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9 被告のその余の主張について
他方、被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながる
と主張するが、当裁判所は、
極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを
並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、
法的には許されないことであると考えている。
このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発
の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失
というべきではなく、
これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると裁判所は考えている。
また、被告は、原子力発電所の稼働がCO2排出削減に資するもので環境面
で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合
の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最
大の公害、環境汚染であることに照らすと、
環境問題を原子力発電所の運転継続根拠とすることは甚だしい筋違いである。
ぐう正