08/09/04 23:24:23 eb9j1asX
「メグって、物持ちがイイよね」
ベッドに腰掛けながら、詩織が言う。
「そうかなぁ。あ、でも、そうかも」
壁に貼ってある古いホラー映画のポスターを見る。
ホッケーマスクを被った男が、燃えさかる家をバックにチェーンソーを振りかざしている。
「あれはちょっと女の子らしくないわよ」
「そ、そうかなぁ…でも、好きだから…」
昔っからそうだもんね、とお互いに笑った。
9月4日。
あれからもう2年経った。
高校を卒業して、みんなは少しだけ大人になり、少しだけ離れ離れになった。
「ゴメンね、詩織ちゃん。こんなとこまで来てもらって」
「こんなとこって、お隣のひびきの市じゃない。頑張れば自転車でも来れるわよ」
二流大学に入学し、一人暮らしを始めた。
性格はそんなに大きく変わらない。なんせ、20年くらいかけて作り上げたワケだから。
突然、友達ができるわけじゃない。いきなり人生が変わることもない。
笑いたくても、泣きたくても、怒りたくても、悲しくても。
私はこの一人暮らしの部屋で、そっと自分の気持ちを解放していた。
「私はずっと、ずっと一人なんだ」
そう思うこともあった。だけど、そんなときは決まって詩織ちゃんが隣にいた。