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「特定の人がデマの潮流を生み出していた」 ネットにはびこるヘイトの真偽を検証し、立ち向かう動きを追った:東京新聞
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)
2024年7月15日 12時00分
埼玉県南部の川口市周辺で約2000人が暮らすとされるクルド人へのデマやヘイトが目立つようになって1年余り。その多くがまき散らされているのが、これまでも深刻なレイシズムの温床になってきたネット空間だ。「放っておけばデマが事実だと誤解されかねない」と、ネットをパトロールする人たちがいる。現状を追った。(森本智之)
◆「ネットの中では、まるで犯罪都市」住人が驚く悪質な書き込み
「『川口』と検索するだけで、ヘイトスピーチが次々出てきます」。川口市で在日外国人支援を続けてきた米山功治さん(55)は交流サイト(SNS)のX(旧ツイッター)を開いて説明してくれた。
「川口市、発砲事件、犯人はどうせクルド人でしょ」「クルド人は野蛮な人種だから強制送還した方が良い」「クルド人はテロリスト集団」…。事件の報道とクルド人を根拠無く結び付けて犯人視したり、交通事故の現場にいる外国人を撮影した写真をやはり根拠不明のまま「クルド人」と称して揶揄(やゆ)したり。クルド人が暮らすアパートや公園の子どもたちを隠し撮りした動画や写真をアップするケースまである。「ネットの中の川口は、まるで危険なクルド人に占拠された犯罪都市」(別の支援者)というありさまだ。
だが、こうした印象は現実とはかけ離れている。
◆川口市でクルド人は少数派、中国人の200分の1
クルド人が暮らす川口、蕨両市は外国人の集住都市。川口は今年1月現在で人口の7%余、約4万3000人の外国人が暮らし、この10年で1.9倍弱に増えた。
ただ最多は中国人(約2万4200人)で、ベトナム人(約4900人)、フィリピン人(約2900人)などと続き、クルド人を含むトルコ国籍者は約1200人と少数派だ。加えて、2023年の市内の刑法犯認知件数は4437件と、この10年で43%減った。
確かに騒音やごみ出しなどで生活上のトラブルは起きているし、中にはクルド人が罪を犯すケースもある。しかし、SNSでは個別の犯罪などが繰り返し投稿され、クルド人の犯罪が頻発しているかのように論じられる。クルド難民弁護団の大橋毅弁護士は「どんな民族でも犯罪をする人もいれば、そうでない人もいる。一部の個人の犯罪を理由に民族単位で批判するのは差別そのものだ」と言う。
◆入管難民法が注目されたことで排外主義者の標的に
米山さんによると、こうした投稿は今年6月以降に再び目立つようになったという。難民申請中でも強制送還を可能にする改正入管難民法が施行され、難民申請者が多いクルド人に関する報道が増えていた。1年ほど前、クルド人へのヘイトが始まったのも、法改正の過程でクルド人がクローズアップされた時期。注目が集まったことで排外主義者の標的になった可能性がある。
「『きっとそうだろう』『そのようだ』『そうに決まっている』。事実に基づかず犯罪者と決め付ける内容が、圧倒的に多い」。米山さんは時間を見つけてはチェックし、Xの運営会社に通報、反論を書き込む。川口は生まれ育った街。街に根付き、ともに暮らす多くの外国人を知っている。「誰かがやらないとどんどん広がる。このままだとデマをやったもん勝ちになっちゃう」
◆「ひとくくりにして中傷を続けるのが許せない」
(略)
◆デスクメモ
外国人が1割を占める街に住んでいた。バーベキューの煙が火事と間違えられるなど文化の違いによるトラブルも起きつつ、豆の料理や言語を教わり、地域で共に生きる隣人であると実感した。クルドの人たちの境遇に思いも寄せず、SNSで流布されるデマや悪意を食い止めたい。(恭)
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