08/07/24 17:57:16 2MoWpms+0
「ある日常風景 ~僕の決意~ 二の巻上」
次の日、バイトの八百屋さんには、もっぴちゃんの姿があった。
「おうもっぴ、そこのスイカを棚に並べてくれ」 店長がいつもの太い大きな声で指示を出す。
もっぴちゃんは顔色一つ変えずに、少しだるそうに黙々と体を動かしていた。
そんなもっぴちゃんを見ていた僕の手は止まっていたようだ。
「おい、それが終わったら 今度はこれを並べろよ」 店長はそう言いながら
僕の横になすびの箱を置いて行った。 「は、はい」僕はあわてて返事をして
テキパキと野菜たちを棚に並べていった。
夕方、バイトの帰り道、もっぴちゃんのアパートの近くの神社で夏祭りが行われていた。
「うわーお祭りだ! ねぇ、ちょっと寄って行こうよ!」
僕はもっぴちゃんの手を引っ張るようにして鳥居をくぐった。
そこには色々な夜店が軒を並べていた。 お面屋さん、たこ焼屋さん、わたあめ屋さん・・・
僕は子どもの頃から神社のお祭りが大好きだった。 よく友達と自転車で乗り付けては
夜遅くまで遊んだものだった。 お祭りの日は夜遅くまで遊んでいても大人たちから
叱られることのない、夢の日でもあったのだ。
ゆっくりと夜店を見て回り、僕達はたこ焼を買った。
境内では人々の踊りの輪が出来ていた。
境内の隅のベンチに腰掛けて、僕達は二人でたこ焼を食べた。
もっぴちゃんは少し元気が出てきたようだった。
「僕ね、お祭りって大好きなんだよ」僕はもっぴちゃんの方へ振り向きながら話かけた。
「うん、俺も」ともっぴちゃんはたこ焼を口一杯に頬張りながらうなずいた。
僕はもっぴちゃんの大きく膨らんだ頬っぺたがおかしくて思わず笑った。
もっぴちゃんも、そんな僕を見ながら今日始めての笑顔を見せてくれた。
境内の周りに吊るされたランプの光の中で、もっぴちゃんの笑顔が優しく揺れていた。