24/11/18 15:21:58.54 McloZvuc9.net
2024/11/18 06:00 神戸新聞NEXT
URLリンク(www.kobe-np.co.jp)
自らの失職に伴う兵庫県知事選で、出直し選に臨んだ前知事・斎藤元彦氏が、過去最多の7人による混戦を制し、再選を決めた。
斎藤県政の継続の是非が問われたが、若者支援策や行財政改革などの実績を訴え、支持を広げた。ただ、苦境からの勝利にも安堵(あんど)する余裕はない。自身の疑惑を巡る告発文書問題で混乱が続く県政の正常化、全会一致で不信任を決議した県議会、市町との関係修復は待ったなしだ。何よりも県民の信頼を取り戻す責務がある。多岐にわたる課題に対処できる体制を築き直す必要がある。
引き続き県政の舵(かじ)取りを担うに当たり、手厳しい意見にも謙虚に耳を傾け、真摯(しんし)に説明を尽くす姿勢を忘れないと肝に銘じてもらいたい。
◇
今回の選挙は、斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した文書への対応の適否や、知事に求められる資質とは何なのかが主要な争点となった。
文書問題は3月、元西播磨県民局長が告発して表面化した。斎藤氏は真実相当性がない誹謗(ひぼう)中傷だとして元局長を作成者と特定し解任した。元局長は改めて県の窓口に公益通報したが、県はその調査を待たず、5月に内部調査に基づき懲戒処分とした。元局長は7月に死亡した。
県側の対応を巡り、専門家らは「公益通報に当たり告発者の保護が必要」と指摘するが、斎藤氏側は「誹謗中傷であり、公益通報には該当しない」と一貫して否定してきた。
文書が記した内容の真偽や対応の問題点は、県議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)や、弁護士でつくる第三者委員会による究明が続いており、結論は出ていない。
それでも斎藤氏への批判の高まりを受け、県議会は不信任決議を急いだ。結果を待たずに選挙戦に突入し、有権者の判断を難しくした側面は否定できない。
斎藤氏は文書問題について「一つ一つの局面や状況で、取り得る最善の対応をしてきた」と主張しつつ、「反省すべきは反省し改める」と訴えた。今後は公益通報制度の運用改善に加え、職員との意思疎通や、壊れた信頼関係の再構築が必須となる。選挙で勝利したからといって疑惑が解消したわけではない。説明責任を引き続き果たさねばならない。
県議会の責任も重い。今後の百条委では党利党略や感情論に走らず、丁寧な審議で全容解明に取り組むことを求める。
■政策論争は深まらず
選挙に関心が高まった一方、政策論争が深まらなかったのは残念だ。
文書問題以外にも、県政の課題は山積している。県財政は改善基調にあるものの、阪神・淡路大震災関連の県債(借金)の償還はなお続く。斎藤氏が県政の柱に据えて取り組んできた行財政改革や、地域経済の活性化の道筋をどう描くのか。若年層らの人口流出や過疎化にどう歯止めをかけるのか。県庁舎再整備への対応、南海トラフ地震などの防災・減災対策も急がれる。
必要な施策を打ち出すには財源を確保しなければならない。県民の理解を得ながら事業の見直しにも大胆に切り込む手腕が問われる。
県議会との関係にも注文しておきたい。前回選で斎藤氏を推薦した自民党は独自候補を擁立できず、斎藤氏や前尼崎市長・稲村和美氏らの支援で分裂した。同じく斎藤氏を推薦した日本維新の会は離党した清水貴之前参院議員を支援した。全会一致で退任を迫った斎藤氏に県議会がどう向き合うか注目されるが、知事は議会との緊張感を保ちつつ対話を重ね、県政の正常化に努めるべきだ。
選挙戦では、各陣営が交流サイト(SNS)を駆使し演説などの動画や写真を拡散した。無党派や若年層への浸透効果は大きく、斎藤氏を再選に押し上げた要因とされる。
■選挙運動巡る議論を
一方で、真偽不明の情報や他陣営への攻撃などが飛び交う異様な展開となった。根拠のない主張や誤情報で対立をあおり、地域の分断を深めるような状況は看過できない。
インターネット選挙運動の解禁から約10年が過ぎ、社会のデジタル環境も変化した。SNSを活用した「ネット世論」が投票行動に与える影響も無視できなくなっている。新聞など既存メディアの選挙報道にも厳しい目が向けられた。
7月の東京都知事選でも問われたポスター掲示板や政見放送の在り方を含め、民主主義の根幹である選挙への信頼をどう保っていくべきか。言論や表現の自由などに配慮しつつ、ネットと選挙のあるべき姿を真剣に考えなくてはならない。