09/06/26 02:35:38 PNBWvH9RO
次の二点を明記しておきたい。強制連行された朝鮮人のほとんどは、戦後まもなく日本政府の計画送還で帰
国していること。在日一世の大半は、戦前から日本に住みつづけているか、戦後、密航で来たかのどちらか
であるということ。これらは研究者のあいだではすでに定説となっているのだが、日本人一般には正反対の
言説が「事実」であるかのように 漠然と信じ込まれてきた。その最大の原因は日本のマスコミの認識不足
だが、在日の特に知識人が往々にして「私たちは無理やり連れてこられた」といった言い方をしてきたこと
にも一因がある。
日本の過酷な植民地政策が朝鮮民族を窮乏させ、住み慣れた土地から日本に追いやった、あるいは日本の本
土資本が安価な朝鮮人労働力を大量に必要としたという意味で、「無理やり連れてこられた」と言うことは
できないわけではない。だが、「無理やり連れてこられた」といった表現には、明らかに強制連行のニュア
ンスがこめられている。日本人側が在日についてあまりにも知らないことが問題なのは言うまでもないが、
在日側もこうした表現をいわば“切り札”にして日本人との議論を断ち切ってしまう場合が、ままあったの
ではなかろうか。
強制連行はまちがいなくあった。また、強制連行に象徴される日本の対朝鮮政策の延長線上に在日の現在は
ある。このことを大前提とした上で、いま日本にいる在日の大多数は、戦前からの渡航者および戦後の密航
者と、その子孫たちであるという事実を、在日と日本人が共有しない限り、両者の対話と相互理解は前に進
まないのではないか。
野村進「コリアン世界の旅」