費用は増えます。夫婦で老人ホームに入るとしたらかなりの費用が必要で、
高齢になってもそれほど支出は減らないと予想できます」(野尻氏)
また、老後の必要資金を計算する場合、平均余命を基準にするのが普通だが「半数の人は平均余命よりも
長生きするので破綻します。そのため、当研究所では25%の生存確率となる年齢で計算しています」と
野尻氏はいう。直近の簡易生命表から生存確率25%となる年齢を算出してみると、
40歳男性の場合は89歳3カ月、40歳女性は94歳7カ月で、60歳定年なら35年間の生活費が必要となる。
以上を前提に退職後に必要となる資金総額を計算してみる。年間408万円×35年間で1億4280万円。
厚生労働省が発表している平成21年度の標準世帯厚生年金支給額は月額約24万円で、
65歳から95歳までの30年間で受け取る額は8640万円。その差は5640万円だ。
今後の年金制度の改革等を考えると上積みしておく必要があるので、6000万円程度は自前で用意しなければならない。
「ただし、図1のように60歳から75歳までを『使いながら運用する時代』、75歳から95歳までを『厳格に使う時代』と位置付けた場合、
60歳時点で6000万円を用意しなくてもよくなります。60歳から75歳まで年平均3%の運用ができれば、
月額15万円程度の引き出しなら60歳時点で4224万円、月額10万円程度の引き出しなら60歳時点で2816万円を用意すればいいのです。
注意点は、60歳から75歳までの『使いながら運用する時代』は、『毎月15万円』というような定額引き出しではなく
『その時点の運用額の4%』というような定率引き出しにして生活費の調整をすること。定額引き出しの場合、
当初の運用が悪かった場合、元本が減ってしまって予定どおり運用できなくなる可能性があるのです」(野尻氏)
参考のために、退職後の資金準備のための30代からの投資プランの一例を示しておくと、図2のとおり。
年平均3%の運用ができれば、60歳時点で何とか3000万円弱を用意することができる。
ただ、ここでの前提は「最低でも40歳時点で500万円の貯蓄を用意しておくこと」。
45歳時点なら1000万円ほどの準備が必要だ。しかし、同研究所が40代を対象に行った調査によると、
老後資金として1000万円以上を用意しているのは13.3%にすぎなかった。つまり、40代の9割近くは安心できない状態にあるということなのだ。