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青木理「トラオ」より
不在者投票の問題点
1986年衆院選。鹿児島県の不在者投票率は4.3%。奄美群島では7.86%。徳之島では15%に達した。
「南海日日新聞」は不在者投票の問題を記す。
選挙で不在者投票が始まると、寝たきり老人や痴呆老人までが運動員に投票所まで運びこまれる。
老人たちの手には、候補者名を間違えないようにマジックで名前が書き込まれる。不在者投票は「得票する一番確実な方法」と呼ばれている。
異常なまで多い不在者投票には買収があると言われる。
買収した相手の気が変わらないうちに、強引に運動員が連れてくるためだ。
出稼ぎ者は郵便で不在者投票をする。本人が選挙人名簿に登録している市町村の選挙管理委員会に投票用紙請求書を請求するのが建前だが、
親戚や知人が請求書を取って送る方法も許されている。
現在、後者がほとんどである。
投票用紙の送付を受けた選挙人は最寄りの選挙管理委員会で投票するが、本人であるかの確認は生年月日を訪ねる程度だという
(1991年4月25日 南海日日新聞)
こうしてみれば、不正疑惑は明らかだろう。
三重県に出稼ぎに行っていた徳之島民男性が、投票日に島に戻って投票に赴くと、選管の職員から「あなたは既に不在者投票を済ませている」と告げられてしまった。
郵送による投票の発信元は神戸。男性には、不在者投票を行なった記憶も、神戸に行った記憶もない。
とすれば、間違いなく、男性の名を騙った何者かが、神戸から男性の名前で不在者投票を行なってしまったのである。