【mixi】嫌いな奴を退会させる方法【辞めろ】at SNS
【mixi】嫌いな奴を退会させる方法【辞めろ】 - 暇つぶし2ch578:友達の友達の名無しさん
08/04/03 01:50:34 /qzEE7/J0
URLリンク(mixi.jp)

いい歳したAYU信者w

579:友達の友達の名無しさん
08/04/03 19:27:21 wG5LkrNAO
槍チン
URLリンク(mixi.jp)

580:友達の友達の名無しさん
08/04/03 22:33:39 qjkJWHAU0
セクハラDQNオヤジ。
ストーカー。きもい。ゲロ。

URLリンク(mixi.jp)

581:友達の友達の名無しさん
08/04/03 23:41:34 Yfl/J+w40
URLリンク(mixi.jp)

こいつにエロメッセージたくさん送られてきてこまってます

かなりきめぇww

582:友達の友達の名無しさん
08/04/04 00:13:27 30QJOP9T0
URLリンク(mixi.jp)

583:あぼーん
あぼーん
あぼーん

584:友達の友達の名無しさん
08/04/04 14:43:30 nlKgA97sO
ニックネーム検索で、晴はるって入れたら出てくる48のオバサン。勘違いで痛い奴。潰してください。

585:鬼
08/04/04 16:00:19 kAejOmtfO
つばさ51歳

このジジィはキモい!!

URLリンク(mixi.jp)

面識のない女性にセクハラまがいのコメントしまくり(笑)メールで写真を送れなどと失礼極まりない。

女性の皆さんは気を付けて下さいね。

586:あぼーん
あぼーん
あぼーん

587:友達の友達の名無しさん
08/04/04 17:12:03 X8pCLL0n0
URLリンク(mixi.jp)

訂正

588:友達の友達の名無しさん
08/04/04 17:56:25 mEW3Ce4X0
ほっけみりんには気をつけて下さい。

†Asutarosu†=ほっけみりん被害者の会
URLリンク(mb.minx.jp)

管理コミュニティー
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)

589:友達の友達の名無しさん
08/04/04 18:44:02 8QkaZT340
URLリンク(mixi.jp)

590:友達の友達の名無しさん
08/04/04 21:13:53 SUIOC/Ew0
URLリンク(mixi.jp)

591:友達の友達の名無しさん
08/04/04 21:30:38 oBY2ZLzi0
URLリンク(mixi.jp)
スイーツ(笑)な文章に頭が痛くなる・・・。
実生活も礼儀知らずの自己中で周りに迷惑かけすぎ。
でも本人は気付いてない困ったちゃん。

592:友達の友達の名無しさん
08/04/04 23:28:26 LQrWmKP20
URLリンク(mixi.jp)

593:友達の友達の名無しさん
08/04/05 00:24:34 08a+auOO0
URLリンク(mixi.jp)

594:友達の友達の名無しさん
08/04/05 03:34:27 +ksmk/We0
URLリンク(mixi.jp)

595:友達の友達の名無しさん
08/04/05 08:07:14 gzEmvFib0
んな事しても退会してID作り直せばいい話w

596:友達の友達の名無しさん
08/04/05 08:15:10 yXhRgW+V0
2ちゃん某スレで叩かれてる。
日記は友人までだがプロフが何様。
僕は凄いと内心思いつつ卑劣な話術で正体を隠している。
URLリンク(mixi.jp)

597:あぼーん
あぼーん
あぼーん

598:あぼーん
あぼーん
あぼーん

599:あぼーん
あぼーん
あぼーん

600:友達の友達の名無しさん
08/04/05 13:37:24 E7z0/iP1O
URLリンク(mixi.jp)
男に依存することしか考えてないゴミのような女。
自分に届いたメッセージの返信すら、自分でどうするか決められないらしい。

なんでこんな屑が生きてんの?

601:598
08/04/05 19:26:20 r+6Bnw3l0 BE:361311326-2BP(15)
どうやら勘違いしてたみたいです。。とてもいい人でした。

602:あぼーん
あぼーん
あぼーん

603:友達の友達の名無しさん
08/04/05 21:26:20 e/Ny4W5b0
URLリンク(mixi.jp)

604:友達の友達の名無しさん
08/04/05 23:20:45 4Nu+T/OO0
こいつのせいで人生メチャメチャ。
口ばかりのでたらめ君
URLリンク(mixi.jp)

605:友達の友達の名無しさん
08/04/05 23:41:36 fhOnsycPO
誰か~!ID:14048408を追放してくれね??????

606:友達の友達の名無しさん
08/04/05 23:50:51 iiP/VG9z0
id=3852383

607:友達の友達の名無しさん
08/04/05 23:56:39 6dnC8O300
キモイセクハラ男です

URLリンク(mixi.jp)

608:あぼーん
あぼーん
あぼーん

609:あぼーん
あぼーん
あぼーん

610:あぼーん
あぼーん
あぼーん

611:友達の友達の名無しさん
08/04/06 07:09:21 lUcjeTFkO
URLリンク(m.mixi.jp)

この人の16人のマイミクは全員☆ぽっぽ☆
複アカ確定。

612:友達の友達の名無しさん
08/04/06 11:31:16 Oh/P4FAu0
URLリンク(mixi.jp)

外からみれば彼氏らぶとか書いているが、
こいつは、婚約していた親友の結婚をぶちこわし、
その後、その親友は自殺。

613:友達の友達の名無しさん
08/04/06 11:42:52 ooeeknKN0
お前らホンットキモいなwwwwwwwwwwwwwwwww

どーせ9割方はリアル知り合いのミクシィだろ?

そんな嫌いなら会ってドライバーでも刺してくればいいじゃねーかよwwww

2ちゃんねるでアドレス貼って自己満足?プwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

614:友達の友達の名無しさん
08/04/06 12:53:01 EHo5GLIp0
URLリンク(mixi.jp)

ナンパ君です。

615:友達の友達の名無しさん
08/04/06 14:26:07 tDqtGGpp0



id=3937123

とんでもないデリカシーゼロ男
くだらない事で自慢する、すぐ得意げになる。
unk臭い口で減らず口を叩く。言葉のオナニーが激しい。
主張が的外れでトンチンカン、場の空気が読めない。
大学で昆虫のことを勉強していたことから、虫ん経(無神経)と呼ばれている。





616:友達の友達の名無しさん
08/04/06 18:52:24 YWDAQb3LO

id=8478624

超DQN男w
将来の夢は有名R&Bシンガー




617:友達の友達の名無しさん
08/04/06 18:56:10 0U0PHMen0
ギャル好きのおやじ。

URLリンク(mixi.jp)

618:友達の友達の名無しさん
08/04/06 19:03:09 YWDAQb3LO

id=11145573

('A`)

619:友達の友達の名無しさん
08/04/06 19:14:52 zdo4xiGXO
たぶんここに書かれてるやつも書いてるやつも糞だと思う

620:友達の友達の名無しさん
08/04/06 20:04:16 LOElVTjQ0
キモイセクハラ男です

URLリンク(mixi.jp)

621:友達の友達の名無しさん
08/04/06 21:16:51 49hyx6Fg0
URLリンク(mixi.jp)

イジメ犯

622:友達の友達の名無しさん
08/04/06 21:59:18 NYLNFuS/0
URLリンク(mixi.jp)

↑いきなりアク禁&不快メッセ
みなさん理由もなくアク禁してやってww

623:友達の友達の名無しさん
08/04/06 22:47:47 hgQJxZ3f0
パソコンから他人のIDってどうやって見るの?

624:友達の友達の名無しさん
08/04/07 00:43:04 wdskhTVJ0
ブサでヲタで変態。
いい感じの紹介文が並んでいるのは男は皆穴兄弟だからw
メッセ送ればすぐ直メできて、ヤレるよww
URLリンク(mixi.jp)

625:友達の友達の名無しさん
08/04/07 00:51:43 ySilj1Iq0
URLリンク(mixi.jp)  

626:友達の友達の名無しさん
08/04/07 00:56:23 m4hkKlE/0
URLリンク(mixi.jp)

岩本みわ

自称モデル
可愛くないし頭悪いので、すぐにやらせてくれる

627:友達の友達の名無しさん
08/04/07 01:15:26 LH9Z3QhOO
URLリンク(m.mixi.jp)

628:友達の友達の名無しさん
08/04/07 04:08:29 O1La/hRIO
>>623
右クリック→プロパティ

629:友達の友達の名無しさん
08/04/07 07:06:22 1K2ze47kO
出会い系ブログへ誘導するキモイ男。ボコボコにしてください

URLリンク(m.mixi.jp)

630:友達の友達の名無しさん
08/04/07 08:15:18 Hu4VAxqh0
URLリンク(mixi.jp)

631:友達の友達の名無しさん
08/04/07 08:39:03 1K2ze47kO
セフレ募集中
URLリンク(m.mixi.jp)

632:友達の友達の名無しさん
08/04/07 13:16:11 a9rDnb9G0
URLリンク(mixi.jp)

人口無能うずら

633:友達の友達の名無しさん
08/04/07 19:09:09 kV5lUNqZO
URLリンク(mixi.jp)

634:友達の友達の名無しさん
08/04/07 19:28:08 fRIKaxLm0
URLリンク(mixi.jp)

635:自治スレでローカルルール議論中
08/04/07 19:48:52 PbDZtVWj0
URLリンク(mixi.jp)
メッセージやマイミク申請送りまくって

636:友達の友達の名無しさん
08/04/07 19:56:55 qyuJGqeKO
URLリンク(mixi.jp)

セクロス好きの中学生

637:友達の友達の名無しさん
08/04/07 21:15:06 IAe5CDQq0
メッセージやマイミク申請送りまくって

URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)

638:2ちゃねるの基地外 削ジェンヌ
08/04/07 21:28:08 UI5Igg3O0
削ジェンヌ▲ ★
URLリンク(mixi.jp)
無職引き蘢りでやりたい放題。
この馬鹿削除人に迷惑を被った人は多い筈。
引き蘢りっぷりを笑ってやりましょう。
まあ、一生独身だな。


639:友達の友達の名無しさん
08/04/07 21:55:09 U20jchly0
URLリンク(mixi.jp)

640:友達の友達の名無しさん
08/04/07 23:58:03 tAPUuQD/0
URLリンク(mixi.jp)

641:友達の友達の名無しさん
08/04/08 01:52:41 v9LyZtHD0
URLリンク(mixi.jp)
こいつきもいしおもしろくない

642:友達の友達の名無しさん
08/04/08 02:04:19 9nrj0Nx90
URLリンク(tet-star-orion.at.webry.info)
skype  angel-platinum
MSN  platinum-alpha@hotmail.com
URLリンク(mixi.jp)

あいも変わらず痛い日記www
PCの前で荒らしの為に24時間保守中www

643:友達の友達の名無しさん
08/04/08 06:25:56 StwzWOr4O
>>641
日記も様々だけど、相手が学識系日記タイプだとヒガミだぞ。
お前に合わせてないの殺し文句で終了。
経験者でつ

644:友達の友達の名無しさん
08/04/08 22:17:26 kuC6ke2F0
お前らホンットキモいなwwwwwwwwwwwwwwwww

どーせ9割方はリアル知り合いのミクシィだろ?

そんな嫌いなら会ってドライバーでも刺してくればいいじゃねーかよwwww

2ちゃんねるでアドレス貼って自己満足?プwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

645:友達の友達の名無しさん
08/04/08 22:33:42 QjVRrgM90

>>644


646:友達の友達の名無しさん
08/04/08 23:12:00 POGQwbRY0
URLリンク(mixi.jp)

647:友達の友達の名無しさん
08/04/09 01:05:42 SszXJQ1j0
URLリンク(mixi.jp)
日記用フォト
pass 90711004

チンコの写メ多数。。。通報してくれ

648:友達の友達の名無しさん
08/04/09 02:06:24 tvrHc4290
URLリンク(mixi.jp)

かんちガイ

649:友達の友達の名無しさん
08/04/09 11:32:31 m42L/8wh0
しげちゃん
URLリンク(mixi.jp)

美人コミュ入らないってメッセがきた。
入るとすぐに変態メッセばっかり送ってくる。
きっと被害者は多数いるはず。

650:友達の友達の名無しさん
08/04/09 12:52:09 S3fqdafL0
自称日本一のアニメ特撮オタク 本名 石川貴晴さん
URLリンク(mixi.jp)

「コレクションが素晴らしい。」と言ってあげてね
18人のマイミクは自分の生産品で、出会い系画像での拾い物
自慢のしすぎで誰にも相手にされていないかわいそうな44歳

651:友達の友達の名無しさん
08/04/09 13:13:37 DgNrpsle0
URLリンク(mixi.jp)

652:友達の友達の名無しさん
08/04/09 13:16:12 N1iUvRDyO
タ―ゲットを退会に追い込むバカ
URLリンク(mixi.jp)

653:友達の友達の名無しさん
08/04/09 13:25:52 twQShnnG0
(´・ω・`)ショボーン

654:友達の友達の名無しさん
08/04/09 13:26:27 twQShnnG0
(´・ω・`)ショボーン

655:友達の友達の名無しさん
08/04/09 13:26:46 twQShnnG0
(´・ω・`)ショボーン

656:友達の友達の名無しさん
08/04/09 14:14:41 t/b5iKHK0
「自分は荒らしじゃないと」と宣言して荒らしを堂々と行っている馬鹿
URLリンク(mixi.jp)

657:友達の友達の名無しさん
08/04/09 14:16:47 t/b5iKHK0
URLリンク(mixi.jp)

URLリンク(mixi.jp)
自分の考えが正しいとアンケート作ったものの予想外の結果に、
アンケートの結果をまとめようとせず、ただ副管理人を同じことの繰り返しで攻める馬鹿

658:自治スレでローカルルール議論中
08/04/09 14:52:41 MNgECv2V0
URLリンク(mixi.jp)
メッセージ待ってます。

659:友達の友達の名無しさん
08/04/09 16:11:10 L1fILgcB0

URLリンク(mixi.jp)

厨二病の浪人生
千葉県市原市在住
県立検見川高校卒



660:友達の友達の名無しさん
08/04/09 17:11:25 fhuOnmmZ0
URLリンク(mixi.jp)

2チャンネルを荒らしているカス。

661:自治スレでローカルルール議論中
08/04/09 18:28:54 EjbbaAPs0
URLリンク(mixi.jp)

メッセージやマイミク申請送りまくって

662:友達の友達の名無しさん
08/04/09 18:43:51 dr6UrUxs0
URLリンク(mixi.jp)
マイミク申請送りまくって

663:友達の友達の名無しさん
08/04/09 19:11:22 1LctHZjJ0
ここが原因で止めた人いるの?

