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「鼻血で批判されるのは人権侵害」 渦中の前双葉町長が憤り
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「私が鼻血を出すことが犯罪とでも言うのか」―。
こう憤りの声を上げているのは、井戸川克隆・前福島県双葉町長だ。
井戸川前町長は、小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中のマンガ「美味しんぼ」に実名で登場。
福島県内を取材して鼻血を流す主人公らと対面する場面では、自身も鼻血を出した経験を振り返りつつ、
原因について「被曝したから」と話す姿が描かれている。
ところが、この「福島で鼻血」の描写に対して政府や自治体側が猛反発。福島県は「極めて遺憾」との見解を公表したほか、
福島県双葉町も「風評被害を助長する」として小学館に抗議文を送った。
さらに、石原環境相が「全く理解できない」と不快感を示し、下村文科相も「福島県民にとってひどい迷惑だ」と発言するなど大騒動になっている。
だが、この状況は異常だ。井戸川前町長は個人の体験と感想を語っただけ。
それも架空人物が主人公のマンガの中でだ。これが許されないなら、マンガ好きの麻生財務相が愛読する「ゴルゴ13」は話が成り立たなくなる。
あらためて井戸川前町長に聞くと、こう言った。
「(福島の住民が)鼻血を出すという話は、今回、ことさら強調して語ったわけでも、(取材者を)誘導したのでもありません。
私は以前からメディアの前でずっと同じことを言い続けていました。これまでは取り上げられてこなかっただけです。
だいたい私が鼻血を出した、と話したことが批判されるべきことなのか。それを(閣僚らが)批判するとは人権侵害ですよ」
その通りだ。井戸川前町長が言う通り、「福島で鼻血」の話は過去の国会でも取り上げられている。
12年6月の東日本大震災復興特別委員会で、当時、野党だった自民党の森雅子・現少子化担当相は
<例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。子どもが鼻血を出した、これは被曝による影響じゃないかと
心配なんだけれども…>などと質問しているのだ。
ほかにも、因果関係はハッキリしないものの、原発事故の被災者に鼻血の症状が見られることは以前から確認されている。
チェルノブイリ事故の被災者らを支援しているNPO法人「チェルノブイリへのかけはし」によると、
「被災した子どもたちの2~3割に鼻血の症状が見られた」(野呂美加代表)という。
何でもかんでも「風評被害」と決めつけて議論すらさせないから不安が募るのだ。福島県も石原も下村も、
マンガに噛みつくヒマがあったら、年間被曝線量を20ミリシーベルトに引き上げても「安全」という具体的な根拠を県民に示すべきだ。