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658 名前:YRP常駐from群馬 ◆a8bV4TV9Jg 投稿日:04/10/21 01:03:23
澱みきった室内の空気は熱気と共に腐臭にまみれた。というのも、体調不良を
理由に退室を申し出た出席者達はそれを少尉によって却下されたからだ。彼らの
何人かは既に限界を超えていて、体育会兵士の封鎖した扉の前でうずくまり、
嘔吐した。一人の嘔吐は次々と連鎖した。
「皆の者!聞けーーーい!これはレビューだ。今更ながらの仕様書レビューだ。
これを乗り切らなければ先は見えない。諸君は相次ぐ新機種の開発で消耗し切って
いるのは重々承知だ。しかし、このレビューで諸君の意識を一つに合わせ、今後
展開する苦しい開発を乗り切るには、ここを気合と根性で乗り切る必要があるのだ。
これだけは忘れてはならない。今回の機種をスムーズに市場へ出すことができれば、
他社を大きく引き離す事ができる、と私が約束する。勝利は目前だ。」
体育会兵士達がすかさずハヤシを入れた。
「インパール提督、バンザーーーーイ!」
「インパール提督、バンザーーーーイ!」
一人、また一人とその唱和に加わった。嘔吐して精魂尽き果てたSEも口を拭って
立ち上がり、「まだです。まだまだやれます。いや、やらせてください」と目を
輝かせて提督に振り返った。それから出席者の方へ振り返り、先ほどのゾンビ状態
が嘘であったかのように熱弁を振るった。
「俺達はまだ死んじゃいない。やれるぞ、やるんだ。敵軍(他社)を蹴散らせ!」
「お、お前達…」提督の目も潤んで見えた。
「レビューに休憩は要りません。構わず続けてください。」
「レビューが完了次第、我々も直ちにプログラミング部隊を前進させます。」
室内の熱気と悪臭は衰える事が無かったが、出席者の士気は一気に上がった。その後
の白熱した仕様書朗読と質問と数々の建設的な議論によって、気温と湿度も更に上が
ったが、誰一人として意志は衰えなかった。こんなに熱く有意義なレビューは初めて
だった。
提督の神通力、恐るべしだった。