664:友達の友達の名無しさん
08/04/09 19:48:33 EjbbaAPs0
>>663

(゚⊿゚)シラネ

665:友達の友達の名無しさん
08/04/09 20:27:33 Y/kmUaIA0
id=11677360

666:友達の友達の名無しさん
08/04/09 20:37:04 TpxYRDgW0
URLリンク(mixi.jp)
URLリンク(mixi.jp)

同じ奴

667:友達の友達の名無しさん
08/04/09 20:38:57 ++lezxSH0
URLリンク(mixi.jp)

668:友達の友達の名無しさん
08/04/09 22:39:26 m42L/8wh0
>>649
あせって名前変えたね!
じゅんに。

669:友達の友達の名無しさん
08/04/09 23:19:25 z+uj/Ef+0
mixiで犯罪支持?
URLリンク(mixi.jp)


餃子事件も聖火事件も日本のやらせと言ってるばかがいます。
見てやってください

670:友達の友達の名無しさん
08/04/10 00:20:44 2BOv4hFf0
URLリンク(m.mixi.jp)

マイミクやそのマイミクまで片っ端からメッセ入れて
『エッチな話題でもどう?』
犯罪都市、岐阜の中津川市で、50の親父がほざいてる
出身校もジャージの二中ときてる
こんな奴いるから犯罪なくならないんだ

671:友達の友達の名無しさん
08/04/10 01:55:28 peOdzdlv0
URLリンク(mixi.jp)
日記用フォト
pass 90711004

チンコの写メ多数。。。通報してくれ

672:友達の友達の名無しさん
08/04/10 02:30:43 5sGL2krW0
URLリンク(mixi.jp)

mixiで出会った人ばっかとやってる。
しかもすぐやらせてくれる。

ただし、鼻の下が長く、鼻の下が臭いww

自分ではイケてると思ってるみたい・・・

誰か教えてあげて!!


673:友達の友達の名無しさん
08/04/10 02:41:14 6X4OaVYG0
URLリンク(mixi.jp)

荒らしちゃえw

674:友達の友達の名無しさん
08/04/10 02:56:49 HMliEtXX0
URLリンク(mixi.jp)
マイミク申請送りまくって

675:友達の友達の名無しさん
08/04/10 07:41:04 gd4vPNAK0
キモイセクハラ男です

URLリンク(mixi.jp)

676:友達の友達の名無しさん
08/04/10 08:21:04 FRCi9lCkO
他人の真似ばかりする自己厨女。ウザイので消してください。

URLリンク(m.mixi.jp)

677:友達の友達の名無しさん
08/04/10 08:27:47 Z2Zq+aCmO
何県だかわすれたけど自称バンギャを名乗るトップ画に自分の顔載せてる奴でらゥザイ。



名前はさっちゃん ブッ


デブのくせに髪ピンクい。

678:友達の友達の名無しさん
08/04/10 09:13:29 SBZQjkAA0
じゅん
URLリンク(mixi.jp)

変態メッセ送るヤツ。
荒らしちゃっていいよ。

679:友達の友達の名無しさん
08/04/10 09:51:36 nLcPYjL30
URLリンク(mixi.jp)

URLリンク(mixi.jp)

URLリンク(mixi.jp)

URLリンク(mixi.jp)

URLリンク(mixi.jp)

きもい

680:友達の友達の名無しさん
08/04/10 11:45:40 eMgkvJ6b0
マイミク大募集
URLリンク(mixi.jp)



681:友達の友達の名無しさん
08/04/10 14:11:48 nbzFpv8Q0
URLリンク(mixi.jp)
荒らしを生きがいにしている奴

682:友達の友達の名無しさん
08/04/10 14:18:47 fCm3sw/9O
URLリンク(mixi.jp)
マイミク申請お願いします

683:友達の友達の名無しさん
08/04/10 14:47:58 fEGR4qfB0
『どっちが好き-ミクシィ(Y)、2ちゃん(N)?』さてあなたはどっち?
URLリンク(www.unow.jp)

684:友達の友達の名無しさん
08/04/10 15:05:28 pbMhy0Tu0
捨てアカで嫌がらせ常習犯⇒URLリンク(mixi.jp)

685:友達の友達の名無しさん
08/04/10 17:57:42 92Q8yA3jO
URLリンク(mixi.jp)

686:友達の友達の名無しさん
08/04/10 18:07:09 RQXyybXSO
URLリンク(mixi.jp)
エロいマイミク・メッセ募集中

687:友達の友達の名無しさん
08/04/10 19:12:04 okWvk2Ml0
URLリンク(mixi.jp)
物知りさんだねー

688:友達の友達の名無しさん
08/04/10 20:31:35 LXkrkizk0
URLリンク(mixi.jp)

689:友達の友達の名無しさん
08/04/10 20:36:08 vWMjcGer0
URLリンク(mixi.jp)
マイミク申請宜しく

690:友達の友達の名無しさん
08/04/10 20:57:30 1yIY77yv0
>>649
友達が1人やられた!

691:友達の友達の名無しさん
08/04/10 22:39:43 D6WooqoJ0
URLリンク(mixi.jp)

692:友達の友達の名無しさん
08/04/11 00:16:02 hJym0VUN0
URLリンク(mixi.jp)
*
名前
加藤 敏夫
*
現住所
東京都あきる野市
*
誕生日
03月26日
*
血液型
O型
*
出身地
東京都あきる野市
*
趣味
映画鑑賞, カラオケ・バンド, 旅行, マンガ, インターネット
*
職業 技術系
*
自己紹介
今年43歳になります。さいたま市立西小―さいたま市立西中―埼玉栄高校―工学院大
趣味は映画鑑賞で好きな映画はスタンドバイ ミ―
最近のマイブーム ダイエットの為にランニングを始めたのですがこれが実に面白い。本格的にやってみようかと思っています。
好きな有名人 森野琴梨さん(ナンバーワンです。) 長澤まさみ サエコ

*
好きな休日の過ごし方
ドライブですね。
*
好きな食べ物・飲み物 オムライス 卵焼き 味噌汁(これが最高)
*
好きな言葉
諦めない


693:友達の友達の名無しさん
08/04/11 01:09:19 d/oYJK6H0
URLリンク(mixi.jp)

694:友達の友達の名無しさん
08/04/11 01:40:59 1JWl7QV4O
人の男に手を出すヤリマン URLリンク(m.mixi.jp)

695:友達の友達の名無しさん
08/04/11 01:45:31 96pAuV6Y0
URLリンク(mixi.jp)

696:友達の友達の名無しさん
08/04/11 02:11:30 kHyo39l+0
レビューのカキコの時間帯に注目!!
URLリンク(mixi.jp)

697:友達の友達の名無しさん
08/04/11 02:37:59 4oAKlon40
犯罪都市、岐阜県中津川住人よりお願いです。

URLリンク(m.mixi.jp)
kazu

マイミクやマイミクのマイミクまで片っ端からメッセ入れて
『エッチな話題でもどう?』
50の和男がほざいてる

出身校も高校生が中学生殺した第二中学ときてる
こんな奴いるから犯罪なくならないんだ


皆さんお願いします。
こいつをmixiから消して下さい

698:友達の友達の名無しさん
08/04/11 09:27:04 VENzFdQ70
URLリンク(mixi.jp)
自分の正しい事が常識だと勘違いしている奴

699:友達の友達の名無しさん
08/04/11 10:08:27 8JtOwcno0
ニックネームはこんちゃん キーワードはアスペルガー 

いいなーこいつ     URLリンク(www.hpmix.com)
【ブログでの発言一部】
基本的に働くことができないと医師から言われています。そのため国から補助を受けています。


そのわりには毎日ミクシィ、ブログやってる元気あるのに、鬱だの働けないの喚いてます。日記見てみましょう。
過去には飲み会に遊び呆けています。自分に都合の悪い時に病人になっているのです。自己を顧みず他人を原因にして人に一方的な被害
妄想も抱いています。障害年金もらってないと言っていますが上記の発言、本人が障害者2級と語っている通り受給しています。ブログは
自己正当化、同情の求めるための嘘だらけ  





700:友達の友達の名無しさん
08/04/11 10:36:27 YaUGopsx0
URLリンク(mixi.jp)

コイツ潰して!

701:友達の友達の名無しさん
08/04/11 11:23:14 +y74ih3j0
URLリンク(mixi.jp)

・無職なのに「独立した」と勘違い。
・マイミク500人を「人脈」と勘違い。
・経済セミナーと称し、マルチ商法に勧誘。
・ニュー●ェイズやってたのに「俺はマルチなんかやってない」発言。
・ハッキングされ「俺も有名になったって事かな~」発言。
・気に入らないコメされると即マイミク削除→ハッキングの濡れ衣を着せる。
・その他諸々

702:友達の友達の名無しさん
08/04/11 13:19:29 grvwL9s4O
コイツDQN過ぎるw
色んなコミュにマルチトピックたててるアホ

URLリンク(mixi.jp)

703:友達の友達の名無しさん
08/04/11 16:46:23 srzHYYLy0
すごい機知外。民間航空機撃破のため松本市に引越しして来たそうだ
URLリンク(mixi.jp) しんご オウムと組みマイミクは
全員機知外。こんな野郎を追放したい。

704:友達の友達の名無しさん
08/04/11 17:47:57 Gvayd6yqO
URLリンク(mixi.jp)
学校と男の前では清純の天然ぶってて
女のしかいないと急に態度変える

705:友達の友達の名無しさん
08/04/11 19:08:55 cUx3dJ9Q0
URLリンク(mixi.jp)

日ごろの行い? 2008年04月10日23:04 雨の中の帰路。

高速道路の側道、前行く軽ミニバンと後ろのオイラ。

細い農道と交わるところに一時停止表記と減速表記、
視界は非常に悪く、おっ?ここ一時停止なんだよな!と
思いながらも、軽にならいそのまま通過。

その時、左側にHIDの光、やっぱ一時停止しないと危ないな~などと思っていたのもつかの間、赤色灯(笑。

ゴールド免許が又遠ざかり、罰金イクラだろ~?とか思いながらアクセルから足を引く。

サイレンを鳴らしながら私を追い越して、前を走行していた軽に追いつくパンダカー。

軽の人、ご愁傷様です♪

やはり日ごろの行いって大事ですね^^



706:友達の友達の名無しさん
08/04/11 21:48:23 XnQIpgBt0
URLリンク(mixi.jp)

707:友達の友達の名無しさん
08/04/11 21:50:08 kx+nN6rw0
じゅん
URLリンク(mixi.jp)

コミュつくって女集めてやりまくり。
かなりの変態!


708:友達の友達の名無しさん
08/04/12 00:52:29 ApWHa3y70
URLリンク(mixi.jp)

709:友達の友達の名無しさん
08/04/12 02:20:14 97eXjf5mO
DQN

URLリンク(mixi.jp)

710:友達の友達の名無しさん
08/04/12 02:36:25 JRbsjw/X0
申し訳ございませんがこのユーザー【id=10639732】のページにはアクセスできません。
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711:友達の友達の名無しさん
08/04/12 08:20:52 4vy7hmduO
HURLリンク(m.mixi.jp)

712:友達の友達の名無しさん
08/04/12 12:15:13 jX3hxUSN0
一日だけ「アナルグマ・ケツカル」とハンドルを変えて
URLリンク(mixi.jp)を踏む。


713:友達の友達の名無しさん
08/04/12 13:44:08 Qpd6ULwZ0
URLリンク(mixi.jp)

714:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:09:11 7CtLO6gK0
政談月の鏡と申す外題(げだい)を置きまして申し上(あぐ)るお話は、宝暦(ほうれき)年間の町奉行で依田豐前
守(よだぶぜんのかみ)様の御勤役中に長く掛りました裁判でありますが、其の頃は町人と武家(ぶげ)と公事(く
じ)に成りますと町奉行は余程六(むず)ケしい事で有りましたが、只今と違いまして旗下(はたもと)は八万騎、二
百六十有余頭(かしら)の大名が有って、往来は侍で目をつく様です。其の時の江戸の名物は、武士、鰹、大名
小路、広小路、茶見世、紫、火消、錦絵と申して、今の消防方は四十八組有って、火事の時は道路が狭いから大
騒ぎです、焼出(やけだ)されが荷を担(かつ)いで逃げ様とする、向(むこう)からお町奉行が出馬に成る、此方(
こっち)の曲角からお使番が馬で来る、彼方(あちら)から弥次馬が来る、馬だらけに成りますが、只今は道路の
幅が広くなりずーッと見通せますが、以前は見通しの附かんように通路(とおりみち)が迂曲(うねっ)て居りました
もので、スワと云うと木戸を打ち路次を締める、少しやかましい事が有ると六(む)ツ限(ぎり)で締切ります、此の
木戸の脇に番太郎がございまして、町内には自身番が有り、それへ皆町内から町内の家主(いえぬし)(差配人
さん)がお勤めに成って、自身番の後(うしろ)の処が屹度(きっと)番太郎に成って居たもので、番太郎は拍子木
を打って夜廻りを致す丈(だけ)の事でスワ狼藉者だと云っても間に合う事はない、慄(ふる)えて逃げて仕舞い、
拍子木を溝(どぶ)の中へ放り出して番屋へ這込(はいこ)むなどと云う弱い事で、冬になると焼芋や夏は心太(と
ころてん)を売りますが、其の他(た)草履草鞋を能(よ)く売ったもので、番太郎は皆金持で、番太郎は越前から
出る者が多かったようで、それに湯屋の三助は能登国(のとのくに)から出て来ます、米搗(こめつき)は越後と信
濃からと極って居ました、江戸ッ子の番太郎は無い中に、長谷川町(はせがわちょう)の木戸の側(わき)に居た番
太郎は江戸ッ子でございます、名を喜助(きすけ)と云って誠に酒喰(さけくら)いですが、妙な男で夜番(よばん)を
する時には堅い男だから鐘が鳴ると直(すぐ)に拍子木を持って出ます、向うの突当(つきあたり)までちゃんと行っ
て帰って来ます。大概の横着者は、チョン/\チョン/\と四つ打って町内を八分程行くと、音さえ聞えれば宜(い)
いんで帰って来ますが此の男は突当りまで見廻って来ないと気が済まないと云う堅い人で、ボンチョン番太と綽名(
あだな)が有る位で何(ど)う云う訳かと聞いて見ると、ボーンと云う鐘とチョンと打出す拍子木と同じだからボンチョン
番太と云う、余程堅い男だが酒が嗜(す)きで暇(ま)さえあれば酒を飲みます、女房をお梅と云って年齢(とし)は二
十三で、亭主とは年齢が違って若うございますが、亭主思いで能く生酔(なまえい)の看護(もり)を致しますので、近
所の評判にあの内儀(かみ)さんは好(い)い女だ喜助の女房には不釣合だと云われる位ですが、誠に貞節な者で一
体情の深い女でございますから、本当に能く亭主の看護を致して、嗜(すき)な物を買って置き、


715:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:09:56 7CtLO6gK0
 梅「寒いから一杯お飲(た)べかえ、沢山飲むといけないよ、二合にしてお置よ、三合に成ると少し舌が廻らなくなる、身体に障(さわ)るだろう
と思って案じられるから」
 喜「うむ寒いな、霜月に這入ってからグッと寒く成った何(ど)うしても寒くなると飲まずにゃ居られねえな」
 梅「寒いたって、寒い訳だよ、朝から飲んでるからもう酔い醒(ざめ)のする時分だからさ、町代(まちだい)の總助(そうすけ)さんが来て余り
酒を飲ましちゃアいけない、あれでは身体が堪(たま)るまいと被仰(おっしゃ)って案じておいでだよ、皆様(みなさん)が御贔屓(ごひいき)だ
から然(そ)う云って下さるんだよ」
 喜「もう是れ限(ぎ)り飲まねえから、よう宜(い)いからもう一本燗(つ)けなよ」
 梅「燗けなってお酒が無いんだよ」
 喜「無けりゃア買って来ねえな、おい」
 梅「もう今日はこれだけにしてお置きな」
 喜「熱い時分ならそれで宜いが、寒い時分には二合じゃア足りねえ、ようお前(めえ)能く己(おれ)の面倒を見て可愛がって呉んな、其の代
り己がお前を可愛がって遣(や)る事もあらア」
 梅「お戯(ふざ)けでないよあのお店(たな)から酒の下物(さかな)にしろって台所の金藏(きんぞう)さんが持って来た物があるよ」
 喜「彼奴(あいつ)め下物だって鮭の頭位だろう、あゝ有難い持つべきものは女房か、有難いな、何(ど)うしたっても好(い)い酒は四方(よも
)へ行かなければ無(ね)えな」
 とクビーリ/\飲んで居る、其の時店先へ立止りました武士(さむらい)は、ドッシリした羅紗(らしゃ)の脊割羽織(せわりばおり)を着(ちゃく
)し、仙台平(せんだいひら)の袴(はかま)、黒手(くろて)の黄八丈(きはちじょう)の小袖(こそで)を着(き)、四分一拵(ごしら)えの大小、寒
いから黒縮緬の頭巾を冠(かぶ)り、紺足袋(こんたび)日勤草履(にっきんぞうり)と云う行装(こしらえ)の立派なお武士、番太郎の店へ立ち、
 武「これ此処(こゝ)に有る紙を一帖(いちじょう)呉れんか」
 喜「へいお入来(いで)なさいまし是は何うも御免なさいまし、誠に有難う、其処(そこ)に札が附いてます、一帖幾らとして有りますへい半紙
は二十四文で、駿河(するが)半紙は十六文、メンチは十個(とお)で八文でげす、藁草履は私(わっち)の処が一番安いのでございます、有
難う誠に何うも、其処へ行くんですが、ちょいと銭を箱の中へ放り込んで一帖持って行って下さいまし、札が附いてますから間違えは有りま
せん」 武「なに貴様は余程酒が嗜(す)きだな、私(わし)が此処(こゝ)を通る度(たび)に飲んで居(お)らん事はないが、貴様は余程(よっぽ
ど)酒
家(しゅか)だのう」
 喜「ヘイ嗜きです、お寒くなると朝から酒を飲まねえと気が済みませんな」
 武「酒家(さけのみ)は妙なものだな、酒屋の前を通ってぷーんと酒の香(におい)が致すと飲み度(た)くなる、私(わし)も同じく極(ごく)嗜(
すき)だが、貴様が飲んで居(い)る処を見ると何となく羨(うらやま)しくなる」
 喜「え、殿様もお嗜きで、極(ごく)好(い)い酒が有ります、私(わっち)ゃア番太郎ですが江戸ッ子の番太郎は余り無(ね)えんです、極好い
酒が有りますから、誠に失礼ですが一つ召上れ」
 武「それは辱(かたじけな)いなア」
 梅「あらまア御免遊ばせ酔って居りますから、お前さん何と云う事だよ、お武家様を番太郎の家(うち)などへお上げ申す事が出来ますもの
かね」
 喜「いや嗜きじゃア堪らねえ、ねエ殿様、此方(こちら)へお上(あが)んなさい、長い刀(もの)を一本半分差して斯(こ)ういう家(うち)に上る
と身体を横にしなければ這入れませんよ」
 武「是は御家内か、私(わし)も酒が嗜きでな、此処を通る度に御亭主が飲んで居る、今一寸(ちょっと)買物をして見ると矢張(やっぱり)飲
んで居て羨しく遂(つい)やる気になりました」
 梅「でも汚ない此んな狭い処へ」


716:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:10:49 7CtLO6gK0
喜「宜(い)いから黙ってろ、殿様此女(これ)の里は白銀町(しろかねちょう)の白旗稲荷(しらはたいなり)の神主の娘ですが、何うしたんだ
か、亭主思いで、私(わたくし)が酒を飲んでは世話を焼かせますが、能く面倒を見ます」
 梅「お止(よ)しよ」
 武「では一盃(いっぱい)戴こうか」
 喜「お酌をして上げな、大きい盃(もの)で」
 武「これは御内儀(ごないぎ)痛み入りますな、お酌で」
 梅「誠に何うも召上る物が有りませんで」
 武「いや心配してはいかん、却(かえ)って是が宜しい成程是は何うも余程好(い)い酒を飲むな」
 喜「えゝ四方(よも)で、彼家(あすこ)では好い酒を売ります、和泉町(いずみちょう)では彼家ばかりで、番頭が私(わっち)を知ってるので、
私が買いに行(ゆ)くと長谷川町の番太が来たって別に調合を仕ないで、一本生(いっぽんぎ)の鬼殺しを呉れますが、酒は自慢で」
 武「うむ是は堪らん、では近附(ちかづき)の為に一盃(いっぱい)」
 と喜助に差しました。喜助は頭(かしら)を下げ。
 喜「へー有難う、おいお梅此処(こゝ)へ来い酌をして呉れ手前(てめえ)は己に能く酒を飲むな/\てえが立派なお武家様がこんな汚い家
(うち)へ這入って来て番太郎と酒を飲合(のみあ)い、殿様のお盃(さかずき)を私(わし)が飲んで其の猪口(ちょく)を洗(そゝ)ぐのは水臭い
って殿様が直(すぐ)に召上ると云うのは酒の徳だ」
 武「酒には上下の差別をしてはいけない」
 喜「洒落(しゃれ)た好い殿様だ、何卒(どうぞ)毎日来て下さいまし、殿様私(わっち)の為めには大切のお店の番頭が私を贔屓で去年の暮
に塩辛を呉れましたが、好い鯛の塩辛で、それと一緒に雲丹(うに)を貰ったんですが、女房(かゝあ)は雲丹をしらねえもんだから、鬼を喰う
と間違えました、是は※(からすみ)」
 武「是は何うも皆(みんな)酒家(さけのみ)の喰う物ばかりで」
 梅「何かお肴を」
 喜「鰻でも然(そ)う云って来ねえよ」
 梅「上(あが)るかえ」
 喜「上っても上らなくっても宜(い)い、鰌(どじょう)の抜きを、大急ぎで然う云って来や、冷飯草履を穿(は)いて往(い)け殿様彼(あれ)は年
は二十三ですが、器量が好(よ)うございましょう、幾ら器量が好くたって了簡が悪くっちゃア仕様が無(ね)えが、良い了簡で私(わっち)を可愛
がりますよ」
 武「是は恐入った、馳走に成るからお前のうけ[#「うけ」に傍点]も聞かなければならんが、貴様は酒が嗜きだと云う処から初めて私(わし)
が来て馳走に成り放(ばな)しでは済まんから、少し譲り難い物を遣(や)ろうか、是は容易に得難い酩酒で有る、何(いず)れで出来るか其処
(そこ)は聞かんが、是は何か京都の大内から将軍家へ参って、将軍家から御三家御三卿方へ下されに成って、たしない[#「たしない」に傍
点]事で有るから其の又家来共に少しずつ之を頂戴致させるんだが、何うも利き目が違って、其の酒の中へぽっちり、たらりと落して、一合の
中へ猪口(ちょく)に四半分もポタリと落してやると何(なん)とも云えん味(あじわ)いのものだ、飲む気が有るなら遣ろうか」
 喜「是は何うも、何(なん)ですかえ…夫(それ)は有難うございます…此盃(これ)へ何卒(どうぞ)…是は何うも頂く物は、えへゝゝ大きな物へ」


717:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:11:37 7CtLO6gK0
武「余り大きな物へ入れちゃア困る、徳利が小さいから、これへ入れてやろう」
 風呂敷を解いて小さい徳利を取出(とりいだ)して、栓(くち)の堅いのを抜きまして、首を横にしてタラ/\/\と彼是(かれこ)れ茶椀
に半分程入れて、
 武「実は私(わし)も親類共へ些(ちっ)と遣り度(た)いと思って提(さ)げて来たのだが、馳走に成って何も礼に遣る物がないから」
 喜「有難う存じます、おゝお梅、行って来たか」
 梅「あゝ行って来たよ」
 喜「今な、禁裏さまや公方様が喰(くら)って、丁寧な事(こた)ア云えねえが、御三家御三卿が喰(くら)う酒で番太郎風情が戴ける物じ
ゃねえんだが、殿様が遣ると仰しゃって戴いた」
 梅「夫(それ)はまア有難い事で、何もございませんが、召上るか召上らないか存じませんが、只今鰌の抜(ぬき)を云い付けて参りましたから」
 武「何も構って呉れちゃア困る」
 喜「宜(い)いから彼方(あっち)へ行ってろ、夫(それ)から香物(こう/\)の好いのを出しな」
 武「夫(それ)を直接(じか)に飲んではいけない、何(ど)んな酒家(さけのみ)でも直接にはやれない」
 喜「なに旦那私(わし)は泡盛でも焼酎でもやります」
 とグイと一口飲みました。
 武「此奴(こいつ)ア気強(きつ)い」
 喜「ムヽ、是は何うも酷(ひど)いな、此奴ア、ムヽ、脳天迄滲(し)みるような塩梅(あんばい)で」
 武「なか/\えらいな、それを二タ口と飲む者はないよ」
 喜「なに二タ口、訳アございません、薩摩の泡盛だって何(な)んでもない、ムム」
 梅「何う仕たんだよ」
 喜「なに宜(い)いよ、ム、ム大変だ、頭が割れるような酷いもので、此奴(こいつ)を公方様が喰(くら)うかね」
 武「酒を割ってやらんければいかん、残りは大切(だいじ)に取って置きな」
 喜「ヘエお梅是を何処(どっ)かへ入れて置きな」
 武「ポッチリ酒に割って飲むのだ、私(わし)は少し取急ぐで、是を親類共に持って行ってやらんければならん、又此の頃に来る」
 喜「只今抜きが直(じ)きに参りますが…左様ですか…御迷惑で、誠に失礼を致して恐入ります」
 武「大きに厄介で有った、御家内誠に世話に成りました」
 と丁寧にお武家が家内にも挨拶をして落着き払って、チャラリ/\雪駄(せった)を穿いて行(ゆ)く後影(うしろかげ)を木戸の処を曲るまで見送って、


718:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:12:25 7CtLO6gK0
喜「有難うございました、どうぞ殿様此の後(のち)も寄ってお呉んなさい、へえへえ有難う、おい嬶(かゝ)ア、大切(たいせつ)に取って置きな、御三家御三卿が喰(くら)
うてえんだが、旨くも何共(なんとも)ねえものを飲むんだな、香の物の好(い)いのを出して呉れ、酒家(しゅか)は沢山(たんと)の肴は要らない、香の物の好いのが有
ればそれで沢山だ、併(しか)し酷(ひど)い酒を飲(のま)せやアがったなあゝ痛(いて)え、変な酒だな、おいお梅一寸(ちょっと)来て呉んな、ウ、ウ、腹が痛えから一寸
来て呉れ」
 梅「極りを云ってるよ、お前飲み過(すぎ)だよ、※癪(せんしゃく)に障るんだよ」
 喜「彼(あ)ン畜生変な物を飲ましやアがって、横ッ腹(ぱら)を抉(えぐ)るように、鳩尾骨(みぞおち)を穿(ほじ)るような、ウヽ、あゝ痛え」
 梅「何うしたんだよ」
 喜「アヽ痛え、ア痛たゝゝ、お、お梅、脊中を押して呉れ、脊中じゃアねえ、肩の処を横ッ腹を」
 梅「何処(どこ)だよ」
 喜「其処(そこ)じゃアねえ、此方(こっち)の足の爪先だ、膝だ、あゝ肩だ」
 ともがいて居ます、恐ろしいもので、節々(ふし/″\)の痛みが夥(おびたゞ)しく毛穴が弥立(よだ)って、五臓六腑悩乱(のうらん)致し、ウーンと立上るから女房は驚
いて居ると、喜助は苦しみながら台所へ這い出してガーと血の塊を吐いて身を震わして居る。お梅は恟(びっく)りして、
 梅「家(うち)の良人(ひと)が何うか為(し)ましたから誰方(どなた)か来て下さいよう、總助さん/\」
 總「何うした/\、きまりだ、吐血だ、だから酒を飲んじゃア宜(い)かねえと云うのだ、何う云うものだこれ喜助確(しっか)りしろ、喜助/\」
 喜「ウーン」
 それなりに相成りました。
 總「何う云う訳だ」
 と云うとお梅は涙ながら、これ/\斯(こ)う云う訳で御酒(ごしゅ)を割って飲まなければ宜(い)けないと云うのを家(うち)の良人(ひと)が直接(じか)に飲みましたから
身体に障ったのでございましょう。
 總「夫(それ)は怪(け)しからん事だ、何しても御検視を願わなければならん」
 と云うので、御検視到来に相成りお医者も立会って調べると、是は全く酒の毒だが、尋常(たゞ)の死にようではない、余程効能(きゝめ)の強い毒酒ではないかと、依田
豊前守様の白洲へ持出したが御奉行が其の酒を段々お調べに成り、医者を立会(たちあわ)して見ると、一ト通りならん処の毒薬で、何でも是は大名旗下(はたもと)の
中(うち)に謀叛(むほん)之(こ)れ有る者、お家を覆(くつがえ)さんとする者が、毒酒を試しに来たに相違ないと云うので、女房に其の武家の顔を知って居(お)るかと尋
ねると、これ/\斯(こ)う云う姿の武家体(てい)と申し上げたので、人相書を作り八方十方へお手配(てくば)りに成り箱根の前まで手が廻る事に成ったが、知れません。
お梅は貞節な婦人ゆえ泣いてばかり居ります。里方で引取ろうと云うと、
 梅「私(わたくし)はお願いだから、あの武士(さむらい)が毒を試しに来て、始めから何うも様子が訝(おか)しいと思ったが、顔を知って居るのは私(わたし)ばかり、
此の長谷川町を再び通る気遣いは有るまいから、人の盛(さか)る処へ行ってあの侍を見付けて、亭主の敵(かたき)を強いお上(かみ)に取って貰わなければならないから、
何うぞ私(わたくし)を吉原へ女郎に売って下さい、格子先へ立つ人の中にあの武家に似た人が有ったら騙(だま)して捕まえて亭主の敵を討つ」


719:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:14:59 7CtLO6gK0
 今日(こんにち)の処は、長谷川町の番人喜助の続きとお話が二途(ふたみち)に分れますが、後(のち)に一つ道に成る其の前文でありますからお聴き悪(にく)い事でご
ざいましょう、扨(さて)築地(つきじ)の本郷町(ほんごうちょう)と小田原町(おだわらちょう)、柳原町(やなぎはらちょう)と町内が繋(つな)がって居りますが、小田原町の
家主(やぬし)に金兵衞と申す者がございまして、其の頃は家号(いえな)を申して近江屋(おうみや)の金兵衞と云う処から近金(ちかきん)と云われます、年齢(とし)は四
十二に成りますが、真実な人で、女房をお蓮(れん)と云って三十八に成ります、家主(いえぬし)の内儀(かみ)さんは随分権式(けんしき)ぶったものでございますが至っ
て気さくなお喋りのお内儀さんで、夫婦寄ると子が無いので其の噂ばかりして居ります。
 蓮「旦那え/\、もう何(ど)うも何(な)んですね、夫婦の中に子の無い位心細いものは無いと思って居ます、お互に年齢(とし)を取って、来年はお前さんは四十三だよ」
 金「年齢(とし)の事を云うと心細くなるから其んな事を云うな」
 蓮「だってさ、夫婦養子をしても気心の知れない者に気兼(きがね)をするのも厭(いや)だし、五人組の安兵衞(やすべえ)さんなどは、無い子では泣きを見ないから寧(い
っ)そ子の無い方が宜(い)いと云う側から子が出来て、今度ので十二人だてえます」
 金「あの人は子福者(こぶくしゃ)だのう」
 蓮「其の癖お内儀さんは痩ぎすで子は無さそうだのに」
 金「お前(めえ)などはポッチャリ肥満(ふと)ってゝお尻も大きいから子は出来そうだが」
 蓮「授かりものですね、子がなければ夫婦養子を仕なければ成りませんが、夫婦養子と云うよりも私の考えじゃア一人娘を貰って置いて、お前様(さん)には甥(おい)だが
竹次郎(たけじろう)を宅(うち)へ入れる積りですが、当人が厭だと云うかも知れませんが、お前様の血統(ちすじ)だから是非此の家(や)を継(つが)せるより仕方は無いが
、嫁が悪いといけないよ、それが本当の子で無いから私が心細いよ、お前さんには身内だから竹は宜(い)いが嫁の根性が悪いと竹さんまで嫁に捲(まか)れて仕舞って、
訝(おか)しな了簡に成って親不孝をされた日にア大変だよ、お前さんが長生きをしてお呉んなされば宜いが若(も)し眼でも眠った後(あと)は大変だよ、だから嫁の宜いの
が欲しいね」
 金「欲しいたって無いよ、縁ずくだから」
 蓮「裏に居る売卜者(うらないしゃ)の浪人の娘は好(い)い器量だね」
 金「うむ、彼(あれ)は何(ど)うも無いのう、品格と云い、親孝行でな、彼(あ)の娘(こ)に味噌漉(みそこし)を提げさせるのは惜しいものだ、お父(とっ)さんはヨボ/\して
えるがまだ其んなに取る年でもないようだが、寒さ橋(ばし)の側へ占いに出るのだが可哀想だのう」
 蓮「あの娘(こ)を貰い度(た)いもんだね」
 金「貰い度いたって先方(むこう)も一人娘だから」
 蓮「其処(そこ)を工夫してさ」
 金「工夫たって一人子(ひとりっこ)だから呉れないよ」
 蓮「私に宜(い)い工夫が有るんです、先方(さき)は大変に困って居る様子だから、可愛がって店賃(たなちん)を負けておやんなさいよ」
 金「店賃を負けるてえ訳にはいかない、地主へ遣(や)らなくっちゃアならないから」
 蓮「成る丈(た)け催促をしないようにおしなさい」
 金「催促するのも、少しは遠慮をして居るのよ」
 蓮「彼(あ)んな親孝行な娘(こ)は有りませんね、浪人ぐるみ引取っても構やアしない」
 金「親付きでか」
 蓮「親付きだって、あの浪人者なら宜いよ、あの浪人者を呼んで、お前さんね、親一人子一人だが、良い子を持ってお仕合せだ、どうせ宅(うち)へ養子をするのだが、
甥の竹と云う者が奉公先から下(さが)って来れば宅の養子に成る身の上だが、彼(あれ)に添わしたいように思うが、お前様(さん)も一人子(ひとりご)だから他(ほか)
へ呉れる理由(わけ)にも行(ゆ)くまいから、一緒こたにお成んなさいと云って御覧なさい」
 金「馬鹿ア云え、そんな事が云えるものか、あの浪人は堅い男だ、毎朝板の間へ手を突いて、お早うと丁寧に厳格(こつ/\)した人だが、そんな篦棒(べらぼう)な事を
頭を禿(はげ)らかして云えるものか」


720:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:17:43 7CtLO6gK0
私の町の博物館の、大きなガラスの戸棚(とだな)には、剥製(はくせい)ですが、四疋(ひき)の蜂雀(はちすずめ)がいます。
 生きてたときはミィミィとなき蝶(ちょう)のように花の蜜(みつ)をたべるあの小さなかあいらしい蜂雀です。わたくしはその四疋の中でいちばん上の枝(えだ)にとま
って、羽を両方ひろげかけ、まっ青なそらにいまにもとび立ちそうなのを、ことにすきでした。それは眼(め)が赤くてつるつるした緑青(ろくしょう)いろの胸をもち、そ
のりんと張った胸には波形のうつくしい紋(もん)もありました。
 小さいときのことですが、ある朝早く、私は学校に行く前にこっそり一寸(ちょっと)ガラスの前に立ちましたら、その蜂雀が、銀の針の様なほそいきれいな声で、に
わかに私に言いました。
「お早う。ペムペルという子はほんとうにいい子だったのにかあいそうなことをした。」
 その時窓にはまだ厚い茶いろのカーテンが引いてありましたので室(へや)の中はちょうどビール瓶(びん)のかけらをのぞいたようでした。ですから私も挨拶(あ
いさつ)しました。
「お早う。蜂雀。ペムペルという人がどうしたっての。」
 蜂雀がガラスの向うで又(また)云(い)いました。
「ええお早うよ。妹のネリという子もほんとうにかあいらしいいい子だったのにかあいそうだなあ。」
「どうしたていうの話しておくれ。」
 すると蜂雀はちょっと口あいてわらうようにしてまた云いました。
「話してあげるからおまえは鞄(かばん)を床(ゆか)におろしてその上にお座(すわ)り。」
 私は本の入ったかばんの上に座るのは一寸困りましたけれどもどうしてもそのお話を聞きたかったのでとうとうその通りしました。
 すると蜂雀は話しました。
「ペムペルとネリは毎日お父さんやお母さんたちの働くそばで遊んでいたよ〔以下原稿一枚?なし〕

 その時僕(ぼく)も
『さようなら。さようなら。』と云ってペムペルのうちのきれいな木や花の間からまっすぐにおうちにかえった。
 それから勿論(もちろん)小麦も搗(つ)いた。
 二人で小麦を粉にするときは僕はいつでも見に行った。小麦を粉にする日ならペムペルはちぢれた髪(かみ)からみじかい浅黄(あさぎ)のチョッキから木綿(もめん)のだ
ぶだぶずぼんまで粉ですっかり白くなりながら赤いガラスの水車場でことことやっているだろう。ネリはその粉を四百グレンぐらいずつ木綿の袋(ふくろ)につめ込(こ)んだりつ
かれてぼんやり戸口によりかかりはたけをながめていたりする。
 そのときぼくはネリちゃん。あなたはむぐらはすきですかとからかったりして飛んだのだ。それからもちろんキャベジも植えた。

 二人がキャベジを穫(と)るときは僕はいつでも見に行った。
 ペムペルがキャベジの太い根を截(き)ってそれをはたけにころがすと、ネリは両手でそれをもって水いろに塗(ぬ)られた一輪車に入れるのだ。そして二人は車を押(お)して
黄色のガラスの納屋(なや)にキャベジを運んだのだ。青いキャベジがころがってるのはそれはずいぶん立派だよ。
 そして二人はたった二人だけずいぶんたのしくくらしていた。」
「おとなはそこらに居なかったの。」わたしはふと思い付いてそうたずねました。


721:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:20:06 7CtLO6gK0
「おとなはすこしもそこらあたりに居なかった。なぜならペムペルとネリの兄妹(きょうだい)の二人はたった二人だけずいぶん愉快(ゆかい)にくらしてたから。
 けれどほんとうにかあいそうだ。
 ペムペルという子は全くいい子だったのにかあいそうなことをした。
 ネリという子は全くかあいらしい女の子だったのにかあいそうなことをした。」
 蜂雀は俄(にわ)かにだまってしまいました。
 私はもう全く気が気でありませんでした。
 蜂雀はいよいよだまってガラスの向うでしんとしています。
 私もしばらくは耐(こら)えて膝(ひざ)を両手で抱(かか)えてじっとしていましたけれどもあんまり蜂雀がいつまでもだまっているもんですからそれにそのだまりよう
と云ったらたとえ一ぺん死んだ人が二度とお墓から出て来ようたって口なんか聞くもんかと云うように見えましたのでとうとう私は居たたまらなくなりました。私は立っ
てガラスの前に歩いて行って両手をガラスにかけて中の蜂雀に云いました。
「ね、蜂雀、そのペムペルとネリちゃんとがそれから一体どうなったの、どうしたって云うの、ね、蜂雀、話してお呉(く)れ。」
 けれども蜂雀はやっぱりじっとその細いくちばしを尖(とが)らしたまま向うの四十雀(しじゅうから)の方を見たっきり二度と私に答えようともしませんでした。
「ね、蜂雀、談(はな)してお呉れ。だめだい半分ぐらい云っておいていけないったら蜂雀
 ね。談してお呉れ。そら、さっきの続きをさ。どうして話して呉れないの。」
 ガラスは私の息ですっかり曇(くも)りました。
 四羽の美しい蜂雀さえまるでぼんやり見えたのです。私はとうとう泣きだしました。
 なぜって第一あの美しい蜂雀がたった今まできれいな銀の糸のような声で私と話をしていたのに俄かに硬(かた)く死んだようになってその眼もすっかり黒い硝子玉(
ガラスだま)か何かになってしまいいつまでたっても四十雀ばかり見ているのです。おまけに一体それさえほんとうに見ているのかただ眼がそっちへ向いてるように見え
るのか少しもわからないのでしょう。それにまたあんなかあいらしい日に焼けたペムペルとネリの兄妹が何か大へんかあいそうな目になったというのですものどうして泣
かないでいられましょう。もう私はその為(ため)ならば一週間でも泣けたのです。
 すると俄かに私の右の肩(かた)が重くなりました。そして何だか暖いのです。びっくりして振(ふ)りかえって見ましたらあの番人のおじいさんが心配そうに白い眉(ま
ゆ)を寄せて私の肩に手を置いて立っているのです。その番人のおじいさんが云いました。
「どうしてそんなに泣いて居るの。おなかでも痛いのかい。朝早くから鳥のガラスの前に来てそんなにひどく泣くもんでない。」
 けれども私はどうしてもまだ泣きやむことができませんでした。おじいさんは又云いました。
「そんなに高く泣いちゃいけない。
 まだ入口を開けるに一時間半も間があるのにおまえだけそっと入れてやったのだ。
 それにそんなに高く泣いて表の方へ聞えたらみんな私に故障を云って来るんでないか。そんなに泣いていけないよ。どうしてそんなに泣いてんだ。」
 私はやっと云いました。
「だって蜂雀がもう私に話さないんだもの。」
 するとじいさんは高く笑いました。
「ああ、蜂雀が又おまえに何か話したね。そして俄かに黙(だま)り込んだね。そいつはいけない。この蜂雀はよくその術をやって人をからかうんだ。よろしい。私が叱(し
か)ってやろう。」
 番人のおじいさんはガラスの前に進みました。


722:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:21:00 7CtLO6gK0
「おい。蜂雀。今日で何度目だと思う。手帳へつけるよ。つけるよ。あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまうよ。
 ええおい。さあ坊(ぼっ)ちゃん。きっとこいつは談(はな)します。早く涙(なみだ)をおふきなさい。まるで顔中ぐじゃぐじゃだ。そらええああすっかりさっぱりした。
 お話がすんだら早く学校へ入らっしゃい。
 あんまり長くなって厭(あ)きっちまうとこいつは又いろいろいやなことを云いますから。ではようがすか。」
 番人のおじいさんは私の涙を拭(ふ)いて呉れてそれから両手をせなかで組んでことりことり向うへ見まわって行きました。
 おじいさんのあし音がそのうすくらい茶色の室(へや)の中から隣(とな)りの室へ消えたとき蜂雀はまた私の方を向きました。
 私はどきっとしたのです。
 蜂雀は細い細いハアモニカの様な声でそっと私にはなしかけました。
「さっきはごめんなさい。僕すっかり疲(つか)れちまったもんですからね。」
 私もやさしく言いました。
「蜂雀。僕ちっとも怒(おこ)っちゃいないんだよ。さっきの続きを話してお呉れ。」
 蜂雀は語りはじめました。
「ペムペルとネリとはそれはほんとうにかあいいんだ。二人が青ガラスのうちの中に居て窓をすっかりしめてると二人は海の底に居るように見えた。そして二人の声は僕には聞
えやしないね。
 それは非常に厚いガラスなんだから。
 けれども二人が一つの大きな帳面をのぞきこんで一所に同じように口をあいたり少し閉じたりしているのを見るとあれは一緒(いっしょ)に唱歌をうたっているのだということは誰
(たれ)だってすぐわかるだろう。僕はそのいろいろにうごく二人の小さな口つきをじっと見ているのを大へんすきでいつでも庭のさるすべりの木に居たよ。ペムペルはほんとうに
いい子なんだけれどかあいそうなことをした。
 ネリも全くかあいらしい女の子だったのにかあいそうなことをした。」
「だからどうしたって云うの。」
「だからね、二人はほんとうにおもしろくくらしていたのだから、それだけならばよかったんだ。ところが二人は、はたけにトマトを十本植えていた。そのうち五本がポンデローザで
ね、五本がレッドチェリイだよ。ポンデローザにはまっ赤な大きな実がつくし、レッドチェリーにはさくらんぼほどの赤い実がまるでたくさんできる。ぼくはトマトは食べないけれど、
ポンデローザを見ることならもうほんとうにすきなんだ。ある年やっぱり苗(なえ)が二いろあったから、植えたあとでも二いろあった。だんだんそれが大きくなって、葉からはトマ
トの青いにおいがし、茎(くき)からはこまかな黄金(きん)の粒(つぶ)のようなものも噴(ふ)き出した。
 そしてまもなく実がついた。
 ところが五本のチェリーの中で、一本だけは奇体(きたい)に黄いろなんだろう。そして大へん光るのだ。ギザギザの青黒い葉の間から、まばゆいくらい黄いろなトマトがのぞ
いているのは立派だった。だからネリが云(い)った。
『にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね。』
 ペムペルは唇(くちびる)に指をあててしばらく考えてから答えていた。
『黄金(きん)だよ。黄金だからあんなに光るんだ。』
『まあ、あれ黄金なの。』ネリがすこしびっくりしたように云った。
『立派だねえ。』
『ええ立派だわ。』
 そして二人はもちろん、その黄いろなトマトをとりもしなけぁ、一寸(ちょっと)さわりもしなかった。
 そしたらほんとうにかあいそうなことをしたねえ。」
「だからどうしたって云うの。」
「だからね、二人はこんなに楽しくくらしていたんだからそれだけならばよかったんだよ。ところがある夕方二人が羊歯(しだ)の葉に水をかけてたら、遠くの遠くの野はらの方
から何とも云えない奇体ないい音が風に吹(ふ)き飛ばされて聞えて来るんだ。まるでまるでいい音なんだ。切れ切れになって飛んでは来るけれど、まるですずらんやヘリ
オトロープのいいかおりさえするんだろう、その音がだよ。二人は如露(じょろ)の手をやめて、しばらくだまって顔を見合せたねえ、それからペムペルが云った。
『ね、行って見ようよ、あんなにいい音がするんだもの。』
 ネリは勿論(もちろん)、もっと行きたくってたまらないんだ。
『行きましょう、兄さま、すぐ行きましょう。』
『うん、すぐ行こう。大丈夫(だいじょうぶ)あぶないことないね。』


723:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:23:03 7CtLO6gK0
けれども何だか二人とも、安心にならなかったのだ。どうもみんなが入口で何か番人に渡(わた)すらしいのだ。
 ペムペルは少し近くへ寄って、じっとそれを見た。食い付くように見ていたよ。
 そしたらそれはたしかに銀か黄金(きん)かのかけらなのだ。
 黄金をだせば銀のかけらを返してよこす。
 そしてその人は入って行く。
 だからペムペルも黄金をポケットにさがしたのだ。
『ネリ、お前はここに待っといで。僕一寸(ちょっと)うちまで行って来るからね。』
『わたしも行くわ。』ネリは云ったけれども、ペムペルはもうかけ出したので、ネリは心配そうに半分泣くようにして、又看板を見ていたよ。
 それから僕は心配だから、ネリの処に番しようか、ペムペルについて行こうか、ずいぶんしばらく考えたけれども、いくらそこらを飛ん
で見ても、みんな看板ばかり見ていて、ネリをさらって行きそうな悪漢は一人も居ないんだ。
 そこで安心して、ペムペルについて飛んで行った。
 ペムペルはそれはひどく走ったよ。四日のお月さんが、西のそらにしずかにかかっていたけれど、そのぼんやりした青じろい光で、どん
どんどんどんペムペルはかけた。僕は追いつくのがほんとうに辛(つら)かった。眼がぐるぐるして、風がぶうぶう鳴ったんだ。樺(かば)の
木も楊(やなぎ)の木も、みんなまっ黒、草もまっ黒、その中をどんどんどんどんペムペルはかけた。
 それからとうとうあの果樹園にはいったのだ。
 ガラスのお家が月のあかりで大へんなつかしく光っていた。ペムペルは一寸立ちどまってそれを見たけれども、又走ってもうまっ黒に見
えているトマトの木から、あの黄いろの実のなるトマトの木から、黄いろのトマトの実を四つとった。それからまるで風のよう、あらしのよう
に汗と動悸(どうき)で燃えながら、さっきの草場にとって返した。僕も全く疲(つか)れていた。
 ネリはちらちらこっちの方を見てばかりいた。
 けれどもペムペルは、
『さあ、いいよ。入ろう。』
とネリに云った。
 ネリは悦(よろこ)んで飛びあがり、二人は手をつないで木戸口に来たんだ。ペムペルはだまって二つのトマトを出したんだ。
 番人は『ええ、いらっしゃい。』と言いながら、トマトを受けとり、それから変な顔をした。


724:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:24:11 7CtLO6gK0
編輯者(へんしゅうしゃ) 支那(シナ)へ旅行するそうですね。南ですか? 北ですか?
小説家 南から北へ周(めぐ)るつもりです。
編輯者 準備はもう出来たのですか?
小説家 大抵(たいてい)出来ました。ただ読む筈だった紀行や地誌なぞが、未だに読み切れないのに弱っています。
編輯者 (気がなさそうに)そんな本が何冊もあるのですか?
小説家 存外ありますよ。日本人が書いたのでは、七十八日遊記、支那文明記、支那漫遊記、支那仏教遺物、支那風俗、
支那人気質、燕山楚水(えんざんそすい)、蘇浙小観(そせつしょうかん)、北清(ほくしん)見聞録、長江(ちょうこう)十年、
観光紀游、征塵録(せいじんろく)、満洲、巴蜀(はしょく)、湖南(こなん)、漢口(かんこう)、支那風韻記(しなふういんき)、支那―
編輯者 それをみんな読んだのですか?
小説家 何、まだ一冊も読まないのです。それから支那人が書いた本では、大清一統志(たいしんいっとうし)、燕都遊覧志
(えんとゆうらんし)、長安客話(ちょうあんかくわ)、帝京(ていきょう)―
編輯者 いや、もう本の名は沢山です。
小説家 まだ西洋人が書いた本は、一冊も云わなかったと思いますが、―
編輯者 西洋人の書いた支那の本なぞには、どうせ碌(ろく)な物はないでしょう。それより小説は出発前(まえ)に、きっと書い
て貰えるでしょうね。
小説家 (急に悄気(しょげ)る)さあ、とにかくその前には、書き上げるつもりでいるのですが、―
編輯者 一体何時(いつ)出発する予定ですか?
小説家 実は今日(きょう)出発する予定なのです。
編輯者 (驚いたように)今日ですか?
小説家 ええ、五時の急行に乗る筈なのです。
編輯者 するともう出発前には、半時間しかないじゃありませんか?
小説家 まあそう云う勘定(かんじょう)です。
編輯者 (腹を立てたように)では小説はどうなるのですか?
小説家 (いよいよ悄気(しょげ)る)僕もどうなるかと思っているのです。


725:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:26:37 7CtLO6gK0
編輯者 どうもそう無責任では困りますなあ。しかし何しろ半時間ばかりでは、急に書いても貰えないでしょうし、………
小説家 そうですね。ウェデキンドの芝居だと、この半時間ばかりの間(あいだ)にも、不遇の音楽家が飛びこんで来たり、どこかの奥さんが
自殺したり、いろいろな事件が起るのですが、―御待ちなさいよ。事によると机の抽斗(ひきだし)に、まだ何か発表しない原稿があるかも知
れません。
編輯者 そうすると非常に好都合ですが―
小説家 (机の抽斗を探しながら)論文ではいけないでしょうね。
編輯者 何と云う論文ですか?
小説家 「文芸に及ぼすジャアナリズムの害毒」と云うのです。
編輯者 そんな論文はいけません。
小説家 これはどうですか? まあ、体裁の上では小品(しょうひん)ですが、―
編輯者 「奇遇(きぐう)」と云う題ですね。どんな事を書いたのですか?
小説家 ちょいと読んで見ましょうか? 二十分ばかりかかれば読めますから、―

       ×          ×          ×

 至順(しじゅん)年間の事である。長江(ちょうこう)に臨んだ古金陵(こきんりょう)の地に、王生(おうせい)と云う青年があった。生れつき才力が
豊な上に、容貌(ようぼう)もまた美しい。何でも奇俊(きしゅん)王家郎(おうかろう)と称されたと云うから、その風采(ふうさい)想うべしである。し
かも年は二十(はたち)になったが、妻はまだ娶(めと)っていない。家は門地(もんち)も正しいし、親譲りの資産も相当にある。詩酒の風流を
恣(ほしいまま)にするには、こんな都合(つごう)の好(い)い身分はない。
 実際また王生は、仲の好(い)い友人の趙生(ちょうせい)と一しょに、自由な生活を送っていた。戯(ぎ)を聴(き)きに行く事もある。博(は
く)を打って暮らす事もある。あるいはまた一晩中、秦淮(しんわい)あたりの酒家(しゅか)の卓子(たくし)に、酒を飲み明かすことなぞも
ある。そう云う時には落着いた王生が、花磁盞(かじさん)を前にうっとりと、どこかの歌の声に聞き入っていると、陽気な趙生は
酢蟹(すがに)を肴に、金華酒(きんかしゅ)の満(まん)を引きながら、盛んに妓品(ぎひん)なぞを論じ立てるのである。
 その王生がどう云う訳か、去年の秋以来忘れたように、ばったり痛飲を試みなくなった。いや、痛飲ばかりではない。吃喝嫖
賭(きっかつひょうと)の道楽にも、全然遠のいてしまったのである。趙生を始め大勢の友人たちは、勿論この変化を不思議に
思った。王生ももう道楽には、飽きたのかも知れないと云うものがある。いや、どこかに可愛い女が、出来たのだろうと云うもの
もある。が、肝腎(かんじん)の王生自身は、何度その訳を尋ねられても、ただ微笑を洩らすばかりで、何がどうしたとも返事をしない。



726:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:27:09 7CtLO6gK0
そんな事が一年ほど続いた後(のち)、ある日趙生が久しぶりに、王生の家を訪れると、彼は昨夜(ゆうべ)作ったと云って、元体(げんしん
たい)の会真詩(かいしんし)三十韻(さんじゅういん)を出して見せた。詩は花やかな対句(ついく)の中に、絶えず嗟嘆(さたん)の意が洩ら
してある。恋をしている青年でもなければ、こう云う詩はたとい一行(いちぎょう)でも、書く事が出来ないに違いない。趙生は詩稿を王生に返
すと、狡猾(こうかつ)そうにちらりと相手を見ながら、
「君の鶯鶯(おうおう)はどこにいるのだ。」と云った。
「僕の鶯鶯(おうおう)? そんなものがあるものか。」
「嘘をつき給え。論より証拠はその指環じゃないか。」
 なるほど趙生(ちょうせい)が指さした几(つくえ)の上には、紫金碧甸(しこんへきでん)の指環が一つ、読みさした本の上に転がっている。
指環の主は勿論男ではない。が、王生(おうせい)はそれを取り上げると、ちょいと顔を暗くしたが、しかし存外平然と、徐(おもむ)ろにこんな
話をし出した。
「僕の鶯鶯なぞと云うものはない。が、僕の恋をしている女はある。僕が去年の秋以来、君たちと太白(たいはく)を挙げなくなったのは、確
かにその女が出来たからだ。しかしその女と僕との関係は、君たちが想像しているような、ありふれた才子の情事ではない。こう云ったばか
りでは何の事だか、勿論君にはのみこめないだろう。いや、のみこめないばかりなら好(い)いが、あるいは万事が嘘のような疑いを抱き
たくなるかも知れない。それでは僕も不本意だから、この際君に一切の事情をすっかり打ち明けてしまおうと思う。退屈でもどうか一通り
、その女の話を聞いてくれ給え。
「僕は君が知っている通り、松江(しょうこう)に田を持っている。そうして毎年秋になると、一年の年貢(ねんぐ)を取り立てるために、僕自
身あそこへ下(くだ)って行く。所がちょうど去年の秋、やはり松江へ下った帰りに、舟が渭塘(いとう)のほとりまで来ると、柳や槐(えんじ
ゅ)に囲まれながら、酒旗(しゅき)を出した家が一軒見える。朱塗りの欄干(らんかん)が画(えが)いたように、折れ曲っている容子(よう
す)なぞでは、中々大きな構えらしい。そのまた欄干の続いた外には、紅い芙蓉(ふよう)が何十株(なんじっかぶ)も、川の水に影を落し
ている。僕は喉(のど)が渇(かわ)いていたから、早速その酒旗の出ている家へ、舟をつけろと云いつけたものだ。


727:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:29:05 7CtLO6gK0
「さてそこへ上(あが)って見ると、案(あん)の定(じょう)家も手広ければ、主(あるじ)の翁(おきな)も卑しくない。その上酒は竹
葉青(ちくようせい)、肴(さかな)は鱸(すずき)に蟹(かに)と云うのだから、僕の満足は察してくれ給え。実際僕は久しぶりに、旅
愁(りょしゅう)も何も忘れながら、陶然(とうぜん)と盃(さかずき)を口にしていた。その内にふと気がつくと、誰(たれ)か一人幕の
陰から、時々こちらを覗(のぞ)くものがある。が、僕はそちらを見るが早いか、すぐに幕の後(うしろ)へ隠れてしまう。そうして僕
が眼を外(そ)らせば、じっとまたこちらを見つめている。何だか翡翠(ひすい)の簪(かんざし)や金の耳環(みみわ)が幕の間(
あいだ)に、ちらめくような気がするが、確かにそうかどうか判然しない。現に一度なぞは玉のような顔が、ちらりとそこに見えたよ
うに思う。が、急にふり返ると、やはりただ幕ばかりが、懶(ものう)そうにだらりと下(さが)っている。そんな事を繰(く)り返している
内に、僕はだんだん酒を飲むのが、妙につまらなくなって来たから、何枚かの銭(ぜに)を抛(ほう)り出すと、々(そうそう)また舟
へ帰って来た。
「ところがその晩舟の中に、独りうとうとと眠っていると、僕は夢にもう一度、あの酒旗の出ている家(うち)へ行った。昼来た時には
知らなかったが、家(うち)には門が何重(なんじゅう)もある、その門を皆通り抜けた、一番奥まった家(いえ)の後(うしろ)に、小さ
な綉閣(しゅうかく)が一軒見える。その前には見事な葡萄棚(ぶどうだな)があり、葡萄棚の下には石を畳(たた)んだ、一丈ばかり
の泉水がある。僕はその池のほとりへ来た時、水の中の金魚が月の光に、はっきり数えられたのも覚えている。池の左右に植わっ
ているのは、二株(ふたかぶ)とも垂糸檜(すいしかい)に違いない。それからまた墻(しょう)に寄せては、翠柏(すいはく)の屏(へい
)が結んである。その下にあるのは天工のように、石を積んだ築山(つきやま)である。築山の草はことごとく金糸線綉(きんしせんし
ゅうとん)の属(ぞく)ばかりだから、この頃のうそ寒(さむ)にも凋(しお)れていない。窓の間には彫花(ちょうか)の籠(かご)に、緑色
の鸚鵡(おうむ)が飼ってある。その鸚鵡が僕を見ると、「今晩は」と云ったのも忘れられない。軒の下には宙に吊(つ)った、小さな木
鶴(もっかく)の一双(ひとつが)いが、煙の立つ線香を啣(くわ)えている。窓の中を覗いて見ると、几(つくえ)の上の古銅瓶(こどうへ
い)に、孔雀(くじゃく)の尾が何本も挿(さ)してある。その側にある筆硯類(ひっけんるい)は、いずれも清楚(せいそ)と云うほかはな

い。と思うとまた人を待つように、碧玉の簫(しょう)などもかかっている。壁には四幅(しふく)の金花箋(きんかせん)を貼って、その上
に詩が題してある。詩体はどうも蘇東坡(そとうば)の四時(しじ)の詞(し)に傚(なら)ったものらしい。書は確かに趙松雪(ちょうしょう
せつ)を学んだと思う筆法である。その詩も一々覚えているが、今は披露(ひろう)する必要もあるまい。それより君に聞いて貰いたい
のは、そう云う月明りの部屋の中に、たった一人坐っていた、玉人(ぎょくじん)のような女の事だ。僕はその女を見た時ほど、女の美
しさを感じた事はない。」
「有美(ゆうび)閨房秀(けいぼうのしゅう) 天人(てんじん)謫降来(たくこうしきたる)かね。」
 趙生(ちょうせい)は微笑しながら、さっき王生(おうせい)が見せた会真詩(かいしんし)の冒頭の二句を口ずさんだ。
「まあ、そんなものだ。」


728:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:30:23 7CtLO6gK0
話したいと云った癖に、王生はそう答えたぎり、いつまでも口を噤(つぐ)んでいる。趙生はとうとう待兼ねたように、そっと王生の膝を突いた。
「それからどうしたのだ?」
「それから一しょに話をした。」
「話をしてから?」
「女が玉簫(ぎょくしょう)を吹いて聞かせた。曲(きょく)は落梅風(らくばいふう)だったと思うが、―」
「それぎりかい?」
「それがすむとまた話をした。」
「それから?」
「それから急に眼がさめた。眼がさめて見るとさっきの通り、僕は舟の中に眠っている。艙(そう)の外は見渡す限り、茫々とした月夜(
つきよ)の水ばかりだ。その時の寂しさは話した所が、天下にわかるものは一人もあるまい。
「それ以来僕の心の中(うち)では、始終あの女の事を思っている。するとまた金陵(きんりょう)へ帰ってからも、不思議に毎晩眠りさ
えすれば、必ずあの家(うち)が夢に見える。しかも一昨日(おととい)の晩なぞは、僕が女に水晶(すいしょう)の双魚(そうぎょ)の扇墜
(せんつい)を贈ったら、女は僕に紫金碧甸(しこんへきでん)の指環を抜いて渡してくれた。と思って眼がさめると、扇墜が見えなくな
った代りに、いつか僕の枕もとには、この指環が一つ抜き捨ててある。してみれば女に遇(あ)っているのは、全然夢とばかりも思われ
ない。が、夢でなければ何だと云うと、―僕も答を失してしまう。
「もし仮に夢だとすれば、僕は夢に見るよりほかに、あの家(うち)の娘を見たことはない。いや、娘がいるかどうか、それさえはっきりと
は知らずにいる。が、たといその娘が、実際はこの世にいないのにしても、僕が彼女を思う心は、変る時があるとは考えられない。僕
は僕の生きている限り、あの池だの葡萄棚(ぶどうだな)だの緑色の鸚鵡(おうむ)だのと一しょに、やはり夢に見る娘の姿を懐しがらず
にはいられまいと思う。僕の話と云うのは、これだけなのだ。」
「なるほど、ありふれた才子の情事ではない。」
 趙生(ちょうせい)は半ば憐(あわれ)むように、王生(おうせい)の顔へ眼をやった。
「それでは君はそれ以来、一度もその家(うち)へは行かないのかい。」
「うん。一度も行った事はない。が、もう十日ばかりすると、また松江(しょうこう)へ下(くだ)る事になっている。その時渭塘(いとう)を通
ったら、是非あの酒旗(しゅき)の出ている家へ、もう一度舟を寄せて見るつもりだ。」


729:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:32:57 7CtLO6gK0
それから実際十日ばかりすると、王生は例の通り舟を艤(ぎ)して、川下(かわしも)の松江へ下って行った。そうして彼が帰って来た時に
は、―趙生を始め大勢の友人たちは、彼と一しょに舟を上(あが)った少女の美しいのに驚かされた。少女は実際部屋の窓に、緑色の
鸚鵡(おうむ)を飼いながら、これも去年の秋幕(まく)の陰(かげ)から、そっと隙見(すきみ)をした王生の姿を、絶えず夢に見ていたそう
である。
「不思議な事もあればあるものだ。何しろ先方でもいつのまにか、水晶の双魚の扇墜が、枕もとにあったと云うのだから、―」
 趙生はこう遇う人毎(ひとごと)に、王生の話を吹聴(ふいちょう)した。最後にその話が伝わったのは、銭塘(せんとう)の文人瞿祐(くゆ
う)である。瞿祐はすぐにこの話から、美しい渭塘奇遇記(いとうきぐうき)を書いた。……

       ×          ×          ×

小説家 どうです、こんな調子では?
編輯者 ロマンティクな所は好(い)いようです。とにかくその小品(しょうひん)を貰う事にしましょう。
小説家 待って下さい。まだ後(あと)が少し残っているのです。ええと、美しい渭塘奇遇記(いとうきぐうき)を書いた。―ここまでですね。

       ×          ×          ×

 しかし銭塘(せんとう)の瞿祐(くゆう)は勿論、趙生(ちょうせい)なぞの友人たちも、王生(おうせい)夫婦を載(の)せた舟が、渭塘(い
とう)の酒家(しゅか)を離れた時、彼が少女と交換した、下(しも)のような会話を知らなかった。
「やっと芝居が無事にすんだね。おれはお前の阿父(おとう)さんに、毎晩お前の夢を見ると云う、小説じみた嘘をつきながら、何度冷々
(ひやひや)したかわからないぜ。」
「私(わたし)もそれは心配でしたわ。あなたは金陵(きんりょう)の御友だちにも、やっぱり嘘をおつきなすったの。」
「ああ、やっぱり嘘をついたよ。始めは何とも云わなかったのだが、ふと友達にこの指環(ゆびわ)を見つけられたものだから、やむを得
ず阿父さんに話す筈の、夢の話をしてしまったのさ。」
「ではほんとうの事を知っているのは、一人もほかにはない訳ですわね。去年の秋あなたが私の部屋へ、忍んでいらしった事を知って
いるのは、―」
「私。私。」
 二人は声のした方へ、同時に驚いた眼をやった。そうしてすぐに笑い出した。帆檣(ほばしら)に吊った彫花(ちょうか)の籠には、緑色
の鸚鵡(おうむ)が賢そうに、王生と少女とを見下している。…………



730:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:36:47 7CtLO6gK0
編輯者 それは蛇足(だそく)です。折角の読者の感興をぶち壊すようなものじゃありませんか? この小品が雑誌に載るのだった
ら、是非とも末段だけは削(けず)って貰います。
小説家 まだ最後ではないのです。もう少し後(あと)があるのですから、まあ、我慢して聞いて下さい。

       ×          ×          ×

 しかし銭塘の瞿祐は勿論、幸福に満ちた王生夫婦も、舟が渭塘を離れた時、少女の父母が交換した、下(しも)のような会話を知
らなかった。父母は二人とも目(ま)かげをしながら、水際(みずぎわ)の柳や槐(えんじゅ)の陰に、その舟を見送っていたのである。
「お婆さん。」
「お爺さん。」
「まずまず無事に芝居もすむし、こんな目出たい事はないね。」
「ほんとうにこんな目出たい事には、もう二度とは遇(あ)えませんね。ただ私は娘や壻(むこ)の、苦しそうな嘘を聞いているのが、
それはそれは苦労でしたよ。お爺さんは何も知らないように、黙っていろと御云いなすったから、一生懸命にすましていましたが、
今更(いまさら)あんな嘘をつかなくっても、すぐに一しょにはなれるでしょうに、―」
「まあ、そうやかましく云わずにやれ。娘も壻も極(きま)り悪さに、智慧袋(ちえぶくろ)を絞ってついた嘘だ。その上壻の身になれば
、ああでも云わぬと、一人娘は、容易にくれまいと思ったかも知れぬ。お婆さん、お前はどうしたと云うのだ。こんな目出たい婚礼に
、泣いてばかりいてはすまないじゃないか?」
「お爺さん。お前さんこそ泣いている癖に……」

       ×          ×          ×

小説家 もう五六枚でおしまいです。次手(ついで)に残りも読んで見ましょう。
編輯者 いや、もうその先は沢山です。ちょいとその原稿を貸して下さい。あなたに黙って置くと、だんだん作品が悪くなりそうです。
今までも中途で切った方が、遥(はるか)に好かったと思いますが、―とにかくこの小品(しょうひん)は貰いますから、そのつもり
でいて下さい。
小説家 そこで切られては困るのですが、―


731:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:39:50 7CtLO6gK0
田端の高台からずうっとおりて来て、うちのある本郷の高台へのぼるまでの間は、田圃だった。その田圃の、田端よりの方に一筋の小
川が流れていた。関東の田圃を流れる小川らしく、流れのふちには幾株かの榛の木が生えていた。二間ばかりもあるかと思われるひ
さで流れている水は澄んでいて流れの底に、流れにそってなびいている青い水草が生えているのや、白い瀬戸ものの破片が沈んでい
るのや、瀬戸ひき鍋の底のぬけたのが半分泥に埋まっているのなどが岸のところから見えていた。大根のとれる季節になると、その川
のあっちこっちで積あげた大根を洗っていた。川ふちの榛の木と木の間に繩がはってあって、何かの葉っぱが干されていたこともある
。わたしたち三人の子供たちは、その川の名を知らなかった。
 田圃のなかへ来ると、名も知れない一筋の流れとなるその小川をたどって、くねくねと細い道を遠く町の中へ入って行くと、工場のよう
なところへ出て、それから急に人通りのかなりある狭い通りへ出た。そこには古い石の橋がかかっていた。そして石橋の柱に藍染川と
かかれていた。その橋から先はもう小川について行くことができなかった。空の雲を水の面にうつして流れている水は町へ入ったそのあ
たりから左右を石崖にたたまれ、その崖上の藪かげ、竹垣の下をどこへか行っていた。わたしたち子供は、田圃のなかから川について
町へ出て来るから、いつも流れをさかのぼっていたわけだった。不忍池から源を発している小川だったのだろう。
 藍染川と母たちがよんでいたその石橋のところが、ちょうど、谷中と本郷の境のようになっていた。動物園から帰って来るとき、谷中の
お寺の多いだらだら坂を下りて、惰力のついた足どりでその石橋をわたると、暫く平地で、もう一つ団子坂をのぼらなければ林町の通り
へ来られなかった。
 藍染川と団子坂との間の右側に、「菊見せんべい」の大きな店があった。ひろい板じきの店さきに、ガラスのついた「せんべい」のケー
スがずらりと並んでいた。ケースの上に菊の花を刷って、菊見せんべいと、べいの二つの字を万葉がなで印刷したり、紙袋が大小順よ
くつられている。菊見せんべいを買いにゆくと、店番が、吊ってある紙袋を一つとって、ふっとふくらまし、一度に五枚ずつ数えてその中
に入れ、へい、とわたしてよこした。ふくらんで軽い大きい紙袋をうけとったとき、おいしい塩せんべいの匂いがした。ときには、紙袋をも
ったとき、手にあったかさのつたわって来るほど焼きたてだった。紙袋があったかいとき、子供はつれの大人を見て、笑った。


732:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:41:21 7CtLO6gK0
それよりも何よりも、菊見せんべいを買いにゆくときには三人の子供がついてゆきたがる別の理由があった。「菊見せんべい」の店先
に立つと、店の板じきの奥に向いあって坐ってせんべいをやいている職人たちの動作がすっかり見えた。火気ぬきのブリキの小屋根
の下っている下に、石の蒲焼用のこんろを大きくしたようなものにいつも火がかっかとおこっていた。それをさしはさんで両側に三人ず
つ若い男があぐらをかいて坐っていて、一人が数本ずつうけもっている鉄のせんべい焼道具を、絶えず火の上でひっくるかえしている
のだった。せんべい焼の黒い鉄の道具は柄が長くて、その長い柄をつかんで、左手、右手で敏捷にひっくりかえしつづけるのは、力が
いる仕事らしかった。火気からはなれることないその仕事で、早くから白いちぢみのシャツ一枚に、魚屋のはいていたような白い短い股
引をきる職人たちは、鉢巻なんかして右、左、右、左、と「せんべい焼」道具をひっくりかえしてゆくとき、あぐらをかいて坐っている上体
をひどくゆすぶった。自然につく調子で、体をゆすぶりながら、かえしてゆくとき、鉄きゅうの上で鉄のせんべい焼道具がガチャンと鳴った。
 店さきにたって、うっとりとその作業に見とれている子供には、職人たちの身ぶりと音との面白さがこの上なかった。いくら見ていても
面白く、飽きなかった。さあ、もう帰りましょう。そう云われても、子供たちは職人から目をはなさず上の空で、もっと、とねばった。子供た
ちは、いつも随分長い間、立って見ているのだったが、職人同士がその間に喋るのを見たことがなかった。職人はみんないそがしそう
だった。体のふりかた、道具をひっくりかえす威勢のいい敏捷な音、どれもが、こげるぞ、どっこい。こがすな、どっこい。と調子をとって
いるようだった。雨のふる日には、菊見せんべいの店の乾いた醤油のかんばしい匂いが一層きわだった。

 菊見せんべいへ行くというとき、子供たちはもう一つのひそかな冒険で顔を見合わせた。
 菊見せんべいの手前に、こまごまと軒を並べている小商人の店と店との庇あわいの一つの露路をはいってゆくと、その裏は案外から
りと開いていて、二間、三間ぐらいの一軒だてがいくつかあった。その右のはずれの一軒が、おゆきばあやの住居だった。
 小さい根下りの丸髷に結って、帯をいつもひっかけにしめているおゆきは、その家で縫物をしていた。おゆきが針箱やたち板を出しか
けている部屋のそとに濡れ縁があって、ちょいとした空地に盆栽棚がつくられていた。西日のさしこむ軒に竹すだれがかかり、風鈴の赤
い短冊がゆれていて、なめたようにきれいな狭い台所口があいていると、裏の田圃が見えた。おゆきのうちには、猫がいた。
 子供たちは、菊見せんべいへ行くとき、一緒に来る大人が母でさえなければ、おゆきのうちへよることが出来た。きょうは駄目ですよ、
お母様がまっすぐ帰れとおっしゃいましたよ、と抗議が出ても、ちょっと! ほんとにちょっと! と、わたしは露路を曲った。おゆきの家
と、そこに住んでいる、おゆきと浅吉とは、面白かった。


733:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:45:05 7CtLO6gK0
根下りの丸髷に結って、長煙管でタバコをのむおゆきは、不思議にうす黒い顔をしてやせていた。喉がどうかしたように、少しかすれた
声で、小さい子供たちに、おや、いらっしゃいまし、と云った。そういう声で、おゆきは赤門の門番をしている夫の浅吉のことを、あっさん
、あっさんと云って話した。あっさんがね、お前さん、こういうんだよ、いけすかないったらありゃしないじゃないか、ねえ、などと笑いなが
ら、ついて来た女中と喋っているおゆきの話しかたが、六つ七つの女の子の興味をそそった。うちでは、おゆきのように話すものがなか
った。あっさんとおゆきがいるだけで、子供のいない家というのも珍しかった。
 浅吉は、昔、祖父の俥をひいていたのだそうだ。祖父が田舎へひっこむについて、大学の赤門の門番になった。わたしたちの知った
とき、もう浅吉の木菟のようなふくらんだ頬っぺたには白く光る不精髭があったし、おゆきは、ばあやさんと呼ばれていた。
「ねえ、おゆきばあや、あっさんは赤門にいるの」
 縫物をしているおゆきのわきにころがって小さい女の子は質問した。
「そうですよ」
 おゆきは、縫っていた糸を歯できって、つぎのしるしにまち針をうちながら、
「あっさんは赤門。きのうも赤門、きょうも赤門てね」
「赤門でなにしてるの?」
「腰かけて、うちわでもつかってるんでしょうよ」
「ふーん」
 どうも不思議だった。いつか赤門をとおったとき、ここに浅吉がいるはずだよ、と母が、入ってゆく右手の門番のところをちょっとの
ぞいた。けれども浅吉はいなかった。いないね、と云ってそのまま行く母について歩きながら、わたしには赤門にいなかった浅吉の
印象が刻まれた。浅吉が赤門にいるということに、わけのわからないところがあった。
 浅吉はいくらかこわくもあった。お盆のとき浅吉とおゆきとは連立ってお中元に来た。こまかいたて縞のすきとおる着物にうすい羽
織を着た浅吉は、白扇をパチリ、パチリ鳴らしながらあんまり物を云わず、笑いもせず、木菟のような眼の丸い頬ぺたのふくらんだ
顔で坐っている。そのすこし斜うしろにぺたりと薄い膝で坐った根下り丸髷にひっかけ帯のおゆきが、浅吉をあおいでやるのか、母
へ風をやるのか分らない団扇のつかいかたをしながら、
「ほんとに、うちのあっさんたら、正直なばっかりで一刻もんだもんですからねえ、つい二三日前もね、奥様」
という工合で、いつまでも喋った。そういう日には、浅吉とおゆきとだけ別のところで一つお膳でお酒をのんだ。その仕度はおゆきが
自分でした。さあ、あっさん、折角だから御馳走におなりよ。そう云って、二人だけでお酒をのんでいるとき、おゆきと浅吉は何か低
い声で話しあった。おゆきはお酒がまわって来ると、
「おまはんもっといけるはずじゃないか」
と云いながら浅吉に自分の酌をさせた。


734:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:46:03 7CtLO6gK0
また、おゆきの御飯のたべかたも、真似手がなかった。おかずがあっても、おしまいの一膳はお茶づけにして、ほんとにサラサラと
流しこむのだったが、おいしそうにひとしきりたべてさてお香のものへ移るというとき、おゆきはきまってリズミカルに動かしていたお
箸を、そのリズムのまま軽く茶碗のふちへ当てて一つ小さく鳴らした。銀の箸ででもあったら、その箸のひとあては、茶碗のふちで
涼しい音でも立てるのであったろうが、雑用の厚手な茶碗と木の箸で、その音はカチとカタの間にきこえた。それでも、おゆきのお茶
づけには独特のリズムがあり、菊見せんべいの職人の体のふりようとせんべい焼の道具をひっくりかえす音に通じあう面白さがあ
るのだった。
 おゆきの身についていて、東京の山の手に育つ子供の心には、きわめてもの珍しくうつったいくつもの癖が、くるわの習慣であった
ことが分ったのは、わたしが十七八になって、歌舞伎芝居をみるようになってからだった。梅幸のお富が舞台の上で、ひっかけ帯で
横にすわりながらおゆきがそういうときとよく似た声の調子でおまはんと云ったとき、すべてが氷解した。母が、子供たちをおゆきの
ところへ行かせたがらなかった母らしい潔癖と偏見の意味もわかった。もうその頃は、おゆきは、別のところに引越して、養子の世
話になっていた。
 更に何年かたったとき、何かの雑誌で「ねぶか」という落語をよんだ。落語をこのむ江戸庶民の感覚で、奥女中あがりを女房にし
た長屋の男の困却を諧謔の主題にしたものだった。奥女中だった女が、長屋ものの女房になってもまだ勿体ぶったお女中言葉を
つかっている。そのみのない横柄ぶりが武士大名への諷刺として可笑しく笑わせるのだった。その「ねぶか」のなかに、長屋の男が

新しく来る女房と、取り膳でお茶づけをたべるたのしさを空想して、俺がザラザラのガアサガアサとたべると、女房はさぞやさしくチン
チロリンのサアラサアラとたべるだろうという描写があった。そこをよんで、わたしはすぐおゆきを思い出した。おゆきのお茶づけとあ
の箸を思い出した。
 おゆきが団子坂の下に住んでいたのは明治四十年より前のことだった。おゆきの住居や習慣は、樋口一葉が「にごりえ」などで
かいた雰囲気の中のものだった。そして、鏑木(かぶらぎ)清方の插画の風情のものだった。そういうことがわかったのは、ゆきの
おまはんの由来を理解したよりもあとのことだし、「ねぶか」よりもあとのことであった。
 父方の祖母、母方の祖母が、わたしの幼い時代に徳川時代から明治初年への物語を色こく刻みこませた人々であった。いまわ
たしたちが封建社会の崩壊期として理解している幕末と、中途半端な開化期として理解している明治初年についてのさまざまの物
語りをもって。おゆきは、二人の祖母のだれも示さなかったやりかたで、明治初年の東京の庶民ぐらしの気分をつたえたたった一
人の女だった。
 六つ七つのわたしは、竹すだれのかかった軒ちかく縫いものをしているおゆきのわきにころがっておゆきの家についていて、自
分の家のとはちがう匂いを感じ、西日を顔にうけながらチンチンチンチンと、何かをたたいているような音をきいていた。その音は、
前のうちの中からきこえた。
「あれ何の音?」
「さあ……おおかた錺屋(かざりや)さんで何かやっているんでしょうよ」
 でも錺屋という商売が何だかわからなかった。おゆきの話ではその錺屋が大家さんなのだそうだった。おゆきがそこの人にものを
いうときの声の調子で大家さんというのは普通の隣家とちがう何かであることはわかったが、カザリヤという商売との関係がわからなかった。
ねころがりながら竹すだれの下からのぞいてみるカザリヤの台所口にも、おゆきの家のと同じような短い竹すだれが下げられていて、
あたりまえの水がめや、バケツが流しもとに見えているきりだった。子供の目にカザリらしいものは表の小さな店にも、
台所にも見えていなかった。


735:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:48:41 7CtLO6gK0
日露戦争がすんだころ、東京で元禄模様、元禄袖などと一緒に改良服というものが大流行した。歴史のありのままの表現で語
れば、日本のおくれた資本主義は、日清戦争から十年後に経たこの侵略戦争で再び中国の国土を血ぬらし殖民地化しながら
その興隆期に入ったわけであった。ウラルの彼方風あれて、とオルガンに合わせて声高くうたっていた若い母に、そんなことは
何一つわかっていなかった。旅順口がおちたという一月二日に、縁側に走り出してバンザイをとなえた母の腰のまわりでバンザ
イと云って両手をあげた六つの女の子、四つの男の子、よちよち歩きの児に、何がわかっていただろう。
 勝ったおかげで一等国になれる、とよろこんだ日本の民草は、旗行列をし提灯行列をして、秀吉の好んだ桃山模様や、華美
な元禄模様を流行させた。改良服は、その時代の気風のなかのいくらか合理的であろうとする面、あるいは世界の中へ前進し
ようとする方向の思いつきであったと思われる。
 名のとおり日本服を改良して、洋装との間にしようとした改良服は、上を、つつ袖の口をひらひら飾りにし、うち合わせ襟で、ス
カートの部分とくっつけたワンピースだった。スカートは袴の伝統をもって、きちんとたたんで襞をつけられ、バンドのうしろは袴
腰の趣味で白細紐の飾りつきだった。
 わたしには、メリンス絣の改良服が一つあった。その頃新小説に梶田半吉という画家のかいた絵が口絵にあって、肩の上に
髪をたらした若い改良服の女がバラの花に顔をよせている絵があったりした。母は、自分のために改良服よりもっとハイカラと
思われた一組の洋装をこしらえた。今思えば、白いレース・カーテンのような布地をふわり長くこしらえて、カフスのところとカラ
ーのところが水色の絹うち紐でしぼられ、その紐が飾り房としてたれていた。その服を着て、海老茶色のラシャで底も白フェル
トのクツをはいた二十九歳の母が、柔かい鍔びろ経木帽に水色カンレイシャの飾りのついたのをかぶって俥にのって出かけた
とき、三人の子供たちと家のものとは、美しさを驚歎してその洋服姿を見送った。若い母は、ロンドンにいる良人のもとへその洋
装姿の写真をおくった。はりぬきの岩に腰をかけ、フェルト靴の先を可愛く白レースと思われた服の裾からのぞかせ、水色カン
レイシャで飾られた帽子のつばを傾けて、両手でもった一輪のバラの花を見ている母の写真。それは明治の幻燈のようになつ
かしく美しく素朴である。
 けれどもロンドンでそれをうけとった三十七八の父からは、母が想像していたのとはまるで反対の手紙が来た。日英同盟して
いた小さい日本が、ロシアに勝ったということで、在留民の少いロンドンで父の受けた特別待遇は著しかったらしい。ノギ・トウゴ
ーの名が建築家である若い父のまわりで鳴りひびいた。エドワード七世即位式の道すじに座席が与えられた。そういう父から、
母へ来たのはインド洋をこしての叱責だった。あのお前が洋服だと思っている服は西洋の女のネマキであること。はいてい
るクツは人目に見せるべきものでない室内靴であること。ああいう写真は二度とよこしてくれるな。恥しい、ということであった。
 六つの娘は、母があんなに立派できれいだったのに、もう決して二度とその洋服を着ようとしないのを残念に思った。



736:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:51:32 7CtLO6gK0
「ああちゃん、どうして洋服きないの?」
 箪笥の一番下のひき出しに、三井呉服店とかいたボール箱に入ったままあるのを見て、娘がきいた。
「あれはお父様が西洋のねまきだってさ」
 そう云って母は青々と木の茂った庭へ目をやったきりだった。その庭の草むしりを、母は上の二人の子供あいてに自分でやってい
るのだった。ねまきはいいものでないということは、子供の心にもわかって、だまった。

 その頃急な団子坂の左右に菊人形の小屋がかかった。馬が足をすべらすほど傾斜のきつい、せまい団子坂の三分の一ばかり下
って、人々の足もとがいくらか楽になったところの左側に一二軒、右側に三軒ばかり菊人形の店が出来た。葭簀ばりの入口に、台が
あって、角力の出方のように派手なたっつけ袴、大紋つきの男が、サーいらっしゃい! いらっしゃい! 当方は名代の(何々とその店
の名を呼んで)三段がえし、旅順口はステッセル将軍と乃木大将と会見の場、サア只今! 只今! せり上り活人形大喝采一の谷は
ふたば軍記! 店々で呼び合う声と広告旗、絵看板、楽隊の響で、せまい団子坂はさわぎと菊の花でつまった煙突のようだった。白
と黒の市松模様の油障子を天井にして、色とりどりの菊の花の着物をきせられた活人形が、芳しくしめっぽい花の香りと、人形のにか
わくささを場内に漲らせ、拍子木につれてギーとまわる廻り舞台のよこに、これも出方姿の口上がいて、拍子木の片方でそっちを指し
ながら、右にひかえましたる乃木将軍というような説明をした。ノギ将軍はすべての写真にあるような顔をした人形で、黄菊・白菊の服
を着ていた。ステッセル将軍は、ただ碧い眼に赤い髭で、赤っぽい小菊の服を着せられていた。
 往来からすぐ見えるところには、ありふれた動かない人形が飾ってあって、葭簀の奥をのぞくと廻り舞台の庇はじなどが見え、人を
奥へと誘った。一の谷などでは、馬も菊で体をこしらえられていた。
 十月下旬から十一月にかけて、団子坂の通りは菊人形で混雑し、菊見せんべいも、団子坂の菊人形につながった一つの東京名物
なわけだった。菊の花の造花や、薄でこしらえた赤い耳の木菟を売るみやげやが、団子坂上からやっちゃば通りまでできた。
 菊人形が国技館で開かれるようになってからは、見にゆく人の層も変ったらしいけれども、団子坂の菊人形と云われたことは、上野
へ文展を見にゆく種類の人にも、そう縁の遠くない秋の行事の一つだったのではなかろうか。千駄木町に住んでいた漱石の作品の
どこかに菊見があったし、団子坂のすぐ上に住んでいた森鴎外の観潮楼へは、菊人形の楽隊の音が響いたにちがいない。
 幼いわたしにとって菊人形は面白さとうす気味わるさとのまじりあった見ものだった。場内にみなぎる菊の花のきつい匂いになじみ
にくく、活人形の顔や手足のかちかちした肌色と着せられている菊の花びらのやわらかく水っぽい感じの対照も妙だった。母方の祖
母が浅草の花屋敷へつれて行ってみせてくれたあやつり人形の骨よせと似た気味わるさが菊人形のどこかにあるのだった。
 戦争ものでない菊人形と云えば、あのどっさりの菊人形の見世ものの中で何があったろう。常盤御前があった。小督(こごう)があ
った。袈裟御前もあった。一九〇五年に、団子坂の菊人形はそういうものばかりを見せていた。小さい女の子は気味わるそうに、舞
台からすこし遠のいて、しかし眼はまばたきをするのを忘れて、熊谷次郎が馬にのって、奈落からせり上って来る光景を見まもった
。せり上って来る熊谷次郎の髪も菊の花でできた鐙も馬もいちように小刻みに震動しながら、陰気な軋みにつれて舞台に姿を現して
来るのだった。閑静な林町の杉林のある通りへ菊人形の楽隊の音は、幾日もつづけて、実際あるよりも面白いことがありそうにきこ
えて来た。


737:友達の友達の名無しさん
08/04/12 16:58:27 7CtLO6gK0
私は越後の新潟市に生れたが、新潟市に限らず、雪国の町は非常に暗い、秋がきて時雨が落葉を叩きはじめる頃から長い冬が漸
く終つて春が訪れるまで、太陽を見ることが殆んど稀にしかない。冬の暗澹たる気候には発狂しさうな焦燥を感じて私は弱つたもの
である。直接の気候以上にやりきれないのは、人間が気候の影響を受け易く、自分の性格や物の見方感じ方に間接の気候の顔を
見出すときには非常に惨めな自分を感じる。晴雨相半して特に激烈な表情のない東京大阪あたりの気候に比べて、雪国の暗澹た
る気候が人に及ぼす影響は激しく深いのである。
 勿論故郷の性格は誰にもある。性格ばかりではなく外貌にすらそれが滲んでゐないとは言へないのである。私はかつて小田原に
遊んだとき、牧野信一(彼は小田原の生れである)に風貌の似た人物を随所に見かけて面白く思つた。大阪人の話にはいつたいに
手振り身振りが多いが、人形芝居をみると、栄三操るところの町人の身振り手振りなぞ、見た眼には大袈裟であるが、然し現代の
大阪人にも同じ物が実は生きてゐるのである。小田原の山は蜜柑畑で、一面人体と高さの違はぬ灌木ばかり、大樹の影や暗さが
ない。それに空気の澄んだ所で、光線が明るいのである。牧野信一の文章は冗長でありながらも非常に明るく澄んでゐる。靄がな
いのだ。このことは私の文章に靄が深く、私の生れが靄深く暗澹たる雪国であることに比べると、こんなところにも、やつぱり脱けき
れない気候の影響があるのだと思ふ。
 むかし「南紀風物誌」といふ本を読んだことがある。(西瀬英一著、竹村書房刊)南紀州、つまり熊野から串本、新宮あたりの本州
最南端の風物を描いたものである。権兵衛が種まく烏がほじくるといふ有名な権兵衛が実は実在の人物で、新宮であつたと思ふが
、あのあたりに碑もあり、事蹟も残つてゐることなぞが書いてあつて面白かつたが、その本に、南国のたそがれ、子供達が竿をたづ
さへて路上へでる。「蝙蝠ほい……」と呼びながら飛ぶ蝙蝠を竿で叩き落さうとして、その一日の落日の中をはしやぎまはるといふ、
南国に育つた人にはその嫋々(じようじよう)たる郷愁に結びついて忘れられない幼時の夢だといふことが書いてあつた。同じ著者が
越後の新発田(しばた)へ旅行したことがあるらしく、南国の蝙蝠に関聯して、雪国で見た陰鬱な蝙蝠の思ひ出を語つてゐる。雪国で
泊つた一夜、炉辺で話をしてゐると、煤けた天井の暗がりから一匹の蝙蝠が羽音をバタ/\させながら頭上をとんで別の一隅の
暗がりへ消えていつた。南国の爽やかな黄昏をとぶ蝙蝠に思ひ比べて、そのあまり陰鬱な羽音に心の暗い思ひがしたといふのであつ
た。これはいはば北と南の相違に就て語つたものだが、私の言ひたいのは相違ではなく、その反対の場合である。


738:友達の友達の名無しさん
08/04/12 17:01:02 7CtLO6gK0
私は元来佐藤春夫や井伏鱒二の小説にみる郷愁的な色彩には肉親的な同感を感じ易い。然し彼等の郷愁は私の実際のそれと
は違つて非常に明るく爽やかな南国的なものである。又私は少年時代、北原白秋の思ひ出なぞといふものに異常なノスタルヂイ
を刺戟されたものであるが、あの風景が九州の暖国の色調に溢れたものであることは、今更私が言ふまでもないことであらう。然
し又、これを逆にした事実があるのである。私の作品に血族的な類似を感ずる人達の中でも、私のあの雪国の暗澹たる気候につ
ながる郷愁に最も愛着を感じる人達は、その大多数が実際は南国生れの人々であつた。
 タマーラ・カルサビーナはロシヤ生れの舞姫でニジンスキイと踊つた「ペトルシカ」なぞすでに歴史的なものであるが、先年この人
が「ルビュウ・エブドマデエル」に思ひ出の記を連載してゐた。その中に、スペイン生れの画家パヴロ・ピカソとつきあふうちに、この
南方人の激情的な血の中に非常に多くのロシヤ的性情を見出して吃驚(びつくり)したといふことが書いてあつた。この二人は例の
ヂアギレフの「ロシヤ舞踊団」で一緒に仕事をしてゐたもので、当時ピカソは背景を書いてゐた。ロシヤ舞踊団はリュシヤン・バレ
ーやコルサコフ、ストラビンスキー等のロシヤ音楽を欧洲に紹介したばかりではなく、ピカソや詩人コクトオや六人組の温床であつ
た。思ふにピカソは南国の生れであつても、元来南国と北国の共に激烈な気候の影響が、その激烈な切なさ深さに於て全く類似
してゐるから、その性情が一脈通じてしまふのだらうとカルサビーナは結論してゐたやうであつた。
 ドイツの暗澹たる雪空をのがれ、太陽をもとめて伊太利へ馬車を急がせたゲーテは、然し恐らく太陽を異国の空のものとしてもと
めてゐたとは思はれない。雪国の暗い郷愁の裏側にはいつも明るい太陽がある。雪国に忘れられた太陽は、その忘れられた故に
よつて、実は雪国のものなのだ。雪国に土着する素朴な農夫達の話をきくと、彼等の最も待ち遠いのは春の訪れで、長い冬が終り
、始めて青空が光りはじめた爽やかな日の歓喜は忘れることのできないといふ。まだ根の堅い白皚々(はくがいがい)の雪原へと
びだし、青空に向つて叫びたいやうな激しい思ひに駆られながら、とびまはらずにゐられないと言ふのである。太陽の歓喜を最も激
しく知るものは、実は雪国の人々であるかも知れない。雪国の郷愁の中にはいつも南国が生きてゐるのだ。
 人間に気候の影響は甚だ大きい。私は理知の言葉と同じ程度に、気候の言葉を自分の裡にききがちだ。気候の言葉が我々の裡
に生きる限り、我々の理知は郷愁を否定することができないだらう。人間は気候の前では弱小である。


739:友達の友達の名無しさん
08/04/12 17:02:47 7CtLO6gK0
一行は樹立の深く生茂つた處から、岩の多い、勾配の高い折れ曲つた羊齒の路を喘ぎ喘ぎ登つて行つた。ちびと綽名をつけられた背
の低い男が一番先に立つて、それから常公、政公、眇目の平公、子供を負つた女もあれば、木の根に縋り付いて呼吸をきらして登つて行
く女もある。年寄もあれば、若い者もある。一行總て十五六人、誰も皆な重さうに荷物を負つて手には折つた木の枝を杖にしてゐた。
 十月の初めは、山にはもう霜が置いた。風も寒かつた。昨日の朝などは、温度が俄かに下つて、山の奧には白く雪が見え、谷から汲ん
で來たバケツの水は薄く氷つた。つく呼吸は朝の空氣を透して其處此處に白く見えた。かれ等は山から山へと長い間を越えて來たことを
思つた。
 彼等は其處此處で一緒になつた。かれ等は初めから多人数ではなかつたのである。今から一月前には、眇目の平公とその嚊と常公と
が一緒に歩いてゐた。かれ等は晝間は普通の人間と少しも變らぬやうにして里に出て、さゝらや椀の木地や蜂の巣などを賣つた。『さゝら
入りまへんか。』かう言つて、かれ等は農家の軒から軒へと歩いた。それは大抵山に添つたり谷に臨んだりしてゐるやうな村里で、それか
ら一二里と隔てた町や都會へは、かれ等は滅多に出て行かなかつた。老人が留守を守つてゐる農家、鷄犬の聲の穩かにきこえる村落、
賣るものがなくなるとかれ等は平氣で乞食になつた。時に馬鈴薯の一桶や甘藷の一包を盜むこと位はかれ等は何とも思つてゐなかつた。
『また、山窩奴が來やがつたんべ。』
 村の人達は、常に馴れて知つてゐるので、別に怪しみもしなかつた。
 鋸、鉈、鉋、小刀、小鋏、さういふものをかれ等は皆な一人々々持つてゐた。それも普通里で大工が使ふやうな大きなものではなく、屈
折自由な、それでゐて切味の非常に鋭利なものであつた。かれ等は賣るものがなくなると、官林であらうが、民有林であらうが、さういふ
ことには頓着なく、自分に都合の好い木材を切り倒して、必要な部分だけを切り取つて、そしてさつさと山から山へと移つて行つた。
 かれ等は材料のあるところをよく知つてゐた。見事な竹で蔽はれてゐる谷、美しい樹木の青々と繁つてゐる谷、さういふところでかれ等
は三日四日を費した。ある里に近い山では、男は宿泊地に殘つて、木地を拵へたりさゝらを造つたりしてゐる間に、女は二人三人揃つて
、それを持つて、近いあたりの里を賣つて歩いた。
 かれ等の行く處には、小さな轆轤を店の傍に備へて、終日椀や盆の製造に忙殺されてゐる家などもあれば、下駄屋の看板をかゝげ
て、亭主がせつせと仕事場で鉋を使つてゐる家などもあつた。
『これや高けいや。』
『高いもんかな。山坂越えて骨折つて持つて來るだで。さうして呉れや、この前も、さうだつたでな。』
『お前ち等のは、元がいらねえだで、いくら安くつても間に合ふべい?』
 こんなことを笑ひながら言ふと、
『何うしてな、この頃ぢやな、お上が喧しいだで、とても駄目だな、皆な、元を出して買はねえぢや木の片一つありやしねえ。えらい時世だ。』
『うそ、こけ。』
『まア、それぢや、かうして置くべい。それなら好かんべ。また、來年、買つて貰ふだでな。好かんべ、それで……。』
『丁度にして置け。』
『丁度? それはひどいや。そんな眞似すれや、小言言はれるア。』
『誰に? お方にか?』
 かう言つて笑つて、『お方ア、山さゐるんか。』
『ゐねえし、もう。』
『露にぬれてもお方は山で待つてゐる! かな。』
『あほらしい。』



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